(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0020】
まず、実施形態の構成を、
図1を参照しながら説明する。以下では、「パワーウインドウ」を「PW」と表記する。
【0021】
図1は、PW制御システム100とPW制御装置1の構成を示した図である。PW制御システム100は、自動車に搭載され、PW制御装置1とその他の構成要素5〜9を含んでいる。
【0022】
PW制御装置1は、モータ9を駆動して、PW開閉機構8を作動させ、車両のドアに設けられた窓6の窓ガラス7を開閉動作させる。PW制御装置1は、本発明の「開閉体制御装置」の一例である。窓ガラス7は、本発明の「開閉体」の一例である。モータ9は、本発明の「アクチュエータ」の一例である。
【0023】
PW制御装置1には、制御部2、PW操作部3、およびモータ駆動部4が備わっている。
【0024】
制御部2は、マイクロコンピュータから成り、窓ガラス7の開閉動作を制御する。制御部2には、記憶部2a、モータ制御部2b、位置検出部2c、速度検出部2d、変化量算出部2e、挟み込み判定部2f、および閾値更新部2gが設けられている。
【0025】
PW操作部3は、窓ガラス7の開閉動作を操作するためのスイッチから成り、車内に設けられている。PW操作部3は、利用者により操作されて、その操作に応じた信号を出力する。制御部2は、PW操作部3から出力される信号に基づいて、PW操作部3の操作状態を検出する。本例では、PW操作部3でマニュアル開閉操作とオート開閉操作を行うことができる。
【0026】
モータ9は、直流モータから成る。モータ駆動部4は、モータ9を正転または逆転で駆動する回路から成る。モータ制御部2bは、PW操作部3の操作状態や窓ガラス7の開閉状態に応じて、モータ駆動部4を動作させて、モータ9に流れる電流をPWM(パルス幅変調)で制御する。これにより、モータ9が正転または逆転して、PW開閉機構8が作動し、窓ガラス7が下降または上昇して、窓6が開閉される。モータ制御部2bは、本発明の「制御手段」の一例である。
【0027】
パルス発生器5は、たとえばロータリエンコーダから成り、モータ9の回転状態に応じたパルス信号を制御部2に出力する。位置検出部2cは、パルス発生器5から出力されたパルス信号を検出し、該パルス信号に基づいて窓ガラス7の開閉位置(窓6の開度)を検出する。具体的には、位置検出部2cは、たとえばパルス発生器5から出力されるパルス信号の立ち上がりなどの数を数えて、その計数値から窓ガラス7の上端の開閉位置を判断する。位置検出部2cは、本発明の「位置検出手段」の一例である。
【0028】
速度検出部2dは、位置検出部2cが検出した窓ガラス7の開閉位置の時間変化に基づいて、窓ガラス7の移動速度を検出する。窓ガラス7の移動速度は、モータ9の駆動状態に応じた物理量の一例である。変化量算出部2eは、速度検出部2dにより検出した窓ガラス7の移動速度の変化量を算出する。速度検出部2dは、本発明の「物理量検出手段」の一例である。変化量算出部2eは、本発明の「算出手段」の一例である。
【0029】
挟み込み判定部2fは、窓ガラス7の開閉動作中に、変化量算出部2eが算出した窓ガラス7の移動速度の変化量と、所定の閾値との比較結果に基づいて、窓6への異物の挟み込みの有無を判定する。その挟み込み判定用の閾値は、記憶部2aに記憶されている。記憶部2aには、挟み込み判定用の閾値以外にも、位置検出部2cと速度検出部2dの各検出値、変化量算出部2eの算出値、およびその他制御部2が各部を制御するためのデータが記憶される。挟み込み判定部2fは、本発明の「判定手段」の一例である。記憶部2aは、本発明の「記憶手段」の一例である。
【0030】
閾値更新部2gは、記憶部2aに記憶された窓ガラス7の開閉位置と移動速度の変化量に基づいて、記憶部2aに記憶された挟み込み判定用の閾値を更新する。つまり、記憶部2aに記憶された窓ガラス7の開閉位置と移動速度の変化量は、挟み込み判定用の閾値を更新するための学習データである。閾値更新部2gは、本発明の「更新手段」の一例である。
【0031】
