【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日本経済新聞社、日本経済新聞、発行日:平成27年6月3日 http://www.taiheiyo−cement.co.jp/news/news/pdf/150605.pdf、掲載日:平成27年6月5日 http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20150609/702890/?ST=building、掲載日:平成27年6月10日 日本経済新聞社、日経産業新聞、発行日:平成27年7月9日 日経BP社、日経アーキテクチュアNo.1051、発行日:平成27年7月10日 日経BP社、日経コンストラクション、発行日:平成27年7月13日 コンクリート工学年次大会2015、開催日:平成27年7月14日 コンクリート新聞社、コンクリート新聞、発行日:平成27年7月16日 2015年度大会(関東)日本建築学会大会学術講演梗概集、発行日:平成27年7月20日 コンクリート新聞社、コンクリート新聞、発行日:平成27年7月23日 太平洋セメント株式会社、セムズNo.67、発行日:平成27年10月1日 第24回 プレストレストコンクリートの発展に関するシンポジウム 論文集、発行日:平成27年10月10日 第24回 プレストレストコンクリートの発展に関するシンポジウム、開催日:平成27年10月23日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の
セメント質硬化体の製造方法に用いられるセメント組成物
(以下、「本発明のセメント組成物」ともいう。)は、セメント、BET比表面積が15〜25m
2/gのシリカフューム(以下、「シリカフューム」と略すことがある。)、50%累積粒径が0.8〜5μmの無機粉末(以下、「無機粉末」と略すことがある。)、最大粒径が1.2mm以下の骨材A、高性能減水剤、消泡剤及び水を含むセメント組成物であって、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中、セメントの割合が55〜65体積%、シリカフュームの割合が5〜25体積%、無機粉末の割合が15〜35体積%のものである。
【0010】
セメントの種類は、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントを使用することができる。
中でも、セメント組成物の流動性を向上させる観点から、中庸熱ポルトランドセメントまたは低熱ポルトランドセメントを使用することが好ましい。
【0011】
シリカフュームのBET比表面積は、15〜25m
2/g、好ましくは17〜23m
2/g、特に好ましくは18〜22m
2/gである。該比表面積が15m
2/g未満の場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。該比表面積が25m
2/gを超える場合、硬化前のセメント組成物の流動性が低下する。
【0012】
50%累積粒径が0.8〜5μmの無機粉末としては、例えば、石英粉末(珪石粉末)、火山灰、フライアッシュ(分級または粉砕したもの)、スラグ粉末、石灰石粉末、長石類粉末、ムライト類粉末、アルミナ粉末、シリカゾル、炭化物粉末、窒化物粉末、エメリー砂(人工または天然)の粉砕物等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、セメント組成物の流動性および強度発現性を向上させる観点から、石英粉末またはフライアッシュを使用することが好ましい。
なお、本明細書中、50%累積粒径が0.8〜5μmの無機粉末には、セメントは含まれないものとする。
【0013】
上記無機粉末の50%累積粒径は、0.8〜5μm、好ましくは1〜4μm、より好ましくは1.1〜3.5μm、特に好ましくは1.2μm以上、3μm未満である。該粒径が0.8μm未満の場合、セメント組成物の流動性が低下する。該粒径が5μmを超える場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。
なお、本明細書中、無機粉末の50%累積粒径は、体積基準である。
無機粉末の50%累積粒径は、市販の粒度分布測定装置(例えば、日機装社製、製品名「マイクロトラックHRA モデル9320−X100」)を用いて求めることができる。
具体的には、粒度分布測定装置を用いて、累積粒度曲線を作成し、該累積粒度曲線から50%累積粒径を求めることができる。この際、試料を分散させる溶媒であるエタノール20cm
3に対して、試料0.06gを添加し、90秒間、超音波分散装置(例えば、日本精機製作所社製、製品名「US300」)を用いて超音波分散したものを測定する。
