(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記道路トンネルの中央部の区間に使用する前記トンネル照明用光源に比較して、前記入口に近い区間に使用する前記トンネル照明用光源の相関色温度が高い、請求項1記載のトンネル照明装置。
前記入口に最も近い区間に使用する前記トンネル照明用光源の相関色温度が4,000K以上、前記中央部の前記区間に使用する前記トンネル照明用光源の相関色温度が4,000K未満、前記出口に最も近い区間に使用する前記トンネル照明用光源の相関色温度が4,000K以上である請求項2から請求項3のいずれか1項に記載のトンネル照明装置。
非常駐車帯が存在する前記区間内では、前記非常駐車帯に使用する非常駐車帯照明用光源と当該区間の前記トンネル照明用光源と色差が40ミレッド以上である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のトンネル照明装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本実施の形態等において使用される用語の定義の一例を示す。
[基本照明]
基本照明は、トンネルを走行する運転者が前方の障害物を安全な距離から視認するために必要な明るさを確保するための照明であり、トンネル全長にわたり、灯具を原則として一定間隔に配置する。基本照明のみの区間の照明を基本部照明という。
[入口部照明]
入口部照明は、昼間、運転者がトンネルに接近する際に生じる急激な輝度の変化と、進入直後から起きる眼の順応の遅れを緩和するための照明であり、基本照明と入口照明を加えたものをいう。
[出口部照明]
出口部照明は、昼間、出口付近の野外輝度が著しく高い場合に、出口の手前付近にある障害物や先行車の見え方を改善するための照明であり、基本照明と出口照明を加えたものをいう。
[黒体]
黒体とは、黒体放射をする熱放射体である。黒体放射は温度だけに依存し、その大きさはプランクの放射則によって与えられる。
[色温度]
色温度とは、与えられた放射の色温度と等しい色度を持つ黒体の温度である。単位:K(ケルビン)
[相関色温度]
相関色温度は、与えられた放射の色度が黒体放射軌跡上にない場合に、分布温度は相対分光分布が黒体放射に近似できる場合に用いる(単位:K(ケルビン))。すなわち、光源と最も近い色に見える黒体放射の色(温度)を相関色温度という。
[逆相関色温度]
逆相関色温度は、相関色温度の逆数を10
6倍したもの。単位:M(ミレッド)
[色差]
色差とは、逆相関色温度の差である。単位:M(ミレッド)
次に、本実施の形態の各態様を例示すれば以下の通りである。
【0013】
本実施の形態の第1態様のトンネル照明装置は、道路トンネル内に設置されるトンネル照明装置において、トンネルを入口から出口までの3つ以上の区間に区分し、当該区間内に使用するトンネル照明用光源の相関色温度を個別に設定するものである。
【0014】
本実施の形態の第2態様のトンネル照明装置は、トンネル入口に最も近い区間の長さを入口部照明の長さと同等とし、トンネル出口に最も近い区間の長さを出口部照明の長さと同等とするものである。
【0015】
本実施の形態の第3態様のトンネル照明装置は、トンネル中央部の区間に使用するトンネル照明用光源に比較して、トンネル入口に最も近い区間に使用するトンネル照明用光源の相関色温度を高くするものである。
【0016】
本実施の形態の第4態様のトンネル照明装置は、トンネル中央部の区間に使用するトンネル照明用光源に比較して、トンネル出口に最も近い区間に使用するトンネル照明用光源の相関色温度を高くするものである。
【0017】
本実施の形態の第5態様のトンネル照明装置は、トンネル入口に最も近い区間に使用するトンネル照明用光源の相関色温度を4,000K以上、トンネル中央部の区間に使用するトンネル照明用光源の相関色温度を4,000K未満、トンネル出口に最も近い区間に使用するトンネル照明用光源の相関色温度を4,000K以上とするものである。
【0018】
本実施の形態の第6態様のトンネル照明装置は、隣り合う区間に使用されるトンネル照明用光源の色差を40ミレッド以上とするものである。
本実施の形態の第7態様のトンネル照明装置は、当該区間内に非常駐車帯が存在する場合、非常駐車帯に使用する照明用光源と当該区間のトンネル照明用光源と色差を40ミレッド以上とするものである。
【0019】
本実施の形態の第8態様のトンネル照明装置は、トンネル照明用光源を三波長域発光形蛍光ランプとするものである。
本実施の形態の第9態様のトンネル照明装置は、トンネル照明用光源を発光ダイオードとするものである。
【0020】