窓ガラス7の全移動範囲Zのうち、全閉位置(窓6の上端部)の近傍にある特定範囲Zcを窓ガラス7の上端が閉方向へ移動(上昇)しているときに、挟み込み判定部2fで窓ガラス7の移動速度の変化量と比較される閾値を、閾値更新部2gが更新する(後述する
図3の学習閾値)。また、全開位置(窓6の下端部)の近傍にある特定範囲Zoを窓ガラス7の上端が開方向へ移動(下降)しているときに、挟み込み判定部2fで窓ガラス7の移動速度の変化量と比較される閾値も、閾値更新部2gが更新する(後述する
図6の学習閾値)。
【0032】
一方、特定範囲Zc以外の範囲(特定範囲Zoを含む)を窓ガラス7の上端が閉方向へ移動(上昇)しているときは、挟み込み判定部2fで窓ガラス7の移動速度の変化量と比較される閾値は、閾値更新部2gで更新されず、予め設定して記憶部2aに記憶した固定値である(後述する
図3の固定閾値)。また、全開位置近傍の特定範囲Zo以外の範囲(特定範囲Zcを含む)を窓ガラス7の上端が開方向へ移動(下降)しているときも、挟み込み判定部2fで窓ガラス7の移動速度の変化量と比較される閾値は、閾値更新部2gで更新されず、予め設定して記憶部2aに記憶した固定値である(後述する
図6の固定閾値)。
【0033】
次に、PW制御装置1の動作を、
図2〜
図7を参照しながら説明する。また適宜、
図1も参照する。
【0034】
まず、窓6を閉める場合の動作を説明する。
図2は、窓6を閉める場合の、PW制御装置1の動作を示したフローチャートである。
図3は、窓6を閉める場合の、窓ガラス7の開閉位置と移動速度(上昇速度)の変化の一例を示した図である。
図4は、窓6を閉める際に異物を挟み込んだ場合の、窓ガラス7の開閉位置と移動速度の変化の一例を示した図である。
【0035】
ユーザがPW操作部3でオート閉操作またはマニュアル閉操作を行うと、制御部2は、窓の閉操作が有ったと判断する(
図2のステップS1)。すると、モータ制御部2bが、モータ駆動部4を作動させて、モータ9を閉方向へ回転させ、窓ガラス7を閉動作させる(
図2のステップS2)。
【0036】
窓ガラス7が閉動作を開始した直後は、モータ9に突入電流が流れるため、
図3(a)、(b)に示すように、窓ガラス7の移動速度(実線)は、急激に上昇した後すぐに低下する。この動作開始直後の突発的な窓ガラス7の移動速度の変動で、挟み込みを誤判定しないように、変化量算出部2eは、所定の間隔で窓ガラス7の移動速度の変化量を算出する。つまり、動作開始直後の突発的な窓ガラス7の移動速度の変動を無視するような時間間隔で、窓ガラス7の移動速度の変化量を算出する。
【0037】
動作を開始してからしばらくすると、モータ制御部2bがモータ駆動部4を介してモータ9の駆動を制御することで、窓ガラス7の移動速度がある程度の速度になる。そして、窓ガラス7が摺動する窓枠部品などの経年劣化がない使用初期の場合は、
図3(a)に示すように、窓ガラス7の移動速度がほぼ一定で推移する。対して、窓枠部品などの部品の経年劣化が生じた場合は、モータ制御部2bがモータ9の駆動を制御しても、窓枠部品と窓ガラス7の摩擦抵抗などの影響により、
図3(b)に示すように、窓ガラス7の移動速度が不安定に変動する。
【0038】
位置検出部2cにより検出した窓ガラス7の開閉位置が全閉位置近傍の特定範囲Zcに入るまでは(
図2のステップS3:NO)、挟み込み判定用の閾値が予め設定された一定の固定値(以下、「固定閾値」という。)になっている(
図2のステップS4、
図3の一点鎖線)。このため、挟み込み判定部2fは、変化量算出部2eにより算出した窓ガラス7の移動速度の変化量と、その固定閾値とを比較する(
図2のステップS5)。
【0039】
そして、特定範囲Zc以外の範囲を窓ガラス7が閉動作中に、たとえば窓6の上枠と窓ガラス7の上端との間に異物が挟み込まれると、
図4(a)に示すように、窓ガラス7の移動速度が低下して、窓ガラス7の移動速度の変化量(破線)が固定閾値以上になる(
図2のステップS6:YES)。すると、挟み込み判定部2fは、窓6への異物の挟み込みが有ると判断する(
図2のステップS7)。この場合、モータ制御部2bが、モータ駆動部4によりモータ9を一旦停止させてから反転(開方向へ回転)させて、窓ガラス7を所定量開動作させる(