【0014】
上記無機粉末の最大粒径は、セメント組成物の強度発現性を向上させる観点から、好ましくは15μm以下、より好ましくは14μm以下、特に好ましくは13μm以下である。
上記無機粉末の95%累積粒径は、セメント組成物の強度発現性を向上させる観点から、好ましくは8μm以下、より好ましくは7μm以下、特に好ましくは6μm以下である。
【0015】
上記無機粉末としては、SiO
2を主成分とするものが好ましい。上記無機粉末中のSiO
2の含有率が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であれば、セメント組成物の強度発現性をより向上させることができる。
【0016】
本発明のセメント組成物において、セメント、シリカフューム及び上記無機粉末の合計量100体積%中、セメントの割合は55〜65体積%(好ましくは、57〜63体積%)、シリカフュームの割合は5〜25体積%(好ましくは、7〜23体積%)、上記無機粉末の割合は15〜35体積%(好ましくは17〜33体積%)である。
セメントの割合が55体積%未満の場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。セメントの割合が65体積%を超える場合、セメント組成物の流動性が低下する。
シリカフュームの割合が5体積%未満の場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。シリカフュームの割合が25体積%を超える場合、セメント組成物の流動性が低下する。
上記無機粉末の割合が15体積%未満の場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。上記無機粉末の割合が35体積%を超える場合、セメント組成物の流動性が低下する。
【0017】
骨材Aとしては、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、天然エメリー砂、人工細骨材(例えば、スラグ細骨材や、フライアッシュ等を焼成してなる焼成細骨材や、人工エメリー砂や、アルミナまたは炭化物(例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素)の粗砕物等)、再生細骨材またはこれらの混合物等が挙げられる。
骨材Aの最大粒径は、1.2mm以下、好ましくは1.1mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。該最大粒径が1.2mm以下であれば、セメント組成物の強度発現性をより向上させることができ、300N/mm
2以上(好ましくは400N/mm
2以上)の圧縮強度を発現することができる場合がある。
骨材Aの粒度分布は、セメント組成物の流動性および強度発現性を向上させる観点から、0.6mm以下の粒径の骨材の割合が、95質量%以上、0.3mm以下の粒径の骨材の割合が、40〜50質量%、及び、0.15mm以下の粒径の骨材の割合が、6質量%以下であることが好ましい。
セメント組成物中の骨材Aの割合は、好ましくは20〜40体積%、より好ましくは22〜39体積%、さらに好ましくは25〜38体積%、さらに好ましくは30〜37体積%、特に好ましくは32〜36体積%である。該割合が20体積%以上であれば、セメント組成物の流動性を向上させることができると共に、セメント組成物の発熱量が小さくなり、かつ、セメント質硬化体の収縮量が小さくなる。該割合が40体積%以下であれば、セメント組成物の強度発現性を向上させることができる。
【0018】
高性能減水剤としては、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の高性能減水剤を使用することができる。中でも、セメント組成物の流動性及び強度発現性を向上させる観点から、ポリカルボン酸系の高性能減水剤が好ましい。
高性能減水剤の配合量は、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100質量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.2〜1.5質量部であり、より好ましくは0.4〜1.2質量部である。該量が0.2質量部以上であれば、減水性能が向上し、セメント組成物の流動性が向上する。該量が1.5質量部以下であれば、セメント組成物の強度発現性が向上する。
【0019】
消泡剤としては、市販品を使用することができる。
