特許第5940406号(P5940406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940406
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】ロボット制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20160616BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   B25J19/00 F
   G05B19/18 W
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-168500(P2012-168500)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-24178(P2014-24178A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】前田 博宣
【審査官】 谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−355190(JP,A)
【文献】 特開2012−125844(JP,A)
【文献】 特開2001−218499(JP,A)
【文献】 特開2001−212778(JP,A)
【文献】 特開2006−123118(JP,A)
【文献】 特開平5−300950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/00
G05B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの制御指令を生成するCPU基板に電源を供給する第1電源部及び前記CPU基板からの制御指令に基づいて、又は、外部から入力された制御指令に基づいて前記ロボットをサーボ制御するサーボアンプに電力を供給するとともに、前記ロボットの安全作動を行うシーケンス部に電力を供給する第2電源部を備えた電源ユニットと、
前記第1電源部から前記CPU基板に電力供給を許可又は禁止のいずれかに予めセット可能なセット部と、
前記電源ユニットに一次側電源が投入された際に、前記セット部における許可又は禁止のセット状態に応じて、前記第1電源部から前記CPU基板への電力ラインに設けられた第1スイッチをオン又はオフ状態にするとともに、前記第2電源部から前記シーケンス部への電力ラインに設けられたに第2スイッチをオン又はオフ状態にする電源コントローラを備えるロボット制御装置。
【請求項2】
前記電源コントローラは、
前記セット部が許可のセット状態のときに、前記第1スイッチ及び第2スイッチをオン状態にするとともに、前記CPU基板がスリープ状態か否かを監視し、前記CPU基板がスリープ状態のときは、前記第1スイッチをオフ作動して、前記第1電源部から前記CPU基板への電力を遮断することを特徴とする請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記電源コントローラは、前記サーボアンプのサーボ停止状態か否かを監視し、前記サーボアンプがサーボ停止状態のときは、第2電源部とサーボアンプ間に設けられた第3スイッチをオフ作動して第2電源部から前記サーボアンプへの電力供給を遮断することを特徴とする請求項2に記載のロボット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のロボット制御装置を連結することにより、複数のロボットマニピュレータを協調させて制御する、いわゆる協調システムを構築する場合、1台のロボット制御装置をマスタ側とし、残りのロボット制御装置をスレーブ側にすることが行われ、前記スレーブ側に設けられているロボット制御装置のサーボアンプに対しては、マスタ側のロボット制御装置からの制御指令を出力するように構築する。
【0003】
上述した協調システムを構築する方法としては、大きく2つの方法がある。第1の方法は、マスタ側およびスレーブ側のロボット制御装置を全く同一仕様として接続する方法である。この場合、それぞれのロボット制御装置にはCPUおよびサーボドライバが内蔵され、CPU同士は通信接続手段により接続されてお互いに同期を取って動作する。
【0004】