図2のステップS8)。これにより、窓6に挟み込まれた異物が解放される。
【0040】
一方、特定範囲Zc以外の範囲を窓ガラス7が閉動作中に、窓6と窓ガラス7との間に異物が挟み込まれなければ、
図3に示すように、窓ガラス7の移動速度の変化量(破線)が固定閾値未満となる(
図2のステップS6:NO)。この場合、挟み込み判定部2fは、窓6への異物の挟み込みが無いと判断する(
図2のステップS9)。この後、位置検出部2cにより検出した窓ガラス7の開閉位置が全閉位置に到達しておらず(
図2のステップS10:NO)、PW操作部3において窓の停止操作が無い(
図2のステップS11:NO)場合は、窓ガラス7の閉動作が継続される(
図2のステップS2)。
【0041】
また、窓6への異物の挟み込みが無いまま(
図2のステップS9)、窓ガラス7の開閉位置が全閉位置に到達したり(
図2のステップS10:YES)、窓の停止操作が有ったり(
図2のステップS11:YES)した場合は、モータ制御部2bが、モータ駆動部4によりモータ9を停止して、窓ガラス7を停止させる(
図2のステップS12)。
【0042】
他方、窓ガラス7の開閉位置が全閉位置近傍の特定範囲Zcに入ると(
図2のステップS3:YES)、挟み込み判定用の閾値が閾値更新部2gにより更新される学習値(以下「学習閾値」という。)となる(
図2のステップS13、
図3の二点鎖線)。この学習閾値は、変化量算出部2eが算出した窓ガラス7の移動速度の変化量に応じて更新されるので、一定値ではない。このため、挟み込み判定部2fは、変化量算出部2eにより算出した窓ガラス7の移動速度の変化量と、その学習閾値とを比較する(
図2のステップS14)。
【0043】
そして、特定範囲Zcを窓ガラス7が閉動作中に、たとえば窓6の上枠と窓ガラス7の上端との間に異物が挟み込まれると、
図4(b)に示すように、窓ガラス7の移動速度が低下して、窓ガラス7の移動速度の変化量(破線)が学習閾値以上になる(
図2のステップS15:YES)。すると、挟み込み判定部2fは、窓6への異物の挟み込みが有ると判断する(
図2のステップS7)。この場合、モータ制御部2bが、モータ駆動部4によりモータ9を一旦停止させてから反転(開方向へ回転)させて、窓ガラス7を所定量開動作させる(
図2のステップS8)。これにより、窓6に挟み込まれた異物が解放される。
【0044】
一方、特定範囲Zcを窓ガラス7が閉動作中に、窓6と窓ガラス7との間に異物が挟み込まれなければ、
図3に示すように、窓ガラス7の移動速度の変化量(破線)が学習閾値未満となる(
図2のステップS15:NO)。この場合、挟み込み判定部2fは、窓6への異物の挟み込みが無いと判断する(
図2のステップS16)。そして、閾値更新部2gが、窓ガラス7の移動速度の変化量に基づいて、現在の窓ガラス7の位置に応じた学習閾値を更新する(
図2のステップS17)。具体的は、たとえば、閾値更新部2gは、変化量算出部2eが算出した直近の窓ガラス7の移動速度の変化量に所定の補正値を加算した値を、新たな学習閾値とする。そして、この新たな学習閾値を、記憶部2aに記憶された現在の窓ガラス7の位置に応じた学習閾値に上書きする。
図3に示すように、学習閾値は、固定閾値よりも、挟み込みが有ると判定され易いような低い値に設定される。
【0045】
その後、位置検出部2cにより検出した窓ガラス7の開閉位置が全閉位置に到達しておらず(
図2のステップS18:NO)、窓の停止操作が無い(
図2のステップS19:NO)場合は、窓ガラス7の閉動作が継続される(
図2のステップS2)。
【0046】
また、窓6への異物の挟み込みが無いまま(
図2のステップS16)、窓ガラス7の開閉位置が全閉位置に到達したり(
図2のステップS18:YES)、窓の停止操作が有ったり(
図2のステップS19:YES)した場合は、モータ制御部2bが、モータ駆動部4によりモータ9を停止して、窓ガラス7を停止させる(
図2のステップS20)。
【0047】
次に、窓6を開ける場合の動作を説明する。
図5は、窓6を開ける場合の、PW制御装置1の動作を示したフローチャートである。