消泡剤の配合量は、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001〜0.1質量部、より好ましくは0.01〜0.07質量部、特に好ましくは0.01〜0.05質量部である。該量が0.001質量部以上であれば、セメント組成物の強度発現性が向上する。該量が0.1質量部を超えると、セメント組成物の強度発現性の向上効果が頭打ちとなる。
【0020】
本発明のセメント組成物は、長期強度の低下を避ける等の観点から、通常、ガラス繊維を含まない。
また、本発明のセメント組成物は、セメント組成物を硬化してなる硬化体(セメント質硬化体)の曲げ強度や破壊エネルギー等を向上させる観点から、金属繊維、有機繊維及び炭素繊維からなる群より選ばれる一種以上の繊維を含んでもよい。セメント組成物中の繊維の割合は、好ましくは3体積%以下、より好ましくは0.3〜2.5体積%、さらに好ましくは0.4〜2.3体積%、特に好ましくは0.5〜2.0体積%である。該割合が3体積%以下であれば、セメント組成物の流動性や作業性を低下させることなく、硬化体の曲げ強度や破壊エネルギー等を向上させることができる。
【0021】
金属繊維としては、鋼繊維、ステンレス繊維、アモルファス繊維等が挙げられる。中でも、鋼繊維は、強度に優れており、また、コストや入手のし易さの観点から好適である。
金属繊維の寸法は、セメント組成物中における金属繊維の材料分離の防止や、硬化体の曲げ強度の向上の観点から、直径が0.01〜1.0mm、長さが2〜30mmであることが好ましく、直径が0.05〜0.5mm、長さが5〜25mmであることがより好ましい。また、金属繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは20〜200、より好ましくは40〜150である。
さらに、金属繊維の形状は、直線状よりも、何らかの物理的付着力を付与する形状(例えば、螺旋状や波形)であることが好ましい。螺旋状等の形状であれば、金属繊維とマトリックスとが、引き抜けながら応力を担保するため、硬化体の曲げ強度が向上する。
【0022】
有機繊維としては、後述する本発明のセメント質硬化体の製造方法における加熱に耐えうるものであればよく、例えば、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリート繊維、ポリプロピレン繊維等が挙げられる。
炭素繊維としては、PAN系炭素繊維やピッチ系炭素繊維が挙げられる。
有機繊維及び炭素繊維の寸法は、セメント組成物中におけるこれらの繊維の材料分離の防止や、硬化体の破壊エネルギーの向上の観点から、直径が0.005〜1.0mm、長さ2〜30mmであることが好ましく、直径が0.01〜0.5mm、長さが5〜25mmであることがより好ましい。また、有機繊維及び炭素繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは20〜200、より好ましくは30〜150である。
【0023】
水としては、水道水等を使用することができる。
水の配合量は、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100質量部に対して、好ましくは10〜20質量部、より好ましくは12〜18質量部、特に好ましくは14〜16質量部である。該量が10質量部以上であれば、セメント組成物の流動性が向上する。該量が20質量部以下であれば、セメント組成物の強度発現性が向上する。
【0024】
上記セメント組成物からなるモルタル(後述する骨材Bを含まないもの)の硬化前のフロー値は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において15回の落下運動を行わないで測定した値(以下、「0打ちフロー値」ともいう。)として、好ましくは200mm以上、より好ましくは210mm以上、特に好ましくは220mm以上である。
また、上記セメント組成物からなるモルタル(後述する骨材Bを含まないもの)を硬化してなるセメント質硬化体の圧縮強度は、好ましくは320N/mm
2以上、より好ましくは350N/mm
2以上、さらに好ましくは400N/mm
2以上、特に好ましくは450N/mm
2以上である。
なお、上記骨材Aとして、修正モース硬度が9以上(好ましくは9〜14、より好ましくは9〜13、さらに好ましくは10〜13、特に好ましくは11〜13)のもの(例えば、天然または人工(人造)のエメリー砂、アルミナや炭化物の粗砕物等)を使用したセメント組成物からなるモルタル(後述する骨材Bを含まないもの)によれば、450N/mm
2以上(特に、エメリー砂を用いる場合、500N/mm
2以上)の圧縮強度を発現させることが可能である。
【0025】
