(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940166
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】トップサブマージ注入用流体冷却式ランス
(51)【国際特許分類】
F27D 3/16 20060101AFI20160616BHJP
F27D 3/18 20060101ALI20160616BHJP
C22B 15/06 20060101ALN20160616BHJP
C21C 5/46 20060101ALN20160616BHJP
C21C 7/072 20060101ALN20160616BHJP
【FI】
F27D3/16 A
F27D3/18
!C22B15/06
!C21C5/46 101
!C21C7/072 A
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-544008(P2014-544008)
(86)(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公表番号】特表2015-503076(P2015-503076A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】IB2012056714
(87)【国際公開番号】WO2013080110
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2014年6月30日
(31)【優先権主張番号】2011904988
(32)【優先日】2011年11月30日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】507221324
【氏名又は名称】オウトテック オサケイティオ ユルキネン
【氏名又は名称原語表記】OUTOTEC OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】100079991
【弁理士】
【氏名又は名称】香取 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】マトゥセビチ、 ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ロイター、 マルクス
【審査官】
市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−258071(JP,A)
【文献】
特開2006−046902(JP,A)
【文献】
特開2009−139081(JP,A)
【文献】
特開2001−226708(JP,A)
【文献】
特開2002−048315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/46
C21C 7/072
C22B 15/06
F27D 3/16、3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温冶金工程における溶解湯のスラグ層内でトップサブマージランス注入に使用できるトップサブマージブル注入ランスにおいて、該ランスは、最外側ランス管と最内側ランス管と中間ランス管とを含む少なくとも3本の同心のランス管の外側シェルを有し、該ランスは少なくとももう1本のランス管を前記シェル内に同心状に含み、該シェルは該ランスの出口端部において環状端壁を有し、これは前記シェルの最外側ランス管および最内側ランス管のそれぞれの端部を該ランスの出口端部で接合し、前記シェルの中間ランス管の出口端部から離間して配され、該ランスは、上端部もしくは入口端部に隣接し前記出口端部から離れた場所に前記ランスを垂直に吊り下げることができる構造を有し、前記シェルは、前記最内側ランス管および最外側ランス管の一方と前記中間ランス管との間を該ランスに沿って前記出口端部方向へ向い、そして前記最内側ランス管および最外側ランス管のもう一方と前記中間ランス管との間を該出口端部から離れる方向に戻って流れることによって、冷却流体が前記シェル内を循環するように構成され、
前記端壁と前記中間ランス管の出口端部との間の離間によって冷却流体の流れに対する狭窄部が生じて前記端壁と前記中間ランス管の出口端部との間で冷却流体の流速を増大させることができ、
前記少なくとももう1本のランス管は中央穴を画成するとともに、前記外側シェルの出口端部から離間した出口端部を有し、こうすることで前記外側シェルの出口端部と前記少なくとももう1本のランス管の出口端部との間に混合室が前記外側シェルによって画成され、前記少なくとももう1本のランス管は前記シェルの最内側ランス管から離間してその間に環状通路を画成し、これによって、前記中央穴に沿って通過する可燃性物質と前記環状通路に沿って通過する酸素含有ガスとが前記混合室内および該ランスの出口端部付近で可燃性混合物を形成し、該混合物が前記スラグ層内に注入される際、燃焼することができることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項2】
請求項1に記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、前記狭窄部は、前記端壁を横断する冷却流体の流れを、前記狭窄部の前後の流れに比して、薄い膜状もしくは薄い流れ状にするよう操作することができることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、前記中間ランス管の端部はビードを画成し、該ビードは半径方向に湾曲した凸面を有し、該凸面は、前記ビードの涙滴もしくは丸い形によって、相補的凹面形状の端部を有する端壁に対面していることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項4】
請求項3に記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、前記中間ランス管の出口端部と端壁との間において前記狭窄部は、該ランスの軸を含む平面において該ランスの半径方向に拡がり、前記ビードおよび端壁が180oまでの角度で該狭窄部を構成していることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項5】
請求項3または4に記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、前記狭窄部は、前記中間ランス管と前記最外側ランス管の内面との間において前記ビードから、前記中間ランス管の壁厚が増してゆく該ランスの長さの少なくとも一部にわたって続いていることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項6】
請求項1または2に記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、前記中間ランス管は端部に円形部を有し、前記狭窄部は、少なくとも部分的に、前記中間ランス管の端部の円形部から、および該中間ランス管の外面と前記最外側ランス管の内面との間において、前記中間ランス管が壁厚を増してゆく該ランスの長さの少なくとも一部にわたって画成され、前記狭窄部は該ランスの長さ方向に対して少なくとも90oの角度で延在していることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、該ランスは、前記出口端部から離間して前記シェルの上部の部分の周囲に同心状に配置された環状シュラウドを含むことを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項8】
請求項7に記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、前記シュラウドは最外側シュラウド管、最内側シュラウド管および中間シュラウド管を含む3本の同心のシュラウド管の外側シェルを有し、さらに該シュラウドの出口端部において環状端壁を含み、これは、前記シェルの最外側シュラウド管および最内側シュラウド管のそれぞれの出口端部を接合するとともに、前記シェルの中間シュラウド管の出口端部から離間し、前記最内側シュラウド管と中間シュラウド管との間を前記シェルに沿って前記出口端部へ向い、そして前記中間シュラウド管と最外側シュラウド管との間を該シュラウドに沿って前記出口端部から離れる方向に戻って流れることによって、またはこの逆に流れることによって、冷却流体が前記シェル内を循環し、さらに、前記端壁と前記中間シュラウド管の出口端部との間の離間によって冷却流体の流れに対する狭窄部が生じて、前記端壁と前記中間シュラウド管との間の冷却流体の流速を増速させることができることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項9】
請求項8に記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、前記シュラウドの前記狭窄部によって該シュラウドの端壁を横断する冷却流体の流れを操作して、前記狭窄部の前後の流れに比して、薄い膜状もしくは細い流れ状にすることができることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項10】
請求項8または9に記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、前記中間シュラウド管の端部はビートを画成し、該ビードは半径方向に湾曲した凸面を有し、該凸面は、前記ビードの涙滴もしくは丸い形によって、相補的凹面形状の端部を有する端壁に対面していることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項11】
