(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
建設機械、例えば油圧ショベル等の建設機械は、走行モータによって走行可能な走行体と、走行体上に配置された旋回体と、旋回体に取り付けられて土砂の掘削作業等を行う作業装置とを備え、旋回体上には、作業装置の取付部を挟んで幅方向一側に位置して運転室を有し、運転室の背後側に位置して走行モータや作業装置に圧油を供給する油圧ポンプと当該油圧ポンプを作動させるためのエンジンとを有して構成されている。建設機械に搭載されるエンジンとしてはディーゼルエンジンが一般的である。
ところで、近年、ディーゼルエンジンから排出される排ガス中のNOx(窒素酸化物)を低減し、排ガスを浄化するシステムとして尿素SCRシステムが知られており、この尿素SCRシステムは、建設機械に搭載されたディーゼルエンジンにも適用されつつある。
【0003】
尿素SCRシステムは、還元剤として尿素水を利用して排ガス中のNOxを選択的に還元するNOx選択還元触媒システムであり、NOx選択還元触媒装置の排気上流側に尿素水を噴射する尿素水噴射弁、尿素水を貯蔵するための尿素水タンク、及び、尿素水タンクと尿素水噴射弁とを繋ぐ尿素水供給配管に介装されて尿素水を尿素水噴射弁へ圧送する供給ポンプを備えた尿素水供給装置を有している。
【0004】
このような構成の尿素SCRシステムでは、一般に、尿素水タンク(還元剤タンク)は、主として過熱防止や尿素水の補給作業の容易化のため、旋回体上のエンジンから離れた位置、例えば作業装置の取付部を挟んで運転席と反対側の位置に配設されている(特許文献1、2参照)。
一方、寒冷地等では冬季に尿素水供給配管内を流れる尿素水が凍結することを防止或いは凍結した尿素水を解凍するため、エンジンの冷却水の熱で尿素水を加温可能なよう、エンジンの冷却水を循環させる冷却水配管を尿素水供給配管に沿わせることが行われている。
【0005】
しかしながら、尿素水供給配管及び冷却水配管はコネクタを介して尿素水タンクや尿素水供給装置に接続されており、このコネクタ部分では尿素水供給配管に冷却水配管を沿わせることができず、尿素水がコネクタ部分で凍結し易いという問題がある。
そこで、例えば尿素水タンクのコネクタ部分を覆う保温カバーを設け、エンジンの冷却水の熱で加温された保温カバー内の空気を介して尿素水供給配管のコネクタ部分の温度低下を防止することが考えられている(特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示の尿素SCRシステムの場合、尿素水噴射弁はエンジン上方に位置しているのに対し、尿素水供給装置(還元剤ポンプ)は、尿素水タンク上に載置されている。
このように、尿素水供給装置が尿素水タンク上に載置されていると、尿素水供給装置から尿素水噴射弁までの配管の距離が長く、建設機械が前後方向で傾斜したとき、尿素水供給装置と尿素水噴射弁との高低差が大きく変化し、尿素水噴射弁に対する尿素水供給装置の吐出圧が大きく変動しかねず、安定して尿素水を噴射できないという問題がある。
また、上記特許文献2に開示の尿素SCRシステムの場合、尿素水噴射弁(還元剤投与装置)の配設側と尿素水供給装置(還元剤供給装置)の配設側とが建設機械の幅方向で反対側になっており、さらに尿素水タンクの配設側と尿素水供給装置の配設側とが建設機械の幅方向で反対側になっている。
【0008】
このように尿素水タンクと尿素水供給装置と尿素水噴射弁とが建設機械の幅方向で反対側に配設されていると、尿素水供給装置から尿素水噴射弁までの配管の距離が長くなり、さらに尿素水タンクから尿素水供給装置までの配管の距離も長くなり、建設機械が幅方向で傾斜したとき、尿素水供給装置と尿素水噴射弁との高低差、さらには尿素水タンクと尿素水供給装置との高低差が大きく変化し、尿素水噴射弁に対する尿素水供給装置の吐出圧や尿素水供給装置の尿素水の吸い上げ性が大きく変動しかねず、やはり安定して尿素水を噴射できないという問題がある。
【0009】
さらに、この場合、尿素水供給装置を旋回体の側部に配設することになるが、防水性及び排水性向上等のため、尿素水供給装置を旋回体に浮かせた状態で取り付けるようにするのが一般的であり、尿素水供給装置の配設のために別途取付ブラケットを設けなければならず、設置性の観点から好ましいことではない。
そして、尿素水供給装置は、定期的にメンテナンスが必要であり、メンテナンス作業性を考慮して旋回体上に配設されるのが望ましい。
【0010】
また、特許文献3では、尿素水タンクのコネクタ部分に保温カバーを設けるようにしているが、尿素水供給装置における尿素水供給配管及び冷却水配管のコネクタについても、同様に保温カバーを設けることで尿素水供給配管のコネクタ部分の温度低下を防止可能と考えられる。
