(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940468
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】金属酸化物粒子を含むバルク触媒およびこれらの作製方法
(51)【国際特許分類】
B01J 27/051 20060101AFI20160616BHJP
B01J 27/049 20060101ALI20160616BHJP
B01J 37/20 20060101ALI20160616BHJP
C10G 45/08 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
B01J27/051 M
B01J27/049 M
B01J37/20
C10G45/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-33607(P2013-33607)
(22)【出願日】2013年2月22日
(62)【分割の表示】特願2008-536999(P2008-536999)の分割
【原出願日】2006年10月25日
(65)【公開番号】特開2013-136057(P2013-136057A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2013年2月22日
(31)【優先権主張番号】60/730,911
(32)【優先日】2005年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】06100803.3
(32)【優先日】2006年1月25日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506417681
【氏名又は名称】アルベマール・ネーザーランズ・ベーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソンジヤ・エイイスブーツ−スピコバ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルトウス・ゲラルデイス・レリベルド
(72)【発明者】
【氏名】スチユアート・レオン・ソレド
(72)【発明者】
【氏名】サバト・ミセオ
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−538943(JP,A)
【文献】
特表2003−500187(JP,A)
【文献】
特表2006−519097(JP,A)
【文献】
特表2001−510132(JP,A)
【文献】
特表2006−518663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C10G 45/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)1種以上のVIII族金属を含む1種以上の第1の化合物と、1種以上のVIB族金属を含む1種以上の第2の化合物とを反応混合物中でプロトン性液体の存在において合体
し、ここでVIB族金属に対するVIII族金属のモル比が1未満であり、そして
ii)この化合物を水熱条件においてプロトン性液体の沸騰温度よりも少なくとも10%高い反応温度で、大気圧以上の反応圧力で反応させて、金属酸化物粒子を形成し、該金属酸化物粒子を375℃以下の温度で乾燥および/または熱処理することによって金属酸化物粒子を入手する工程段階を含んでなり、
iii)反応混合物から金属酸化物粒子を分離し、
iv)金属化合物の合体および/または反応の前、間または後に金属酸化物粒子を結合剤材料、慣用の水素化処理触媒、クラッキング化合物、酸性促進剤またはこれらの混合物の群から選択される、0.1から40重量%の1種以上の材料と複合化し、
v)スプレー乾燥、(フラッシュ)乾燥、ミル掛け、混練、スラリー混合、乾式もしくは湿式混合、またはこれらの組み合わせを行い、
vi)賦型し、そして
vii)硫化する
工程段階の1種以上を場合によっては更に含んでなり得る、前記金属酸化物粒子を含んでなる水素化脱硫処理バルク触媒を作製する方法。
【請求項2】
第1および第2の金属化合物の両方が反応時に少なくとも部分的に固体状態に留まる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1および第2の金属化合物の両方が窒素原子を含まず、反応(段階iii)後に得られる金属酸化物粒子から分離されるプロトン性液体が段階i)において反応混合物を形成するのに少なくとも一部再使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
炭化水素フィードストックの水素化処理への請求項1に記載の方法で作製されたバルク触媒または硫化バルク触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種以上のVIB族金属と1種以上のVIII族金属を含む金属酸化物粒子を含んでなるバルク触媒と、対応する硫化触媒と、上記のバルク触媒の作製方法と、炭化水素フィードストックの水素化処理、特に水素化脱硫および水素化脱窒素への上記の触媒の使用とにも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明によるバルク触媒は、通常、例えば金属酸化物粒子と、0から40重量%(バルク触媒の全重量に対して)の更なる材料、特に結合剤材料を含む組成物を押し出すことにより製造される賦型粒子の形のものである。バルク触媒は、予め形成されたキャリア材料を含まないという点で担持触媒と区別される。この金属酸化物は、予め形成されたキャリア材料上に堆積されないが、金属酸化物粒子として存在する。バルク触媒は、バルク触媒が少なくとも60重量%(バルク触媒の全重量に対する金属酸化物基準で計算される重量%)の金属酸化物粒子を含んでなることにおいて担持触媒と区別され、担持触媒は担体材料上に著しく60重量%未満の量で堆積された金属酸化物を有する。金属酸化物粒子は、通常、1種以上のVIB族金属、好ましくはタングステンまたはモリブデンと、1種以上のVIII族金属、好ましくはニッケルまたはコバルトを含んでなる。バルク触媒は、一般に、水素化処理において極めて高い活性を有する。
【0003】
用語「水素化プロセスまたは水素化処理」は、この文脈においては、水素化、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香族、水素化異性化、水素化脱ワックス、水素化分解、および普通低水素化分解と呼ばれる温和な圧力条件下での水素化分解などの方法を含む、炭化水素フィードを水素と高温および高圧で反応させるすべての方法を網羅する。これ以降、本発明によるバルク触媒の高活性に言及する場合には、特記しない限り、特に水素化脱硫活性を意味する。
【0004】
特許文献1は、1種以上のVIII族金属と2種のVIB族金属(これ以降、三金属型バルク触媒と呼ばれる)を含むバルク触媒粒子を含んでなるバルク触媒組成物、特にニッケル/モリブデン/タングステンベースの触媒を述べている。三金属型バルク触媒粒子は、金属化合物をプロトン性液体の存在において合体し、1種以上の金属化合物が反応時に少なくとも部分的に固体状態に留まる方法で作製される。金属化合物の一部が少なくとも部分的に固体状態に留まり、他の金属化合物が溶解している方法は固体−溶質法と呼ばれる。すべてのVIB族およびVIII族の金属成分が少なくとも部分的に固体状態に留まる方法は、固体−固体法と呼ばれる。この特許刊行物は、比較例において、固体−溶質法により作製される1種のVIII族金属と1種のみのVIB族金属(これ以降、二金属型バルク触媒と呼ぶ)を含むバルク触媒も述べている。
【0005】
特許文献1は、金属モル比に対して広い範囲を述べているが、実施例においては、VIB族に対するVIII族金属のモル比の増加において出発化合物の変換率の増加が得られるということを述べている。特に、1.25以上の金属モル比においてのみ許容され得る変換率が得られる。本発明者は、この方法においては、1
未満の金属モル比では低活性の低表面積相を与える非反応もしくは部分反応の出発材料に多分関連する、活性でない完全に異なる結晶構造が得られるということを更に見出した。活性な触媒を得るためには、VIII族化合物の比較的大きなモル過剰が触媒の作製方法において必要であるように思われる。理論的な観点からは、このような大量のVIII族金属は、触媒の作製工程においては有利であるか、もしくは必要ですらあるが、炭化水素フィードストックの水素化処理における活性な硫化バルク触媒においては必要でないか、もしくは完全に必要でないことがあり得るということが考えられる。更には、本発明者は、過大な金属モル比が無用な重量を付加するのみであり、バルク触媒の単位重量当りの活性を低下させると考える。
【0006】
【特許文献1】WO00/41810
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は高触媒活性を有するバルク触媒を提供することである。本発明の更なる目的は、特にVIB族金属に対するVIII族の低減したモル比において高触媒活性を有するバルク触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にしたがえば、
