(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂100重量部、及び、架橋ポリマー層と被覆ポリマー層の少なくとも2層を有するポリマー微粒子0.1重量部〜150重量部を含むポリマー微粒子分散樹脂組成物であって、
該樹脂中での該ポリマー微粒子の粒子分散率が50%以上であり、
該架橋ポリマー層が、単独重合体のTgが0℃以上となる1種類以上のモノマー50重量%〜99重量%、及び、単独重合体のTgが0℃未満となる1種類以上のモノマー50重量%〜1重量%から構成され、
前記被覆ポリマー層が、重合性、又は、硬化反応性をもつ官能基を含有する単量体から構成され、該官能基が、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、アミノ基、カルボン酸基、及び、カルボン酸無水物基からなる群から選ばれる1種以上であり、
該樹脂が、エポキシ基を含有するエポキシ樹脂であることを特徴とする
ポリマー微粒子分散樹脂組成物。
前記架橋ポリマー層が、少なくとも、単独重合体のTgが0℃以上となるモノマー60重量%以上から構成される架橋ポリマー層、及び、単独重合体のTgが0℃未満となるモノマー60重量%以上から構成される架橋ポリマー層を有するものである、請求項1に記載のポリマー微粒子分散樹脂組成物。
前記単独重合体のTgが0℃未満となる1種類以上のモノマーで構成される重合体が、ジエン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体、及びオルガノシロキサン系ゴム重合体からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載のポリマー微粒子分散樹脂組成物。
前記ポリマー微粒子が水媒体中に分散されてなる水媒体分散液を、20℃における水に対する溶解度が5質量%以上40質量%以下の有機溶媒と混合した後、さらに過剰の水と混合して、ポリマー微粒子緩凝集体を得る第1工程と、
凝集したポリマー微粒子を液相から分離・回収した後、再度有機溶媒と混合して、ポリマー微粒子分散液を得る第2工程と、
ポリマー微粒子分散液をさらに前記樹脂と混合した後、有機溶媒を留去する第3工程と、
を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー微粒子分散樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物は、樹脂100重量部、及び、架橋ポリマー層と被覆ポリマー層の少なくとも2層を有するポリマー微粒子0.1重量部〜150重量部を含むポリマー微粒子分散樹脂組成物であって、該樹脂中での該ポリマー微粒子の粒子分散率が50%以上であり、該架橋ポリマー層が、単独重合体のTgが0℃以上となる1種類以上のモノマー50重量%〜99重量%、及び、単独重合体のTgが0℃未満となる1種類以上のモノマー50重量%〜1重量%から構成されるポリマー微粒子分散樹脂組成物である。
【0025】
したがって本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物は、樹脂が硬化物や重合体である場合に、その樹脂の弾性率、耐熱性をほとんど、若しくは全く低下させずに靱性、耐衝撃性を付与すること可能であり、従って樹脂の弾性率、耐熱性をほとんど、若しくは全く低下する事無しに靱性、耐衝撃性を向上させることが可能なポリマー微粒子分散樹脂組成物となる。即ち、ポリマー微粒子分散樹脂組成物の樹脂が硬化物や重合体である場合に、その常温固体の樹脂中にポリマー微粒子が一次粒子分散していると、その樹脂の弾性率、耐熱性をほとんど、若しくは全く低下させずに靱性、耐衝撃性が改善されることを発見し、その発見に基づき為されたものである。
【0026】
(樹脂)
樹脂として使用可能なものとしては、硬化性若しくは重合性モノマー、硬化性若しくは重合性オリゴマー、並びに、熱可塑性ポリマーから成る群から選ばれる1種以上が好ましく例示される。
【0027】
前記樹脂が、硬化性モノマー、重合性モノマー、硬化性オリゴマー、重合性オリゴマー、及び、熱可塑性ポリマーからなる群から選ばれる1種以上であり、かつ、常温で液体である場合には、本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物をそのままで、或いは任意の重合性または硬化性樹脂にて適宜希釈の上で、硬化或いは重合することで、大幅に剛性や靭性が改良された硬化物が種々の形状で得られるので特に好ましい。
【0028】
前記モノマー又はオリゴマーとしては、重合性、又は、硬化反応性を有する官能基を含有する有機化合物が好ましく、前記重合性、又は、硬化反応性を有する官能基としては、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、炭素−炭素2重結合、アミノ基、イミド基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、環状エステル、環状アミド、ベンズオキサジン基、及びシアン酸エステル基から成る群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0029】
これらの中でも、エポキシ基、オキセタン基、フェノール性水酸基、環状エステル、シアン酸エステル基、ベンズオキサジン基、炭素−炭素2重結合を有する化合物が、重合性、硬化性樹脂としての利用価値の観点からより好ましく、特に好ましくは、エポキシ基を有するいわゆるエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノール化合物、水素添加ビスフェノール化合物、フェノールまたはo―クレゾールノボラック、芳香族アミン、多環脂肪族或いは芳香族化合物等の既知の基本骨格の化合物のグリシジルエーテル置換体、シクロヘキセンオキシド骨格を有する化合物等が利用可能であるが、代表的なものとして、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びその縮合物、いわゆるビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく例示される。
【0030】
前記熱可塑性ポリマーとしては、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が好ましく例示される。
【0031】
(ポリマー微粒子)
上述の如く、本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物は、樹脂100重量部に対して、ポリマー微粒子を0.1重量部〜150重量部含むことを要するが、前記靭性、耐衝撃性の付与の観点、それに関係する前記一次粒子分散性の観点、及びコストも観点から、1重量部〜100重量部とすることが好ましく、より好ましくは2重量部〜50重量である。
【0032】
上述の如く、本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物において、樹脂中でのポリマー微粒子の粒子分散率は50%以上である。本明細書においてポリマー微粒子が「一次粒子分散している」とは、粒子分散率が50%以上の状態を指し、ポリマー微粒子同士が、樹脂中で互いに凝集せず、それぞれ独立して分散していることを意味する。粒子分散率(%)は、後述の方法で下記の(数式1)で算出する。粒子分散率は、靱性向上の観点から、75%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。
【0033】
(数式1)
粒子分散率(%)=(1−(B
1/B
0))×100 (数式1)
ここで、測定サンプル中の単独のポリマー微粒子の個数、及び2個以上のポリマー微粒子が接触している塊の個数の和B
0と、2個以上のポリマー微粒子が接触している塊の個数B
1を求め、上記(数式1)の式により算出する。ここで、B
0が少なくとも10以上であるサンプル、及び観察領域を選択するものとする。
【0034】
ポリマー微粒子は、上述の如く、前記樹脂中に一次粒子分散していることにより靱性、耐衝撃性向上効果が奏されることから、前記樹脂に相溶しないこと、即ち、架橋ポリマー層を含むことを要する。
【0035】
また、ポリマー微粒子は、靱性、耐衝撃性付与の観点から、その体積平均粒子径が10〜1000nmであることが好ましく、10nm以上500nm以下であることがより好ましく、10nm以上300nm以下であることがさらに好ましい。なお、このようなポリマー微粒子の体積平均粒子径は、マイクロトラックUPA150(日機装株式会社製)を用いて求めることができる。
【0036】