しかしながら、尿素水供給装置に保温カバーを設ける場合、上記メンテナンス作業性と同様に保温カバーを着脱作業容易に如何に尿素水供給装置を旋回体上に配設し、また、如何に効率よく保温カバーを尿素水供給装置に取り付けるかが課題となる。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、尿素水噴射弁から常に安定して尿素水を噴射可能にして効率よく配設され、さらに、尿素水供給装置の尿素水供給配管のコネクタ部分の保温を行う保温カバーを効率よく取り付け可能に図った建設機械の尿素水供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る建設機械の尿素水供給システムは、旋回体上に載置された駆動源としてのエンジンと、前記エンジンの上方にて前記エンジンの排気通路に介装されたNOx選択還元触媒装置と、前記NOx選択還元触媒の排気上流に尿素水を噴射する尿素水噴射弁と、前記尿素水を貯蔵する尿素水タンクと、一端が前記尿素水噴射弁に接続され、他端が前記尿素水タンクに接続された尿素水供給配管と、前記尿素水供給配管に介装され、尿素水を前記尿素水噴射弁に圧送する尿素水供給装置とを備え、前記尿素水タンクは、前記旋回体の中心よりも前部側にて前記旋回体に載置され、前記エンジンは、前記旋回体の中心よりも後部側にて前記旋回体に載置され、前記旋回体には、幅方向中央を前後方向に延びて前記旋回体を補強し且つ作業装置を連結する一対の主フレーム部材が、該一対の主フレーム部材間に前記エンジンを後部側に臨む位置に連結フレーム部材を挟んで設けられており、前記尿素水供給装置は、前記連結フレーム部材に前記エンジンに対面するよう配設されてなる。
【0013】
また、請求項2に係る建設機械の尿素水供給システムでは、請求項1において、前記旋回体の前記エンジンの下方部分には、少なくとも前記エンジンを整備可能に開口部が設けられている。
また、請求項3に係る建設機械の尿素水供給システムでは、請求項1または2において、前記連結フレーム部材は、前記一対の主フレーム部材間に前記旋回体に対し垂直となるよう渡されたプレート部材であり、前記尿素水供給装置は、前記プレート部材の前記エンジンに対面する面に取り付けられている。
【0014】
また、請求項4に係る建設機械の尿素水供給システムでは、請求項3において、前記尿素水供給配管には、該尿素水供給配管に沿い前記エンジンの冷却水を流通させる冷却水配管が延び、前記尿素水供給配管と前記冷却水配管は、前記尿素水供給装置内を尿素水及び冷却水が流れるよう、前記尿素水供給装置のうち前記プレート部材の面に対し垂直をなす外面にそれぞれ接続され
る接続部を有し、前記尿素水供給配管
の接続部及び前記冷却水配管の接続部を含んで前記尿素水供給装置の前記外面と前記プレート部材の面の一部を覆
って前記接続部を保温する保温カバーを備える。
また、請求項5に係る建設機械の尿素水供給システムでは、請求項4において、前記プレート部材の面の一部及び前記保温カバーの前記尿素水供給装置側の面には、保温部材が設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る建設機械の尿素水供給システムによれば、エンジンから排出される排ガス中のNOxの浄化を行うべく尿素水噴射弁と尿素水タンクと尿素水供給配管と尿素水供給装置とで尿素水供給システムが構成され、建設機械の旋回体には、幅方向中央を前後方向に延びて旋回体を補強し且つ作業装置を連結する一対の主フレーム部材間に位置してエンジンを後部側に臨むように連結フレーム部材が設けられており、尿素水タンクは旋回体の中心よりも前部側にて旋回体に載置され、エンジンは旋回体の中心よりも後部側にて旋回体に載置され、尿素水供給装置は連結フレーム部材にエンジンに対面するよう配設されている。
即ち、尿素水供給装置は、エンジンの近傍に、尿素水タンクからの距離が遠くなり過ぎることがなく且つ尿素水噴射弁までの距離も遠くなり過ぎることがないようにしつつ、既存の連結フレームを利用して旋回体上のエンジンに対面する位置に配設される。
【0016】
従って、建設機械が前後方向で前方を下げて大きく傾斜した場合であっても、尿素水タンクから尿素水供給装置までの垂直方向の距離の変化を小さく抑え、尿素水供給装置の尿素水タンクからの尿素水の吸い上げ性を変動少なく良好に確保するようにでき、同様に、尿素水供給装置から尿素水噴射弁までの垂直方向の距離の変化も小さく抑え、尿素水噴射弁に対する尿素水供給装置の尿素水の吐出圧をも変動少なく良好に確保するようにできる。