本実施の形態の各態様によれば、トンネル内の明るさに応じて光源の相関色温度を設定することにより、走行時の快適性の高いトンネル照明装置を提供することができる。
図5は「Kruithof A. A.:Tubular luminescence lamps for general illumination. Philips Technical Review, 6, 65−96」による照度と色温度との組み合わせによる快適性を表す曲線である。
【0021】
相対的に照度が低い場合は色温度を低く、照度が高い場合は色温度を高くすることにより、高い快適性が得られることを示している。
従来、トンネル照明では、基本照明に使用する光源において複数の相関色温度が選択されることはなかった。それは、トンネル照明は終日、点灯されるため、省エネルギーを考慮して発光効率の高い光源が採用されてきたことによる。
【0022】
トンネル照明は、入口部照明が数千ルクスの照度、基本部照明は百ルクスの照度、出口部照明は千ルクス弱の照度である。
図5の知見をベースとすれば、入口照明では約4,000K以上、基本照明では約3,000K、出口部照明では約4,000K以上が快適性の得られる相関色温度であることがわかる。従って、入口部照明の光源を4,000K以上の相関色温度、基本照明の光源を3,000K程度の相関色温度、出口部照明の光源を4,000K以上の相関色温度とすることにより、快適性の高い視環境を実現することができる。
【0023】
道路トンネルにおいて、出口照明が設置されることは稀有であるが、出口照明が設置されない場合でも、トンネル出口付近においては、出口からの自然光の射し込みにより基本照明よりも照明レベルが上昇するため、出口に近い区間において相関色温度の高い光源を採用することは、快適性の向上につながる。
【0024】
従来、トンネル入口照明の光源には低圧ナトリウムランプ、高圧ナトリウムランプ高圧ナトリウムランプが採用されてきた、高圧ナトリウムランプの相関色温度は2,000〜2,100K、セラミックメタルハライドランプの相関色温度は3,000〜4,100Kである。発光ダイオードは原理的に広範囲の相関色温度の設定が可能であり、相関色温度4,000〜6,500Kを実現することができる。
【0025】
入口部照明が設置される数百メートルの区間で、光源の相関色温度を変化させることも考えられる。色順応時間は暗順応時間の1/10程度と言われており、トンネル照明では数秒程度で色順応すると考えられる。
【0026】
入口部照明の区間内で照度と連動させて光源の相関色温度を変化させることにより、暗順応と色順応の両方を考慮した入口部照明を実現できる。
出口部照明は入口部照明よりも設置される長さが短いため、その区間内で相関色温度を変化させることは実用的に有意ではないと考えられる
夜間におけるトンネル照明は、トンネルの入口から出口まで基本照明によって構成される。この場合には、トンネル入口より手前、及びトンネル出口以降のいわゆる野外の自然光の影響がないため、照度と快適性との関係においては、基本照明の光源の相関色温度は約3,000Kとしてトンネル入口から出口まで一定とすることが妥当である。しかし、長大トンネルでは、トンネル内走行に伴う単調感の緩和等の対策として、後述の各実施の形態に示すような光源の相関色温度の変化が有用と考えられる。
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1Aは、本実施の形態のトンネル内照明装置における相関色温度の分布設定の一例を示す概念図であり、
図1Bは、本実施の形態における道路トンネルの構成の一例を示す略断面図である。
【0028】
また、
図5は、照度と快適性との関係を示す線図である。
まず、
図1Bに例示されるように、本実施の形態のトンネル10は、入口11から出口12に至るトンネル内13の天井または側壁14にトンネル照明装置20を配置している。
【0029】
この場合、トンネル10の入口11の近傍には、入口照明光源20aが配置され、出口12の近傍には出口照明光源20bが配置され、入口11から出口12に至る全長にわたって一定間隔で基本照明光源20cが配置され、これらによってトンネル照明装置20が構成されている。
【0030】
入口照明光源20aおよび出口照明光源20bはセラミックメタルハライドランプ、基本照明光源20cは、例えば三波長域発光形蛍光ランプで構成されている。
そして、照度分布線112で示されるように、入口11および出口12が基本部照明10cの中央部よりも明るくなるような照度分布を実現する。
【0031】
