(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の電動パワーステアリングシステムにおいては、外気温度が−40℃から100℃以上の幅広い温度環境下で高出力、低コギングトルク、低トルクリップルを保持して良好な操舵フィールを得ることが要求されている。
【0005】
永久磁石は、一般に高温になるに従って磁力が弱くなり、低温になるに従って磁力が強くなることが知られている。従って、例えば、高温領域にあって磁束が減少するとき、モータ電流を大きくしたり、位相を進める制御(弱め界磁)をしたりすることが行われる。この時、永久磁石には、磁束を減少させる方向に作用し、不可逆減磁が発生する虞があり、永久磁石の特性を変化させ、ひいてはモータ特性を変化させる問題があった。
【0006】
特に、ネオジム磁石、SmFeN磁石(サマリウム窒化鉄磁石)、SmCo磁石(サマリウムコバルト磁石)等においては、高温領域で減磁し易いため、これら永久磁石をモータに用いる場合には温度対策が必要となる。また、フェライト磁石においては、低温領域で減磁し易いため、フェライト磁石をモータに用いる場合にも温度対策が必要となる。
【0007】
また、電動ステアリングシステムは、その周囲に種々の電装品が装備される傾向にある。そのため、電動パワーステアリングシステムに使用されるモータは、その取り付けスペースが減少し、出力を保持しつつより小型化が求められている。
【0008】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、小型で幅広い温度環境下でもロータに設けた永久磁石の特性を変化し難くでき、低トルク脈動と高トルク化を両立し良好な操舵フィールを得ることができる電動パワーステアリングシステム用モータのロータ及び電動パワーステアリングシステム用モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、ステアリングホイールに対してアシストトルクを付与する電動パワーステアリングシステム用モータのロータであって、周方向に複数の第1突片が等間隔に形成された第1ロータコアと、前記第1ロータコアと同一形状であって周方向に複数の第2突片が等間隔に形成され、前記第2突片が軸方向において前記第1ロータコアの第1突片と第1突片の間に位置するように前記第1ロータコアに対して相対配置される第2ロータコアと、前記第1ロータコアと前記第2ロータコアの間に配置されるとともに軸方向に磁化されて、前記第1ロータコアの第1突片に第1磁極を、前記第2ロータコアの第2突片に前記第2磁極をそれぞれ発生させる界磁部材とを備え
、前記第1ロータコアは、回転軸に固着された円板状の第1コアベースを有し、その第1コアベースに外周面から径方向に第1突片が形成されたものであり、前記第2ロータコアは、前記回転軸に固着された円板状の第2コアベースを有し、その第2コアベースに外周面から径方向に第2突片が形成されたものであり、前記界磁部材は、外径が前記第1及び第2コアベースの外径と同じ円板状の永久磁石であり、前記第1コアベースに形成した第1突片は、径方向外側に突出され先端が屈曲して軸線方向第2ロータコア側に向かって延出形成され、前記第2コアベースに形成した第2突片は、径方向外側に突出され先端が屈曲して軸線方向第1ロータコア側に向かって延出形成されており、前記第1突片と前記第2突片との周方向の間には、周方向に磁化された極間磁石が設けられるとともに、前記第1突片の径方向内側及び前記第2突片の径方向内側には、径方向に磁化された背面磁石が設けられている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、界磁部材は第1及び第2ロータコアによって外部温度変化が遮断されて耐熱性が向上し、幅広い外部温度環境下において、回転磁界による減磁を起こし難くすることができる。また、界磁部材は第1ロータコアと第2ロータコアとの間に配置され軸方向に挟持されていることから、モータの体格を小さくすることができるとともに、遠心力による界磁部材の飛散を防止できる。
【0012】
また、界磁部材は、第1コアベースと第2コアベースの間に配置される。そして、界磁部材によって、第1ロータコアの第1コアベースから延出形成された第1突片に第1磁極が発生し、第2ロータコアの第2コアベースから延出形成された第2突片に第2磁極が発生する。
【0014】
また、第1磁極が発生する第1突片は、第1コアベースの外周面から径方向外側に突出され先端が屈曲して軸線方向第2ロータコア側に向かって延出形成される。また、第2磁極が発生する第2突片は、第2コアベースの外周面から径方向外側に突出され先端が屈曲して軸線方向第1ロータコア側に向かって延出形成される。
