【実施例】
【0023】
本実施例に係る収納容器は、キャスク(放射性物質格納容器)に格納可能に構成されており、内部に複数の燃料棒を収納可能に構成されている。先ず、
図1および
図2を参照して、収納容器が格納されるキャスクについて説明する。
【0024】
図1は、本実施例の収納容器を格納するキャスクの一部を切り欠いた斜視図である。
図2は、キャスクの軸方向に直交する面で切った断面図である。このキャスク10は、内部に収納容器を格納して輸送される輸送用のキャスクである。なお、本実施例では、キャスクとして、輸送用キャスクに適用して説明するが、これに限定されず、貯蔵用キャスクに適用してもよい。
【0025】
キャスク10は、胴本体11と、下部緩衝体12と、上部緩衝体13と、キャスク底部14と、キャスク蓋部15と、バスケット16とを含んで構成される。胴本体11は、筒状に形成される。キャスク底部14は、胴本体11の一方の端部に隙間なく設けられる。キャスク蓋部15は、胴本体11の他方の端部に隙間なく設けられる。
【0026】
バスケット16は、胴本体11と、キャスク底部14と、キャスク蓋部15とで囲まれる空間に設けられる。バスケット16は、
図1および
図2に示すように複数のセル17が設けられる。
図2に示すように、セル17は、例えば、角パイプによって形成される。バスケット16は、複数の角パイプが胴本体11の胴中心線CL方向に向かって胴本体11に挿入されることで、複数のセル17が構成される。バスケット16の各セル17には、健全であるとされた健全燃料集合体を格納する場合と、複数の燃料棒が収納された収納容器を格納する場合とがある。次に、
図3から
図5を参照して、収納容器1について説明する。なお、燃料集合体は、沸騰水型原子炉に用いられるBWR用燃料集合体であっても、加圧水型原子炉に用いられるPWR用燃料集合体であってもよい。
【0027】
図3は、本実施例の収納容器を表した側面図である。
図4は、健全燃料棒を収容する本実施例の収納容器を模式的に表した断面図である。
図5は、リーク燃料棒を収容する本実施例の収納容器を模式的に表した断面図である。この収納容器1は、健全でないとされたリーク燃料集合体に設けられる複数の燃料棒を収納する容器である。また、収納容器1は、例えば、2種類用意され、リーク燃料集合体の複数の燃料棒のうち、健全であるとされた健全燃料棒を収納する健全燃料棒用収納容器1aと、健全でないとされたリーク燃料棒を収納するリーク燃料棒用収納容器1bとがある。
【0028】
収納容器1は、内外を連通する開口部を有する有底の容器本体2と、容器本体2の開口部に装着される容器蓋部3と、容器本体2の底部に接続されたドレン管4とを有している。容器本体2は、断面方形状となる角筒形状となっており、内部に複数の燃料棒を収納する長方体状の収納空間5が形成されている。容器蓋部3は、容器本体2に対し隙間なく装着されることで、収納空間5を密封状態とすることができる。また、容器蓋部3には、ガス注入弁3aが設けられており、ガス注入弁3aは、ガス供給ラインが接続されることで開弁する一方で、ガス供給ラインの接続が解除されると閉弁する。なお、注入されるガスは、例えば、伝熱性の高いヘリウムガスであり、内部に収納される複数の燃料棒からの発熱を収納容器1に伝達する。ドレン管4は、容器本体2の収容空間5に溜まった水を排出するためのものである。ドレン管4は、その一方が容器本体2の底部に接続され、その他方が容器本体2の上部にまで延びている。ドレン管4の他方には、ドレン弁4aが設けられており、ドレン弁4aは、ドレン排出ラインが接続されることで開弁する一方で、ドレン排出ラインの接続が解除されると閉弁する。
【0029】
上記のように構成された収納容器1は、健全燃料棒L1が収納される場合、
図4に示す健全燃料棒用収納容器1aとして構成される。
