特許第5940057号(P5940057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5940057水性検体溶液中の8−オキソ2’−デオキシグアノシンを高感度で定量検出する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940057
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】水性検体溶液中の8−オキソ2’−デオキシグアノシンを高感度で定量検出する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/52 20060101AFI20160616BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20160616BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   G01N33/52 C
   G01N21/78 C
   G01N30/88 D
   G01N30/88 201R
【請求項の数】7
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-507559(P2013-507559)
(86)(22)【出願日】2012年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2012057750
(87)【国際公開番号】WO2012133306
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年1月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-68146(P2011-68146)
(32)【優先日】2011年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506075584
【氏名又は名称】株式会社TASプロジェクト
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 茂貴
(72)【発明者】
【氏名】中川 治
(72)【発明者】
【氏名】李 志春
(72)【発明者】
【氏名】高木 厚司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 幸代
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/074722(WO,A1)
【文献】 特開2002−253232(JP,A)
【文献】 特開2004−354164(JP,A)
【文献】 Nakagawa, O.,Specific Fluorescent Probe for 8-Oxoguanosine,Angew.Chem.,2007年,46,4500-4503
【文献】 Nasr, T.,Selective fluorescence quenching of the 8-oxoG-clamp by 8-oxodeoxyguanosine in ODN,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2009年,19,727-730
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
G01N 21/62−21/83
G01N 5/02
G01N 30/88
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性検体溶液中の8−オキソ 2' −デオキシグアノシンを定量検出する方法であって、
)表面にスペーサーユニットを介して8−オキソ 2' −デオキシグアノシンに対して特異的な蛍光応答を示す蛍光プローブ分子を固定したシリカゲル粒子に前記検体溶液を接触させる工程、及び
2)前記検体溶液との接触の前と後の前記シリカゲル粒子における物性変化を測定する工程を含み、
前記シリカゲル粒子の表面に固定されている、前記8−オキソ 2' −デオキシグアノシンに対して特異的な蛍光応答を示す蛍光プローブ分子と前記スペーサーユニットからなる基が、式(1)
【化1】
(式中、R1は、6−アミノ−2−ピリジル基又は−CO2(CH2l2(式中、R2は水素原子又は炭素原子数6ないし16のアリール基を表し、lは、1〜3の整数を表す。)を表し、X及びYは、一方が、−SiR345(式中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、メチル基、第三ブチル基又はフェニル基を表す。)で表されるヒドロキシ基の保護基を表し、もう一方が、―(CH2m−NHCO−(式中、mは2〜10の整数を表す。)で表されるスペーサーユニットを表すものである。)で表される基である方法
【請求項2】
Xが前記スペーサーユニットを表し、Yが前記ヒドロキシ基の保護基を表す請求項記載の方法。
【請求項3】
前記シリカゲル粒子をマイクロプレートのウェルに入れて該ウェル内に乾着させ、該ウェル内に前記水性検体溶液を入れて加温しながらシリカゲル粒子の蛍光
強度を測定することにより前記定量検出を行う請求項又は記載の方法。
【請求項4】
前記シリカゲル粒子をカラムに充填し、該カラムに前記水性検体溶液を流し、充填されたシリカゲル粒子の蛍光強度を測定することにより前記定量検出を行う請求項又は記載の方法。
【請求項5】
表面に式(1)
【化2】
(式中、R1は、6−アミノ−2−ピリジル基又は−CO2(CH2l2(式中、R2は水素原子又は炭素原子数6ないし16のアリール基を表し、lは、1〜3の整数を表す。)を表し、X及びYは、一方が、−SiR345(式中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、メチル基、第三ブチル基又はフェニル基を表す。)で表されるヒドロキシ基の保護基を表し、もう一方が、―(CH2m−NHCO−(式中、mは2〜10の整数を表す。)で表されるスペーサーユニットを表すものである。)で表されるを固定したシリカゲル粒子。
【請求項6】
Xが前記スペーサーユニットを表し、Yが前記ヒドロキシ基の保護基を表す請求項記載のシリカゲル粒子。
【請求項7】
8−オキソ 2' −デオキシグアノシンを分離するための分離カラムであって、請求項又は記載のシリカゲル粒子を充填材として使用する分離カラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性検体溶液中の8−オキソ 2’ −デオキシグアノシンを高感度で定量検出する方法に関するものであり、詳細には、水性検体溶液中の8−オキソ 2’ −デオキシグアノシンを定量検出する方法であって、
1)微粒子の表面にスペーサーユニットを介して8−オキソ 2’ −デオキシグアノシンに対して特異的な蛍光応答を示す蛍光プローブ分子を固定し、該微粒子に前記検体溶液を接触させる工程、及び
2)前記検体溶液との接触の前と後の前記微粒子における物性変化を測定する工程を含む方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
8−オキソ 2’ −デオキシグアノシン (以降、8-oxo-dGとも記載する)は、環境因子や生体内の代謝活動に伴って生成する活性酸素の量を直接反映することから、酸化ストレスマーカーとして注目されている。そのため、生体内・尿中の8-oxo-dGの存在量を正確に計測することは、突然変異や老化、多くの疾患を研究する上で極めて意義がある。これまでに8-oxo-dGの検出法としてHPLCと電気化学検出器を組み合わせたHPLC-ECD法(例えば、非特許文献1参照)、ガスクロマトグラフイーと質量分析計を利用したGC-MS法(例えば、非特許文献2参照)等の機器分析法や、モノクローナル抗体によるELISA法(例えば、非特許文献3参照)等の検出法が開発されている。
【0003】
しかし、上記のような検出法では、生きた細胞内で、“リアルタイム”に8-oxo-dGの存在を定量的に観察することは困難であった。
上記を可能とするために、8-oxo-dGに対して特異的な蛍光応答を示す低分子蛍光プローブが開発されている(例えば、非特許文献4、5参照)。
この低分子蛍光プローブは有機溶媒中で多点水素結合形成することにより8-oxo-dGを認識し、特異的に蛍光消光を示すものであるため、蛍光消光の程度を測定することにより、系中に存在する8-oxo-dGの量を検出できるものである。
また、これらの低分子蛍光プローブの誘導体展開の中から、2' −デオキシグアノシン(以降、dGとも記載する)に対して特異的な蛍光応答を示す低分子蛍光プローブも見出されている(例えば、非特許文献6参照)。
以下に、8-oxo-dGに対して特異的な蛍光応答を示す低分子蛍光プローブが8-oxo-dGを認識して多点水素結合を形成する様式(A)及びdGに対して特異的な蛍光応答を示す低分子蛍光プローブがdGを認識して多点水素結合を形成する様式(B)を示す。
尚、Aで示される8-oxo-dGに対して特異的な蛍光応答を示す低分子蛍光プローブの、クロロホルム溶液中における8-oxo-dGとの錯体形成能は、dGとの錯体形成能の10倍であり、Bで示されるdGに対して特異的な蛍光応答を示す低分子蛍光プローブの、クロロホルム溶液中におけるdGとの錯体形成能は、8-oxo-dGとの錯体形成能の25倍であると報告されている。
【化1】
しかし、上記の8-oxo-dGに対して特異的な蛍光応答を示す低分子蛍光プローブは、多点水素結合形成によりを精密に認識するものであり、そして、プロトン性極性溶媒である水中においては、水素結合は殆ど機能しないため、水中では多点水素結合形成により8-oxoGを認識することはできないことになり、従って、高水溶性の8-oxo-dGを尿等の水溶液中で直接検出することは困難であった。
