(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940459
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】三次元表示においてオブジェクトの深さ値を調整するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H04N 13/00 20060101AFI20160616BHJP
H04N 13/04 20060101ALI20160616BHJP
H04N 13/02 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
H04N13/00 220
H04N13/04 040
H04N13/04 060
H04N13/04 090
H04N13/02 600
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-548535(P2012-548535)
(86)(22)【出願日】2011年1月13日
(65)【公表番号】特表2013-517657(P2013-517657A)
(43)【公表日】2013年5月16日
(86)【国際出願番号】IL2011000048
(87)【国際公開番号】WO2011086560
(87)【国際公開日】20110721
【審査請求日】2013年12月17日
(31)【優先権主張番号】61/294,843
(32)【優先日】2010年1月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509239082
【氏名又は名称】ヒューマンアイズ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ゾメット, アッサフ
【審査官】
佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−248213(JP,A)
【文献】
特開2005−165614(JP,A)
【文献】
特開2003−209858(JP,A)
【文献】
特開2003−348621(JP,A)
【文献】
特開2005−065162(JP,A)
【文献】
特表2007−508573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 13/00
H04N 13/02
H04N 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーンにおける複数のオブジェクトの複数の深さ値を設定する方法であって、以下のことを含む方法:
前記複数のオブジェクトの間に複数の深さ差を規定する複数の深さ値のうちの一つを各々が有する複数のオブジェクトを含むシーンを描く画像データセットを準備すること;
少なくとも一つのコンピューティングプラットフォームを、以下のことのために使用すること:
複数のマーカを使用者に表示すること、但し、前記複数のマーカの各々一つは、前記複数のオブジェクトのうちの一つを示す、
使用者入力を同定すること、但し、前記使用者入力では、前記複数のマーカのうちの一つは、前記使用者によって移動される、及び
前記複数の深さ差を維持しながら、前記複数のマーカを同時に移動させて、前記複数のオブジェクトの前記複数の深さ値を前記使用者入力に従って同時に調整すること、但し前記調整は深さ範囲によって制限される;並びに
前記複数のオブジェクトが前記複数の調整された深さ値を有するように前記シーンを描く出力画像の生成を指示すること。
【請求項2】
前記深さ範囲は、画像分離マスクの光学特性に従って選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記深さ範囲は、画像分離マスクを介して前記シーンを見る観察者の視覚制限に従って選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記画像分離マスクは立体表示画面である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記出力画像が前記画像分離マスクを介して見ることができる物品を生成することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記調整は、前記複数の深さ差を維持しながら前記シーンの収束面を調整することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記同定は、以下のことを含む、請求項1に記載の方法:
前記深さ範囲によって規定される境界を有するスケールに沿って使用者が前記複数のマーカを同時に移動させることを可能にすること;及び
前記移動に従って前記複数の深さ値を調整すること。
【請求項8】
