(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940479
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】車両用シートのシートバック
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20160616BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/42
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-48558(P2013-48558)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-172551(P2014-172551A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(74)【代理人】
【識別番号】100103366
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 礼至
(72)【発明者】
【氏名】阿部 弘
(72)【発明者】
【氏名】宮口 聖士
【審査官】
小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−105126(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0084098(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0103189(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00−2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状のバックフレームと、
このバックフレーム内に配設してシートバックの背凭れ面のパッドを支持する支持プレートと、
この支持プレートの上部より外方向に突出し支持プレートを前記バックフレーム内で支持する支持ワイヤと、
この支持ワイヤと前記バックフレームを連結するバネ部材とを有する車両用シートにおいて、
前記支持プレートの上部より上方向に突出する前記支持ワイヤには、ワイヤ製の上部バネ部材を連結し、
このワイヤ製の上部バネ部材は、前記バックフレームの上部左右内側に向き合う様に固設したブラケットの通孔に、上下方向にスライド可能に挿通した左右一対のスライド部と、
この左右一対のスライド部間に一体に形成して前記パッドに加わる後方荷重により後方且つ拡開状に変形する本体部とからなり、
前記パッドに加わる後方荷重を前記上部バネ部材により吸収する車両用シートのシートバック。
【請求項2】
前記上部バネ部材の本体部は、前記支持ワイヤを連結して補強する垂直部と水平部を有する請求項1記載の車両用シートのシートバック。
【請求項3】
前記支持プレートの下部左右よりそれぞれ外方に突出する側部支持ワイヤを、バックフレームにワイヤ製の下部バネ部材で連結してなる請求項1又は2記載の車両用シートのシートバック。
【請求項4】
前記下部バネ部材は、前記支持ワイヤを連結して補強する垂直部と水平部を有する請求項3記載の車両用シートのシートバック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後方からの衝突(いわゆる後突)を受けた着座者が慣性により後方移動するとき、その後方荷重を吸収することができる車両用シートのシートバックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シート、例えば、自動車用シートにあっては、後突の発生時に、ヘッドレストを前方へ移動させて、着座者の頭部をサポートすると共に、後突を受けた着座者が慣性により後方移動するときに、その後方荷重を吸収できる様に、バックフレーム内に配設してシートバックの背凭れ面のパッドを支持する支持プレートを設けているものが有る(特開2006−341802号公報)。
【0003】