更に、尿中の通常の8-oxo-dGの濃度は非常に低い10-20ng/mL(分子量283とすると35-70nM)程度と報告されているため、低分子蛍光プローブを尿中の8-oxo-dGの検出のために使用するためには、これより低い濃度での検出が可能となるよう感度を向上させる必要があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hofer, T., Seo, A. Y., Prudencio, M., Leeuwenburgh, C.; Biol. Chem., 387, p.103-113 (2006)
【非特許文献2】Dizdaroglu, M., Jaruga, P., Birincioglu, M., Rodriguez, H.; Free Radical Biol. Med., 32, p.1102-1105 (2002)
【非特許文献3】Nakae, Y., Stoward, P. J., Bespalov, I. A., Melamede, Wallace, S. S.; Histochem. Cell Biol., 124, p.335-345 (2005)
【非特許文献4】Nakagawa, O., Ono, S., Li, Z., Tsujimoto, A., Sasaki, S.; Angew. Chem. Int. Ed., 46, p.4500-4503 (2007)
【非特許文献5】Nasr, T., Li, Z., Nakagaw, O., Taniguchi, Y., Sasaki, S.; Bioorg. Med. Chem. Lett., 19, p.727-730 (2009)
【非特許文献6】Li, Z., Nakagawa, O., Koga, Y., Taniguchi, Y., Sasaki, S.; Bioorg .Med. Chem., 18, p.3992-3998 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水性検体溶液中の8−オキソ 2’ −デオキシグアノシン(8-oxo-dG)を高感度で定量検出する方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、8-oxo-dGに対して特異的な蛍光応答を示す蛍光プローブ分子を、スペーサーユニットを介して微粒子表面上に固定すると、該微粒子表面上に微小疎水空間が形成され、それにより、水性検体溶液を用いた場合でも多点水素結合形成により8-oxo-dGを認識でき、結果として8-oxo-dGの定量検出が可能となることを見出し、また、その際、検出感度を飛躍的に向上させることができ、例えば、尿中の8-oxo-dGの定量検出が十分可能となるまで感度を向上させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
またこれにより、8-oxo-dGの高感度での定量検出に用いるデバイスの提供も可能となる。
【0007】
即ち、本発明は、
[1]水性検体溶液中の8−オキソ 2’ −デオキシグアノシンを定量検出する方法であって、
1)微粒子の表面にスペーサーユニットを介して8−オキソ 2’ −デオキシグアノシンに対して特異的な蛍光応答を示す蛍光プローブ分子を固定し、該微粒子に前記検体溶液を接触させる工程、及び
2)前記検体溶液との接触の前と後の前記微粒子における物性変化を測定する工程を含む方法、
[2]前記8−オキソ 2’ −デオキシグアノシンに対して特異的な蛍光応答を示す蛍光プローブ分子が、式(1)
【化2】
(式中、R1は、6−アミノ−2−ピリジル基又は−CO2(CH2l2(式中、R2は水素原子又は炭素原子数6ないし16のアリール基を表し、lは、1〜3の整数を表す。)を表し、X及びYは、一方が、ヒドロキシ基の保護基を表し、もう一方が、スペーサーユニットを表すものである。)で表される分子である前記[1]記載の方法、
[3]Xがスペーサーユニット(該スペーサーユニットは、―(CH2m−NHCO−(式中、mは2〜10の整数を表す。)を表す。)を表し、Yが−SiR345(式中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、メチル基、第三ブチル基又はフェニル基を表す。)を表す前記[2]記載の方法、
[4]前記微粒子が、無機粒子又はポリマー樹脂粒子であり、前記物性変化の測定が蛍光強度の測定により行われる前記[1]ないし[3]の何れか1つに記載の方法、
[5]前記無機粒子が、シリカゲル粒子である前記[4]記載の方法、
[6]前記微粒子をマイクロプレートのウェルに入れて該ウェル内に乾着させ、該ウェル内に前記水性検体溶液を入れて加温しながら微粒子の蛍光強度を測定することにより前記定量検出を行う前記[4]又は[5]記載の方法、
[7]前記微粒子をカラムに充填し、該カラムに前記水性検体溶液を流し、充填された微粒子の蛍光強度を測定することにより前記定量検出を行う前記[4]又は[5]記載の方法、
[8]表面にスペーサーユニットを介して式(1)
【化3】
(式中、R1は、6−アミノ−2−ピリジル基又は−CO2(CH2l2(式中、R2は水素原子又は炭素原子数6ないし16のアリール基を表し、lは、1〜3の整数を表す。)を表し、X及びYは、一方が、ヒドロキシ基の保護基を表し、もう一方が、スペーサーユニットを表すものである。)で表される分子を固定したシリカゲル粒子、
[9]Xがスペーサーユニット(該スペーサーユニットは、―(CH2m−NHCO−(式中、mは2〜10の整数を表す。)を表す。)を表し、Yが−SiR345(式中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、メチル基、第三ブチル基又はフェニル基を表す。)を表す前記[8]記載のシリカゲル粒子、
[10]8−オキソ 2’ −デオキシグアノシンを分離するための分離カラムであって、前記[8]又は[9]記載のシリカゲル粒子を充填材として使用する分離カラム、
に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、水性検体溶液中の8-oxo-dGを高感度で定量検出する方法を提供することができる。
本発明の方法は、8-oxo-dGに対して特異的な蛍光応答を示す蛍光プローブ分子を用いることにより非常に簡便な操作で8-oxo-dGの高感度の定量検出を達成することができるため非常に優れた方法といえる。
図1に本発明の概念図を示した。
図1のように、微粒子表面1にスペーサーユニット3を介して8-oxo-dG4に対して特異的な蛍光応答を示す蛍光プローブ分子2が固定されると、表面上に微小疎水空間6が形成され、水相7に存在するdG5と8-oxo-dG4のうち8-oxo-dG4だけが、微小疎水空間6の中でプローブ分子2と多点水素結合を形成し、8-oxo-dG4と多点水素結合した蛍光プローブ分子2だけが蛍光消光することになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を説明する概念図である。
図2】蛍光プローブ分子(8-oxo-dG選択的)を導入した微粒子を充填したカラムを用いる態様を説明する模式図である。
図3】シリカゲル粒子(33)〜(35)の蛍光反応性を示す蛍光顕微鏡写真である。
図4】シリカゲル粒子(33)における8-oxo-dG及びdGの濃度に対する蛍光相対強度のグラフ(左)及びこの際の8-oxo-dG濃度に対する消光率をhillプロットに変換したグラフ(右)である。
図5】シリカゲル粒子(34)における8-oxo-dG及びdGの濃度に対する蛍光相対強度のグラフ(左)及びこの際の8-oxo-dG濃度に対する消光率をhillプロットに変換したグラフ(右)である。
図6】シリカゲル粒子(35)における8-oxo-dG及びdGの濃度に対する蛍光相対強度のグラフ(左)及びこの際の8-oxo-dG濃度に対する消光率をhillプロットに変換したグラフ(右)である。
図7】8-oxo-dGによるシリカゲル粒子(33)〜(35)の蛍光消光に対するdG濃度(8-oxo-dGに対して0-100倍濃度)の影響を示すグラフである。
図8】シリカゲル粒子(33)をウェル表面に乾着させたマイクロプレートに8-oxo-dGの標準品(濃度:0〜500ng/mL)を添加した後、30分〜4時間における、8-oxo-dG濃度0〜500ng/mLに対する光学濃度値(OD値)の減衰率(添加前と比較した相対強度%)を示すグラフである。
図9】シリカゲル粒子(33)をウェル表面に乾着させたマイクロプレートに8-oxo-dGの標準品(濃度:0〜500ng/mL)を添加した後、30分〜4時間における、8-oxo-dG濃度0〜20ng/mLに対する光学濃度値(OD値)の減衰率(添加前と比較した相対強度%)を示すグラフである。
図10】シリカゲル粒子(39)をウェル表面に乾着させたマイクロプレートに8-oxo-dGの標準品(濃度:0〜500ng/mL)を添加した後、30分〜4時間における、8-oxo-dG濃度0〜500ng/mLに対する光学濃度値(OD値)の減衰率(添加前と比較した相対強度%)を示すグラフである。
図11】シリカゲル粒子(39)をウェル表面に乾着させたマイクロプレートに8-oxo-dGの標準品(濃度:0〜500ng/mL)を添加した後、30分〜4時間における、8-oxo-dG濃度0〜20ng/mLに対する光学濃度値(OD値)の減衰率(添加前と比較した相対強度%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
更に詳細に本発明を説明する。
本発明の水性検体溶液中の8−オキソ 2’ −デオキシグアノシンを定量検出する方法は、