図6は、窓6を開ける場合の、窓ガラス7の開閉位置と移動速度(下降速度)の変化の一例を示した図である。
図7は、窓6を開ける際に異物を挟み込んだ場合の、窓ガラス7の開閉位置と移動速度の変化の一例を示した図である。
【0048】
ユーザがPW操作部3でオート開操作またはマニュアル開操作を行うと、制御部2は、窓の開操作が有ったと判断する(
図5のステップS31)。すると、モータ制御部2bが、モータ駆動部4を作動させて、モータ9を開方向へ回転させ、窓ガラス7を開動作させる(
図5のステップS32)。
【0049】
窓ガラス7が開動作を開始した直後は、モータ9に突入電流が流れるため、
図6(a)、(b)に示すように、窓ガラス7の移動速度(実線)は、急激に上昇した後すぐに低下する。この動作開始直後の突発的な窓ガラス7の移動速度の変動で、挟み込みを誤判定しないように、変化量算出部2eは、所定の間隔で窓ガラス7の移動速度の変化量を算出する(閉動作時と同様)。
【0050】
動作を開始してからしばらくすると、モータ制御部2bがモータ駆動部4を介してモータ9の駆動を制御することで、窓ガラス7の移動速度がある程度の速度になる。そして、窓枠部品などの経年劣化がない使用初期の場合は、
図6(a)に示すように、窓ガラス7の移動速度がほぼ一定で推移する。対して、窓枠部品などの経年劣化が生じた場合は、モータ制御部2bがモータ9の駆動を制御しても、窓枠部品などと窓ガラス7の摩擦抵抗などの影響により、
図6(b)に示すように、窓ガラス7の移動速度が不安定に変動する。
【0051】
位置検出部2cにより検出した窓ガラス7の開閉位置が全開位置近傍の特定範囲Zoに入るまでは(
図5のステップS33:NO)、挟み込み判定用の閾値が予め設定された一定の固定閾値になっている(
図5のステップS34、
図6の一点鎖線)。この固定閾値は、開動作用の固定閾値であって、前述した閉動作用の固定閾値とは異なる値である。挟み込み判定部2fは、変化量算出部2eにより算出した窓ガラス7の移動速度の変化量と、その固定閾値とを比較する(
図5のステップS35)。
【0052】
そして、特定範囲Zo以外の範囲を窓ガラス7が開動作中に、たとえば窓ガラス7のガラス面と窓6の下枠との間に異物が挟み込まれると、
図7(a)に示すように、窓ガラス7の移動速度が低下して、窓ガラス7の移動速度の変化量(破線)が固定閾値以上になる(
図5のステップS36:YES)。すると、挟み込み判定部2fは、窓6への異物の挟み込みが有ると判断する(
図5のステップS37)。この場合、モータ制御部2bが、モータ駆動部4によりモータ9を停止させて、窓ガラス7を停止させる(
図5のステップS38)。これにより、窓6に挟み込まれた異物が解放(抜去)可能となる。
【0053】
一方、特定範囲Zo以外の範囲を窓ガラス7が開動作中に、窓ガラス7と窓6との間に異物が挟み込まれなければ、
図6に示すように、窓ガラス7の移動速度の変化量(破線)が固定閾値未満となる(
図5のステップS36:NO)。この場合、挟み込み判定部2fは、窓6への異物の挟み込みが無いと判断する(
図5のステップS39)。この後、位置検出部2cにより検出した窓ガラス7の開閉位置が全開位置に到達しておらず(
図5のステップS40:NO)、PW操作部3において窓の停止操作が無い(
図5のステップS41:NO)場合は、窓ガラス7の開動作が継続される(
図5のステップS32)。
【0054】
また、窓6への異物の挟み込みが無いまま(
図5のステップS39)、窓ガラス7の開閉位置が全開位置に到達したり(
図5のステップS40:YES)、窓の停止操作が有ったり(
図5のステップS41:YES)した場合は、モータ制御部2bが、モータ駆動部4によりモータ9を停止して、窓ガラス7を停止させる(
図5のステップS42)。
【0055】
他方、窓ガラス7の開閉位置が全開位置近傍の特定範囲Zoに入ると(
図5のステップS33:YES)、挟み込み判定用の閾値が閾値更新部2gにより更新される学習閾値となる(
図5のステップS43、
図6の二点鎖線)。この学習閾値は、開動作用の学習閾値であって、前述した閉動作用の学習閾値とは異なる値である。挟み込み判定部2fは、変化量算出部2eにより算出した窓ガラス7の移動速度の変化量と、その学習閾値とを比較する(