ポリマー微粒子は、架橋ポリマー層を含むことを要するが、上述したようにそのことにより上記樹脂に相溶することなく一次粒子分散している。架橋ポリマー層はポリマー微粒子の主たる構成要素であり、靭性、耐衝撃性向上効果の観点から、その比率は、ポリマー微粒子全体の40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましい。また、95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましい。また、靱性、耐衝撃性向上の観点から、前記ポリマー微粒子1個の内部に1個または2個以上の架橋ポリマー層を含むことが好ましい。
【0037】
また、ポリマー微粒子は、樹脂への分散性を高める観点から、その最も外側に被覆ポリマー層を、さらに有する。このような内側の架橋ポリマー層、及び最も外側の被覆ポリマー層からなる構造は、コア/シェル構造と呼称されるので、以下、架橋ポリマー層をコア層、被覆ポリマー層をシェル層とも呼称することがある。このような被覆ポリマー層は、靱性、耐衝撃性向上効果を十分発揮しつつ、分散性を高める観点から、ポリマー微粒子全体の50重量%以下であることが好ましく、45重量%以下であることがより好ましい。また、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましい。また、靱性、耐衝撃性向上の観点から、被覆ポリマー層は、前記ポリマー微粒子の最も外側に、平均厚み20nm以下で存在することが好ましく、分散性向上の観点から、平均厚みを2nm〜10nmとすることがより好ましい。
【0038】
(架橋ポリマー層)
架橋ポリマー層は、単独重合体のTgが0℃以上となるモノマー1種類以上、及び、単独重合体のTgが0℃未満となるモノマー1種類以上から構成される架橋ポリマーからなり、かつ、該架橋ポリマーは、単独重合体のTgが0℃以上となるモノマー50重量%〜99重量%と、単独重合体のTgが0℃未満となるモノマー50重量%〜1重量%とから構成されるものであれば特に限定されない。弾性率をほとんど、若しくは全く低下することなく靭性、耐衝撃性を向上させる観点より、単独重合体のTgが0℃以上となるモノマー60重量%〜99重量%と、単独重合体のTgが0℃未満となるモノマー40重量%〜1重量%とから構成されることが好ましく、単独重合体のTgが0℃以上となるモノマー65重量%〜99重量%と、単独重合体のTgが0℃未満となるモノマー35重量%〜1重量%とから構成されることがより好ましい。
なお、単独重合体のTgは、例えば、J.Brandrup著の「ポリマーハンドブック第4版(POLYMER HANDBOOK Fourth Edition)」等の文献やカタログにより確認することができる。
【0039】
また、前記架橋ポリマー層が、少なくとも、単独重合体のTgが0℃以上となるモノマー60重量%以上から構成される架橋ポリマー層、及び、単独重合体のTgが0℃未満となるモノマー60重量%以上から構成される架橋ポリマー層を有することが、耐衝撃性の向上の観点から好ましい。なお、単独重合体のTgが0℃以上となるモノマー60重量%以上から構成される架橋ポリマー層が架橋ポリマー層の内側、単独重合体のTgが0℃未満となるモノマー60重量%以上から構成される架橋ポリマー層が架橋ポリマー層の外側であることが、弾性率、耐衝撃性のバランスの観点から特に好ましい。この場合、内側の層は、単独重合体のTgが0℃以上となるモノマー80重量%以上から構成されることがより好ましく、90重量%以上から構成されることがさらに好ましい。また、外側の層は、単独重合体のTgが0℃未満となるモノマー80重量%以上から構成されることがより好ましく、90重量%以上から構成されることがさらに好ましい。
【0040】
前記架橋ポリマーは、ゲル含量が70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。なお、本明細書でいうゲル含量とは、凝固、乾燥により得られたクラム0.5gをトルエン100gに浸漬し、23℃で24時間静置した後に不溶分と可溶分を分別したときの、不溶分と可溶分の合計量に対する不溶分の比率を意味する。
【0041】
(単独重合体のTgが0℃以上となるモノマー)
前記単独重合体のTgが0℃以上となるモノマーは、以下のモノマーの一つ以上を含有するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、スチレン、2−ビニルナフタレン等の無置換ビニル芳香族化合物類;α―メチルスチレン等のビニル置換芳香族化合物類;3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6―トリメチルスチレン等の環アルキル化ビニル芳香族化合物類;4−メトキシスチレン、4−エトキシスチレン等の環アルコキシル化ビニル芳香族化合物類;2−クロロスチレン、3―クロロスチレン等の環ハロゲン化ビニル芳香族化合物類;4−アセトキシスチレン等の環エステル置換ビニル芳香族化合物類;4−ヒトロキシスチレン等の環ヒドロキシル化ビニル芳香族化合物類;ビニルベンゾエート、ビニルシクロヘキサノエート等のビニルエステル類;塩化ビニル等のビニルハロゲン化物類;アセナフタレン、インデン等の芳香族モノマー類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート等のアルキルメタクリレート類;フェニルメタクリレート等の芳香族メタクリレート;イソボルニルメタクリレート、トリメチルシリルメタクリレート等のメタクリレート類;メタクリロニトリル等のメタクリル酸誘導体を含むメタクリルモノマー;イソボルニルアクリレート、tert−ブチルアクリレート等のある種のアクリル酸エステル;アクリロニトリル等のアクリル酸誘導体を含むアクリルモノマーを挙げることができる。
【0042】
なお、単独重合体のTgは、剛性低下抑制の観点より、20℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが特に好ましい。
【0043】
(単独重合体のTgが0℃未満となるモノマー)
単独重合体のTgが0℃未満となるモノマーとして特に限定されないが、ジエン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体、オルガノシロキサン系ゴム重合体、オレフィン化合物を重合したポリオレフィン系ゴム類、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル類、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリエーテル類を構成するモノマーが例示される。
【0044】
特に水系における架橋ポリマー分散体を得やすいという観点から、ジエン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体、及びオルガノシロキサン系ゴム重合体を構成するモノマーがより好ましく、水系における重合の容易さの観点から、特に好ましくは、アクリル系ゴム重合体を構成するモノマーである。
【0045】
なお、単独重合体のTgは、耐衝撃性向上の観点より、−10℃未満であることが好ましく、−30℃未満であることがより好ましく、−50℃未満であることが特に好ましい。
【0046】
(ジエン系ゴム重合体)
前記ジエン系ゴム重合体は、ジエン系モノマーを主成分として重合される重合体であり、後述するその他のビニルモノマーを適宜混合して重合した共重合体とすることができる。
【0047】
前記ジエン系モノマー(共役ジエン系モノマー)としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。これらのジエン系モノマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に好ましくは1,3−ブタジエンである。
【0048】
(アクリル系ゴム重合体)
前記アクリル系ゴム重合体は、アクリルモノマーを主成分として重合される重合体であり、適宜その他の(メタ)アクリルモノマーや、前記その他のビニルモノマーを混合して重合した共重合体とすることができる。
【0049】
前記アクリルモノマーとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、及び2−フェノキシエチルアクリレートから選ばれる1種以上が、ゴム弾性が大きいことから、耐衝撃性向上効果に優れるので好ましいが、特に好ましくは、ブチルアクリレート(BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)である。
【0050】
前記その他の(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアルキル(メタ)アクリレート等のグリシジル(メタ)アクリレート類;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;アリル(メタ)アクリレート、アリルアルキル(メタ)アクリレート等のアリルアルキル(メタ)アクリレート類;モノエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレート、及び/又は、メタクリレートを意味する。