1)微粒子の表面にスペーサーユニットを介して8-oxo-dGに対して特異的な蛍光応答を示す蛍光プローブ分子を固定し、該微粒子に前記検体溶液を接触させる工程、及び
2)前記検体溶液との接触の前と後の前記微粒子における物性変化を測定する工程を含む。
【0011】
本発明に使用し得る水性検体溶液としては、8-oxo-dGが含まれている可能性のある水性溶液であれば特に限定されるものではないが、例えば、ヒトを含む動物、植物、細菌又は真菌から採取した生体細胞由来の水性溶液(例えば、血液、尿、その他の体液、組織破砕液、細胞破砕液等)が挙げられ、また、生体内に存在する水性溶液、例えば、細胞内液、細胞外液等も本発明の水性検体溶液の概念に含まれる。
上記に加えて、本発明に使用し得る水性検体溶液としては、天然及び人工化学物質を含む食品、化粧品、医薬品、廃棄物を原材料としたリサイクル商品等の水溶液、土壌及び大気成分の抽出水、環境水等も含まれる。
【0012】
本発明に使用し得る定量検出の方法は、蛍光測定を行うことにより達成可能であるが、吸収スペクトル、特に、紫外線の吸収スペクトルの測定することによっても達成可能である。
蛍光測定により定量検出を行なう場合、励起光として、波長が300〜400nm、好ましくは、330〜380nm、より好ましくは345〜365nmの紫外線を照射し、これにより放出される410〜520nm、好ましくは、420〜470nmの蛍光の強度を測定することにより達成される。
【0013】
具体的な蛍光消光による定量検出は、事前に、蛍光プローブ分子を固定した微粒子に、種々の濃度の標準となる8-oxo-dGを添加し、蛍光強度を測定することで検量線を作成し、検体溶液を用いた際に測定された蛍光強度を検量線と照らし合わせることにより、8-oxo-dGの濃度を算出することにより達成される。
また、吸収スペクトルによる定量検出は、事前に、蛍光プローブ分子を固定した微粒子に、種々の濃度の8-oxo-dGを添加し、紫外線等の吸収スペクトルを測定し、吸収スペクトルが最も変化する波長領域における変化量から検量線を作成しておき、検体溶液を用いた際に測定された吸収スペクトルにおける前記波長領域における変化量を検量線と照らし合わせて8-oxo-dGの濃度を算出することにより達成される。
【0014】
本発明に使用し得る微粒子としては、無機粒子、ポリマー樹脂粒子の何れでも使用でき、その平均粒径は、例えば、0.001ないし100μmの範囲が挙げられ。0.1ないし50μmの範囲、また、1ないし20μmの範囲が好ましい。
無機粒子の具体例としては、例えば、シリコン粒子(シリカゲル粒子)、石英ガラス粒子、アルミナ粒子、グラファイト粒子、カーボンナノチューブ粒子、グラフェン粒子、グラファイト粒子、フラーレン粒子等が挙げられる。
ポリマー樹脂粒子の具体例としては、ポリ−N−ドデシルアクリルアミド(PDDA)、ポリ(フェニルアセチレン)、ポリ(フェニレンブタジイニレン)、ポリピロール、ポリメチルメタクリレート(PMAA)、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、セルロース等から構成される粒子が挙げられる。
【0015】
上記微粒子の表面に、スペーサーユニットを介して固定される8-oxo-dGに対して特異的な蛍光応答を示す蛍光プローブ分子としては、式(1)
【化4】
(式中、R1は、6−アミノ−2−ピリジル基又は−CO2(CH2l2(式中、R2は水素原子又は炭素原子数6ないし16のアリール基を表し、lは、1〜3の整数を表す。)を表し、X及びYは、一方が、ヒドロキシ基の保護基を表し、もう一方が、スペーサーユニットを表すものである。)で表される分子が挙げられる。
【0016】
炭素原子数6ないし16のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントラセニル基、フェナンスレニル基、ピレニル基等が挙げられる。
ヒドロキシ基の保護基としては、トリメチルシリル基、第3ブチルジメチルシリル基、第3ブチルジエチルシリル基、第3ブチルジフェニルシリル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシメチル基、第3ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
スペーサーユニットとしては、有機化学に分野で使用されるスペーサーユニットであれば特に限定されないが、具体的には、例えば、−(CH2CH2O)j−CH2CH2−、−(CH2CH2O)j−CH2CH2CO−、−(CH2CH2O)j−CCH2CH2SCO−、−(CH2CH2O)j−CH2CH2NHCO−、−(CH2CH2O)j−CO−、−(CH2CH2O)j−CS−、−(CH2k−、−(CH2k−CO−、−(CH2k−OCO−、−(CH2k−SCO−、−(CH2k−NHCO−等が挙げられる。
尚、上記式のjは、1ないし10の整数、好ましくは、1ないし4の整数を表し、kは2ないし30の整数、好ましくは2ないし12の整数を表す。
また、スペーサーユニットは、上記微粒子の表面に、炭素原子、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等による物理的吸着や共有結合により固定され得る。
【0017】
好ましい8-oxo-dGに対して特異的な蛍光応答を示す蛍光プローブ分子は、Xがスペーサーユニット(該スペーサーユニットは、―(CH2m−NHCO−(式中、mは2〜10の整数を表す。)を表す。)を表し、Yが−SiR345(式中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、メチル基、第三ブチル基又はフェニル基を表す。)を表す分子である。
mが3である分子がより好ましい。
【0018】
好ましい水性検体溶液中の8-oxo-dGを定量検出する方法は、また、微粒子が、無機粒子又はポリマー樹脂粒子であり、定量検出が蛍光消光の程度又は蛍光消光の程度と吸収スペクトルの変化の程度により行われる前記の方法である。
上記無機粒子及びポリマー樹脂粒子の具体例及び粒径並びに蛍光消光の程度又は蛍光消光の程度と吸収スペクトルの変化の程度による定量検出法は、上述の通りである。
微粒子が無機粒子であり、該無機粒子がシリカゲル粒子である上記の方法が好ましい。
【0019】
本発明の好ましい態様としては、前記微粒子をマイクロプレートのウェルに入れて該ウェル内に乾着させ、該ウェル内に前記水性検体溶液を入れて加温しながら微粒子の蛍光強度を測定することにより前記定量検出を行う前記の方法が挙げられる。
使用するマイクロプレートは、特に限定されるものではなく、例えば、市販の96ウェル、384ウェル等のマイクロプレートを用いることができる。
この態様は、例えば、ウェル内に蛍光プローブ分子(8-oxo-dG選択的)が固定された微粒子の水性懸濁液を入れ、加温して水分を蒸発させて該微粒子をウェルの表面に乾着させ、次に水性検体溶液を入れて加温する。
微粒子の使用量は、1ウェル当り、10ないし500ng、好ましくは、20ないし400ng、40ないし200ngであり、前記水性懸濁液は、例えば、1μL当り、前記微粒子1ないし100ng、好ましくは5ないし60ngを懸濁させたものであり、水分を蒸発させるための加温温度は、40ないし60℃の範囲、好ましくは、45ないし55℃、例えば、50℃であり、加温時間は30分ないし4時間の範囲、好ましくは、1時間ないし3時間、例えば、2時間である。
使用する水性検体溶液の量は、1ウェル当り、2ないし10μL、好ましくは2ないし4μLであり、加温温度は、40ないし60℃の範囲、好ましくは、45ないし55℃、例えば、50℃であり、加温時間は30分ないし4時間の範囲、好ましくは、1時間ないし2時間、例えば、1時間である。
加温しながら微粒子の蛍光強度を、例えば、マイクロプレートリーダー等で測定することにより、微粒子の蛍光消光の程度から微粒子に蓄積された8-oxo-dG量が判り、これから検体溶液中の8-oxo-dGの初期濃度を逆算することができるため、微量の8-oxo-dGを含む検体溶液の定量において有利である。
【0020】
本発明の好ましい別の態様としては、微粒子は、カラムに充填され、該カラムに前記水性検体溶液を流し、充填された微粒子の蛍光消光の程度の程度又は蛍光消光の程度と吸収スペクトルの変化の程度から、8-oxo-dGを定量検出する前記の方法が挙げられる。
この発明の態様の概略図を図2に示した。
図2に示されるように、蛍光プローブ分子(8-oxo-dG選択的)が固定された微粒子16は、カラム17に充填されるものであり、カラム17に検体溶液11を流した後、微粒子16の蛍光消光の程度から検体溶液中の8-oxo-dGを定量検出するものである。
この態様は、検体溶液中の8-oxo-dGの量が極めて微量である場合に、一定量の検体溶液を流して、微粒子16に8-oxo-dGを蓄積させた後に、微粒子16における蛍光消光の程度を測定すれば、微粒子16に蓄積された8-oxo-dG量が判り、これから検体溶液中の8-oxo-dGの初期濃度を逆算することができるため、上記のように極めて微量の8-oxo-dGを含む検体溶液の定量において有利である。
また、図2で示されるような、蛍光プローブ分子(8-oxo-dG選択的)が固定された微粒子16を充填材として使用するカラムは、8-oxo-dGを溶離することができる溶離液を使用することにより、8-oxo-dGを分離するための分離カラムとして使用することもできる。
【0021】
本発明はまた、表面にスペーサーユニットを介して式(1)
【化5】
(式中、R1は、6−アミノ−2−ピリジル基又は−CO2(CH2l2(式中、R2は水素原子又は炭素原子数6ないし16のアリール基を表し、lは、1〜3の整数を表す。)を表し、X及びYは、一方が、ヒドロキシ基の保護基を表し、もう一方が、スペーサーユニットを表すものである。)で表される分子を固定したシリカゲル粒子に関する。