図4に示すように、健全燃料棒用収納容器1aは、容器本体2の内部に設けられた中性子吸収板6を有している。中性子吸収板6は、ボロンを含むアルミニウム、またはボロンを含むステンレス等の中性子吸収材で構成されている。中性子吸収板6は、収納空間5の長手方向(収納空間5に収納される健全燃料棒L1の軸方向)に直交する直交面内において、断面十字形状に形成されている。つまり、中性子吸収板6は、直交面内において方形となる収納空間5を、4つの方形の分割収納空間5aに分割するように、収納空間5の中央から外側へ向かって十字状に延在している。
【0030】
そして、中性子吸収板6を収納した容器本体2の4つの分割収納空間5aには、複数の健全燃料棒L1が稠密に、すなわち複数の健全燃料棒L1が隣接した状態で収納される。なお、
図4では、各分割収納空間5aに複数の健全燃料棒L1をマトリクス状に配置したが、各分割収納空間5aに複数の健全燃料棒L1を千鳥状に配置してもよく、特に限定されない。
【0031】
また、上記のように構成された収納容器1は、リーク燃料棒L2が収納される場合、
図5に示すリーク燃料棒用収納容器1bとして構成される。
図5に示すように、リーク燃料棒用収納容器1bは、容器本体2の内部に設けられた中性子吸収板6と複数の保護管7とを有している。中性子吸収板6は、健全燃料棒用収納容器1aに収納されたものと同様であり、収納空間5を4つの分割収納空間5aに分割している。
【0032】
複数の保護管7は、ステンレス等で構成された丸管であり、リーク燃料棒L2が挿通可能となっている。複数の保護管7は、各分割収納空間5aに稠密に、すなわち各保護管7が隣接した状態で収容される。なお、
図5では、各分割収納空間5aに複数の保護管7をマトリクス状に配置したが、各分割収納空間5aに複数の保護管7を千鳥状に配置してもよく、特に限定されない。そして、複数の保護管7に複数のリーク燃料棒L2が挿通されることで、各リーク燃料棒L2は、落下事象等によって衝撃が与えられても、保護管7により形状が維持された状態で、稠密に収容される。
【0033】
なお、
図6に示すように、収納容器1に放熱フィン8を設けてもよい。
図6は、放熱フィンを設けた本実施例の収納容器を模式的に表した断面図である。放熱フィン8は、健全燃料棒用収納容器1aおよびリーク燃料棒用収納容器1bのいずれの収納容器1に設けてもよい。放熱フィン8は、収納容器1の容器本体2の外側に複数設けられ、容器本体2の長手方向に沿って延在している。複数の放熱フィン8は、容器本体2の長手方向に直交する直交面内において、容器本体2の外周に沿って並べて設けられている。
【0034】
次に、
図7を参照して、収納容器1に燃料棒L1,L2を収納する燃料収納方法に関する一連の動作フローについて説明する。
図7は、燃料収納方法に関する一連の動作を表したフローチャートである。燃料収納方法は、集合体検査工程S1と、集合体健全判別工程S2と、健全集合体格納工程S3と、燃料棒検査工程S4と、燃料棒健全判別工程S5(燃料棒選別工程)と、健全燃料棒収納工程S6と、リーク燃料棒収納工程S7と、収納容器格納工程S8と、を備えている。なお、健全燃料棒収納工程S6およびリーク燃料棒収納工程S7が、健全燃料棒L1とリーク燃料棒L2とを分けて収納する燃料棒収納工程となっている。
【0035】
集合体検査工程S1では、原子炉内に装荷された燃料集合体が健全であるか否かを検査する。具体的に、集合体検査工程S1では、燃料集合体毎に、例えばシッピング検査および外観検査等のリーク検査を実行する。なお、集合体検査工程S1では、上記の構成に限らず、燃料集合体を密封可能な缶に収容して缶内を排水し、この後、真空乾燥を行って、FPガス(核分裂生成ガス)の検出を行ってもよい。この場合、後述する集合体健全判別工程S2において、FPガスの検出の有無によってリークしているか否かを判別してもよい。この検出方法によれば、缶内外の圧力差を、輸送中に経験する燃料棒の被覆管の内外の圧力差と同等以上の圧力差とすることができ、輸送中の缶内からの核分裂生成物のリークを抑制することが可能となる。