i)1種以上のVIII族金属を含む1種以上の第1の化合物と、1種以上のVIB族金属を含む1種以上の第2の化合物とを反応混合物中でプロトン性液体の存在において合体し、ここでVIB族金属に対するVIII族金属のモル比が0.1と5の間にあり、そして
ii)この化合物を水熱条件においてプロトン性液体の沸騰温度以上の反応温度で反応させて、金属酸化物粒子を形成する
段階を含んでなる方法により入手可能な1種以上のVIB族金属と1種以上のVIII族金属を含む金属酸化物粒子を含んでなるバルク触媒が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
沸騰温度とは大気圧での沸騰温度の意味である。驚くべきことには、大気圧の非水熱条件中で、そして低い金属モル比においても作製される同一の触媒と比較して、本発明による触媒は、はるかに高い活性を特に水素化脱硫において有するということが見出された。用語「水熱条件」は、反応温度がプロトン性液体の沸騰温度以上である反応条件を示唆するような意味である。通常、このような条件は大気圧以上の圧力を生じ、反応は、好ましくはオートクレーブ中で、好ましくは更なる圧力を印加せずに自発性圧力下で行われる。オートクレーブは、液体を沸騰温度以上で加熱するように設計された耐圧性の装置である。
【0010】
US2004/182749は、いくつかの実施例において、オートクレーブ中加圧下でのプロトン性液体の沸点以上の温度でなく、80℃での作製を述べている。先行技術のWO00/41810は、0から300℃の広い温度範囲を開示し、大気圧以上の圧力およびプロトン性液体の沸騰温度以上の反応温度で触媒を作製する可能性を一般的な形で述べているということが更に特記される。しかしながら、W000/41810は、一般にこの反応が大気圧で行われることを述べており、金属酸化物粒子を形成するのに、水熱条件においてオートクレーブ中で大気圧以上の反応圧力ならびにプロトン性液体として水の場合には100℃以上の温度で金属化合物を実際に反応させる、本発明によるバルク触媒の実施例または記述を有していない。特に、上記の方法により入手可能な触媒の金属モル比、水熱反応法および改善された触媒活性の間の関係は述べられていない。
【0011】
本発明によるバルク触媒においては、VIB族金属に対するVIII族金属のモル比は、原理的に広い範囲の間で、例えば0.1と5の間で変わることができる。一般に、0.2と4の間の金属のモル比で良好な結果を得ることができる。この範囲において、2つの異なる下位範囲が区別された。0.2と1の間の金属のモル比範囲においては、第1および第2の金属化合物を大気圧条件において反応させる場合には、良好な(良好および更に良好は、この文脈においては、先行技術よりも高い水素化脱硫または水素化脱窒素活性を持つバルク触媒を意味する)触媒を得ることが不可能ではないとしても、時には困難であ
るように思われる。この金属のモル比範囲においては、XRDパターンは、なお存在する原材料および/または形成された未同定の化合物から生じると思われる多数のピークを示した。このようなXRDパターンを有する触媒は不活性であることが判明した。驚くべきことには、それにも拘わらず、金属モル比が0.2と1の間にある場合には、第1(VIII族)および第2の(VIB族)金属化合物の間の反応を本発明にしたがって水熱条件において1バール以上の圧力およびT>100℃で行う場合には、良好なバルク触媒を得ることができるということが判明した。
【0012】
VI族に対するVIII族金属のモル比が1以上である場合には、活性な触媒を大気圧反応条件下で作製することができるが、この金属のモル比範囲においても、本発明によるバルク触媒は同一の金属モル比を持つ先行技術のバルク触媒よりも高い活性を有する。上述のように、VIII族の高すぎる過剰を有することは望ましくない。更には、水熱反応条件においては、高金属モル比の更なる効果は頭打ちとなり、水熱条件における金属モル比は、好ましくは1.5未満、更に好ましくは1.25未満、なお更に好ましくは1.15未満、そして最も好ましくは1未満であるということが判明した。
【0013】
水熱条件においてはVI族に対するVIII族金属のモル比は低く選択可能である。別法としては、同一の金属モル比において高活性とすることができる。本発明によるバルク触媒は、好ましくは同一組成を持つが、大気圧条件において作製される触媒と比較して、少なくとも10%の、好ましくは少なくとも15%の、更に好ましくは少なくとも20%の、なお更に好ましくは少なくとも25%の、そして最も好ましくは少なくとも30%の水素化脱硫活性(水素化脱硫活性は本発明による実施例の説明において下記に述べられる標準的試験で求められる通りである)の増加を有する。別法としては、本発明によるバルク触媒は、同等もしくは高い水素化脱硫活性レベルを維持する一方で、好ましくは少なくとも10%の、更に好ましくは少なくとも15%の、なお更に好ましくは少なくとも20%の、そして最も好ましくは少なくとも25%の低い金属モル比を有する。好ましくは、これらの水熱条件において高触媒活性を得ることを考慮して、VIB族に対するVIII族の金属モル比は、0.3以上、好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.5以上、なお更に好ましくは0.6以上、そして最も好ましくは0.7以上である。
【0014】
多くの理由により、水がプロトン性液体の最良の選択である。しかしながら、他のプロトン性液体は排除されず、それゆえこの文脈においては「水熱反応条件」は、水以外のプロトン性液体をプロトン性液体の沸騰温度以上の温度で、通常、大気圧以上で圧力で用いる反応条件も対象とするように意図されている。反応温度は、プロトン性液体の沸騰温度よりも少なくとも好ましくは10%、更に好ましくは少なくとも25%、なお更に好ましくは少なくとも50%、そして最も好ましくは少なくとも75%高い。反応は、好ましくは少なくとも110℃の、好ましくは少なくとも125℃の、なお更に好ましくは少なくとも150℃の、そして最も好ましくは少なくとも175℃の反応温度で、好ましくはオートクレーブ中好ましくは自発的な高い圧力下でプロトン性液体として水中で行われる。110℃と170℃の間の反応温度で良好な結果を得ることができる。本発明の好ましい態様においては、反応混合物はマイクロウエーブ照射により加熱される。反応混合物中の溶質成分はプロトン性液体の沸騰温度を増加させ得る。
【0015】
反応時間は、反応の実質的な完結に充分に長く選択される。分離された金属酸化物粒子のX線回折図が未反応の出発化合物の反射を示さなければ、反応は完結する。いずれの場合にも、反応時間は、乾燥、賦型および焼成後の最終バルク触媒が未反応の出発化合物の反射を示さないように選択される通常、反応は、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4時間、更に好ましくは少なくとも6時間、そして最も好ましくは少なくとも8時間行われる。水熱反応法の特別な利点は、金属化合物の反応速度が大きく、反応が短い反応時間で完結可能である。特に低金属比は作製時の反応速度を低下させることが判明したため
に、VI族に対するVIII族金属の低モル比が望まれる場合には、これは有利である。
【0016】
本発明によるバルク触媒中の金属組成は、慣用の水素化処理触媒について先行技術で述べられている広い範囲の間で原理的に変わり得る。一つの態様においては、このバルク触媒は、好ましくは1種のみのVIII族金属、好ましくはコバルトまたはニッケルと、実質的に2種のみのVIB族金属、好ましくはタングステンおよびモリブデンを含む金属酸化物粒子を含んでなる(三金属型触媒)。別の態様においては、このバルク触媒は1種のみのVIII族金属を含む二金属型触媒である。好ましくは、このバルク触媒は、1種のみのVIII族金属、好ましくはニッケルと、実質的に1種のみのVIII族金属、好ましくはタングステンを含む金属酸化物粒子を含んでなる。二金属型バルク触媒は、10モル%未満の第2のVIII族金属(VIII族金属の全量に対して)を含むが、好ましくは実質的に1種のみのVIII族金属を含むという点で三金属型触媒と区別可能である。用語「実質的に1種のみのVIB族もしくはVIII族の金属」は、触媒が最も好ましくは他の金属を有しないが、僅少量の、好ましくは5モル%未満の、更に好ましくは3モル%未満の、そして最も好ましくは1モル%未満(VIB族もしくはVIII族の金属の全量に対して)の別のVIB族もしくはVIII族の金属を有し得るということを意味する。
【0017】
代替の態様においては、本発明によるバルク触媒は、V族金属、好ましくはニオブを含んでなる。0.1と10モル%の間の、好ましくは0.1と9モル%の間の、更に好ましくは0.1と8モル%の間の、なお更に好ましくは0.1と7モル%の間の、そして最も好ましくは0.1と5モルの間の比較的少ない量でも顕著な活性改善を得ることができるということが判明した。
【0018】