この際、尿素水供給装置は、既存の連結フレームに設けられているので、別途取付ブラケットを設けることなく、連結フレームを有効に利用して尿素水供給装置を配設することができる。
また、尿素水供給装置は、エンジンに臨んで設けられているので、エンジンの熱で良好に加温され、冬季であっても尿素水供給装置内を流れる尿素水の凍結を防止できるとともに凍結した尿素水の解凍を促進することができる。
【0017】
請求項2に係る建設機械の尿素水供給システムによれば、旋回体のエンジンの下方部分に少なくともエンジンを整備可能に設けられた開口部を利用して、尿素水供給装置を容易に整備可能である。
請求項3に係る建設機械の尿素水供給システムによれば、連結フレーム部材は一対の主フレーム部材間に旋回体に対し垂直となるよう渡されたプレート部材であるので、連結フレーム部材のエンジンに対面する面に尿素水供給装置を容易に取り付けることができる。
【0018】
請求項4に係る建設機械の尿素水供給システムによれば、尿素水供給配管にはエンジンの冷却水を流通させる冷却水配管が沿わせられ、尿素水供給配管と冷却水配管は尿素水供給装置のうち上記プレート部材の面に対し垂直をなす外面にそれぞれ接続され
る接続部を有しており、尿素水供給配管
の接続部及び冷却水配管の接続部を含んで尿素水供給装置の外面とプレート部材の面の一部を覆うようにして保温カバーが設けられている。
従って、保温カバーの内部の空気が保温カバーで保温されるが、保温カバーは尿素水供給装置の外面とプレート部材の面の一部を覆うように構成されているので、プレート部材からなる既存の連結フレームを効率よく利用して保温カバーを簡素に構成することができる。
これにより、保温カバーを容易に着脱可能となり、尿素水供給装置の整備を容易に行うことができる。
【0019】
請求項5に係る建設機械の尿素水供給システムによれば、上記プレート部材の面の一部及び保温カバーの尿素水供給装置側の面には保温部材が設けられているので、保温カバーの内部の空気を良好に保温することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る建設機械の尿素水供給システムの一実施形態について図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る尿素水供給システムを備えた建設機械を示している。本実施形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベルを例に挙げて説明する。
図1に示すように、油圧ショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置され、主として旋回フレーム3からなる旋回体2と、この旋回体2に取り付けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置4とを備えて構成されている。
【0022】
作業装置4は、旋回フレーム3に上下方向で回動可能に取り付けられるブーム5と、このブーム5の先端に上下方向で回動可能に取り付けられるアーム6と、さらにこのアーム6の先端に上下方向で回動可能に取り付けられるバケット7とを含んで構成されている。この作業装置4には、ブーム5を駆動するブームシリンダ5a、アーム6を駆動するアームシリンダ6a、およびバケット7を駆動するバケットシリンダ7aが含まれている。
【0023】
旋回フレーム3上には、前側位置にオペレータが油圧ショベルの運転操作を行うための運転室8が設けられており、後側位置には重量バランスを確保するカウンタウエイト2aが設けられている。また、運転室8とカウンタウエイト2aの間には機械室9が設けられている。
【0024】
機械室9内には、圧油を供給する油圧ポンプ(図示せず)や油圧ポンプを駆動するための駆動源であるエンジン10が設置されている。油圧ポンプより吐出された圧油は、走行体1に設けられた走行モータや旋回体2に設けられた旋回モータ(ともに図示せず)へ供給され、これにより走行体1による油圧ショベルの自走が可能であり、旋回体2が作業装置4とともに旋回軸周りで旋回可能である。また、圧油の一部は作業装置4に設けられたブームシリンダ5a、アームシリンダ6a、バケットシリンダ7aへも供給され、これにより圧油の供給度合い、即ち油圧に応じてブーム5、アーム6、バケット7がそれぞれ駆動される。
【0025】