この第1の方法は、それぞれのロボット制御装置が、ともにCPUを内蔵しているためにシステム全体として高価になる場合がある。この問題を解決するための第2の方法として、特許文献1が提案されている。特許文献1に記載の発明は、協調システムをマスタ側のロボット制御装置およびスレーブ側のロボット制御装置により構成している点は第1の方法と同じである。異なる点は、マスタ側のロボット制御装置には、制御指令を出力するCPUと、前記制御指令に基づいてロボットを制御するサーボドライバを備え、スレーブ側のロボット制御装置には、ロボットを制御するサーボドライバを備え、CPUを備えていない点である。すなわち、第2の方法では、マスタ側に備えた1つのCPUからマスタ側およびスレーブ側のサーボドライバを同時に制御することによって協調制御する。
【0005】
上述したように、協調システムを構築する方法としては、上記第1および第2の方法が考えられる。特許文献1によれば、第1の方法は高価であるということが課題に挙げられているが、必ずしもそうではない場合がある。この理由は、以下の通りである。すなわち、第2の方法のように、マスタ側とスレーブ側で異なる仕様のロボット制御装置を採用することは、メーカにとって過剰な在庫を抱えたり、製造工程を複雑にしたりなどの要因になる。また、ロボット制御装置単体の原価のみを対象としてコストを考慮するのではなく、在庫、製造工程等まで含めたトータルでコストを考慮した場合は、マスタ側とスレーブ側を全く同一の仕様とする第1の方法を採用した方が、メーカにとってメリットを有する場合がある。一方、メーカの立場ではなく、ユーザの立場から、マスタ側とスレーブ側を全く同一の仕様としたときの考慮すべき点としては、電力消費の問題がある。
【0006】
図6に従来のロボット制御装置の電源系統を示す。同図に示すように、交流電源は、ブレーカ10及び強電ユニット12、強電ユニット電力線L11を介して、ロボット制御装置RCの電源ユニット30に接続されている。ブレーカ10は、ロボット制御装置の一次側電源(商用電源)を手動で入り切りする装置である。強電ユニット12は、強電ユニット電力線L11を介しての電源ユニット30への商用電源の供給と、ロボット制御装置RCが備えるサーボアンプ40へ電力線L12を介してのモータ動力用電源(商用電源)を供給するとともに、電磁スイッチMSの入り切りで電力供給を制御するユニットである。電磁スイッチMSは、図示しない強電ユニット信号線を介してCPU基板24に接続されており、CPU基板24からの制御信号に基づいて入り切りを行う。
【0007】
ロボット制御装置RCは、CPUユニット20を備えている。CPUユニット20は、CPUを搭載するCPU基板24、及びシーケンス基板26を備えている。前記電源ユニット30は、商用電源を所定の定電圧に変換し、CPU基板24、シーケンス基板26及びサーボアンプ40に変換後の電力を供給する。図6の従来例では、商用電源から低圧の5V等に変換する5V電源部34(すなわち、制御用の低電圧電源)は、CPU基板24に対して電力ラインL1を介して電力を供給するようにされている。また、商用電源から24Vに変換する24V電源部36は、シーケンス基板26に対しては電力ラインL2を介して、及びサーボアンプ40に対しては電力ラインL3を介して電力を供給するようにされている。この24V電源部36は、シーケンス基板26及びサーボアンプ40の制御用に使用する電力を供給するためのものである。
【0008】
前記CPU基板24は、中央処理演算装置であり、ロボット制御装置RCの周辺機器からの入力及び周辺機器への出力をソフトウエアで処理する。前記CPUはサーボアンプ40に運転指令(制御指令)を出力し、ロボット制御装置RCに接続されるティーチペンダントTP、及び操作ボックス50等の周辺機器に各種の信号を、図示しない信号線を介して出力する。
【0009】
シーケンス基板26には、HDL(ハードウエア記述言語)による処理で運転される基板であり、後述するロボットにおける機械接点で構成された安全回路に接続されている。ティーチペンダントTPは、図示しない液晶パネルとキーシートを備えるロボット教示装置である。操作ボックス50は前記ロボットの安全回路を外部に引出し、ユーザが手動で操作する装置である。サーボアンプ40は、CPU基板24からの制御指令に、モータ出力・位置情報をフィードバックした指令値で、商用電源を整流した直流電圧を、図示しないロボットに搭載された図示しないモータを運転して該ロボットを動作させる装置である。
【0010】
上記のようなロボット制御装置の電源系統が示されているものとして例えば特許文献2が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−130722号公報
【特許文献2】特開2004−220384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のロボット制御装置がスレーブ側のロボット制御装置として組み込まれた場合、該スレーブ側のロボット制御装置のCPU基板24及びシーケンス基板26には電力が供給されるため、無駄な電力消費が発生する問題がある。