本発明によるバルク触媒の作製方法の第1段階においては、反応化合物は合体されて、反応混合物を形成する。これは、例えばWO00/41810、WO99/03578、WO2004/073859、WO2005/005582、EP2005/004265(非公開)およびWO00/41811で述べられているような種々の異なる方法で実施可能である。第1および/または第2の化合物は、プロトン性液体に可溶もしくは少なくとも部分的に不溶であることができる。プロトン性液体中の金属化合物のサスペンジョンまたは溶液を最初に作製し、プロトン性液体中の溶解および/または懸濁された金属化合物を含む溶液および/または更なるサスペンジョンを同時にもしくは交互に添加することが可能である。最初に溶液を同時にもしくは交互に合体し、引き続いて更なるサスペンジョンと場合によっては溶液を同時にもしくは交互に添加することも可能である。
【0019】
本発明によるバルク触媒は、好ましくは1種以上の第1金属化合物および/または1種以上の第2の金属化合物、最も好ましくはすべての第1および第2の金属化合物が反応時に少なくとも部分的に固体状態に留まる方法で作製される。この方法は比較的単純であり、高収率を有し、環境に優しいが、最も重要なこととしては、上記の方法により入手可能なバルク触媒は高活性であることが判明した。用語「少なくとも部分的に固体状態にある」は、金属化合物の少なくとも一部分が固体の金属化合物として存在し、場合によっては、金属化合物の別の部分がこの金属化合物の溶液としてプロトン性液体中に存在するということを意味する。本発明は固体−固体法と呼ばれ、三金属型バルク触媒を作製するいくつかの可能な作製経路の一つとしてWO00/41810に詳述されている。
【0020】
本発明によるバルク触媒は準安定六方晶系構造を有するということがしばしば観察された。VIB族金属がタングステンである場合には、この準安定な六方晶系構造は、58°と65°の間(回折角2θ)の反射および32°と36°の間および50°と55°の間の主反射のX線回折パターンを有する。VIB族金属がモリブデンである場合には、X線回折パターンは、一方が33と35の間、他方が58と61°の間の2つの妥当な分解能
を持つ反射を示す。厳密な定量的な関係は見出されないが、準安定な六方晶系相の存在は、酸化物バルク触媒の高い触媒活性を示すものと思われた。この相関に対する物理的な理由は充分に理解もしくは知られていないこと、および本発明者らは理論により拘束され、限定されるのを望んでいないことのために、本発明によるバルク触媒は、準安定な六方晶系相の存在に関連する記述されたX線回折の特徴に言及せずに特許請求されている。他の結晶性化合物の反射はX線回折パターン中に実質的に存在しないことが好ましい。無定形相も存在し得ると考えられる。しかしながら、良好な活性を有する触媒は、通常、2.5゜以下の半値全幅(FWHM)を有し、非晶質相および関連の広いXRDピークは活性に良好でないということを示すということを見出した。
【0021】
本発明によるバルク触媒中の金属酸化物粒子は熱処理に特に敏感であるということが判明した。バルク触媒、特にバルク触媒中の金属酸化物粒子は、結晶構造への遷移が起こる温度以下の温度で処理されたものであるということが重要である。この文脈において、「結晶構造への遷移」に言及する場合には、準安定な六方晶系相以外の結晶構造を意味する。これは、バルク触媒の製造工程における任意ですべての熱処理段階に当てはまる。これは、特に複合化および賦型後の賦型バルク触媒粒子の熱処理段階にも当てはまる。好ましくは、このバルク触媒は、450℃以下、更に好ましくは400℃以下の、なお更に好ましくは375℃以下の、そして最も好ましくは350℃以下で熱処理される。これは乾燥および焼成にも当てはまる。
【0022】
反応段階後、この金属酸化物粒子は、好ましくは少なくとも0.5μmの、更に好ましくは少なくとも1μmの、最も好ましくは少なくとも2μmの範囲であるが、好ましくは5000μm以下の、更に好ましくは1000μm以下の、なお更に好ましくは500μm以下の、そして最も好ましくは150μm以下の範囲の中位粒子サイズを有する。なお更に好ましくは、この中位粒子直径は、1から150μmの、最も好ましくは2から150μmの範囲に在る。好ましくは、金属酸化物粒子の中位粒子サイズは、結合剤材料と複合化し、賦型した後でバルク触媒中で実質的に不変のままである(近前方散乱により測定して)。
【0023】
バルク触媒は、60重量%よりも著しく少ない量で担体材料上に堆積された金属酸化物を有する担持触媒とは区別される、少なくとも60重量%(バルク触媒の全重量に対する金属酸化物基準で計算される重量%)の金属酸化物粒子を含んでなる。好ましくは、本発明によるバルク触媒は、少なくとも70重量%の、更に好ましくは少なくとも75重量%の、なお更に好ましくは少なくとも80重量%の、そして最も好ましくは少なくとも85重量%の金属酸化物粒子を含んでなり、残りの0から40重量%は、結合剤材料、慣用の水素化処理触媒、フッ化リン(phosphorus of fluorine)などの酸性促進剤およびクラッキング化合物の群から選択される1種以上の材料である。通常、金属酸化物粒子を結合剤と複合化した後、組成物を賦型、好ましくは押し出して、賦型バルク触媒粒子を成型する。本発明は、金属酸化物粒子を含む賦型バルク触媒粒子にも関する。別法としては、実質的な複合化および賦型を行わない金属酸化物バルク触媒粒子が水素化処理工程において直接に使用可能である。本発明はスラリー水素化処理法と呼ばれる。この使用のためには、好ましくはこの粒子を例えば、篩い掛けまたは集塊により処理するが、実質的な複合化および賦型を行わずに狭い粒子サイズ分布を得る。本発明は、好ましくは実質的な複合化および賦型を行わない金属酸化物バルク触媒粒子を用いて、スラリー水素化処理工程において本発明による触媒を使用することにも関する。
【0024】
好ましくは、複合化および賦型後に、本発明によるバルク触媒は、B.E.T.法により測定して好ましくは少なくとも10m2/gの、更に好ましくは少なくとも50m2/gの、そして最も好ましくは少なくとも80m2/gのB.E.T.表面積を有する。バルク触媒の中位細孔直径(細孔容積の50%は上記の直径以下であり、他の50%はそれ
以上である)は、好ましくは3から25nm、更に好ましくは5から15nm(窒素脱着により測定して)である。バルク触媒の全細孔容積は、窒素脱着により求めて、好ましくは少なくとも0.05ml/g、更に好ましくは少なくとも0.1ml/gである。
【0025】
複合化および賦型後に、本発明によるバルク触媒の細孔サイズ分布は、好ましくは慣用の水素化処理触媒のそれとほぼ同一であるということが望まれる。特に、バルク触媒は、好ましくは窒素吸着により求めて3から25nmの中位細孔直径(脱着)を有し、窒素脱着により求めて0.05から5ml/gの、更に好ましくは0.1から4ml/gの、なお更に好ましくは0.1から3ml/gの、そして最も好ましくは0.1から2ml/gの細孔容積を有する。
【0026】
一般に、複合化および賦型後に、本発明によるバルク触媒は、側面破砕強度(SCS)で表して、少なくとも1lbs/mmの、好ましくは少なくとも3lbs/mmの機械的強度を有する(1から2mmの直径の押し出し物について測定して)。金属酸化物粒子を充分な量の結合剤と複合化することにより、バルク触媒のSCSを適切に増加させることができる。
【0027】
高機械的強度の触媒組成物を得るためには、本発明の触媒組成物は低マクロ細孔性を有することが望ましいことであり得る。好ましくは、30%未満の、更に好ましくは20%未満の触媒組成物の細孔容積は、100nm以上の直径の細孔中の容積である(水銀圧入により測定して、接触角:140゜)。
【0028】
本発明は、硫化された、本発明によるバルク触媒を含む硫化バルク触媒にも関する。本発明は、更に、炭化水素フィードストックの水素化処理へのバルク触媒または硫化バルク触媒の使用にも関する。用語「水素化処理」は、この文脈においては、水素化、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香族、水素化異性化、水素化脱ワックス、水素化分解および普通低水素化分解と呼ばれる温和な圧力条件下での水素化分解などの方法を含む、炭化水素フィードを水素と高温および高圧で反応させるすべての方法を網羅する本発明による触媒組成物は、炭化水素フィードストックの水素化処理に特に好適である。このような水素化処理方法は、例えば炭化水素フィードストックの水素化脱硫、水素化脱窒素および水素化脱芳香族を含んでなる。好適なフィードストックは、例えば中間留分、ケロシン、ナフサ、真空ガスオイルおよび重質ガスオイルである。本発明によるバルク触媒を実質的にすべての水素化処理方法において使用して、広範囲の反応条件下、例えば、200から450℃の範囲の温度、5から300バールの範囲の水素圧力、および0.05から10時
−1の範囲の液体の時間空間速度(LHSV)および50から2000Nl/lの範囲のH
2/オイル比で複数のフィードを処理することができる。
【0029】
水熱条件およびVI族に対するVIII族金属のモル比に関する示唆と別に、当分野で既知の方法にしたがってバルク触媒作製を行うことができる。好適な方法は、例えば参照により組み込まれているWO00/41810で述べられている。
【0030】