請求項10に記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、前記中間シュラウド管の出口端部と端壁との間における狭窄部は、前記シュラウドの軸を含む平面において該シュラウドの半径方向に拡がり、前記ビードと前記端壁が接近して180oまでの角度で該狭窄部を構成していることを特徴とするサブマージブル注入ランス。
【請求項12】
請求項10または11に記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、前記狭窄部は、前記中間シュラウド管の外面と前記最外側シュラウド管の内面との間において前記ビードから、前記中間シュラウド管の壁厚が増してゆく該シュラウドの長さの少なくとも一部にわたって続いていることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項13】
請求項8または9に記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、前記中間シュラウド管は端部に円形部を有し、前記狭窄部は、少なくとも部分的に、前記中間シュラウド管の端部の円形部から、および該中間シュラウド管の外面と前記最外側シュラウド管の内面との間において、前記中間シュラウド管が壁厚を増してゆく該シュラウドの長さの少なくとも一部にわたって画成され、前記狭窄部は該ランスの長さ方向に対して少なくとも90oの角度で延在していることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項14】
請求項1ないし7のいずれかに記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、前記狭窄部は、該狭窄部の上流の流速より6倍ないし20倍速い冷却流体流を内側に生じることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項15】
請求項1ないし7および14のいずれかに記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、該ランスは7.5メートルから25メートルまでの長さであることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項16】
請求項1ないし7、14および15のいずれかに記載のトップサブマージブル注入ランスにおいて、該ランスのシェルは、100mmから650mmの内径であり、150mmから700mmの外径であることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【請求項17】
請求項1ないし7および14ないし16のいずれかに記載のサブマージブル注入ランスにおいて、前記もう1本のランス管は前記シェル内で前記出口端部から1000mmまでで終端していることを特徴とするトップサブマージブル注入ランス。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、溶解湯もしくは高温冶金作業に使用するトップサブマージ注入用ランスに関するものである。
【0002】
溶解湯と酸素含有ガス源との相互作用を必要とする溶解湯溶解作業もしくは他の高温冶金作業は、このガス供給に複数のさまざまな装置を利用している。一般的に、これらの作業は溶融マット/金属への直接注入を含んでいる。これは、ベッセマー型の炉におけるように底吹き羽口、またはパイアススミス型転炉におけるように横吹き羽口により行なうことができる。または、上吹き注入もしくはトップサブマージ注入を備えたランスによりガスの注入を行なうことができる。上吹きランス注入の例としては、KALDOおよびBOP製綱プラントがあるが、ここでは、純酸素を溶解湯の上から吹き付けて溶鉄から鋼鉄を作り出す。他の例として、注入ランスが酸素含有吹き付けランス注入の噴流を生成する上吹きの三菱の銅製法は、空気もしくは酸素富化空気などのガスによる溶解段階およびマット転換段階により行なって、溶解湯の最上面に影響を与え、これを貫通し、銅マットを生成して、転換する。サブマージランス注入の場合、ランスの下端部を浸漬して、注入を溶解湯のスラグ層より上からよりも、むしろその中で発生させて、トップサブマージランス(TSL)注入を行なうが、この公知の実施例はオウトテック オースメルトのTSL技術であり、これは広い範囲の金属加工に適用されている。
【0003】
上からの注入する両方式の場合、すなわち、上吹き注入およびTSL注入の場合、ランスは厳しい平均溶解湯温度にさらされる。三菱の銅製法における上吹きは、管の直径が約50mmの内管と直径が約100mmの外管を有する比較的小さな鋼鉄製ランスを多数使用している。内管はおおよそその炉の屋根の高さ、すなわち反応帯をはるかに超えた高さで終端している。外管は、炉の屋根の水冷式カラーへ張り付かないよう回転可能になっており、延伸して炉のガススペースへ入り、その下端部を溶解湯の上面からおおよそ500〜800mmに置いている。空気中に取り込まれた粒子のフィードは内管から吹き出され、酸素富化空気はこれらの管の間の環状部分から吹き出される。外管の下端部は溶解湯面より上に場所を設定しているにもかかわらず、また、これを通る気体によってランスを冷却するにもかかわらず、外管は一日当たり約400mm焼け減りする。したがって、外管は徐々に下降するので、必要な場合、新規の部分をこの消耗品である外管の上部へ取り付ける。
【0004】
TSL用のランスは上述の三菱の製法におけるように上吹き用のものよりかなり大きい。TSLランスは通常、次に推測するように、少なくとも1本の内管と1本の外管を有しているが、内管および外管と同心の少なくとももう1本の管を備えてもよい。一般的な大規模TSLランスは外管の直径が200ないし500mmもしくはそれ以上である。さらに、このランスはかなり長尺、約10ないし15 mの高さがあり、TSL反応炉の上部を通って下方へ延在し、外管の下端部が溶解湯の溶融スラグ相に約300 mmもしくはそれ以上の深さに浸漬されるが、内部の注入ガス流の冷却作用によって外管の外面に形成、保持される固化したスラグのコーティングにより保護される。内管は外管とほぼ同じ高さ、または外管の下端部より約1000 mmまでの高さで終端させることができる。したがって、この場合は外管だけの下端部が浸漬されることになる。いずれにしても、らせん羽根もしくは他の流れ成形装置を内管の外面に内管と外管の間の環状スペース渡して取り付けることができる。らせん羽根は強力な旋回動作を環状部分に沿って空気もしくは酸素富化噴出に与え、冷却効果を高めるのに役立つと同時に、外管により画成された混合室において、内管が外管の下端部より上で十分な距離で終端している内管の下端部より下で、実質的に発生する混合によって内管から供給される燃料およびフィード材料とガスが確実に十分に混ざり合わさる。
【0005】
TSLランスの外管はその下端部で磨耗し、焼け減りするが、その速さは、コーティングなしの場合に考えられるより保護用凍結スラグコーティングによる方がかなり減速される。しかし、これはTSL技術による操作モードによってかなりの程度まで制御される。この操作モードは、ランスの下端部が溶融スラグ湯の反応性と腐食性が非常に高い環境に浸漬されるにもかかわらず、この技術を実行可能にする。TSLランスの内管は、精鋼、フラックスおよび還元剤などの注入すべきフィード材料を溶解湯のスラグ層へ供給するのに用いることができ、または、これを燃料用に使用することができる。空気もしくは酸素富化空気などの酸素含有ガスは管同士間の環状部分を介して供給される。湯のスラグ層内で浸漬注入を始める前に、ランスはその下端部、すなわち外管の下端部をスラグ表面より上に適切な距離を測って位置決めする。燃料オイル、粉炭、もしくは炭化水素ガスなどの酸素含有ガスおよび燃料をランスへ供給し、得られた酸素/燃料混合物に点火してスラグに対して与えられる火炎噴流を生成する。これによってスラグを跳ね飛ばしてランスの外管上にスラグ層を生成し、これを、ランスを通過するガス流によって固化して、上述の固体スラグコーティングを設ける。次いで、ランスを降下させ、ランスを通過する酸素含有ガスの進行中の通路を、固化したスラグコーティングが維持され外管を防護する温度に維持することによってスラグ内への注入を達成することができる。
【0006】
新規のTSLランスの場合、外管および内管の下端部の相対的位置、すなわち内管の下端部が仮に外管の下端部から後退する距離はその設計中に決定される特殊な高温冶金の作業用ウインドウに最適な長さである。この最適な長さはTSL技術のさまざまな用途に対してさまざまにすることができる。したがって、スラグを介してマットへ酸素を送ることによって銅マットを転換して粗銅にする2段階バッチ工程において、銅マットを転換して粗銅にする連続単段階工程、鉛含有スラグを還元する工程、または酸化鉄フィード材を溶解して銑鉄を生成する工程はすべて、それぞれが最適な混合室の長さを有している。しかし、それぞれの場合において、混合室の長さは、外管の下端部が徐々に損耗し、焼け減りするので、高温冶金工程の最適条件を徐々に下回る。同様に、外管および内管の下端部間がゼロオフセットである場合、内管の下端部はスラグにさらされるようになり、これによって損耗し、焼け減りする。したがって、一定の間隔で、少なくとも外管の下端部を切断してきれいな縁端部を作り、これに対して適切な直径で一定の長さの管を溶接し、両管下端部の最適な相互位置を確立して、精錬条件を最適にする必要がある。
【0007】
外管の下端部が損耗し、焼け減りする速度は、溶解湯高温冶金工程が行なわれる場合はさまざまである。この速度を決める要因は、フィード加工速度と、作動温度と、溶解湯の流動性および化学的性質と、ランスの流量などを含む。場合によっては、腐食損耗および焼け減りの速度は比較的速く、最悪の例では、工程から損耗したランスを取り除きこれを他のものと交換するためにその工程を中断する必要があるため、作業時間が一日に数時間失われことがあるが、稼動から外された損耗したランスは修理される。このような停止は一日に数回発生し、各停止が非処理時間に加わる。TSL技術は他の技術よりも、コスト削減などを始めとする大きな利益をもたらすが、ランスの交換に関して失われる作業時間は大きなコスト上の不利益を伴う。