ネットワークを介して遠隔クライアントから二次元(2D)画像を受けとり、前記2D画像を変換して、各前記オブジェクトが別個に調整可能な深さを有する前記画像データセットを生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記指示は、立体表示上で前記出力画像をレンダリングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記指示は、前記出力画像を印刷することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記画像分離マスクは、視差バリア、レンチキュラーレンズアレー、マルチ画像表示スクリーン、立体表示ディスプレイ、及び積分写真(IP)のためのレンズのアレーからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のマーカは、前記複数のオブジェクトの複数のサムネールである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
シーンの複数のオブジェクトの複数の深さ値を調整するためにユーザインターフェースを与える方法であって、以下のことを含む方法:
前記複数のオブジェクトの間に複数の深さ差を規定する複数の深さ値のうちの一つを各々が有する複数のオブジェクトを含むシーンを描く画像データセットを表示すること;
深さ範囲を規定するスケールを表示すること;
前記スケール上の複数のマーカを使用者に表示すること、但し、前記複数のマーカの各々一つは、前記複数のオブジェクトのうちの一つを示す;
使用者入力を同定すること、但し、前記使用者入力では、前記複数のマーカのうちの一つは、前記使用者によって移動される;
前記複数の深さ差を維持しながら、前記複数のマーカを同時に移動させて、前記複数の深さ値を前記使用者入力に従って同時に調整すること、但し前記調整は前記深さ範囲によって制限される;及び
前記複数のオブジェクトの深さが前記複数の調整された深さ値に従って設定されるように前記シーンを描く出力画像を生成すること。
【請求項14】
前記深さ範囲は、画像分離マスクの光学特性に従って選択され、前記出力画像は、前記画像分離マスクを介して見ることができる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記移動は、複数のオブジェクトマーカを同時に移動することを含み、各前記オブジェクトマーカは、前記深さ範囲における前記複数の深さ値のうちの一つをマークする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のマーカは、前記複数のオブジェクトの複数のサムネールである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
コンピュータ可読プログラムコードを含むコンピュータプログラムであって、前記コンピュータ可読プログラムコードは、シーンにおける複数のオブジェクトの複数の深さ値を設定する方法を実施するために実行されるように適応されたものであり、前記方法は、以下のことを含む、コンピュータプログラム:
前記複数のオブジェクトの間に複数の深さ差を規定する複数の深さ値のうちの一つを各々が有する複数のオブジェクトを含むシーンを描く画像データセットを準備すること;
複数のマーカを使用者に表示すること、但し、前記複数のマーカの各々一つは、前記複数のオブジェクトのうちの一つを示す;
使用者入力を同定すること、但し、前記使用者入力では、前記複数のマーカのうちの一つは、前記使用者によって移動される;
前記複数の深さ差を維持しながら、前記複数のマーカを同時に移動させて、前記複数のオブジェクトの前記複数の深さ値を前記使用者入力に従って同時に調整すること、但し前記調整は深さ範囲によって制限される;及び
前記複数のオブジェクトが前記複数の調整された深さ値を有するように前記シーンを描く出力画像の生成を指示すること。
【請求項18】
前記複数のマーカは、前記複数のオブジェクトの複数のサムネールである、請求項17に記載のコンピュータプログラム。
【請求項19】
シーンにおける複数のオブジェクトの複数の深さ値を設定する装置であって、以下のものを含む装置:
前記複数のオブジェクトの間に複数の深さ差を規定する複数の深さ値のうちの一つを各々が有する複数のオブジェクトを含むシーンを描く画像データセットを受けとる受けとりユニット;
使用者によって調整可能な複数のマーカを含み、前記使用者による前記複数のマーカのうちの一つの操作によって使用者が前記複数の深さ差を維持しながら、前記複数のマーカを同時に移動させて、前記複数の深さ値を同時に調整することを可能にするユーザインターフェースモジュール、但し前記調整は前記深さ範囲によって制限される;及び
前記複数のオブジェクトが前記複数の調整された深さ値を有するように前記シーンを描く出力画像の生成を指示する出力モジュール。
