(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された構造では、上階側建物ユニットと下階側建物ユニットとでユニットの短辺方向の大きさが異なる場合には適用できない。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、上階側建物ユニットと下階側建物ユニットとでユニットの短辺方向の大きさが異なる場合でも、居室の床面の高さとバルコニ床の床面の高さを一致させることができるバルコニの床構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のバルコニ床構造は、下階側建物ユニットの天井部の一部を構成する下階天井大梁と、上階側建物ユニットの床部の一部を構成し、前記下階側建物ユニットの天井面積よりも床面積が小さくなるように設定された上階床大梁と、前記上階床大梁及び前記下階天井大梁に連結されるバルコニ床フレームと、前記上階側建物ユニットに隣接して設けられ、前記バルコニ床フレームによって支持され、前記上階側建物ユニットの居室の床面の高さと一致するように床面の高さが設定されたバルコニ床と、を有している。
【0007】
請求項1記載のバルコニ床構造では、下階側建物ユニットの天井部の一部が下階天井大梁によって構成され、上階側建物ユニットの床部の一部が上階床大梁によって構成されている。そして、下階側建物ユニットの天井面積よりも上階側建物ユニットの床面積が小さくなるように設定されており、当該上階側建物ユニットにはバルコニが隣接して設けられている。
【0008】
ここで、本発明では、上階床大梁及び下階天井大梁にバルコニ床フレームが連結されると共に、バルコニ床フレームによって支持されたバルコニ床において、その床面の高さが上階側建物ユニットの居室の床面の高さと一致するように設定されている。
【0009】
例えば、下階側建物ユニットの天井面積と上階側建物ユニットの床面積が同じユニット建物の場合、下階側建物ユニットの上方には、バルコニ或いは上階側建物ユニットがそれぞれ配置される。このため、バルコニ側では、バルコニ床フレームを下階天井大梁のみに連結させることができる。
【0010】
しかし、下階側建物ユニットの天井面積よりも上階側建物ユニットの床面積が小さい場合、下階側建物ユニットの上方には、バルコニ及び上階側建物ユニットが配置されることとなる。つまり、互いに対向して配置される下階天井大梁の一方側では、バルコニ床フレームが配置され、下階天井大梁の他方側では上階側建物ユニット用の床フレームが配置される。つまり、バルコニ床フレームを下階天井大梁のみに連結させることができない。
【0011】
このため、本発明では、上階床大梁及び下階天井大梁にバルコニ床フレームが連結されるようにしている。上階床大梁と下階天井大梁との間には高低差があるため、当該上階床大梁及び下階天井大梁にバルコニ床フレームを連結することで、バルコニ床上の水をバルコニ床フレームに沿ってユニット建物の外部へ排水させることができる。したがって、雨仕舞い等を考慮してバルコニ床の床面よりも居室の床面の高さを高くして設計する必要がなくなり、バルコニ床の床面と居室の床面の高さが略一致するように設定することができる。
【0012】
請求項2記載のバルコニ床構造は、請求項1に記載のバルコニ床構造において、前記バルコニ床フレームは、前記上階床大梁と前記下階天井大梁との間を水平面に対して傾斜した状態で架け渡されたバルコニ小梁と、前記バルコニ小梁に固定され、前記バルコニ床を支持する束材と、を含んで構成されている。
【0013】
請求項2記載のバルコニ床構造では、バルコニ床フレームがバルコニ小梁と束材とを含んで構成されている。バルコニ小梁は上階床大梁と下階天井大梁との間を水平面に対して傾斜した状態で架け渡されており、当該バルコニ小梁に束材が固定されている。この束材によって、バルコニ床が支持されている。
【0014】
このように、バルコニ小梁は水平面に対して傾斜した状態で架け渡されているため、バルコニ床の床面上の水を当該バルコニ小梁の上面に沿ってユニット建物の外部へ排水させることができる。
