(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光学レンズと、前記光学レンズから入射する被写体の光学映像を電気信号に変換する撮像素子と、前記撮像素子が電気信号に変換した映像信号を所定の周期で順次送信する制御部と、を有するカメラ装置において、
前記撮像素子の利得を前記撮像素子がホワイトアウトする状態になる程度に高く調整する手段と、
前記撮像素子の利得を前記撮像素子がブラックアウトする状態になる程度に低く調整する手段と、
所定の撮像枚数毎に、前記撮像素子がホワイトアウトする状態になる程度に高く調整する手段による利得調整、または前記撮像素子がブラックアウトする状態になる程度に低く調整する手段による利得調整を交互に実施する制御手段と
を有することを特徴とするカメラ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで鉄道関係では、センサとしてのカメラ装置を積極的に導入してこなかった経緯がある。その主な理由としては、カメラ装置の正常性の検出が光電スイッチや近接スイッチなどの他のセンサ類と比較して難しい点が挙げられる。たとえば上述の特許文献1の技術は、比較的簡素な構成でカメラ装置の正常性を検出することを目的としている。しかしながら特許文献1の技術では、1台のカメラ装置において正常性を検出することは出来ず、複数の撮像手段により得られた各映像信号の同時刻のフレーム画像を相対的に比較する必要がある。このように簡素化を目的とした特許文献1のようなカメラ装置の正常性検出技術であっても依然として複雑な構成および処理を要する。
【0006】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、1台のカメラ装置について的確にその正常性を検出することができるカメラ装置、正常性検出装置および映像表示システムならびに正常性検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の観点は、カメラ装置である。本発明のカメラ装置は、光学レンズと、光学レンズから入射する被写体の光学映像を電気信号に変換する撮像素子と、撮像素子が電気信号に変換した映像信号を所定の周期で順次送信する制御部と、を有するカメラ装置において、撮像素子がホワイトアウトする状態になる程度の輝度を有する光を撮像素子に入射する高輝度発生手段と、撮像素子がブラックアウトする状態になる程度に撮像素子に入射する光を減光する減光手段と、所定の撮像枚数毎に、高輝度発生手段による光を撮像素子に入射する制御、または減光手段による撮像素子に入射する光を減光する制御を交互に実施する制御手段と、を有するものである。
【0008】
あるいは、高輝度発生手段に代えて、撮像素子の利得を撮像素子がホワイトアウトする状態になる程度に高く調整する手段を有し、減光手段に代えて、撮像素子の利得を撮像素子がブラックアウトする状態になる程度に低く調整する手段を有し、制御手段は、所定の撮像枚数毎に、撮像素子がホワイトアウトする状態になる程度に高く調整する手段による利得調整、または撮像素子がブラックアウトする状態になる程度に低く調整する手段による利得調整を交互に実施する制御手段を有するようにしてもよい。
【0009】
本発明の第二の観点は、正常性検出装置である。本発明の正常性検出装置は、本発明のカメラ装置の正常性を検出する正常性検出装置において、カメラ装置から順次送信される映像信号の中からホワイトアウトした状態の映像信号とブラックアウトした状態の映像信号とをそれぞれ抽出する抽出手段と、ホワイトアウトした状態の映像信号とブラックアウトした状態の映像信号とに基づいて電力を生成する電力生成手段と、電力生成手段により生成された電力により動作し接点を閉結状態にするリレー回路と、リレー回路の接点が閉結状態のときにカメラ装置の正常性を表示する正常性表示手段と、リレー回路の接点が開放状態のときに警報を発出する警報手段と、を有するものである。
【0010】
別の本発明のカメラ装置の正常性を検出する正常性検出装置は、カメラ装置から順次送信される映像信号の中からホワイトアウトした状態の映像信号とブラックアウトした状態の映像信号とをそれぞれ抽出する抽出手段と、ホワイトアウトした状態の映像信号およびブラックアウトした状態の映像信号における撮像素子の画素の動作状態を検査する画素検査手段と、を有するものである。