図5のステップS44)。
【0056】
そして、特定範囲Zoを窓ガラス7が開動作中に、窓ガラス7のガラス面と窓6の下枠との間に異物が挟み込まれると、
図6(b)に示すように、窓ガラス7の移動速度が低下して、窓ガラス7の移動速度の変化量(破線)が学習閾値以上になる(
図5のステップS45:YES)。すると、挟み込み判定部2fは、窓6への異物の挟み込みが有ると判断する(
図5のステップS37)。この場合、モータ制御部2bが、モータ駆動部4によりモータ9を停止させて、窓ガラス7を停止させる(
図5のステップS38)。これにより、窓6に挟み込まれた異物が解放可能となる。
【0057】
一方、特定範囲Zoを窓ガラス7が開動作中に、窓ガラス7と窓6との間に異物が挟み込まれなければ、
図6に示すように、窓ガラス7の移動速度の変化量(破線)が学習閾値未満となる(
図5のステップS45:NO)。この場合、挟み込み判定部2fは、窓6への異物の挟み込みが無いと判断する(
図5のステップS46)。そして、閾値更新部2gが、窓ガラス7の移動速度の変化量に基づいて、現在の窓ガラス7の位置に応じた学習閾値を更新する(
図5のステップS47)。このとき、たとえば窓ガラス7を閉じる場合と同様の方法により、学習閾値を更新する。
【0058】
その後、位置検出部2cにより検出した窓ガラス7の開閉位置が全開位置に到達しておらず(
図5のステップS48:NO)、窓の停止操作が無い(
図5のステップS49:NO)場合は、窓ガラス7の開動作が継続される(
図5のステップS32)。
【0059】
また、窓6への異物の挟み込みが無いまま(
図5のステップS46)、窓ガラス7の開閉位置が全開位置に到達したり(
図5のステップS48:YES)、窓の停止操作が有ったり(
図5のステップS49:YES)した場合は、モータ制御部2bが、モータ駆動部4によりモータ9を停止させて、窓ガラス7を停止させる(
図5のステップS50)。
【0060】
上記実施形態によると、窓ガラス7が特定範囲Zo、Zcを移動中は、変化量算出部2eが算出した窓ガラス7の移動速度の変化量と、記憶部2aに記憶された更新済(初回は更新前)の学習閾値とに基づいて、窓6への異物の挟み込みが検出される。この場合、窓ガラス7の開閉動作時に、窓ガラス7の移動速度の変化量を学習し、該移動速度の変化傾向に合わせて、特定範囲Zo、Zcの学習閾値を更新している(
図3、
図6)。このため、パワーウインドウの関連部品の個体特性や経年劣化の影響を排除しながら、窓6への異物の挟み込みを精度良く検出することができる。一方、窓ガラス7が特定範囲Zo、Zc以外の範囲を移動中は、変化量算出部2eが算出した窓ガラス7の移動速度の変化量と、記憶部2aに記憶された一定の固定閾値とに基づいて、窓6への異物の挟み込みが検出される。
【0061】
すなわち、上記実施形態では、特定範囲Zo、Zcにおいてのみ挟み込み判定用の閾値を更新し、その他の範囲では挟み込み判定用の閾値を更新せずに固定値にしている。このため、窓ガラス7の全移動範囲で閾値を更新する場合より、閾値更新のための学習データの記憶容量と処理負担を低減することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、特定範囲Zcは、窓ガラス7の全閉位置の近傍範囲であり、特定範囲Zoは、窓ガラス7の全開位置の近傍範囲である。そして、閾値更新部2gが、それら特定範囲Zc、Zoで使用される学習閾値を、その他の範囲で使用される固定閾値よりも、挟み込みが有ると判定され易いような低い値に更新している。このため、窓ガラス7の開閉動作時に、特定範囲Zo、Zcにおいて、その他の範囲よりも、窓6への異物の挟み込みの検出感度を向上させることができる。そして、特定範囲Zo、Zcで挟み込みを検出すると、モータ9を即座に停止または反転させて、異物を解放し、異物やモータ9やPW開閉機構8やその他の部品にかかる荷重を低減することが可能となる。
【0063】