この自動車用シートにあっては、枠状のバックフレームと、このバックフレーム内に配設してシートバックの背凭れ面のパッドを支持する支持プレートと、この支持プレートの上下左右より外方に突出し支持プレートを前記バックフレーム内で支持する支持ワイヤと、この支持ワイヤと前記バックフレームを連結するバネ部材とを有しており、支持プレートの上部はその左右にバネ部材であるコイルバネの一端を取り付け、コイルバネの他端をバックフレームに取り付けて、支持プレートの上部はコイルバネにより弾力的に着座者を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−341802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の技術では、支持プレートの上部はコイルバネにより弾力的に着座者を支持しているので、支持プレートの上部は、コイルバネに生じる低荷重から高荷重まで比例的に動き、低荷重での動きが少ない方が座り心地が良いが、低荷重での動きを小さく抑えることができなかった。低荷重での動きを小さく抑えることができれば、快適な座り心地感が得られる。
【0006】
本発明は、低荷重での動きが少なく、快適な座り心地感が得られ且つ後突時の高荷重が生じてもそれを吸収できる車両用シートのシートバックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、枠状のバックフレームと、
このバックフレーム内に配設してシートバックの背凭れ面のパッドを支持する支持プレートと、
この支持プレートの上部より外方向に突出し支持プレートを前記バックフレーム内で支持する支持ワイヤと、
この支持ワイヤと前記バックフレームを連結するバネ部材とを有する車両用シートにおいて、
前記支持プレートの上部より上方向に突出する前記支持ワイヤには、ワイヤ製の上部バネ部材を連結し、
このワイヤ製の上部バネ部材は、前記バックフレームの上部左右内側に向き合う様に固設したブラケットの通孔に、上下方向にスライド可能に挿通した左右一対のスライド部と、
この左右一対のスライド部間に一体に形成して前記パッドに加わる後方荷重により後方且つ拡開状に変形する本体部とからなり、
前記パッドに加わる後方荷重を前記上部バネ部材により吸収する車両用シートのシートバックである。
【0008】
かかる車両用シートのシートバックでは、前記支持プレートの上部より上方向に突出する前記支持ワイヤには、ワイヤ製の上部バネ部材を連結し、このワイヤ製の上部バネ部材は、前記バックフレームの上部左右内側に向き合う様に固設したブラケットの通孔に、上下方向にスライド可能に挿通した左右一対のスライド部と、この左右一対のスライド部間に一体に形成して前記パッドに加わる後方荷重により後方且つ拡開状に変形する本体部とからなり、左右一対のスライド部はスライド部間に一体に形成した本体部により補強されているので、スライド部の上下方向のスライド量を小さく抑えることができ、パッドに加わる低荷重での動きが少なく、その為、快適な座り心地感が得られ、一方、後突時の高荷重が生じた際には、スライド部がスライドすると共に、この左右一対のスライド部間に一体に形成した本体部が前記パッドに加わる後方荷重により後方且つ拡開状に変形するので、後突時の高荷重が生じてもそれを吸収することができる。
【0009】
第2の発明は、前記上部バネ部材の本体部は、前記支持ワイヤを連結して補強する垂直部と水平部を有し、後突時の高荷重が生じても、本体部の垂直部と水平部により、高荷重をより一層吸収することができる。
【0010】
第3の発明は、前記支持プレートの下部左右よりそれぞれ外方に突出する側部の支持ワイヤを、バックフレームにワイヤ製の側部バネ部材とワイヤ製の下部バネ部材で連結してなる。支持プレートは、その側部と下部において、ワイヤ製の側部バネ部材とワイヤ製の下部バネ部材により連結しているので、支持プレートの下部に高荷重、低荷重が生じても十分に対応できる。
【0011】
第4の発明は、前記下部バネ部材と側部バネ部材には、前記支持ワイヤを連結して補強する垂直部と水平部を有する。下部バネ部材と側部バネ部材に垂直部と水平部を形成しているので、下部バネ部材と側部バネ部材の補強ができ、支持プレートの下部に生じる高荷重を吸収できると共に、低荷重での動きを少なくすることができ、快適な座り心地感が得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低荷重での動きが少なく、快適な座り心地感が得られ且つ後突時の高荷重が生じてもそれを吸収できる車両用シートのシートバックが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る一実施形態のシートバック内部の正面図である。
【
図2】
図1に示すシートバック内部の要部の斜視図である。
【
図3】
図1に示すシートバックのIII−IIIの断面図である。
【
図4】
図3に示すシートバックにおいて後突時の断面図である。
【
図5】
図1に示す支持ワイヤ、ワイヤ製のバネ部材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態につき、