【0013】
本発明の目的は、スレーブ側又はマスタ側のロボット制御装置のいずれにも適用できるロボット制御装置がスレーブ側として組み込まれた場合に、CPU基板及びシーケンス部への電源供給を自動的に遮断して、電力消費を抑制できると共に、ロボット制御装置内にCPU基板とシーケンス部を取り付けたまま運用できるロボット制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ロボットの制御指令を生成するCPU基板に電源を供給する第1電源部及び前記CPU基板からの制御指令に基づいて、又は、外部から入力された制御指令に基づいて前記ロボットをサーボ制御するサーボアンプに電力を供給するとともに、前記ロボットの安全作動を行うシーケンス部に電力を供給する第2電源部を備えた電源ユニットと、前記第1電源部から前記CPU基板に電力供給を許可又は禁止のいずれかに予めセット可能なセット部と、前記電源ユニットに一次側電源が投入された際に、前記セット部における許可又は禁止のセット状態に応じて、前記第1電源部から前記CPU基板への電力ラインに設けられた第1スイッチをオン又はオフ状態にするとともに、前記第2電源部から前記シーケンス部への電力ラインに設けられたに第2スイッチをオン又はオフ状態にする電源コントローラを備えるロボット制御装置を要旨としている。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1において、前記電源コントローラは、前記セット部が許可のセット状態のときに、前記第1スイッチ及び第2スイッチをオン状態にするとともに、前記CPU基板がスリープ状態か否かを監視し、前記CPU基板がスリープ状態のときは、前記第1スイッチをオフ作動して、前記第1電源部から前記CPU基板への電力を遮断することを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明は、請求項2において、前記電源コントローラは、前記サーボアンプのサーボ停止状態か否かを監視し、前記サーボアンプがサーボ停止状態のときは、第2電源部とサーボアンプ間に設けられた第3スイッチをオフ作動して第2電源部から前記サーボアンプへの電力供給を遮断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、スレーブ側又はマスタ側の制御ロボット装置のいずれにも適用でき、スレーブ側のロボット制御装置として組み込まれた場合に、CPU基板及びシーケンス部への電源供給を自動的に遮断して、電力消費を抑制できるとともに、ロボット制御装置内にCPU基板とシーケンス部を取り付けたまま運用できるロボット制御装置を提供できる。特に、スレーブ側のロボット制御装置として組み込まれた場合には、未使用のCPU基板及びシーケンス部に電力が供給されないため、待機電力を削減することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、マスタ側のロボット制御装置として組み込まれた場合には、CPU基板がスリープ状態のときは、第1電源部からCPU基板への電力を遮断できるため、スリープ状態のときに、待機電力を削減することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、サーボアンプがサーボ停止状態のときは、第2電源部からサーボアンプへの電力供給を遮断できるため、サーボアンプがサーボ停止状態のときの待機電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態のロボット制御装置における電源系統を示すブロック図。
図2】第1実施形態のロボット制御装置の電源コントローラが実行するフローチャート。
図3】第2実施形態のロボット制御装置における電源系統を示すブロック図。
図4】第2実施形態のロボット制御装置の電源コントローラが実行するフローチャート。
図5】複数のロボット制御装置を組んだ協調システムの接続例を示す説明図。
図6】従来のロボット制御装置における電源系統を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態のロボット制御装置を図1図2、及び図5を参照して説明する。なお、図6の従来例と同一構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略し、従来例と異なる構成を中心に説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のロボット制御装置RCは、電源ユニット30に電源コントローラ60が設けられている。電源コントローラ60は、CPU基板24、すなわち、CPU基板24に搭載されているCPUと通信が可能である。