【0015】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の電動パワーステアリングシステム用モータのロータにおいて、前記界磁部材は、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウム窒化鉄磁石、サマリウムコバルト磁石のいずれか1つからなる円板状の永久磁石である。
【0016】
この発明によれば、界磁部材は、円板状の永久磁石であってフェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウム窒化鉄磁石、サマリウムコバルト磁石のいずれか1つからなる円板状の永久磁石であって、第1突片に第1磁極を発生させ、第2突片に第2磁極を発生させる。
【0017】
請求項
3に記載の発明は、請求項1
又は2に記載の電動パワーステアリングシステム用モータのロータにおいて、前記ロータの1組の軸方向の長さは、前記ロータの外径の1/2以下の長さである。
【0018】
この発明によれば、ロータは、その軸方向の長さを、ロータの外径の1/2以下の長さにすることで、モータの軸方向の体格を小さくすることができる。
請求項
4に記載の発明は、請求項1〜
3のいずれか1つに記載のロータを、複数重ね合わせて構成した電動パワーステアリングシステム用モータのロータである。
【0019】
この発明によれば、モータの出力向上を図ることができる。
請求項
5に記載の発明は、請求項1〜
4のいずれか1つに記載の電動パワーステアリングシステム用モータのロータを備えた電動パワーステアリングシステム用モータ。
【0020】
この発明によれば、ロータに設けた永久磁石の特性を変化し難くでき、低トルク脈動と高トルク化を両立し良好な操舵フィールを得ることができる。
請求項
6に記載の発明は、請求項
5に記載の電動パワーステアリングシステム用モータにおいて、前記電動パワーステアリングシステム用モータは、コラムアシスト型、ラックアシスト型、ピニオンアシスト型のいずれかの電動パワーステアリングシステムに使用される。
【0021】
この発明によれば、低トルク脈動と高トルク化を両立し良好な操舵フィールを得ることができる。
請求項
7に記載の発明は、請求項
5又は
6に記載の電動パワーステアリングシステム用モータにおいて、前記電動パワーステアリングシステム用モータは、集中巻きであって、8極12スロット、10極12スロット、14極12スロット、16極12スロット、12極18スロット、16極18スロット、20極18スロットのいずれかである。
【0022】
この発明によれば、低トルク脈動と高トルク化を両立し良好な操舵フィールを得ることができる。
請求項
8に記載の発明は、請求項
5又は
6に記載の電動パワーステアリングシステム用モータにおいて、前記電動パワーステアリングシステム用モータは、分布巻きであって、6極18スロット、6極36スロット、6極72スロット、8極24スロット、8極48スロット、10極30スロット、10極60スロット、16極48スロット、20極60スロットのいずれかである。
【0023】
この発明によれば、低トルク脈動と高トルク化を両立し良好な操舵フィールを得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、小型で幅広い温度環境下でもロータに設けた永久磁石の特性を変化し難くでき、低トルク脈動と高トルク化を両立し良好な操舵フィールを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した電動パワーステアリングシステム用モータの第1実施形態を
図1〜
図6に従って説明する。
【0027】
図1に示すように、電動パワーステアリングシステム1は、コラムアシスト型であり、基端部にステアリングホイール2を固定したステアリングシャフト3を有し、そのステアリングシャフト3の先端部は、自在継ぎ手4を介して、インターミディエイト5に連結されている。ステアリングシャフト3は、入力軸3aと出力軸3bからなり、円筒状の入力軸3a内に、出力軸3bの一部が貫挿されている。入力軸3aの基端部には、ステアリングホイール2が固定され、出力軸3bの先端部には、自在継ぎ手4が連結されている。また、入力軸3aと出力軸3bの間には、トーションバー(図示せず)が設けられ、入力軸3aの回転に追従して出力軸3bを回転させるようになっている。
【0028】
そして、ステアリング操作に基づく、回転及び操舵トルクはラック7&ピニオン軸8に伝達され、ピニオン軸8の回転にてラック7が車幅方向に往復動する。これによって、ラック7の両端に連結したタイロッド9を介して操舵輪10の舵角が変更される。
【0029】
ステアリングシャフト3の入力軸3aには、ステアリングコラム11が装備されている。ステアリングコラム11には、電動パワーステアリングシステム用モータとしての3相ブラシレスモータ(以下、ブラシレスモータという)Mが設けられている。ブラシレスモータMは、入力軸3aを回転制御してステアリング操作をする際に、ステアリングホイール2に対して補助操舵力(以下、アシストトルクという)を付与する。