図1乃至
図5に基づき説明する。
本発明に係る車両用シートの一実施形態として、自動車用シートのシートバックの場合につき説明する。この自動車用シートのシートバック1は、枠状のバックフレーム2と、このバックフレーム2内に配設してシートバック1の背凭れ面のパッド(図示せず)を支持する支持プレート3と、この支持プレート3の上下左右より外方に突出し支持プレート3をバックフレーム2内で支持する支持ワイヤ4と、この支持ワイヤ4とバックフレーム2を連結するバネ部材6、10とを有し、パッド内に設けられている。
【0015】
支持プレート3は、略枠状の枠状部3aと、この枠状部3aの中央上下には間欠的に形成した中空部3bと、枠状部3aの上下左右に間欠的に左右方向に突出する複数の突出部3c、3c・・とから成り、枠状部3aの上下部には後方向に形成した上折曲部3dと下折曲部3eには、支持ワイヤ4が取り付けられている。
【0016】
支持ワイヤ4は、
図5に示す様に、略U字形状で、上部に間隔を設け、上部の左右が外側方向に折り曲げられて左右上部端4a、4aが形成され、縦方向の下方には、左右個所に横コ字形状の段部4b、4bが形成されている。
支持プレート3の上部より上方に突出する支持ワイヤ4には、支持ワイヤ4とバックフレーム2とを連結するワイヤ製の上部バネ部材6を連結し、このワイヤ製の上部バネ部材6は、バックフレーム2の上部左右内側に向き合う様に固設したブラケット7の通孔7a、7aに、上下方向にスライド可能に挿通した左右一対のスライド部6a、6aと、この左右一対のスライド部6a、6a間に一体に形成してパッドに加わる後方荷重により後方且つ拡開状に変形する本体部6bとからなっている。
【0017】
この上部バネ部材6は、
図1,2,5に示す様に、支持ワイヤ4の左右上端部4a、4aに連結し、支持ワイヤ4の左右上端部4a、4a間に本体部6bを形成し、この本体部6bには支持ワイヤ4を連結して補強する垂直部8と水平部9を有し、この本体部6bに連続して左右一対のスライド部6a、6aが形成されている。このスライド部6aは、上方向へ延出して、ブラケット7の通孔7a、7aに挿し込まれ、ブラケット7,7の通孔7a、7aに対して上下方向にスライド可能に設けられている。
【0018】
更に、支持ワイヤ4の左右の段部4b、4bと、この段部4b、4bより下方の左右の支持ワイヤ4とは、支持プレート3の下部より下方に突出するワイヤ製の下部バネ部材10で連結してなっている。この下部バネ部材10は、上端が左右方向に延出するU字形状で、底部の中央部10aがバックフレーム2の下部フレーム部2bに係止し、上端左右が外方向に延出して延出部10b、10bを形成している。この延出部10b、10bには、支持ワイヤ4を補強する垂直部11と水平部12を形成し、垂直状11,11の左右の先端部10c、10cがバックフレーム2の側部フレーム部2c、2cに上方向から差し込まれて係止している。
【0019】
かかるシートバックでは、
図3に示す様に、支持プレート3に取り付けられた支持ワイヤ4は、その上下において、ワイヤ製の上部バネ部材6とワイヤ製の下部バネ部材10により保持されており、このワイヤ製の上下部バネ部材6,10には、水平部9,12と垂直部8,11が形成されて、支持ワイヤ4が上下で補強されているので、支持プレート3に低荷重が生じた際には、支持プレート3の動きは少なく、低荷重に比例して支持ワイヤ4は動くことがないので、良好な座り心地感が得られる。
【0020】
一方、後突時の高荷重が生じた際には、
図2、
図4に示す様に、ワイヤ製の上部バネ部材6のスライド部6a、6aがブラケット7の通孔7aを下方向にスライドすると共に、この左右一対のスライド部6a、6a間に一体に形成した本体部6bがパッドに加わる後方荷重により、本体部6bの垂直部8と水平部9とが後方且つ拡開状に変形するので、後突時の高荷重が生じてもそれを吸収することができる。
支持プレート3に取り付けられた支持ワイヤ4は、その上下において、ワイヤ製の上部バネ部材6とワイヤ製の下部バネ部材10により保持されており、このワイヤ製の上下部バネ部材6,10には、水平部9,12と垂直部8,11が形成されて、支持ワイヤ4が補強されているので、支持プレート3に高荷重が生じた際には、ワイヤ製の上下部バネ部材6,10により支持プレート3の上下が支持され、後突時の高荷重が生じても、上部バネ部材6の本体部6bと同様に、下部バネ部材10の水平部12、垂直部11も後方且つ拡開状に変形するので、高荷重が吸収できる。
【符号の説明】
【0021】
2はバックフレーム
3は支持プレート
4は支持ワイヤ
6はワイヤ製の上部バネ部材
10はワイヤ製の下部バネ部材