【0011】
さらに、上述の本発明の正常性検出装置は、リレー回路の接点が閉結状態のときにカメラ装置の正常性の表示と併せて、画素検査手段により撮像素子の画素の動作状態を検査し、その検査結果を出力し、リレー回路の接点が開放状態のときに、警報手段により警報を発出する手段を有するようにしてもよい。
【0012】
本発明の第三の観点は、映像表示システムである。本発明の映像表示システムは、本発明のカメラ装置と、本発明の正常性検出装置と、本発明のカメラ装置から順次送信される映像信号の中からホワイトアウトした状態の映像信号とブラックアウトした状態の映像信号とをそれぞれ除去した映像信号を抽出する映像信号抽出手段と、映像信号抽出手段から出力される映像信号を人の目に見える映像として表示する映像表示装置と、を有する映像表示システムである。
【0013】
本発明の第四の観点は、正常性検出方法である。本発明の正常性検出方法は、本発明のカメラ装置の正常性を検出する正常性検出装置が実行する正常性検出方法において、カメラ装置から順次送信される映像信号の中からホワイトアウトした状態の映像信号とブラックアウトした状態の映像信号とをそれぞれ抽出する抽出ステップと、ホワイトアウトした状態の映像信号とブラックアウトした状態の映像信号とに基づいて電力を生成する電力生成ステップと、電力生成ステップの処理により生成された電力により動作し接点を閉結状態にするリレー回路の接点が閉結状態のときにカメラ装置の正常性を表示する正常性表示ステップと、リレー回路の接点が開放状態のときに警報を発出する警報ステップと、を有するものである。
【0014】
別の本発明のカメラ装置の正常性を検出する正常性検出装置が実行する正常性検出方法は、カメラ装置から順次送信される映像信号の中からホワイトアウトした状態の映像信号とブラックアウトした状態の映像信号とをそれぞれ抽出する抽出ステップと、ホワイトアウトした状態の映像信号およびブラックアウトした状態の映像信号における撮像素子の画素の動作状態を検査する画素検査ステップと、を有するものである。
【0015】
さらに、上述の本発明の正常性検出方法は、リレー回路の接点が閉結状態のときにカメラ装置の正常性の表示と併せて、画素検査ステップの処理により撮像素子の画素の動作状態を検査し、その検査結果を出力し、リレー回路の接点が開放状態のときに、警報ステップの処理により警報を発出するステップを有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1台のカメラ装置について的確にその正常性を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態に係る映像表示システム1は、
図1に示すように、カメラ装置2と、正常性検出装置3と、映像表示装置4と、正常性表示部20とを有する。カメラ装置2は、被写体5を撮像し、映像表示装置4は、カメラ装置2が撮像した被写体5の映像信号を人の目に見える映像として表示する。このとき、正常性検出装置3は、カメラ装置2の動作状態を監視し、カメラ装置2の正常性を常時監視する。正常性検出装置3によりカメラ装置2の正常性が確認されているときには、正常性表示部20にその旨が表示される。また、カメラ装置2の異常の発生が検出されたときには、その旨を外部に報知する。正常性検出装置3の異常の発生の報知には、二とおりある。報知の一つ目は、カメラ装置2の画素の異常の発生の報知であり、正常性検出装置3から検査結果表示部18に対して画素検査結果が報知される。報知の二つ目は、カメラ装置2自体の動作の異常の発生の報知であり、正常性検出装置3から警報部16に対してカメラ装置動作異常が報知される。以下では、映像表示システム1の構成要素であるカメラ装置2、正常性検出装置3の順に説明し、その後で、映像表示システム1の全体についてさらに詳細に説明する。
【0019】