【0030】
詳述すると、ステアリングホイール2の操作に基づいて入力軸3aが回転すると、出力軸3bとの間にずれが生じ、このずれがトーションバーのねじれとなって現れる。つまり、出力軸3bは、操舵輪10の路面抵抗等で、入力軸3aの回転に対して遅れが生じて、トーションバーにねじれが生じる。
【0031】
そして、このトーションバーのねじれ角を図示しないトルクセンサにて検出し、入力軸3a(ステアリングホイール2)にかかる操舵トルクが検出され、その検出された操舵トルクに基づいて、ステアリング操作する際のアシストトルクが算出されて、ブラシレスモータMが駆動制御される。
【0032】
図2に示すように、ブラシレスモータMのモータケース20は、有底筒状に形成された外径が10cmのモータハウジング20aと、同モータハウジング20aのフロント側の開口部を閉塞するフロントカバー20bを有している。
【0033】
モータハウジング20aの内周面にステータ21が固定され、そのステータ21の内側には、非磁性体(例えばステンレス鋼)よりなる回転軸22に固着され同回転軸22とともに一体回転するロータ25が配設されている。そして、回転軸22は、モータハウジング20aの底部及びフロントカバー20bに設けた軸受け23,24にて回転可能に支持され、そのフロントカバー20bから突出した先端部がギア26,27等からなる減速装置28を介してステアリングシャフト3の入力軸3aと駆動連結されている。
【0034】
(ステータ21)
図3に示すように、ステータ21は、円筒状のステータコア30を有し、そのステータコア30の外周面がモータハウジング20aに固定されている。ステータコア30の内側には、軸線方向に沿って形成され、かつ、周方向に等ピッチに配置される複数のティース31が径方向内側に向かって延出形成されている。ティース31は、その先端部の周方向両側面が周方向に突出するとともに、径方向内側の先端面が、回転軸22の中心軸線L1(
図4参照)を中心とした円弧面となるように形成されたT型のティースである。
【0035】
そして、ティース31とティース31の間には、ステータ側スロット32が形成される。本実施形態では、ティース31の数は12個であって、ステータ側スロット32の数は、ティース31の数と同じ12個である。
【0036】
そして、各ティース31には、時計回り方向に3相巻線、即ち、U相巻線33a、V相巻線33b、W相巻線33cが順番に集中巻きにて巻回されている。
(ロータ25)
図3に示すように、ステータ21の内側には、回転軸22に固着されたロータ25が配設されている。
図5及び
図6に示すように、ロータ25は、第1ロータコア40と、同第1ロータコア40と相対向して配置される第2ロータコア50と、第1ロータコア40と第2ロータコア50との間に配置される円板磁石(界磁部材)55を有している。
【0037】
(第1ロータコア40)
第1ロータコア40は、本実施形態では電磁鋼板にて形成され、
図5、
図6に示すように、第1コアベース41を有している。第1コアベース41の中央位置には、回転軸22を貫通し固着するための貫通穴42が形成されている。また、第1コアベース41の外周面には、径方向に7個の第1突片43が、等ピッチに延出形成されている。各第1突片43の外周面は、回転軸22の中心軸線L1を中心とした円弧面となるように形成されている。
【0038】
また、各第1突片43に周方向の幅は、第1突片43と第1突片43の間の間隔に比べて小さくなるように形成されている。これによって、第1ロータコア40には、周方向に等ピッチの第1突片43が延出形成される。
【0039】
(第2ロータコア50)
第2ロータコア50は、本実施形態では電磁鋼板にて形成され、第1ロータコア40と同一形状であって、
図5、
図6に示すように、第2コアベース51を有している。第2コアベース51の中央位置には、回転軸22を貫通し固着するための貫通穴52が形成されている。また、第2コアベース51の外周面には、径方向に7個の第2突片53が、等ピッチに延出形成されている。各第2突片53の外周面は、回転軸22の中心軸線L1を中心とした円弧面となるように形成されている。
【0040】
また、各第2突片53に周方向の幅は、第2突片53と第2突片53の間の間隔に比べて小さくなるように形成されている。これによって、第2ロータコア50には、周方向に等ピッチの第2突片53が延出形成される。
【0041】
そして、第2ロータコア50は、第1ロータコア40に対して、第2突片53が、軸方向から見て第1ロータコア40の第1突片43と相対向しない第1突片43と第1突片43の間に位置するように回転軸22に配置固定されるようになっている。第1ロータコア40と第2ロータコア50が回転軸22に配置固定される際、
図4、
図5に示すように、第1ロータコア40と第2ロータコア50の間に、円板磁石55が組み付けられる。
