(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水酸基を有する単量体に由来し、含有率が4質量%〜25質量%である構成単位、及びアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、
芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造、及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物と、
ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを含むイオン性化合物と、
を含有し、
前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対する前記多価イソシアネート化合物の含有量が0.07質量部〜0.35質量部である偏光板用粘着剤組成物。
更にチオール基を有するシランカップリング剤を含有し、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対する前記シランカップリング剤の含有量が0.3質量部〜5.0質量部である請求項1又は請求項2に記載の偏光板用粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
また(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリルとはアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
【0020】
<偏光板用粘着剤組成物>
本発明の偏光板用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう)は、水酸基を有する単量体に由来し、含有率が4質量%〜25質量%である構成単位、及びアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造、及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物と、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを含むイオン性化合物と、を含有し、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対する前記多価イソシアネート化合物の含有量が0.07質量部〜0.35質量部である。前記偏光板用粘着剤組成物は、必要に応じて更に、シランカップリング剤、硬化促進剤、その他の添加剤等の他の成分を含有してもよい。
【0021】
偏光板用粘着剤組成物が上記のような構成であることで、弾性と粘性のバランスに優れ、優れた耐久性を示すことができ、養生時間を短縮することが可能となる。また、前記偏光板用粘着剤組成物は、その構成成分である(メタ)アクリル系共重合体が酸性基を有していなくても、優れた耐久性を有し、短縮された養生時間で使用可能となることから、タッチパネルを備える表示装置に好ましく適用することができる。更に特定の構造を有するイオン性化合物を含有することで、耐久性と静電気の発生抑制性を高いレベルで両立することが可能となる。
なお、ここでいう耐久性とは、高温環境下若しくは高湿環境下、又は加熱状態と冷却状態とを繰り返すヒートショック環境下においても、長時間に渡って被着体との粘着状態が良好に維持され、気泡の発生、剥がれの発生が抑制されることを意味する。また養生時間の評価はゲル分率測定によって行うことができる。ゲル分率測定は、偏光板用粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成し、23℃、50%RHの環境下に所定の時間保管した後、通常用いられる方法で測定することができる。偏光板用粘着剤組成物の養生時間は4日以下であることが好ましい。
【0022】
本発明においては、前記(メタ)アクリル系共重合体が、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を従来の(メタ)アクリル系共重合体よりも多く含んでおり、これが特定の構造を有する多価イソシアネート化合物で適度に架橋されることで、弾性と粘性のバランスに優れ、偏光板用粘着剤組成物の耐久性に優れると考えられる。また、(メタ)アクリル系共重合体が有する水酸基の含有量が多く、多価イソシアネート化合物が特定の構造を有していることで架橋反応が促進され、養生時間が短縮されると考えられる。更に前記構成の(メタ)アクリル系共重合体の架橋体に、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを含むイオン性化合物を組み合わせることで、優れた耐久性を維持しつつ、偏光板用粘着剤組成物から形成される粘着剤層の表面抵抗値を低下させることができ、静電気の発生が効果的に抑制されると考えられる。
【0023】
(A)(メタ)アクリル系共重合体
前記偏光板用粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来し、含有率が4質量%〜25質量%である構成単位の少なくとも1種と、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の少なくとも1種とを含む(メタ)アクリル系共重合体(以下、単に「共重合体」ともいう)の少なくとも1種を含有する。前記(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体と、アルキル(メタ)アクリレートと、必要に応じてその他の単量体を更に含み、水酸基を含む単量体の含有率が4質量%〜25質量%である単量体組成物を共重合して得られる共重合体である。
前記単量体組成物がその他の単量体を含む場合、(メタ)アクリル系共重合体は水酸基を含む単量体に由来する構成単位及びアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位に加えてその他の単量体に由来する構成単位を含むことになる。
【0024】
前記(メタ)アクリル共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の少なくとも1種を含む。水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含むことで、粘着剤としての凝集力が向上して耐久性が向上し、且つ表示装置の偏光板に適用した場合に光漏れを抑制することができる。
【0026】
前記(メタ)アクリル系共重合体を構成する水酸基を有する単量体は、1分子中に少なくとも1つの水酸基を有し、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な重合性化合物であれば特に制限はない。水酸基を有する単量体の1分子中における水酸基数は特に制限されないが、1であることが好ましい。
水酸基を有する単量体として具体的には、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、エチレン性二重結合を有するアルコール誘導体を挙げることができる。中でも水酸基を有する単量体は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、ヒドロキシアルキルアクリレートであることがより好ましい。
【0027】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数としては、2〜8であることが好ましく、2〜6であることがより好ましく、2〜4であることが更に好ましい。また水酸基の置換位置は特に制限されない。
【0028】
水酸基を有する単量体の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、アリルアルコール、メタリルアルコール等を挙げることができる。