エンジン10は、例えばディーゼルエンジンであり、排気通路にはマフラー12が接続されている。また、ディーゼルエンジンは一般に排ガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)の量が多いことから、ディーゼルエンジンの排気通路には、マフラー12よりも排気上流側に位置して、NOxを含めた排ガス成分の浄化を行うための排気後処理装置11が介装されている。油圧ショベルでは、排気通路は上方に延びており、排気後処理装置11及びマフラー12はエンジン10の上方に配設されている。
排気後処理装置11のうちNOxの浄化を行うための装置として、尿素SCRシステムが搭載されている。尿素SCRシステムとは、尿素を用いた Selective Catalytic Reduction System、即ち還元剤として尿素水を利用してNOxを選択的に還元する選択還元触媒システムのことであり、尿素水を触媒コンバータの排気上流側に噴霧することで排ガス中のNOx成分を還元除去する装置(選択還元触媒装置)である。
【0026】
排気後処理装置11の触媒コンバータの排気上流側には尿素水噴射弁20が設けられており、尿素水噴射弁20には、尿素水噴射弁20へ尿素水を供給する尿素水供給配管22を介して尿素水を貯蔵しておく尿素水タンク24が接続され、尿素水供給配管22には、尿素水を尿素水噴射弁20へ圧送する供給ポンプを備えた尿素水供給装置30が介装されている。
また、寒冷地等では冬季に尿素水供給配管22内を流れる尿素水が凍結することがあり、尿素水の凍結を防止或いは凍結した尿素水を解凍すべく、エンジン10の冷却水の熱で尿素水を加温可能なよう、エンジン10からはエンジン10の冷却水を流すための冷却水配管40が延び、この冷却水配管40が尿素水供給配管22に沿うように配設されている。
【0027】
これら尿素水噴射弁20、尿素水供給配管22、尿素水タンク24、尿素水供給装置30及び冷却水配管40から尿素水供給システムが構成されている。
図2を参照すると、尿素水供給システムが模式的に示されている。
図2中、尿素水供給配管22が実線で、冷却水配管40が破線で示されている。同図に
示すように、尿素水供給システムは旋回フレーム3に配設されており、尿素水供給配管22は、油圧ショベルの作動時に尿素水が尿素水供給装置30により尿素水タンク24から吸い上げられて尿素水噴射弁20に圧送されるとともに、油圧ショベルの停止時には尿素水供給装置30により余剰の尿素水が尿素水供給装置30から尿素水タンク24に返戻されるよう構成されている。一方、冷却水配管40は、冷却水が、尿素水噴射弁20を回流するとともに、尿素水供給配管22に沿って尿素水供給装置30及び尿素水タンク24内を回流するよう構成されている。なお、冷却水配管40には、尿素水供給装置30の上流側に位置して冷却水圧送ポンプ42が介装されており、冷却水は冷却水圧送ポンプ42により圧送される。そして、尿素水供給配管22と冷却水配管40のうち尿素水供給装置30から尿素水タンク24までの部分及び冷却水が尿素水供給装置30からエンジン10に戻る部分とは、互いに接触するよう纏められており、冷却水の熱が良好に尿素水に伝達されて尿素水が保温されるよう保温材44によって覆われている。
【0028】
図3を参照すると、旋回フレーム3上に配設された本発明に係る尿素水供給システムが旋回フレーム3の平面図として示され、
図4を参照すると、本発明に係る尿素水供給システムが
図3のA−A線に沿う旋回フレーム3の縦断面図として示されている。
図3に示すように、旋回フレーム3は、左右方向に所定の間隔をもって幅方向中央を前後方向に延びて旋回体2を補強する一対のセンターフレーム(主フレーム部材)3b、3bと、一対のセンターフレーム3b、3bを前部で連結する前部連結フレーム3c及び後部で連結する後部連結フレーム(連結フレーム部材)3dと、各センターフレーム3bから左右方向で外方に延びる複数の張出しビームの先端をそれぞれ前後方向に延びるサイドビームで繋いで形成される一対のサイドフレーム3e、3eと、これらのフレームに対して取り付けられる複数の底板3aとにより概略構成されている。
このような旋回フレーム3において、作業装置4がセンターフレーム3bの前部に連結され、エンジン10は、旋回フレーム3の中心より後部側にてブラケット3fを介してセンターフレーム3b、3bより後方に延びるテールフレーム部3b’、3b’に載置されている。なお、底板3aのうちエンジン10の真下の部分には、作業者がエンジン10のメンテナンス(整備)を行うため、メンテナンス作業用に開口部3gが設けられている。
【0029】
尿素水タンク24は、尿素水の補給作業性が良いことから、またエンジン10の熱による尿素水の変質を防止すべく極力エンジン10から離れるよう、旋回フレーム3の前部のうちセンターフレーム3bを挟んで運転室8とは反対側のサイドフレーム3e上に配設されている。