【0015】
請求項3記載のバルコニ床構造は、請求項1に記載のバルコニ床構造において、前記バルコニ床フレームは、前記上階床大梁と前記下階天井大梁との間で水平に架け渡されたバルコニ小梁と、前記バルコニ小梁の上に配置され、その上面が水平面に対して傾斜した傾斜面が形成された勾配断熱材と、前記勾配断熱材を貫通して前記バルコニ小梁に固定され、前記バルコニ床を支持する束材と、を含んで構成されている。
【0016】
請求項3記載のバルコニ床構造では、バルコニ床部がバルコニ小梁と勾配断熱材と束材とを含んで構成されている。バルコニ小梁は上階床大梁と下階天井大梁との間で水平に架け渡されており、当該バルコニ小梁の上には勾配断熱材が配置されている。この勾配断熱材の上面には水平面に対して傾斜した傾斜面が形成されている。そして、勾配断熱材を貫通して当該バルコニ小梁に固定された束材によって、バルコニ床が支持されている。
【0017】
このように、バルコニ小梁上に配置された勾配断熱材は水平面に対して傾斜した傾斜面が形成されているため、バルコニ床の床面上の水を当該勾配断熱材の傾斜面に沿ってユニット建物の外部へ排水させることができる。
【0018】
請求項4記載のバルコニ床構造は、請求項2又は3に記載のバルコニ床構造において、前記上階床大梁に連結される第1支持手段と、前記下階天井大梁に連結され、前記第1支持手段と共に前記バルコニ小梁の端部を支持する第2支持手段と、を有している。
【0019】
請求項4記載のバルコニ床構造では、上階床大梁に第1支持手段が連結されており、下階天井大梁に第2支持手段が連結されている。そして、第1支持手段及び第2支持手段によってバルコニ小梁の端部が支持される。つまり、ここでは第1支持手段及び第2支持手段を介して、上階床大梁及び下階天井大梁にバルコニ小梁が連結されている。したがって、上階床大梁及び下階天井大梁とは別に、第1支持手段及び第2支持手段が設けられている。このため、第1支持手段及び第2支持手段において、必要な強度に応じて形状や肉厚を変えることができる。
【0022】
請求項
5記載のバルコニ床構造は、請求項
4に記載のバルコニ床構造において、前記第1支持手段に、前記バルコニ小梁の傾斜角度を調整する角度調整手段が設けられている。
【0023】
請求項
5記載のバルコニ床構造では、第1支持手段に、バルコニ小梁の傾斜角度を調整する角度調整手段が設けられることで、バルコニの奥行きに合わせて第1支持手段を介してバルコニ小梁の傾斜角度を調整することができる。このため、バルコニの奥行きに拘わらず同じ長さのバルコニ小梁を使用することができる。
【0024】
請求項
6記載のバルコニ床構造は、請求項
5に記載のバルコニ床構造において、前記第1支持手段が前記上階床大梁の延在方向に沿って延在されたバルコニ床梁であり、前記角度調整手段は、前記バルコニ床梁の延在方向に対して直交する方向に設けられ当該バルコニ床梁内を区画する一対のリブと、前記一対のリブの内側に配置される前記バルコニ小梁の一端部に形成された第1締結穴と前記リブに形成された第2締結穴に挿通され締結される締結部材と、を含んで構成されている。
【0025】
請求項
6記載のバルコニ床構造では、角度調整手段は、上階床大梁の延在方向に沿って延在されたバルコニ床梁に設けられた一対のリブと、当該リブに締結される締結部材と、を含んで構成されている。リブはバルコニ床梁の延在方向に対して直交する方向に設けられており、当該バルコニ床梁内を区画している。これらのリブの内側にバルコニ小梁の一端部が配置される。
【0026】
そして、バルコニ小梁の一端部には第1締結穴が形成されており、リブには第2締結穴が形成されている。第1締結穴及び第2締結穴に締結部材が挿通されて締結され、バルコニ小梁がバルコニ床梁に固定される。このように、締結部材を用いることで、バルコニ小梁の傾斜角度に合わせて、当該バルコニ小梁の一端部をバルコニ床梁に固定させることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係るバルコニの床構造は、上階側建物ユニットと下階側建物ユニットとでユニットの短辺方向の大きさが異なる場合でも、居室の床面の高さとバルコニ床の床面の高さとを略同じにすることができる、という優れた効果を有する。