【0042】
(円板磁石55)
円板磁石55は、本実施形態では、ネオジム磁石よりなる円板状の永久磁石である。
図6に示すように、円板磁石55は、その中央位置に回転軸22を貫通する貫通穴56が形成されている。そして、円板磁石55の一方の側面55aが、第1コアベース41の第2ロータコア50側の面(対向面41a)と、円板磁石55の他方の側面55bが、第2コアベース51の第1ロータコア40側の面(対向面51a)とそれぞれ当接し、円板磁石55は第1ロータコア40と第2ロータコア50との間に挟持固定される。
【0043】
円板磁石55の外径は、第1及び第2ロータコア40,50の第1及び第2コアベース41,51の外径と一致させている。換言すれば、円板磁石55の外径は、第1及び第2ロータコア40,50(第1及び第2突片43,53)の外径より短く形成されている。
【0044】
また、円板磁石55の厚さも、第1コアベース41(第2コアベース51)の厚さより薄い予め定めた厚さに設定されている。ちなみに、1組の第1ロータコア40と第2ロータコア50の間に、円板磁石55が組み付けてロータ25が形成された時、ロータ25の軸方向の長さは、ロータ25の外径の1/2以下の長さとなるように設定している。
【0045】
図4に示すように、円板磁石55は、軸方向に磁化されていて、第1ロータコア40側をN極、第2ロータコア50側をS極となるように磁化されている。従って、この円板磁石55によって、第1ロータコア40の第1突片43はN極(第1磁極)として機能し、第2ロータコア50の第2突片53はS極(第2磁極)として機能する。
【0046】
その結果、本実施形態のロータ25は、円板磁石55を用いた、マグネット界磁ロータとなる。そして、本実施形態のロータ25は、N極となる第1突片43と、S極となる第2突片53とが周方向に交互に配置され磁極数が14極(極数対が7個)のロータとなる。つまり、本実施形態のロータ25は、極数対が3以上の奇数である。
【0047】
次に、上記のように構成したブラシレスモータMの作用を説明する。
本実施形態のブラシレスモータMのロータ25は、第1ロータコア40と第2ロータコア50との間に円板磁石55を設けた。そして、円板磁石55によって、第1ロータコア40の第1突片43にN極(第1磁極)を発生させ、第2ロータコア50の第2突片53にS極(第2磁極)を発生させて、マグネット界磁のロータ25とした。これによって、ロータ25の軸方向の長さを短くでき、ひいてはブラシレスモータMの体格を小さくすることができる。しかも、ロータ25の軸方向の長さがロータ25の外径の1/2以下の長さに設定しているため、ブラシレスモータMは軸方向の体格がより小さくなる。
【0048】
そして、ロータ25は、ステータ21にティース31に巻回したU相巻線33a、V相巻線33b、W相巻線33cを通電して回転磁界を作ることによって、回転する。このロータ25の回転は、回転軸22、減速装置28を介してステアリングシャフト3の入力軸3aを駆動し、ステアリングホイール2にアシストトルクを付与する。
【0049】
また、このブラシレスモータMの回転駆動時において、大きな負荷を減速装置28を介して駆動するため、ブラシレスモータM(ロータ25)は2000rpm以上の高速回転となる。この時、円板磁石55は、第1ロータコア40と第2ロータコア50との間に配置され、第1及び第2ロータコア40,50(第1及び第2コアベース41,51)によって軸方向に挟持されていることから、遠心力にて飛散することはない。
【0050】
また、円板磁石55の両側面55a,55bは、電磁鋼板よりなる第1及び第2ロータコア40,50の第1及び第2コアベース41,51の対向面41a,51aと圧接されている。そのため、外気温度が高温100℃以上の高温域になっても、円板磁石55は第1及び第2ロータコア40,50によって外部温度変化が遮断されて耐熱性が向上する。特に、高温領域で不可逆減磁を有するネオジム磁石よりなる円板磁石55にあっては、耐熱性に優れた構造になる。これにより、幅広い外部温度環境下において、U相巻線33a、V相巻線33b、W相巻線33cの通電より発生する回転磁界により円板磁石55の磁気特性の変化が起き難くすることができる。
【0051】
その結果、全使用温度下で高出力、低コギングトルク、低トルクリップルを維持し良好な操舵フィールを得ることができる。
また、ロータ25は、極数対が7の奇数であるため、ロータコア単位で見ると、同極の磁極同士が周方向180°対向位置とならないことから、磁気振動に対して安定する形状となり、より低コギングトルク、低トルクリップルを向上させ良好な操舵フィールを得ることができる。
【0052】
次に、上記第1実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、円板磁石55は第1及び第2ロータコア40,50によって外部温度変化が遮断されて耐熱性が向上し、幅広い外部温度環境下において、回転磁界による円板磁石55の磁気特性の変化を起き難くすることができる。