使用するシリカゲル粒子の平均粒径は、例えば、0.001ないし100μmの範囲が挙げられ。0.1ないし10μmの範囲(高感度測定用)、また、10ないし100μm(分離カラム用)の範囲が好ましい。
炭素原子数6ないし16のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントラセニル基、フェナンスレニル基、ピレニル基等が挙げられる。
ヒドロキシ基の保護基としては、トリメチルシリル基、第3ブチルジメチルシリル基、第3ブチルジエチルシリル基、第3ブチルジフェニルシリル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシメチル基、第3ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
スペーサーユニットとしては、有機化学に分野で使用されるスペーサーユニットであれば特に限定されないが、具体的には、例えば、−(CH2CH2O)j−CH2CH2−、−(CH2CH2O)j−CH2CH2CO−、−(CH2CH2O)j−CCH2CH2SCO−、−(CH2CH2O)j−CH2CH2NHCO−、−(CH2CH2O)j−CO−、−(CH2CH2O)j−CS−、−(CH2k−、−(CH2k−CO−、−(CH2k−OCO−、−(CH2k−SCO−、−(CH2k−NHCO−等が挙げられる。
尚、上記式のjは、1ないし10の整数、好ましくは、1ないし4の整数を表し、kは2ないし30の整数、好ましくは2ないし12の整数を表す。
また、スペーサーユニットは、上記微粒子の表面に、炭素原子、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等による物理的吸着や共有結合により固定され得る。
【0022】
好ましくは、Xがスペーサーユニット(該スペーサーユニットは、―(CH2m−NHCO−(式中、mは2〜10の整数を表す。)を表す。)を表し、Yが−SiR345(式中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、メチル基、第三ブチル基又はフェニル基を表す。)を表す前記シリカゲル粒子が挙げられる。
【0023】
次に、式(1)で表される分子を固定したシリカゲル粒子の製造方法を説明する。
以下のスキーム1に、スペーサーユニットが―(CH2m−NHCO−である式(1)で表される分子を固定したシリカゲル粒子(1−A)の製造方法を示した(尚、式中、R1、Y及びmは前記と同じ意味を表す)。
【化6】

即ち、化合物(3)の一級ヒドロキシ基にカルボニルジイミダゾールを反応させて化合物(4)とし、これにアルキルアミノ基で修飾されたシリカゲル粒子(6)を反応させるか又は式(5)で示される試薬を反応させた後、シリカゲルと反応させることにより、シリカゲル粒子(1−A)を製造することができる。
また、上記の方法を利用することにより、種々のスペーサーユニット、例えば、−(CH2CH2O)j−CH2CH2−、−(CH2CH2O)j−CH2CH2CO−、−(CH2CH2O)j−CCH2CH2SCO−、−(CH2CH2O)j−CH2CH2NHCO−、−(CH2CH2O)j−CO−、−(CH2CH2O)j−CS−、−(CH2k−、−(CH2k−CO−、−(CH2k−OCO−、−(CH2k−SCO−、−(CH2k−NHCO−等(式中、j及びkは前記と同じ意味を表す。)を介して、式(1)で表される分子が、例えば、炭素原子、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等による物理的吸着や共有結合により固定された他の無機粒子又はポリマー樹脂粒子を製造することができる。
【0024】
上記スキーム1で示される化合物(3)の中で、R1が−CO2(CH2l2である化合物(3−A)の製造方法をスキーム2に示した(尚、式中、R2及びlは前記と同じ意味を表し、Y2は、Yとは異なる保護基、例えば、4,4´−ジメトキシトリチル基等を意味し、X2は、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子やメタンスルホニル基、パラトルエンスルホニル基等のスルホニル基等の脱離基を意味する。)。
【化7】

即ち、化合物(9)にイミダゾール化合物(10)を反応させて、基、−CO2(CH2l2を導入して化合物(11)とし、脱保護によりYを除去してジオール(12)とし、その後、一級ヒドロキシ基をY2で保護し、続いて2級ヒドロキシ基をYで保護して化合物(13)とし、Y2のみを選択的に脱保護することにより、化合物(3−A)を製造することができる。
【0025】
スキーム2に示される化合物(9)は、以下のスキーム3で示される方法により製造することができる(尚、式中、Y、Y2及びX2は、前記と同じ意味を表し、Acはアセチル基を表し、Bnはベンジル基を表し、DIADはジイソプロピルアゾジカルボキシラートを意味する。)。
【化8】

即ち、5−ブロモ−2´−デオキシウリジンのジアセテート(16)と2−アミノレゾルシノールを反応させて化合物(17)とし、これに、(2−ヒドロキシエチル)カルバミン酸ベンジルエステルを反応させて化合物(18)とし、これにアンモニアを作用させて環化と同時に脱アセチル化を行って、化合物(19)とし、これに、YX2を反応させてYを導入して化合物(20)とし、化合物(20)を加水素分解条件下CO2Bnを除去することにより、化合物(9)を製造することができる。
【0026】
尚、上記スキーム1で示される化合物(3)の中で、R1が6−アミノ−2−ピリジル基である化合物(3−B)の製造方法をスキーム4に示した(尚、式中、Y、Ac及びDIADは前記と同じ意味を表す。)。
【化9】

即ち、スキーム3に示される化合物(17)を出発物質とし、これに2−ブロモエタノールを反応させて化合物(22)とし、これに2,6−ジアミノピリジンを反応させて化合物(23)とし、これにアンモニアを作用させて環化と同時に脱アセチル化を行って、化合物(24)とし、スキーム2で示される方法により、2級ヒドロキシ基のみがYで保護された化合物(3−B)を製造することができる。
【0027】
スキーム2に示された化合物(3−A)は、以下のスキーム5に示されるように、スキーム3に記載の化合物(19)から製造することもできる(尚、式中、Y、R2、l及びBnは、前記と同じ意味を表す。)。
【化10】
即ち、化合物(19)をスキーム2に記載の方法に従って、化合物(3−a)に導き、続いて加水素分解条件下CO2Bnを除去することにより、化合物(25)とし、これにイミダゾール化合物(10)を反応させて、基、−CO2(CH2l2を導入することにより、化合物(3−A)を製造することができる。
【0028】
前記で製造される式(1)で表される分子を固定したシリカゲル粒子は、プローブ分子をシリカゲル粒子表面上に固定することにより、シリカゲル表面上に微小疎水空間を形成し、それにより、固定されていないプローブ分子では困難であった、水性の検体溶液中の8-oxo-dGの定量検定を可能とするものである。
加えて、プローブ分子をシリカゲル粒子表面上に固定することにより、感度が飛躍的に向上し、例えば、尿中の8-oxo-dGの定量検出が可能となるまで感度を向上させ得ることができる。
そしてこれにより、8-oxo-dGを微量にしか含んでいない検体溶液においても十分な精度で、定量検定が可能となる。
従って、式(1)で表される分子を固定したシリカゲル粒子は、それ自体で定量検定用のデバイスとなり得るものである。
また、式(1)で表される分子を固定したシリカゲル粒子は、分離カラムの充填材として使用することもできる。
上記の式(1)で表される分子を固定したシリカゲル粒子を充填した分離カラムは、8-oxo-dGを溶離することができる溶離液を使用することにより、8-oxo-dGを分離するための分離カラムとして有利に使用することができる。
即ち、上記分離カラムは、8-oxo-dGに対して選択的な親和性を有するシリカゲル粒子を使用するものであるため、検体溶液に含まれる成分の中で8-oxo-dGの保持時間のみを変更することができ、これにより、検体溶液に、8-oxo-dGと同じ保持時間を有する成分や8-oxo-dGと極めて近い保持時間を有する成分が含まれ、8-oxo-dGの定量が困難となる場合であっても、8-oxo-dGの保持時間のみを変更し、それにより8-oxo-dGの正確な定量を行うことができる。
【実施例】
【0029】
製造例1:化合物(16)の製造
【化11】
アルゴン気流下、5-ブロモ-2'-デオキシウリジン (2 g, 6.512 mmol) を無水ピリジン 5 mLに溶解、攪拌。そこに無水酢酸 (1.54 mL, 16.28 mmol) を滴下し、室温にて攪拌。18時間後、反応液を酢酸エチル15 mLにて希釈。これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で清浄。有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧下溶媒留去。残渣にトルエン 5 mLを加え減圧下溶媒留去。得られた粗精製物を酢酸エチル/ヘキサンにて再結晶。化合物(16)を2.37 g、収率93%で得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δppm: 8.46 (1H, s), 7.87 (1H, s), 6.27 (1H, dd,J = 3.6 Hz, 5.9 Hz), 5.22-5.21 (1H, m), 4.41-4.10 (3H, m), 2.56-2.50 (1H, m), 2.18-2.13 (1H,m), 2.16 (3H, s), 2.10 (3H, s).