【0028】
請求項2記載の本発明に係るバルコニの床構造は、バルコニ小梁の上面に沿ってバルコニ床の床面上の水をユニット建物の外部へ排水させることができる、という優れた効果を有する。
【0029】
請求項3記載の本発明に係るバルコニの床構造は、勾配断熱材によって水勾配を形成するため傾斜角度の設定が容易である、という優れた効果を有する。
【0030】
請求項4記載の本発明に係るバルコニの床構造は、バルコニの奥行きに合わせて第1支持手段及び第2支持手段の形状を変えることができ、バルコニの設計自由度が向上する、という優れた効果を有する。
【0032】
請求項
5記載の本発明に係るバルコニの床構造は、バルコニの奥行きに合わせてバルコニ小梁の傾斜角度を変えるだけなので、バルコニの奥行きに拘わらず同じ長さのバルコニ小梁を使用することができ、当該バルコニ小梁の汎用性が高くなる、という優れた効果を有する。
【0033】
請求項
6記載の本発明に係るバルコニの床構造は、バルコニ床梁内を区画するリブを設けることで、当該バルコニ床梁の口開き変形を防止し、バルコニ床梁における断面性能を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<第1実施形態>
(バルコニ床構造の構成)
【0036】
図2(A)には、本実施の形態に係るバルコニの床構造が適用されたユニット建物10の斜視図が示されており、
図2(B)には、
図2(A)の平面図が示されている。
図2(B)で示すハッチング部がバルコニ12である。この図に示されるように、本実施形態では、下階側建物ユニット14上にバルコニ12及び上階側建物ユニット16が設けられている。つまり、このユニット建物10では、下階側建物ユニット14の天井面積よりも上階側建物ユニット16の床面積が小さくなるように設計されている。
【0037】
一方、
図1は、
図2(B)で示す平面図において1−1線に沿って切断された状態の断面図であり、第1実施の形態に係るバルコニの床構造の要部が示されている。
図1に示されるように、下階側建物ユニット14は、四隅に立設された図示しない柱と、柱の上端部同士を連結する下階天井フレーム18と、柱の下端部同士を連結する図示しない床フレームと、によってユニット躯体が構成されている。
【0038】
下階天井フレーム18は、各々溝形鋼によって構成された長短二種類の下階天井大梁20、21(なお、短い方の天井大梁は図示されていない。)を矩形枠状に配置すると共に、長い方の下階天井大梁20、21間に複数の下階天井小梁22が所定の間隔で架け渡されることにより構成されている。下階天井フレーム18の下面側には下階天井材23が取り付けられており、これにより下階天井パネル24が構成されている。なお、図示しない下階床フレーム及び下階床パネルも同様に構成されている。
【0039】
下階側建物ユニット14の屋外側には外壁パネル26が設けられている。この外壁パネル26は、外壁材28と、その裏面側に配置された外壁フレーム30と、によって構成されており、外壁材28は図示しないスクリューによって外壁フレーム30に固定されている。そして、当該外壁パネル26は、外壁フレーム30を下階天井大梁20のウエブ20A及び下階床大梁(図示省略)に固定することにより、下階側建物ユニット14の屋外側の側面に取り付けられている。
【0040】
一方、上階側建物ユニット16におけるバルコニ12側の外壁には、サッシ32が嵌め込まれている。上階側建物ユニット16の上階床パネル34は、溝形鋼によって構成され矩形枠状に配置された上階床大梁36、37(なお、短い方の上階床大梁は図示されていない。)と、上階床大梁36と上階床大梁37の間に所定の間隔で架け渡された複数の上階床梁(根太)38と、を含んで構成された上階床フレーム40と、その上面側に固定された上階床材42と、によって構成されている。