本発明は、また、
i)1種以上のVIII族金属を含む1種以上の第1の化合物と、1種以上のVIB族金属を含む1種以上の第2の化合物とを反応混合物中でプロトン性液体の存在において合体し、ここでVIB族金属に対するVIII族金属のモル比が0.1と5の間にあり、そして
ii)この化合物を水熱条件においてプロトン性液体の沸騰温度以上の反応温度で、好ましくはオートクレーブ中大気圧以上の反応圧力で反応させて、金属酸化物粒子を形成する段階により入手可能な金属酸化物粒子を含んでなる、本発明によるバルク触媒であって、iii)この金属酸化物粒子を反応混合物から分離し、
iv)金属化合物の合体および/または反応の前、間または後に金属酸化物粒子を結合剤材料、慣用の水素化処理触媒、クラッキング化合物、酸性添加物またはこれらの混合物の群から選択される、0.1から40重量%の1種以上の材料と複合化し、
v)スプレー乾燥、(フラッシュ)乾燥、ミル掛け、混練、スラリー混合、乾式もしくは湿式混合、またはこれらの組み合わせを行い、
vi)賦型し、
vii)乾燥および/または熱処理し、そして
viii)硫化する
工程段階の1種以上を場合によっては更に含んでなるバルク触媒を作製する方法にも関する。
【0031】
水熱条件およびVI族に対するVIII族金属のモル比に関する更なる好ましい値および詳細は、バルク触媒の説明において上述されている。
【0032】
段階(i)
本発明の方法において適用されるプロトン性液体はいかなるプロトン性液体であることもできる。例は、水、カルボン酸およびメタノール、エタノールなどのアルコールまたはこれらの混合物である。本発明の方法におけるプロトン性液体として、好ましくはアルコールと水の混合物などの水を含む液体、更に好ましくは水が使用される。また、異なるプロトン性液体も本発明の方法において同時に適用可能である。例えば、別の金属化合物の水性サスペンジョン/溶液に金属化合物のエタノール中のサスペンジョンまたは溶液を添加することが可能である。プロトン性液体が水である場合には、本発明の方法時に少なくとも部分的に固体状態にある、VIII族金属化合物およびVIB族金属化合物の溶解性は、一般に、0.05モル(100ml水18℃で)未満である。
【0033】
好ましい方法においては、第1および第2の金属化合物は両方とも反応時に少なくとも部分的に固体状態に留まる(固体−固体法)。プロトン性液体が水である場合には、反応時に少なくとも部分的に固体状態にある好適なニッケル化合物は、シュウ酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩、水酸化物、モリブデン酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、酸化物またはこれらの混合物を含み、更に好ましくは本質的にこれらからなり、水酸化ニッケル、炭酸ニッケルまたはこれらの混合物が最も好ましい。一般に、ヒドロキシ炭酸ニッケル中のヒドロキシル基と炭酸基の間のモル比は、0から4の、好ましくは0から2の、更に好ましくは0から1の、そして最も好ましくは0.1から0.8の範囲内にある。本発明の方法時に少なくとも部分的に固体状態にある好適なタングステン化合物は、二酸化および三酸化タングステン、硫化タングステン(WS
2およびWS
3)、炭化タングステン、オルト−タングステン酸(H
2WO
4・H
2O)、窒化タングステン、タングステン酸アルミニウム(メタ−もしくはポリタングステン酸も)、ホスホタングステン酸アンモニウムまたはこれらの混合物などの水不溶性タングステン化合物を含んでなり、オルト−タングステン酸と二酸化および三酸化タングステンが好ましい。好ましくは、第1および第2の金属化合物の間の反応は酸/塩基反応であり、そして第1もしくは第2の金属化合物は塩基性固体であり、他の金属化合物は酸性固体化合物である。
【0034】
本発明による方法の最も好ましい態様においては、第1および第2の固体金属化合物は窒素原子を含まず、段階iii)において反応済の金属酸化物粒子から分離されるプロトン性液体は、段階i)においてスラリーを形成するのに少なくとも一部再使用される。最も好ましくは、本発明においては、第1の金属化合物はヒドロキシ炭酸ニッケルであり、第2の金属化合物は酸化タングステンまたはタングステン酸である。
【0035】
いくつかの理由により、この方法は、環境に優しく、経済的に最適な触媒製造の最高の標準に合致する。金属化合物が窒素原子を含有しないという事実はさておき、反応は、例
えばWO2004/073859におけるように反応混合物へのアンモニアの添加も必要としないので、この方法は窒素原子を全く含まない。反復的な再循環時にプロトン性液体中でのアンモニウムおよび/または硝酸塩のような異質なイオンの蓄積はなく、生成する分離された酸化物粒子を洗浄する厳しい必要性はなく、貴金属の損失が低下するために環境危険性は少なく、ならびに硝酸アンモニウム塩形成による爆発の危険性はない。
【0036】
環境問題を視野に入れると、好ましくは、この触媒は二金属型、好ましくはニッケルタングステンであり;反応段階における化学は単純であり、1種のみのVIB族金属が存在するだけであるために、反応後に分離された液体の再循環時にVIB族金属の組成ドリフトはあり得ない。この化合物は反応時に少なくとも部分的に固体で留まるために、プロトン性液体に溶解する金属の量は少なく、したがって損失は少ない。更には、極めて困難である、2種のVIB族金属の分離の必要がないために、使用済の二金属型触媒は、構成成分の金属への再循環が三金属型触媒よりも容易である。ニッケルとタングステンを分離するための慣用の方法が使用可能である。このことは、再循環工程の複雑性、コストの低下および金属回収収率の増加の点で有利である。
【0037】
高触媒活性を持つ最終触媒組成物を得るために、第1および第2の固体金属化合物は多孔質の金属化合物であるということが好ましい。第1金属化合物、好ましくはヒドロキシ炭酸ニッケルについては、表面積(SA):SA>220m
2/g、細孔容積pV>0.29cm
3/g(窒素吸着により測定して)および中位細孔直径MPD>3.8nm(窒素吸着により測定して)であり、ならびに第2の金属化合物、好ましくはタングステン酸については、SA>19m
2/g、pV>0.04cm
3/g(窒素吸着により測定して)、脱着MPD>6.1nm(窒素吸着により測定して)である。これらの金属化合物の全細孔容積および細孔サイズ分布は、慣用の水素化処理触媒のそれに類似しているということが望まれる。好ましくは、細孔容積は、水銀もしくは水ポロシメトリーで測定して0.05から5ml/g、好ましくは0.05から4ml/g、更に好ましくは0.05から3ml/g、そして最も好ましくは0.05から2ml/gである。更には、表面積は、B.E.T.法により測定して、好ましくは少なくとも10m
2/g、更に好ましくは少なくとも20m
2/g、そして最も好ましくは少なくとも30m
2/gである。
【0038】
第1および第2の固体金属化合物の中位粒子直径は、好ましくは少なくとも0.5μmの、更に好ましくは少なくとも1μmの、最も好ましくは少なくとも2μmの範囲にあるが、好ましくは5000μm以下の、更に好ましくは1000μm以下の、なお更に好ましくは500μm以下の、そして最も好ましくは150μm以下の範囲にある。なお更に好ましくは、中位粒子直径は、1から150μmの範囲に、最も好ましくは2から150μmの範囲にある(近前方散乱により測定して)。一般に、金属化合物の粒子サイズが小さいほど、反応性は高い。それゆえ、好ましい下限以下の粒子サイズを持つ金属化合物は、原理的に、本発明の好ましい態様である。しかしながら、健康、安全および環境の理由により、このような小さい粒子の取り扱いは特別な事前措置を必要とする。
【0039】
段階(ii)
金属化合物の添加の間および/または後に、化合物の間の反応を起こさせるために、スラリーはある時間反応温度に保たれる。一般に、スラリーの良好な攪拌を確保するのに充分な量の溶剤が存在するという前提ならば、原材料をスラリー化し、合体する段階は重要でない。更には、極めて反応性および/または部分可溶性の原材料の場合には、原材料が添加時から反応するのを防止しなければならない。このことは、例えば溶剤の量を増加させることにより、もしくは原材料を合体する温度を低下させることにより達成可能である。当分野の熟練者ならば、好適な条件を選択する能力がある。
【0040】
一般に、スラリーは反応段階時に中性のpHに保たれる。しかしながら、アンモニウム
を添加する、WO2004/073859に述べられているようにpHを増加させるのに塩基性材料も添加され得る。pHは、好ましくは0から12の範囲、更に好ましくは3から9の範囲、そしてなお更に好ましくは5から8の範囲にある。
【0041】
本発明によるバルク触媒の性能に対して重要であるパラメーター、特に反応温度および圧力、VI族に対するVIII族金属のモル比、水熱反応条件および反応時間は、バルク触媒の説明において更に詳細に述べられている。述べたように、本発明による方法においては、VI族に対するVIII族金属のモル比が0.2と1の間にある場合には、反応を水熱条件下100℃以上の反応温度および1バール以上の圧力で行うということが必要とされる。金属モル比が1以上である場合には、高活性を得るか、もしくはニッケルモル比を低下させるか、もしくは速く反応させるために、得られる触媒は水熱条件下でも有利に製造可能である。