水酸基を有する単量体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体の総質量中に4質量%〜25質量%であり、耐久性と養生時間短縮の観点から、8質量%〜20質量%であることが好ましく、10質量%〜18質量%であることがより好ましい。水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が4質量%未満であると、充分な耐久性と養生時間の短縮を達成することができない。また水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が25質量%を超えると、充分な耐久性が得られず剥がれが発生する傾向がある。
【0030】
(メタ)アクリル系共重合体は、耐久性と養生時間短縮の観点から、水酸基を有する単量体に由来する構成単位として、アルキル基部分の炭素数が2〜6のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を4質量%〜25質量%含むことが好ましく、アルキル基部分の炭素数が2〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を4質量%〜25質量%含むことがより好ましく、アルキル基部分の炭素数が2〜4のヒドロキシアルキルアクリレートに由来する構成単位を8質量%〜20質量%含むことが更に好ましい。
【0031】
(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の少なくとも1種を含む。アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数としては、1〜20であることが好ましく、1〜18であることがより好ましく、1〜12であることが更に好ましく、1〜6であることが特に好ましい。
【0032】
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもアルキル(メタ)アクリレートは、粘着剤の凝集力と接着力を調整しやすい点で、アルキル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、アルキル基の炭素数が1〜6のアルキルアクリレートが更に好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、(メタ)アクリル系共重合体を構成する主成分として含まれることが好ましく、その含有率は、(メタ)アクリル系共重合体の総質量中に、45質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、62質量%以上であることが更に好ましく、64質量%以上であることが特に好ましい。また、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率は、96質量%以下であることが好ましく、92質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましく、86質量%以下であることが特に好ましい。更にアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率は、45質量%〜96質量%であることが好ましく、62質量%〜92質量%であることがより好ましく、64質量%〜90質量%であることが更に好ましい。アルキル(メタ)アクリレートの含有比率が前記範囲内であると、最適な弾性率に調整することができ、耐久性、タック性確保の点で有利である。
【0034】
(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位及びアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位に加えて、環状基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましく、芳香環基を有する単量体に由来する構成単位を含むことがより好ましい。(メタ)アクリル共重合体が環状基を有する単量体に由来する構成単位を更に含むことで、表示装置の偏光板に適用した場合に光漏れをより効果的に抑制することができる。
【0035】
環状基を有する単量体は、分子内に少なくとも1つの環状基を有し、アルキル(メタ)アクリレートと共重合体可能な重合性化合物であれば特に制限はない。環状基を有する単量体における環状基としては、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、脂肪族炭化水素基等が挙げられ、芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。環状基を有する単量体における環状基の含有数は、1〜2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
環状基を有する単量体としては、環状基を有する(メタ)アクリレート、環状基を有する(メタ)アクリルアミド、スチレン誘導体等を挙げることができる。中でも環状基を有する単量体は、環状基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましく、芳香環基を有する(メタ)アクリレートであることがより好ましく、芳香環基がアルキレン基、オキシアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を介してエステル結合した(メタ)アクリレートであることが更に好ましく、芳香環基がオキシアルキレン基を介してエステル結合した(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。
【0036】
環状基を有する単量体の具体例としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性クレゾール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、β−ナフチルオキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート等の芳香環基を有する(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体などを挙げることができる。中でも環状基を有する単量体は、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ナフチルオキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環基がオキシアルキレン基を介してエステル結合した(メタ)アクリレートであることが好ましい。
環状基を有する単量体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(メタ)アクリル系共重合体が環状基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、その含有率は、(メタ)アクリル系共重合体の総質量中に、5質量%〜50質量%であることが好ましく、5質量%〜30質量%であることがより好ましく、10質量%〜30質量%であることが更に好ましい。環状基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が前記範囲であると、表示装置の偏光板に適用した場合に光漏れをより効果的に抑制することができる。
【0038】
(メタ)アクリル系共重合体におけるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量に対する、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有量の質量比は、耐久性と養生時間短縮の観点から、0.04〜0.45であることが好ましく、0.10〜0.33であることがより好ましく、0.15〜0.25であることが更に好ましい。
