(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940326
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】土壌の防草工法
(51)【国際特許分類】
E01H 11/00 20060101AFI20160616BHJP
A01M 21/00 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
E01H11/00 A
A01M21/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-55214(P2012-55214)
(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-189766(P2013-189766A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】512064413
【氏名又は名称】宮原 康二
(73)【特許権者】
【識別番号】509241007
【氏名又は名称】株式会社環境マグネシア
(74)【代理人】
【識別番号】100096002
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 弘之
(74)【代理人】
【識別番号】100091650
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 規之
(72)【発明者】
【氏名】宮原 康二
(72)【発明者】
【氏名】明石 一三
【審査官】
石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−047389(JP,A)
【文献】
特開2011−046635(JP,A)
【文献】
特開2003−047388(JP,A)
【文献】
特開2009−121173(JP,A)
【文献】
特開昭58−098513(JP,A)
【文献】
特開2002−114602(JP,A)
【文献】
特開2007−330114(JP,A)
【文献】
特開2009−221804(JP,A)
【文献】
特開平09−170217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 11/00
A01M 21/00
E02D 3/12
E01C 3/04
A01N 59/00−59/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌表面に粉状のマグネシアを敷均しする工程と、上記マグネシアの上に表層土を敷均しする工程と、上記表層土の表面に散水を行う工程と、表層土を加圧する工程とを有することを特徴とする土壌の防草工法。
【請求項2】
土壌表面に粉状のマグネシアを敷均しする第1の工程と、マグネシアの上に中層土を敷均しする第2の工程と、中層土の表面に粉状のマグネシアを敷均しする第3の工程と、マグネシアの上に表層土を敷均しする第4の工程と、表層土の表面に散水を行う第5の工程と、表層土を加圧する第6の工程を有しており、土壌表面に粉状のマグネシアを敷均しする上記第1の工程と、マグネシアの上に表層土を敷均しする上記第4の工程との間において、マグネシアの上に中層土を敷均しする上記第2の工程及び中層土の表面に粉状のマグネシアを敷均しする上記第3の工程を所定回数行うことを特徴とする土壌の防草工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
土壌の防草工法に係り、より詳しくは、マグネシア(酸化マグネシウム)を用いて、植物の成長に必須な元素の可給性を低下させることにより、雑草の生育を防止する
土壌の防草工法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌の防草対策として、従来より、土壌表層の硬度を上げる(硬度2N/mm
2以上にする)ことにより雑草の根が土壌中に入り込んで定着できないようにすることが行われている。
【0003】
斯かる従来の土壌の防草対策は
図7に示す工程を経て行われている。
先ず、防草対策を施す土壌の表層を所定厚さ削取し(S30)、次に、削取後の土壌の路盤整正を行う(S32)。
次に、S30で削取った土に、セメント等の固化材及び水を所定量混ぜて十分に攪拌、混合(S34)させた後、混合物を土壌表面に播いて敷均す(S36)。
次に、混合物を固めるためローラー等を用いて1次転圧を行い(S38)、その後、不陸調整(地面の凹凸修正)を行う(S40)。
次に、ローラー等を用いて2次転圧を行って(S42)、混合物を更に固めた後、散水する(S44)。この散水により、混合物中の固化材が硬化するのである。
【0004】
上記工法により、土壌の表層に硬度の高い固化層が形成され、その結果、雑草の種子が土壌の表面に付着・発芽しても、根が固化層を貫通して土壌中に入り込めないため雑草の定着を防止できるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−170217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の防草工法にあっては、固化層を形成するための土・固化材・水の攪拌及び混合工程(S34)に多大な人的・機械的労力が必要でありコスト高を招来していた。
【0007】
また、寒冷地において上記防草対策を行った場合、土壌が凍結して隆起するいわゆる凍上現象によって、固化層の崩壊や硬度低下を招いており、十分な防草効果が得られなかった。
【0008】