【0008】
上吹きランスおよびTSLランスの両方の場合、液体冷却によってランスを高温冶金工程において遭遇する高温から保護する提案がなされている。上吹き用の液体冷却式ランス
の例は次の米国特許に開示されている。
【0009】
3223398 Bertram et al,
3269829 Belkin,
3321139 De Saint Martin,
3338570 Zimmer,
3411716 Stephan et al,
3488044 Shepherd,
3730505 Ramacciotti et al,
3802681 Pfeifer,
3828850 McMinn et al,
3876190 Johnstone et al,
3889933 Jaquay,
4097030 Desaar,
4396182 Schaffar et al,
4541617 Okane et al,
6565800 Dunne.
これらすべての参考資料は、米国特許3223398 Betram et alおよび3269829 Belkinを除いては、液体を供給通路に沿ってランスの出口先端部へ流し戻り通路に沿って先端部から戻すことができるように配設された同心の最外部管を利用しているが、Beltram et alはこのような流れをランスのノズル部分に限定する改良型を使用している。他方、Belkinは冷却水を提供しているが、これは内管の長さに沿って出口を通過し、内管と外管間の環状通路に沿って供給される酸素と混合して、酸素含有スチームとして注入される。水の加熱および気化によってBelkinのランスの冷却を行なうが、生成され注入されたスチームは溶解湯へ熱を戻すと考えられている。
【0010】
米国特許3521872 Themelisと、4023676 Benett et alと、4326701 Hayden, Jr et alは浸漬注入用ランスを開示している。Themelisの提案は米国特許3269828 Belkinのものと同類である。それぞれが水をガス流に添加し、注入したスチームの中への蒸発に依存することによって冷却するランスを用いており、その構造は密閉系統における熱伝達により水でランスを冷却するのと同じである。しかし、Themelisのこの構造は内管を有さず、ガスおよび水を1本の管に沿って供給し、その中で水が蒸発する。Bennett et alの提案は、ランスと言っても、これを溶融鉄類の表面より下に、溶融鉄類が収容されている炉の周壁から注入する点で、羽口により類似している。Bennett et alの提案において、注入用同心管をセラミックスリーブ内に延在させているが、冷却水はセラミック内に入れられた管を通って循環する。Hayden, Jr. et alの場合、冷却水の供給をランスの上限内だけで行なうが、浸漬可能な出口端部に対する下限
は耐火セメント内に入れ
た1本の管で構成
されている。
【0011】
従来技術の提案の限界は、Themelisにより明らかである。その説明は酸素注入による銅の精錬に関するものである。銅の溶融点は約1085
oCであるが、Themelisは、精錬は約1140
oCないし1195
oCの過熱温度で行なうことを指摘している。このような温度において、最良のステンレス鋼もしくは合金鋼のランスは力が非常に弱い。したがって、上吹きランスでも一般的には循環液冷却を利用し、またはBennett et alおよびHyden, Jr. et alのランスの場合には耐火コーティングもしくはセラミックコーティングを利用する。米国特許3269829 Belkinの進歩性
と、Themelisにより提供され
るBelkinよりも優れた改善点は、注入ガス内で混合した水を蒸発させることによって達成可能な強力な冷却を利用していることである。それぞれの場合、蒸発をランス内で達成して冷却をしている。Belkinよりも優れたThemelisの改善は、冷却水をランスへ供給する前に噴霧化して、ランスの構造上の欠陥の危険と、液体水の注入により生じる溶融金属内での爆発を回避していることである。
【0012】
米国特許 6565800 Dunneは非反応性担体を用いて固形粒子材料を注入する固体注入ランスを開示している。すなわち、このランスは材料の混合および燃焼を可能にする装置としてよりも、むしろ単に粒子材料を溶液中へ搬送するのに使用するものである。このランスは中核チューブを有し、これを通して粒子材料を吹き込み、さらに、中核チューブの外面に直接接触している二重壁のジャケットを有し、これを介して水などの冷却液を循環させることができる。ジャケットは中核チューブの長さの一部に沿って延在し、ランスの出口端部で中核チューブの長さの突き出た部分から離れている。ランスは少なくとも1.5メートルの長さであり、実際の図面から、ジャケットの外径が約12cm程度であり、中核チューブの内径が約4cmであることが明らかである。ジャケットは全長を溶接合した連続体構造をとり、鋼鉄部分の主要な区間とランスの出口端部に近い端部部分は銅もしくは銅合金である。内管の突出している出口端部はステンレス鋼であり、交換が容易であるが、これは内管の主要な区間へねじ山係止によって連結されている。
【0013】
米国特許6565800 Dunneのランスは溶融鉄類を生成するHLsmelt工程において酸化鉄フィード材料および炭素質還元剤の注入を可能にするランスと共に使用するのに適していると言われている。本文において、ランスは1400
oC程度の作動温度を始めとする厳しい状態にさらされる。しかし、Themelisを参照して説明したように、銅は溶融点が約1085
oCであり、また約1140
oCないし1195
oCではステンレス鋼は非常に弱くなる。たぶん、Dunneの提案は、ジャケット断面の冷却において中核チューブの断面に対する比が高く約8:1であり、小さい全断面が含まれていると仮定すると、HLsmeltの環境での使用に適している。DunneのランスはTSLランスでも、またTSL技術の用途に適しているものでもない。
【0014】
TSL技術に基づいた高温冶金工程で使用するランスの例は、いずれもFloydの米国特許4251271および5251879と、Floyd et alの米国特許6308043により開示されている。上に詳述したように、スラグは最初に溶融スラグ層上へ上から吹きつける上吹き用ランスを使用してスプラッッシングを行ない、ランス上にスラグの保護コーティングを達成するが、これは、スプラッシングを発生させる高速の上吹きガスにより固化される。固体スラグコーティングは、後にそのランスが下降されてその下端部がスラグ層に浸漬されても維持され、スラグ内での必要なトップサブマージランス注入を可能にする。Floydの米国特許4251271および5251879は、このようにして、固体スラグコーティングを維持するための冷却を、米国特許4251271の場合は注入ガスによるだけで、また米国特許5251879の場合はシュラウド管から吹き出されるガスを付加したガスによるだけで行なうことで作動する。しかし、Floyd et alの米国特許5308043の冷却は、シュラウド管から吹き出されるガス対ガス注入により行なわれるものに加えて、ランスの3本の外管により画成された環状通路に冷却液を循環させることによって行なう。これは、ランスの外周を囲繞する3本の管のうち最外側のものと最内側のものとをランスの出口端部において接合する固体合金鋼の環状先端部を設けることによって可能になる。環状先端部は注入ガスによって、さらにまた先端部の上端面を横断して流れる冷却液によっても冷却される。環状先端部の固体形状と合金鋼からのその製造によって、損耗と焼け減りに対する良好なレベルの耐性のある先端部を得ることになる。この構造は、先端部を交換する必要がある前に、そのランスによって実稼動寿命を達成して、ランスの不具合の危険を回避し、冷却液を溶解湯内に放出可能にするものである。