また(メタ)アクリル系共重合体が環状基を有する単量体に由来する構成単位を更に含む場合、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位と環状基を有する単量体に由来する構成単位の総含有量に対する、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有量の質量比は、耐久性と養生時間短縮の観点から、0.04〜0.25であることが好ましく、0.08〜0.20であることがより好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体、アルキル(メタ)アクリレート及び必要に応じて含まれる環状基を有する単量体に由来する構成単位に加えて、これら以外のその他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
その他の単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の酸性基を有する単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等の塩基性基を有する単量体;アクリロニトリル、メタクロリニトリル等のシアン化ビニル単量体;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル単量体などを挙げることができる。
【0040】
(メタ)アクリル系共重合体における酸性基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体の総質量中に0.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましく、実質的に含まないことが更に好ましい。ここで実質的に含まないとは、不可避的に混入する酸性基を有する単量体に由来する構成単位の存在を許容することを意味する。
【0041】
(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は特に制限されず、例えば70万〜200万とすることができ、100万〜200万であることが好ましく、100万〜180万であることがより好ましい。また(メタ)アクリル系共重合体の分散度(Mw/Mn)は特に制限されず、例えば5〜40とすることができ、5〜30であることが好ましく、10〜25であることがより好ましい。重量平均分子量及び分散度が前記範囲であることで、偏光板用粘着剤組成物の塗工時における取扱性に優れる。
【0042】
(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、通常の条件で測定することができる。
【0043】
(メタ)アクリル系共重合体の態様としては、以下の第1の態様又は第2の態様が好ましい。
第1の態様としては、アルキル基の炭素数が1〜6のアルキル(メタ)アクリレートに由来し、含有率が45質量%〜86質量%である第1の構成単位と、環状基を有する(メタ)アクリレートに由来し、含有率が10質量%〜30質量%である第2の構成単位と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来し、含有率が4質量%〜25質量%である第3の構成単位とを含む(メタ)アクリレート共重合体である。
第2の態様としては、アルキル基の炭素数が1〜6のアルキル(メタ)アクリレートに由来し、含有率が55質量%〜96質量%である第1の構成単位と、アルキル基の炭素数が1〜6のアルキル(メタ)アクリレートに由来し、含有率が20質量%以下であり第1の構成単位とは異なる第4の構成単位と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来し、含有率が4質量%〜25質量%である第3の構成単位とを含む(メタ)アクリレート共重合体である。
【0044】
(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体、アルキル(メタ)アクリレート、必要に応じて含まれる環状基を有する単量体を含む単量体組成物を重合することで製造することができる。単量体組成物の重合方法は、特に制限されるものではなく、通常用いられる重合方法から適宜選択することができる。重合方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等を挙げることができる。中でも処理工程が比較的簡単で、かつ短時間で行なえることから、溶液重合が好ましい。
【0045】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流下で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。前記重合開始剤としては、特に制限されるものではなく、例えばアゾ系化合物を用いることができる。
なお、アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、アクリル系反応温度、時間、溶剤量、触媒の種類や量を調整することにより、所望の分子量に調整することができる。
【0046】
偏光板用粘着剤組成物における(メタ)アクリル系共重合体の含有率は、特に制限されない。(メタ)アクリル系共重合体の含有率は、偏光板用粘着剤組成物の総質量中に、80.0質量%〜99.4質量%であることが好ましく、92.8質量%〜99.1質量%であることがより好ましい。
【0047】
(B)多価イソシアネート化合物
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造、及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物(以下、単に「多価イソシアネート化合物」ともいう)の少なくとも1種を含有する。例えば前記多価イソシアネート化合物は、偏光板用粘着剤組成物において、(メタ)アクリル系共重合体に対する架橋剤として作用する。(メタ)アクリル系共重合体が特定の範囲で水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、多価イソシアネート化合物が特定の構造を有することで、優れた耐久性と養生時間の短縮が両立できる。
【0048】
本発明においては、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造と、イソシアヌレート環構造とを有する多価イソシアネート化合物を用いることが必要である。例えば、芳香族ジイソシアネートに由来する部分構造を有し、イソシアヌレート環構造を有さない多価イソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネートに由来する部分構造を有さず、イソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物等では、養生時間の短縮効果が充分には得られない傾向がある。
【0049】
多価イソシアネート化合物は、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造と、イソシアヌレート環構造を有する化合物であれば特に制限されない。中でも多価イソシアネート化合物は、複数の芳香族ジイソシアネート化合物におけるそれぞれのイソシアネート基が付加反応によってイソシアヌレート環構造を形成した多価イソシアネート化合物であることが好ましい。この場合、多価イソシアネート化合物を形成する芳香族ジイソシアネート化合物は1種のみであっても2種以上の混合物であってもよい。
【0050】
また芳香族ジイソシアネート化合物は芳香環上に2つのイソシアネート基を有する化合物であればよく、ベンゼン環上に2つのイソシアネート基を有する化合物であることが好ましく、トリレンジイソシアネートであることがより好ましく、2,4−トリレンジイソシアネート及び2,6トリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも一方であることが更に好ましい。
【0051】
多価イソシアネート化合物として具体的には、下記一般式(I)で表される芳香族ジイソシアネート化合物の3量体である化合物、下記一般式(II)で表される芳香族ジイソシアネート化合物の5量体である化合物、芳香族ジイソシアネート化合物の7量体等を挙げることができる。更に多価イソシアネート化合物は芳香族ジイソシアネート化合物とアルキレンジイソシアネート化合物から形成されるイソシアヌレート環構造を有する化合物であってもよく、トリレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートから形成されるイソシアヌレート環構造を有する化合物であることもまた好ましい。