【0053】
(2)本実施形態によれば、円板磁石55は、第1ロータコア40と第2ロータコア50との間に配置され軸方向に挟持されていることから、同円板磁石55が遠心力によって飛散するのを防止することができる。
【0054】
(3)本実施形態によれば、ロータ25は2つのロータコア40,50で円板磁石55を挟むマグネット界磁ロータであり、ブラシレスモータMの体格を小さくすることができる。しかも、ロータ25の軸方向の長さがロータ25の外径の1/2以下の長さに設定しているため、ブラシレスモータMは軸方向の体格をより小さくすることができる。
【0055】
(4)本実施形態によれば、ロータ25の極数対を奇数の7としため、磁気振動に対して安定する形状となり、より低コギングトルク、低トルクリップルを向上させ良好な操舵フィールを得ることができる。
【0056】
(5)本実施形態によれば、第1及び第2突片43,53にてリラクタンストルクが利用可能であり、故障時に発生するブレーキトルクを低く抑えることができ、ステアリングがその分だけ軽くなりステアリング操作が容易となる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、
図7〜
図10に従って説明する。本実施形態は、第1実施形態のブラシレスモータMの構成が相違する。そのため、その相違するブラシレスモータMついてのみ詳細に説明し、共通する部分は説明の便宜上省略する。
【0058】
図7は、本実施形態のブラシレスモータMの断面図を示し、モータハウジング20aの内側にはステータ21が固定されている。
図8に示すように、ステータ21のステータコア30には、60個のティース31が径方向内側に延出形成されている。従って、ティース31間に形成されるステータ側スロット32は60個形成され、その60個のステータ側スロット32は回転軸22の中心軸線L1から見て等角度間隔に形成されている。
【0059】
この60個のティース31には、セグメントコンダクタ(SC)巻線が巻回されている。詳述すると、60個のティース31には、時計回り方向に、U相、V相、V相の3相巻線が2つ、即ち、第1系統3相巻線と第2系統3相巻線が形成されている。
【0060】
本実施形態のステータコア30に巻回される第1系統3相巻線と第2系統3相巻線は、分布巻きであって、時計回り方向に第1系統U相巻線U1、第2系統U相巻線U2、第1系統V相巻線V1、第2系統V相巻線V2、第1系統W相巻線W1、第2系統W相巻線W2の順番に巻回されている。詳述すると、第1系統U相巻線U1、第2系統U相巻線U2、第1系統V相巻線V1、第2系統V相巻線V2、第1系統W相巻線W1、第2系統W相巻線W2が、それぞれ6個のティース31を1組とし順番に、1個ずつティース31をずらして順番に巻回されている。
【0061】
この時、分布巻きで巻回される第1系統の各相巻線U1,V1,W1及び第2系統の各相巻線U2,V2,W2は、それぞれ1つのステータ側スロット32において、隣り合う同相の巻線が巻回されることになる。
【0062】
第1系統3相巻線と第2系統3相巻線は、互いに30°の位相差のある3相電源電圧が印加されるようになっている。つまり、第1系統U相巻線U1と第2系統U相巻線U2は30°の位相差のあるU相電源電圧が印加され、第1系統V相巻線V1と第2系統V相巻線V2は30°の位相差のあるV相電源電圧が印加され、第1系統W相巻線W1と第2系統W相巻線W2は30°の位相差のあるW相電源電圧が印加される。
【0063】
(ロータ25)
ステータ21の内側に配置されたロータ25は、
図8〜
図11に示すように、第1ロータコア60と、同第1ロータコア60と相対向して配置される第2ロータコア70と、第1ロータコア60と第2ロータコア70との間に配置される円板磁石(界磁部材)75を備えている。
【0064】
(第1ロータコア60)
図8〜
図11に示すように、第1ロータコア60は、略円板状に形成された第1コアベース61を有している。第1コアベース61の中央位置には、回転軸22を貫通し固着するための貫通穴62が形成されている。また、第1コアベース61の外周面には、等間隔に複数(本実施形態では5個)の第1突片63が、径方向外側に突出されその先端が屈曲して軸方向第2ロータコア70側に延出形成されている。
【0065】
第1突片63の周方向端面63a,63bは、径方向に延びる(軸方向から見て径方向に対して傾斜していない)平坦面であって、第1突片63は軸直交方向断面が扇形状に形成されている。
【0066】
各第1突片63の周方向の角度、即ち、周方向端面63a,63b間が回転軸22の中心軸線L1となす角度は、隣り合う第1突片63と第1突片63の間の隙間の角度より小さく設定されている。
【0067】
(第2ロータコア70)