ESI-MS (m/z): 413.02 (M+Na)+
IR (cm-1): 3013, 2824, 1744, 1710, 1687
m.p.℃: 151.8 - 152.8
【0030】
製造例2:化合物(17)の製造
【化12】
アルゴン気流下、化合物(16)(3.0 g, 7.69 mmol)、トリフェニルホスフィン (3.05 g, 11.6 mmol) を無水アセトニトリルー無水ジクロロメタン (20 mL-5 mL) にて3 回、無水ジクロロメタン (20 mL) で1回共沸。そこに無水四塩化炭素-ジクロロメタン (15 mL-15 mL) を加え加熱還流。2.5 時間後、反応液を室温に戻し、ジアザビシクロウンデセン (2.53 mL, 16.9 mmol)、2−アミノレゾルシノール(1.92 g, 15.4 mmol) を加えて攪拌。反応液を減圧下溶媒留去。残渣にジクロロメタン-ヘキサン (16 mL-16 mL) を加えて室温にて激しく攪拌。そこに5%クエン酸水溶液85 mLを加え、析出物を吸引濾過。ろ取物を水、ジクロロメタン、アセトニトリルにて清浄。化合物(17)を3.1 g、収率81%で得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δppm: 8.01 (1H, s), 6.90 (1H, t, J = 8.1 Hz), 6.35 (2H, d, J = 8.1 Hz), 6.12 (1H, t, J = 6.7 Hz), 5.18-5.17 (1H, m), 4.27-4.20 (1H, t, J = 5.8 Hz), 5.19 (1H, m), 4.37 (3H, m), 2.43-2.32 (2H, m), 2.08 (3H, s), 2.05 (3H, s).
ESI-MS (m/z) : 4.98.04 (M+H)+
IR (cm-1): 3390, 3301
m.p.℃: 249.6 - 250.0
【0031】
製造例3:化合物(18)の製造
【化13】
アルゴン気流下、化合物(17)(2.60 g, 5.21 mmol)、2-ヒドロキシエチルカルバミン酸ベンジルエステル (1.33 g, 6.8 mmol)、トリフェニルホスフィン (2.23 g, 8.5 mmol) を無水アセトニトリル (40 mL) にて3回、無水ジクロロメタン (32 mL) にて共沸。残渣に無水ジクロロメタン (36 mL) を加え氷冷上で攪拌。そこにジイソプロピルアゾジカルボキシレート (4.47 mL, 8.5 mmol) を滴下し、室温に戻し攪拌。21時間後、反応液を水、飽和食塩水で清浄。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧下溶媒留去。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (関東化学60N; 酢酸エチル:クロロホルム=1:2→酢酸エチル) にて精製。化合物(18)を1.39 g、収率39%で得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δppm: 7.92 (1H, s), 7.33 (5H, m), 7.05 (1H, t, J = 8.2 Hz), 6.71 (1H, d, J = 8.4 Hz), 6.42 (1H, t, J = 8.2 Hz), 6.24 (1H, t, J = 7.1 Hz), 5.20 (1H,m), 5.10 (2H, s), 4.36 (2H, m), 4.31 (1H, m), 4.13 (2H, m), 3.66 (2H, m), 2.69 (1H, m) 2.12 (3H, s), 2.09 (4H, m).
ESI-MS (m/z) : 675.68 (M+H)+
IR (cm-1): 3339, 1741, 1671, 1230, 1093
【0032】
製造例4:化合物(19)の製造
【化14】
アルゴン気流下、化合物(18)(1.55 g, 2.29 mmol) に7Mアンモニア-メタノール (80 mL, 3.66 mmol) を加え室温にて攪拌。72時間後、反応液を減圧下溶媒留去。残渣をシリカゲルカラムクロマトグガフィー (関東化学60N; クロロホルム:メタノール=15:1→9:1) にて精製。化合物(19)を650 mg、収率55%で得た。
1H-NMR (400MHz, CD3OD) δppm:7.70 (1H, s), 7.29 (5H, m), 6.81 (1H, t, J = 8.2 Hz), 6.58 (1H, t, J = 7.9 Hz), 6.41 (1H, d, J = 8.2 Hz), 6.41 (1H, d, J = 8.2 Hz), 5.11 (2H, s), 4.37 (1H, m), 4.05 (2H,m), 3.92 (1H, m), 3.81 (1H, dd, J = 3.1 Hz, 12.0 Hz), 3.73 (1H, dd, J = 3.7 Hz, 12.0 Hz), 3.53 (2H, m), 2.33 (1H, m), 2.12 (1H, m).
ESI-MS: 511.29 [M+H]+
IR (cm-1): 3408, 3199, 1722, 1681, 776
m.p. ℃: 131.2 - 132.0
【0033】
製造例5:化合物(26)の製造
【化15】
(式中、TBSは第3ブチルジメチルシリル基を意味する。)
無水ピリジンにて共沸した化合物(19)(655 mg, 1.28 mmol) の無水ピリジン (11.5 mL) の溶液に、アルゴン気流下、ジメトキシトリチルクロライド (652 mg, 1.92 mmol) を加え、室温にて攪拌した。1.5時間後、反応液をCHCl3 (30 mL) にて希釈し、飽和重曹水で清浄、有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下溶媒を留去、得られた粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフイー(関東化学60N;クロロホルム→クロロホルム:メタノール=50:1→メタノール)にて精製した。得られた褐色固体の無水N,N-ジメチルホルムアミド (3.7 mL) 溶液に、イミダゾール (206 mg, 3.023 mmol)、第3(tert-)ブチルジメチルシランクロライド (373 mg, 2.015 mmol)を加え、室温にて攪拌した。3時間後、反応液をクロロホルム (20 mL) にて希釈し、飽和重曹水で清浄、有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥した後、減圧下溶媒を留去、得られた粗精製物に3%トリクロロ酢酸 (30 mL) を加え、室温にて攪拌した。1時間後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (15 mL) にて希釈し、酢酸エチルにて抽出、有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥した。減圧下溶媒留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフイー(関東化学60N;クロロホルム/メタノール=50/1)にて精製し、化合物(26)を540 mg、収率73%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm:7.42 (1H, s), 7.27 (5H, m), 6.77 (1H, t, J = 8 Hz), 6.36 (2H, m), 6.12 (1H,t, J = 6 Hz), 5.08 (2H, m),4.45 (1H, m), 3.97 (2H, m), 3.91 (2H,m), 3.73 (1H, m), 3.56 (1H, Br), 2.30 (2H, m), 0.86 (9H, s), 0.06 (3H, s), 0.05 (3H, s).
