(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940012
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】落橋防止装置及びその設置方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/04 20060101AFI20160616BHJP
E01D 19/02 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
E01D19/04 101
E01D19/02
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-67632(P2013-67632)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-190092(P2014-190092A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 尊彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】郭 勝華
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−219933(JP,A)
【文献】
特開平09−049209(JP,A)
【文献】
特開2006−233498(JP,A)
【文献】
実開平04−082014(JP,U)
【文献】
実開昭61−006511(JP,U)
【文献】
特開2011−074604(JP,A)
【文献】
特開2008−231841(JP,A)
【文献】
特開2007−191912(JP,A)
【文献】
特開2005−054453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/04
E01D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋桁を支承する下部構造の上に前記橋桁の変位を制限する変位制限突起を設置する落橋防止装置の設置方法であって、
上面が開放された鋼製函体と、前記鋼製函体の下端から前記鋼製函体の外周側に突出し、ボルト挿通孔が形成されたベースプレートとからなる鋼製型枠を作成する工程と、
前記下部構造の上面に、上方に突出するアンカーボルトを設置する工程と、
前記鋼製型枠の内部に鉄筋を配筋する工程と、
前記ベースプレートの前記ボルト挿通孔に前記アンカーボルトを挿通させ、前記橋桁の主桁及び横桁との間に予め設定された隙間を隔てて前記鋼製函体を配置した状態で、前記鋼製型枠の高さ及び傾斜を調整する工程と、
前記高さ及び傾斜を調整した鋼製型枠の前記ベースプレートの外側に、前記下部構造の上面から前記ベースプレートの下面以上までの高さを有する枠を設置し、前記枠内に前記ベースプレートの下面まで無収縮モルタルを打設する工程と、
前記無収縮モルタルが硬化した後、前記鋼製型枠の内部にコンクリートを打設する工程とを含むことを特徴とする落橋防止装置の設置方法。
【請求項2】
既存の前記下部構造の内部に配筋された鉄筋の位置を求め、求めた前記鉄筋の位置を避けて前記アンカーボルトを打設するために孔を前記下部構造に削孔する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の落橋防止装置の設置方法。
【請求項3】
前記下部構造に設置された前記アンカーボルトの位置を実測する工程を含み、
前記実測したアンカーボルトの位置に合わせて前記ボルト挿通孔を前記ベースプレートに形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の落橋防止装置の設置方法。
【請求項4】
前記鋼製函体の前記主桁及び前記横桁に対向する面に、緩衝材を設置する工程を含むことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の落橋防止装置の設置方法。
【請求項5】
橋桁の主桁及び横桁と予め設定された隙間を隔てて対向する面を有する鋼製函体と、前記鋼製函体の下端から前記鋼製函体の外周側に突出し、ボルト挿通孔が形成されたベースプレートとからなる鋼製型枠、
前記鋼製型枠の内部に、前記鋼製型枠と一体に形成された鉄筋コンクリートとからなる変位制限突起、
前記橋桁を支承する下部構造の上面に、無収縮モルタルが硬化されてなり、上面から突出するアンカーボルトが設置された台座、