【0052】
上記ジエン系ゴム重合体、及びアクリル系ゴム重合体は、上記のモノマー(第1モノマー)とビニル系モノマー(第2モノマー)とのコポリマーであってもよい。ビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン等のビニルアレーン類;アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン類;塩化ビニル、臭化ビニル、クロロプレン等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のアルケン類;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等の多官能性モノマー等が挙げられる。これらのビニル系モノマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に好ましくはスチレンである。
【0053】
(オルガノシロキサン系ゴム重合体)
前記オルガノシロキサン系ゴム重合体としては、例えばジメチルシリルオキシ、ジエチルシリルオキシ、メチルフェニルシリルオキシ、ジフェニルシリルオキシ等の、アルキル或いはアリール2置換シリルオキシ単位から構成されるポリシロキサン系重合体が好ましく例示され、具体的には、1,3,5,7−オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)に代表される環状シロキサンや、好ましくは重量平均分子量が500〜20,000以下の直鎖状、又は分岐状のオルガノシロキサンオリゴマーを主成分とするオルガノシロキサン系ゴム重合体形成用単量体を、酸や、アルカリ、塩、フッ素化合物などの触媒を用いて、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の方法で重合したポリオルガノシロキサンの粒子を好ましく例示することができる。
【0054】
また、前記オルガノシロキサン系ゴム重合体形成用単量体100重量%中には、架橋構造を形成する観点から、メチルトリエトキシシラン、テトラプロピルオキシシランなどの3官能以上のアルコキシシラン、及びメチルオルソシリケートなどの3官能以上のシランの縮合体からなる群から選ばれる1種以上が、0重量%〜20重量%含まれていることが好ましい。
【0055】
さらに、前記オルガノシロキサン系ゴム重合体形成用単量体100重量%中には、アリル置換基又はビニル基をこのオルガノシロキサン系ゴム重合体に導入することで、被覆ポリマー層による被覆を容易にする観点から、アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルフェニルジメトキシメチルシランなどの2官能の加水分解性基、及びビニル基を含有するシラン化合物であるグラフト交叉剤が、0重量%〜50重量%含まれていることが好ましい。
【0056】
各種重合体に架橋構造を導入する方法としては、特に限定されるものではなく、一般的に用いられる手法を採用することができる。例えば、モノマーを重合して上述のスチレン等の重合物や、ジエン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体等を調製する際に、その主成分となるスチレンモノマーや、ジエン系モノマー、アクリルモノマー等に、後述する多官能性モノマーやメルカプト基含有化合物(メルカプトプロピルジメトキシメチルシランなど)等の架橋性モノマーを添加し、次いで重合する方法等が挙げられる。また、オルガノシロキサン系ゴム重合体に架橋構造を導入する方法としては、重合時に多官能性のアルコキシシラン化合物を一部併用する方法や、ビニル反応性基、メルカプト基等の反応性基をポリシロキサン系ポリマーに導入し、その後ビニル重合性のモノマーあるいは有機過酸化物等を添加してラジカル反応させる方法、あるいは、ポリシロキサン系ポリマーに多官能ビニル化合物やメルカプト基含有化合物等の架橋性モノマーを添加し、次いで重合する方法等が挙げられる。
【0057】
(多官能性モノマー)
前記多官能性モノマーとしては、ブタジエンは含まれず、アリル(メタ)アクリレート、アリルアルキル(メタ)アクリレート等のアリルアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート類;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、グリシジルジアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。特に好ましくはアリルメタアクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン(DVB)である。
【0058】
中でも、前記架橋ポリマー層に好ましいのは、入手性、重合の容易さ、中間ポリマー層(コア層を形成する架橋ポリマー層のうち最外層、あるいは、コア層が単独重合体のTgが0℃以上となるモノマー60重量%以上から構成される架橋ポリマー層、及び、単独重合体のTgが0℃未満となるモノマー60重量%以上から構成される架橋ポリマー層から構成される場合は、その間の層)または被覆ポリマー層のグラフト効率の高さの観点から、特にアリルメタアクリレート(ALMA)とTAICとジアリルフタレートである。
【0059】
(その他のビニルモノマー)
前記その他のビニルモノマーとしては、上述したジエン系モノマー、(メタ)アクリルモノマー、及び多官能性モノマーのいずれでもでないビニルモノマーであって、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、1−又は2−ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン等のビニル芳香族化合物類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のアルケン類;(メタ)アクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、アルキルビニルエーテル等が挙げられ、これらのその他のビニルモノマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(被覆ポリマー層)
被覆ポリマー層は、被覆ポリマー層成分である単量体を重合してなる被覆ポリマー層重合体からなる。被覆ポリマー層重合体は、前記樹脂中でのポリマー微粒子の分散性を向上させる効果が奏されるものであれば特に限定されず、例えば、ビニル基を有するビニルモノマーをラジカル重合したビニル重合体や、オレフィン化合物を重合したポリオレフィン類、シロキサン化合物を縮合重合したシリコーン重合体、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル類、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリエーテル類等が好ましく例示される。この内、被覆ポリマー層として、前記ビニル重合体を用いた場合には、前記架橋ポリマー層にグラフト重合することが可能であるので好ましい。
【0061】
前記硬化物や重合体中でポリマー微粒子が凝集せずに良好な分散状態を維持するために、前記樹脂に化学結合させる観点からは、被覆ポリマー層成分として、主鎖を形成するための官能基以外に、重合性、又は、硬化反応性をもつ官能基を有する単量体を含有することが好ましい。重合性、又は、硬化反応性をもつ官能基としては、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、炭素−炭素2重結合、アミノ基、イミド基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、環状エステル、環状アミド、ベンズオキサジン基、及びシアン酸エステル基からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。例えば、前記ビニル重合体の場合、主鎖を形成するビニル基以外に上記の官能基を有するビニルモノマーを、前記被覆ポリマー層成分100重量%中、0.1重量%〜50重量%含有することが好ましい。
【0062】
例えば、樹脂がエポキシ樹脂である場合には、ポリマー微粒子が凝集せずに良好な分散状態を維持する観点からは、被覆ポリマー層重合体は、主鎖形成ビニルモノマーとしてスチレン(St)、アクリロニトリル(AN)、及びメチルメタクリレート(MMA)を主成分とし、重合性又は硬化反応性基含有ビニルモノマーとしてグリシジルメタクリレート(GMA)を主成分とする被覆ポリマー層成分から得られる共重合体であることが好ましい。