尿素水供給装置30は、エンジン10の近傍であってエンジン10よりも旋回フレーム3の中心側に、エンジン10を臨むよう位置して配設されている。詳しくは、
図3及び
図4に示すように、後部連結フレーム3dは、一対のセンターフレーム3b、3b間に底板3aに対し垂直となるよう渡された既存のプレート部材であって、エンジン10を後部側に臨むようにエンジン10より前側の下方に位置して配設されており、尿素水供給装置30は、後部連結フレーム3dのエンジン10側の面にエンジン10を臨むようにエンジン10に対面して配設されている。
図5を参照すると、尿素水供給装置30を斜め上方から見た斜視図が示されており、以下、尿素水供給装置30の構成について説明する。
【0030】
同図に示すように、尿素水供給装置30は後部連結フレーム3dに固定されており、尿素水供給装置30には、上述したように尿素水供給配管22と冷却水配管40とが接続されている。また、尿素水供給装置30には、尿素水供給装置30の上部を覆うようにして保温カバー50が取り付けられている。
詳しくは、尿素水供給装置30は台座部材36を介して複数のボルト36aによって後部連結フレーム3dに固定されており、台座部材36は、保温カバー50を取り付けるための腕部材37、38、39を一体または別体に含んで構成されており、保温カバー50は、腕部材37、38、39にボルト51で締結されることで、台座部材36ひいては尿素水供給装置30に固定されている。
【0031】
図6を参照すると、保温カバー50を外した状態の尿素水供給装置30が示されている。同図に示すように、尿素水供給配管22と冷却水配管40と尿素水供給装置30とはそれぞれコネクタを介して接続されている。詳しくは、尿素水供給配管22のうち尿素水タンク24から尿素水が流入する流入配管はコネクタ31で、尿素水タンク24へ尿素水を返戻する流出配管はコネクタ32で、尿素水噴射弁20へ尿素水を給送する流出配管はコネクタ33で尿素水供給装置30に接続されている。また、冷却水配管40のうちエンジン10から冷却水が流入する流入配管はコネクタ34で、尿素水タンク24へ冷却水を給送する流出配管はコネクタ35で尿素水供給装置30に接続されている。
【0032】
また、これらコネクタ31、32、33、34、35は、全て尿素水供給装置30の同一の外面、即ち後部連結フレーム3dの面に対し垂直をなす上面30aに垂直に接続されている。そして、尿素水供給配管22のコネクタ31、32、33及び冷却水配管40のコネクタ34、35は、コネクタ34、35が後部連結フレーム3d側となるようにして、それぞれ後部連結フレーム3dに対し平行且つ互いに平行に車体左右方向に一直線状に並ぶように配設されている。
同図に示すように、冷却水配管40のうち冷却水圧送ポンプ42を経てエンジン10からの冷却水が流入する流入配管における尿素水供給装置30上に延長し迂回して配索される一部分(コネクタ34に向かう部分)は、尿素水供給配管22のコネクタ31、32、33に対して所定の距離範囲で接近するように配設されている。即ち、尿素水供給配管22の端部における尿素水供給装置30への接続部(コネクタ31、32、33部分)近傍では、冷却水配管40を沿わせ束ねることができず、尿素水の凍結を防止したり凍結した尿素水を解凍したりすることが困難である。そのため、冷却水配管40のうちエンジン10からの冷却水が流入する流入配管の尿素水供給装置30上に延長して配索される一部分を加温配管部46とし、この加温配管部46をコネクタ31、32、33に接近させ、コネクタ31、32、33近傍部分を加温配管部46を流れる冷却水の熱で加温するようにしている。
【0033】
詳しくは、加温配管部46は、尿素水供給装置30の上面30aに沿って尿素水供給配管22のコネクタ31、32、33と冷却水配管40のコネクタ34、35との間を延び、上面30aに対し垂直をなすコネクタ31、32、33を横切るように配設されている。そして、加温配管部46はボルト47で上面30aに固定されている。
ここに、加温配管部46をコネクタ31、32、33に接近させる所定の距離範囲は、例えば加温配管部46を流れる冷却水の熱がコネクタ31、32、33に届く範囲である。また、加温配管部46がコネクタ31、32、33に接近する部分は、冷却水の熱がコネクタ31、32、33に届き易いよう、熱伝導性の大きな部材、例えば銅管や鋼管等の金属部材で構成されている。
【0034】
この際、