【0041】
また、バルコニ12は、矩形枠状に配置されたバルコニ床梁44(なお、短い方のバルコニ床梁は図示されていない。)と、当該バルコニ床梁44間に所定の間隔で架け渡された複数のバルコニ小梁46と、によって平面視で梯子状に構成されたバルコニ床フレーム48と、を備えている。
【0042】
ここで、前述のように、本実施形態では、下階側建物ユニット14の天井面積よりも上階側建物ユニット16の床面積が小さくなるように設計されており、当該上階側建物ユニット16にはバルコニ12が隣接して設けられている。
【0043】
そして、本実施形態では、例えば、バルコニ床梁44は、上階床大梁36に連結された第1支持手段としてのバルコニ軒元梁52及び下階天井大梁20に連結された第2支持手段としてのバルコニ軒先梁58によって支持されている。バルコニ軒元梁52は、断面形状が略コ字状を成しており、バルコニ軒元梁52のウエブ部52Aの外面が、上階側建物ユニット16用の上階床大梁36のウエブ部36Aの外面と重なった状態で配置されている。そして、当該ウエブ部52A及びウエブ部36Aがボルト54及びナット56を介して締結され、バルコニ軒元梁52が上階床大梁36に連結されている。
【0044】
一方、バルコニ軒先梁58は、断面形状が略逆L字状を成しており、バルコニ軒先梁58の一方のフランジ58Aは、下階側建物ユニット14の下階天井大梁20の上フランジ20Bの上面に重なった状態で配置されている。そして、当該フランジ58A及び上フランジ20Bがボルト60及びナット62を介して締結され、バルコニ軒先梁58が下階天井大梁20に連結されている。なお、バルコニ軒先梁58の他方のフランジ58Bは下方へ垂下された状態で、一対の下階天井大梁20、21の間に配置される。
【0045】
以上のように、バルコニ軒元梁52は上階床大梁36に連結され、バルコニ軒先梁58は下階天井大梁20に連結されているため、バルコニ軒元梁52とバルコニ軒先梁58との間には高低差が生じている。つまり、バルコニ軒先梁58よりもバルコニ軒元梁52の方がユニット建物10の高さ方向で高い位置に配置されている。
【0046】
そして、ここでは、バルコニ軒元梁52の下部フランジ52Bの下面にバルコニ小梁46の一端部が溶接(固定)され、バルコニ軒先梁58のフランジ58Bの外面にバルコニ小梁46の他端部が溶接(固定)されている。これにより、当該バルコニ小梁46を水平面に対して傾斜させた状態で配置させることができる。
【0047】
このバルコニ小梁46の上面には、野地板63が配設され、当該野地板63の上面には防水下地面材64が配設されている。一方、バルコニ12の腰壁74の下部には、断面形状が略L字状を成すコーナ役物65が、図示しないスクリューによって当該腰壁74に固定されている。コーナー役物65とバルコニ軒先梁58のフランジ58Aとの間には隙間が設けられており、当該隙間には防水下地面材64の一端部が配置されている。なお、防水下地面材64の他端部側も一端部側と同様、バルコニ軒元梁52に溶接された取付壁86にコーナー役物65が固定されており、コーナー役物65とバルコニ軒元梁52のフランジとの間に設けられた隙間内に防水下地面材64の他端部が配置されている。
【0048】
そして、防水下地面材64の上面は、建築地での現場施工によって、防水シート66で覆われるようになっており、防水シート66は端部はコーナー役物65に取り付けられるようになっている。これによって、防水施工がなされる。そして、ここでは、防水下地面材64及び防水シート66がバルコニ小梁46と共に傾斜した状態で配置され、バルコニ軒元梁52側からバルコニ軒先梁58側へ向けて下り勾配となる水勾配を有している。
【0049】