多価イソシアネート化合物は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
一般式(I)及び一般式(II)において、R
11からR
25はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す。R
11〜R
13のうち1つはメチル基であって残りが水素原子であることが好ましい。R
14〜R
16のうち1つはメチル基であって残りが水素原子であることが好ましい。R
17〜R
19のうち1つはメチル基であって残りが水素原子であることが好ましい。R
20〜R
22のうち1つはメチル基であって残りが水素原子であることが好ましい。
【0055】
前記芳香族ジイソシアネレート化合物に由来する部分構造、及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物は、常法により調製したものであっても、市販のものであってもよい。前記多価イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、住友バイエルウレタン株式会社製の商品名「デスモジュールIL1451CN」、「デスモジュールILBA」、「デスモジュールHL」、「スミジュールFL−2」、「スミジュールFL−3」、及び「SBUイソシアネート0817」、日本ポリウレタン工業株式会社製の商品名「コロネート2030」、「コロネート2037」、並びにSAPICI社製の商品名「Polurene KC」及び「Polurene HR」を挙げることができる。
【0056】
偏光板用粘着剤組成物において、多価イソシアネート化合物の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対し、前記0.07質量部〜0.35質量部の範囲であり、好ましくは0.08質量部〜0.30質量部の範囲であり、より好ましくは0.10質量部〜0.25質量部の範囲である。多価イソシアネート化合物の含有量が0.07質量部未満では、架橋反応が充分に進行せずに凝集力が不足し、接着性及び耐久性が充分に得られない傾向がある。また多価イソシアネート化合物の含有量が0.35質量部を超えると、ポットライフが充分に得られない傾向があり、例えば偏光板用粘着剤組成物の塗工時にゲル化したり、粘度が増大したりして塗工不良が発生する傾向がある。
【0057】
偏光板用粘着剤組成物は、耐久性と養生時間短縮の観点から、(メタ)アクリル系共重合体に含まれる水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有量に対する、多価イソシアネート化合物の含有量の質量比が、0.0028〜0.0875であることが好ましく、0.0035〜0.0438であることがより好ましく、0.0044〜0.0438であることが更に好ましい。
【0058】
偏光板用粘着剤組成物は、前記多価イソシアネート化合物に加えて、これ以外のその他の架橋剤を更に含んでいてもよい。その他の架橋剤としては、芳香族ジイソシアネートに由来する部分構造を有し、イソシアヌレート環構造とを有さない多価イソシアネート化合物以外のイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等を挙げることができる。
偏光板用粘着剤組成物がその他の架橋剤を含む場合、その含有量は本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されない。例えば、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
【0059】
(C)イオン性化合物
偏光板用粘着剤組成物は、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを含むイオン性化合物の少なくとも1種を含有する。前記イオン性化合物は、アニオンとしてビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンとカチオンとを含む塩であれば、カチオンの種類は特に制限されない。イオン性化合物に含まれるカチオンとしては、金属カチオンであっても、有機カチオンであってもよい。イオン性化合物に含まれるカチオンは、耐久性と静電気の発生抑制性の観点から、有機カチオンであることが好ましい。
【0060】
有機カチオンとしては、含窒素オニウムイオン、含硫黄オニウムイオン、含リンオニウムイオン等を挙げることができる。有機カチオンとしては、テトラアルキルアンモニウムカチオン、テトラアリールアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリニウムカチオン、ピロリニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン等の含窒素オニウムカチオン;トリアルキルスルホニウムカチオン、トリアリールスルホニウムカチオン等の含硫黄オニウムカチオン;テトラアルキルホスホニウムカチオン、テトラアリールホスホニウム等の含リンオニウムカチオンなどを挙げることができる。
【0061】
含窒素オニウムカチオンとして具体的には、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、ベンザルコニウムカチオン等のテトラアルキルアンモニウムカチオン;
1−オクチル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−オクチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−オクチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−オクチルピリジニウムカチオン、2−エチルヘキシルピリジニウムカチオン、1−エチルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−へキシルピリジニウムカチオン、1−ドデシルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウムカチオン等のピリジニウムカチオン;
1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン等のピロリジニウムカチオン;2−メチル−1−ピロリニウムカチオン、1−エチル−2−フェニルインドリニウムルカチオン、1,2−ジメチルインドリニウムカチオン、1−エチルカルバゾリニウムカチオン等のピロリニウムカチオン;
1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−
ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン等のイミダゾリウムカチオン;
1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン等のテトラヒドロピリミジニウムカチオン;
1,3−ジメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン等のジヒドロピリミジニウムカチオン;
1−メチルピラゾリウムカチオン、3−メチルピラゾリウムカチオン等のピラゾリカチオン;1−エチル−2−メチルピラゾリニウムカチオン等のピラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。
【0062】
含硫黄オニウムカチオンとして具体的には、トリメチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、トリブチルスルホニウムカチオン、トリヘキシルスルホニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオン等のトリアルキルスルホニウムカチオンなどが挙げられる。