図6に示すように、コネクタ31、32から延びる尿素水供給配管22は上面30aに対し平行に延びており、加温配管部46は、コネクタ31、32、33に接近することで、コネクタ31、32から延びる尿素水供給配管22をも横切ることとなる。つまり、加温配管部46は、コネクタ31、32近傍の冷却水配管40を沿わせられない尿素水供給配管22の部分にも接近するように配設されている。これにより、コネクタ31、32、33のみならず、コネクタ31、32から延びる尿素水供給配管22の部分についても加温配管部46を流れる冷却水の熱で同時に加温可能である。
なお、放熱性を高めるべく加温配管部46にフィンを設けることも考えられるが、フィンを設けると却って加温配管部46をコネクタ31、32、33に接近させることができなくなるため、加温配管部46にはフィンを設けないのが好ましい。
【0035】
また、同図に示すように、台座部材36に設けられた腕部材37、38、39には、それぞれ保温カバー50を取り付けるボルト51を螺合させるためのボルト螺合孔37a、38a、39aが形成されている。
さらに、後部連結フレーム3dの尿素水供給装置30側の面には、下部を後部連結フレーム3dと台座部材36とで挟むようにして、保温部材48が設けられている。保温部材48は、例えばウレタン部材等で構成される。
図7及び
図8を参照すると、尿素水供給装置30から外した状態の保温カバー50の表側と裏側とがそれぞれ斜視図で示されている。保温カバー50は、例えば鋼板を加工して、上面52と後部連結フレーム3dに対し平行をなす第1側面53と後部連結フレーム3dに対し垂直をなす第2側面54とから構成されている。第1側面53には、保温カバー50を台座部材36に設けられた腕部材37、38に取り付けるべくボルト51を貫通させるボルト貫通孔55、56が形成されており、第2側面54には保温カバー50を台座部材36に設けられた腕部材39に取り付けるべくボルト51を貫通させるボルト貫通孔57が形成されている。
【0036】
保温カバー50の裏側、即ち上面52、第1側面53及び第2側面54の尿素水供給装置30側の面には、
図8に示すように、保温部材58が設けられている。保温部材58は、上記保温部材48と同様、例えばウレタン部材等で構成され、保温部材48と略同一の厚みを有している。
保温カバー50の第1側面53には、上記尿素水供給配管22や冷却水配管40との干渉を避けるために切欠部53a、53bが設けられており、保温部材58は、尿素水供給配管22や冷却水配管40を通すための貫通孔59、60、61を残して、これら切欠部53a、53bを塞ぐように設けられている。
【0037】
そして、上記保温部材48と保温部材58とは、保温カバー50を尿素水供給装置30に取り付けたとき、上面52に配した保温部材58が保温部材48の上端縁と当接し、第2側面54に配した保温部材58の側端縁が保温部材48の表面と当接するように構成されている。即ち、保温カバー50は、尿素水供給装置30に取り付けることで、開口した第1側面53に対向する後部連結フレーム3d側の面が後部連結フレーム3dの表面に配された保温部材48ひいては後部連結フレーム3dで塞がれるよう構成されている。なお、第2側面54と対向する面は開口したままとなるが、この面は尿素水供給配管22や冷却水配管40の保温材44によって略閉じられた状態となる。これにより、尿素水供給配管22のコネクタ31、32、33と冷却水配管40のコネクタ34、35とが加温配管部46とともに保温カバー50によって塞がれ、保温カバー50の内部には上面52、第1側面53、第2側面54及び後部連結フレーム3dさらには
保温部材48で略囲まれた閉空間が形成される。故に、この閉空間内の空気は、加温配管部46を流れる冷却水の熱で加温され、保温部材48及び保温部材58の作用により良好に保温される。
【0038】
符号62は保温カバー50の取手であり、この取手62は、保温カバー50の着脱のみならず、保温カバー50を台座部材36を介して尿素水供給装置30に取り付けた状態であっても保温カバー50、台座部材36及び尿素水供給装置30を一体として運搬可能なように、その強度が設定されている。
ところで、冷却水配管40の尿素水供給配管22のコネクタ31、32、33への接近のさせ方は、上記に限られず、
図9〜
図11に示すように種々変形例が考えられる。
図9は第1変形例を示す。この第1変形例では、冷却水配管40のうちエンジン10からの冷却水
が流入する流入配管の尿素水供給装置30上に延長して配索される一部分を加温配管部146としている。加温配管部146は、冷却水配管40のコネクタ34、35とは反対側で尿素水供給配管22のコネクタ31、32、33を横切るように配設されている。
【0039】
図10は第2変形例を示す。この第2変形例では、冷却水配管40のうちエンジン10からの冷却水