及び、前記ベースプレートの前記ボルト挿通孔に挿通された前記アンカーボルトと螺合して、前記鋼製型枠を前記台座の上面に着脱自在に固定するナットとを備えることを特徴とする落橋防止装置。
【請求項6】
前記ベースプレートは、前記鋼製函体を構成する鋼板よりも厚い鋼板から形成されていることを特徴とする請求項5に記載の落橋防止装置。
【請求項7】
前記鋼製函体の前記主桁又は前記横桁と対向する面は、下部が前記主桁又は前記横桁との間隔が前記隙間より大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の落橋防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋桁の脱落を防止する落橋防止装置及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
阪神淡路大震災の際、橋桁が脱落する事例が多く発生した。これを受けて、平成8年に道路橋示方書が改定され、想定を超えた地震力、変位、変形が生じても、落橋という不測事態を防止するため、フェールセーフ機構としての落橋防止システムを設けることが規定された。現在、落橋防止システムとして、桁かかり長、落橋防止構造、変位制限構造、及び段差防止構造が位置付けられ、これらの設計方法が道路橋示方書に規定されている。
【0003】
これらの中で、橋台や橋脚等の下部構造の上面に鉄筋コンクリート製の変位制限突起を設け、地震時に変位制限突起が橋桁の主桁や横桁に当接して、下部構造に対する橋桁の相対変位を制限する構造が、構造的に有利であり安価でもある。
【0004】
例えば、特許文献1には、橋台の上面に鉄筋コンクリート製の落橋防止ブロック(変位制限突起)を設置するための鋼製の捨て型枠が記載されている。この型枠は、連結部分に長穴が形成されており、橋桁と型枠との隙間を容易に微調整することできる。また、鉄筋コンクリートと鋼製の型枠が一体化するため、耐力が向上するという効果もある。
【0005】
なお、特許文献2には、クレーン車を用いて、プレキャスト製の落橋防止ブロックを橋脚の側面に設置する技術が記載されている。この場合、重量物である落橋防止ブロックを支持しながら設置するので、位置調整が困難であり、手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4079340号公報
【特許文献2】特許第4051584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、橋台や橋脚等の下部構造の上面であって主桁の間に変位制限突起を設置するので、作業スペースが狭く、設置作業は困難である。例えば、特許文献1の技術では、配筋と、配筋の外周に型枠を設置する作業とを橋台の上面の狭いスペース内で行う必要がある。
【0008】
さらに、下部構造と橋桁との間には、車両等による振動を抑制するために、積層ゴム等からなる弾性支承が設置されている。この弾性支承は定期的に交換する必要があるが、その交換作業用のスペースを確保することができず、スペースを確保するために変位制限突起を解体する必要が生じる場合が多い。この場合、弾性支承の交換毎に、変位制限突起を解体して、再構築する必要があるので、交換コストが高くなる上に、橋梁の躯体に悪影響を及ぼすおそれもある。
【0009】
なお、変位制限突起を鋼製として下部構造にボルトで固定すれば、変位制限突起は着脱自在となる。しかし、鋼製の変位制限突起は、同等の性能を有するコンクリート製の変位制限突起に比較して非常に高価である。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑み、下部構造での作業が少なく、コンクリート製の着脱可能な変位制限突起からなる落橋防止装置及びその設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の落橋防止装置の設置方法は、橋桁を支承する下部構造の上に前記橋桁の変位を制限する変位制限突起を設置する落橋防止装置の設置方法であって、上面が開放された鋼製函体と、前記鋼製函体の下端から前記鋼製函体の外周側に突出し、ボルト挿通孔が形成されたベースプレートとからなる鋼製型枠を作成する工程と、前記下部構造の上面に、上方に突出するアンカーボルトを設置する工程と、前記鋼製型枠の内部に鉄筋を配筋する工程と、前記ベースプレートの前記ボルト挿通孔に前記アンカーボルトを挿通させ、前記橋桁の主桁及び横桁との間に予め設定された隙間を隔てて前記鋼製函体を配置した状態で、前記鋼製型枠の高さ及び傾斜を調整する工程と、前記高さ及び傾斜を調整した鋼製型枠の前記ベースプレートの外側に、前記下部構造の上面から前記ベースプレートの下面以上までの高さを有する枠を設置し、前記枠内に前記ベースプレートの下面まで無収縮モルタルを打設する工程と、前記無収縮モルタルが硬化した後、前記鋼製型枠の内部にコンクリートを打設する工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の落橋防止装置の設置方法によれば、鋼製型枠を下部構造の上面に設置して高さ及び傾斜を調整する工程の後、鋼製型枠の内部にコンクリートを打設する工程を行う。