【0042】
段階(iii)
反応段階後、必要ならば、得られる金属酸化物粒子は、例えば濾過またはスプレー乾燥により液体から分離可能である。一つの代替の態様においては、液体を固体反応生成物から分離する必要がないような少量のプロトン性液体が使用される。場合によっては更なる材料と下記に定義するように複合化した後に、湿った反応生成物を直接に賦型し、次に乾燥することができる。金属酸化物粒子を分離するためには、原理的に、いかなる固体−液体分離の手法も使用可能である。更なる材料と複合化する前後に分離を行うことができる。固体−液体分離後、場合によっては、洗浄段階を含めることができる。更には、随意の固体−液体分離および乾燥段階の後および更なる材料との複合化の前にバルク触媒を熱処理することが可能である。
【0043】
段階(iv)
所望する場合には、金属酸化物粒子の上述の作製時に、もしくは作製後に金属酸化物粒子に結合剤材料、慣用の水素化処理触媒、クラッキング化合物またはこれらの混合物の群から選択される更なる材料を添加することができる。好ましくは、この更なる材料は、金属酸化物粒子の作製後および分離段階の前であるが、いかなる場合においても賦型段階の前にスラリーに添加される。これは、大部分、混合/混練段階において液体から分離した後に添加される。本発明による触媒において金属酸化物粒子と複合化可能な他の更なる材料の例は、WO00/41810に述べられている。
【0044】
すべての上述の工程代替策においては、用語「バルク触媒の材料による複合化」は、材料がバルク触媒に添加されるか、もしくはその逆が行われ、生成する組成物が混合されるということを意味する。混合は、好ましくは液体(「湿式混合」)の存在において行われる。これは最終触媒組成物の機械的強度を改善する。
【0045】
特に、金属酸化物粒子の中位粒子サイズが少なくとも0.5μmの、更に好ましくは少なくとも1μmの、最も好ましくは少なくとも2μmの範囲に、しかし好ましくは5000μm以下の、更に好ましくは1000μm以下の、なお更に好ましくは500μm以下の、そして最も好ましくは150μm以下の範囲にある場合には、金属酸化物粒子を上記の更なる材料により複合化すること/または金属酸化物粒子の作製時にこの材料を組み込むことは、特に高い機械的強度のバルク触媒を生じる。なお更に好ましくは、中位粒子直径は1から150μmの範囲に、最も好ましくは2から150μmの範囲にある。
【0046】
金属酸化物粒子を材料により複合化することは、この材料中に埋め込まれた、もしくは逆が行われた金属酸化物粒子を生じる。通常、金属酸化物粒子の形態は、生成するバルク触媒中で本質的に維持される。
【0047】
塗布される結合剤材料は、水素化処理触媒において結合剤として慣用的に塗布されるいかなる材料でもあり得る。例は、シリカ、慣用のシリカ−アルミナ、シリカ被覆アルミナおよびアルミナ被覆シリカなどのシリカ−アルミナ、(擬)ベーマイトまたはジブサイトなどのアルミナ、チタニア、チタニア被覆アルミナ、ジルコニア、サポナイト、ベントナイト、カオリン、セピオライトまたはヒドロタルサイトなどのカチオン性クレイまたはアニオン性クレイまたはこれらの混合物である。好ましい結合剤は、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、チタニア、チタニア被覆アルミナ、ジルコニア、ベントナイトかたはこれらの混合物である。これらの結合剤はそのままで、もしくは解膠後塗布され得る。
【0048】
段階(v)
上記の更なる材料のいずれかを場合によっては含むスラリーは、スプレー乾燥、(フラッシュ)乾燥、ミル掛け、混練、スラリー混合、乾式もしくは湿式混合、またはこれらの組み合わせにかけられることが可能であり、湿式混合および混練またはスラリー混合およびスプレー乾燥の組み合わせが好ましい。これらの手法は、上記の(更なる)材料のいずれかが固体−液体分離後、熱処理の前後およびリウエッティングに引き続いて添加される(仮に行われる場合には)前もしくは後のいずれかで適用可能である。
【0049】
段階(vi)
所望する場合には、上記の更なる材料と場合によっては混合された金属酸化物粒子は、場合によっては段階(ii)の適用後で賦型され得る。賦型は、押し出し、ペレット化、錠剤化および/またはスプレー乾燥を含んでなる。賦型の促進に慣用的に使用されるいかなる添加物も添加可能である。これらの添加物は、ステアリン酸アルミニウム、界面活性剤、グラファイト、でんぷん、メチルセルロース、ベントナイト、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドまたはこれらの混合物を含んでなり得る。賦型が押し出し、錠剤化および/またはスプレー乾燥を含んでなる場合には、賦型段階は、水などの液体の存在において行われるということが好ましい好ましくは、押し出しおよび/または錠剤化に対しては、賦型混合物中の液体の量は、強熱減量(LOI)で表して20から80%の範囲(600℃で1時間後のLOI)にある。
【0050】
段階(vii)
好ましくは100℃以上での随意の乾燥段階の後、所望ならば、生成する賦型触媒組成物を熱処理し得る。しかしながら、熱処理は本発明の方法に必須でない。上述のように、結晶構造に容易に変形する温度敏感性の準安定六方晶系相を有するバルク触媒は、好ましくは、結晶構造へのこのような遷移が起こる温度以下の温度、好ましくは450℃以下で、更に好ましくは400℃以下で、なお更に好ましくは375℃以下で、最も好ましくは350℃以下でも熱処理される。この熱処理は、通常、複合化および賦型後の最終バルク触媒について行われる。熱処理時間は、0.5から48時間まで変わることができ、窒素などの不活性ガス中、もしくは空気または純酸素などの酸素含有ガス中で行われる。熱処理は水蒸気の存在において実施可能である。
【0051】
本発明の方法は硫化段階を更に含んでなり得る。硫化は、一般に、金属酸化物粒子の作製直後に、もしくは更なる工程段階(iii)−(vii)のいずれかの後に、最も好ましくは賦型バルク触媒への賦型の後で、バルク触媒を単体イオウ、硫化水素、DMDSまたは無機もしくは有機ポリスルフィドなどのイオウ含有化合物と接触させることにより行われる。硫化は一般に系内および/または系外で実施可能である。好ましくは、硫化は系外で実施される。すなわち、硫化は、硫化触媒組成物が水素化処理ユニットの中に装填される前に、別な反応器中で行われる。更には、触媒組成物は系外および/または系内で硫化されるということが好ましい。
【0052】
本発明の好ましい方法は、スラリーの第1および第2の化合物をプロトン性液体と上述
のように接触および反応させ、得られた酸化物金属粒子を例えば結合剤とスラリー混合し、この粒子を濾過により単離し、フィルターケーキを結合剤などの材料と湿式混合し、混練、押し出し、乾燥、焼成および硫化する、本発明によるバルク触媒を作製する逐次的な工程段階を含んでなる。
【0053】
この触媒を次の方法を用いてキャラクタリゼーションする。
【0054】
1.側面破砕強度SCS
最初に、例えば押し出し物粒子の長さを測定し、次に押し出し物粒子を可動性ピストンにより圧縮荷重(8.6秒で25lbs)にかけた。粒子の破砕に必要とされる力を測定した。この手順を少なくとも40個の押し出し物粒子について繰り返し、単位長さ(mm)当りの力(lbs)として平均を計算した。好ましくは、この方法を7mmを超えない長さを持つ賦型粒子に適用した。
【0055】
2.ポロシメトリー
Paul A.Webb and Clyde Orr,「Analytical Methods in Fine Particle Technology」,Micromeritics Instrumnt Corporation,Norcross,GA,USA,1977,ISBN0−9656783−0−X中に述べられているように、窒素吸着測定を行った。中位細孔直径MPDを挙げる場合には、本発明者らは、P.Barrett,L.G.Joyner,P.P.Halenda,「The determination of pore volume and area distributions in porous substances.I.Computations from nitrogen isotherms」,J.Am.Chem.Soc.(1951),73,373−380に発表されているBJH方法による窒素収着等温線の脱着曲線から抽出される細孔サイズ分布を引用する。BET法:S.Brunauer,P.H.Emmett and E.Teller,「Adsorption
of gases in multimolecular layers」,J.Am.Chem.Soc.(1938),60,309−319により全表面積を測定する。
【0056】
例えば、Paul A.Webb and Clyde Orr,「Analytical Methods in Fine Particle Technology」,Micromeritics Instrument Corporation.,Norcross,GA,USA,1977,ISBN0−9656783−0−Xに述べられているように、通常以上の細孔直径を有する細孔に対するマクロ細孔容積測定を水銀(Hg)ポロシメトリーにより行った。使用された接触角は140度であった。