図8〜
図11に示すように、第2ロータコア70は、第1ロータコア60と同一形状であって、略円板状に形成された第2コアベース71の中央位置には、回転軸22を貫通し固着するための貫通穴72が形成されている。また、第2コアベース71の外周面には、等間隔に5個の第2突片73が、径方向外側に突出されその先端が屈曲して軸方向第1ロータコア60側に延出形成されている。
【0068】
第2突片73の周方向端面73a,73bは、径方向に延びる平坦面であって、第2突片73は軸直交方向断面が扇形状に形成されている。
各第2突片73の周方向の角度、即ち、周方向端面73a,73b間が回転軸22の中心軸線L1となす角度は、隣り合う第2突片73と第2突片73の間の隙間の角度より小さく設定されている。
【0069】
そして、第2ロータコア70は、第1ロータコア60に対して、第2ロータコア70の第2突片73が、軸方向から見てそれぞれ第1ロータコア60の第1突片63間に位置するように配置固定されるようになっている。このとき、第2ロータコア70は、第1ロータコア60と第2ロータコア70との軸方向の間に円板磁石75が配置されるように、第1ロータコア60に対して組み付けられる。
【0070】
詳述すると、円板磁石75は、
図11に示すように、第1コアベース61の第2コアベース71側の面(対向面61a)と第2コアベース71の第1コアベース61側の面(対向面71a)の間に挟持される。
【0071】
このとき、第1突片63の一方の周方向の端面63aと第2突片73の他方の周方向の端面73bとが、軸方向に沿って平行をなすように形成されるため、両端面63a,73b間の間隙が軸方向に沿って略直線状をなすように形成されている。また、第1突片63の他方の周方向の端面63bと第2突片73の一方の周方向の端面73aとが、軸方向に沿って平行をなすように形成されるため、両端面63b,73a間の間隙が軸方向に沿って略直線状をなすように形成されている。
【0072】
(円板磁石75)
円板磁石75は、本実施形態では、ネオジム磁石よりなる円板状の永久磁石である。
図11に示すように、円板磁石75は、その中央位置に回転軸22を貫通する貫通穴76が形成されている。そして、円板磁石75の一方の側面75aが、第1コアベース61の対向面61aと、円板磁石75の他方の側面75bが、第2コアベース71の対向面71aとそれぞれ当接し、円板磁石75は第1ロータコア60と第2ロータコア70との間に挟持固定される。
【0073】
円板磁石75の外径は、第1及び第2コアベース61,71の外径と一致するように設定され、厚さが予め定めた厚さに設定されている。
つまり、第1ロータコア60と第2ロータコア70との間に、円板磁石75を配置したとき、第1突片63の先端面63cと第2コアベース71の反対向面71bとが面一になるとともに、第2突片73の先端面73cと第1コアベース61の反対向面61bとが面一になるようにしている。
【0074】
図9に示すように、円板磁石75は、軸方向に磁化されていて、第1ロータコア60側をN極、第2ロータコア70側をS極となるように磁化されている。従って、この円板磁石75によって、第1ロータコア60の第1突片63はN極(第1磁極)として機能し、第2ロータコア70の第2突片73はS極(第2磁極)として機能する。
【0075】
その結果、本実施形態のロータ25は、円板磁石75を用いた、所謂ランデル型構造のロータとなる。そして、本実施形態のロータ25は、N極となる第1突片63と、S極となる第2突片73とが周方向に交互に配置され磁極数が10極(極数対が5個)のロータとなる。つまり、本実施形態のロータ25は、極数対が3以上の奇数である。
【0076】
次に、上記のように構成したブラシレスモータMの作用を説明する。
第1ロータコア60の第1突片63を、第1コアベース61の外周面から径方向外側に突出されその先端を屈曲させて軸方向第2ロータコア70側に延出して形成した。これによって、第1突片63の軸方向第2ロータコア70側に延出した部位がN極として機能する。また、第2ロータコア70の第2突片73を、第2コアベース71の外周面から径方向外側に突出されその先端を屈曲させて軸方向第1ロータコア60側に延出して形成した。これによって、第2突片73の軸方向第1ロータコア60側に延出した部位がS極として機能する。所謂、ランデル型構造としての機能である。
【0077】
また、ロータ25は、極数対が5の奇数であるため、ロータコア単位で見ると、同極の磁極同士が周方向180°対向位置とならないことから、磁気振動に対して安定する形状となり、より低コギングトルク、低トルクリップルを向上させ良好な操舵フィールを得ることができる。
【0078】
さらに、円板磁石73は、ロータ25の中心部であってその軸方向両側が第1及び第2コアベース61,71に、周方向外側面が第1及び第2突片63,73にて囲まれた状態にあるため、故障時のブレーキトルクの抑制が可能となり、ステアリングがその分だけ軽くなりステアリング操作が容易となる。