【請求項20】
前記複数のマーカは、前記複数のオブジェクトの複数のサムネールである、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2010年1月14日に出願した米国仮特許出願第61/294843号の優先権を主張する。上記文献の内容は、本明細書に完全に述べられているように参考として組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、その一部の実施形態では、三次元(3D)画像形成印刷に関し、さらに詳しくは、オートステレオスコピー(autostereoscopy)における三次元画像形成に関するが、それに限定されない。
【背景技術】
【0003】
オートステレオスコピーは、観察者の一部に特別なかぶり物又は眼鏡を使用しないで立体画像を表示する方法である。オートステレオスコピックディスプレイの例には、視差バリア、レンチキュラー、ボリュメトリック、エレクトロホログラフィック、及びライトフィールドディスプレイが挙げられる。オートステレオスコピーは、深さの幻覚を有する画像を生成するために使用されることができる。しかしながら、深さの幻覚を生成するために固定された光学素子を有する要素は多数の制限を持つ。例えば、レンチキュラーレンズアレー又は視差バリアが使用されるとき、物理的制限は、一定の範囲を越えると被写界深度の表示を妨げる。例えば、動きが表示され、レンチキュラーレンズが観察時に最もクリアな動画を与えるために水平に向けられるように配置されるとき、被写界深度を与えることができない。たとえ三次元効果が発生されるときであっても、可能な被写界深度は、レンチキュラーレンズの所望の小さいピッチ(即ち、幅)のようなレンズシート自体の物理的特性によって制限され、従ってそれらは使用者の目で見ることができない。これは、次に、特に使用者ができるだけ多くの画像を見たいという逆の要求を心に留めていると、被写界深度を得るための画像線間の可能な間隔を制限する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一部の実施形態によれば、シーンにおける複数のオブジェクトの複数の深さ値を設定する方法が提供される。該方法は、複数の深さ差を互いの間に有する複数の深さ値を有する複数のオブジェクトを含むシーンを描く画像データセットを準備すること;深さ範囲を選択すること;前記複数の深さ差を維持しながら前記複数の深さ値を同時に調整すること、但し前記調整は前記深さ範囲によって制限される;及び前記複数のオブジェクトが前記複数の調整された深さ値を有するように前記シーンを描く出力画像の生成を指示することを含む。
【0005】
任意選択的に、前記選択は、画像分離マスクの光学特性に従って前記深さ範囲を選択することを含む。
【0006】
任意選択的に、前記選択は、画像分離マスクを介して前記シーンを見る観察者の視覚制限に従って前記深さ範囲を選択することを含む。
【0007】
より任意選択的に、前記画像分離マスクは立体表示である。
【0008】
より任意選択的に、該方法は、前記出力画像が前記画像分離マスクを介して見ることができる物品を生成することをさらに含む。
【0009】
任意選択的に、前記調整は、前記複数の深さ差を維持しながら前記シーンの収束面を調整することを含む。
【0010】
任意選択的に、前記調整は、各々が前記深さ範囲において別の前記深さ値を示す複数のマーカを表示すること;使用者がスケールに沿って前記複数のマーカを同時に移動することを可能にすること;及び前記移動に従って前記複数の深さ値を調整することを含む。
【0011】
任意選択的に、該方法は、ネットワークを介して遠隔クライアントから二次元(2D)画像を受けとり、前記2D画像を変換して、各前記オブジェクトが別個に調整可能な深さを有する前記画像データセットを生成することをさらに含む。
【0012】
任意選択的に、前記指示は、立体表示上で前記出力画像をレンダリングすることを含む。
【0013】
任意選択的に、前記指示は、前記出力画像を印刷することを含む。
【0014】
より任意選択的に、前記画像分離マスクは、視差バリア、レンチキュラーレンズアレー、マルチ画像表示スクリーン、立体表示ディスプレイ、及び積分写真(IP)のためのレンズのアレーからなる群から選択される。
【0015】
本発明の一部の実施形態によれば、シーンの複数のオブジェクトの複数の深さ値を調整するためにユーザインターフェースを与える方法が提供される。該方法は、複数の深さ差を互いの間に有する複数の深さ値を有する複数のオブジェクトを含むシーンを描く画像データセットを表示すること;深さ範囲を規定するスケールを表示すること;使用者が前記スケールに対して単一のマーカを移動することによって前記複数の深さ値を同時に調整することを可能にすること;及び前記複数のオブジェクトの深さが前記複数の調整された深さ値に従って設定されるように前記シーンを描く出力画像を生成することを含む。