ESI-MS:625.3524 [M+H]+
【0034】
製造例6:化合物(27)の製造
【化16】
化合物(26)(100 mg,0.16 mmol) のメタノール溶液 (2 mL) に水酸化パラジウムー炭素 (100 mg), シクロヘキセン (1 mL) を加えて、加熱還流。1.5時間後、反応溶液をろ過して、ろ液を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフイー(関東化学60N;クロロホルム、メタノール:クロロホルム:トリエチルアミン=5:95:1)にて精製。化合物(27)を黄色固体として53 mg、收率68%で得た。
1H-NMR (400MHz, CD3OD) δppm: 7.67 (1H, s), 6.83 (1H, t, J = 8 Hz), 6.61 (1H, d, J = 8 Hz), 6.43 (1H, d J = 8 Hz, ), 6.20 (1H, t, J = 6 Hz), 4.49 (1H, m), 4.07 (2H, t, J = 5 Hz ), 3.90 (1H, m), 3.79 (1H, dd, J = 3 Hz, 12 Hz), 3.70 (1H, dd, J = 3 Hz, 12 Hz), 3.09 (2H, t, J = 5 Hz), 2.28 (1H, m), 2.13 (1H, m), 0.92 (9H, s), 0.12 (6H, s).
IR vmax (film): 3275, 1672, 1563, 1261.
ESI-MS (m/z): 491.2 (M+H)+ .
Yellow carame
【0035】
製造例7:化合物(28)の製造
【化17】
化合物(27)(50 mg, 0.10 mmol) の無水ピリジン (2 mL) 溶液に、氷浴下にてクロロトリメチルシラン(33 μL, 0.26 mmol)を滴下し、室温にて攪拌した。30分後、1H−イミダゾール−1−カルボン酸2−(2−ナフチル)エチルエステル(100 mg) を加え、引き続き室温にて攪拌した。21時間後、28%アンモニア水を加え、反応を止め、クロロホルムにて抽出、有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を減圧下留去した。得られた粗精製物をシリカゲルクロマトグラフイー(関東化学60N;クロロホルム:メタノール=50:1)にて精製し、化合物(28)を29 mg、収率43%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ(ppm): 8.07 (1H, d, J = 8 Hz, ), 7.89 (1H, s), 7.79 (1H, d, J = 8 Hz), 7.67 (1H, m ), 7.45 (2H, m), 7.33 (2H,m ), 7.15 (1H, Br ), 6.89 (1H, t, J = 8 Hz), 6.46 (1H, d J = 9 Hz), 6.33 (1H, d, J = 8 Hz), 6.17 (1H, t, J = 6 Hz), 4.50 (1H, m), 4.38 (2H, t ,J = 7 Hz), 3.96 (4H, m), 3.79 (1H,m), 3.61 (2H, m), 3.41 (2H, t, J = 8 Hz), 2.35 (1H, m), 2.18 (1H,m), 0.88 (9H, s), 0.07 (6H, s)
IR vmax (film): 3275, 1709, 1473, 1087.
ESI-MS (m/z): 689.3 (M+H)+ .
【0036】
製造例8:化合物(29)の製造
【化18】
化合物(27)(50 mg, 0.10 mmol) の無水ピリジン (2 mL) 溶液に、氷浴下にてクロロトリメチルシラン(33 μL, 0.26 mmol)を滴下し、室温にて攪拌した。30分後、1H−イミダゾール−1−カルボン酸2−(1−ピレニル)エチルエステル(100 mg) を加え、引き続き室温にて攪拌した。21時間後、28%アンモニア水を加え、反応を止め、クロロホルムにて抽出、有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を減圧下留去した。得られた粗精製物をシリカゲルクロマトグラフイー(関東化学60N;クロロホルム:メタノール=50:1)にて精製し、化合物(29)を18 mg、収率24%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ(ppm): 824 (1H, d J = 9 Hz, ), 7.96 (8H, m), 7.54 (1H,s), 6.77 (1H, Br ), 6.61 (1H, m), 6.20 (1H, d J = 8 Hz, ), 6.13 (1H, d, J = 9 Hz ), 6.07 (1H, m), 4.50 (3H, m), 3.92 (2H, m), 3.79 (3H, m), 3.63 (2H, m), 3.53 (2H, m), 2.24 (1H, m), 2.17 (1H, m), 0.87 (9H, s), 0.07 (6H, s).
IR vmax (film): 3230, 1710, 1473, 1088.
ESI-MS (m/z): 763.4 (M+H)+ .
【0037】
製造例9:化合物(30)の製造
【化19】
アルゴン気流下、化合物(26)(35 mg, 0.06 mmol) の無水ジクロロメタン (1 mL) 溶液に、室温にて、N,N'-カルボニルジイミダゾール (18 mg, 0.11 mmol) を加え、攪拌した。2.5時間後、反応液を減圧下溶媒留去。化合物(30)を39 mg、収率98%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ(ppm): 8.19 (1H, s), 7.44 (1H, s), 7.28 (1H, s), 7.08 (1H, s), 6.78 (1H, t, J = 7.9 Hz ), 6.44 (1H,d, J = 7.9 Hz), 6.40 (1H, d, J = 7.9 Hz), 6.14 (1H, t, J = 6.1Hz), 5.92 (1H, Br), 5.08 (2H, s), 4.67 (1H,dd, J = 3.1 Hz, 12.5 Hz ), 4.57 (1H, dd, J = 11.6 Hz), 4.33 (1H, m), 4.11 (1H, m), 4.04 (2H,m), 3.58 (2H, m), 2.42 (1H, m), 2.23 (1H, m), 0.87 (9H, s), 0.06 (6H,s).
ESI-MS (m/z): 719.40 (M+H)+ .
【0038】
製造例10:化合物(31)の製造
【化20】
アルゴン気流下、化合物(28)(29 mg, 0.04 mmol) の無水ジクロロメタン (3 mL) 溶液に、室温にて、N,N'-カルボニルジイミダゾール (14 mg, 0.08 mmol) を加え、攪拌した。2.5時間後、反応液を減圧下溶媒留去。化合物(31)を32 mg、収率91%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ(ppm): 9.21 (1H, Br), 8.19 (1H, s), 8.00 (1H, d, J = 8 Hz, ), 7.79 (1H, m), 7.67 (1H, m ), 7.41 (7H, m), 6.78 (1H, t, J = 8 Hz), 6.40 (1H, t, J = 9 Hz), 6.29 (1H, m), 6.15 (1H,m), 4.66 (1H, dd, J = 12 Hz), 4.57 (1H, m), 4.39 (1H, m), 4.31 (2H, m), 4.12 (1H,m), 3.97 (1H, m), 3.53 (2H, m), 3.37 (1H, m), 3.31 (2H, t, J = 7 Hz),2.42 (1H,m), 2.22 (1H,m), 0.86 (9H, s), 0.05 (6H, s).
ESI-MS (m/z): 783.40 (M+H)+ .
【0039】
製造例11:化合物(32)の製造
【化21】
アルゴン気流下、化合物(29)(25 mg, 0.03 mmol) の無水ジクロロメタン (3 mL) 溶液に、室温にて、N,N'-カルボニルジイミダゾール (11 mg, 0.06 mmol) を加え、攪拌した。2.5時間後、反応液を減圧下溶媒留去。化合物(32)を28 mg、収率96%で得た。
【0040】
実施例1:シリカゲル粒子(33)(平均粒径10μm)の製造
【化22】
化合物(30)(0.04 mmol)の無水ジクロロメタン (1 mL) 溶液にアミノ処理シリカゲル NH SMB 100−10(冨士シリシア化学株式会社製:平均粒子径:9.2 μm, 細孔容積:0.57 mL/g, 炭素含有量:4.0 wt.%) (100 mg)、イミダゾール (11 mg, 0.16 mmol) を加え、室温にて振盪 (300 rpm) した。3日後、濾過によって分離し、クロロホルム、メタノールにて十分に洗浄することにより、表題のシリカゲル粒子(33)を得た。
【0041】
実施例2:シリカゲル粒子(34)(平均粒径10μm)の製造
【化23】
化合物(31)(0.04 mmol)の無水ジクロロメタン (1 mL) 溶液にアミノ処理シリカゲル NH SMB 100−10(冨士シリシア化学株式会社製:平均粒子径:9.2 μm, 細孔容積:0.57 mL/g, 炭素含有量:4.0 wt.%) (100 mg)、イミダゾール (11 mg, 0.16 mmol) を加え、室温にて振盪 (300 rpm) した。3日後、濾過によって分離し、クロロホルム、メタノールにて十分に洗浄することにより、表題のシリカゲル粒子(34)を得た。
【0042】
実施例3:シリカゲル粒子(35)(平均粒径10μm)の製造
【化24】
化合物(32)(0.04 mmol)の無水ジクロロメタン (1 mL) 溶液にアミノ処理シリカゲル NH SMB 100−10(冨士シリシア化学株式会社製:平均粒子径:9.2 μm, 細孔容積:0.57 mL/g, 炭素含有量:4.0 wt.%) (100 mg)、イミダゾール (11 mg, 0.16 mmol) を加え、室温にて振盪 (300 rpm) した。3日後、濾過によって分離し、クロロホルム、メタノールにて十分に洗浄することにより、表題のシリカゲル粒子(35)を得た。
【0043】
製造例12:化合物(36)の製造
【化25】
化合物(30)(28 mg, 0.04 mmol) の無水THF (2 mL) 溶液に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン (50μL, 0.24 mmol) を加え、室温にて攪拌した。18時間後、減圧下溶媒留去、残渣をシリカゲルクロマトグラフイー(FL-60D;ジクロロメタン)にて精製し、化合物(36)を15 mg、収率43%で得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm): 7.29 (6H, m), 6.76 (1H, t, J = 7.9, 8.2 Hz), 6.44 (1H, d, J = 7.9 Hz), 6.39 (1H, d, J = 8.5 Hz), 6.19 (1H, m) 5.79 (1H, Br), 5.19 (1H, Br), 5.10 (2H, s), 4.25 (3H, m), 3.78 (6H, q, J = 7.0 Hz), 3.58 (2H, m), 3.20 (2H, m), 2.39 (1H, m), 2.12 (1H, m), 1.19 (9H, t, J = 7.0 Hz), 0.95 (2H, m), 0.86 (9H, s), 0.62 (2H, m), 0.04 (6H, s).