また、防水下地面材64の上面には、複数の束材68が所定の間隔で配置されており、当該束材68はバルコニ小梁46の傾斜に合わせて、バルコニ軒元梁52側からバルコニ軒先梁58側へ向けて当該束材68の長さは徐々に長くなっている。束材68の先端面の位置は互いに面一となっており、水平面に沿って配置されている。このため、これらの束材68上にバルコニ根太70が架け渡された状態で、バルコニ根太70は水平面に沿って配置されることとなる。このバルコニ根太70の上にバルコニ床としてのバルコニ床仕上げ材72が載置されることにより、バルコニ12の床が構成されている。
【0050】
そして、本実施形態では、このバルコニ12の床面72Aの高さと上階側建物ユニット16の居室50の床面42Aの高さが略一致するように設定されている。また、バルコニ床仕上げ材72にはスリット(図示省略)が形成されており、バルコニ床仕上げ材72上の水は当該スリットを通じて防水シート66上へ落下するようになっている。
【0051】
また、バルコニ12の腰壁74側には、当該腰壁74に沿って排水溝76が形成されており、バルコニ12の床面72A上の水が当該排水溝76を通じて落下するようになっている。排水溝76の下方には、スクリュー78によって腰壁74に固定された水切り部80が設けられており、当該水切り部80によってさらに下方へ落下した水はユニット建物10の外部へ排出される。
【0052】
さらに、バルコニ12における上階側建物ユニット16側には、サッシ32に沿ってグレーチング82が設けられており、バルコニ床仕上げ材72上の水が当該グレーチング82を通じて落下するようになっている。グレーチング82の下方には、ガイド板83及び水切り部84が配置されており、グレーチング82を通じて落下した水はガイド板83によって水切り部84へ案内される。
【0053】
この水切り部84は、スクリュー78によって例えばバルコニ軒元梁52に溶接された取付壁86に固定されている。ガイド板83によって水切り部84へ案内された水は、当該水切り部84によってさらに下方へ落下し、防水シート66に沿ってバルコニ12における上階側建物ユニット16の居室50側から腰壁74側へ向かって案内され、ユニット建物10の外部へ排出される。
【0054】
(バルコニ床構造の作用・効果)
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0055】
本実施形態では、
図1に示されるように、下階側建物ユニット14の天井面積よりも上階側建物ユニット16の床面積が小さくなるように設定されており、当該上階側建物ユニット16にはバルコニ12が隣接して設けられている。
【0056】
図示はしないが、例えば下階側建物ユニットの天井面積と上階側建物ユニットの床面積が同じユニット建物の場合、下階側建物ユニット14の上方には、バルコニ12或いは上階側建物ユニット16がそれぞれ配置される。このため、バルコニ12側では、バルコニ床フレーム48を下階天井大梁20、21のみに連結させることができる。
【0057】
しかし、
図1に示されるように、下階側建物ユニット14の天井面積よりも上階側建物ユニット16の床面積が小さい場合、下階側建物ユニット14の上方には、バルコニ12及び上階側建物ユニット16が配置されることとなる。つまり、互いに対向して配置される下階天井大梁20側では、バルコニ床フレーム48が配置され、下階天井大梁21側では上階側建物ユニット16の上階床フレーム40が配置される。つまり、バルコニ床フレーム48を下階天井大梁20、21のみに連結させることができない。
【0058】
このため、本実施形態では、例えば、バルコニ軒元梁52を上階床大梁36に連結させ、バルコニ軒先梁58を下階天井大梁20に連結させて、当該バルコニ軒元梁52及びバルコニ軒先梁58を介してバルコニ小梁46を下階天井大梁20と上階床大梁36との間に架け渡している。
【0059】
下階天井大梁20と上階床大梁36との間には高低差があるため、当該下階天井大梁20と上階床大梁36と間にバルコニ小梁46が架け渡されることで、当該バルコニ小梁46を水平面に対して傾斜させた状態で配置させることができる。
【0060】