【0015】
本発明は、TSL工程用に改善された液体冷却式トップサブマージ注入用ランスに関するものである。本発明のランスは、Floyd et alの米国特許5308043のランスに代わるものを提供するが、これは少なくとも望ましい形状においては特許のランスより優れた利点を提供することができるものである。
【発明の概要】
【0016】
第1の局面において、本発明は、スラグ層内もしくは溶解湯内におけるトップサブマージランス注入用ランスを提供し、これは、3本の実質的に同心のランス管の1つの外部シェルと、外部シェル内に含まれ、実質的に同心的に配設された少なくとももう1本のランス管を有するものである。ランスの出口端部には環状端壁があり、これはランスの出口端部においてシェルの最外側ランス管と最内側ランス管の出口端部を接合し、シェルの中間のランス管の出口端部から離間して配されている。この構造は、例えばシェルに沿って出口端部へ向かうシェルの最内側ランス管と中間のランス管との間の流れによって、その後ランスに沿って戻り出口端部から離れるシェルの中間ランス管と最外側ランス管との間の流れによって、またはこの流
れとは逆に、冷却液をランスのシェルに循環させることができるものである。端壁と、シェルの3本のランス管のそれぞれの長さの隣接する小部分は、交換可能なランス先端部アセンブリから成り、これによって、焼け減りもしくは損耗した先端部アセンブリを3本のランス管のそれぞれの長さの大部分から切り離して、新規のもしくは修理済みのランス先端部アセンブリを定位置に溶接することができる。シェルの端壁はランスの出口端部にあり、これを画成している。さらに、少なくとももう1本のランス管が中心穴を画成しており、この少なくとももう1本のランス管はシェルの
最内側のランス管から離間させ、その間に環状通路を画成し、これによって、穴と通路に沿って通過する材料を、スラグ層内に注入する際にランスの出口端部の近くで混合することができる。
【0017】
本発明のTSLランスは必ずしも大きな寸法である必要はない。さらに、上端部もしくは入口端部に隣接した場所などの、出口端部から離れた場所においてランスは、これをTSL反応炉内に吊るして垂直に吊り下げることができる1つの構造物を有している。ランスは、例えば小型の特殊用途のTSL反応炉用などは、最小長さが約7.5メートルである。ランスは、特殊用途の大型TSL反応炉の場合は約25メートル、もしくはそれ以上の長さを有することがある。より一般的には、ランスは約10ないし20メートルの長さである。これらの寸法はシェルの端壁により画成される出口端部までのランスの全長に関連している。少なくとももう1本のランス管はその出口端部まで延在してもよく、したがって、全長は同様でよい。しかし、少なくとももう1本のランス管は、その出口端部の内側で、例えば約1000mmまでの短距離で終端させることができる。ランスは一般的には、例えばシェルの内径が約100から650mmまでに、望ましくは約200から
650mmまでで、全直径が150から700mmまで、望ましくは約250から550mmまでに設定されるなど、大きな直径を有する。
【0018】
端壁はシェルの中間ランス管の出口端部から離間させている。しかし、出口端部と端壁との間の離間は冷却液の流れに対して狭窄部となり、冷却液は、端壁と中間ランス管の出口端部を横断しこれらの間を流れる冷却液の速度を増大させる。この構造は、端壁を横断する冷却液が比較的薄い膜もしくは薄い流れの形をとり、望ましくはこの膜もしくは流れが冷却液内で乱流を抑制するように機能させてもよい。このような流れを向上させるために、シェルの中間ランス管の端部を適切な形状にしてもよい。したがって、一構造において、中間ランス管の端部で外周ビードを画成し、これは、半径方向に湾曲した凸面、すなわち端壁の方向に向いた凸面を有するものでよい。このようなビードの場合、端壁は相補的凹面状でよい。例えば、半径方向の断面において、ビードは球根状もしくは球状でよく、または涙滴状もしくは同様の丸い形状でよいが、端壁は凹面半環状でよい。このような向かい合った凸面形と凹面形の場合、中間ランス管の出口端部と端壁との間の狭窄部は、ランスの半径方向の実質的な延長部(すなわち、ランスの長手方向の軸を含む平面内にある)とすることができる。これによって、冷却液とビードおよび端壁のそれぞれとの間の冷却液の単位質量流当たりの表面間接触比は、ランスから狭窄部までの冷却液の流れと比べて大きくなり、これによってランスの出口端部からのエネルギーの抽出が向上する。
【0019】
一構造において、中間ランス管の出口端部の断面(すなわち、ランスの長手方向の軸を含む平面)は涙滴形もしくは実質的に円形である。この場合、端壁の凹面半環状形は、これによって端壁がビードに対して相補的形状となるが、これらの平面内で断面が実質的に半円形でよい。その結果、ビードと端壁は密接に隣接して冷却液流路において狭窄部を備え、これは約180
o、例えば90
oから180
oまでの角度によって延在することができ、これを介して冷却液流路はランスの出口端部へ向かう流れから出口端部から離れる流れに変わる。必然的な流れは単に方向の逆転により約180
oの角度によって変わる。しかし、中間ランス管が流れの狭窄部を備えていない構造とは異なり、狭窄部を備えることによって流れを抑制して、シェルの最内側ランス管の外面からシェルの最外側ランス管の内面までを正確に湾曲する比較的薄い膜もしくは薄い流れにする。
【0020】
狭窄部はビードから中間ランス管の外面と最外側ランス管の内面との間で続けることができる。狭窄部は少なくとも交換可能ランス先端部アセンブリの軸長を越えて延在することができ、中間ランス管は、最内側ランス管および最外側ランス管の厚みと比べて、軸長全体にもっと厚みを増すことになる。この場合、中間ランス管と最外側ランス管との間における狭窄部は円周状に連続してもよく、もしくは不連続でもよい。後者の場合、中間ランス管の外面でその出口端部から離れて延びるリブを画成することができる。これらのリブは、連続するリブ間に抑制流を生じさせることができる場合、最外側ランス管の内面に当接してもよい。または、リブと最外側ランス管との間に抑制流を発生可能な場合、および連続するリブ間に非抑制流もしくは低抑制流を発生可能な場合、リブは、最外側ランス管の内面からわずかに離間させてよい。リブは、ランスの軸に対して平行に、もしくは軸を中心にらせん状に延在させてもよい。
【0021】
冷却液の流れに適切な狭窄部を備えるためには、中間ランス管の出口端部の成形は、ビードを設けたことによる結果より顕著でなくてよい。少なくとも交換可能ランス先端部アセンブリの軸長全体にわたって、中間ランス管は、上述のように最内側ランス管および最外側ランス管に比して厚みを増してよい。成形は、出口端部においてその中間ランス管の端部から厚みを増した長さの外面の周辺まで丸くすることを含むことができる。狭窄部は、中間ランス管の縁端部を横断して厚みを増した長さの外面まで延在させてもよい。外面は、上に詳述したように、例えばランスの軸に対して平行に、もしくは軸を中心にらせん状にリブを設けることによって、円周状に連続し、もしくは円周状に不連続であってもよい。これにより狭窄部は、端壁の湾曲によってその角度が90
o以上、例えば約120
oまで可能な場合、少なくとも90
oの角度で延在することができる。
【0022】
