(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
(1)全体構成
図1は、本実施形態におけるMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置1の全体構成を示すブロック図である。MRI装置1は、静磁場磁石22、傾斜磁場コイル26、RFコイル28、寝台32、制御ユニット30、冷却装置100等を備えて構成される。
【0013】
また、制御ユニット30は、静磁場電源40、傾斜磁場電源44(X軸用44x、Y軸用44y、Z軸用44z)、RF送信器(RFアンプ)46、RF受信器48、シーケンスコントローラ56、及びコンピュータ58を備えている。
【0014】
さらに、コンピュータ58は、演算装置60、入力装置62、表示装置64、及び記憶装置66を有する。
【0015】
静磁場磁石22は、概略円筒形状をなしており、被検体Pの撮像領域であるボア(静磁場磁石22の円筒内部の空間)内に静磁場を発生させる。静磁場磁石22は超伝導コイルを内蔵し、静磁場電源40から供給される電流を超伝導コイルに印加することで静磁場を発生する。静磁場磁石22は、液体ヘリウムによって超伝導コイルを極低温に冷却し、静磁場磁石内部を極低温に保つための熱シールドを低温に保持するためのヘリウムガスは磁石用冷凍機221によって冷却される。
【0016】
傾斜磁場コイル26も概略円筒形状をなし、静磁場磁石22の内側に固定されている。この傾斜磁場コイル26は、傾斜磁場電源(44x、44y、44z)から供給される電流によりX軸,Y軸,Z軸の方向に傾斜磁場を被検体Pに印加する。傾斜磁場コイル26を冷却するための冷媒(冷却水)を流すコイル冷却用配管26aが傾斜磁場コイル26に近接して設けられている。
【0017】
RFコイル28は、傾斜磁場コイル26の内側に、被検体Pを挟んで対向するように固定されている。このRFコイル28は、RF送信器46から送信されるRFパルスを被検体Pに照射し、また、水素原子核の励起によって被検体Pから放出される磁気共鳴信号を受信する。寝台32は水平方向に移動可能に構成されており、撮影時には被検体Pを載せてボア内に移動する。
【0018】
RF送信器46は、シーケンスコントローラ56からの指示に基づいて、RFコイル28にRFパルスを送信する。一方、RF受信器48は、RFコイル28によって受信された磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号をデジタル化して得られる生データをシーケンスコントローラ56に対して送信する。
【0019】
シーケンスコントローラ56は、コンピュータ58による制御のもと、傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48をそれぞれ駆動することによって被検体Pのスキャンを行う。そして、シーケンスコントローラ56は、スキャンを行った結果、RF受信器48から生データが送信されると、その生データをコンピュータ58に送信する。
【0020】
コンピュータ58は、磁気共鳴イメージング装置1全体を制御する。具体的には、入力装置62によって操作者から各種入力を受け付ける。そして、演算装置60は、入力された撮像条件に基づいてシーケンスコントローラ56にスキャンを実行させる一方、シーケンスコントローラ56から送信された生データに基づいて画像を再構成する。再構成された画像は表示装置64に表示され、或いは記憶装置66に保存される。
【0021】
上記構成のうち、傾斜磁場コイル26、傾斜磁場電源44、磁石用冷凍機221、RF送信器(RFアンプ)46等のユニットは発熱量が大きいユニットであり、発熱ユニットと呼ぶ。これら発熱ユニットを冷却する装置が冷却装置100である。以下、冷却装置100の構成、動作等について説明する。
【0022】
(2)冷却装置の構成
図2は、実施形態の冷却装置100の構成例を示すと共に、冷却装置100によって冷却されるMRI装置1の発熱ユニットとを例示している。
図2に示す例では、傾斜磁場コイル26、傾斜磁場電源44、及び磁石用冷凍機221が発熱ユニットである。
【0023】
冷却装置100は、冷却水300を溜める水槽110、電磁弁120、ポンプ130、熱交換器140、制御部150、表示部160、水位計170等を備えて構成される。
【0024】
水槽110は水槽本体111と蓋112とを有する。水槽本体111の外壁には、水槽110内の冷却水を給水/補給すための給水口113、冷却水300を発熱ユニットに向けて送出する送出口114、発熱ユニットを冷却した後の戻り冷却水を受け入れる受入口115等が設けられている。