なお、映像表示装置4については、映像信号を入力して画像をモニタ画面に表示する装置であれば、どのようなものを適用してもよいので、詳細な説明は省略する。たとえば、映像表示装置4は、パーソナルコンピュータなどのモニタ装置またはテレビジョン装置でよい。また、正常性表示部20は、カメラ装置2が正常動作中であることを表示するものであれば、どのようなものを適用してもよいので、詳細な説明は省略する。たとえば正常性表示部20は、カメラ装置2が正常動作中に点灯または点滅するパイロットランプ(PL)などでよい。
【0020】
本発明の実施の形態に係るカメラ装置2は、
図2に示すように、光学レンズ6と、光学レンズ6から入射する被写体5の光学映像を電気信号に変換する撮像素子7と、撮像素子7が電気信号に変換した映像信号を所定の周期で順次送信する撮像制御部8と、を被写体5を撮像するための構成として有する。
【0021】
光学レンズ6は、被写体5の映像を光学的に撮像素子7の画素の上に結像させる。
図2では、光学レンズ6は、模式的に凸レンズの形状のみを図示してあるが、実際には、レンズの焦点を調整するための焦点調整機構および撮像素子7への入射光量を調整するための絞り調整機構を有する。さらに、光学レンズ6は、焦点距離を可変するズーム機構を有してもよい。
【0022】
撮像素子7は、たとえば数百万個程度の複数の画素が縦横に並べられたものである。画素は、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(相補性金属酸化膜半導体)などが用いられる。
【0023】
撮像制御部8は、光学レンズ6および撮像素子7を制御する。たとえば撮像制御部8は、光学レンズ6の焦点調整機構、絞り調整機構、またはズーム機構などを制御すると共に、撮像素子7の各画素の出力(すなわち画素値)を取り込んで映像信号を生成する。このとき、撮像制御部8は、周期的に、撮像素子7の各画素の出力を取り込んで映像信号を生成する。撮像制御部8が映像信号を生成する周期は、たとえば数十分の1秒程度の周期である。このようにして周期的に生成された複数の映像信号を静止画像として時系列順に表示したときに、人の目には動画として認識される。
【0024】
さらに、
図2に示すカメラ装置2は、正常性の検出を行うための構成として、撮像素子7がホワイトアウトする状態になる程度の輝度を有する光を撮像素子7に入射する照光部9と、撮像素子7がブラックアウトする状態になる程度に撮像素子7に入射する光を減光する遮光部10と、所定の撮像枚数毎に、照光部9による光を撮像素子7に入射する制御、または遮光部10による撮像素子7に入射する光を減光する制御を交互に実施する正常性検出制御部11と、を有する。
【0025】
照光部9は、
図2の例では、環状の発光体であり、この環状の発光体は、たとえば、光学レンズ6のレンズの周囲に配設される。照光部9の環状の発光体が発光すると、その照射光は、光学レンズ6のレンズを通過して撮像素子7に届く。このとき、照光部9の輝度は、照光部9からの照射光が撮像素子7に届いたときに、撮像素子7が飽和状態となりホワイトアウトする程度の輝度である。照光部9の発光体は、たとえばLED(発光ダイオード)などを環状に複数並べることによって構成される。
【0026】
遮光部10は、たとえば平板状の液晶シャッタなどであり、通電時には、遮光部10は遮光状態となり、非通電時には、透明になる。遮光部10が透明であるときには、光学レンズ6から入射する光は、ほぼ全てが撮像素子7に届くが、遮光部10が遮光状態になると光学レンズ6から入射する光は、ほぼ全てが撮像素子7には届かない。よって、遮光部10が遮光状態になると撮像素子7はブラックアウトした状態になる。
【0027】
正常性検出制御部11は、撮像制御部8と連係し、撮像制御部8が撮像素子7の各画素の出力を取り込んで映像信号を生成するタイミングの情報を取得する。これにより、正常性検出制御部11は、照光部9および遮光部10を動作させるタイミングを計算し、そのタイミングに合わせて、照光部9または遮光部10を動作させる。
【0028】
正常性検出制御部11の動作手順について
図3のフローチャートを参照しながら説明する。
図3の「START」の条件としては、カメラ装置2のスイッチ(不図示)がON状態に操作されるという条件であり、これによりカメラ装置2が動作を開始する状態である。