【0057】
3.添加された固体金属化合物の量
定性的な測定:少なくとも金属化合物が可視光の波長よりも大きい直径を持つ粒子の形で存在する場合には、本発明の方法時の固体金属化合物の存在は、目視により容易に検出可能である。勿論、熟練者には既知である、準弾性光散乱(QELS)または近前方散乱などの方法も使用して、本発明の方法のどの時点においてもすべての金属が溶質状態にないということを証明することができる。中位粒子サイズも光散乱(近前方散乱)により測定した。
【0058】
定性的な測定:少なくとも部分的に固体状態で添加される金属化合物をサスペンジョンとして添加する場合には、サスペンジョン中に含まれるすべての固体材料を固体フィルターケーキとして捕集するような方法により、添加時に適用される条件(温度、pH、圧力、液体量)下で添加されるサスペンジョンを濾過することにより、本発明の工程時に添加される固体金属化合物の量を測定することができる。固体および乾燥されたフィルターケ
ーキの重量から、固体金属化合物の重量を標準的な手法により測定することができる。勿論、固体金属化合物とは別に、固体結合剤などの更なる固体化合物がフィルターケーキ中に存在する場合には、この固体および乾燥された結合剤の重量を固体および乾燥されたフィルターケーキの重量から差し引かなければならない。フィルターケーキ中の固体金属化合物の量は、原子吸光分析法(AAS)、XRF、湿式化学分析またはICPなどの標準的な手法によっても測定可能である。
【0059】
少なくとも部分的に固体状態で添加される金属化合物が湿潤もしくは乾燥状態で添加される場合には、濾過は一般には可能でない。この場合には、固体金属化合物の重量は、対応する最初に使用された金属化合物の重量に乾燥基準で等しいと考えられる。すべての金属化合物の全重量は、金属酸化物として計算される、最初に使用したすべての金属化合物の乾燥基準での量である。
【0060】
4.特性半値全幅
触媒のX線回折パターン中の主反射についてこの酸化物触媒の特性半値全幅を求めた(2θ散乱角の形で)。X線回折パターンの測定には、グラファイトモノクロメーターを備えた標準的な粉末回折計を使用することができる。測定条件は、例えば、X線発生器設定:40kVおよび40mA、波長:1.5418オングストローム、発散および散乱防止スリット:v20(可変)、検出器スリット:0.6mm、ステップサイズ:0.05(゜2θ)、時間/ステップ:2秒、装置:Bruker D5000のように選択可能である。
【実施例】
【0061】
本発明を下記に述べる実施例により更に例示する。R3は、第1および第2の金属化合物が反応時に少なくとも部分的に固体である、反応工程を意味する。CBDは触媒の圧密化されたかさ密度を意味する。HTは水熱反応条件を意味する。ジーゼル水素化処理試験結果を表4に示す。ここで、RVAおよびRWAは、反応器中に装填された全触媒量基準のそれぞれ相対的容積活性および相対的重量活性である。HDNは水素化脱窒素であり、HDSは水素化脱硫である。
【0062】
2種の異なる温度および圧力の試験条件1および2を用いてジーゼル試験手順を行った。後置文字列1もしくは2(例えばRWA1およびRWA2におけるように)はそれぞれ試験条件1および2を指す。反応生成物中の窒素レベルがすべて低く、測定が不正確であり、試料の間の差が試料間の触媒活性の差を同定するには小さすぎるために、RWA HDN1の結果を示さない。更には、水素化処理後の残存窒素およびイオウのレベルを求め、表6中の欄S1、S2およびN
2に示した。この試験においては、D1、D2およびD3と示される、異なるジーゼル試験手順を使用した。ジーゼル試験手順D1およびD2における参照触媒C1およびジーゼル試験手順D3におけるC2のRWA/RVA値を100と定義した。すべての他のRWA/RVA値をこの参照触媒に対して計算する。
【0063】
比較例C1.1およびC1.2(Ni1Mo0.5W0.5R3)
115.2gのMoO
3(0.8モルMo、例えばAldrich)と200gのタングステン酸H
2WO
4(0.8モルW、例えばAldrich)を6400mlの水中にスラリー(サスペンジョンA)とし、90℃まで加熱した。188gのヒドロキシ炭酸ニッケル2NiCO
3・3Ni(OH)
2・4H
2O(1.6モルのNi、例えばAldrich)を1600mlの水中で懸濁させ、90℃まで加熱した(サスペンジョンB)。この実施例および他の実施例で使用されるヒドロキシ炭酸ニッケルは、239m
2/gのB.E.T.表面積を有していた。サスペンジョンBをサスペンジョンAに10分で添加し、生成する混合物を連続的に攪拌しながら90℃で16時間(一夜)保った。この時間の終わりで、サスペンジョンを濾過した。収率は98%以上であった。得られたフィルタ
ーケーキを120℃で一夜乾燥した。得られたフィルターケーキを10重量%の結合剤と湿式混合し、押し出し、乾燥し、焼成し、そしてジーゼル試験手順D2(結果。表6中のC1.2)で述べるように硫化した。この押し出し物を破砕し、40から60メッシュ区分を篩い掛けにより単離した。この触媒を硫化し、ジーゼル試験手順1からの手順を用いて試験した(表6中のC1.1)。
【0064】
実施例El(Ni0.75W1 R3 HT)
反応をマイクロウエーブ照射により加熱されたオートクレーブ反応器中で自発性圧力下150℃の反応温度で行い、反応時間が約6時間であるということを除いて、C1で述べた触媒に類似の方法で0.75から1のNi/Wモル比を有する触媒を作製した。1.76gの炭酸ニッケル(0.015モルNi)を4.99グラムのタングステン酸(0.02モルW)と共に100ccの水に添加した。このサスペンジョンを全容積275ccの密封したWeflon(登録商標)容器に入れ、10℃/分で150℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらその温度で6時間保持した。この試料を室温まで冷却し、固体を濾過し、120℃で一夜乾燥した。得られた材料をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D1からの手順を用いて試験した。驚くべきことには、この二金属型触媒の性能は、C1.1の三金属型触媒(表6)と比較して改善されている。
【0065】
実施例E2(Ni1W1 R3 HT)
Ni/Wモル比が1対1であり、反応をマイクロウエーブ照射により加熱されたオートクレーブ反応器中で自発性圧力下150℃の反応温度で行うことを除いて、Elで述べたように触媒を作製した。2.35gの炭酸ニッケル(0.02モルNi)を4.99グラムのタングステン酸(0.02モルW)と共に100ccの水に添加した。このサスペンジョンを全容積275ccの密封したWeflon(登録商標)容器に入れ、10℃/分で150℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらその温度で6時間保持した。この試料を室温まで冷却し、固体を濾過し、120℃で一夜乾燥した。得られた材料をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D1からの手順を用いて試験した。驚くべきことには、E2の二金属型触媒の性能は、三金属型のC1.1と比較して改善されている。
【0066】
実施例E3(Ni0.5W1 R3 HT)
Ni/Wモル比が0.5対1であり、作製を大規模で行うことを除いて、Elで述べたように触媒を作製した。164.5gの炭酸ニッケル(1.4モルNi)を699.6グラムのタングステン酸(2.8モルW)と共に14リットルの水に添加した。このサスペンジョンを5ガロンのオートクレーブに入れ、オートクレーブを密閉し、10℃/分で150℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらその温度で6時間保持した。この試料を室温まで冷却し、固体を濾過し、120℃で一夜乾燥した。得られた材料を10重量%の結合剤と湿式混合し、押し出し、乾燥し、焼成し、そしてC1に述べるように硫化し、ジーゼル試験手順D2を用いて試験した。
【0067】
実施例E4(Ni0.5W0.975Nb0.025 R3 HT)
Nbを反応混合物に添加し、Ni:W:Nbモル比が0.5:0.975:0.025であり、作製を大規模で行うことを除いて、Elで述べたように触媒を作製した。164.5gの炭酸ニッケル(1.4モルNi)を682.5グラムのタングステン酸(2.73モルW)および11.19のニオブ酸(0.07モルNb)(例えば、CBBM Industries)と共に14リットルの水に添加した。このサスペンジョンを5ガロンのオートクレーブに入れ、オートクレーブを密閉し、10℃/分で150℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらその温度で6時間保持した。この試料を室温まで冷却し、固体を濾過し、120℃で一夜乾燥した。合体された並行に作製された物の得られた材料(10重