第2の局面において、本発明のランスはシュラウドを有し、この中へランスが延在している。シュラウドは3本の実質的に同心のシュラウド管を有し、そのうちの最内側シュラウド管はその直径がTSLランスの最外側ランス管より大きい。シュラウドの出口端部には環状端壁があり、これは最外側シュラウド管と最内側シュラウド管の出口端部をそれぞれ接合し、さらにこれは中間シュラウド管の出口端部から離間している。この構造は、例えばシュラウドに沿って出口端部へ向かう最内側シュラウド管と中間シュラウド管との間の流れによって、その後シュラウドに沿って戻り出口端部から離れる中間シュラウド管と最外側シュラウド管との間の流れによって、またはこの流れとは逆に、冷却液をシュラウドの中に循環させることができる。端壁と、3本のシュラウド管のそれぞれの長さの隣接する小さい部分は交換可能シュラウド
を含んでもよい。したがって、焼け減りもしくは損耗したシュラウド先端部アセンブリを3本のシュラウド管のそれぞれの長さの大部分から切り離して、新規もしくは修理したシュラウド先端部を定位置に溶接することができる。
【0023】
端壁は中間シュラウド管の出口端部から離間させている。しかし、出口端部と端壁との間に離間は、例えば冷却液の流れに対して狭窄部を与えることであり、これによって、端壁と中間シュラウド管の出口端部を横断しこれらの間を流れる冷却液の流速が加速する。この構造は、端壁を横断する冷却液の流れを比較的薄い膜もしくは薄い流れの形をとり、望ましくはこの膜もしくは流れが冷却液内で乱流を抑制するように機能させてもよい。このような流れを向上させるため、中間シュラウド管の端部を適切な形状にしてもよい。したがって、一構造において、中間シュラウド管の端部でビードを画成し、これは、半径方向に湾曲した凸面、すなわち端壁の方向に向いた凸面を有するものでよい。このようなビードの場合、端壁は相補的凹面状でよい。例えば、ビードは涙滴状もしくは同様のものでよいが、端壁は凹面半環状でよい。このような向かい合った凸面形と凹面形の場合、中間シュラウド管の出口端部と端壁との間の狭窄部は、シュラウドの半径方向の実質的な延長部(すなわち、シュラウドの長手方向の軸を含む平面内にある)とすることができる。これによって、冷却液とビードおよび端壁のそれぞれとの間の冷却液の単位質量流当たりの表面間接触比は、シュラウドから狭窄部までの冷却液の流れと比べて大きくなり、これによってシュラウドの出口端部からのエネルギーの抽出が向上する。
【0024】
一構造において、中間シュラウド管の出口端部の断面(すなわち、ランスの長手方向の軸を含む平面)は涙滴形もしくは実質的に円形である。この場合、端壁の凹面半環状形は、これによって端壁がビードに対して相補的形状となるが、これらの平面内で断面が実質的に半円形でよい。その結果、ビードと端壁は密接に隣接して冷却液流路において抑制を行ない、これは約180
o、例えば90
oから180
oまでの角度によって延在することができ、これを介して冷却液流路はシュラウドの出口端部へ向かう流れから出口端部から離れる流れに変わる。中間シュラウド管が流れの狭窄部を備えない構造とは異なり、狭窄部を備えることによって、流れを抑制して、最内側シュラウド管の外面から最外側シュラウド管の内面までを正確に湾曲する比較的薄い膜もしくは薄い流れにする。
【0025】
本発明のランスと平行に、狭窄部はビードから中間シュラウド管の外面と最外側シュラウド管との間で継続してもよい。狭窄部は、少なくとも交換可能シュラウド先端部アセンブリの軸長を越えて延在してもよく、中間シュラウド管によって最内側シュラウド管および最外側シュラウド管の厚みと比べて、軸長全体にもっと厚みを増すことになる。この場合、中間シュラウド管と最外側シュラウド管との間における狭窄部は円周状に連続してもよく、または不連続でもよい。後者の場合、中間シュラウド管の外面でその出口端部から離れて延びるリブを画成することができる。これらのリブは、連続するリブ間に抑制流を生じさせることができる場合、最外側シュラウド管の内面に当接してもよい。または、リブと最外側シュラウド管との間に抑制流を発生可能な場合、および連続するリブ間に非抑制流もしくは低抑制流を発生可能な場合、リブは、外側シュラウド管の内面からわずかに離間させて配することができる。リブは、シュラウドの軸に対して平行に、もしくは軸を中心にらせん状に延在させてもよい。
【0026】
冷却液の流れに適切な狭窄部を備えるためには、中間シュラウド管の出口端部の成形は、ビードを設けたことによる結果より顕著でなくてよい。少なくとも交換可能シュラウド先端部アセンブリの軸長全体にわたって、中間シュラウド管は、上述のように最内側シュラウド管および最外側シュラウド管に比して厚みを増してよい。成形は、出口端部においてその中間シュラウド管の端部から厚みを増した長さの外面の周辺まで丸くすることを含むことがある。狭窄部は、中間シュラウド管の縁端部を横断して厚みを増した長さの外面まで延在させてもよい。外面は、上に詳述したように、例えばシュラウドの軸に対して平行にもしくは軸の周囲にらせん状にリブを設けることによって、円周状に連続し、もしくは円周状に不連続であってもよい。これにより狭窄部は、端壁の湾曲によってその角度が90
o以上、例えば約120
oまで可能な場合、少なくとも90
oの角度で延在することができる。
【0027】
第3の局面において、本発明は、第2の局面によるシュラウドと組み合わせて、第1の局面によるランスを提供するが、このランスおよびシュラウドは1つのアセンブリであり、ランスはシュラウドを介して延在し、ランスのシェルの3本のランス管のうち最外側のものと最内側シュラウド管との間に環状通路を画成し、シュラウドの出口端部はランスの両端部の中間に配置され、ランスの出口端部に向けて開口している。
【0028】
本発明による先端部アセンブリは同心の内部スリーブ部材および外部スリーブ部材を有し、これらは先端部アセンブリの端部において環状端壁により互いに接合されている。先端部アセンブリはまた、内部スリーブ部材および外部スリーブ部材間に置かれ、端壁に隣接しているバッフル含んでいる中間スリーブ部材も有している。バッフルは少なくとも1つの表面部分を有し、少なくとも対向表面の一部と、少なくとも端壁と、外部スリーブ部材および内部スリーブ部材とによって作動し、これらの間の冷却液の流速を制御して、アセンブリからの熱エネルギーの抽出を達成する。
【0029】
内部スリーブ部材および外部スリーブ部材と端壁は、これらを接合することによって一体化し、1つの構成部品としての先端部アセンブリを構成することができる。このために、これらは鋼片などの1個の適切な金属で作ることができる。したがって、先端部アセンブリと端壁は適した材料のものであることが望ましい。多くの場合、例えば銅もしくは銅合金などの高い熱伝導率の材料が適している。
【0030】
バッフルも、銅もしくは銅合金などの高い熱伝導率の材料で作ることができる。しかし、バッフルの熱伝導率はあまり重要ではない。なぜならば、これは使用中に実質的にその全表面面積にわたって冷却液と接触するからである。したがって、バッフルを作る材料は、費用、強度、および製造し易さなどの他の理由で選択することができる。バッフルは、例えば、ステンレス鋼などの適した鋼鉄で作ることができる。バッフルは適切な一片の材料で形成してもよく、または鋳造して、必要に応じて、少なくともその表面が冷却液の流速の制御に寄与する領域を表面処理してもよい。
【0031】