【0079】
次に、上記第2実施形態は、第1実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(1)上記実施形態によれば、第1突片63の軸方向第2ロータコア70側に延出した部位をN極として機能させた。また、第2突片73の軸方向第1ロータコア60側に延出した部位をS極として機能させた。従って、円板磁石75の磁束は、ブラシレスモータMの出力向上により有効に利用することができる。
【0080】
(2)本実施形態では、ロータ25の極数対を奇数の5としため、磁気振動に対して安定する形状となり、より低コギングトルク、低トルクリップルを向上させ良好な操舵フィールを得ることができる。
【0081】
(3)本実施形態では、円板磁石73は、ロータ25の中心部であって第1及び第2コアベース61,71と第1及び第2突片63,73にて囲まれた状態に配置されているため、故障時のブレーキトルクの抑制が可能となる。
【0082】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、
図12、
図13に従って説明する。
なお、本実施形態は、第2実施形態のロータ25を2つ重ねた所謂タンデム型である点に特徴を有する。従って、特徴部分について詳細に説明し共通部分については詳細な説明は省略する。
【0083】
図12,
図13に示すように、本実施形態のブラシレスモータMのロータ80は、フロント側ロータ81とリア側ロータ82を有している。
フロント側ロータ81は、第2実施形態のロータ25と同じ構成であって、第1突片63を備えた第1ロータコア60、第2突片73を備えた第2ロータコア70及び円板磁石(界磁部材)75を有している。
【0084】
リア側ロータ82は、第2実施形態のロータ25と同じ構成であって、第1突片63を備えた第1ロータコア60、第2突片73を備えた第2ロータコア70及び円板磁石(界磁部材)75を有している。
【0085】
そして、フロント側ロータ81とリア側ロータ82を重ね合わせる時、フロント側ロータ81の第2ロータコア70と、リア側ロータ82の第2ロータコア70が当接されるように重ね合わされ、ロータ80は回転軸22に固着される。
【0086】
次に、上記のように構成した第3実施形態の作用を以下に記載する。
ロータ80は、同一形状のフロント側ロータ81とリア側ロータ82を重ね合せタンデム構造にて形成されていることから、小型で高出力のモータを形成することができる。
【0087】
また、フロント側ロータ81とリア側ロータ82は、同一形状、同一材料で形成されていることから、ロータ80を組み立てる際の部品管理及び組み立て作業も容易となる。
上記第3実施形態によれば、第2実施形態の効果に加えて小型でより高出力のモータを実現できる。
【0088】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、
図14〜
図16に従って説明する。
なお、本実施形態は、第2実施形態のロータ25に新た構成を加えたものである。そのため、新たに加えた構成の部分について詳細に説明し共通部分については詳細な説明は省略する。
【0089】
図14、
図15に示すように、第1突片63の周方向端面63aと第2突片73の周方向端面73bとの間には、軸方向に長い四角柱状の第1極間磁石85がそれぞれ挟持固定されている。第1極間磁石85は、径方向内側面が第1及び第2コアベース61,71に当接するまで延出形成されているとともに径方向外側面が第1及び第2突片63,73の外周面と面一となるように延出形成されている。
【0090】
各第1極間磁石85は、フェライト磁石であって周方向に磁化され、N極として機能している第1突片63側を同極のN極となるように、また、S極として機能している第2突片73側を同極のS極となるようにそれぞれ着磁されている。
【0091】
一方、
図14、
図15に示すように、第1突片63の周方向端面63bと第2突片73の周方向端面73aとの間には、軸方向に長い四角柱状の第2極間磁石86がそれぞれ挟持固定されている。第2極間磁石86は、径方向内側面が第1及び第2コアベース61,71に当接するまで延出形成されているとともに径方向外側面が第1及び第2突片63,73の外周面と面一となるように延出形成されている。
【0092】
各第2極間磁石86は、フェライト磁石であって周方向に磁化され、N極として機能している第1突片63側を同極のN極となるように、また、S極として機能している第2突片73側を同極のS極となるようにそれぞれ着磁されている。
【0093】
つまり、第1極間磁石85と第2極間磁石86は、その磁化方向が周方向において逆方向に磁化されている。
また、