【0063】
被覆ポリマー層を形成する重合体の数平均分子量は、10000〜300000であることが好ましく、10000〜200000であることがより好ましく、10000〜100000であることがさらに好ましい。
【0064】
(ポリマー微粒子の製造方法)
ポリマー微粒子は、単独重合体のTgが0℃以上となるモノマー、及び、単独重合体のTgが0℃未満となるモノマー、それぞれ1種類以上から構成される架橋ポリマー層及び被覆ポリマー層を含む。このようなポリマー微粒子は、周知の方法で形成できるが、一般的な水媒体中で製造可能である。具体的には、単量体を水媒体中で、乳化重合、懸濁重合、ミニエマルション重合、マイクロエマルション重合、及び分散重合からなる群から選ばれる1種以上の方法を用いて重合することが好ましい。このようにして形成された水性ラテックスであるポリマー微粒子が水媒体中に分散されてなる水媒体分散液を出発原料として、本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物を製造する。前記重合法の中で、ポリマー微粒子の構造制御の観点から、乳化重合、特に多段乳化重合が好ましい。
【0065】
前記乳化重合において用いることができる乳化剤(分散剤)としては、ジオクチルスルホコハク酸やドデシルベンゼンスルホン酸等に代表されるアルキルまたはアリールスルホン酸、アルキルまたはアリールエーテルスルホン酸、ドデシル硫酸に代表されるアルキルまたはアリール硫酸、アルキルまたはアリールエーテル硫酸、アルキルまたはアリール置換燐酸、アルキルまたはアリールエーテル置換燐酸、ドデシルザルコシン酸に代表されるN−アルキルまたはアリールザルコシン酸、オレイン酸やステアリン酸等に代表されるアルキル、又はアリールカルボン酸、アルキルまたはアリールエーテルカルボン酸等の各種の酸類、これら酸類のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩などのアニオン性乳化剤(分散剤);アルキルまたはアリール置換ポリエチレングリコール等の非イオン性乳化剤(分散剤);ポリビニルアルコール、アルキル置換セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸誘導体等の分散剤が挙げられる。これらの乳化剤(分散剤)は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
ポリマー微粒子の水性ラテックスの分散安定性に支障を来さない限り、乳化剤(分散剤)の使用量は少なくすることが好ましい。また、乳化剤(分散剤)は、その水溶性が高いほど好ましい。水溶性が高いと、乳化剤(分散剤)の水洗除去が容易になり、最終的に得られる重縮合体への悪影響を容易に防止できる。
【0067】
(ポリマー微粒子分散樹脂組成物)
上述のように、樹脂は、靭性、耐衝撃性が発揮される観点から、好ましくは、硬化性モノマー、重合性モノマー、硬化性オリゴマー、重合性オリゴマー、及び、熱可塑性ポリマーからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。常温で液体のこれら樹脂から選ばれる1種以上を媒体とするポリマー微粒子分散樹脂組成物を経て、常温で固体の、ポリマー微粒子が一次粒子分散してなる硬化物が得られる。
【0068】
このような、本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、染料、顔料、希釈剤、カップリング剤、後述する好ましい樹脂として挙げるもの以外の樹脂等を、その樹脂が有する本来の機械的強度、及び靱性を損なわない範囲で必要に応じて適宜配合することができる。
【0069】
このような本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物を、炭素繊維複合材料に代表される繊維強化複合材料のマトリクス樹脂や構造接着剤等のベースとなるエポキシ樹脂等の重合性、又は硬化性樹脂に適用することは特に好ましく、従来の改質技術とは異なり、その特長である剛性、耐熱性等の性質をほとんど、若しくは全く損なう事無く、その靭性、衝撃強度を大幅に向上できる、優れた改質技術となる。
【0070】
本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物は、成形材料、接着剤、繊維あるいはフィラー強化複合材料、封止材料、注型材料、絶縁材料、コーティング材料、充填材、光造型材料、光学部品、インキ、トナーとして好適に使用される。
【0071】
前記樹脂が硬化性或いは重合性モノマーの場合の本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物は、例えば、硬化剤や触媒、あるいは熱や光(紫外線など)や放射線(電子線など)の作用、およびこれらの組み合わせなど、公知の硬化方法によって硬化した本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物となる。この場合の成形に際しては、例えば、トランスファー成形法、インジェクション成形法、注型成形法、塗布焼付法、回転成形法、光造型法、さらには炭素繊維、ガラス繊維等と複合させたハンドレイアップ成形法、プリプレグ成形法、引き抜き成形法、フィラメントワインディング成形法、プレス成形法、レジントランスファモールディング(RTM、VaRTM)成形法、SMC成形法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
(ポリマー微粒子分散組成物の調製方法)
上述したように、本発明のポリマー微粒子分散組成物の製造法は、順に、ポリマー微粒子緩凝集体を得る第1工程、ポリマー微粒子分散液を得る第2工程、及び本発明のポリマー微粒子分散組成物を得る第3工程を含む。
【0073】
より具体的には、本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物は、順に、ポリマー微粒子が水媒体中に分散されてなる水媒体分散液を、20℃における水に対する溶解度が5質量%以上40質量%以下の有機溶媒と混合した後、さらに過剰の水と混合して、ポリマー微粒子を緩凝集させポリマー微粒子緩凝集体を得る第1工程と、そのポリマー微粒子緩凝集体を液相から分離・回収した後、再度、分散用有機溶媒と混合して、ポリマー微粒子が分散用有機溶媒中に分散したポリマー微粒子分散液を得る第2工程と、そのポリマー微粒子分散液をさらに前記樹脂と混合した後、前記分散用有機溶媒を留去して本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物を得る第3工程とを含んで調製される。
【0074】
かかる方法により、ポリマー微粒子が一次粒子分散しているポリマー微粒子分散樹脂組成物を容易に得ることができ、ハンドリング性に優れている。即ち、このような本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物の製造方法は、固体や液体状の任意の有機媒体に、粒子径が好ましくは10nm〜1000nmであるポリマー微粒子が、良好に分散されてなる、ポリマー微粒子分散樹脂組成物の簡便な製造方法である。
【0075】
(第1工程:ポリマー微粒子緩凝集体の調製)
第1工程は、20℃における水に対する溶解度が好ましくは5質量%以上で、40質量%以下(好ましくは30質量%以下)の有機溶媒と、前記水媒体分散液とを混合する操作を含む。かかる有機溶媒を用いることによって、上記混合操作の後、さらに水を添加すると(後述する)相分離することとなって、再分散が可能な程度の緩やかな状態のポリマー微粒子緩凝集体を得ることができる。
【0076】
有機溶媒の溶解度が5質量%未満の場合には、ポリマー微粒子を含有する前記水媒体分散液との混合がやや困難になる場合がある。また、溶解度が40質量%を超える場合には、第2工程において(後述する)ポリマー微粒子を液相(主として水相)から分離・回収することが難しくなる場合がある。
【0077】
20℃における水に対する溶解度が5質量%以上40質量%以下の有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン等のケトン類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロピラン等のエーテル類、メチラール等のアセタール類、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール等のアルコール類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