【0016】
任意選択的に、前記深さ範囲は、画像分離マスクの光学特性に従って選択され、前記出力画像は、前記画像分離マスクを介して見ることができる。
【0017】
任意選択的に、前記移動は、複数のオブジェクトマーカを同時に移動することを含み、各前記オブジェクトマーカは、前記深さ範囲における前記複数の深さ値の別のものをマークする。
【0018】
本発明の一部の実施形態によれば、コンピュータ可読プログラムコードを内部に具現化された少なくとも一つのコンピュータ使用可能な媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータ可読プログラムコードは、シーンにおける複数のオブジェクトの複数の深さ値を設定する方法を実施するために実行されるように適応されたものが提供される。該方法は、複数の深さ差を互いの間に有する複数の深さ値を有する複数のオブジェクトを含むシーンを描く画像データセットを準備すること;深さ範囲を選択すること;前記複数の深さ差を維持しながら前記複数の深さ値を同時に調整すること、但し前記調整は前記深さ範囲によって制限される;及び前記複数のオブジェクトが前記複数の調整された深さ値を有するように前記シーンを描く出力画像の生成を指示することを含む。
【0019】
本発明の一部の実施形態によれば、シーンにおける複数のオブジェクトの複数の深さ値を設定する装置が提供される。該装置は、前記複数の深さを互いの間に有する複数の深さ値を有する複数のオブジェクトを含むシーンを描く画像データセットを受けとる受けとりユニット;使用者が前記複数の深さ差を維持しながら前記複数の深さ値を同時に調整することを可能にするユーザインターフェースモジュール;及び前記複数のオブジェクトが前記複数の調整された深さ値を有するように前記シーンを描く出力画像の生成を指示する出力モジュールを含む。
【0020】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0021】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の装置、方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。
【0022】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピュータが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。任意選択的に、データプロセッサは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一部の実施形態による、画像分離マスクを介して見ることができる複数のオブジェクトの複数の深さ値を設定する方法のフローチャートである。
【0025】
【
図2】
図2は、本発明の一部の実施形態による、受けとられた画像データセットを与えるためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)の概略図である。
【0026】
【
図3】
図3は、本発明の一部の実施形態による、選択された層マーカのインディケータが拡大されている、
図1に描かれたGUIの概略図である。
【0027】
【
図4】
図4は、本発明の一部の実施形態による、立体表示装置の概略図である。
【0028】
【
図5】
図5は、本発明の一部の実施形態による、印刷システムの概略図である。
【0029】
【
図6】
図6は、本発明の一部の実施形態による、画像分離マスクを介して見ることができる複数のオブジェクトの深さ値を調整するためにユーザインターフェースを与える方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、その一部の実施形態では、三次元画像形成印刷に関し、さらに詳しくは、オートステレオスコピーにおける三次元画像形成に関するが、それに限定されない。
【0031】
本発明の一部の実施形態によれば、画像分離マスクを介して見ることができるシーンにおける複数のオブジェクトの複数の深さ値を設定する方法及びシステムが提供される。該方法は、人間の観察者の視覚制限及び/又は画像分離マスクの光学特性に従って設定された深さ範囲において同時に複数の深さ値を調整することに基づく。まず、複数の深さ差を互いの間に有する複数の深さ値を有する複数のオブジェクトを含むシーンを描く画像データセットが受けとられる。さらに、深さ範囲が選択される。次いで深さ差が維持されながら複数の深さ値が同時に調整される。調整は深さ範囲によって制限される。これは、オブジェクトが調整された深さ値で描かれるようにシーンを描く出力画像の生成を指示することを可能にする。
【0032】