これにより、バルコニ12の床面72A上の水をバルコニ小梁46に沿ってユニット建物10の外部へ排水させることが可能となり、サッシ32の設置部33を立ち上げる必要がなくなる。このため、居室50の床面72Aの高さとバルコニ12の床面72Aの高さが略一致するように設計することができる。
【0061】
具体的には、バルコニ小梁46には束材68が固定されており、当該束材68によって、バルコニ根太70を介してバルコニ12の床面72Aを構成するバルコニ床仕上げ材72が支持されている。バルコニ床仕上げ材72にはスリット(図示省略)が形成されており、バルコニ床仕上げ材72上の水は当該スリットを通じて防水シート66上へ落下するようになっている。バルコニ小梁46は水平面に対して傾斜した状態で架け渡されているため、バルコニ12の床面72A上の水を当該バルコニ小梁46の上面(防水シート66上)に沿ってユニット建物10の外部へ排水させることができる。
【0062】
したがって、本実施形態では、
図2((A)、(B)に示されるように、上階側建物ユニット16と下階側建物ユニット14とで、ユニットの長辺方向の大きさは同じであるが短辺方向の大きさが異なる場合でも、
図1に示されるように、居室50の床面72Aの高さとバルコニ12の床面72Aの高さとを略一致させることができる。これにより、バリアフリー住宅としての適用も可能となる。
【0063】
ところで、本実施形態では、バルコニ小梁46の一端部が固定されるバルコニ軒元梁52は上階床大梁36に連結され、バルコニ小梁46の他端部が固定されるバルコニ軒先梁58は下階天井大梁20に連結されている。つまり、バルコニ軒元梁52及びバルコニ軒先梁58を別部材として、上階床大梁36及び下階天井大梁20とは別に設けられている。
【0064】
このため、バルコニ軒元梁52及びバルコニ軒先梁58において、必要な強度に応じて形状や肉厚を変えることができる。また、バルコニ12の奥行きに合わせてバルコニ軒元梁52及びバルコニ軒先梁58の形状を変えることができ、バルコニ12の設計自由度が向上する。
【0065】
また、バルコニ軒元梁52を介してバルコニ小梁46の一端部が上階床大梁36に固定され、バルコニ軒先梁58を介してバルコニ小梁46の他端部が下階天井大梁20に固定されるため、バルコニ12側の床振動が上階床大梁36及び下階天井大梁20にダイレクトに伝達されない。このため、上階側建物ユニット16及び下階側建物ユニット14の静粛性を良好に維持することができる。
【0066】
ここで、バルコニ軒元梁52及びバルコニ軒先梁58について、予め工場内でバルコニ小梁46に取付け、バルコニ軒元梁52、バルコニ軒先梁58及びバルコニ小梁46をアッシー化させても良い。これによると、建築現場においてバルコニ軒元梁52及びバルコニ軒先梁58にバルコニ小梁46を溶接させる必要がなくなる。このため、作業時間が短縮化され、建築現場での施工作業を大幅に削減することができる。
【0067】
(その他の実施形態)
上記の実施形態では、
図1に示されるように、第1支持手段としてのバルコニ軒元梁52の断面形状が略逆コ字状を成し、第2支持手段としてのバルコニ軒先梁58の断面形状が略逆L字状を成している。そして、当該バルコニ軒元梁52の下部フランジ52Bの下面にバルコニ小梁46の一端部が溶接され、バルコニ軒先梁58のフランジ58Bの外面にバルコニ小梁46の他端部がそれぞれ溶接されている。
【0068】
しかし、ここでは、バルコニ小梁46を水平面に対して傾斜させた状態で配置させることができれば良いため、第1支持手段及び第2支持手段の形状については、これに限るものではない。
【0069】
(1)例えば、
図3に示されるように、第1支持手段としてのここでのバルコニ軒元梁90では、断面形状が略逆L字状を成している。このバルコニ軒元梁90の一方のフランジ90Aは、起立した状態で上階床大梁36のウエブ部36Aに固定され、バルコニ軒元梁90の他方のフランジ90Bは略水平状に配置されている。
【0070】
そして、このフランジ90Bに角パイプ92が固定され、当該角パイプ92にバルコニ小梁46が取り付けられている。つまり、バルコニ軒元梁90に対して間接的にバルコニ小梁46を取り付けるようにしても良い。そして、この角パイプ92の有無によって、バルコニ12の奥行きに合わせてバルコニ小梁46の傾斜角度を調整することができる。