先端部アセンブリにおいて、バッフルは、外部スリーブ部材および内部スリーブ部材に関連して必要な位置に、これらの部材と壁に関連して接続することによって維持される。このために、バッフルは、端壁へ、内部スリーブ部材および外部スリーブ部材のうちの一方へ、またはスリーブ部材のうち一方の環状延長部へ固定することができる。実際問題として、スリーブ部材への、もしくはスリーブ部材の延長部への固定を行なう方が便利である。しかし、それぞれの場合、この固定は、バッフルと、これが固定される部材、延長部もしくは壁との間で液の流れを可能にするものであることが望ましい。このために、固定は円周状に離間した複数の場所に行なわれる。最も便利なのは、固定は、バッフルおよびこのバッフルが固定される部材、延長部、もしくは壁へ、例えば溶接によって取り付けるそれぞれの場所にそれぞれフィン、ブロックもしくは固定装置で行なうことである。しかし、他の構造において、先端部アセンブリがランスの一部として接続されている場合、バッフルは長手方向に調節可能として、狭窄部によって冷却液の流速を減速できる程度で変化させてもよい。このような調節は、例えばバッフルが接続されたランスの中間管をランスの最内側管および最外側管に対して長手方向に調整可能とすることによって可能である。
【0032】
適した一実施例において、バッフルは、その外周面と端部周辺面が外部スリーブ部の対向する内周面と端壁の内面とに対してそれぞれ密接に隣接するよう固定される。加えて、このようにバッフルが固定された場合、その端面に隣接するその内周面の一部を内部スリーブ部材の対向する外周面の一部に密接に隣接させることができる。個々の対向面は実質的に均等に離してよい。この離間は、端面から離間させたバッフルの内周面の一部と内部スリーブ部材の対向外周面との間の離間より小さいことが望ましい。この構造は、冷却液をバッフルと内部スリーブ部材間に端壁に向けて流し、端壁を横断させ、その後端壁から離れて端面と外部スリーブ部材との間を通過させることによって、先端部アセンブリを介して流すことを可能にするものである。このような流れの場合、密接に隣接する対向面間を通過する冷却液が、バッフルと内部スリーブ部材間の広い空間を通過する流れに比して流速を速める。しかし、注目すべきは、バッフルと外部スリーブ部材間の構造をやはり同様に変えることによって、冷却液の流れを上述とは逆方向にすることができることである。
【0033】
バッフルの外周面は、外部スリーブ部材の対向内面に密接に隣接する実質的に均一な円形断面でよい。したがって、これらの密接に隣接した面間には実質的に均一な環状断面の通路があってよく、これは、適切な流れと流速を達成して熱伝導を促進し、先端材料の表面温度を損傷が起こる温度より確実に低く保つように設計する。例えば、これらの面間の離間は約1ないし25mm、および望ましくは1ないし10mmでよいが、これは使用される液体および必要な熱除去率によって変化する。しかし、他の構造において、バッフルの外面は実質的に円形の断面以外でもよい。
【0034】
第1の他の構造において、バッフルの外面は、対向面間の間隔をバッフルの端面から離れる方向に大きくするよう「胴をくびらせ」てもよい。さらなる他の選択肢において、バッフルの外面に冷却液のらせん状の流れを作るよう働く一条らせんリブもしくは複数条らせんリブ、または溝構造を設けることができる。他の構造例では、バッフルの外面にリブと溝を交互に設けて、これらをバッフルの端面から離れる方向に延在させることができる。
【0035】
先端部アセンブリはランスの出口端部にだけ設けてもよい。または、シュラウドランスの場合、先端部アセンブリでランスおよびそのシュラウドのいずれかの、もしくは両方の吐出端部を画成することができる。
【0036】
ランスおよびシュラウドのそれぞれは長尺状であり、この場合ランスのシェルおよびシュラウドは同様の構造である。シュラウドは当然径が大きいが、長さはランスのシェルより短い。しかし、シュラウドおよびランスのそれぞれは3本の同心管を有し、これらは外側管と、内側管と、中間管で構成されている。さらに、シュラウドおよびランスのそれぞれにはその吐出端部に先端部アセンブリを設けることができる。さらに説明をし易くするため、シュラウドとランスのシェル双方の同心管を「シェル」と言う用語で呼ぶ。
【0037】
先端部アセンブリが(シュラウドもしくはランスの)シェルの吐出端部を画成している場合、シェルの内側管および外側管は内部スリーブ部材および外部スリーブ部材と端と端を当接させた状態で接合される。さらに、シェルの中間管は先端部アセンブリのバッフルへ連結される。
【0038】
上に示したように、内部スリーブ部材および外部スリーブ部材と、先端部アセンブリの端壁は、銅もしくは銅合金などの高い熱伝達性の材料で作ることができる。しかし、シェルの管はこのような高い熱伝達性を持つ必要はない。したがって、これらは費用および/または強度などの他の基準を満たすよう選択された材料で作ることができる。便利な一構造において、内側管および中間管は316Lステンレス鋼で、外側の管は炭素鋼で作っている。このような外側管の場合、高温と水などの冷却液以外の処理ガスにさらすことがその有効稼動寿命の決定要因になりやすいが、冷却液による腐食に対する抵抗は内側管および中間管の関連要因となる。
【0039】
内側および外側管は先端部アセンブリの内部スリーブ部材および外部スリーブ部材と溶接により接合することが望ましい。各管は直接それぞれのスリーブ部材へ溶接することができる。しかし、少なくとも1本の管および個々のスリーブ部材に関しては、また望ましくは各管およびそのスリーブ部材に関しては、管およびスリーブ部材のそれぞれ
を両者の間に
ある延長管
に溶接して
もよい。例えば、少なくとも、銅もしくは銅合金と鋼鉄間に溶接
部を設ける場合、消耗可能なアルミ青銅を使用して溶接部を作ることが望ましい。シェルの中間管と先端部アセンブリのバッフルが協働するやり方も同様でよい。
【0040】
本発明のランスおよびシュラウドのそれそれぞれの場合、冷却液は、狭窄部がなければ必要であったであろう質量流量より少なくてよい。したがって、低出力のポンプを所定の冷却液に用いることができる。所定のランスおよび冷却液に関する冷却液質量流量は、所定の高熱冶金工程に必要な冷却能力によって設定される。したがって、質量流量は実質的にかなり変えることができる。本発明の一実施例において、冷却液の流れはその冷却液の出口温度に関連させている。したがって、ランスにはその温度を監視するセンサを設けることができる。このような構造は、冷却液を循環させるのに用いるエネルギーをその時の熱除去要求に基づいて最小にすることが望ましい。
【0041】
冷却液として水を用いる場合、使用される液体および用途に応じて、質量液体流量は、ランスに対しては500から2000 l/minの範囲で、またシュラウドに関しても同様の流れでよい。さらに、冷却液として水を使用する場合、狭窄部は、狭窄部を通過した流体流量が狭窄部の上流の液体流量の約6から20倍高くなることが望ましい。さらにまた、冷却液として水を使用する場合、シュラウドに関する狭窄部は、ランスに対するものと同程度の流量の増加になることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明によるランスの位置形状を模式的に示す図である。
【
図2】本発明による被覆されたランスアセンブリの下部の断面図である。
【
図7】
図2の被覆されたランスアセンブリの構成部品の他の形状のそれぞれの斜視図である。
【0043】
本発明を分かり易くするために、ここで添付図面を参照する。
【0044】