図14に示すように、第1及び第2極間磁石85,86を形成することで、第1及び第2極間磁石85,86の間であって第2突片73の内周面と、第1コアベース61と円板磁石75とで形成される外周面とで形成される第1ロータコア60側が開口する空間に、第1背面磁石87が嵌合固着されている。第1背面磁石87は、フェライト磁石であって径方向に磁化され、第2突片73と当接している側を第2突片73と同極のS極となるように、また、第1コアベース61に当接している側を第1コアベース61と同極のN極となるようにそれぞれ着磁されている。
【0094】
同様に、
図15に示すように、第1及び第2極間磁石85,86の間であって第1突片63の内周面と、第2コアベース71と円板磁石75とで形成される外周面とで形成される第2ロータコア70側が開口する空間に、第2背面磁石88が嵌合固着されている。第2背面磁石88は、フェライト磁石であって径方向に磁化され、第1突片63と当接している側を第1突片63と同極のN極となるように、また、第2コアベース71に当接している側を第2コアベース71と同極のS極となるようにそれぞれ着磁されている。
【0095】
次に、上記のように構成した第4実施形態の作用を以下に記載する。
第1コアベース61の部分においては、ステータ21側がS極の第1背面磁石87として機能する第2突片73と、第1背面磁石87によってN極の突極として機能する第1突片63とが、周方向に交互に形成されるロータを形成している。
【0096】
また、第2コアベース71の部分においては、ステータ21側がN極の第2背面磁石88として機能する第1突片63と、第2背面磁石88によってS極の突極として機能する第2突片73とが、周方向に交互に形成されるロータを形成している。
【0097】
さらに、円板磁石75の部分においては、第1背面磁石87によってステータ21側がN極として機能する第1突片63と、第2背面磁石88よってステータ21側がS極として機能する第2突片73とが、周方向に交互に形成されたランデル型構造のロータを形成している。
【0098】
次に、上記第4実施形態は、第1及び第2実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(1)上記実施形態によれば、第1突片63と第2突片73との間に、第1及び第2突片63,73と同極となるように磁化された第1及び第2極間磁石85,86を設けた。第1ロータコアの各第1突片63と第2ロータコアの各第2突片73との間の磁束漏れを減らすことができ、円板磁石75の磁束はブラシレスモータMの出力向上により有効に利用することができる。
【0099】
(2)上記実施形態によれば、第1コアベース61の部分が、第1背面磁石87によって、所望の磁束の流れとするロータとなり、円板磁石75の短絡磁束を抑制でき、同第1背面磁石87の磁束をブラシレスモータMの出力に対してより有効に利用できる。
【0100】
(3)上記実施形態によれば、第2コアベース71の部分が、第2背面磁石88によって、所望の磁束の流れとするロータとなり、円板磁石75の短絡磁束を抑制でき、同第2背面磁石88の磁束をブラシレスモータMの出力に対してより有効に利用できる。
【0101】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、界磁部材としての円板磁石55,75をネオジム磁石で実施したがこれに限定されるものではなく、フェライト磁石、サマリウム窒化鉄磁石、サマリウムコバルト磁石等、その他永久磁石で実施してもよい。
【0102】
・上記第3実施形態では、第2実施形態のロータ25をタンデム構造としたが、第1実施形態で示したロータ25や、第4実施形態で示したロータ25をタンデム構造にして実施してもよい。
【0103】
・上記各実施形態では、モータハウジング20aの外径を10cmとしたが、10cm以下で実施してもよい。
・上記第1実施形態では、集中巻きであって、14極12スロットのブラシレスモータMに具体化したが、これに限定されるものではない。例えば、集中巻きであって、8極12スロット、10極12スロット、16極12スロット、12極18スロット、16極18スロット、20極18スロット等のブラシレスモータに応用してもよい。
【0104】
・上記第2実施形態では、分布巻きであって、10極60スロットのブラシレスモータMに具体化したが、これに限定されるものではない。例えば、分布巻きであって、6極18スロット、6極36スロット、6極72スロット、8極24スロット、8極48スロット、10極30スロット、16極48スロット、20極60スロット等のブラシレスモータに応用してもよい。いわば、極数の倍数スロットであればよい。
【0105】
・上記各実施形態のブラシレスモータMは、コラムアシスト型の電動パワーステアリングシステム1に具体化したが、これを、ラックアシスト型又はピニオンアシスト型の電動パワーステアリングアシストシステムに応用してもよい。この場合、エンジンルーム内に配置されるため、特に効果が大きい。