【0071】
(2)また、これ以外にもバルコニ小梁46の傾斜角度を調整する角度調整手段を設けても良い。例えば、
図4及び
図5に示されるように、第1支持手段としてのここでのバルコニ軒元梁94は略コ字状を成しており、当該バルコニ軒元梁94の延在方向に対して直交する方向に一対のリブ96が設けられている。この一対のリブ96によってバルコニ軒元梁94内が区画されている。なお、この一対のリブ96は、バルコニ小梁98の数に合わせてバルコニ軒元梁94の延在方向に沿って複数設けられている。
【0072】
この一対のリブ96の間にここでは矩形状のバルコニ小梁98が配置される。バルコニ小梁98の側面には第1締結穴としての貫通孔100が形成されており、リブ96に形成された第2締結穴としての貫通孔102に重なった状態で、締結部材としてのボルト104及びナット106(ここではウェルドナット)によって、当該リブ96を介してバルコニ小梁98がバルコニ軒元梁94に固定される。
【0073】
このように、バルコニ小梁98をボルト104及びナット106によってバルコニ軒元梁94に締結させることで、バルコニ軒元梁94に対してバルコニ小梁98を水平面に対して所望の角度に設定した状態で固定させることができる。なお、バルコニ小梁98とバルコニ軒元梁94のフランジ94Aとの間に生じた隙間H(
図4参照)については溶接などによって当該隙間Hを埋めるようにする。
【0074】
上記のように、ボルト104及びナット106によってバルコニ小梁98の傾斜角度を調整できるようにすることで、バルコニ12の奥行きに拘わらず同じ長さのバルコニ小梁98を使用することができる。本実施形態では、バルコニ12の奥行きに合わせてバルコニ小梁98の傾斜角度を変えるだけなので、バルコニ12の奥行きに拘わらず同じ長さのバルコニ小梁98を使用することができ、当該バルコニ小梁98の汎用性が高くなる。
【0075】
また、バルコニ軒元梁94において、バルコニ軒元梁94内を区画するリブ96を設けることで、当該バルコニ軒元梁94の口開き変形を防止し、バルコニ軒元梁94における断面性能を向上させることができる。
【0076】
(3)一方、上記実施形態では、
図1に示されるように、第2支持手段としてのバルコニ軒先梁58について、断面形状が略逆L字状を成している。このバルコニ軒先梁58の一方のフランジ58Aは、下階天井大梁20の上フランジ20Bに重なると共に、バルコニ軒先梁58の他方のフランジ58Bは、下階天井大梁20の内側に配置され下方へ垂下された状態で、下階天井大梁20に連結されている。
【0077】
しかし、バルコニ軒先梁58の下階天井大梁20に対する連結方法はこれに限るものではない。例えば、
図6に示されるように、バルコニ軒先梁58のフランジ58Aが下階天井大梁20の上フランジ20Bに重なると共に、バルコニ軒先梁58のフランジ58Bが下階天井大梁20の内側に配置され上方へ起立した状態で、下階天井大梁20に連結されるようにしても良い。このように、バルコニ軒先梁58の下階天井大梁20に対する連結方法を変えることで、バルコニ小梁46の傾斜角度を変えることができる。
【0078】
(4)また、これ以外にも、
図7に示されるように、バルコニ小梁46の延在方向に沿った方向から見て矩形状を成すブラケット108を下階天井大梁20内に固定する。そして、当該ブラケット108内にバルコニ小梁46を入れて溶接し、ブラケット108を介してバルコニ小梁46を下階天井大梁20に固定するようにしても良い。
【0079】
ここで、ブラケット108は下階天井大梁20の上フランジ20B及び下フランジ20Cに接触可能な大きさとなるように設定され、ボルト104及びナット106によってブラケット108が下階天井大梁20に固定される。勿論溶接固定でも良い。このように、下階天井大梁20内にブラケット108を設けることで、下階天井大梁20の口開き変形を防止し、下階天井大梁20における断面性能を向上させることができる。