本発明のセメント組成物は、最大粒径が1.2mmを超え、13mm以下の骨材Bを含むことができる。
骨材Bとしては、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、天然エメリー砂、人工細骨材(例えば、人工エメリー砂や、スラグ細骨材や、フライアッシュ等を焼成してなる焼成細骨材)、再生細骨材、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、人工粗骨材(例えば、スラグ粗骨材や、フライアッシュ等を焼成してなる焼成粗骨材)、再生粗骨材またはこれらの混合物等が挙げられる。
骨材Bの最大粒径は、13mm以下、好ましくは12mm以下、より好ましくは11mm以下、特に好ましくは10mm以下である。該最大粒径が13mm以下であれば、セメント組成物の強度発現性が向上し、例えば、300N/mm
2以上の圧縮強度を発現することができる。
また、骨材Bの最大粒径は、コストの低減等の観点から、1.2mmを超える値であり、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上、特に好ましくは7mm以上である。
なお、本明細書中、骨材Bの最大粒径が5mm以上の場合における「最大粒径」とは、骨材B全体の90質量%以上が通るふるいのうち、最小寸法のふるいの呼び寸法で示される骨材Bの粒径(一般に、粗骨材の最大粒径の定義として知られているもの)をいう。
【0026】
骨材Bの最小粒径は、好ましくは骨材Aの最大粒径を超える値であり、より好ましくは2mm以上、さらに好ましくは3mm以上、さらに好ましくは4mm以上、特に好ましくは5mm以上(この場合、粗骨材に該当する。)である。
なお、本明細書中、骨材Bの最小粒径とは、骨材Bの中の最も粒径が小さいものから粒径が大きなものに向かって累積していった場合において、骨材B全体の15質量%に達したときの骨材Bの粒径をいう。
【0027】
本発明において、セメント組成物中の骨材Aと骨材Bの合計量の割合は、好ましくは25〜40体積%、より好ましくは30〜38体積%、特に好ましくは32〜36体積%である。該割合が25体積%以上であれば、セメント組成物の発熱量が小さくなり、かつ、セメント質硬化体の収縮量が小さくなる。該割合が40体積%以下であれば、セメント組成物の強度発現性を向上させることができる。
骨材Aと骨材Bの合計量に対する骨材Bの割合は、好ましくは40体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。該割合が40体積%以下であれば、セメント組成物の強度発現性(例えば、圧縮強度)を向上させることができる。
骨材Bを含むセメント組成物(例えば、コンクリート)を硬化してなるセメント質硬化体の圧縮強度は、好ましくは300N/mm
2以上、より好ましくは320N/mm
2以上、特に好ましくは340N/mm
2以上である。
【0028】
以下、本発明のセメント組成物を硬化してなるセメント質硬化体の製造方法について詳しく説明する。
本発明のセメント質硬化体の製造方法の一例は、
上述した本発明のセメント組成物を型枠内に打設して、未硬化の成形体を得る成形工程と、未硬化の成形体を、10〜40℃で24時間以上、封緘養生または気中養生した後、型枠から脱型し、硬化した成形体を得る常温養生工程と、硬化した成形体について、70℃以上100℃未満で1時間以上の、蒸気養生もしくは温水養生と、100〜200℃で1時間以上のオートクレーブ養生のいずれか一方または両方を行い、加熱養生後の硬化体を得る加熱養生工程と、加熱養生後の硬化体を、150〜200℃で24時間以上、加熱(ただし、オートクレーブ養生による加熱を除く。)して、セメント質硬化体を得る高温加熱工程を含むものである。
【0029】
[成形工程]
本工程は、セメント組成物を型枠内に打設して、未硬化の成形体を得る工程である。
打設を行う前に、本発明のセメント組成物を混練する方法としては、特に限定されるものではない。また、混練に用いる装置も特に限定されるものではなく、オムニミキサ、パン型ミキサ、二軸練りミキサ、傾胴ミキサ等の慣用のミキサを使用することができる。さらに、打設(成形)方法も特に限定されるものではない。
なお、本工程における未硬化の成形体は、セメント組成物中の気泡を低減又は除去したセメント組成物からなるものであってもよい。セメント組成物中の気泡を低減又は除去することで、セメント組成物の強度発現性をより向上させることができる。
セメント組成物中の気泡を低減又は除去する方法としては、(1)セメント組成物の混練を減圧下で行う方法、(2)混練後のセメント組成物を、型枠内に打設する前に減圧して脱泡させる方法、(3)セメント組成物を型枠内に打設した後、減圧して脱泡させる方法等が挙げられる。