この発明は、従来の上記問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、簡易な工程で防草対策を行うことができる土壌の防草工法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る請求項1に記載の土壌の防草工法は、
土壌表面に粉状のマグネシアを敷均しする工程と、上記マグネシアの上に表層土を敷均しする工程と、上記表層土の表面に散水を行う工程と、表層土を加圧する工程とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る請求項2に記載の土壌の防草工法は、
土壌表面に粉状のマグネシアを敷均しする第1の工程と、マグネシアの上に中層土を敷均しする第2の工程と、中層土の表面に粉状のマグネシアを敷均しする第3の工程と、マグネシアの上に表層土を敷均しする第4の工程と、表層土の表面に散水を行う第5の工程と、表層土を加圧する第6の工程を有しており、土壌表面に粉状のマグネシアを敷均しする上記第1の工程と、マグネシアの上に表層土を敷均しする上記第4の工程との間において、マグネシアの上に中層土を敷均しする上記第2の工程及び中層土の表面に粉状のマグネシアを敷均しする上記第3の工程を所定回数行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載の土壌の防草工法にあっては、土壌表面に粉状のマグネシアを敷均しする工程と、上記マグネシアの上に表層土を敷均しする工程と、上記表層土の表面に散水を行う工程と、表層土を加圧する工程を行うことにより、土壌の防草構造(土壌と表層土との間に弱アルカリ性のマグネシア層が形成される共に、土壌及び表層土中にマグネシアが混合されて成る土壌の防草構造)を実現することができ、従来のように、雑草の根が入り込めない硬度を有する固化層を形成するための土・固化材・水の攪拌及び混合工程は不要であり、簡易な工程で土壌の防草対策を行うことができる。
【0012】
本発明の請求項2に記載の土壌の防草工法にあっては、土壌表面に粉状のマグネシアを敷均しする第1の工程と、マグネシアの上に表層土を敷均しする第4の工程との間において、マグネシアの上に中層土を敷均しする第2の工程及び中層土の表面に粉状のマグネシアを敷均しする第3の工程を所定回数行うことにより、土壌の防草構造(土壌と表層土との間に、中層土を介して複数のマグネシア層が形成されると共に、上記土壌、表層土及び中層土中にマグネシアが混合されて成る土壌の防草構造)を実現することができ、従来のように、雑草の根が入り込めない硬度を有する固化層を形成するための土・固化材・水の攪拌及び混合工程は不要であり、簡易な工程で土壌の防草対策を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る土壌の防草工法及び防草構造を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る土壌の防草工法の工程を示すフロー図であり、本発明の土壌の防草工法は以下の工程で行われる。
【0014】
先ず、防草対策を施す土壌の除草や表面を平らに均す路盤整正を行う(S10)。
次に、土壌の表面に粉状のマグネシア(酸化マグネシウム)を敷均しする(S12)。この際、十分な防草効果を得るためにマグネシアの使用量は8〜10kg/m
2と成すのが適当である。尚、マグネシア(酸化マグネシウム)は苦土肥料や食品添加剤としても使用されていることから、生体及び自然環境に対して安全な物質である。
【0015】
次に、敷均しされたマグネシアの上に表層土を敷均しする(S14)。この結果、
図2に示すように、土壌10と表層土12との間にマグネシア14が配置されることとなる。
上記表層土12としては、真砂土、砕石、山砂等適宜な土を用いることができるが、現地で調達できる地場自然土を用いるのがコスト低減及び現地の自然環境との調和の観点から好ましい。
【0016】
次に、水が地面に浮かない程度に表層土12の表面に散水を行い(S16)、その後、水が十分に引いた段階でプレートやローラー等による転圧を行う(S18)。尚、建物際など機械による転圧ができない場所は踏圧を行う。
上記散水で供給された水及び加圧(転圧・踏圧)によって、表層土12及びマグネシア14が凝縮されると共に土壌毛細管現象により、マグネシア14の一部が上下に配された表層土12及び土壌10中に入り込む。またマグネシア14は水と反応して固化する。
【0017】
最後に、表層土12表面の不陸調整(地面の凹凸修正)を行う(S20)。この結果、
図3に示すように、土壌10と表層土12との間に固化したマグネシア層16が形成されると共に、凝縮及び土壌毛細管現象により土壌10及び表層土12中にマグネシア14が混合されて成る土壌の防草構造が得られる。
尚、マグネシア14が吸い上げられて表層土12中に入り込む土壌毛細管現象を促進するため、S14で敷均しする表層土12の厚さは3cm以内とするのが適当である。
【0018】
以下において本発明に係る土壌の防草構造による防草原理を説明する。
植物の成長には15の必須元素(炭素、酸素、水素、窒素、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、イオウ、ホウ素、モリブデン、亜鉛、鉄、銅、マンガン)が不可欠である。尚、この内、酸素及び水素は水から吸収され、炭素は空気中の二酸化炭素から吸収されるものであり、土壌養分から吸収されるものではない。
【0019】
リービッヒの最小律によれば、「植物の成長は、必要とされる栄養素(15の必須元素)のうち、与えられた量のもっとも少ないものにのみ影響される」ものであり、これを換言すれば、「15の必須元素の内、一つでも不足すれば植物の成長が阻害される」ということである。