【0036】
集合体健全判別工程S2では、集合体検査工程S1による検査結果に基づいて、燃料集合体から核分裂生成物が漏れ出ているか(リークしているか)否かを判別する。そして、集合体健全判別工程S2では、リークしていない場合、燃料集合体は健全であると判定する(ステップS2:Yes)一方で、リークしている場合、燃料集合体は健全でないと判定する(ステップS2:No)。集合体健全判別工程S2において健全であるとされた健全燃料集合体は、健全集合体格納工程S3に移行する一方で、健全でないとされたリーク燃料集合体は、燃料棒検査工程S4に移行する。
【0037】
健全集合体格納工程S3では、集合体健全判別工程S2において健全であるとされた健全燃料集合体を、上記したキャスク10のセル17に装荷して格納する。なお、キャスク10は、使用済燃料プール内に沈められた状態でセル17内に燃料集合体が挿入される。このとき、キャスク10の下部緩衝体12および上部緩衝体13は、取り外された状態となっている。
【0038】
燃料棒検査工程S4では、集合体健全判別工程S2において健全でないとされたリーク燃料集合体から燃料棒を取り出し、取り出した燃料棒が健全であるか否かを検査する。具体的に、燃料棒検査工程S4では、燃料棒毎に、例えば超音波(UT)検査および外観検査等のリーク検査を実行する。なお、燃料棒検査工程S4でも、集合体検査工程S1と同様に、燃料棒を密封可能な缶に収容して缶内を排水し、この後、真空乾燥を行って、FPガス(核分裂生成ガス)の検出を行ってもよい。この場合、後述する燃料棒健全判別工程S5において、FPガスの検出の有無によってリークしているか否かを判別してもよい。
【0039】
燃料棒健全判別工程S5では、燃料棒検査工程S4による検査結果に基づいて、燃料棒から核分裂生成物が漏れ出ているか(リークしているか)否かを判別する。そして、燃料棒健全判別工程S5では、リークしていない場合、燃料棒は健全であると判定する(ステップS5:Yes)一方で、リークしている場合、燃料棒は健全でないと判定する(ステップS5:No)。燃料棒健全判別工程S5において健全であるとされた健全燃料棒は、健全燃料棒収納工程S6に移行する一方で、健全でないとされたリーク燃料棒は、リーク燃料棒収納工程S7に移行する。
【0040】
健全燃料棒収納工程S6では、燃料棒健全判別工程S5において健全であるとされた健全燃料棒を、上記した健全燃料棒用収納容器1aの分割収納空間5aに稠密に収納する。なお、健全燃料棒用収納容器1aは、使用済燃料プール内に沈められた状態で各分割収納空間5a内に健全燃料棒が挿入される。健全燃料棒用収納容器1aの収納空間5が複数の健全燃料棒で満たされると、容器蓋部3を容器本体2に取り付けて、健全燃料棒用収納容器1aを密封状態とする。
【0041】
リーク燃料棒収納工程S7では、燃料棒健全判別工程S5において健全でないとされたリーク燃料棒を、上記したリーク燃料棒用収納容器1bの分割収納空間5aに設けられた複数の保護管7に収納する。なお、リーク燃料棒用収納容器1bは、健全燃料棒用収納容器1aと同様に、使用済燃料プール内に沈められた状態で各分割収納空間5a内にリーク燃料棒が挿入される。リーク燃料棒用収納容器1bの収納空間5が複数のリーク燃料棒で満たされると、容器蓋部3を容器本体2に取り付けて、リーク燃料棒用収納容器1bを密封状態とする。
【0042】