量%の結合剤入り)を押し出し、乾燥し、焼成し、そしてC1に述べたように硫化し、ジーゼル試験手順D2を用いて試験した。驚くべきことには、このNb含有材料の性能は、二金属型触媒E3および三金属型触媒C1.2(表6)と比較して改善されている。
【0068】
実施例E5(Ni1Mo0.5W0.5 R3 HT)
1:0.5:0.5のNi:Mo:Wモル比の触媒を作製した。2.35gの炭酸ニッケル(0.02モルNi)を2.5グラムのタングステン酸(0.01モルW)および1.44gのMoO
3(0.01モルMo)と共に100ccの水に添加した。このサスペンジョンを全容積275ccの密封したWeflon(登録商標)容器に入れ、マイクロウエーブ照射により10℃/分で150℃まで加熱し、連続的に攪拌しながら自発性圧力下この温度で6時間保持した。この試料を室温まで冷却し、固体を濾過し、120℃で一夜乾燥した。得られた材料をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。この触媒を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。
【0069】
比較例C2(Ni1W0.5Mo0.5 R3)
188gのヒドロキシ炭酸ニッケル2NiCO
3・3Ni(OH)
2・4H
2O(1.6モルのNi)を8000mlの水中で懸濁させ、60℃まで加熱した。引き続いて、115.2gのMoO
3(0.8モルMo)と200gのタングステン酸H
2WO
4(0.8モルW)を添加し、生成するスラリーを95℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらこの温度で約24時間維持した。この時間の終わりで、サスペンジョンを濾過した。得られたフィルターケーキを10重量%(触媒組成物の全重量基準で)の結合剤と湿式混合した。押し出し可能な混合物を得るために、この混合物の水含量を調整し、引き続いて混合物を押し出した。生成する固体を120℃で16時間(一夜)乾燥し、300℃で1時間焼成した。この押し出し物を破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。
【0070】
比較例C3(R3 Ni1W1、90)
50.0gのタングステン酸H
2WO
4(0.2モルW)を23.5gのヒドロキシ炭酸ニッケル2NiCO
3・3Ni(OH)
2・4H
2O(0.2モルのNi)と一緒に1リットルの水中で懸濁させた。この2種の固体のサスペンジョンを90℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらこの温度で約20時間(一夜)維持した。この時間の終わりで、サスペンジョンを濾過した。生成する固体を120℃で16時間(一夜)乾燥した。生成する固体をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。
【0071】
実施例E6(Ni1W1 R3 HT125)
マイクロウエーブ照射により加熱されたオートクレーブ反応器中で自発性圧力下125℃の反応温度および約6時間の反応時間でこの触媒を作製した。2.35gの炭酸ニッケル(0.02モルNi)を4.99グラムのタングステン酸(0.02モルW)と共に100ccの水に添加した。このサスペンジョンを全容積275ccの密封したWeflon(登録商標)容器に入れ、10℃/分で125℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらその温度で6時間保持した。この試料を室温まで冷却し、固体を濾過し、120℃で一夜乾燥した。得られる材料をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。
【0072】
実施例E7(Ni1W1 R3 HT150)
マイクロウエーブ照射により加熱されたオートクレーブ反応器中で自発性圧力下150
℃の反応温度および約6時間の反応時間でこの触媒を作製した。2.35gの炭酸ニッケル(0.02モルNi)を4.99グラムのタングステン酸(0.02モルW)と共に100ccの水に添加した。このサスペンジョンを全容積275ccの密封したWeflon(登録商標)容器に入れ、10℃/分で150℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらその温度で6時間保持した。この試料を室温まで冷却し、固体を濾過し、120℃で一夜乾燥した。得られた材料をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。
【0073】
実施例E8(Ni1W1 R3 175)
マイクロウエーブ照射により加熱されたオートクレーブ反応器中で自発性圧力下175℃の反応温度および約6時間の反応時間でこの触媒を作製した。2.35gの炭酸ニッケル(0.02モルNi)を4.99グラムのタングステン酸(0.02モルW)と共に100ccの水に添加した。このサスペンジョンを全容積275ccの密封したWeflon(登録商標)容器に入れ、10℃/分で175℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらその温度で6時間保持した。この試料を室温まで冷却し、固体を濾過し、120℃で一夜乾燥した。得られた材料をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。実施例E6からE8は、参照触媒C2および水熱条件下で作製されなかった同一の触媒C3と比較して、水熱条件が活性の著しい改善を生じるということを示す。
【0074】
比較例C4(Ni1Nb.025W.975 R3)
48.7gのタングステン酸H
2WO
4(0.195モルW)を23.5gのヒドロキシ炭酸ニッケル2NiCO
3・3Ni(OH)
2・4H
2O(0.2モルのNi)および0.8グラムのニオブ酸(0.005モルNb)と一緒に1リットルの水中で懸濁させた。この3種の固体のサスペンジョンを90℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらこの温度で約20時間(一夜)維持した。この時間の終わりで、サスペンジョンを濾過した。生成する固体を120℃で16時間(一夜)乾燥した。生成する固体をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。
【0075】
比較例C5(Ni1Nb.05W.95 R3)
47.4gのタングステン酸H
2WO
4(0.19モルW)を23.5gのヒドロキシ炭酸ニッケル2NiCO
3・3Ni(OH)
2・4H
2O(0.2モルのNi)および1.6グラムのニオブ酸(0.01モルNb)と一緒に1リットルの水中で懸濁させた。この3種の固体のサスペンジョンを90℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらこの温度で約20時間(一夜)維持した。この時間の終わりで、サスペンジョンを濾過した。生成する固体を120℃で16時間(一夜)乾燥した。生成する固体をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。
【0076】
比較例C6(Ni1Nb.075W.925 R3)
46.2gのタングステン酸H
2WO
4(0.185モルW)を23.5gのヒドロキシ炭酸ニッケル2NiCO
3・3Ni(OH)
2・4H
2O(0.2モルのNi)および2.4グラムのニオブ酸(0.015モルNb)と一緒に1リットルの水中で懸濁させた。この3種の固体のサスペンジョンを90℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらこの温度で約20時間(一夜)維持した。この時間の終わりで、サスペンジョンを濾過した。生成
する固体を120℃で16時間(一夜)乾燥した。生成する固体をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。
【0077】
実施例E9(Ni1Nb.025W.975 HT150)
マイクロウエーブ照射により加熱されたオートクレーブ反応器中で自発性圧力下150℃の反応温度および約6時間の反応時間でこの触媒を作製した。2.35gの炭酸ニッケル(0.02モルNi)を4.87グラムのタングステン酸(0.0195モルW)および0.080グラムのニオブ酸(0.0005モルNb)と共に100ccの水に添加した。このサスペンジョンを全容積275ccの密封したWeflon(登録商標)容器に入れ、10℃/分で150℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらその温度で6時間保持した。この試料を室温まで冷却し、固体を濾過し、120℃で一夜乾燥した。得られた材料をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。
【0078】
実施例E10(Ni1Nb0.05W0.95 R3 HT150)