含リンオニウムカチオンとして具体的には、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラヘキシルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオン等のテトラアルキルホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0063】
中でも、含窒素オニウムカチオンとしては、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン等の非対称のテトラアルキルアンモニウムカチオン;1−オクチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−ドデシルピリジニウムカチオン等のピリジニウムカチオンなどが好ましく用いられる。
含硫黄オニウムカチオンとしては、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオン等のトリアルキルスルホニウムカチオンが好ましく用いられる。
含リンオニウムカチオンとしては、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオン等の非対称のテトラアルキルホスホニウムカチオンが好ましく用いられる。
【0064】
更に有機カチオンとしては、耐久性と静電気の発生抑制性の観点から、テトラアルキルアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン及びイミダゾリウムカチオンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、トリメチルドデシルアンモニウムカチオン、1−オクチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−ドデシルピリジニウムカチオン、1−オクチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン及び1−ヘキシルピリジニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、トリメチルドデシルアンモニウムカチオン、1−オクチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−ドデシルピリジニウムカチオンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが更に好ましい。
【0065】
イオン性化合物の融点は特に制限されない。イオン性化合物の融点は、リワーク性の観点から、25℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。また融点の上限は特に制限されず、例えば70℃以下である。
【0066】
偏光板用粘着剤組成物におけるイオン性化合物の含有率は、特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。イオン性化合物の含有率は、偏光板用粘着剤組成物の総質量中に、0.2質量%〜2.0質量%であることが好ましく、0.5質量%〜2.0質量%であることがより好ましい。また、イオン性化合物の含有量は、耐久性と静電気の発生抑制性の観点から、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対し、前記0.1質量部〜5.0質量部の範囲であることが好ましく、0.2質量部〜2.0質量部の範囲であることがより好ましく、0.5質量部〜2.0質量部の範囲であることが更に好ましい。
【0067】
(D)シランカップリング剤
偏光板用粘着剤組成物は、シランカップリング剤の少なくとも1種を更に含むことが好ましい。偏光板用粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、偏光板が組み込まれた表示装置(例えば液晶表示装置)が高温高湿環境下に曝されても、粘着剤層と偏光板又は液晶セルとの間に剥がれがより発生し難くなる傾向がある。更に偏光板用粘着剤組成物が平滑なガラスに、より優れた接着性を示すようになる傾向がある。
【0068】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基を有するシランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
シランカップリング剤は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM−803」、「KBM−802」、「X−41−1810」、「X−41−1805」、「X−41−1818」等のチオール基を有するシランカップリング剤、信越化学工業株式会社製の「KBM−403」、「KBM−303」、「KBM−402」、「KBE−402」、「KBE−403」(商品名)等のエポキシ基を有するシランカップリング剤などを好適に使用することができる。
【0070】
シランカップリング剤の中でも、耐久性とリワーク性の観点から、チオール基を有するシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、チオール基を有するオリゴマー型のシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。ここでのチオール基を有するオリゴマー型シランカップリング剤としては、チオール基を有するシランカップリング剤とチオール基を有さないシランカップリング剤からなるシランカップリング剤であることが好ましく、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「X−41−1810」、「X−41−1805」、「X−41−1818」を挙げることができる。
【0071】
偏光板用粘着剤組成物がシランカップリング剤を含有する場合、偏光板用粘着剤組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.3質量部〜5.0質量部の範囲が好ましく、0.5質量部〜3.0質量部の範囲がより好ましく、0.5質量部〜2.0質量部の範囲が更に好ましい。
【0072】
偏光板用粘着剤組成物は、チオール基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種を前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.3質量部〜5.0質量部の範囲で含むことが好ましく、チオール基を有するオリゴマー型シランカップリング剤の少なくとも1種を前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.3質量部〜5.0質量部の範囲で含むことがより好ましい。
【0073】
(E)イミダゾール化合物
偏光板用粘着剤組成物は、イミダゾール化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。イミダゾール化合物は、偏光板用粘着剤組成物において、例えば硬化促進剤として機能する。偏光板用粘着剤組成物がイミダゾール化合物を含むことで、優れた耐久性と十分なポットライフを維持しつつ、養生時間をより短縮することができる。
【0074】
イミダゾール化合物としては、分子中に少なくとも1つのイミダゾール骨格を有する化合物であれば特に制限はなく、通常用いられるイミダゾール系硬化促進剤から適宜選択して用いることができる。中でもイミダゾール化合物は、養生時間短縮とポットライフの観点から、第3級イミダゾール化合物であることが好ましい。第3級イミダゾール化合物は、分子中に少なくとも1つのイミダゾール環を有し、イミダゾール環の窒素原子上に水素原子を有さない化合物であれば特に制限はない。
第3級イミダゾール化合物の具体例としては、下記一般式(III)で表される化合物を挙げることができる。
【0076】
一般式(III)において、R
1は、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。R
2〜R
4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。またR
1及びR
2、又はR
3及びR
4は互いに連結して、これらが結合する炭素原子又は窒素原子とともに環を形成してもよい。
【0077】