【0023】
電源コントローラ60は、例えば、CPLD(Complex Programmable Logic Device )等のプログラマブルなロジックICで構成されているが、CPLDに限定するものではなく、マイクロコンピュータで構成されていてもよい。また、制御信号用の低電圧電源としての5V電源部34と、CPU基板24間の電力ラインL1には、第1スイッチS1が接続されている。前記低電圧電源よりも高電圧の電源としての24V電源部36と、シーケンス基板26間の電力ラインL2には、第2スイッチS2が接続されている。
【0024】
本実施形態では、第1スイッチS1、及び第2スイッチS2は、メカリレー接点で構成されているが、メカリレーに限定するものではなく、半導体スイッチにより構成してもよい。第1スイッチS1及び第2スイッチS2は、電源コントローラ60によりオン又はオフ制御可能である。なお、本実施形態では、第1スイッチS1及び第2スイッチS2は、共にa接点(常開接点)により構成されている。
【0025】
サーボアンプ40には、セット部としてのID回路42が設けられている。ID回路42は、メカ的な構成では例えばダイアルスイッチ、ジャンパスイッチ、ディップスイッチ等を含むように構成されており、このスイッチの切り替え操作により、CPU基板24及びシーケンス基板26に電力の供給を許可又は禁止を意味する電圧の出力が、電源コントローラ60に対して可能である。すなわち、ID回路42における前記スイッチの切り替え状態(すなわちセット状態)による電圧の高低(或いは低又は高)に応じて、第1スイッチS1及び第2スイッチS2のオンオフ状態が決定される。上記のようにして、電源コントローラ60に対して、前記ID回路42の両端電圧が印加されるようになっている。本実施形態では、5V電源部34は、第1電源部の例であり、24V電源部36は第2電源部の例である。また、シーケンス基板26は、シーケンス部の例である。
【0026】
5V電源部34は第1電源部の一例であり、24V電源部36は第2電源部の一例である。
図5は、上記のように構成されたロボット制御装置RCを複数組み合わせて協調システムを構成した例を示している。
【0027】
図5中、マスタ側のロボット制御装置RCにはRC0の符号を付し、スレーブ側のロボット制御装置RCには、それぞれRC1〜RC3の符号を付す。また、各ロボット制御装置RC内の各構成には、既に説明した各構成の符号を付す。
【0028】
協調システムを構築する場合は、図5に示すように、マスタ側のロボット制御装置RC0に、スイッチングハブ等の協調ハブ基板100を搭載する。
また、CPUユニット20と複数のポートを有するハブ手段としてのスイッチングハブ等からなる協調ハブ基板100との間には、強電ユニット信号線L20及びサーボアンプ信号線L21が接続されている。
【0029】
協調ハブ基板100から、ロボット制御装置RC0のサーボアンプ40には、サーボアンプ通信及び強電ユニット信号線(以下、単に複合ケーブルという)L30が接続されている。また、協調ハブ基板100から、スレーブ側のロボット制御装置RC1〜RC3の各サーボアンプ40には、複合ケーブルL31〜L33がそれぞれ接続されている。複合ケーブルは、イーサネット(登録商標)ケーブル(すなわち、LANケーブル)からなる。イーサネットケーブルは、EMC耐性に優れるとともに、USB規格のケーブルよりも伝送距離を延長して使用できるケーブルである。
【0030】
マスタ側及びスレーブ側のサーボアンプ40に接続された複合ケーブルL30〜L33を介して、マスタ側のCPU基板24から生成された運転指令(制御指令)に基づいて、各サーボアンプ40が制御されて、各ロボットが協調制御される。
【0031】
また、各サーボアンプ40に接続された複合ケーブルL31〜L33からは、図示しない強電ユニット信号線がそれぞれのロボット制御装置内の強電ユニット12に接続されて、電磁スイッチMSのオンオフ制御がマスタ側のCPU基板24により可能となっている。
【0032】
(第1実施形態の作用)
上記のように構成されたロボット制御装置RCの作用を説明する。
図5に示すように、協調システムが構築された場合、マスタ側のロボット制御装置RC0、及びスレーブ側のロボット制御装置RC1〜RC3の各電源コントローラ60は、協調システムの一次側電源(商用電源)が投入されると、それぞれ、図2に示すフローチャートを実行する。
【0033】