そのため、鋼製型枠とその内部の鉄筋のみの軽量な状態で、設置位置、高さ及び傾斜の調整を行うことができる。
【0013】
また、鋼製型枠の内部の配筋作業を、下部構造の上面ではなく、地上で行うことが可能であるので、効率的に作業を行うことができる。
【0014】
また、下部構造と一体化された通常の鉄筋コンクリート製の変位制限突起とは異なり、変位制限突起は、下部構造に対して着脱可能であるので、弾性支承の交換時などに解体する必要がない。よって、変位制限突起を繰り返し使用でき、変位制限突起の解体、再製作に要する費用が不要となり、全体のコストを抑えることが可能となる。また、変位制限突起はコンクリート製であるので、同様の特性を有する鋼製の変位制限突起よりも安価に作製することができる。
【0015】
本発明の落橋防止装置の設置方法において、既存の前記下部構造の内部に配筋された鉄筋の位置を求め、求めた前記鉄筋の位置を避けて前記アンカーボルトを打設するために孔を前記下部構造に削孔する工程を含むことが好ましい。
【0016】
この場合、既存の下部構造に変位制限突起を設置することができる。
【0017】
本発明の落橋防止装置の設置方法において、前記下部構造に設置された前記アンカーボルトの位置を実測する工程を含み、前記実測したアンカーボルトの位置に合わせて前記ボルト挿通孔を前記ベースプレートに形成することが好ましい。
【0018】
この場合、変位制限突起を予め設定された位置に設置することができる。よって、変位制限突起と主桁及び横桁との隙間が予め設定された隙間となる。
【0019】
なお、本発明の落橋防止装置の設置方法において、前記鋼製函体の前記主桁及び前記横桁に対向する面に、緩衝材を設置する工程を含むことが好ましい。
【0020】
本発明の落橋防止装置は、橋桁の主桁及び横桁と予め設定された隙間を隔てて対向する面を有する鋼製函体と、前記鋼製函体の下端から前記鋼製函体の外周側に突出し、ボルト挿通孔が形成されたベースプレートとからなる鋼製型枠、前記鋼製型枠の内部に、前記鋼製型枠と一体に形成された鉄筋コンクリートとからなる変位制限突起、前記橋桁を支承する下部構造の上面に、無収縮モルタルが硬化されてなり、上面から突出するアンカーボルトが設置された台座、及び、前記ベースプレートの前記ボルト挿通孔に挿通された前記アンカーボルトと螺合して、前記鋼製型枠を前記台座の上面に着脱自在に固定するナットとを備えることを特徴とする。
【0021】
本発明の落橋防止装置によれば、下部構造と一体化された通常の鉄筋コンクリート製の変位制限突起とは異なり、変位制限突起は、下部構造に対して着脱可能であるので、弾性支承の交換時などに解体する必要がない。よって、変位制限突起を繰り返し使用でき、変位制限突起の解体、再製作に要する費用が不要となり、全体のコストを抑えることが可能となる。また、変位制限突起はコンクリート製であるので、同様の特性を有する鋼製の変位制限突起よりも安価に作製することができる。
【0022】
本発明における変位制限突起は、ベースプレートとアンカーボルトのみで下部構造と接合されている。そのため、橋桁の主桁や横桁が変位制限突起に当接した際に生じる応力を下部構造に伝達することができるように、ベースプレートを剛強なものとする必要がある。
【0023】
そこで、本発明の落橋防止装置において、前記ベースプレートは、前記鋼製函体を構成する鋼板よりも厚い鋼板から形成されていることが好ましい。
【0024】
この場合、溶接などによって、ベースプレートを鋼製函体に強固に固定するができる。
【0025】
本発明の落橋防止装置において、前記鋼製函体の前記主桁又は前記横桁と対向する面は、下部が前記主桁又は前記横桁との間隔が前記隙間より大きくなるように形成されていることことが好ましい。
【0026】