一般式(III)におけるアルキル基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。またアルキル基の炭素数は1〜2であることが好ましい。一般式(III)におけるアリール基は、炭素数が6〜10であることが好ましく、フェニル基又はナフチル基であることがより好ましい。一般式(III)におけるアラルキル基は、炭素数1〜2のアルキレン基と炭素数6〜10のアリール基からなることが好ましく、ベンジル基、フェニルエチル基であることがより好ましい。
【0078】
一般式(III)で表される第3級イミダゾール化合物は、ポットライフと養生時間短縮の観点から、R
1がアルキル基又はアラルキル基であって、R
2〜R
4がそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール及び1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。またR
1及びR
2が互いに連結して5〜6員の飽和脂肪族環を形成し、R
3及びR
4が互いに連結して6員の芳香族環を形成する態様であることもまた好ましく、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールであることがより好ましい。
【0079】
偏光板用粘着剤組成物がイミダゾール化合物を含有する場合、偏光板用粘着剤組成物中におけるイミダゾール化合物の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.005質量部〜0.5質量部の範囲が好ましく、0.01質量部〜0.3質量部の範囲がより好ましく、0.01質量部〜0.2質量部の範囲が更に好ましい。
【0080】
偏光板用粘着剤組成物は、一般式(III)で表される第3級イミダゾール化合物の少なくとも1種を前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部〜0.3質量部の範囲で含むことが好ましく、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール及び1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種の第3級イミダゾール化合物を前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部〜0.2質量部の範囲で含むことがより好ましい。
【0081】
(F)その他の成分
偏光板用粘着剤組成物は、上記成分の他、更に必要に応じて、溶剤、紫外線吸収剤等の耐候性安定剤、タッキファイアー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機充填剤などを含有してもよい。偏光板用粘着剤組成物がその他の成分を含有する場合、その含有率は本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0082】
<粘着剤付偏光板>
本発明の粘着剤付偏光板は、少なくとも、偏光子と、既述の本発明の偏光板用粘着剤組成物の付与により偏光子上に形成された粘着剤層と、を有する。
【0083】
偏光子としては、一般に、例えばポリビニルアルコール(PVA)フィルムなどが使用される。偏光子は、例えばトリアセチルセルロース(TAC)やポリシクロオレフィン(COP)等の保護用シートの間に保持された例えば3層構造(例えばTAC/偏光子/TAC)に構成された偏光板として用いることができる。
【0084】
例えばTAC/偏光子/TACの3層構造の偏光板の少なくとも一方面に、既述の本発明の偏光板用粘着剤組成物を付与することにより粘着剤層を設けることで、粘着剤付偏光板が作製される。この場合、偏光板上に組成物を付与してもよいが、好ましくは使用時に剥離される保護用シート(剥離シート)上に付与する。偏光板用粘着剤組成物の付与は、液体の偏光板用粘着剤組成物を用いた浸漬法、塗布法、インクジェット法などの塗布方法により好適に行なえる。中でも、塗布法によることが好ましい。
具体的には、本発明の偏光板用粘着剤組成物を保護用シート(剥離シート)上に塗布し、乾燥させ、保護用シート上に粘着剤層を形成した後、この粘着剤層を偏光板上に転写、養生させることで粘着剤付偏光板が作製される。
【0085】
保護用シート(剥離シート)上に付与された粘着剤組成物は、熱風乾燥機等を用いて70℃〜120℃で1分〜3分程度の乾燥条件で乾燥されることが好ましい。
【0086】
更に、偏光板上に設けられた粘着剤層の露出面には、被着体に対する接触面を保護する観点から、露出面を保護するための保護用シート(剥離シート)を密着して設けておくことが好ましい。この保護用シートとしては、粘着剤層との間の剥離が容易に行なえるように、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン等の離型剤で離型処理を施したポリエステル等の合成樹脂シートが好適に用いられる。表示パネルのガラス板等に貼り付けるときには、保護用シートを剥離し、露出した粘着剤層の表面をガラス基板等に密着させる。
また、偏光板の粘着剤層が設けられていない側の表面(露出面)には、その表面を保護する表面保護シートを更に設けてもよい。表面保護シートには、PETフィルムの片面に粘着加工されたプロテクトフィルム等が好適に用いられる。
【0087】
粘着剤層の層厚としては、特に制限されるものではないが、乾燥後の厚みで1μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上50μm以下であり、更に好ましくは15μm以上30μm以下である。
【0088】
<表示装置>
本発明の表示装置は、画像を表示する表示パネルと、表示パネルの少なくとも一方面に配置された既述の本発明の粘着剤付偏光板とを設けて構成されている。
表示パネルとしては、液晶化合物が封入された液晶表示パネルや、有機エレクトロルミネッセンス表示パネルなどが挙げられる。
【0089】
本発明の表示装置の例としては、液晶表示パネルの両面に本発明の粘着剤付偏光板を、それぞれについて粘着剤層が液晶表示パネルの表面(例えばガラス基板の表面)に接触するように配置し、粘着剤層を介して液晶表示パネルの両面に偏光板を接着した構造(偏光板/粘着剤層/液晶表示パネル/粘着剤層/偏光板の構造)を備えた液晶表示装置を挙げることができる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0091】
(製造例1)
温度計、撹枠機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(BA)74質量部、フェノキシエチルアクリレート(PHEA)18質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)8質量部、酢酸エチル(EAc)100質量部を入れ、混合した後、反応容器内を窒素置換した。その後、撹拌下に窒素雰囲気中で、反応容器内の混合物を70℃に昇温した後に、アゾビスジメチルバレロニトリル(ABVN)0.02質量部を混合し6時間反応させた。次に、EAc20質量部にt−ヘキシルパーオキシピバレート0.2質量部を溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、更に2時間反応させた。反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、固形分22.68質量%の(メタ)アクリル系共重合体1の溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて下記条件で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は120万、分散度(MW/Mn)は18であった。
[条件]
・GPC:HLC−8220 GPC(東ソー株式会社製)
・カラム:TSK−GEL GMHXL(東ソー株式会社製のスチレン系ポリマー充填剤)4本使用
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・標準試料:標準ポリスチレン
・流速:0.6ml/min.