まず、マスタ側のロボット制御装置RC0について説明する。
S10では、電源コントローラ60は、サーボアンプ40のID回路42の両端電圧を監視(すなわち、確認)して、サーボアンプIDを確認する。例えば、ID回路42の両端電圧が「高」の場合は、マスタ側とし、「低」の場合は、スレーブ側とした場合、マスタ側のRC0では、ID回路42は、両端電圧が「高」となるようにセットされているため、S12の判定を「YES」とし、S14に移行する。
【0034】
マスタ側のロボット制御装置RC0は、ID回路42は、両端電圧が「高」となるようにセットされているため、S12の判定を「YES」とし、S14に移行する。
S14では、電源コントローラ60は、スイッチS1,S2をオンにし、CPU基板24及びシーケンス基板26に電力を供給して、このフローチャートを終了する。
【0035】
この結果、マスタ側のロボット制御装置RC0では、CPU基板24及びシーケンス基板26に電力が供給される。
一方、スレーブ側のロボット制御装置RC1〜R3では、ID回路42は、両端電圧が「低」となるようにセットされているため、S12の判定を「NO」と判定し、S10に戻り、このS10、及びS12の処理を繰り返す。
【0036】
この結果、スレーブ側のロボット制御装置RC1〜RC3では、第1スイッチS1及び第2スイッチS2は、a接点(常開接点)であり、オンしていないため、CPU基板24及びシーケンス基板26に電力が供給されることがない。
【0037】
なお、上記説明では、スレーブ側のロボット制御装置RC1〜RC3では、S1069S12の処理をそのまま繰り返すようにしているが、この繰り替え時間を所定時間、繰り替えした場合、或いは、繰り返し回数を所定回数となった場合に、このフローチャートを終了するようにしてもよい。
【0038】
さて、本実施形態によれば、以下のような特徴がある。
(1) 本実施形態のロボット制御装置RCでは、電源ユニット30には、CPU基板24に電源を供給する5V電源部34(第1電源部)、及びロボットをサーボ制御するサーボアンプ40に電力を供給するとともにロボットの安全作動を行うシーケンス基板26(シーケンス部)に電力を供給する24V電源部36(第2電源部)を備える。また、ロボット制御装置RCは、5V電源部34(第1電源部)からCPU基板24に電力供給を許可又は禁止のいずれかに予めセット可能なID回路42(セット部)を備える。さらに、ロボット制御装置RCは、電源ユニット30に一次側電源(商用電源)が投入された際に、ID回路42(セット部)における許可又は禁止のセット状態に応じて、5V電源部34(第1電源部)からCPU基板24への電力ラインL1に設けられた第1スイッチS1をオン又はオフ状態にするとともに、24V電源部36(第2電源部)からシーケンス基板26(シーケンス部)への電力ラインL2に設けられた第2スイッチS2をオン又はオフ状態にする電源コントローラ60を備える。
【0039】
この結果、本実施形態のロボット制御装置によれば、スレーブ側又はマスタ側のいずれにも適用でき、スレーブ側のロボット制御装置として組み込まれた場合に、CPU基板及びシーケンス基板への電源供給を自動的に遮断して、電力消費を抑制できるとともに、ロボット制御装置内にCPU基板とシーケンス基板を取り付けたまま運用できる。特に、スレーブ側のロボット制御装置として組み込まれた場合には、未使用のCPU基板及びシーケンス基板に電力が供給されないため、待機電力を削減することができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のロボット制御装置RCを図3図5を参照して説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と同一構成、または相当する構成については同一符号を付してその詳細説明を省略する。
【0041】
第2実施形態では、ロボット制御装置RCの構成が、図3に示すように、電力ラインL3にスイッチS3が設けられているところがハード的に異なっている。
なお、ティーチペンダントTP及び操作ボックス50は、図示しない信号線を介して、CPU基板24に接続され、各種指令を含むデータの送受信を行うようにしている。
【0042】
(第2実施形態の作用)
上記のように構成されたロボット制御装置RCの作用を、図5に示す協調システムの例で説明する。
【0043】
図5に示す協調システムでは、マスタ側のロボット制御装置RC0、及びスレーブ側のロボット制御装置RC1〜RC3の各電源コントローラ60は、一次側電源(商用電源)が投入されると、それぞれ、図4に示すフローチャートを実行する。以下のフローチャートの説明では、主にマスタ側のロボット制御装置について説明し、スレーブ側のロボット制御装置については必要なところを説明する。