図1は、本発明の一実施例によるTSLランスLを模式的に示す。ランスLは4本の管P1ないしP4を有し、これらの管P1ないしP3は環状端壁Wを含むシェルSの主要部を形成している。図示の構造において、ランスLは、必要な高温冶金工程のために、管P4の穴へ燃料を注入し、管P3とP4間の環状通路Aへ空気および/または酸素を注入することによって、溶解湯のスラグ層内におけるトップサブマージ注入を可能にする。図示のように、管P4はランスLの下部出口端部Eより上で終端し、燃料と空気および/または酸素を混合してその燃料を燃焼することができる混合室Mを備えている。スラグ内に酸化条件、還元条件もしくは中性条件を生成するために燃料の酸素に対する比が制御される。燃焼されない燃料があれば、これはスラグ内に注入され、還元条件が必要な場合に還元要求条件の一部になる。
【0045】
シェルSの端壁Wは管P1とP3を管P1とP3の周囲にランスLの出口端部Eにおいて接合している。さらに、管P2の下端部は端壁Wから離間している。図示するように、冷却液はシェルS内を循環できる。
図1において、冷却液は、管P2とP3との間に供給され、管P2の下端部を周回し管P1とP2間を戻ると示されている。しかし、特に管P1からの熱エネルギーの抽出が少ない方が適している場合、この流れを逆にして使用することができる。
【0046】
ランスLの下端部Eのところを除いて、シェルSは図示の通常使用中の方向に実質的に一定の水平横断面を有している。しかし、端部Eにおいて、管P2の下端部の形状により、さらにこれの管P3および端壁Wにより狭窄部Cが備わっている。図示のように、管P2の下端部は、半径の横断面(すなわち、ランスLの長手方向の軸Xを含んでいる平面)を実質的に円環面形状にして涙滴形、もしくは実質的に円形にした拡大ビードBを有している。さらに、ビードBに面しているシェルSの環状端壁Wの表面は相補的凹面の半環状であり、ビードBはその下部凸面が端壁Wの凹面に接近し隣接するが、これとは接触しないよう配置されている。このような構造は、管P2とP3間の下降流がビードBの上部凸面に到達するまで冷却液の流速が実質的に一定であり、その後流速を徐々に増速する。ビードBの上部の周辺の約90
oの角度を通る流れが増速し、ビードBと端壁W間の流れがビードの下半分の周辺で最大になる。最大流速は、約180
oの角度の冷却液の流れにおいてはビードBの下半分の周辺で維持される。その後、冷却液がビードBの上半分を通過するにしたがって、流速が管P1およびP2間の上昇流において最小になるまで減速する。狭窄部Cは主として、ビードBの下半分と端壁Wとの間の間隔によって決まるが、この狭窄部CはビードBの上面周辺において管P3内の90
oの流れで始まる。
【0047】
狭窄部C中の冷却液流速の増速は、冷却液とビードBのそれぞれと端壁Wとの間の冷却液の単位流速当たりの面対面接触比を増加させる。その結果、ランスLの出口端部Eからの熱エネルギー抽出が向上する。これは、ランスLの浸漬下端部での焼け減りおよび損耗が最大になり易く、ランスの修理のための稼動停止間の時間を設定するのに特に有利である。
【0048】
図2の断面図は使用中の方向における被覆ランスアセンブリ10を示す。図示するように、アセンブリ10は複数の管状部材を含んでいる。これらは環状シュラウド12の複数の部材と、シュラウド12の中に延在して間に環状通路16を画成しているランス14の複数の部材とを含む。
図2はアセンブリ10の下部だけを示す。しかし、
図2から明らかなように、ランス14はシュラウド12より長尺で、アセンブリ10の下端部でシュラウド12を越えて突出している。ランス14がシュラウド12を越えて突出している程度は、シュラウド12より下のランス14の断面が図示の使用の方向において省略されているため、
図2にからは明瞭ではない。
【0049】
ランス14の管状部材は最内側管18と、環状先端部アセンブリ22のシェル20の下端部で終焉している管18の周囲に外部シェル20とを含んでいる。管18はランス14より短く、環状先端部アセンブリ22の中へ延在し、この中で終端している。さらに、管18とシェル20との間に環状通路26が画成されている。この構造は、燃料を燃焼し、チャンバ27からアセンブリ22を越えて延在する燃焼領域を作り出すために、炭素質燃料と酸素含有ガスが圧力により個々の通路24および26を通過でき、管18の端部のアセンブリ22内の混合室27で混合されることができる。
【0050】
ランス14のシェル20は、内側管28と、外側管30と、中間管32とで形成され、環状端壁40が先端部アセンブリ22の全外周を囲繞して内側管28および外側管30の先端と接合している。シェル20の内側管28と中間管32との間に環状通路42が画成されている。さらに、シェル20の中間管32と外側管30の間に環状通路44が画成されている。これらの通路42および44は、端壁40とこれに隣接する中間管32の端部との間に間隔が開けられているため、連通している。したがって、冷却液は通路42に沿いシェル20を通りそのアセンブリ20を通過し、通路44に沿って戻ることができる。
【0051】
先端部アセンブリ22の中間管32は、外側管30に密接に隣接した円筒形外面を有する。したがって、通路44は少なくともアセンブリ22内でその半径が比較的狭くなっており、少なくともシェル20の全範囲に沿って比較的狭くなっている。ランスの直径により変わるが、アセンブリ22内の中間管および外側管32および30間の間隔は約5mmから10mm、例えば約8mm、さらに、壁底の上から中間管32のところまでの短距離よりわずかに長い。これとは反対に、通路42は、シェル20の内側管28と中間管32の間では比較的広く、例えば15から30mmの間である。しかし、先端部アセンブリ22内の中間管32の内周面は、円錐台状に先細りで端壁40に向かって延びる方向に厚く内径は小さい。その結果、通路42の半径の範囲はアセンブリ22内で徐々に減少する。この減少は、通路44に対するのと同様、通路42の半径の範囲であることが望ましい。さらに、端壁40とその隣接する管38の端部間の間隔の開け方も通路44の半径範囲と同様である。このため、圧力によって通路44に沿って供給される冷却液は、管28と32間の流れ速度を徐々に増速し、高流速で端壁40を横断し、通路44に沿って流れる。したがって、冷却液はランス14の外面からシェル20および先端部アセンブリ22で高レベルの熱エネルギー抽出を達成することができ、これによって、ランスが稼働中に曝される高温の影響に対して保護対策が達成できる。
【0052】
先端部アセンブリ22を画成しているランス14の端部は損耗と焼け減りを最も受ける区域である。この構造は、管28、30と32が下端部を切り離すことができ、交換用の先端部アセンブリ22を、例えば溶接などによって取り付けることができる。切り離しおよび交換する長さは、そのランス14の出口が浸漬される深さなどによりさまざまにすることができる。
【0053】
ランス14の中間管32は、管28、30および端壁40と固定関係に保つことができる。これは何らかの便利な構造によって達成できる。固定関係があれば、冷却液が通路42に沿って流れ通路44に沿って戻る流路が確保されるので、冷却液による必要な熱エネルギー抽出量は、必要なら通路42への冷却液の供給量を変えることによって維持することができる。固定関係の確立と維持は、壁40の上面もしくは管32の端面の周囲の場所にいくつかのくぼみもしくは他の適切な形を間隔を開けて設けることによって確保できる。このようなスペーサもまたランス14における振動の不当な発生を回避するのに役立つ。
【0054】
シュラウド12に戻るが、作られる管の個々の大きな直径とシュラウド12の長さとは別に、その構造がシェル20とその先端部アセンブリ22のものと同じである。したがって、シュラウド12の構成部品は、シェル20およびそのアセンブリ22に用いた参照番号に100を加算したものになる。故に、シュラウド12のさらなる説明は、シェル120および先端部アセンブリ122を有していること以上に必要ない。
【0055】