第1工程で用いる有機溶媒は、20℃における水に対する溶解度が全体として5質量%以上40質量%以下を示す限り、混合有機溶媒であってもよい。例えば、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン等のケトン類、ジエチルカーボネート、ギ酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等の低水溶性の有機溶媒と、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、γ−バレロラクトン、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル等のエステル類、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、テトラヒドロフラン等の高水溶性の有機溶媒とを2種以上適宜組み合わせた混合有機溶媒が挙げられる。
【0079】
また、第1工程で用いる有機溶媒は、後述する第2工程における液相(主として水相)の除去を容易にする観点から、比重が水よりも軽いものであることが好ましい。
【0080】
水性ラテックス(水媒体分散液)と混合する有機溶媒の混合量は、水性ラテックス100質量部に対して50質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましい。また、250質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましい。有機溶媒の混合量が50質量部未満の場合には、水性ラテックスに含有されるポリマー微粒子の凝集体が生成し難くなる場合がある。また、有機溶媒の混合量が250質量部を超える場合には、その後ポリマー微粒子緩凝集体を得るために要する水量が増大して、製造効率が低下する場合がある。
【0081】
上記水性ラテックスと有機溶媒との混合操作には、公知のものが使用可能である。例えば、撹拌翼つきの撹拌槽等の一般的装置を使用してもよく、スタティックミキサ(静止混合器)やラインミキサ(配管の一部に撹拌装置を組み込む方式)などを使用してもよい。
【0082】
第1工程は、上記水性ラテックスと有機溶媒とを混合する操作の後、さらに過剰の水を添加して混合する操作を含む。これにより、相分離することとなって、緩やかな状態でポリマー微粒子緩凝集体を得ることができる。また、あわせて、水性ラテックスの調製に際して使用した水溶性の乳化剤もしくは分散剤、水溶性を有する重合開始剤、あるいは還元剤等の電解質の大半を水相に溶出させることができる。
【0083】
水の混合量は、水性ラテックスと混合させる際に使用した上記有機溶媒100質量部に対し40質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましい。また、300質量部以下であることが好ましく、250質量部以下であることがより好ましい。水の混合量が40質量部未満では、ポリマー微粒子を緩凝集体として得ることが困難となる場合がある。また、水の混合量が300質量部を超える場合には、凝集したポリマー微粒子中の有機溶媒濃度が低くなるため、後述する第2工程において凝集したポリマー微粒子を再分散させるのに要する時間が長期化する等、ポリマー微粒子の分散性が低下する場合がある。
【0084】
(第2工程:ポリマー微粒子分散液の調製)
第2工程は、凝集したポリマー微粒子を液相から分離・回収して、ポリマー微粒子ドープを得る操作を含む。かかる操作によって、ポリマー微粒子から乳化剤等の水溶性の夾雑物を分離・除去することができる。
【0085】
凝集したポリマー微粒子を液相から分離・回収する方法としては、例えば、凝集したポリマー微粒子は液相に対し一般に浮上性があるため、第1工程で撹拌槽を用いた場合には、撹拌槽の底部から液相(主として水相)を排出したり、濾紙、濾布や比較的開き目の粗い金属製スクリーンを使って濾過したりする方法が挙げられる。
【0086】
ポリマー微粒子の凝集体(ポリマー微粒子ドープ)に含まれる有機溶媒の量は、ポリマー微粒子全体の質量に対して30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましい。また、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。有機溶媒の含有量が30質量%未満では、ポリマー微粒子ドープを有機溶媒へ再度分散させる(後述する)のに要する時間が長期化したり、不可逆な凝集体が残存し易くなったりするなどの不都合が生じる場合がある。また、有機溶媒の含有量が75質量%を超える場合には、その有機溶媒に水が多量に溶解・残存することとなることから、第3工程においてポリマー微粒子が凝集する原因となる場合がある。
【0087】
なお、本明細書において、ポリマー微粒子の凝集体(ポリマー微粒子ドープ)に含まれる有機溶媒量は、ポリマー微粒子の凝集体を精秤後120℃で15分間乾燥させ、そこで減少した量を凝集体に含まれていた有機溶媒量とすることによって求めた。
【0088】
第2工程は、ポリマー微粒子の凝集体(ポリマー微粒子ドープ)を有機溶媒と混合する操作をさらに含む。ポリマー微粒子は緩やかな状態で凝集していることから、上記有機溶媒と混合することによって、ポリマー微粒子を有機溶媒中に一次粒子の状態で容易に再分散させることができる。
【0089】
第2工程で用いる有機溶媒としては、第1工程で用い得るものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。かかる有機溶媒を用いることにより、後述する第3工程において有機溶媒を留去する際に水と共沸して、ポリマー微粒子に含まれる水分を除去することができる。また、第2工程で用いる有機溶媒は、第1工程で用いた有機溶媒と異なっていてもよいが、第2工程において、凝集体の再分散性をより確実にするという観点から、第1工程で用いた有機溶媒と同一種であることが好ましい。
【0090】
第2工程で用いる有機溶媒の混合量は、ポリマー微粒子の凝集体100質量部に対して、40質量部以上であることが好ましく、200質量部以上であることがより好ましい。また、1400質量部以下であることが好ましく、1000質量部以下であることがより好ましい。有機溶媒の混合量が40質量部未満では、有機溶媒中にポリマー微粒子が均一に分散し難くなり、凝集したポリマー微粒子が塊として残ったり、粘度が上昇して取り扱いが難しくなったりする場合がある。また、有機溶媒の混合量が1400質量部を超えると、後述する第3工程において有機溶媒を蒸発留去するに際して多量のエネルギーおよび大規模な装置を必要として不経済となる。
【0091】
本発明においては、第1工程と第2工程との間に、凝集したポリマー微粒子を液相から分離・回収し、再度20℃における水に対する溶解度が5質量%以上40質量%以下の有機溶媒と混合した後、さらに過剰の水と混合してポリマー微粒子をポリマー微粒子緩凝集体として得る操作を1回以上行うことが好ましい。また、これによりポリマー微粒子ドープ中に含まれる乳化剤等の水溶性の夾雑物の残存量をより低くすることができる。
【0092】
(第3工程:ポリマー微粒子分散樹脂組成物の調製)
第3工程は、第2工程で得たポリマー微粒子分散液(有機溶媒溶液)中の有機溶媒を前記樹脂に置換する操作を含む。かかる操作によって、ポリマー微粒子が一次粒子の状態で分散したポリマー微粒子分散樹脂組成物を得ることができる。また、ポリマー微粒子の凝集体に残存する水分を共沸留去することができる。
【0093】
第3工程で用いる前記樹脂の混合量は、最終的に望むポリマー微粒子分散樹脂組成物中のポリマー微粒子濃度に応じて適宜調整すればよい。
【0094】
また、有機溶媒を留去する方法としては、公知の方法が適用できる。例えば、槽内にポリマー微粒子分散液(有機溶媒溶液)と前記樹脂との混合物を仕込み、加熱減圧留去する方法、槽内で乾燥ガスと上記混合物を向流接触させる方法、薄膜式蒸発機を用いるような連続式の方法、脱揮機構を備えた押出機あるいは連続式撹拌槽を用いる方法等が挙げられる。有機溶媒を留去する際の温度や所要時間等の条件は、得られるポリマー微粒子分散樹脂組成物の品質を損なわない範囲で適宜選択することができる。また、ポリマー微粒子分散樹脂組成物に残存する揮発分の量は、ポリマー微粒子分散樹脂組成物の使用目的に応じて問題のない範囲で適宜選択できる。
【0095】
(ポリマー微粒子分散樹脂組成物を用いたプリプレグ、又は、繊維強化複合材料)
本発明のポリマー微粒子分散樹脂組成物は、強化繊維と組み合わせることにより、剛性、耐熱性等の性質をほとんど、若しくは全く損なう事無く、その靭性、衝撃強度を大幅に向上させた繊維強化複合材料、又は、その前駆体となるプリプレグを作製することができる。
【0096】
本発明で用いられる強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維などが用いられる。これらの内、炭素繊維が特に好ましく用いられる。
【0097】