図3のフローチャートにおいて、「START」の条件が満たされると、フローは、ステップS1に進む。
【0029】
ステップS1において、正常性検出制御部11は、撮像制御部8が規定の枚数の映像信号を生成したか否かを判定する。ステップS1において、規定の枚数の映像信号を生成したと判定すると、フローは、ステップS2に進む。一方、ステップS1において、未だ規定の枚数の映像信号を生成していないと判定されると、フローは、ステップS1を繰り返す。
【0030】
ステップS2において、正常性検出制御部11は、照光部9を、撮像制御部8が映像信号を1枚分生成する時間だけ動作させて、フローは、ステップS3に進む。
【0031】
ステップS3において、正常性検出制御部11は、撮像制御部8が規定の枚数の映像信号を生成したか否かを判定する。ステップS3において、規定の枚数の映像信号を生成したと判定すると、フローは、ステップS4に進む。一方、ステップS3において、未だ規定の枚数の映像信号を生成していないと判定されると、フローは、ステップS3を繰り返す。
【0032】
ステップS4において、正常性検出制御部11は、遮光部10を、撮像制御部8が映像信号を1枚分生成する時間だけ動作させて、フローは、ステップS5に進む。
【0033】
ステップS5において、正常性検出制御部11は、カメラ装置2のスイッチがOFF状態であるか否かを判定する。ステップS5において、スイッチがOFF状態であると判定されると、処理を終了する(END)。一方、ステップS5において、スイッチがOFF状態ではない(すなわちON状態のまま)と判定されると、フローは、ステップS1に戻る。
【0034】
以上説明したように、正常性検出制御部11は、撮像制御部8と連系し、照光部9および遮光部10の動作を制御することで、
図2に示す映像信号列12を生成してカメラ装置2から正常性検出装置3に送出する。
【0035】
図2に示す映像信号列12は、被写体5を撮像した映像信号F、ブラックアウトした映像信号B、およびホワイトアウトした映像信号Wを含む。たとえば
図2の例では、映像信号Bと映像信号Wとの間には、2枚分の映像信号Fが挿入されている。よって、
図3のフローチャートにおけるステップS1,S3の「規定枚数」は、
図2の映像信号列12の例では「2枚」になる。
【0036】
次に、本発明の実施の形態に係る正常性検出装置3について
図4を参照しながら説明する。正常性検出装置3は、カメラ装置2から順次送信される映像信号の中から正常性検出制御部11により輝度の制御を受けてホワイトアウトした状態の映像信号Wとブラックアウトした状態の映像信号Bとをそれぞれ抽出する抽出部13と、ホワイトアウトした状態の映像信号Wとブラックアウトした状態の映像信号Bとに基づいてリレー回路15を駆動するための電力を生成するリレー駆動電源部14と、リレー駆動電源部14から供給される電力で動作し固定接点aを閉結状態にするリレー回路15と、リレー回路15の固定接点aが閉結状態のときにカメラ装置2の正常性を表示する正常性表示部20(たとえばパイロットランプ(PL))と、リレー回路15の固定接点aが開放状態のときに警報を発出する警報部16と、を有する。なお、リレー回路15の固定接点aが開放状態であるとは、すなわち、リレー回路15の固定接点bが閉結状態であることを意味する。さらに、正常性検出装置3は、ホワイトアウトした状態の映像信号Wおよびブラックアウトした状態の映像信号Bにおける撮像素子7の画素の動作状態を検査する画素検査部17と、画素検査部17の検査結果を表示する検査結果表示部18とを有する。
【0037】
このような構成を有する正常性検出装置3は、リレー回路15の固定接点aが閉結状態のときに正常性表示部20によるカメラ装置2の正常性の表示と併せて、画素検査部17により撮像素子7の画素の動作状態を検査し、その検査結果を検査結果表示部18に出力し、リレー回路15の固定接点aが開放状態のときに、警報部16により警報を発出する。なお、警報部16の出力は、たとえば音声信号であり、スピーカ19から外部に報知される。この音声信号は、「異常が発生しました。」などの合成音声でもよいし、ブザーやサイレンなどの警報音でもよい。
【0038】