【0025】
ポンプ130は、水槽110に溜められた冷却水300を、水槽110から発熱ユニットを廻る循環経路に環流させるものである。熱交換器140は、ポンプ130から送り出された冷却水を熱交換によって冷却する。
【0026】
電磁弁120は、水槽110内の冷却水300を外部から補給するためのものであり、電磁弁120を開くと冷却水300が水槽110に給水され、電磁弁120を閉じると給水が停止する。
【0027】
水位計170は、水槽110内の冷却水300の水位を検出する。
図2に示す水位計170は、フロート式水位計であり、フロート(浮き)171が浮力の原理によって上下し、フロート内のマグネットによりリードスイッチが作動して検出信号を出力することにより、水位(水槽110内の冷却水300の水面301の位置)を検出する。本実施形態の水位計170はフロート式水位計に限定されるものではなく、水槽110内の水位を検出できるものであればその種類を問わない。例えば、超音波式水位計、静電容量式水位計、圧力式水位計などでも良い。
【0028】
制御部150は、冷却装置100全体の制御を行う他、後述するように、水位計170で検出した水位に基づいて、ポンプ130の動作の制御や、電磁弁120の開閉制御を行う。制御部150は、例えば、プロセッサ、ROM、RAM等を備えて構成され、ROMに保存されたプログラムをプロセッサが実行することによって上記の制御を行う。この他、ASIC等のハードウェアで制御部150を構成してもよいし、ソフトウェア処理とハードウェア処理を組み合わせて上記の制御を行うように構成してもよい。
【0029】
表示部160は、制御部150で判定された異常情報や、注意、警報情報を、制御部150からの指示に基づいて表示する。
【0030】
冷却装置100と発熱ユニットとの間には、冷却水を環流させる配管200、210が設けられている。冷却装置100の熱交換器140で冷却された冷却水は分配ユニット201aで分配され、入力側結合部202aを介して各発熱ユニットの夫々に設けられている冷却手段(図示せず)に流入する。各発熱ユニットの冷却手段で熱交換された冷却水(温度が上昇した冷却水)は、出力側結合部202bから流出し、合流ユニット201bにて集められ、冷却装置100に戻っていく。
【0031】
図2では、3つの発熱ユニット(傾斜磁場コイル26、傾斜磁場電源44、及び磁石用冷凍機221)が1つの冷却装置100で冷却される構成を例示しているが、冷却装置100の数と発熱ユニットの数は
図2の例に限定されるものではなく、冷却すべき発熱ユニットの発熱量と、冷却装置100の冷却性能によって適宜決定される。
図2は、例えば、1.5T型MRI装置の典型的な構成である。
【0032】
一方、静磁場強度が高くなると、これに伴って傾斜磁場強度を高くする必要があり、そうすると、傾斜磁場コイルや傾斜磁場電源の発熱量も大きくなる。これに対応するため、MRI装置1に複数の冷却装置100を具備し、それぞれの冷却装置100が複数の発熱ユニットを分担して冷却するようにしてもよい。
【0033】
図3は、例えば、3T型MRI装置の構成例を示す図であり、2つの冷却装置100で4つの発熱ユニットを分担して冷却している。
図3に示す例では、一方の冷却装置(1)100で、傾斜磁場コイル26と磁石用冷凍機221を冷却し、他方の冷却装置(2)100で、傾斜磁場電源44とRFアンプ46を冷却している。
【0034】
ところで、冷却装置100の動作中、即ち、ポンプ130を駆動して冷却水を環流しているときに、万一、配管200、210の一部が破損したり、入力側結合部202aや出力側結合部202b、或いは分配ユニット201aや合流ユニット201bのジョイントの一部が外れたりすると、その部分から漏水が起こる。漏水が発生すると、MRI装置1の発熱ユニットの冷却性能に深刻な影響を与える。また、漏れ出した冷却水によって、建屋内の他の装置を劣化させることにもなりかねない。
【0035】
そこで、本実施形態の冷却装置100では、漏水の発生を迅速かつ的確に検出し、漏水の発生を検出した場合には、ポンプ130の動作を直ちに停止して被害の拡大を防ぐと共に、漏水の発生を操作員に直ちに通知する手段を設けている。
【0036】
一方、漏水が起こっていなくとも、水槽110内の冷却水300は自然蒸発によって徐々に減少するため、冷却水300を適宜補給(給水)する必要もある。以下、本実施形態の冷却装置100の具体的な動作例を説明する。
【0037】