収納容器格納工程S8では、健全燃料棒収納工程S6およびリーク燃料棒収納工程S7において燃料棒が収納された各収納容器1a,1bを、上記したキャスク10のセル17に装荷して格納する。なお、健全集合体格納工程S3と同様に、キャスク10は、使用済燃料プール内に沈められた状態でセル17内に収納容器1が挿入される。このとき、収納容器1は、キャスク蓋部15の装着前に、収納空間5に溜まった使用済燃料プールの水を排出している。つまり、収納容器1の内部に溜まった水を排出する場合は、容器蓋部3に設けられたガス注入弁3aにガス注入ラインを接続し、ドレン管4に設けられたドレン弁4aにドレン排出ラインを接続する。そして、ガス注入ラインからヘリウムガスを注入することで、収納空間5に溜まった水を排出すると共に、収納容器1の内部を乾燥させる。この後、キャスク10の胴本体11にキャスク蓋部15が装着され、キャスク10は、使用済燃料プールから引き上げられる。使用済燃料プールから引き上げられたキャスク10からは、内部に溜まった水が排出される。
【0043】
以上のように、本実施例の構成によれば、複数の健全燃料棒L1を健全燃料棒用収納容器1aに稠密に収容し、複数のリーク燃料棒L2をリーク燃料棒用収納容器1bに稠密に収容することができる。このため、多数の健全燃料棒L1を健全燃料棒用収納容器1aに収容することで、健全燃料棒L1を安全に取り扱うことが可能となり、また、多数のリーク燃料棒L2をリーク燃料棒用収納容器1bに収容することで、リーク燃料棒L2を安全に取り扱うことが可能となる。
【0044】
また、本実施例の構成によれば、健全燃料棒L1とリーク燃料棒L2とに分けて収納された各収納容器1a,1bをキャスク10に格納することで、より安全に燃料棒L1,L2を取り扱うことができる。これにより、キャスク10が輸送用キャスクである場合には、多数の燃料棒L1,L2を安全に輸送することができ、また、キャスク10が貯蔵用キャスクである場合には、多数の燃料棒L1,L2を安全に貯蔵することができる。
【0045】
また、本実施例の構成によれば、収納容器1の内部に中性子吸収板6を設けることができるため、燃料棒L1,L2から中性子が放出された場合であっても、中性子吸収材により中性子を吸収することができ、安全性をより高めることができる。
【0046】
また、本実施例の構成によれば、収納空間5を複数の分割収納空間5aに分割することで、容器本体2に収容される燃料棒L1,L2の束を、より小さな束とすることができる。このため、燃料棒L1,L2から中性子が放出される場合であっても、中性子の放出範囲を狭い範囲とすることができるため、安全性を向上させることができる。
【0047】
また、本実施例の構成によれば、リーク燃料棒L2を保護管7に挿通することで、落下事象等によりリーク燃料棒L2に衝撃が与えられたとしても、リーク燃料棒L2の形状を保護管7により維持することができる。このため、衝撃により破損したリーク燃料棒L2が密集することを抑制でき、安全性をより向上させることができる。
【0048】
また、本実施例の構成によれば、収納容器1に放熱フィン8を設けることで、容器本体2の内部に収納された燃料棒L1,L2の発熱を、放熱フィン8を介して放熱することができる。このため、発熱する燃料棒L1,L2であっても容器本体2に好適に収納することが可能となる。
【0049】
なお、複数の保護管7が内部に設けられた収納容器1は、リーク燃料棒用収納容器1bとして用いたが、この構成に限らない。例えば、複数の保護管7が内部に設けられた収納容器1には、健全燃料棒L1とリーク燃料棒L2とを分けずに、つまり、健全燃料棒L1とリーク燃料棒L2とが混在した状態で、保護管7に燃料棒L1,L2を挿入してもよい。
【0050】
また、本実施例では、中性子吸収板6を、収納空間5を4つの方形の分割収納空間5aに分割するように、収納容器1の内部に配置したが、この構成に限らず、
図8に示す変形例1の構成にしてもよい。
図8は、変形例1に係る収納容器を模式的に表した断面図である。
図8に示すように、中性子吸収板6は、収納空間5の長手方向(収納空間5に収納される健全燃料棒L1の軸方向)に直交する直交面内において、断面十字形状に形成されている。このとき、中性子吸収板6は、直交面内において方形となる収納空間5を、4つの三角形の分割収納空間5aに分割するように、対角線上に十字状に延在して配置されている。