【0044】
S20では、スレーブ側及びマスタ側の電源コントローラ60は、サーボアンプ40のスイッチS3をオンし、24V電源部36に電力を供給する。
S22では、第1実施形態のS10と同様に電源コントローラ60は、サーボアンプ40のID回路42の両端電圧を監視(すなわち、確認)して、サーボアンプIDを確認する。
【0045】
S24において、スレーブ側のロボット制御装置RC1〜RC3の電源コントローラ60は、IDはマスタ側ではないとして、S22に戻る。この結果、スレーブ側のロボット制御装置RC1〜RC3では、第1スイッチS1及び第2スイッチS2は、a接点(常開接点)であり、オンしていないため、CPU基板24及びシーケンス基板26に電力が供給されることがない。
【0046】
一方、マスタ側のロボット制御装置RC0の電源コントローラ60は、ここでの判定を「YES」とし、S26に移行する。
以下のフローチャートの各ステップは、全てマスタ側のロボット制御装置の電源コントローラ60が処理するステップである。
【0047】
S26では、電源コントローラ60は、スイッチS2をオンにし、マスタ側のシーケンス基板26に電力を供給する。この結果、マスタ側のロボット制御装置RC0では、CPU基板24及びシーケンス基板26に電力が供給される。
【0048】
S28、及びS30では、電源コントローラ60は、CPUユニット状態出力確認を、CPU基板24から出力される状態確認信号で行う。状態確認信号は、CPU基板24の状態を示すCPU状態確認信号と、サーボアンプ状態確認信号が含まれる。CPU状態確認信号は、CPUが後述するスリープモードか否かを示す信号である。一方、サーボアンプ状態確認信号は、ロボットに搭載されているモータを、例えば、PWM制御を行っている場合において、PWM制御を停止しているか否か示す信号である。
【0049】
なお、S28、S30では、状態確認信号そのものが出力されているか否かを確認するためのものである。すなわち、S28ではCPUユニット20から状態確認信号の出力がされているか否か自体を確認し、S30では、その信号の出力が確認できたならば、用意(READY)ができているとして判定を「YES」とした後、S32に移行する。また、CPUユニット20からの状態確認信号の出力の確認ができないならば、S28に戻り、状態確認信号の出力を待つ。
【0050】
S32では、S30において状態確認信号の出力が確認されているので、電源コントローラ60は、マスタ側のサーボアンプ40の状態確認信号の内容を確認する。
S34では、サーボアンプ毎に入力した状態確認信号の内容に基づいて、当該サーボアンプが予め定められた一定時間サーボ停止状態か否かを判定する。S34において、一定時間サーボ停止状態でない場合には、S34での判定を「NO」とし、S32に戻る。
【0051】
一方、S34で、サーボアンプ毎に入力した状態確認信号の内容に基づいて、当該サーボアンプが予め定められた一定時間サーボ停止状態であると判定した場合には、S36において、当該サーボアンプのスイッチS3をオフ作動させる。
【0052】
次のS38では、電源コントローラ60は、サーボアンプ復帰要求があるか否かを判定する。なお、サーボアンプ復帰要求は、サーボアンプをサーボ停止状態から復帰する場合には、マスタ側のCPU基板24(CPU)から出力されるものである。
【0053】
サーボアンプ復帰要求があった場合には、S48で、電源コントローラ60は、スイッチS3をオンして、24V電源部36からサーボアンプ40に制御用の電力を供給する。S38において、サーボアンプ復帰要求がなかったと判定した場合、判定を「NO」とし、S40に移行する。
【0054】
S40では、電源コントローラ60は、状態確認信号の出力確認を行い、すなわち、この場合はCPU状態確認信号の出力確認を行い、S42では、その内容がスリープモードとなっているか否かを判定する。
【0055】
ここで、CPU基板24のCPUは、各種の処理を行っているアクティブ状態と、それらの処理を停止しているスリープ状態があり、アクティブ状態(アクティブモード)であるときは、アクティブ状態である旨のCPU状態確認信号を、電源コントローラ60に出力し、スリープ状態であるときは、スリープ状態(スリープモード)である旨のCPU状態確認信号を電源コントローラ60に出力する。このスリープ状態では、CPUは処理を行っていないため、電力供給が停止されていてもなんら支障がない状態である。
【0056】
S42において、電源コントローラ60は、スリープモードでない、すなわち、アクティブモードと判定した場合には、S40に戻り、スリープモードと判定した場合には、S44に移行する。