(3)冷却装置の動作
本実施形態の冷却装置100では、水槽110内の冷却水300の減少速度Vが所定の基準値V
Sよりも大きいときに、冷却水300の減少が自然蒸発による減少ではなく、循環経路のどこかに漏水が発生したことによって減少したものと判断して、ポンプ130を止めて冷却水の環流を停止するものとしている。上記の判断とポンプ130の停止に関わる動作は、冷却装置100の制御部150が行う。
【0038】
より具体的には、水槽110内の冷却水300の水位として、第1の水位L1と、第1の水位L1よりも低い第2の水位L2を設定する。そして、水位計170が第1の水位L1を検出してから第2の水位L2を検出するまでの経過時間T
L1−L2が所定の基準時間T
Sよりも短い場合に、循環経路のどこかに漏水が発生したことによって水位が低下したものと判断して、ポンプ130を止めて冷却水の環流を停止するものとしている。この場合、冷却水300の減少速度Vは、(L1−L2)/T
L1−L2、に対応し、基準値V
Sは、(L1−L2)/T
S、に対応する。
【0039】
図4は、水槽110内の水位301と、判定のために設定してある第1の水位L1、第2の水位L2との関係を模式的に示したものである。また、
図4には、満水時の水位LF及び最低水位LLも併せて示している。給水時には、電磁弁120が開いて水槽110内の水位301は高くなるが、給水時以外では、自然蒸発による水位301の低下と、漏水による水位301の低下が起こりうる。これらによって変化する水位301は、水位計170によって検出される。なお、給水時以外で、漏水も蒸発も無いと仮定した場合には、冷却水は循環経路を環流しているため、水位301は原則として変化しない。
【0040】
漏水が発生したとき、その発生を早期に検出するため、第1の水位L1と第2の水位L2はいずれも、少なくとも満水時の水位LFの半分の水位(LF/2)よりも高い位置に設定される。例えば、満水時における水槽110の水量が80リッタとすると、第1の水位L1は、水量70リッタに対応する水位(即ち、満水時の水位LFの約88%の水位)に設定される。また、第2の水位L2は、水量65リッタに対応する水位(即ち、満水時の水位LFの約82%の水位)に設定される。
【0041】
図5は、本実施形態の冷却装置100の動作例を示すフローチャートであり、主に冷却装置100の制御部150が行う動作である。
【0042】
初期状態(ステップST1)は、水位が第1の水位L1よりも高く、満水時の水位LF以下であるものとする。また、初期状態では、電磁弁120は閉じられており、給水が停止している状態であるものとする。
【0043】
ステップST2で、冷却装置100が冷却を開始する。具体的には、ポンプ130を駆動して冷却水の環流を開始する一方、熱交換器140による冷却も開始する。ステップST2の段階では、電磁弁120は閉じたままであり給水はされていない。したがって、水位は、初期状態(第1の水位L1よりも高い水位)から、自然蒸発によって低下するか、或いは、漏水の発生によって低下することになる。
【0044】
ステップST3では、水位計170が第1の水位L1を検出したか否かが判定される。水位計170が第1の水位L1を検出すると、直ちに経過時間の計測が開始される(ステップST4)。水位は、自然蒸発または漏水によって低下し続ける。
【0045】
ステップST5では、水位計170が、第1の水位L1よりも低い第2の水位L2を検出したか否かが判定される。水位計170が第1の水位L2を検出すると、第1の水位L1を検出してから第2の水位L2を検出するまでの経過時間T
L1−L2が直ちに求められる。そして、経過時間T
L1−L2が第2の基準時間T
S2以下か否かが判定される(ステップST6)。
【0046】
経過時間T
L1−L2が第2の基準時間T
S2以下の場合(ステップST6のYES)には、引き続き、ステップST7にて、経過時間T
L1−L2が第1の基準時間T
S1以下か否かが判定される。
【0047】
ここで、第2の基準時間T
S2は第1の基準時間T
S1よりも長い値に設定され、例えば、90分といった値に設定される。これに対して、第1の基準時間T
S1は比較的短い値に設定され、例えば、5分といった値に設定される。
【0048】
経過時間T
L1−L2が第2の基準時間T
S2(例えば、90分)よりも長い場合(ステップST6のNO)は、自然蒸発によって水位が低下したものと判定し、ステップST20へ進む。これに対して、経過時間T
L1−L2が第2の基準時間T
S2以下の場合は、漏水が発生している可能性が有ると判定(1次判定)し、ステップST7にて、経過時間T