ESI-MS(m/z):827.7957(M+H)+
IR(cm-1): 3326, 2930, 1698, 1474, 1102
【0044】
製造例13:化合物(37)の製造
【化26】
化合物(31)(30 mg, 0.04 mmol) の無水THF (1 mL) 溶液に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン (30μL, 0.14 mmol) を加え、室温にて攪拌した。18時間後、減圧下溶媒留去、残渣をシリカゲルクロマトグラフイー(FL-60D;ジクロロメタン)にて精製し、化合物(37)を14 mg、収率38%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 9.28 (1H, s), 8.00 (1H, d, J = 8 Hz, ), 7.80 (1H, m), 7.69 (1H, m ),7.39 (5H, m), 6.78 (1H, m), 6.40 (2H,m), 6.16 (1H, m), 4.45 (1H,m), 4.26 (4H, m), 4.01 (2H, m), 3.79 (6H, m), 3.58 (1H, m), 3.43 (2H,m), 3.34 (2H, m), 3.21 (2H, m), 2.41 (1H, m), 1.97 (1H, m),1.63 (2H,m), 1.18 (9H,m), 0.87 (9H, s), 0.62 (2H, s), 0.06 (3H, s).
IR vmax (film): 3320, 1704, 1473, 1102.
ESI-MS (m/z): 937.34 (M+H)+ .
【0045】
製造例14:化合物(38)の製造
【化27】
化合物(32)(40 mg, 0.05 mmol) の無水THF (1.5 mL) 溶液に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン (40μL, 0.19 mmol) を加え、室温にて攪拌した。24時間後、減圧下溶媒留去、残渣をシリカゲルクロマトグラフイー(FL-60D;ジクロロメタン)にて精製し、化合物(38)を18 mg、収率36%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 8.10 (9H, m), 7.50 (1H,s ), 6.73 (1H, m), 6.32 (2H, m ), 6.14 (1H, t, J = 5.8 Hz), 4.43 (1H, m), 4.30 (2H,m), 4.25 (2H, m), 4.03 (1H,m), 4.30 (2H, m), 4.25 (2H, m), 4.03 (1H, m), 3.92 (2H, m), 3.78 (6H,m), 3.57 (2H, m), 3.49 (2H, m), 3.21 (2H, m), 2.34 (1H, m), 2.00 (1H,m), 1.64 (2H,m), 1.21 (9H,m), 0.87 (9H, s), 0.61 (2H, s), 0.05 (6H, s).
IR vmax (film): 3132, 1704, 1473, 1063.
ESI-MS (m/z): 1011.53 (M+H)+ .
【0046】
実施例4:シリカゲル粒子(39)(平均粒径100nm)の製造
【化28】
マイクロシリカ (Hydro 2000G, 平均粒子径:0.1μm, Elkem Materials社製) 100 mgの精製水 (5 mL), エタノール (5 mL), 酢酸 (5 mL) の懸濁液に化合物(36)(0.01 mmol) を加え、80℃にて還流した。36時間後、減圧下エタノールを留去、酢酸溶液を飽和炭酸水素ナトリウムにて中和した。濾過によって分離し、精製水、アセトンにて十分に洗浄することにより、表題のシリカゲル粒子(39)を得た。
【0047】
実施例5:シリカゲル粒子(40)(平均粒径100nm)の製造
【化29】
マイクロシリカ (Hydro 2000G, 平均粒子径:0.1μm, Elkem Materials社製) 100 mgの精製水 (5 mL), エタノール (5 mL), 酢酸 (5 mL) の懸濁液に化合物(37)(0.01 mmol) を加え、80℃にて還流した。36時間後、減圧下エタノールを留去、酢酸溶液を飽和炭酸水素ナトリウムにて中和した。濾過によって分離し、精製水、アセトンにて十分に洗浄することにより、表題のシリカゲル粒子(40)を得た。
【0048】
実施例6:シリカゲル粒子(41)(平均粒径100nm)の製造
【化30】
マイクロシリカ (Hydro 2000G, 平均粒子径:0.1μm, Elkem Materials社製) 100 mgの精製水 (5 mL), エタノール (5 mL), 酢酸 (5 mL) の懸濁液に化合物(38)(0.01 mmol) を加え、80℃にて還流した。36時間後、減圧下エタノールを留去、酢酸溶液を飽和炭酸水素ナトリウムにて中和した。濾過によって分離し、精製水、アセトンにて十分に洗浄することにより、表題のシリカゲル粒子(41)を得た。
【0049】
試験例1:元素分析
シリカゲル粒子(33)〜(35)及び(39)〜(41)を元素分析に付し、得られた窒素含有%から、各粒子に含まれるプローブ分子の含有量を算出し、表1に纏めた。
【表1】
表1から明らかなように、シリカゲル粒子(35)〜(37)及び(39)〜(41)には、何れもプローブ分子が含有されていることが判った。
【0050】
試験例2:蛍光顕微鏡による観察
25μMの8-oxo-dG水溶液2μLをシリカゲル粒子(33)〜(35)に添加し、室温にて水を蒸発させた試料及び25μMのdG水溶液2μLをシリカゲル粒子(33)〜(35)に添加し、室温にて水を蒸発させた試料において蛍光反応性がどのように変化するかを、蛍光顕微鏡を用いて観察した。
尚、励起波長345nm、蛍光波長455nmで測定した。
観察の結果得られた写真を図3に示した。
写真から明らかなように、8-oxo-dG水溶液を添加した試料は、何れも、対照(水)と比較して明らかな蛍光消光が観察されたのに対して、dG水溶液を添加した試料では、このような蛍光消光は観察されなかった。
【0051】
試験例3:8-oxo-dG認識能の評価
上記で製造したシリカゲル粒子(33)〜(35)における8-oxo-dGの認識能の評価を以下の操作で行った。
測定プレートはボリスチレン製のブラックプレートを用いた。近紫外落射光源 (365 nm)、Y515フィルタ (Y515-Di) を用いて評価した。測定に用いた核酸塩基(8-oxoG、G)の10 mMの精製水溶液を調整し、これを希釈して5 mMのストック溶液を準備し、各シリカゲル粒子上にμL単位で添加していった。自然乾燥後、冨士フィルム株式会社製の冷却CCDカメラシステム LAS4000を用いてシリカゲル粒子の蛍光強度を測定した。
検出手法…Fluorescence DAPI、光源…UV (365 nm EPI)、フィルタ…Y515-Di、感度…Standard、露出タイプ…Precision、露光時間…AUTO、トレイ位置…NO.1
シリカゲル粒子(33)における8-oxo-dG及びdGの濃度に対する蛍光相対強度のグラフを図4の左に示し、この際の8-oxo-dG濃度に対する消光率をhillプロットに変換したグラフを図4の右に示し、シリカゲル粒子(34)における8-oxo-dG及びdGの濃度に対する蛍光相対強度のグラフを図5の左に示し、この際の8-oxo-dG濃度に対する消光率をhillプロットに変換したグラフを図5の右に示し、シリカゲル粒子(35)における8-oxo-dG及びdGの濃度に対する蛍光相対強度のグラフを図6の左に示し、この際の8-oxo-dG濃度に対する消光率をhillプロットに変換したグラフを図6の右に示した。