この場合、鋼製型枠と主桁又は横桁との間に作業スペースが生じ、ベースプレートとアンカーボルトとを接合する作業が容易となる。また、鋼製型枠の内部に打設するコンクリート量が削減されるので、変位制限突起が軽量化され、弾性支承の交換時などにおける変位制限突起の取り外し、取り付けが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る落橋防止装置を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態に係る落橋防止装置10について
図1から
図3を参照して説明する。落橋防止装置10は、橋台1に設置する場合も橋脚に設置する場合も、落橋防止装置10の構成、及びその設置方法は同様であるので、以下、橋台1に設置する場合について説明する。
【0029】
落橋防止装置10は、橋台1の上面に形成された台座11と、台座11の上に着脱自在に設置された変位制限突起12とから構成される。
【0030】
台座11は、橋台1の上面に形成され、無収縮モルタルが硬化されてなるものであり、その上面が水平となっている。そして、台座11の上面からアンカーボルト13が上方に向けて突出して設置されている。アンカーボルト13は、橋台1の内部にその基端部が埋め込まれている。
【0031】
変位制限突起12は、鋼製型枠14と、鋼製型枠14内に打設されて硬化したコンクリート15とからなる。
【0032】
鋼製型枠14は、変位制限突起12の外側面を構成し、上面が開放された鋼製函体16と、鋼製函体16の下端面に固定されたベースプレート17とからなり、内部に鉄筋が配筋されている。
【0033】
鉄筋は、打設したコンクリートが鋼製型枠14と一体化するように配筋されている。例えば、鋼製函体16の内側に、孔あき鋼板ジベルを溶接し、その孔に鉄筋を貫通させればよい。
【0034】
ベースプレート17は、鋼製函体16を形成する鋼板より厚い鋼板からなり、鋼製函体16に溶接等によって強固に固定されている。これにより、ベースプレート17は、剛強なものとなり、橋桁の主桁2や横桁3が変位制限突起12に当接した際に生じる応力を橋台1に伝達することができる。
【0035】
ベースプレート17は、ここでは、鋼製型枠14の下端面を閉塞する平板状であるが、鋼製型枠14の下端面を開放するリング状であってもよい。ベースプレート17には、台座11から突出するアンカーボルト13の配置に合わせた位置に、貫通孔(ボルト挿通孔)が形成されている。鋼製函体16の横断面及びベースプレート17は、ここでは矩形状であるが、円形状など矩形状以外の形状であってもよい。
【0036】
鋼製函体16は、主桁2及び横桁3とそれぞれ予め設定された隙間を確保する形状に構成されている。即ち、鋼製函体16は、左右の対向する主桁2の面とそれぞれ予め設定された隙間を隔てて平行に位置する略平面を左右両側面に、対向する横桁3の面と予め設定された隙間を隔てて平行に位置する略平面を前側面に有する。
【0037】
鋼製函体16は、左右の主桁2に対向する側において、所定の高さ以下は前記隙間より大きくなるように、即ち、左右方向の幅が短くなるように切り欠かれて、正面視でT字形状となっている。左右方向の幅が短くなる範囲の高さは、ベースプレート17とアンカーボルト13とをナット18で接合する作業に支障のない高さに設定されている。
【0038】
鋼製函体16の主桁2及び横桁3と対向する面には、それぞれ緩衝材19が設置されている。
【0039】
以下、本発明の実施形態に係る落橋防止装置10の設置方法について図面を参照して説明する。
【0040】
まず、橋台1にアンカーボルト13を設置する第1の工程を行う。アンカーボルト13は橋台1の内部に配筋された鉄筋を避けて設置される。
【0041】
なお、既存の橋台1の上に新たに落橋防止装置10を設置する場合、最初に、橋台1の内部に配筋された鉄筋の位置を探査してアンカーボルト13を設置するための孔を削孔する必要がある。さらに、落橋防止装置10を設置するスペースが不足する場合、橋台1から突出する沓座を増設してもよい。沓座は橋台1の一部である。また、鋼製函体16の所定の面に緩衝材19を設置する。
【0042】
次に、鋼製型枠14の内部に鉄筋を配筋し、ベースプレート17にアンカーボルト13を挿通させるための貫通孔を穿孔する第2の工程を行う。落橋防止装置10の設置位置によって、アンカーボルト13の位置は異なるので、その位置を実測し、これに合わせてベースプレート17に貫通孔を穿孔する。なお、第1の工程の前に第2の工程を行ってもよく、第1の工程と第2の工程とを同時に行ってもよい。
【0043】
次に、内部に鉄筋を配筋した状態で鋼製型枠14をクレーン車などによって吊上げ、橋台1の上に移動させる第3の工程を行う。
【0044】