すなわち、基本照明光源20cで照明される範囲が基本部照明10c、入口照明光源20aと基本照明光源20cの両方で照明される範囲が入口部照明10a、出口照明光源20bと基本照明光源20cの両方で照明される範囲が出口部照明10bである。
【0032】
この場合、基本照明光源20cを入口11から出口12まで、第1照明区間K11、第2照明区間K12、第3照明区間K13の3つの区間に区分したものである。
例えば、トンネル10の長さを1kmとすれば、第1照明区間K11は約300メートル、第2照明区間K12は約600メートル、第3照明区間K13は約100メートルとなる。
【0033】
そして、この場合、第1照明区間K11の長さは、入口部照明10aの長さと同等に設定され、第3照明区間K13の長さは、出口部照明10bの長さと同等に設定されている。
【0034】
これにより、入口照明光源20a、出口照明光源20bを外光の変化に応じて変化させる場合でも、当該変化の領域が相関色温度を変化させる照明区間と一致しているので、運転者の違和感が少なくなる。
【0035】
本実施の形態1では、色温度分布線111のように、隣り合う区間ごとに相関色温度を変化させる。
入口11から数えて最初の第1照明区間K11の基本照明光源20cの相関色温度は入口照明光源20aの相関色温度と極力合わせて選択する。トンネル10の出口12に最も近い第3照明区間K13の基本照明光源20cの相関色温度は出口照明光源20bの相関色温度と極力合わせて選択する。
【0036】
入口照明光源20aがセラミックメタルハライドランプの場合、第1照明区間K11の光源(基本照明光源20c)の相関色温度T11を4,000Kとする。
出口照明光源20bがセラミックメタルハライドランプの場合、第3照明区間K13の光源(基本照明光源20c)の相関色温度T13を4,000Kとする。
【0037】
第2照明区間K12の光源(基本照明光源20c)の相関色温度T12を3,000Kとするものである。
これによって、入口部照明における入口照明光源20aと基本照明光源20cとの相関色温度T11、出口部照明における出口照明光源20bと基本照明光源20cとの相関色温度T13を合わせるとともに、第2照明区間K12の光源との色差を約80ミレッドとする。
【0038】
三波長域発光形蛍光ランプには昼光色、昼白色、白色、温白色、電球色があり、それぞれの相関色温度は6,500K、5,000K、4,200K、3,500K、3,000Kである。
【0039】
基本照明光源20cとしては、これらの三波長域発光形蛍光ランプを用いることができる。
この場合、照度分布線112で示される照度分布は、入口11から入口部照明10aの終端までの範囲では、1000ルクスから100ルクスまで漸減している。
【0040】
また、両端の入口部照明10aおよび出口部照明10bを除く基本部照明10cでは、100ルクスで一定になっている。
出口12の側の出口部照明10bでは、500ルクスとなっている。
【0041】
各区間でみると、第1照明区間K11の平均照度S11≒500ルクス、第2照明区間K12の照度S12≒100ルクス、第3照明区間K13の照度S13≒500ルクスである。
【0042】
そして、本実施の形態の場合、各区間における相関色温度(相関色温度T11〜相関色温度T13)と照度(照度S11〜照度S13)は、
図5に例示される線図における、快適とされる領域200に含まれるように正の相関を持つように設定されている。
【0043】
すなわち、
図5に例示された照度と色温度との組み合わせによる快適性を表す線図では、横軸が色温度、縦軸が照度のグラフにおいて、右肩上がりの境界線201および境界線202の間の領域が、快適とされる領域200である。
【0044】
相対的に照度が低い場合は色温度を低く、照度が高い場合は色温度を高くすることにより、高い快適性が得られることを示している。
従って、本実施の形態のように、相関色温度と照度が正の相関関係を有するように設定することで、トンネル10の全範囲(すなわち、第1照明区間K11〜第3照明区間K13の全区間)において、高い快適性が得られる。
【0045】
なお、特に図示しないが、非常駐車帯が存在する第1照明区間K11〜第3照明区間K13内では、前記非常駐車帯に使用する非常駐車帯照明用光源と当該区間のトンネル照明用光源(例えば、基本照明光源20c)との色差が40ミレッド以上となるようにする。
これにより、非常駐車帯の存在を色差によって運転者に認識させることができる効果が得られる。
【0046】
(実施の形態2)
図2Aは、本発明の他の実施の形態のトンネル照明装置の作用を示す線図であり、
図2Bは、本発明の他の実施の形態のトンネル照明装置の構成例を示す略断面図である。
【0047】