【0030】
[常温養生工程]
本工程は、未硬化の成形体を、10〜40℃(好ましくは15〜30℃)で24時間以上(好ましくは24〜72時間、より好ましくは24〜48時間)、封緘養生または気中養生した後、型枠から脱型し、硬化した成形体を得る工程である。
養生温度が10℃以上であれば、養生時間を短くすることができる。養生温度が40℃以下であれば、セメント質硬化体の圧縮強度を向上させることができる。
養生時間が24時間以上であれば、脱型の際に、硬化した成形体に欠けや割れ等の欠陥が生じにくくなる。
また、本工程において、硬化した成形体が、好ましくは20〜100N/mm
2、より好ましくは30〜80N/mm
2の圧縮強度を発現した時に、硬化した成形体を型枠から脱型することが好ましい。該圧縮強度が20N/mm
2以上であれば、脱型の際に、硬化した成形体に欠けや割れ等の欠陥が生じにくくなる。該圧縮強度が100N/mm
2以下であれば、後述する吸水工程において、少ない労力で、硬化した成形体に吸水させることができる。
【0031】
[加熱養生工程]
本工程は、前工程で得られた硬化した成形体について、70℃以上100℃未満(好ましくは75〜95℃、より好ましくは80〜92℃)で1時間以上の、蒸気養生もしくは温水養生と、100〜200℃(好ましくは160〜190℃)で1時間以上のオートクレーブ養生のいずれか一方または両方を行い、加熱養生後の硬化体を得る工程である。
本工程において、蒸気養生または温水養生のみを行う場合、その養生時間は、好ましくは12時間以上、より好ましくは24〜96時間、特に好ましくは36〜72時間である。オートクレーブ養生のみを行う場合、その養生時間は、好ましくは2時間以上、より好ましくは3〜60時間、特に好ましくは4〜48時間である。蒸気養生もしくは温水養生とオートクレーブ養生の両方を行う場合(例えば、蒸気養生もしくは温水養生を行った後、さらにオートクレーブ養生を行う場合)、蒸気養生もしくは温水養生における養生時間は、好ましくは1〜72時間、より好ましくは2〜48時間であり、オートクレーブ養生における養生時間は、好ましくは1〜24時間、より好ましくは2〜18時間である。
本工程において、養生温度が前記範囲内であれば、養生時間を短くすることができ、また、セメント質硬化体の圧縮強度を向上させることができる。
また、本工程において、養生時間が前記範囲内であれば、セメント質硬化体の圧縮強度を向上させることができる。
【0032】
[高温加熱工程]
本工程は、加熱養生後の硬化体を、150〜200℃(好ましくは170〜190℃)で24時間以上(好ましくは24〜72時間、より好ましくは36〜48時間)、加熱(ただし、オートクレーブ養生による加熱を除く。)して、セメント質硬化体を得る工程である。
本工程における加熱は、通常、乾燥雰囲気下(換言すると、水や水蒸気を人為的に供給しない状態)で行われる。
加熱温度が150℃以上であれば、加熱時間を短くすることができる。加熱温度が200℃以下であれば、セメント質硬化体の圧縮強度を向上させることができる。
加熱時間が24時間以上であれば、セメント質硬化体の圧縮強度を向上させることができる。
【0033】
[吸水工程]
常温養生工程と加熱養生工程の間に、常温養生工程において得られた硬化した成形体に吸水させる吸水工程を含んでもよい。
硬化した成形体に吸水させる方法としては、該成形体を水中に浸漬させる方法が挙げられる。また、該成形体を水中に浸漬させる方法において、短時間で吸水量を増やし、セメント質硬化体の圧縮強度を大きくする観点から、(1)該成形体を、減圧下の水の中に浸漬させる方法、(2)該成形体を、沸騰している水の中に浸漬させた後、該成形体を浸漬させたまま、水温を40℃以下に低下させる方法、(3)該成形体を、沸騰している水の中に浸漬させた後、該成形体を沸騰している水から取り出して、次いで、40℃以下の水に浸漬させる方法、(4)該成形体を、加圧下の水の中に浸漬させる方法、又は(5)該成形体への水の浸透性を向上させる薬剤を溶解させた水溶液の中に、該成形体を浸漬させる方法、が好ましい。
【0034】
上記成形体を、減圧下の水の中に浸漬させる方法としては、真空ポンプや大型の減圧容器等の設備を利用する方法が挙げられる。
上記成形体を、沸騰している水の中に浸漬させる方法としては、高温高圧容器や熱温水水槽等の設備を利用する方法が挙げられる。
硬化した成形体を、減圧下の水または沸騰している水の中に浸漬させる時間は、吸水率を高くする観点から、好ましくは3分間以上、より好ましくは8分間以上、特に好ましくは20分間以上である。該時間の上限は、セメント質硬化体の圧縮強度をより高くする観点から、好ましくは60分間、より好ましくは45分間である。