特に、全閉位置近傍の特定範囲Zcでの窓ガラス7の閉動作中に、たとえば子供の手や指を誤って窓ガラス7と窓枠との間に挟み込んだ場合には、該挟み込みを素早く検出して、モータ9を即座に反転させることで、手や指を解放することができる。つまり、モータ9を反転させるまでに子供の手や指にかかる荷重を低荷重に抑えて、安全を確保することが可能となる。
【0064】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、以上の実施形態では、アクチュエータ(モータ9)の駆動状態を表す物理量として、窓ガラス7の移動速度を検出した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、モータ9の回転速度、モータ9に流れる電流、またはモータ9の負荷などを、本発明の物理量として検出してもよい。そして、上記いずれかの物理量またはその変化量を挟み込み判定用の閾値と比較して、挟み込みの有無を判定してもよい。
【0065】
なお、モータ9に流れるモータ電流は、たとえばシャント抵抗とCRローパスフィルタを含んだ電流検出回路をモータ駆動部4に設けることで、検出することができる。また、検出したモータ電流に含まれるリップルを抽出し、該リップルに基づいて窓ガラス7の開閉位置を検出してもよい。
【0066】
また、以上の実施形態では、特定範囲Zo、Zcにおいて、挟み込みが無いと判断した直後に、そのときの窓ガラス7の位置に応じた学習閾値を更新した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、窓ガラス7が全閉位置または全開位置に到達した後、学習閾値を一括して更新してもよい。
【0067】
また、以上の実施形態では、窓ガラス7の移動速度の変化量に所定の補正値を加算することにより、新たな学習閾値を算出した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではなく、これ以外の算出方法で新たな学習閾値を算出してもよい。また、過去N回(Nは1以上の整数)の窓ガラス7の開閉時に記憶部2aに記憶した窓ガラス7の移動速度やこれの変化量などのデータの傾向を学習して、新たな学習閾値を設定するようにしてもよい。
【0068】
また、以上の実施形態では、窓ガラス7の閉動作時に挟み込みを検出した場合に、モータ9を一旦停止させた後反転させ、窓ガラス7の開動作時に挟み込みを検出した場合に、モータ9を停止させた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、窓ガラスの開動作時に挟み込みを検出した場合に、モータを一旦停止させた後反転させてもよい。また、窓ガラスの閉動作時に挟み込みを検出した場合に、モータを停止させてもよい。
【0069】
また、以上の実施形態では、窓ガラス7の閉動作時と開動作時のいずれにおいても、挟み込みの有無を検出したり、学習閾値を更新したりした例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。窓ガラスの閉動作時と開動作時のいずれか一方のときに、挟み込みの有無を検出したり、学習閾値を更新したりしてもよい。
【0070】
また、以上の実施形態では、アクチュエータとしてモータ9を例に挙げたが、本発明はこれのみに限定するものではない。たとえば、アクチュエータとしてソレノイドなどを用いることも可能である。
【0071】
さらに、以上の実施形態では、自動車のPW制御装置1に本発明を適用した例を挙げたが、これに限るものではない。これ以外の、たとえば電動式開閉ルーフなどのような、車両用の開閉体制御装置または車両以外の用途の開閉体制御装置に対しても、本発明を適用することは可能である。
【解決手段】窓ガラス7の開閉動作中に、窓ガラス7の移動速度の変化量と記憶部2aに記憶された閾値とに基づいて、窓6への異物の挟み込みの有無を判定し、挟み込みが有ると判定されると、異物を解放するため、モータ9の駆動方向を反転させる。窓ガラス7の全移動範囲Zのうち、特定範囲Zc、Zoについては、挟み込み判定用の閾値を、閾値更新部2gが窓ガラス7の移動速度の変化量に基づいて更新する。また、特定範囲Zc、Zo以外の範囲については、挟み込み判定用の閾値を、予め設定した固定値とする。