本発明の一部の実施形態によれば、画像分離マスクを介して見ることができるシーンの複数のオブジェクトの複数の深さ値を調整するためのユーザインターフェース(例えばグラフィカルユーザインターフェース)を与える装置及び方法が提供される。該方法は、複数の深さ差を互いの間に有する複数の深さ値を有する複数のオブジェクトを描くシーンを描く画像データセットを表示することに基づく。さらに、画像分離マスクの光学特性に従って及び/又は観察者の視覚特性に従って設定された深さ範囲を規定するスケールが使用者に表示される。これは、使用者がスケールに対して単一のマーカを移動することによって深さ値を同時に調整することを可能にする。該装置及び方法は、複数のオブジェクトの深さが調整された深さ値に従って設定されるようにシーンを描く出力画像を生成することを可能にする。
【0033】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0034】
図1を参照されたい。
図1は、本発明の一部の実施形態による、画像分離マスクを介して見ることができる複数のオブジェクトの複数の深さ値を設定する方法100のフローチャートである。本明細書に使用される画像分離マスクは、例えば参考として本明細書に組み込まれる1996年5月23日に出願された米国特許第5800907号に記載されるように、視差バリアのようなバリア、レンチキュラーレンズアレー、マルチ画像表示スクリーン、積分写真(IP)のためのレンズのアレー、及び多次元画像を表示するためのあらゆるディスプレイを意味する。本明細書に使用される深さ値は、シーンにおける他のオブジェクトに対して又は収束面のような基準面(ゼロ面としても知られる)に対してシーンにおける一つ以上のオブジェクトの所望のエミュレートされた深さを示す値である。深さ値は、平坦なオブジェクトの深さ(その可視領域の全てに沿ったその深さを示す)及び/又は平坦でないオブジェクトの深さに従って設定される累積値(その可視領域に沿った様々な深さの平均、その可視領域に沿った様々な深さの中央値などを示す)であってもよい。該方法は、パーソナルコンピュータ、サーバ、ラップトップ、シンクライアント、タブレット、写真屋におけるキオスク、携帯端末(PDA)、又は他のコンピューティングユニットのようなクライアント端末で、及び/又はインターネットのようなネットワークを介して使用者にアクセス可能なネットワークノード又はサーバのような遠隔端末で実施されてもよい。
【0035】
まず、101で示されているように、複数のオブジェクトを含むシーンを描く画像データセットが与えられる。画像データセットは、任意選択的には二次元(2D)画像及び/又は各オブジェクトが異なる層で表わされる多層化画像である。任意選択的に、2D画像は、異なるオブジェクトを手動的に又は自動的に識別し、応じて異なる層を生成することによって多層化画像を形成するように処理される。例えば、マーキングツールは、受けとられた2D画像からオブジェクトを切り取るために使用者によって使用されてもよい。各切り取られたオブジェクトは、一つの層中の単一のオブジェクトに変換される。簡潔のため、層及びオブジェクトは本明細書では交換可能に言及される。2D画像は、例えば該方法がキーボード、ポインティングデバイス及びディスプレイのようなマンマシンインターフェース(MMI)及び/又はタッチスクリーンを含む端末上で実施されるとき、局所的に選択及び/又は捕獲されてもよい。2D画像は、例えば該方法がインターネットのようなネットワークに接続されるウェブサーバのような中央ネットワークノード上で実施されるとき、ネットワークを介して遠隔ネットワークノードから受けとられてもよい。任意選択的に、マーキングツールは、使用者が例えば所定の層に所定の深さマップを加えることによって、平坦な深さ及び/又は平坦でない深さを層に割り当てることを可能にする。任意選択的に、マーキングツールは、使用者が例えば深さ軸上に一つ以上のスケーリング変換を適用することによって、層の位置をスケーリングすることを可能にする。追加的に又は代替的に、マーキングツールは、使用者が例えば軸のいずれかでシーンを回転するか及び/又はシーンをスケーリングするために(上下、左右、及び/又は出入)、合成物として層の一部又は全てに変換を適用することを可能にする。
【0036】
102で示されているように、深さ範囲が与えられ、例えば画像分離マスクの一つ以上の光学特性に従って、及び/又は一つ以上の人間の視野制限に従って選択される。レンチキュラーレンズアレー又は視差バリアのような画像分離マスクは、ある範囲を越えると被写界深度の表示を妨げる物理的制限を持つ。即ち、画像分離マスクの深さ範囲は、画像分離マスクのサイズ、各視界を明瞭に与えるための光学素子の能力などの特性によって影響される。深さ範囲はさらに、立体画像の対を正確に組み合わせるための人間の目の制限のような他の要因に依存する。画像分離マスクは、複数の視界を表示するオートステレオスコピックディスプレイであるので、画像分離マスクの光学素子によるこれらの視界の混合はさらに、画像分離マスクを介して表示されるシーンの潜在的な深さ範囲を制限する。