【0035】
吸水工程における吸水率は、セメント組成物が粗骨材を含まない場合(セメント組成物が骨材Bを含まない、あるいは、セメント組成物中の骨材Bが粗骨材に該当しない場合)、φ50×100mmの硬化した成形体100体積%に対する水の割合として、好ましくは0.2体積%以上、より好ましくは0.3〜2.0体積%、特に好ましくは0.35〜1.7体積%であり、セメント組成物が粗骨材を含む場合(セメント組成物中の骨材Bが粗骨材に該当する場合)、φ100×200mmの硬化した成形体100体積%に対する水の割合として、好ましくは0.2体積%以上、より好ましくは0.3〜2.0体積%、特に好ましくは0.35〜1.7体積%である。
これらの吸水率が0.2体積%以上であれば、セメント質硬化体の圧縮強度をより高めることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
使用材料は、以下に示すとおりである。
(1)セメント:低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(2)シリカフュームA:BET比表面積20m
2/g
(3)シリカフュームB:BET比表面積17m
2/g
(4)無機粉末A:珪石粉末、50%累積粒径2μm、最大粒径12μm、95%累積粒径5.8μm
(5)無機粉末B:珪石粉末、50%累積粒径7μm、最大粒径67μm、95%累積粒径27μm
(6)骨材A1(細骨材):珪砂(最大粒径1.0mm、0.6mm以下の粒径のもの:98質量%、0.3mm以下の粒径のもの:45質量%、0.15mm以下の粒径のもの:3質量%)
(7)骨材A2(細骨材):人工エメリー砂(宇治電化学工業社製、修正モース硬度:12)(最大粒径1.0mm、0.6mm以下の粒径のもの:96質量%、0.3mm以下の粒径のもの:46質量%、0.15mm以下の粒径のもの:1質量%、に粒度分布を調整したもの)
(8)ポリカルボン酸系高性能減水剤:固形分量27.4質量%、フローリック社製、商品名「フローリックSF500U」
(9)消泡剤:BASFジャパン社製、商品名「マスターエア404」
(10)水:水道水
(11)金属繊維:鋼繊維(直径:0.2mm、長さ:15mm)
(12)骨材B(粗骨材):硬質砂岩砕石1005(粒径:5〜10mm)
【0037】
[実施例1]
セメント、シリカフュームA及び無機粉末Aを、粉体原料(セメント、シリカフューム及び無機粉末)の合計量100体積%中、セメント等の各割合が表1に示す割合となるように混合した。得られた混合物と、セメント組成物中の骨材A1の割合が表1に示す割合となる量の骨材A1を、オムニミキサに投入して、15秒間空練りを行った。
次いで、水、ポリカルボン酸系高性能減水剤、及び消泡剤を、表1に示す量でオムニミキサに投入して、2分間混練した。
混練後、オムニミキサ内の側壁に付着した混練物を掻き落とし、さらに4分間混練を行った。
混練後のセメント組成物のフロー値を、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行わないで測定した。なお、本明細書中、該フロー値を「0打ちフロー値」という。
【0038】
得られた混練物を、φ50×100mmの円筒形の型枠に打設して、未硬化の成形体を得た。打設後、未硬化の成形体について、20℃で48時間、封緘養生を行い、次いで、脱型して、硬化した成形体を得た。脱型時の圧縮強度は50N/mm
2であった。
この成形体を、表2に示す時間、減圧したデシケーター内で水に浸漬した(表2中、「減圧下」と記載した。)。なお、減圧は、アズワン社製の「アスピレーター(AS−01)」を使用して行った。浸漬前後の成形体の質量を測定し、得られた測定値から、吸水率を算出した。
浸漬後、この成形体を90℃で48時間蒸気養生を行い、次いで、20℃まで降温した後、水や水蒸気を人為的に供給せずに、180℃で48時間加熱を行った。
また、得られたセメント質硬化体の圧縮強度を、「JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)」に準じて測定した。なお、圧縮強度は、島津製作所社製の100t万能試験機(油圧式)を使用して測定した。
【0039】
[実施例2]
粉体原料100質量部当たりの水の配合量を、13質量部から15質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、セメント組成物の0打ちフロー値の測定等を行った。なお、脱型時の圧縮強度は45N/mm
2であった。
【0040】
[実施例3]