L1−L2が第1の基準時間T
S1(例えば、5分)以下か否かの判定(2次判定)が行われる。経過時間T
L1−L2が第1の基準時間T
S1以下の場合(ステップST7のYES)は、漏水が発生している可能性が極めて高いと判定し、直ちに「漏水警報」表示を行う(ステップST8)と共に、ポンプ130や熱交換器140の動作を停止する(ステップST9。「漏水警報」表示は、冷却装置100の表示部160にローカル表示する他、MRI装置1の表示装置64や、MRI装置1本体が設置される検査室内の適宜の表示装置にリモート表示させてもよい。また、視覚的な表示だけでなく、音声等で「漏水警報」を操作員に知らせてもよい。
【0049】
一方、経過時間T
L1−L2が第2の基準時間T
S2以下ではあるが第1の基準時間T
S1よりも長い場合(ステップST7のNO)は、漏水の可能性はあるものの漏水が確実に発生しているとまでは断定できない、もしくは漏水の程度が小さいと判定する。この場合には、冷却装置100の表示部160、或いはMRI装置1の表示装置64や検査室内の適宜の表示装置に、操作員の注意を喚起するための「漏水注意」表示を行う(ステップST10)。
【0050】
「漏水注意」表示に接した操作員は漏水の有無を点検する。そして、所定の点検時間、例えば10分以内に、漏水が無いことを確認して「漏水注意」表示を操作員がリセットした場合には、ステップST20へ移行する。
【0051】
一方、所定の点検時間内に「漏水注意」表示がリセットされなかった場合は、漏水の可能性が完全には排除されないと判定し、ポンプ130や熱交換器140の動作を停止して冷却動作を停止する(ステップST9)。
【0052】
前述したように、ステップST6でのNO判定された、或いは、ステップST11のYES判定された場合には、ステップST20へ移行する。これら2つの場合は、いずれも漏水ではないが、水位自体は第2の水位L2まで低下している。そこで、この場合には、ステップST20にて給水を開始する。具体的には、制御部150が電磁弁120を開いて、外部からの冷却水を水槽110に補給する。
【0053】
給水開始後、所定の給水判定時間(例えば、5分)以内に水位計170が第1の水位L1を検出すると(ステップST21のYES)、電磁弁120を閉じて給水を停止する(ステップST22)。その後、ステップST4に戻って、第1の水位L1検出後の経過時間の計測を再び開始する。このように、装置に漏水等の異常がなく、水位が自然蒸発のみで低下する場合には、水槽110の水位は第1の水位L1と第2の水位L2との間に維持されることになる。
【0054】
一方、給水開始後、所定の給水判定時間以内に水位計170が第1の水位L1を検出しなかった場合(ステップST21のNO)には、電磁弁120等の給水系に何らかの異常が発生して正常な給水が行われていないと判定し、冷却装置100の表示部160、或いはMRI装置1の表示装置64や検査室内の適宜の表示装置に、操作員の注意を喚起するための「給水異常」表示を行う(ステップST23)。「給水異常」表示に接した操作員は電磁弁120等の給水系の異常個所を点検する。そして、所定の点検時間、例えば10分以内に、給水系の異常が無いことが確認された場合或いは異常が修復された場合は、「給水異常」表示を操作員がリセットする。そして、「給水異常」表示がリセットされた場合には(ステップST24のYES)、ステップST20へ戻って給水を継続する。「給水異常」表示が所定の点検時間内にリセットされなかった場合には(ステップST24のNO)、給水系異常の可能性が排除されないと判定し、ポンプ130や熱交換器140の動作を停止して冷却動作を停止する(ステップST9)。
【0055】
上述した実施形態の冷却装置100によれば、水槽110内の水位の低下の速度から漏水の有無を判定することができる。そして、漏水が発生していると判定された場合には、そのことを操作員に直ちに通知することができるため、漏水発生に伴うMRI装置1へのダメージを未然に防止することができる。
【0056】
また、水位の低下が、漏水に起因するものなのか、自然蒸発に起因するものなのかを判定することができる。そして、自然蒸発に起因すると判定した場合には、電磁弁120を介した給水により、水槽110内の水位を所定の範囲に維持することができる。加えて、給水時における水位と時間の判定により、電磁弁120等の給水系の異常有無判定を行うこともできる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。