【0020】
図4は土壌のpHと土壌養分の可給性との関係を示す図である。
図4に示す通り、土壌のpHが8以上のアルカリ側になると、鉄及びマンガンの可給性が著しく低下し、植物にこれら元素が十分に供給されない状態となることが判る。
【0021】
本発明で使用するマグネシア14はpHが9〜10の弱アルカリ性であり、本発明に係る土壌の防草構造にあっては、土壌10と表層土12との間にマグネシア層16が形成されると共に、土壌10及び表層土12中にマグネシア14が混合されて成ることから、マグネシア層16の上下に配された土壌10及び表層土12がアルカリ化され、その結果、植物の成長に必須な元素である鉄及びマンガンが雑草に供給されることが抑制されるので、雑草の繁殖を防止することができる。
【0022】
また、本発明の土壌の防草構造は、植物成長の必須元素である鉄及びマンガンの供給抑制により雑草の繁殖を防止するものであり、従来のように、土壌10や表層土12を雑草の根が入り込めない硬度(2N/mm
2以上)に上げる必要がないことから、土壌が凍結して隆起する凍上現象が発生しても崩壊することがなく、寒冷地においても適用できる。
【0023】
本発明の土壌の防草構造は、上記の通り、防草対策を施す土壌表面へ粉状のマグネシアを敷均しする工程(S12)、マグネシアの上に表層土を敷均しする工程(S14)、表層土2の表面に散水を行う工程(S16)、表層土12を加圧(転圧・踏圧)する工程(S18)を行うことで実現することができ、従来のように、雑草の根が入り込めない硬度(2N/mm
2以上)を有する固化層を形成するための土・固化材・水の攪拌及び混合工程は不要であり、簡易な工程で土壌の防草対策を行うことができる。
【0024】
上記においては、土壌10と表層土12との間に一層のマグネシア層16を形成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数層のマグネシア層16を形成しても良い。
【0025】
以下において、土壌10と表層土12との間に二層のマグネシア層16を形成する場合について
図5及び
図6に基づいて説明する。
この場合、土壌10の表面に粉状のマグネシア14を敷均した(第1の工程)後、マグネシア14の上に中層土18を敷均しする(第2の工程)。次に、中層土18の表面に粉状のマグネシア14を敷均した(第3の工程)後、マグネシア14の上に表層土12を敷均しする(第4の工程)。この結果、土壌10と表層土12との間に、中層土18を介して二層のマグネシア14が配置されることとなる(
図5)。
尚、中層土18は、土壌10と表層土12との間に配置される土のことであり、表層土12と同一の土が用いられる。
【0026】
その後は、上記S16〜S20と同様に、水が地面に浮かない程度に表層土12の表面に散水を行った(第5の工程)後、水が十分に引いた段階で表層土12の表面を加圧し(第6の工程)、最後に表層土12表面の不陸調整を行う。
【0027】
上記散水で供給された水及び加圧(転圧・踏圧)によって、表層土12、マグネシア14及び中層土18が凝縮されると共に土壌毛細管現象により、上層のマグネシア14の一部が上下に配された表層土12及び中層土18中に入り込むと共に、下層のマグネシア14の一部が上下に配された中層土18及び土壌10中に入り込む。さらに、マグネシア14は水と反応して固化する。
【0028】
この結果、
図6に示すように、土壌10と表層土12との間に、中層土18を介して二層のマグネシア層16が形成されると共に、土壌10、中層土12及び表層土12中にマグネシア14が混合されて成る土壌の防草構造が得られる。
このように、土壌10と表層土12との間に、中層土18を介して二層のマグネシア層16を形成した場合には、マグネシア層16が一層の場合に比べて、より深く土をアルカリ化できるので、雑草の繁殖防止効果が向上する。
【0029】
尚、土壌10と表層土12との間に介在させる中層土18の数を増やすことにより、三層以上のマグネシア層16を形成しても良い。
すなわち、土壌10の表面に粉状のマグネシア14を敷均しする第1の工程と、中層土18の表面に敷均されたマグネシア14の上に表層土12を敷均しする第4の工程との間において、マグネシア14の上に中層土12を敷均しする第2の工程と、該中層土12の表面に粉状のマグネシア14を敷均しする第3の工程を所定回数行うことにより、二層以上のマグネシア層16を形成するができ、マグネシア層16が一層の場合に比べて、より深く土をアルカリ化できるので、雑草の繁殖防止効果が向上するのである。この場合も、従来のように、雑草の根が入り込めない硬度(2N/mm
2以上)を有する固化層を形成するための土・固化材・水の攪拌及び混合工程は不要であり、簡易な工程で土壌の防草対策を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る土壌の防草工法の工程を示すフロー図である。
【
図2】土壌にマグネシア及び表層土を敷均した状態を模式的に示す説明図である。
【
図3】土壌と表層土との間にマグネシア層を形成した状態を模式的に示す説明図である。
【
図4】土壌のpHと土壌養分の可給性との関係を示す説明図である。
【
図5】土壌と表層土との間に二層のマグネシア層を形成する際の工程を模式的に示す説明図である。
【
図6】土壌と表層土との間に二層のマグネシア層を形成した状態を模式的に示す説明図である。
【
図7】従来の土壌の防草工法の工程を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0031】
10 土壌
12 表層土
14 マグネシア
16 マグネシア層
18 中層土