脱型後の成形体を、減圧したデシケーター内で水に浸漬する代わりに、沸騰している水(沸騰水)に、表2に示す時間浸漬した後、該成形体を水に浸漬させたまま、水温が25℃となるまで冷却した以外は、実施例1と同様にして、セメント組成物及びその硬化体を得た。
実施例1と同様にして、吸水率の算出、及び、セメント質硬化体の圧縮強度の測定を行った。
[実施例4]
脱型後の成形体を、減圧したデシケーター内で水に浸漬する代わりに、実施例3と同様に沸騰水への浸漬等を行った以外は、実施例2と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、吸水率の算出、及び、セメント質硬化体の圧縮強度の測定を行った。
【0041】
[実施例5]
シリカフュームAの配合量を10体積%から20体積%に変更し、かつ、無機粉末Aの配合量を30体積%から20体積%に変更する以外は、実施例1と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、0打ちフロー値の測定等を行った。なお、脱型時の成形体の圧縮強度は、50N/mm
2であった。
[実施例6]
脱型後の成形体を、減圧したデシケーター内で水に浸漬する代わりに、実施例3と同様に沸騰水への浸漬等を行った以外は、実施例5と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、吸水率の算出、及び、セメント質硬化体の圧縮強度の測定を行った。
【0042】
[実施例7]
シリカフュームAの配合量を10体積%から20体積%に変更し、かつ、無機粉末Aの配合量を30体積%から20体積%に変更する以外は、実施例2と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、0打ちフロー値の測定等を行った。なお、脱型時の成形体の圧縮強度は、45N/mm
2であった。
[実施例8]
脱型後の成形体を、減圧したデシケーター内で水に浸漬する代わりに、実施例3と同様に沸騰水への浸漬等を行った以外は、実施例7と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、吸水率の算出、及び、セメント質硬化体の圧縮強度の測定を行った。
【0043】
[実施例9]
セメント、シリカフュームA及び無機粉末Aを、粉体原料(セメント、シリカフューム及び無機粉末)の合計量100体積%中、セメント等の各割合が表1に示す割合となるように混合した。得られた混合物と、セメント組成物中の骨材A1の割合が表1に示す割合となる量の骨材A1を、オムニミキサに投入して、15秒間空練りを行った。
次いで、水、ポリカルボン酸系高性能減水剤、及び消泡剤を、表1に示す量でオムニミキサに投入して、2分間混練した。
混練後、オムニミキサ内の側壁に付着した混練物を掻き落とし、さらに4分間混練を行った後、セメント組成物中の金属繊維の割合が表1に示す割合となる量の金属繊維を、オムニミキサに投入して、さらに2分間混練を行った。
得られたセメント組成物について、実施例1と同様にして、0打ちフロー値を測定した。
また、得られたセメント組成物を材料として用いて、実施例1と同様の方法で、セメント質硬化体(成形体)を得た。
得られたセメント質硬化体(成形体)について、実施例1と同様にして、吸水率及び圧縮強度を測定した。
さらに、得られたセメント質硬化体の曲げ強度を、「土木学会基準 JSCE−G 552−2010(鋼繊維補強コンクリートの曲げ強度および曲げタフネス試験方法)」に準じて測定した。
【0044】
[実施例10]
脱型後の成形体を、減圧したデシケーター内で水に浸漬する代わりに、実施例3と同様に沸騰水への浸漬等を行った以外は、実施例9と同様にして、セメント組成物及びその硬化体を得た。
セメント組成物及びその硬化体について、実施例9と同様にして、各種物性を測定した。
【0045】
[実施例11]
粉体原料100質量部当たりの水の配合量を、13質量部から11質量部に変更し、骨材A1の配合量を35.5体積%から30.0体積%に変更し、高性能減水剤の配合量を0.69質量部から0.76質量部に変更し、かつ、成形体を水に浸漬しなかった以外は、実施例1と同様にして、セメント組成物及びセメント質硬化体を得た。
実施例1と同様にして、セメント組成物の0打ちフロー値の測定等を行った。なお、脱型時の圧縮強度は54N/mm
2であった。
【0046】
[実施例12]
脱型後の成形体を、沸騰している水(沸騰水)に、表2に示す時間浸漬した後、該成形体を水に浸漬させたまま、水温が25℃となるまで冷却した以外は、実施例11と同様にして、セメント組成物及びその硬化体を得た。