・カラム温度:40℃
【0092】
(製造例2〜12)
製造例1において、(メタ)アクリル系共重合体1の合成に用いた単量体の種類及び比率を下記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体2〜12の溶液をそれぞれ得た。
また、得られた各(メタ)アクリル系共重合体について、製造例1と同様にして、Mw及びMnの測定を行なった。結果は、下記表1に示す。表1中、「BA」はn−ブチルアクリレート、「MA」はメチルアクリレート、「t−BA」はt−ブチルアクリレート、「PHEA」はフェノキシエチルアクリレート、「2HEA」は2−ヒドロキシエチルアクリレート、「4HBA」は4−ヒドロキシブチルアクリレートを示し、「−」は未配合であることを示す。
【0093】
【表1】
【0094】
<実施例1>
―粘着剤組成物の調製―
(メタ)アクリル系共重合体(表中では、「共重合体」)として、前記製造例1で得た(メタ)アクリル系共重合体1を100質量部(固形分)と、多価イソシアネート化合物(架橋剤)としてコロネート2037(日本ポリウレタン工業株式会社製)を0.15質量部(固形分)と、イオン性化合物(表中では、「帯電防止剤」)として、トリメチルドデシルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(第一工業製薬株式会社製、商品名MP−402、融点47℃)を1.5質量部と、第3級イミダゾール化合物(硬化促進剤)としてキュアゾール1B2MZ(四国化成株式会社製、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール)を0.03質量部と、シランカップリング剤としてX−41−1810(信越化学工業株式会社製、チオール基を有するオリゴマー型シランカップリング剤)を1.0質量部と、を充分に攪拌混合して粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を目視で観察したところ、濁りがなく、透明性が充分にあることが確認できた。
【0095】
−光学フィルムサンプルの作製−
シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルムの離型剤処理面に、乾燥後の塗工量が25g/cm
2となるように、粘着剤組成物を塗布した。次に、これを熱風循環式乾燥機を用いて100℃で90秒間乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤層を形成した。続いて、偏光ベースフィルム〔ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを主体とする偏光子の両面にセルローストリアセテート(TAC)フィルムをラミネートしてTACフィルム/PVAフィルム/TACフィルムの積層構造を有するもの;約190μm〕の裏面と前記粘着剤層の表面とを重ねて貼り合せ、加圧ニップロールに通して圧着した。圧着後、23℃、50%RHの環境条件下で7日間養生させ、光学フィルムサンプルとして、剥離フィルム/粘着剤層/偏光ベースフィルムの積層構造を有する偏光フィルムを作製した。
【0096】
[評価]
上記で作製した粘着剤組成物及び偏光フィルムを用い、下記の評価を行なった。評価結果は、下記表3に示す。
【0097】
(養生時間)
上記で得られた粘着剤組成物が養生に要する時間(養生時間)を以下のようにしてゲル分率を測定することで評価した。
粘着剤組成物をシリコーン系離型剤で表面処理した剥離フィルム上に塗布して、乾燥後の厚みが25μmとなるように粘着剤層を形成して粘着フィルムを得た。次に形成した粘着フィルムを23℃、50%RHの環境下に所定の時間保管した後、168時間経過後まで24時間毎にゲル分率を以下のようにしてそれぞれ測定した。所定の保管時間が経過した後のゲル分率と、168時間(7日間)経過後のゲル分率とを比較して、両者のゲル分率の差が3%以下となるのに要した保管時間を養生時間とした。表3には養生時間を日数で示した。また168時間経過後のゲル分率を併せて示した。
【0098】
ゲル分率は以下のようにして測定した。
1.精秤した250メッシュの金網(100mm×100mm)に粘着剤層を約0.25g貼付し、ゲル分が漏れないように包んで試料を作製した。その後、精密天秤にて質量を精確に測定した。
2.得られた試料を酢酸エチル80mlに3日間浸漬した。
3.試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させた。放冷後に精密天秤で質量を精確に測定した。
4.ゲル分率を下式により算出した。
ゲル分率(質量%)=(Z−X)/(Y−X)×100
但し、Xは金網の質量(g)、Yは浸漬前の試料(粘着剤層を貼付た金網)の質量(g)、Zは酢酸エチルに浸漬して乾燥した後の試料の質量(g)である。
【0099】
(耐久性)
粘着剤組成物の調製後、3時間以内に上記のようにして光学フィルムサンプルを作製した。得られた光学フィルムサンプルについて、吸収軸に対して長辺が45°になるように140mm×260mmの長方形状にカットし、0.7mm厚みのコーニング社製無アルカリガラス板「イーグルXG」の片面にラミネータを用いて貼付して試験片を作製した。得られた試験片をオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2(490kPa)、20分)した後、23℃、50%RHの条件で24時間放置した。その後、80℃の耐熱条件、又は60℃、90%RHの耐湿熱条件で168時間放置した後、目視で観察し、発泡、又は剥がれの状態を確認し、下記評価基準で評価した。
またエスペック社製:冷熱衝撃装置TSA−301L−Wを用いて−30℃で0.5時間放置した後、70℃で0.5時間放置するというヒートショックサイクルを150サイクル行うというヒートショック(H/S)条件で処理した後、同様にして評価した。
【0100】
−評価基準−
AA:発泡、剥がれ又は浮きが全く認められなかった。
A:発泡はほとんど認められなかった。更に2辺において外周部から内側に0.5mm以上の位置に剥がれが認められなかった。
B:発泡はほとんど認められなかった。更に2辺において外周部から内側に0.8mm以上の位置に剥がれが認められなかった。
C:発泡が顕著に認められた。又は2辺において外周部から内側に1.0mm以上の位置に剥がれが認められた。