抽出部13は、カメラ装置2から送出された映像信号列12を入力し、映像信号列12を、映像信号Bと映像信号Wと映像信号Fとに分類する。たとえば、全画素にわたって真っ暗な映像信号(たとえば、最小画素値)であれば、これを映像信号Bとして分類する。また、全画素にわたって真っ白な映像信号(たとえば、最大画素値)であれば、これを映像信号Wとして分類する。そして、映像信号Bにも映像信号Wにも分類されなかった映像信号を映像信号Fとして分類する。さらに、抽出部13は、映像信号Fに分類された映像信号を、時系列を保持した状態で、映像表示装置4に送出し、映像信号Bおよび映像信号Wに分類された映像信号を、時系列を保持した状態で、リレー駆動電源部14に送出する。あるいは、抽出部13における別の映像信号の分類方法として、映像信号Wまたは映像信号Bが1つ検出されたら、その検出位置を基準とすれば他の映像信号の位置が特定できるので、これにより映像信号W,B,Fを分類してもよい。
【0039】
リレー駆動電源部14は、抽出部13が送出した映像信号Bおよび映像信号Wに基づいてリレー回路15を駆動するための電力を生成する。リレー駆動電源部14は、カメラ装置2の正常性を検出する構成の一部であり、映像信号Bおよび映像信号W以外の入力があっても電力を生成しないように構成されている。すなわち、カメラ装置2に何らかの異常が発生し、映像信号Bおよび映像信号Wがカメラ装置2から送出されないときには、リレー駆動電源部14は電力を生成しないようにする。
【0040】
たとえば、一般的に、カメラ装置2を構成する部品に故障が発生すれば、カメラ装置2からは何も出力が送出されない状態か、あるいは、カメラ装置2から映像信号列12以外の不特定の信号が送出される状態のいずれかの状態に陥る。カメラ装置2がこのような状態に陥ったときには、リレー駆動電源部14は、電力を生成しないように構成される。これによれば、カメラ装置2に異常が発生したときには、リレー駆動電源部14の後段にあるリレー回路15が動作しない(すなわち固定接点bが閉結状態)ようにすることができる。
【0041】
さらに具体例を挙げて説明すると、たとえば、画素値が大きい映像信号Wの電圧によって、発光ダイオード等の光源を発光させ、その光のエネルギを電気のエネルギに変換する光電変換素子であるフォトダイオードまたはフォトトランジスタなどにより受け、映像信号Wの周期に同期した周期の交流電力を生成する。このようにして生成した映像信号Wの周期に同期した周期の交流電力を、たとえば、当該周期の交流電力以外は減衰させる特性を有するバンドパスフィルタ(帯域濾波器)等に通す。このバンドパスフィルタにより、映像信号Wの周期に同期した周期の交流電力以外の電力は減衰させることができる。このバンドパスフィルタを通過した交流電力を、後段のリレー回路15のコイルCの仕様に適合するように適宜変換する。
【0042】
たとえば、コイルCが交流電力により動作する仕様であれば、バンドパスフィルタを通過した交流電力は、そのままコイルCに供給される。また、コイルCが直流電力により動作する仕様であれば、バンドパスフィルタを通過した交流電力は、整流器等によって直流電力に変換した後でコイルCに供給される。また、交流電力または直流電力のいずれについてもコイルCを駆動する電圧値に達していない場合には昇圧される。反対に、交流電力または直流電力のいずれについてもコイルCを駆動する電圧値を超えている場合には降圧される。このような昇圧または降圧には、トランスまたはコンバータあるいは抵抗器等を利用することができる。もしくは、コイルCが交流電力により動作する仕様であってもバンドパスフィルタを通過した交流電力の周期と異なる周期の交流電力で動作する仕様である場合には、バンドパスフィルタを通過した交流電力をいったん直流電力に変換した後に、インバータ等によって周期(すなわち周波数)の異なる交流電力に変換することができる。なお、リレー駆動電源部14の構成については、上述した構成以外にも既存の様々な構成を適用することができる。
【0043】
リレー駆動電源部14から出力されるリレー回路15を駆動するための電力は、リレー回路15のコイルCに供給されてコイルCを励磁させる。リレー回路15では、コイルCが励磁されるまでは、不図示のバネの力で固定接点b側に接続している可動接点MがコイルCの励磁により発生した電磁力により固定接点a側に吸引される。