実施例1と同様にして、吸水率の算出、及び、セメント質硬化体の圧縮強度等の測定を行った。
【0047】
[実施例13]
骨材A1の配合量を、30.0体積%から24.0体積%に変更し、セメント組成物中の骨材Bの割合が6.0体積%となる量の骨材Bを使用した以外は実施例11のセメント組成物と同様の配合で、セメント組成物を製造した。
セメント組成物の製造は、実施例1と同様にして、各材料(粉体原料、骨材A1、水、ポリカルボン酸系高性能減水剤、及び消泡剤)を混練した後、さらに骨材Bをオムニミキサに投入して、1分間混練することで行った。
得られたセメント組成物(混練物)を、φ100×200mmの円筒形の型枠に打設し、かつ、成形体を水に浸漬しなかった以外は実施例1と同様にして、セメント質硬化体を得た。
実施例1と同様にして、セメント質硬化体の圧縮強度を測定した。なお、脱型時の圧縮強度は43N/mm
2であった。
【0048】
[実施例14]
骨材A1の配合量を、35.5体積%から28.5体積%に変更し、セメント組成物中の骨材Bの割合が7.0体積%となる量の骨材Bを使用した以外は実施例8のセメント組成物と同様の配合で、セメント組成物を製造した。
セメント組成物の製造は、実施例1と同様にして、各材料(粉体原料、骨材A1、水、ポリカルボン酸系高性能減水剤、及び消泡剤)を混練した後、さらに、骨材Bをオムニミキサに投入して、1分間混練することで行った。
得られたセメント組成物(混練物)を、φ100×200mmの円筒形の型枠に打設する以外は実施例8と同様にして、セメント質硬化体を得た。
実施例8と同様にして、吸水率の算出およびセメント質硬化体の圧縮強度の測定を行った。なお、脱型時の圧縮強度は37N/mm
2であった。
【0049】
[実施例15]
骨材A1の代わりに骨材A2を使用した以外は、実施例4と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、セメント組成物の0打ちフロー値等の測定を行った。なお、脱型時の圧縮強度は47N/mm
2であった。
【0050】
[実施例16]
骨材A1の代わりに骨材A2を使用した以外は、実施例12と同様にして、セメント組成物及びその硬化体(成形体)を得た。
実施例1と同様にして、セメント組成物の0打ちフロー値等の測定を行ったところ、圧縮強度は、測定値の測定限界(511N/mm
2)を超えていた。なお、脱型時の圧縮強度は55N/mm
2であった。
【0051】
[比較例1]
セメント、シリカフュームB及び無機粉末Bを、粉体原料(セメント、シリカフューム及び無機粉末)の合計量100体積%中、セメント等の各割合が表1に示す割合となるように混合した。得られた混合物と、セメント組成物中の骨材A1の割合が表1に示す割合となる量の骨材A1を、オムニミキサに投入して、15秒間空練りを行った。
次いで、水、ポリカルボン酸系高性能減水剤、及び消泡剤を、表1に示す量でオムニミキサに投入して、2分間混練した。
混練後、オムニミキサ内の側壁に付着した混練物を掻き落とし、さらに4分間混練を行った。
得られた混練物を材料として用いて、実施例1と同様にして、セメント質硬化体を得た。得られた混練物(セメント組成物)及びその硬化体について、実施例1と同様にして、各種物性を測定した。
以上の結果を表2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表2から、本発明のセメント組成物(実施例1〜16)によれば、0打ちフロー値が217mm以上であることがわかる。また、本発明のセメント組成物を硬化してなるセメント質硬化体の圧縮強度は、350N/mm
2以上であり、非常に大きいことがわかる。
また、金属繊維を含むセメント組成物(実施例9〜10)の曲げ強度は、40N/mm
2以上であり、大きいことがわかる。
また、修正モース硬度が12である細骨材を用いたセメント組成物(実施例15〜16)の圧縮強度は、500N/mm
2以上であり、極めて大きいことがわかる。
さらに、粗骨材を含むセメント組成物(実施例13〜14)を硬化してなるセメント質硬化体の圧縮強度は、333N/mm
2以上であり、大きいことがわかる。
一方、比較例1では、セメント質硬化体の圧縮強度は290N/mm
2であり、実施例1〜16と比べて小さいことがわかる。
/gのシリカフューム、50%累積粒径が0.8〜5μmの無機粉末、最大粒径が1.2mm以下の骨材A、高性能減水剤、消泡剤及び水を含むセメント組成物であって、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中、セメントの割合が55〜65体積%、シリカフュームの割合が5〜25体積%、無機粉末の割合が15〜35体積%であるセメント組成物。