図10〜12の左図から、シリカゲル粒子(33)〜(35)は、何れも8-oxo-dGの濃度が高くなるに従って、蛍光強度が減少し、一方、dGの濃度は、蛍光強度に殆ど影響しないことが判った。
また、シリカゲル粒子(33)〜(35)における8-oxo-dG濃度対蛍光消光率のhillプロットを示す図4〜6の右図は、何れも良好な直線性を示しており、8-oxo-dGに対して濃度依存的に蛍光消光することが実証された。
また、このことからグラフにおける8-oxo-dGの最低濃度である25nM以上であれば定量検定できることが判り、そのため、シリカゲル粒子(33)〜(35)は、一般に、8-oxo-dGの濃度が10−20ng/mL(35−70nM)程度と報告されている尿の定量検定においても十分に使用可能であることが判った。
【0052】
試験例4:8-oxo-dGとdGの競合試験
上記で製造したシリカゲル粒子(33)〜(35)に、2.5pmolの8-oxo-dGと種々の異なる濃度(0、2.5、5、12、5、25、50、125、250pmol)のdGの両方を添加して、その際の蛍光強度を測定し、8-oxo-dGによる蛍光消光に対するdGの影響を評価した。
結果として得られたグラフを図7に示した。
図7から明らかなように、シリカゲル粒子(33)〜(35)における、8-oxo-dGによる蛍光消光は、dGの影響を殆ど受けないことが判った。
このことから、シリカゲル粒子(33)〜(35)は、8-oxo-dGとdGの両方を含む水性の検体溶液から、dGの濃度に殆ど影響されることなく、8-oxo-dGを高感度で定量検定し得ることが明らかとなった。
【0053】
試験例5:マルチプレートリーダーを使った濃度依存的な輝度減衰率の確認試験
1)実験操作
平均粒径10μmであるシリカゲル粒子(33)40ngの水性懸濁液4μLを、384ウェルタイプのマイクロプレート(コーニング社製)の各ウェルに添加した。
その後、50℃の乾熱オーブン(EYELA NDO-601SD)内に2時間静置し、水分を蒸散させることでシリカゲル粒子をウェル表面に乾着させた。
次に、水性の検体溶液(8-oxo-dGの標準品(和光純薬)の水溶液)2μL(8-oxo-dG濃度:0ng/mL、1ng/mL、2ng/mL、4ng/mL、20ng/mL、100ng/mL、500ng/mL、各濃度4ウェル)を添加し、50℃の乾熱オーブン内に静置した。
検体溶液添加前の光学濃度(OD)の平均値(N=4)を基準として、添加後30分、1時間、2時間、3時間、4時間におけるODの平均値(N=4)から各時間の輝度の減衰率を導きだした。
2)測定条件
装置: マイクロプレートリーダー MTP-880 Lab (コロナ電気株式会社)
励起波長:365nm
測定波長:450nm
フラッシュ回数:100
測定感度: x1
ミキシング: 5秒、直線
8-oxo-dG濃度0〜500ng/mLでの各時間における測定結果のグラフを図8に示し、8-oxo-dG濃度0〜20ng/mLでの各時間における測定結果のグラフを図9に示した。
また、平均粒径10μmであるシリカゲル粒子(33)40ngの水性懸濁液4μLに代えて平均粒径100nmであるシリカゲル粒子(39)160ngの水性懸濁液4μLを用いた以外は上記と同様の操作を行い、その際の、8-oxo-dG濃度0〜500ng/mLでの各時間における測定結果のグラフを図10に示し、8-oxo-dG濃度0〜20ng/mLでの各時間における測定結果のグラフを図11に示した。
3)結果
平均粒径10μmであるシリカゲル粒子(33)を用いた場合、検体溶液添加後1時間で、8-oxo-dG濃度0〜500ng/mLにおいて、また、8-oxo-dG濃度0〜20ng/mLにおいても、輝度の減衰率と相関する(8-oxo-dG濃度が高くなるほどOD値が減少する)ことが判った(図8及び図9参照)。
このように、検体溶液添加後1時間でのOD値を測定することにより、例えば、8-oxo-dG濃度0〜20ng/mLという非常に低濃度の検体溶液においても、正確に8-oxo-dGを定量検出できることが判った。
平均粒径100nmであるシリカゲル粒子(39)を用いた場合、8-oxo-dG濃度100〜500ng/mLにおいては、輝度の減衰率と相関する(8-oxo-dG濃度が高くなるほどOD値が減少する)ことが判った(検体溶液添加後30分〜4時間)ものの、8-oxo-dG濃度20〜500ng/mLにおいては、輝度の減衰率と相関するというデータは得られなかった(図10及び図11参照)。
しかし、8-oxo-dG濃度0〜20ng/mLにおけるOD値の変化を示す図11から、1〜4ng/mLという低濃度においてそれぞれ異なる時間に発光する(OD値が100%を超える)という現象が観察され、即ち、1ng/mLでは1時間後に発光し、2ng/mLでは2時間後に発光し、4ng/mLでは、3時間後に発光するという現象が観察された。
従って、例えば、1〜4ng/mLという非常に低い濃度の検体溶液においても、発光時間を測定することにより、非常に高い感度で8-oxo-dGを定量検出できる可能性が示唆された。
4)まとめ
8-oxo-dGの認識分子を担持したシリカゲル粒子の輝度減衰は、標準8-oxo-dGの濃度と乾燥時間に依存して合理的に変化した。また、平均粒径が10μmであるシリカゲル粒子よりも平均粒径が100nmであるシリカゲル粒子の方が、高感度の測定に適する可能性が示唆された。
【0054】
試験例6:HPLC用分離カラムとしての実用性(8-oxo-dGの保持能の検討)
1)実験操作
HPLCのプレカラムに平均粒径10μmであるシリカゲル粒子(33)10mgを装填し、HPLCにて8-oxo-dGの分離同定をした。
2)測定条件
機器: HTEC-500(エイコム社)(8-oxo-dGは電気化学的に検出)
ODSカラム: CA-5ODS, 2.1φ x 150mm
プレカラム: 分離用の ODS粒子(5μm)100mgに加え、シリカゲル粒子(33)10mgを充填
移動相: リン酸緩衝液(pH6.5-6.8)、メタノール 2%、SDS 90mg/L
試薬: 8-oxo-dG(和光純薬)、500ng/mLの10μLを注入
3)結果
8-oxo-dGの保持時間は、プレカラムにシリカゲル粒子(33)を使用しない場合には28.09分であったものが、プレカラムにシリカゲル粒子(33)を充填した場合には29.00分となり、3.2%遅延される(遅延率:3.2%)ことが判った。
また、8-oxo-dGのピーク値は、プレカラムにシリカゲル粒子(33)を使用しない場合には43.96mVであり、プレカラムにシリカゲル粒子(33)を使用した場合にも44.22mVであり、ピーク減衰は観察されなかった。
4)まとめ
8-oxo-dGの認識分子を化学的に担持させたシリカゲル粒子(33)をHPLCの流路中に配置することで、8-oxo-dGのピーク出現は遅延するが、ピーク値の減衰はなかった。HPLC+ECD(電気化学検出)で8-oxo-dGを検出する場合、移動相として今回使用したようなメタノール添加のリン酸緩衝液が一般的であるが、シリカゲル粒子(33)は、同緩衝液中の8-oxo-dGに対しても一定の親和性を示し、分離カラム用の充填剤としての有用性が示された。
【符号の説明】
【0055】
1:微粒子表面
2:8-oxo-dGに対して特異的な蛍光応答を示す蛍光プローブ分子
3:スペーサーユニット
4:8-oxo-dG
5:dG
6:微小疎水空間
7:水相
11:水性の検体溶液
16:8-oxo-dGに対して特異的な蛍光応答を示す蛍光プローブ分子が固定された微粒子
17:カラム
図1
図2
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図3