マイクロウエーブ照射により加熱されたオートクレーブ反応器中で自発性圧力下150℃の反応温度および約6時間の反応時間でこの触媒を作製した。2.35gの炭酸ニッケル(0.02モルNi)を4.74グラムのタングステン酸(0.019モルW)および0.16グラムのニオブ酸(0.001モルNb)と共に100ccの水に添加した。このサスペンジョンを全容積275ccの密封したWeflon(登録商標)容器に入れ、10℃/分で150℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらその温度で6時間保持した。この試料を室温まで冷却し、固体を濾過し、120℃で一夜乾燥した。得られた材料をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。
【0079】
実施例E11(Ni1Nb0.075W0.925 R3 HT150)
この触媒をマイクロウエーブ照射により加熱されたオートクレーブ反応器中で自発性圧力下150℃の反応温度および約6時間の反応時間で作製した。2.35gの炭酸ニッケル(0.02モルNi)を4.62グラムのタングステン酸(0.0185モルW)および0.24グラムのニオブ酸(0.0015モルNb)と共に100ccの水に添加した。このサスペンジョンを全容積275ccの密封したWeflon(登録商標)容器に入れ、10℃/分で150℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらその温度で6時間保持した。この試料を室温まで冷却し、固体を濾過し、120℃で一夜乾燥した。得られた材料をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。
【0080】
実施例E9からE11は、水熱条件で作製されるニオブ含有触媒が非水熱的に作製された触媒C4からC6と比較して著しく増大した活性のみならず、少量のニオブ無しで同一条件で作製される触媒と比較して、極めて著しい予期されない活性の改善をも有するということを示す。
【0081】
比較例C7(Ni1W1 R3、7日)
50.0gのタングステン酸H
2WO
4(0.2モルW)を23.5gのヒドロキシ炭酸ニッケル2NiCO
3・3Ni(OH)
2・4H
2O(0.2モルのNi)と一緒に1リットルの水中で懸濁させた。この2種の固体のサスペンジョンを90℃まで加熱し、連
続的に攪拌しながらこの温度で7日間維持した。この時間の終わりで、サスペンジョンを濾過した。生成する固体を120℃で16時間(一夜)乾燥した。生成する固体をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。この結果は、極めて長い反応時間においては20時間の反応時間と比較して活性の改善を得ることができるが、この改善が水熱条件により得られる改善と比較して極めて小さいということを示す。
【0082】
実施例E12(Ni1.5W1 R3 HT150)
マイクロウエーブ照射により加熱されたオートクレーブ反応器中で自発性圧力下150℃の反応温度および約6時間の反応時間でこの触媒を作製した。3.53gの炭酸ニッケル(0.03モルNi)を4.99グラムのタングステン酸(0.02モルW)と共に100ccの水に添加した。このサスペンジョンを全容積275ccの密封したWeflon(登録商標)容器に入れ、10℃/分で150℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらその温度で6時間保持した。この試料を室温まで冷却し、固体を濾過し、120℃で一夜乾燥した。得られた材料をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。この結果は、水熱条件では、高金属モル比においては極めて良好な結果を得ることができるが、高金属モル比が必要でないか、もしくは望ましくないということを示す。
【0083】
比較例C8(NiO.9W1 R1 90)
49.2gのメタタングステン酸アンモニウム(0.2モルW)を800mlの水に溶解し、約5.2のpHの溶液を得た。この溶液に、0.4モルの水酸化アンモニウム(約30ml)を添加し、約9.8までpH増加を得た。この溶液を90℃まで加熱した(溶液A)。52.4gの硝酸Ni六水和物(0.18モルNi)を50mlの水に溶解することにより、第2の溶液を作製した。この溶液を90℃で維持した(溶液B)。溶液Bを7ml/分の速度で溶液Aに滴加した。温度を90℃に維持しながら、生成したサスペンジョンを30分間攪拌した。この材料を熱間濾過し、120℃で一夜乾燥した。得られた材料をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。
【0084】
実施例E13(Ni0.9W1 R1 HT150)
マイクロウエーブ照射により加熱されたオートクレーブ反応器中で自発性圧力下150℃の反応温度および約6時間の反応時間でこの触媒を作製した。100ccの水中の10.48gの硝酸Ni六水和物(0.036モルNi)の溶液に9.86gのメタタングステン酸アンモニウム(0:04モルW)と6mlの水酸化アンモニウムを添加した。このサスペンジョンを全容積275ccの密封したWeflon(登録商標)容器に入れ、10℃/分で150℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらその温度で6時間保持した。この試料を室温まで冷却し、固体を濾過し、120℃で一夜乾燥した。得られた材料をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。驚くべきことには、この結果は、水熱条件下ですべての成分が溶解した反応混合物を反応させることによっても極めて良好な結果を得ることができるということを示す。
【0085】
比較例C9(Ni1W1 R2)
49.2gのメタタングステン酸アンモニウム(NH
4)6H
2W
12O
40(0.2モルW)を800mlの水に溶解し、室温で約5.2のpHの溶液を得た。引き続いて、
この溶液を90℃まで加熱した(溶液A)。23.5gのヒドロキシ炭酸ニッケル2NiCO
3・3Ni(OH)
2・4H
2O(0.2モルのNi)を200mlの水中に懸濁させ、このサスペンジョンを90℃まで加熱した(サスペンジョンB)。次に、サスペンジョンBを溶液Aに10分間で添加し、生成するサスペンジョンを連続的に攪拌しながら90℃で16時間維持した。生成する固体を120℃で16時間(一夜)乾燥した。生成する固体をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。
【0086】
実施例E14(Ni1W1 R2 HT150)
マイクロウエーブ照射により加熱されたオートクレーブ反応器中で自発性圧力下150℃の反応温度および約6時間の反応時間でこの触媒を作製した。3.52gの炭酸ニッケル(0.03モルNi)を7.40gグラムのメタタングステン酸(0.03モルW)と共に150ccの水に添加した。このサスペンジョンを全容積275ccの密封したWeflon(登録商標)容器に入れ、10℃/分で150℃まで加熱し、連続的に攪拌しながらその温度で6時間保持した。この試料を室温まで冷却し、固体を濾過し、120℃で一夜乾燥した。得られた材料をペレット化し、ペレットを破砕し、40から60メッシュの区分を篩い掛けにより単離した。次に、この材料を300℃で1時間焼成した。次に、この材料を硫化し、ジーゼル試験手順D3を用いて試験した。驚くべきことには、この結果は、1つの成分が固体の形にあり、成分が溶解している反応混合物を水熱条件下で反応させることによっても極めて良好な結果を得ることができるということを示す。
【0087】
ジーゼル試験手順D1
触媒を下降流式管状反応器中で試験した。各反応器管は、等量のSiC粒子と混合され、SiC粒子の層の間に挟まれた10mlの触媒を入れていた。試験の前に、ジメチルジスルフィドを3.7重量%の全イオウ含量まで添加した、表1に示すフィードを用いる液相予備硫化により触媒を予備硫化した。次に、表1に示す性質を有するジーゼルフィードストックの水素化処理において、予備硫化された触媒を試験した。
【0088】
【表1】
【0089】
触媒を表2に示す2つの条件下で試験した。
【0090】
【表2】
【0091】
ジーゼル試験手順D2
表3に示す第1の条件中の別の空間速度を除いて、触媒をD1に述べたように試験した。
【0092】
【表3】
【0093】
ジーゼル試験手順D3
触媒をD1で述べたものに類似の方法で反応器の中に装填した。試験の前に、ジメチルジスルフィドを3.7重量%の全イオウ含量まで添加した、表5に示すLGOフィードを用いる液相予備硫化により触媒を予備硫化した。次に、表4に示す性質を有するジーゼルフィードストックの水素化処理においてこの予備硫化触媒を試験した。
【0094】
【表4】
【0095】
触媒を表5に示す2つの条件下で試験した。
【0096】
【表5】
【0097】
半値全幅(FWHM)をすべての実施例に対して測定し、これがすべての実施例において2.5以下であることを見出した。実施例は、通常の大気圧条件においては活性な触媒を得ることができない、1以下のVIII族:VIB族金属モル比でも水熱条件下では高活性の触媒を得ることができたということを示す。
【0098】
【表6】