【0101】
(光漏れ)
粘着剤組成物の調製後、3時間以内に上記のようにして光学フィルムサンプルを作製した。得られた光学フィルムサンプルについて、140mm×260mmの長方形状にカットし、VA方式の液晶パネルの両面に、2枚の光学フィルムサンプルの偏光軸が互い直交するように、ラミネータを用いて貼付して試験片を作製した。得られた試験片をオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2(490kPa)、20分)した後、23℃、50%RHの条件で24時間放置した。その後、70℃の条件で168時間放置した。23℃、50%RHの条件下、均一光源を使用して、光漏れの状態を目視で観察し、下記評価基準で評価した。
【0102】
−評価基準−
A:光漏れがほとんど認められなかった。
B:光漏れが僅かに認められた。
C:光漏れが顕著に認められた。
【0103】
(表面抵抗値)
上記で得られた光学フィルムサンプルの粘着剤層の表面抵抗値を株式会社アドバンテスト製:R12704 RESISTIVITY CHAMBERを用いて、23℃、50%RH、印加電圧100Vの条件下で測定し、下記評価基準に従って評価した。表面抵抗値が小さいほど静電気の発生抑制効果に優れる。評価基準のB以上が実用上問題がないレベルである。
【0104】
−評価基準−
AA:表面抵抗値が5.0×10
10Ω/□未満であった。
A:表面抵抗値が5.0×10
10Ω/□以上5.0×10
11Ω/□未満であった。
B:表面抵抗値が5.0×10
11Ω/□以上1.0×10
12Ω/□未満であった。
C:表面抵抗値が1.0×10
12Ω/□以上であった。
【0105】
(リワーク性)
上記で得られた光学フィルムサンプルについて、吸収軸に対して長辺が180°になるように120mm×25mmの長方形状にカットし、0.7mm厚みのコーニング社製無アルカリガラス板「イーグルXG」の片面にラミネータを用いて貼付して試験片を作製した。得られた試験片をオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2(490kPa)、20分)した後、23℃、50%RHの条件で24時間放置した。その後、50℃の環境下に48時間放置したあと、23℃、50%RHの環境下に1時間放置した。この試験片を23℃、50%RHの条件下、180°剥離における粘着力を剥離速度300mm/minにて測定してリワーク性を評価した。
【0106】
−評価基準−
A:粘着力が10N/25mm未満であった。
B:粘着力が10N/25mm以上であった。
【0107】
<実施例2〜18、比較例1〜7>
実施例1において、粘着剤組成物の組成を下記表2〜表4に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を作製し、これを用いて光学フィルムサンプルをそれぞれ作製した。
得られた粘着剤組成物及び光学フィルムサンプルについて、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2〜表4に示す。
【0108】
なお、表中の略号は以下に示す通りであり、「−」未評価であることを示す。表に記載の配合量は固形分換算の値である。
(架橋剤)
コロネート2037:日本ポリウレタン工業株式会社製、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体
コロネート2030:日本ポリウレタン工業株式会社製、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体
デスモジュールIL1451CN:住化バイエルウレタン株式会社製、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体
デスモジュールILBA:住化バイエルウレタン株式会社製、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体
コロネートL:日本ポリウレタン工業株式会社製、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
(帯電防止剤)
MP−402:第一工業製薬株式会社製、トリメチルドデシルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、融点47℃
AS−804:第一工業製薬株式会社製、1−オクチル−4−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、融点25℃以下
N−ドデシル:第一工業製薬株式会社製、1−ドデシル−4−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、融点32℃
LiTFS:森田化学工業株式会社製、リチウムトリフルオロメタンスルホン酸、融点423℃
(シランカップリング剤)
X−41−1810:信越化学工業株式会社製、チオール基を有するオリゴマー型シランカップリング剤
KBM−803:信越化学工業株式会社製、チオール基を有するシランカップリング剤
KBM−403:信越化学工業株式会社製、エポキシ基を有するシランカップリング剤
(硬化促進剤)
1B2MZ:四国化成工業株式会社製、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
表2〜表4から、本発明の偏光板用粘着剤組成物においては、従来よりも養生時間を短縮することができることが分かる。またこれを用いて作製した光学フィルムサンプルは耐久性に優れ、静電気の発生を効果的に抑制できることが分かる。
【0113】
[液晶表示装置の評価]
実施例1〜18で作製した粘着剤組成物を用いて作製した光学フィルムサンプルを組み込んで液晶表示装置をそれぞれ作製した。得られた液晶表示装置の光学特性を目視で確認したところ、表示ムラがなく、光学的に優れた性能を示すことが確認できた。
【0114】
[加工性の評価]
実施例1〜18で作製した粘着剤組成物を用いて作製した光学フィルムサンプルについて、23℃、50%RHの環境下で24時間保管した。保管後の光学フィルムサンプルについて液晶表示装置用に打ち抜き加工を行ったところ、打ち抜き刃への粘着剤組成物の顕著な付着は認められず、更に打ち抜き加工した光学フィルムサンプルに割れ等の外観異常は認められなかった。