また、本発明で用いられる強化繊維は、その形状や配列については特に限定されず、例えば単一方向、ランダム方向、シート状、織物状、及びマット状であっても良い。特に、比強度と比弾性率が高いことが要求される用途には、繊維束が単一方向に揃えられた配列のものが適しているが、取扱いの容易な織物状の配列のものも好ましく利用される。
【0098】
繊維強化複合材料の成形法に関しては特に限定されずハンドレイアップ成形法、プリプレグ成形法、引き抜き成形法、フィラメントワインディング成形法、プレス成形法、RTM成形法、VaRTM成形法、SMC成形法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0099】
以下、実施例および比較例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更して実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0100】
(評価方法)
先ず、各実施例、及び比較例のポリマー微粒子分散樹脂組成物の評価方法について、以下説明する。
【0101】
[1]透過型電子顕微鏡によるポリマー微粒子の分散状態の観察
得られたポリマー微粒子分散樹脂組成物の一部を切り出し、酸化ルテニウムあるいは酸化オスミウムでポリマー微粒子を染色処理した後に薄片を切り出し、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM−1200EX)を用いて倍率1万倍、及び4万倍にて観察を行い、後述の方法により粒子分散率(%)を算出した。
【0102】
[2]平均粒子径および分散度の測定
水性ラテックスおよびポリマー微粒子分散樹脂組成物中に分散しているポリマー微粒子の体積平均粒子径(Mv)および個数平均粒子径(Mn)は、マイクロトラックUPA150(日機装株式会社製)を用いて測定した。水性ラテックスについては脱イオン水で希釈、液状樹脂組成物についてはメチルエチルケトンで希釈したものを測定試料として用いた。測定は、水、またはメチルエチルケトンの屈折率、およびそれぞれのポリマー粒子の屈折率を入力し、計測時間600秒、Signal Levelが0.6〜0.8の範囲内になるように試料濃度を調整して行った。分散度はMv、Mnの値からMv/Mnを算出して求めた。
【0103】
[3]粒子分散率の算出
得られた4万倍の透過型電子顕微鏡写真において、5cm四方のエリアを無作為に4カ所選択して、粒子分散率(%)を算出し、その平均値を用いた。
粒子分散率(%)は、測定サンプル中の単独のポリマー微粒子の個数、及び2個以上のポリマー微粒子が接触している塊の個数の和B
0と、2個以上のポリマー微粒子が接触している塊の個数B
1を求め、下記の数式により算出した。
粒子分散率(%)=(1−(B
1/B
0))×100 (数式1)
【0104】
[4]曲げ弾性率測定
硬化板サンプルを、長さ100mm、幅(b)10mm、厚さ(h)5mmのサイズの試験片に切削後、23℃で48時間養生、その後、オートグラフAG−2000E(株式会社島津製作所製)を用いて、支点間距離(L)80mm、テストスピード2mm/分の条件にて3点曲げ試験を実施した(JIS K7171)。得られた荷重(F)−たわみ(e)曲線の初期傾き(F/e)を求め、曲げ弾性率(E)を下記の数式2より算出した。ここで、(F/e)はkN/mm単位、L、b、hはmm単位である。
(数式2)
E(GPa)=L
3×(F/e)/(4×b×h
3) (数式2)
【0105】
[5]破壊靱性測定
硬化板サンプルを長さ2.5インチ、幅(b)0.5インチ、厚さ(h)5mmのサイズの試験片に切削後、ノッチングマシーンによりVノッチを入れた。その後、Vノッチ先端からカミソリ刃を用いて試験片中央までクラックを入れた。試験片を23℃で48時間養生後、オートグラフAG−2000E(株式会社島津製作所製)を用い、支点間距離(L)50mm、テストスピード1mm/分の条件で3点曲げ試験を行なった。曲げ試験から得られた最大強度F(kN)を用い、下記の数式3、及び数式4に従い、破壊靱性値K1c(MPa・m
1/2)を算出した。ここで、aはVノッチの深さとVノッチ先端からクラック先端までの長さの和であり、L、h、a、及びbはcm単位である(ASTM D5045)。
(数式3)
K1c=(F×L/(h×b
3/2))×f (数式3)
(数式4)
f=3(a/b)
1/2×AA/BB
AA=1.99−(a/b){1−(a/b)}{2.15−3.93(a/b)+2.7(a/b)
2)}
BB=2{1+2(a/b)}{1−(a/b)}
3/2 (数式4)
【0106】
[6]衝撃強度測定(DuPont落錘強度)
硬化板サンプルを縦横それぞれ4cm、厚さ3mmのサイズの試験片に切削後、23℃で48時間養生した。その後、Dupont Impact Tester(株式会社安田精機製作所製)を用い、半径1/4インチの画芯、重錘重量500gの条件で、JIS K7211の試験方法に従い、試験を実施し、50%破壊高さを求めた。
【0107】
[7]ガラス転移温度測定
硬化板サンプルを各辺の長さが0.5mm以下になるように切削後、示差走査熱量計DSC220C(Seiko Instruments社製)の測定容器に約10mgを精秤し、昇温速度10℃/minの条件にてガラス転移温度の測定を実施した(JIS K7121)。補外ガラス転移開始温度をガラス転移温度として求めた。
【0108】
(製造例1)
ポリマー微粒子を含有する水性ラテックスの製造:ジエン系ゴム重合体
耐圧重合機中に、脱イオン水200質量部、リン酸三カリウム0.03質量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)0.002質量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001質量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)1.55質量部を投入し、撹拌しつつ十分に窒素置換を行なって酸素を除いた後、ブタジエン(Bd)100質量部を系中に投入し、45℃に昇温した。パラメンタンハイドロパーオキサイド(PHP)0.03質量部、続いてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.10質量部を投入し重合を開始した。重合開始から3、5、7時間目それぞれに、PHP0.025質量部を投入した。また、重合開始4、6、8時間目それぞれに、EDTA0.0006質量部、及び硫酸第一鉄・7水和塩0.003質量部を投入した。重合15時間目に減圧下残存モノマーを脱揮除去して重合を終了し、ポリブタジエンゴムを主成分とする架橋ポリマー層を含む水性ラテックスを得た。得られた水性ラテックス(R−1)に含まれるポリマー微粒子の架橋ポリマー層の体積平均粒子径は90nmであった。
【0109】
温度計、撹拌機、還流冷却器、窒素流入口、及びモノマーの添加装置を有するガラス反応器に、上記ポリブタジエンゴムを主成分とする架橋ポリマー層を含む水性ラテックス255質量部(ポリブタジエンゴム粒子83質量部相当)、及び脱イオン水58質量部を仕込み、窒素置換を行いながら60℃で撹拌した。EDTA0.004質量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001質量部、及びSFS0.2質量部を加えた後、スチレン(St)5.4質量部、アクリロニトリル(AN)3.9質量部、メチルメタクリレート(MMA)0.8質量部、グリシジルメタクリレート(GMA)6.9質量部、及びクメンハイドロパーオキサイド(CHP)0.05質量部の混合物を200分間かけて連続的に添加した。添加終了後、CHP0.04質量部を添加し、さらに1時間撹拌を続けて重合を完結させ、ポリマー微粒子を含む水性ラテックス(L−1)を得た。モノマー成分の重合転化率は99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれるポリマー微粒子の体積平均粒子径は100nmであった。
【0110】
(製造例2)
ポリマー微粒子を含有する水性ラテックスの製造:スチレン系重合体1
温度計、撹拌機、還流冷却器、窒素流入口、モノマーと乳化剤の添加装置を有するガラス反応器に、脱イオン水182質量部、EDTA0.006質量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.0015質量部、SFS0.2質量部、及びSDBS0.15質量部を仕込み、窒素気流中で撹拌しながら60℃に昇温した。次に、そこに、St83質量部、アリルメタクリレート(ALMA)1.56質量部、及びCHP0.024質量部の混合物を、200分間かけて連続的に滴下した。前記混合物添加終了から0.5時間撹拌を続けて重合を完結し、ポリマー微粒子の架橋ポリマー層を含む水性ラテックス(R−2)を得た。引き続き、そこに、St5.4質量部、AN3.9質量部、MMA0.8質量部、GMA6.9質量部、及びCHP0.05質量部の混合物を200分間かけて連続的に添加した。添加終了後、CHP0.04質量部を添加し、さらに1時間撹拌を続けて重合を完結させ、ポリマー微粒子を含む水性ラテックス(L−2)を得た。モノマー成分の重合転化率は99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれるポリマー微粒子の体積平均粒子径は122nmであった。