が流入する流入配管の尿素水供給装置30上に延長して配索される一部分を加温配管部246としている。加温配管部246は、尿素水供給配管22のコネクタ31、32、33と冷却水配管40のコネクタ34、35との間を延びてコネクタ31、32、33を横切るとともに、直列にして冷却水配管40のコネクタ34、35とは反対側でもコネクタ31、32、33を横切るように配設されている。即ち、加温配管部246は、直列にしてコネクタ31、32、33を取り囲むように配設されている。
図11は第3変形例を示す。この第3変形例では、冷却水配管40のうちエンジン10からの冷却水
が流入する流入配管の尿素水供給装置30上に延長して配索される一部分を加温配管部346としている。加温配管部346は、尿素水供給配管22のコネクタ31、32、33と冷却水配管40のコネクタ34、35との間を延びてコネクタ31、32、33を横切るとともに、並列にして冷却水配管40のコネクタ34、35とは反対側でもコネクタ31、32、33を横切るように配設されている。即ち、加温配管部346は、並列にしてコネクタ31、32、33を取り囲むように配設されている。
【0040】
以下、このように構成された建設機械の尿素水供給システムの作用及び効果について詳しく説明する。
上述したように、尿素水タンク24は、旋回フレーム3の前部のサイドフレーム3e上に配設されている一方、尿素水供給装置30は、エンジン10の近傍であって後部連結フレーム3dのエンジン10側の面にエンジン10を臨むように配設されている。
これより、尿素水タンク24はエンジン10の熱の影響を受けない一方、尿素水供給装置30はエンジン10の熱で加温され、冬季であっても尿素水供給装置30内を流れる尿素水の凍結が防止されるとともに凍結した尿素水の解凍が促進される。
【0041】
また、ここでは、尿素水供給装置30を後部連結フレーム3dのエンジン10側の面にエンジン10を臨むように配設しているので、別途取付ブラケットを設けることなく、プレート部材である既存の後部連結フレーム3dを有効に利用して尿素水供給装置30を容易にして好適に配設することができる。この場合、旋回フレーム3の底板3aのうち、エンジン10の真下の下方部分にはエンジン10等のメンテナンス作業用に開口部3gが設けられているので、この開口部3gを利用して尿素水供給装置30のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0042】
そして、このように尿素水供給装置30が後部連結フレーム3dのエンジン10側の面にエンジン10を臨むように配設されていると、尿素水タンク24から尿素水供給装置30までの距離が遠くなり過ぎることがなく、尿素水供給装置30から尿素水噴射弁20までの距離も遠くなり過ぎることがない。これにより、
図12に旋回フレーム3と尿素水供給システムとを側方から見た図を模式的に示すが、このように建設機械が平地での状態(一点鎖線)から傾斜地等において前後方向で前方を下げて所定の傾斜限界角度θまで傾斜した場合(実線)であっても、尿素水タンク24から尿素水供給装置30までの垂直方向の距離の変化が小さく抑えられる。つまり、平地において尿素水タンク24の尿素水の吸い込み位置が尿素水供給装置30と垂直方向で略同一高さであるとすると、
図12において、傾斜地等でのその垂直方向の変化量は尿素水供給装置30が尿素水タンク24から尿素水を吸い上げるのに支障がない規定値範囲内のΔH1となり、尿素水供給装置30の尿素水タンク24からの尿素水の吸い上げ性が変動少なく良好に確保される。
【0043】
同様に、尿素水供給装置30から尿素水噴射弁20までの垂直方向の距離の変化も小さく抑えられる。つまり、平地における尿素水供給装置30から尿素水噴射弁20までの距離がH2で、所定の傾斜限界角度θまで傾斜したときの距離がH2'とすると、
図12において、その垂直方向の変化量は尿素水噴射弁20での尿素水の吐出圧に支障が出ない規定値範囲内のΔH2(ΔH2=H2'−H2)となり、尿素水噴射弁20に対する尿素水供給装置30の尿素水の吐出圧も変動少なく良好に確保される。
これにより、尿素水噴射弁20から常に安定して尿素水を噴射可能である。
【0044】
また、尿素水供給装置30において、冷却水配管40のうちエンジン10からの冷却水
が流入する流入配管の尿素水供給装置30上に延長して配索される一部分を加温配管部46、146、246、346とし、この加温配管部46、146、246、346を尿素水供給配管22の尿素水供給装置30への接続部であるコネクタ31、32、33に接近させ、コネクタ31、32、33部分を加温配管部46を流れる冷却水の熱で加温するようにしているので、冷却水配管40を沿わせることができないようなコネクタ31、32、33部分においても、簡単な構成にして効率よく尿素水の凍結を防止したり凍結した尿素水を解凍したりすることが可能である。