次に、アンカーボルト13をベースプレート17の貫通孔を挿通させて、橋台1の上面に鋼製型枠14を仮設置した後、鋼製型枠14の高さ及び傾斜を調整する第4の工程を行う。橋台1の上面は雨水を排水するために勾配を有しており、この勾配や不陸等によって鋼製型枠14が傾斜しないように、調整する。調整は、橋台1の上面とベースプレート17の下面との隙間にフィラープレートを設置して行えばよい。隙間が大きい場合には、ナットなどを併用してもよい。
【0045】
鋼製型枠14の高さ及び傾斜の調整は、橋梁の下面に設置したチェーンブロックなどを用いて鋼製型枠14を吊り下げた状態で行ってもよく、橋台1に設置したジャッキなどで鋼製型枠14を持ち上げた状態で行ってもよい。
【0046】
次に、アンカーボルト13にナット18を螺合させて、鋼製型枠14を橋台1の上に固定する第5の工程を行う。なお、無収縮モルタルを流し込んだ後に、ナット18を螺合してもよい。
【0047】
次に、ベースプレート17の周囲にモルタル止めの枠(不図示)を設置し、この枠内に無収縮モルタルを流し込む第6の工程を行う。
【0048】
そして、無収縮モルタルが硬化した後、鋼製型枠14内にコンクリート15を打設する第7の工程を行う。これにより、無収縮モルタルが硬化してなる台座11の上に、変位制限突起12が形成される。なお、モルタル止めの枠は解体しても、解体しなくてもよい。
【0049】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、鋼製型枠14を橋台1の上に設置して高さ及び傾斜を調整する第4の工程の後、第7の工程でコンクリート15を打設する。そのため、鋼製型枠14とその内部の鉄筋のみの軽量な状態で設置位置、高さ及び傾斜の調整を行うことができる。
【0050】
また、鋼製型枠14の内部の配筋作業を、橋台1ではなく、地上で行うことが可能であるので、効率的に作業を行うことができる。
【0051】
また、橋台1と一体化された通常の鉄筋コンクリート製の変位制限突起とは異なり、変位制限突起12は、橋台1に対して着脱可能であるので、積層ゴムなどからなる弾性支承5の交換時に解体する必要がない。よって、変位制限突起12を繰り返し使用でき、変位制限突起12の解体、再製作に要する費用が不要となり、全体のコストを抑えることが可能となる。また、変位制限突起12は、コンクリート製であるので、同様の特性を有する鋼製の変位制限突起よりも安価に作製することができる。
【0052】
なお、変位制限突起12に、弾性支承5の交換時に変位制限突起12を橋台1などから吊り下げるためのフックなどの吊り下げ手段を設置してもよい。吊り下げ手段は、鋼製函体16に設置しても、鋼製函体16に打設されたコンクリート15に固定されるように設置してもよい。
【0053】
橋台1の内部鉄筋を避けてアンカーボルト13を設置する場合、アンカーボルト13の位置を実測し、これに合わせてベースプレート17に貫通孔を穿孔することが好ましい。また、アンカーボルト13の位置を実測することにより、設置誤差により橋台と橋梁との位置関係が設計値と異なっていても、変位制限突起12を予め設定された位置に設置することができる。さらに、鋼製型枠14を設置する面の傾斜や不陸に拘らず、変位制限突起12を予め設定された傾斜で設置することができる。
【0054】
これらによって、変位制限突起12と主桁2及び横桁3との隙間が正確に予め設定された隙間となる。そのため、1本の橋梁に複数の変位制限突起12を設置する場合、地震等により橋桁4が移動しても、全ての変位制限突起12が同時に主桁2又は横桁3に当接して、変位制限機能が効果的に奏される。
【0055】
また、鋼製函体16は、左右方向の幅が短くなるように切り欠かれて、正面視でT字形状となっている。そのため、鋼製型枠14と主桁2との間に作業スペースが生じ、ベースプレート17とアンカーボルト13とをナット18で接合する作業が容易となる。また、鋼製型枠14の内部に打設するコンクリート量が削減されるので、変位制限突起12が軽量化され、弾性支承5の交換時における変位制限突起12の取り外し、取り付けが容易となる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、鋼製函体16の横桁3と対向する面の下部も切り欠いてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…橋台(下部構造)、 2…主桁、 3…横桁、 4…橋桁、 5…弾性支承、 10…落橋防止装置、 11…台座、 12…変位制限突起、 13…アンカーボルト、 14…鋼製型枠、 15…コンクリート、 16…鋼製函体、 17…ベースプレート、 18…ナット、 19…緩衝材。