【0111】
(製造例3)
ポリマー微粒子を含有する水性ラテックスの製造:アクリル系重合体1
製造例2において、St83質量部に代えて、MMA83質量部を用いたこと以外は製造例2と同様にしてポリマー微粒子を含む水性ラテックス(L−3)を得た。モノマー成分の重合転化率はいずれも99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれるポリマー微粒子の体積平均粒子径は89nmであった。
【0112】
(製造例4)
ポリマー微粒子を含有する水性ラテックスの製造:アクリル系重合体2
製造例2において、St83質量部に代えて、MMA58質量部とブチルアクリレート(BA)25質量部との混合物を用いたこと以外は製造例2と同様にしてポリマー微粒子を含む水性ラテックス(L−4)を得た。モノマー成分の重合転化率はいずれも99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれるポリマー微粒子の体積平均粒子径は99nmであった。
【0113】
(製造例5)
ポリマー微粒子を含有する水性ラテックスの製造:アクリル系重合体3
製造例2において、St83質量部、ALMA1.56質量部、及びCHP0.024質量部の混合物を、200分間かけて連続的に滴下したことに代えて、MMA58質量部、ALMA1.09質量部、及びCHP0.017質量部の混合物を140分間かけて連続的に滴下したのち、0.5時間後に、さらにBA25質量部、ALMA0.47質量部、及びCHP0.007質量部の混合物を60分間かけて連続的に滴下したこと以外は製造例2と同様にしてポリマー微粒子を含む水性ラテックス(L−5)を得た。モノマー成分の重合転化率はいずれも99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれるポリマー微粒子の体積平均粒子径は95nmであった。
【0114】
(製造例6)
ポリマー微粒子を含有する水性ラテックスの製造:スチレン系重合体2
製造例2において、St83質量部に代えて、St73質量部と2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)10質量部との混合物を用いたこと以外は製造例2と同様にしてポリマー微粒子を含む水性ラテックス(L−6)を得た。モノマー成分の重合転化率はいずれも99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれるポリマー微粒子の体積平均粒子径は99nmであった。
【0115】
(製造例7)
ポリマー微粒子を含有する水性ラテックスの製造:スチレン系重合体3
製造例2において、St83質量部、ALMA1.56質量部、及びCHP0.024質量部の混合物を、200分間かけて連続的に滴下したことに代えて、St73質量部、ALMA1.37質量部、及びCHP0.021質量部の混合物を175分間かけて連続的に滴下したのち、0.5時間後に、さらに2EHA10質量部、ALMA0.19質量部、及びCHP0.003質量部の混合物を25分間かけて連続的に滴下したこと以外は製造例2と同様にしてポリマー微粒子を含む水性ラテックス(L−7)を得た。モノマー成分の重合転化率はいずれも99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれるポリマー微粒子の体積平均粒子径は123nmであった。
【0116】
前記製造例1〜7の単量体組成につき以下の表1に纏めて示す。
【0117】
【表1】
【0118】
(比較例1)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER社製「JER828EL」、エポキシ当量;187g/eq);97.6g、及び硬化剤であるジアミノジフェニルスルホン(ハンツマン社製「Aradur9664−1」、活性アミン当量;62g/eq);32.4gを、130℃に保持しながらよく混合し、更に、脱泡して、液状樹脂組成物を得た。この液状樹脂組成物を、厚み5mmのスペーサーを挟んだ2枚のガラス板の間に注ぎ込み、熱風オーブン中150℃で1時間、続いて180℃で2時間硬化させ、厚み5mmの硬化板1を得た。この硬化板1の物性値を表2に示す。
【0119】
(比較例2)
カルボキシル基末端のブタジエンーアクリロニトリル共重合体ゴム(CTBN)の液状ビスフェノールA型エポキシアダクト品(Hexion社製「EPON58006」、CTBN含有量40wt%);16.25g、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER828EL;82.95g、及び硬化剤であるジアミノジフェニルスルホンAradur9664−1;30.8gを、130℃に保持しながらよく混合し、更に、脱泡して、液状樹脂組成物を得た。この液状樹脂組成物を、厚み5mmのスペーサーを挟んだ2枚のガラス板の間に注ぎ込み、熱風オーブン中150℃で1時間、続いて180℃で2時間硬化させ、厚み5mmの硬化板2を得た。この硬化板2の物性値を表2に示す。
【0120】
(比較例3)
30℃の1L混合槽にメチルエチルケトン(MEK)126質量部を導入し、撹拌しながら、製造例1で得られたポリマー微粒子の水性ラテックス(L−1)を126質量部投入した。均一に混合後、水200質量部(合計452質量部)を80質量部/分の供給速度で投入した。供給終了後、速やかに撹拌を停止したところ、浮上性の凝集体を含むスラリー液を得た。次に、凝集体を残し、液相350質量部を槽下部の払い出し口より排出させた。得られた凝集体(ポリマー微粒子ドープ)にMEK150質量部を追加して混合し(残存252質量部)、ポリマー微粒子が分散した有機溶媒溶液を得た。この有機溶媒溶液71.6質量部(ポリマー微粒子を11.1重量部含む)に液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER828EL;100質量部を投入し、混合後、MEKを減圧留去し、ポリマー微粒子を分散させたビスフェノールA型エポキシ樹脂をポリマー微粒子分散樹脂組成物1として得た。
【0121】
このポリマー微粒子分散樹脂組成物1(エポキシ当量;208g/eq)65g(ポリマー微粒子を6.5g含む)、JER828EL;34.2g、硬化剤としてジアミノジフェニルスルホン(Aradur9664−1);30.8gを、130℃に保持しながらよく混合(ポリマー微粒子5重量%含む)し、更に、脱泡して、液状樹脂組成物を得た。この液状樹脂組成物を、厚み5mmのスペーサーを挟んだ2枚のガラス板の間に注ぎ込み、熱風オーブン中150℃で1時間、続いて180℃で2時間硬化させ、厚み5mmの硬化板3を得た。この硬化板1の物性値を表2に示す。
【0122】
(比較例4〜5、実施例1〜4)
比較例3において、L−1に代えて、製造例2〜7で得られたそれぞれのポリマー微粒子の水性ラテックス(L−2〜L−7)をそれぞれ用いた事以外は比較例3と同様にして、ポリマー微粒子を分散させたビスフェノールA型エポキシ樹脂をポリマー微粒子分散樹脂組成物2〜7として得た。更に、このポリマー微粒子分散樹脂組成物2〜7から比較例3と同様にして、それぞれ硬化板4〜9を得た。得られた硬化板4〜9を、それぞれ比較例4〜5、及び実施例1〜4とした。この硬化板4〜9の物性値を表2に示す。
【0123】
【表2】
【0124】
(比較例1)
表2に示す通り、強化剤を含まない樹脂は、破壊靭性、衝撃強度共に非常に低い事が分かった。
【0125】
(比較例2)
表2に示す通り、比較例1に対し、破壊靭性は向上するも、弾性率、ガラス転移温度が低下し、さらに衝撃強度も改質されないため、不十分である事が分かった。
【0126】
(比較例3)
表2に示す通り、比較例1に対し、ガラス転移温度を低下させず、破壊靭性、衝撃強度が改質されるも、弾性率が低下し、不十分である事が分かった。
【0127】
(比較例4〜5)
表2に示す通り、比較例1に対し、弾性率、ガラス転移温度を低下させず、破壊靭性が改質されるも、衝撃強度が殆ど向上せず、不十分である事が分かった。
【0128】
(実施例1〜4)
表2に示す通り、比較例1に対し、弾性率、ガラス転移温度を低下させず、破壊靭性、衝撃強度が改質されることが分かった。なかでも、実施例4は破壊靭性、衝撃強度が高く、特に物性バランスに優れる事が分かった。
【0129】