実施の形態2では、トンネル照明装置20の配置は実施の形態1と同様であるが、区間設定と照明の種類が異なっている。
すなわち、
図2Aおよび
図2Bに例示されるように、本実施の形態2の場合、トンネル10の入口から出口までを、第1照明区間K21、第2照明区間K22、第3照明区間K23の3つ以上の区間に区分し、その各々において、隣り合う区間との相関色温度が異なるように設定する。
【0048】
例えば、トンネルの長さを1kmとすれば、各区間の長さは約330mとなる。
入口11から数えて最初の第1照明区間K21の基本照明光源20cの相関色温度は入口照明光源20aの相関色温度と極力合わせて選択する。トンネル10の出口12に最も近い第3照明区間K23の基本照明光源20cの相関色温度は出口照明光源20bの相関色温度と極力合わせて選択する。
【0049】
入口照明光源20aがセラミックメタルハライドランプの場合、第1照明区間K21の光源(基本照明光源20c)の相関色温度T21を4,000Kとする。
出口照明光源20bがセラミックメタルハライドランプの場合、第3照明区間K23の光源(基本照明光源20c)の相関色温度T23を4,000Kとする。
【0050】
第2照明区間K22の光源(基本照明光源20c)の相関色温度T22を3,500K以下とするものである。
これによって、入口部照明における入口照明光源20aと基本照明光源20cとの相関色温度T21、出口部照明における出口照明光源20bと基本照明光源20cとの相関色温度T23を合わせるとともに、第2照明区間K22の光源との色差を約40ミレッド以上とする。
【0051】
これにより、トンネル10の走行中におけるトンネル照明装置20の色温度が変化するので、基本照明光源20cの延長が数km以上となる長大トンネルの場合でも、単調感が生ずることがなく、トンネル走行の快適性が向上する。
【0052】
(実施の形態3)
図3は、本発明のさらに他の実施の形態を示す線図である。
この
図3に例示される実施例では、基本照明光源20cのすべてに三波長域発光形蛍光ランプを用いた場合を示す。
【0053】
この
図3の場合、トンネル10の全長は、第1照明区間K31から第9照明区間K39の9つの区間に区分され、両端の第1照明区間K31が入口部照明10a、第9照明区間K39が出口部照明10b、その間の第2照明区間K32から第8照明区間K38が基本部照明10cである。
【0054】
三波長域発光形蛍光ランプには昼光色、昼白色、白色、温白色、電球色があり、それぞれの相関色温度は6,500K、5,000K、4,200K、3,500K、3,000Kである。各光色間の色差は約40〜50ミレッドとなる。
【0055】
本実施の形態の場合、色温度分布線131に示されるように、
第1照明区間K31と第9照明区間K39の相関色温度T31と相関色温度T39が6,500K、
第2照明区間K32と第8照明区間K38の相関色温度T32と相関色温度T38が50,00K、
第3照明区間K33と第7照明区間K37が、の相関色温度T33と相関色温度T37が4,200K、
第3照明区間K34と第7照明区間K36が、の相関色温度T34と相関色温度T36が3,500K、
中央の第5照明区間K35の相関色温度T35が3,000K、
である。
【0056】
従って、第1照明区間K31から第9照明区間K39までの相関色温度T31から相関色温度T39までの範囲において、隣り合う区間の色差は約40〜50ミレッドとなる。
この実施の形態3では、上述の実施の形態2と同様の効果が得られるとともに、さらなる副次的な効果として、長大トンネルでは、
図3に示すように区間を分割し、各区間の光源の相関色温度を設定することにより、運転者をはじめとするトンネルの利用者に、トンネル内における概ねの地点を知らしめる効果も期待できる。
【0057】
(実施の形態4)
図4は、本発明のさらに他の実施の形態を示す線図である。
この
図4に例示される実施の形態4では、当該基本照明光源20cの光源に発光ダイオード(LED)を用いた事例である。
【0058】
この場合、基本照明光源20cに使用する発光ダイオード灯具の1台ごとに相関色温度を設定し、隣り合う光源を略一定の色差とする。これにより、実用的には色温度分布線141のように略無段階に相関色温度を変化させることができる。
【0059】
これにより、トンネル10の走行中におけるトンネル照明装置20の相関色温度が徐々に変化するので、基本照明光源20cの延長が数km以上となる長大トンネルの場合でも、違和感や単調感等を生ずることがなく、トンネル走行の快適性が向上する。
【0060】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。