【0037】
図2を参照されたい。
図2は、本発明の一部の実施形態による、例えば符号201によって示される、受けとられた画像データセットを表示するためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)200の概略図である。上で概説したように、GUIは、デスクトップ、ラップトップ、又はタブレットのようなローカルクライアント端末上で、及び/又はウェブサーバのようなネットワークノード上で実施される。GUI200はスケール202を含み、それは、任意選択的に与えられた深さ範囲に適応される。スケール202は近位及び遠位点(縁)206,207を有し、それらは与えられた深さ範囲、例えば最小及び最大深さ値に従って規定される。このスケール202に対して、任意選択的にその上に、オブジェクトマーカとして本明細書で言及される層マーカが、例えば203によって示されるように表示される。各層マーカは、スケール202上の他の層マーカに対してその深さ値を示すようにスケール202上に位置される。任意選択的に、各層マーカ203は、例えば205で示されるようなサムネールのような層インディケータを含む。使用者は、例えばポインティングデバイスのポインター又はタッチスクリーンを使用することによって層マーカ又はそれぞれのインディケータのいずれかを選択することによって、層を選択し、例えばその深さを変化してもよい。任意選択的に、
図3の符合301によって示されるように、選択された層マーカのインディケータは選択により拡大される。追加的に又は代替的に、
図3の符号302によって示されるように、選択された層はハイライトされるか、又はそうでなければ選択によりシーン201において示される。任意選択的に、全ての層マーカ203は、中央層マーカ204に接続されるか、及び/又は中央層マーカ204に関連付けられる。中央層マーカ204は、スケール202の境界内で全ての層マーカを同時に制御するために使用されてもよい。GUI200は、任意選択的に、例えばスケール202上で、深さ範囲において収束面の深さを示す収束面深さインディケータ210を描く。本明細書で使用される収束面(キー面又はゼロ視差面としても知られる)は3D画像における層又は点であり、そこでは左右の目はともに同じ情報を受けとるので、深さを知覚することは全くない。
【0038】
GUI200は、使用者が、103で示されるように、スケール202によって規定される深さ範囲の境界内で、シーンにおけるオブジェクト及び/又は層の一つの各々の深さ値を同時にかつそれぞれ調整することを可能にする。例えば、使用者は、全ての層の深さ値を同時に調整するためにスケール202に沿って中央層マーカ204を移動してもよい。深さ値は、深さ値間の差を維持しながら同時に増加又は減少されてもよい。スケール202は与えられた深さ範囲に従って規定されるので、深さ値の調整は深さ範囲に限定される。かかる方法では、使用者は、深さ範囲における深さ値を調整することだけが可能であり、深さ範囲の外側を調整できない。別の例では、使用者は、層の間の深さ値間の距離を固定したままにしながら、スケール202、又は与えられた深さ範囲を示す他のインディケータを使用してもよい。
【0039】
追加的に又は代替的に、GUI200は、使用者が、例えばスケール202に沿って収束面深さインディケータ210を移動することによって、シーン201の収束面を同時にかつそれぞれ調整することを可能にする。任意選択的に、シーン201の収束面は、深さ値間の差(空間)を変えないままに保ちながら調整される。収束面の調整は、任意選択的に与えられた深さ範囲及びその深さ範囲における深さ値によって制限される。例えば、もし深さ値の一つ以上が深さ範囲の最大及び/又は最小縁に接近しているなら、収束面の調整は、深さ値のいずれかと最大及び/又は最小縁の間の最小距離に等しい幅を有する範囲に制限される。収束面の調整の制限は、使用者が層の深さ値を深さ範囲から逸脱するように変化させることを防止する。
【0040】
使用者が深さ値を調整した後、104で示されているように、深さ調整されたオブジェクトを有するシーンを描く出力画像の発生が指示される。任意選択的に、出力画像は、レンチキュラー画像形成物品に後で取り付けられるインターレースされた合成画像である。かかる方法では、方法100は、レンチキュラー画層形成物品に与えられるオブジェクトの深さ値を調整するために使用される。レンチキュラー画像形成物品は、任意選択的に従来公知のように、例えば国際特許出願No.WO2008/087632(それは参考として本明細書に組み入れられる)に記載されるように発生される。追加的に又は代替的に、出力画像は、立体表示ディスプレイとして使用される画像分離マスク上に投射及び/又はレンダリングされるために設定される。かかる実施形態では、出力画像は、深さ値の調整の前、中及び/又は後に投射及び/又はレンダリングされてもよい。