ランスアセンブリ10を使用した場合、上述のようにランス14からシュラウド12の外面まで固化したスラグのコーティングが設けられるが、このようなコーティングはシュラウド12の外面の下部の範囲に作ることもできる。この後、ランス14の下端部はスラグ溶解湯に必要な深さで浸漬され、これによりコーティングが形成されるが、溶解湯上に置かれたシュラウド12より低い程度による。スラグ溶解湯を含む反応炉内で行なわれる高温冶金反応は、通常スラグから溶解湯より上の反応炉の空間へ展開する可燃ガス、すなわち主として一酸化炭素と水素を発生することになる。必要な場合、これらのガスを後燃焼し、これから熱エネルギーをスラグによって回収することができる。このため、酸素含有ガスを通路16の下端部へ供給し、さらにこれから送り出すことによって反応炉の空間へ供給することができる。
【0056】
シュラウド12の主たる冷却は、冷却液を通路142に沿って循環させ通路144に沿って戻すことによって行なうが、さらなる冷却は通路16を介してスラグ湯の表面より上に注入することによって達成する。ランス14の場合、十分な冷却を通路28への亜音速注入の高速ガスによって達成することができるが、さらなる実質的な冷却は、冷却液を通路42に沿って循環させ、通路44に沿って戻すことによって達成される。ランス14に対する2つの冷却動作間の均衡は、冷却液が循環する質量流速を変えることによって変化させることができる。また、通路44の狭い範囲(少なくともアセンブリ22内)によって備わる狭窄部によって生じる通路42内の流速について、冷却液の増速された流速によってアセンブリ22とシェル20の下部の範囲からの熱エネルギー抽出が向上する。その結果、特にアセンブリ22における損耗および焼け減りが結果として少なくなることによってランスの稼動寿命が延びる。
【0057】
図1のランスLと
図2のランス10の場合の構造は、例えばシェルに沿って出口端部へ向かうシェルの最内側管と中間管間の流れによって、次いでランスに沿って戻り、出口端部から離れるシェルの中間管と最外側管間の流れによって、またはこの流れとは逆に、冷却液をランスのシェルに循環させる。それぞれの端壁W、40と、シェルS、20の3本のランス管のそれぞれの長さの隣接する小部分は交換可能ランス先端部アセンブリを有し、これにより焼け減りもしくは損耗したランス先端部アセンブリを3本のランス管のそれぞれの長さの大部分から切り離して、新規のもしくは修理したランス先端部アセンブリを定位置に溶接することができる。シェルS、20の端壁W、40はランスの出口端部にあり、これを画成している。さらに、少なくとももう1本のランス管P4、18が中央穴24を画成し、少なくともさらにもう1本のランス管P4、18がシェルS、20の最内側ランス管から間隔を開けて配され、環状通路A、42をその間に画成し、これによって穴と通路を通過する材料をスラグ層内で注入する際にランスの出口の近くで混合することができる。
【0058】
TSLランスL、10は必ずしも直径の大きくする必要はない。さらに、上端部もしくは入口端部に隣接しているような出口端部から離れた場所に、ランスは1つの構造物(図示しない)を有することによって、これは懸垂可能になりTSL反応炉内に垂直に吊り下がる。ランスL、10は最低約7.5メートルの長さであるが、特殊用途の大型TSL反応炉の場合は、約20メートルまでの、もしくはそれより長い長さにすることができる。より一般的には、ランスは約10から15メートルの長さの範囲である。これらの寸法はシェルの端壁により画成されるランスの全長からその出口端部までの長さに関連している。少なくとももう1つのランス管P4、18を出口端部へ延在させることができ、したがって、同じ全長のものにすることができるが、図示のように、これを出口端部の内側に向けて短距離で、例えば約1000mmまでで終焉させることができる。ランスは、一般的にはシェルの内径によって決められる約100から500mm、望ましくは約200から500mmの大きな直径を、さらに150から700mm、望ましくは約250から550mmの全径を有している。
【0059】
図3ないし
図7のそれぞれは、ランス14の先端部アセンブリ22の管38および/またはシュラウド12の管38からなるバッフルの個々の他の形状を模式的に示すが、ランス14に採用されるバッフルをシュラウド12に使用されたものと同じ種類にする必要はない。
図3の管60は
図2の管39もしくは管138とは異なる。管38および138のそれぞれは円筒形外面を有し、これは、個々の外側管38、138から実質的に一定の間隔を開けて配され、この間の通路44内で実質的に一定の冷却液の流速を維持する。これとは逆に、管60の外面は、通路44内を上方に向けて流れる際に、管60の下端部においてその外径が大きい結果生じる流速の減速後に、液流の速度を徐々に減速することができるよう成形されている。外側管38および/または138からのエネルギーの除去を行なう高さより下でこの減速が進行しないと言う前提で、先端部アセンブリ22および/または122の下端部からの良好なエネルギーの除去を達成することができる。
【0060】
図4および
図5のそれぞれの管62および64は外面が管38、138の構造とは異なる。管62および64はそれぞれの形状を示すが、これらは同様の結果を達成する。管62の場合、隆起したらせん、ビード、もしくはリッジ63が円筒形外面の周囲にらせん状になって延在し、これは、羽根構造が採用されている場合、連続的、もしくは断続的にすることができる。これに対して、管64の外面はその中に形成された切り欠き溝65を有している。それぞれの場合、冷却液は少なくとも先端部アセンブリ22および/または122内では通路44および/または144内にらせん状に流れるよう強制される。管62のビードもしくはリッジ63は円形横断面のものとして示すが、これは管62に対して仮着溶接することによって設けることができる。しかし、ビードもしくはリッジ63を他の横断面形状にすることができるが、管64の溝65は図示の四角形の形状以外の横断面形状にすることができる。
【0061】
図6の管66は全体形状が管38および138と同様である。しかし、これはその下端部に隣接してその中を通る円周上の穴67の列を有している。冷却液は、管66の下端部を周回して通過する流れの他に、これらの穴67を通ることができる。したがって、管66を設けたランス14および/または144の下端部から熱エネルギーをより効率的に除去することができる。
【0062】
図7の管68にはその外面上に長手方向の溝ひだ、もしくは溝69の列が設けられ、長手方向のリッジ70になっている。この場合、冷却液の流速の増速の度合は溝69が作られていない場合より小さい。すなわち、流速は管68の外面の平均半径による。
【0063】
図2の構造のそれぞれの管38および138と、
図3ないし7のそれぞれの管60,62,64,66および68は適切な方法で作ることができる。例えば、これらの管を適した金属の鋼片から、または適した金属を実質的に最終形状に鋳造することによって機械加工もしくは鍛造することができる。
【0064】
冷却液を適した液体もしくはガスのものにすることができる。液体冷却剤が望ましいが、使用可能な液体冷却剤は、シロキサンなどの有機珪素化合物をはじめとして、水と、イオン液体と、適したポリマー材料を含んでいる。使用可能な特定の珪素ポリマーの例としては、ダウ・コーニング・コーポレーション所有の商標SYLTHERMの熱伝達液が含まれる。
【0065】
最後に、本発明の精神もしくは範囲から逸脱することなく上述の部品の構造および仕組みにさまざまな改変、修正および/または追加を行なうことができることは理解されるところである。