【0080】
(5)さらに、
図8に示されるように、断面視で略コ字状を成すブラケット110を下階天井大梁20内に溶接して、ブラケット110と下階天井大梁20との間で閉断面が構成されるようにする。これにより、下階天井大梁20の断面性能を向上させることができる。そして、このブラケット108に断面視で略逆L字状を成すバルコニ軒先梁112が固定され、当該バルコニ軒先梁112にバルコニ小梁46を溶接され固定される。
【0081】
以上、バルコニ小梁46の取り付け方法について、一例として第1支持手段及び第2支持手段に関する説明を行ったが、これらのうち何れか1つを実施しても良いし、複数を組合せた状態で実施しても良い。また、部材間の固定方法については、溶接又は締結として説明したが、特に限定させるものではなく、どちらの方法を用いても良い。
【0082】
<第2実施形態>
以上の実施形態では、
図1に示されるように、バルコニ小梁46を水平面に対して傾斜させた状態で配置させるようにしたが、バルコニ12の床面72A上の水をユニット建物10の外部へ排水させることができれば良いため、これに限るものではない。
【0083】
例えば、
図9に示されるように、バルコニ軒元梁52及びバルコニ軒先梁58(
図1参照)によって、バルコニ小梁46は水平に支持されるようにする。そして、バルコニ小梁46の上には、水平面に対して傾斜した傾斜面114Aが形成され断面形状が三角形状を成す勾配断熱材114をバルコニ床仕上げ材72(
図1参照)と対向するようにして配置させる。
【0084】
この勾配断熱材114の傾斜面114Aを利用して、バルコニ12の床面72A上の水をユニット建物10の外部へ排水させるようにする。勾配断熱材114として例えば発泡材が用いられる。勾配断熱材114には、複数の貫通孔114Bが形成されており、束材68が挿通可能とされる。そして、勾配断熱材114を貫通し当該バルコニ小梁46に固定された束材68によって、バルコニ12の床面72Aを構成するバルコニ床仕上げ材72が支持される。
【0085】
このように、本実施形態では、勾配断熱材114によって水勾配を形成するため、バルコニ小梁46による傾斜角度の設定よりも傾斜角度の設定が容易である。
【0086】
そして、本実施形態では、
図2(A)、(B)に示されるように、上階側建物ユニット16と下階側建物ユニット14とで、ユニットの長辺方向の大きさは同じであるが短辺方向の大きさが異なるパターンのユニット建物10について説明した。しかし、本発明では、上階側建物ユニット16の床面積が下階側建物ユニット14の天井面積(床面積)よりも小さければ良いため、上階側建物ユニット16の配置が下階側建物ユニット14に対してどのようなパターンであっても良い。
【0087】
このため、例えば、
図10に示されるように、上階側建物ユニット116と下階側建物ユニット118とで、ユニットの長辺方向及び短辺方向の大きさが異なるパターンのユニット建物120であっても良い。ここでは、バルコニ122は長辺方向及び短辺方向の下階側建物ユニット118の天井面積よりも小さくなるように設計されている。
【0088】
〔実施形態の補足説明〕
なお、本発明における「一致」は、バルコニ床の床面と上階側建物ユニットの居室の床面との間に敢えて段差を設けるものではないという意味であり、バルコニ床の床面の高さと上階側建物ユニットの居室の床面の高さが若干ずれてしまったとしても本発明に含まれることは言うまでもない。
【0089】
また、本実施形態では、第1支持手段として上階床大梁36に連結されるバルコニ軒元梁52を用い、第2支持手段として下階天井大梁20に連結されるバルコニ軒先梁58を用いたが、バルコニ軒元梁52及びバルコニ軒先梁58は必ずしも必要ではなく、上階床大梁36及び下階天井大梁20にバルコニ小梁46を直接固定させるようにしても良い。
【0090】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。