【0041】
例えば、
図4を参照されたい。
図4は、本発明の一部の実施形態による立体表示装置351の概略図である。立体表示装置351は、ユーザインターフェース352、処理ユニット353、及び立体表示ディスプレイ354を含む。処理ユニット353は、上記のように深さ範囲及び画像データセットを受けとるように設定される。ユーザインターフェース352は、例えば上記のようにGUIを使用者に与えるために設定される。処理ユニット353は、立体表示ディスプレイ354上に表示される画像データを作るためにオブジェクト及びそれらの深さを処理する。GUIは、層のための深さを設定するための手段を含むように構成され、任意選択的に例えば上記のように使用者が全ての層を移動するための手段を含むように構成される。別の例は
図5に描かれ、
図5は、本発明の一部の実施形態による、印刷システム501の概略図である。印刷システム501はユーザインターフェース352及び処理ユニット353を含み、それらは
図4に描かれる。しかしながら、印刷システム501は、立体表示ディスプレイ354の代わりに印刷モジュール502を含む。任意選択的に、503で示されているように、印刷システム501は、レンチキュラーレンズアレーのような画像分離マスクの平坦な側に印刷された画像を積層するための積層ユニットを含む。かかる実施形態では、深さ調整された画像が印刷され、任意選択的に、印刷モジュール502及び積層ユニット503によって積層される。
【0042】
図6を参照されたい。
図6は、本発明の一部の実施形態による、画像分離マスクを介して見ることができる複数のオブジェクトの深さ値を調整するために、
図2に描かれたユーザインターフェースのようなユーザインターフェースを与える方法のフローチャートである。まず、401で示されているように、2D画像及び/又は多層画像のような画像データセットが使用者に与えられる。画像データセットは、任意選択的に深さ調整可能である複数のオブジェクトを有するシーンを描く。
【0043】
例えば、各オブジェクトは、異なる層で表わされるか、及び/又は異なる深さ値を有する。さらに、402で示されるように、可能な深さ範囲は、例えば202で描かれるスケールのようなスケールで使用者に表示される。可能な深さ範囲は、画像分離マスクの光学特性に従って動的に任意選択的に設定される深さ範囲を規定する。403で示されるように、与えられるスケール及び画像データセットは、使用者がスケールに対して中央層マーカ204のような単一のマーカを移動することによって複数のオブジェクトの深さ値を同時にかつそれぞれ調整することを可能にする。404で示されるように、画像データセットでシーンを描く深さ調整された出力画像は、その中のオブジェクトの深さが調整された深さ値に従って設定されるように生成される。
【0044】
本出願から成熟する特許の存続期間の期間中には、多くの関連するシステムおよび方法が開発されることが予想され、ディスプレイ、ユーザインターフェース、およびコンピューティングユニットの用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を先験的に包含することが意図される。
【0045】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0046】
用語「含む(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。この用語は、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0047】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、特許請求される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0048】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0049】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0050】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0051】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0052】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0053】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0054】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0055】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。