【0057】
S44では、電源コントローラ60は、第1スイッチS1をオフして、5V電源部34からのCPU基板24に対する電力供給を遮断し、S46に移行する。
なお、CPU基板24に対する電力供給の遮断があった場合においても、5V電源部34は、ロボット制御装置RC0においては、ティーチペンダントTP及び操作ボックス50間の通信を行う図示しない通信インターフェイスには、電力を供給するように接続されている。
【0058】
S46では、電源コントローラ60は、CPUユニット復帰要求があるか、否かを判定する。CPUユニット復帰要求は、前記CPUユニットへの電力供給が停止した場合に、操作者から、操作ボックス50或いはティーチペンダントTPからの要求操作があったか否かを判定するのである。
【0059】
この判定は、操作ボックス50或いはティーチペンダントTPからの要求操作がされた場合、操作ボックス50或いはティーチペンダントTPからの要求操作による復帰要求の信号が、図示しない信号線を介して、前記通信インターフェイスにあると、その通信インターフェイスから、電源コントローラ60に復帰要求の信号が入力されることにより、判定する。この判定は、例えば、S44の5V電源部34の第1スイッチS1のオフから所定時間待機中に行われる。この待機時間中に前記復帰要求の信号があった場合は、電源コントローラ60はS26に戻る。S26に戻った場合には、電源コントローラ60は、第1スイッチS1をオンする。
【0060】
また、S46において、前記待機時間中に復帰要求の信号の入力がなければ、電源コントローラ60は、このフローチャートを終了する。
このように、本実施形態では、マスタ側のロボット制御装置RC0において、サーボアンプ40がサーボ停止状態の場合と、サーボ停止状態であって、CPU基板24のCPUがスリープモードの場合に、それぞれが電源を遮断しても良い状態であるため、それらの電力供給が遮断することにより、待機電力を削減できる。
【0061】
第2実施形態では下記の特徴がある。
(1) 本実施形態のロボット制御装置によれば、電源コントローラ60は、ID回路42(セット部)が許可のセット状態のときに、第1スイッチS1及び第2スイッチS2をオン状態にするとともに、CPU基板24がスリープ状態か否かを監視し、CPU基板24がスリープ状態のときは、第1スイッチS1をオフ作動して、5V電源部34(第1電源部)からCPU基板24への電力を遮断する。この結果、本実施形態によれば、マスタ側のロボット制御装置として組み込まれた場合には、CPU基板がスリープ状態のときは、5V電源部34(第1電源部)からCPU基板24への電力を遮断できるため、スリープ状態のときに、待機電力を削減することができる。
【0062】
(2) 本実施形態のロボット制御装置によれば、電源コントローラ60は、サーボアンプ40のサーボ停止状態か否かを監視し、サーボアンプ40がサーボ停止状態のときは、24V電源部36(第2電源部)からサーボアンプ40への電力供給を遮断する。この結果、サーボアンプがサーボ停止状態のときの待機電力を削減することができる。
【0063】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・ セット部は、メカ的な構成に限定するものではなく、サーボアンプのID回路を設ける代わりに、ID情報を例えば、ティーチペンダントTPのキー操作によりCPUに入力し、CPUはその入力に基づいて、電源コントローラ60に設けられた不揮発性メモリにそのID情報を書き込みするようにしてもよい。
【0064】
・ 第2実施形態において、S32〜S38、S48を省略してもよい。
・ 第2実施形態において、S40〜S46を省略し、S38において、「YES」と判定するまで、待機するようにしてもよい。
【0065】
・ 前記実施形態では、第1電源部を5V電源部34としたが、5Vの数値に限定されるものではない。
・ 前記実施形態では、第2電源部を24V電源部36としたが、24Vの数値に限定されるものではない。
【0066】
・ 第1スイッチS1〜S3をa接点の代わりにb接点としてもよい。この場合は、電源コントローラ60のオンオフの制御を逆に行えばよい。
【符号の説明】
【0067】
RC…ロボット制御装置、
20…CPUユニット、24…CPU基板、26…シーケンス基板、
30…電源ユニット、34…5V電源部(第1電源部)、
36…24V電源部(第2電源部)、
40…サーボアンプ、42…ID回路(セット部)、
60…電源コントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6