【0045】
この場合、上記第2変形例や第3変形例のように、加温配管部246、346をコネクタ31、32、33を取り囲むように構成すると、コネクタ31、32、33部分を加温配管部246、346を流れる冷却水の熱で十分に加温するようにできる。
特に、油圧ショベルの停止時には尿素水は尿素水供給装置30から尿素水タンク24に返戻されることになるが、この際、尿素水供給装置30から尿素水タンク24までの間の尿素水供給配管22内には尿素水が残ることがあり、尿素水タンク24へ尿素水を返戻する流出配管の接続部であるコネクタ32部分にも尿素水が残ることがあるが、加温配管部46を流れる冷却水の熱で加温することで、確実にコネクタ32部分での尿素水の凍結を防止したり凍結した尿素水を解凍したりすることが可能である。
【0046】
さらに、尿素水供給装置30には、尿素水供給配管22のコネクタ31、32、33と冷却水配管40のコネクタ34、35と加温配管部46とを覆うように保温カバー50を設けており、これにより保温カバー50の内部の加温配管部46を流れる冷却水の熱で加温された空気が良好に保温されるが、ここでは、保温カバー50を内面に保温部材58を配した上面52、第1側面53及び第2側面54で構成し、開口した第1側面53に対向する後部連結フレーム3d側の面については表面に保温部材48を配した後部連結フレーム3dで塞ぐようにして保温カバー50内に閉空間を形成するようにしているので、プレート部材からなる既存の後部連結フレーム3dを効率よく利用して保温カバー50を簡素に構成することができる。
そして、保温カバー50がこのように構成されていると、
図4には併せて作業者Mを示すが、作業者Mがメンテナンス作業用の開口部3gから尿素水供給装置30の保温カバー50を容易に着脱可能であり、尿素水供給装置30のメンテナンス作業をより一層容易に行うことができる。
【0047】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、冷却水配管40のうちエンジン10からの冷却水
が流入する流入配管の尿素水供給装置30上に延長して配索される一部分(コネクタ34に向かう部分)を加温配管部46、146、246、346としたが、冷却水配管40のうちエンジン10からの冷却水
が流出する流出配管の尿素水供給装置30上に延長して配索される一部分(コネクタ35から延びる部分)で加温配管部を構成するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、尿素水供給装置30において、冷却水配管40の一部分で加温配管部46、146、246、346を構成し、この加温配管部46、146、246、346を尿素水供給配管22の尿素水供給装置30への接続部であるコネクタ31、32、33に接近させるようにしたが、尿素水タンク24に尿素水供給配管22の尿素水タンク24への接続部としてのコネクタと冷却水配管40の尿素水タンク24への接続部としてのコネクタとが設けられている場合には、尿素水タンク24において、冷却水配管40のうちエンジン10からの冷却水
が流入する流入配管の一部分或いは流出する流出配管の一部分を加温配管部とし、この加温配管部を尿素水供給配管22の尿素水タンク24への接続部であるコネクタに接近させるようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、尿素水供給装置30において、冷却水配管40を延長して加温配管部46、146、246、346を構成し、加温配管部46、146、246、346を含めて尿素水供給配管22の尿素水供給装置30への接続部であるコネクタ31、32、33と冷却水配管40のコネクタ34、35とを保温カバー50で覆うようにしているが、尿素水供給装置30において加温配管部46、146、246、346を設けることなくコネクタ31、32、33、34、35を保温カバー50で覆うようにしてもよい。この場合、冷却水配管40を通すための貫通孔60、61については保温部材58に設ける必要はない。
【0049】
また、上記実施形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベルを例に挙げて説明したが、これに限られるものではなく、エンジンが尿素SCRシステムを備えていれば、本発明を、ホイール式の油圧ショベルに適用してもよいし、リフトトラック、ダンプトラック、ホイールローダ、油圧クレーン、ブルドーザ等の建設機械にも広く適用することが可能である。