また、実施例4で得られた硬化板につき上述の方法、具体的には、ミクロトームで超薄サンプルを切り出し、酸化ルテニウムで染色し透過型電子顕微鏡によるポリマー微粒子の分散状態の観察、及び粒子分散率の算出を行った。その顕微鏡写真を
図1に示す。粒子分散率は89%であった。即ち、得られたポリマー微粒子分散組成物ではポリマー微粒子が凝集することなく一次粒子分散していることが分かった。
【0130】
[炭素繊維強化複合材料(CFRP)系での評価]
以下、各実施例、及び比較例のポリマー微粒子分散樹脂組成物と炭素繊維よりなるCFRPの評価方法、評価結果について説明する。
【0131】
(1)樹脂の調製
プリプレグ用樹脂組成物1
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製「エポトートYD−128」、エポキシ当量;189g/eq)45重量部、固体ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製「エポトートYD−012」、エポキシ当量;650g/eq)25重量部、о−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製「エポトートYDCN−700−7」、エポキシ当量;202g/eq)30重量部を100℃で攪拌混合後、70℃に温度を下げ、ジシアンジアミド(JER社製「jERキュアDICY7」)4.0重量部、及び3−(3、4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU、東京化成工業株式会社製)2.5重量部を加え攪拌混合することでプリプレグ用樹脂組成物1を得た。
【0132】
プリプレグ用樹脂組成物2
比較例3において、有機溶媒溶液71.6質量部(ポリマー微粒子を11.1重量部含む)に代えて、有機溶媒溶液214.8質量部(ポリマー微粒子を33.3重量部含む)を用い、JER828ELに代えて、エポトートYD−128を用いたこと以外は比較例3と同様にして、ポリマー微粒子を分散させたビスフェノールA型エポキシ樹脂をポリマー微粒子分散樹脂組成物8(ポリマー微粒子を25重量%含む)として得た。このポリマー微粒子分散樹脂組成物8を40重量部、エポトートYD−128を15重量部、エポトートYD−012を25重量部、及び、エポトートYDCN−700−7を30重量部、100℃で攪拌混合後、70℃に温度を下げ、jERキュアDICY7を4.0重量部、DCMUを2.5重量部加え攪拌混合することでプリプレグ用樹脂組成物2を得た。
【0133】
プリプレグ用樹脂組成物3
比較例3において、製造例1で得られたポリマー微粒子の水性ラテックス(L−1)に代えて、製造例7で得られたポリマー微粒子の水性ラテックス(L−7)を用い、有機溶媒溶液71.6質量部(ポリマー微粒子を11.1重量部含む)に代えて、有機溶媒溶液214.8質量部(ポリマー微粒子を33.3重量部含む)を用い、JER828ELに代えて、エポトートYD−128を用いたこと以外は比較例3と同様にして、ポリマー微粒子を分散させたビスフェノールA型エポキシ樹脂をポリマー微粒子分散樹脂組成物9(ポリマー微粒子を25重量%含む)として得た。このポリマー微粒子分散樹脂組成物9を40重量部、エポトートYD−128を15重量部、エポトートYD−012を25重量部、及び、エポトートYDCN−700−7を30重量部、100℃で攪拌混合後、70℃に温度を下げ、jERキュアDICY7を4.0重量部、DCMUを2.5重量部加え攪拌混合することでプリプレグ用樹脂組成物3を得た。
【0134】
VaRTM用樹脂組成物1
エポトートYD−128 100重量部、メチルナジック酸無水物(NMA、和光純薬工業株式会社製)85重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製「キュアゾール2E4MZ」)1.0重量部を混合することでVaRTM用樹脂組成物1を得た。
【0135】
VaRTM用樹脂組成物2
上記プリプレグ用樹脂組成物2の作製過程において得られたポリマー微粒子分散樹脂組成物8を36重量部、エポトートYD−128 64重量部、NMA 77重量部、キュアゾール2E4MZ 0.9重量部を混合することでVaRTM用樹脂組成物2を得た。
【0136】
VaRTM用樹脂組成物3
上記プリプレグ用樹脂組成物3の作製過程において得られたポリマー微粒子分散樹脂組成物9を36重量部、エポトートYD−128 64重量部、NMA77重量部、キュアゾール2E4MZ 0.9重量部を混合することでVaRTM用樹脂組成物3を得た。
【0137】
(2)プリプレグの作製
上記(1)で調製したそれぞれのプリプレグ用樹脂組成物1〜3を、目付け90g/m
2となるようにナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、ドラムワインダーを用いて樹脂フィルム上に一方向に炭素繊維(東レ株式会社製「トレカ T700SC−12K」)を配列させた後、110℃にて加熱加圧により樹脂を含浸させ、炭素繊維の目付けが170g/m
2、樹脂含有率が32.0%の一方向プリプレグ1〜3をそれぞれ作製した。
【0138】
(3)モードI層間破壊靱性値(G1c)の測定方法
炭素繊維(Saertex社製「ECS6090」)を[(0/90)]
5sの構成で積層(この時丁度中間となる層の一部分にテフロンコートのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製「カプトン120HR616」)を挿入)し、(1)で作製したVaRTM用樹脂組成物1〜3をそれぞれVaRTM法により流し込み、80℃で2時間硬化した後、更に135℃で4時間後硬化することで、厚み2.8mmのCFRP1〜3をそれぞれ得た。作製したそれぞれのCFRPを幅21.5mm、長さ140mm、ポリイミドフィルム挿入部分が長さ方向に端から45mmとなるよう切削した後、ポリイミドフィルムを取り除いた。その後フィルム挿入部分の開口部より楔をプラスチックハンマーで打ち込むことにより、2mm程度の予き裂を導入しモードI層間破壊靱性試験片を得た。試験はJIS K 7086に従い実施した。なお、上記テフロンは登録商標である(以下同様)。
【0139】
(4)モードII層間破壊靱性値(G2c)の測定方法
上記(2)で作製したそれぞれの一方向プリプレグ1〜3を所定の大きさに切削し、一方向に24枚積層(この時丁度中間となる層(12層目)の一部分にカプトン120HR616を挿入)した後、テフロンコートのPETフィルムで包んで、プレス成型機を用いて温度125℃、圧力3kg/cm2の条件にて1時間硬化させることで、体積繊維含有率(Vf)53%、厚さ3mmの一方向CFRPを得た。それぞれの一方向CFRPを幅(繊維と直角方向)21.5mm、長さ(繊維方向)140mm、ポリイミドフィルム挿入部分が長さ方向に端から45mmとなるよう切削した後、ポリイミドフィルムを取り除いた。その後フィルム挿入部分の開口部より楔をプラスチックハンマーで打ち込むことにより、2mm程度の予き裂を導入しモードII層間破壊靱性試験片(一方向CFRP1〜3)を得た。試験はJIS K 7086に従い実施した。
【0140】
(5)0°曲げ弾性率の測定方法
上記(2)で作製したそれぞれの一方向プリプレグ1〜3を所定の大きさに切削し、一方向に16枚積層した後、テフロンコートのPETフィルムで包んで、プレス成型機を用いて温度125℃、圧力3kg/cm2の条件にて1時間硬化させることで、体積繊維含有率(Vf)53%、厚さ2mmの一方向CFRPをそれぞれ得た。それぞれの一方向CFRPを幅(繊維と直角方向)15mm、長さ(繊維方向)100mmとなるよう切削し0°曲げ試験片(一方向CFRP4〜6)を得た。試験はJIS K 7074に従い実施した。
【0141】
(6)90°曲げ弾性率の測定方法
(5)と同様にして得られたそれぞれの一方向CFRPを幅(繊維方向)15mm、長さ(繊維と直角方向)100mmとなるよう切削し90°曲げ試験片(一方向CFRP7〜9)を得た。試験はJIS K 7074に従い実施した。
【0142】
(比較例6〜7、実施例5)
CFRP1と一方向CFRP1、4、7を比較例6、CFRP2と一方向CFRP2、5、8を比較例7、CFRP3と一方向CFRP3、6、9を実施例5として、各物性値を表3に示す。
【0143】
【表3】
【0144】
(比較例6)
表3に示す通り、強化剤を含まないCFRPのG1c、G2cは低いことが分かった。
【0145】
(比較例7)
表3に示す通り、比較例6に対し、G1c、G2cは向上するものの、90°曲げ弾性率は低下することが分かった。0°曲げ弾性率は炭素繊維の物性が反映された結果として比較例6と同等の値となったと考えられる。
【0146】
(実施例5)
表3に示す通り、比較例6に対し、G1c、G2cは向上し、且つ0°曲げ弾性率、及び、90°曲げ弾性率も低下せず、複合材料として非常に優れた物性を発現することが分かった。