【0044】
上述のリレー回路15は、固定接点a,b、可動接点M、およびコイルCにより構成される。コイルCの非通電時には、可動接点Mは不図示のバネの力により固定接点b側に接続している。コイルCにリレー駆動電源部14からリレー駆動電力が供給されると、コイルCが励磁され、固定接点b側にバネの力で接続している可動接点Mがバネの力よりも強いコイルCの磁力に吸引されて固定接点a側に切り換わる。このとき、正常性表示部20のパイロットランプ(PL)には、可動接点Mおよび固定接点aを介してバッテリBT1から電力が供給され、パイロットランプ(PL)は点灯する。管理者は、正常性表示部20のパイロットランプ(PL)が点灯していることを目視確認することで、カメラ装置2が正常に稼動していることを認識することができる。
【0045】
警報部16は、リレー回路15の固定接点bと可動接点MにバッテリBT2およびスイッチSWを介して接続される。スイッチSWは、映像表示システム1の稼動中には、ON状態に操作される。スイッチSWがON状態であれば、リレー回路15の固定接点bと可動接点Mとが接続されると、バッテリBT2の電力が警報部16に供給され、警報部16が動作する。警報部16が動作すると、警報部16に接続されるスピーカ19から警報音が外部に送出される。
【0046】
これによれば、カメラ装置2から送出される映像信号列12に、映像信号Bおよび映像信号Wが含まれず、リレー駆動電源部14でリレー駆動電力が生成されなくなると、リレー回路15の可動接点Mがバネの力で固定接点b側に接続され、警報部16からスピーカ19を介して警報音が外部に送出される。これにより、管理者は、警報音を聴取することで、カメラ装置2の異常の発生を速やかに認識することができる。また、このときに、正常性検出装置3において、複雑な演算処理等を必要とせず、警報を発出することができる。さらには、カメラ装置2の異常ではなく、正常性検出装置3に異常が発生し、正常性検出装置3の動作が停止したような場合でも警報部16は、正常性検出装置3とは別電源であるバッテリBT2により警報を発出することができる。このようにして、映像表示システム1では、カメラ装置2またはそれ以外の正常性検出装置3自体の異常の検出において、きわめて高い信頼性を確保することができる。
【0047】
なお、スイッチSWの操作方法としては、たとえば、映像表示システム1が休止中または設置工事中などで、リレー回路15のコイルCが非通電状態であるときには、固定接点bと可動接点Mとがバネの力で接続状態になる。このようなときに、警報部16の作動を停止させるためにスイッチSWをOFF状態に操作する。または、スイッチSWがON状態であり、映像表示システム1が稼働中であるときに、警報部16が警報を発出したとき、管理者がスピーカ19から送出される警報音を停止させる際にもスイッチSWをOFF状態に操作する。
【0048】
以上のように、カメラ装置2の正常性の監視は、映上表示システム1の稼働中には常時行われるが、これと併せて、カメラ装置2の画素の正常性の監視も行われる。このときに、画素検査部17は、抽出部13から送出される映像信号Bおよび映像信号Wを解析し、カメラ装置2の撮像素子7の画素の動作状態を検査する。検査結果表示部18は、画素検査部17が撮像素子7の画素の動作状態を検査した結果を表示する。
【0049】
画素検査部17における画素の検査手順について
図5のフローチャートを参照しながら説明する。
図5のフローチャートにおける「START」の条件は、正常性検出装置3が稼働中であり、抽出部13から映像信号Bおよび映像信号Wが順次、画素検査部17に送出されているという条件である。画素検査部17において、「START」の条件が満たされると、フローは、ステップS10に進む。なお、
図5のフローチャートにおける「START」から「END」までの処理は1周期分の処理であり、画素検査部17は、正常性検出装置3の稼働中には、「START」から「END」までの処理を繰り返し実行する。
【0050】
ステップS10において、画素検査部17は、入力された映像信号が映像信号Wか映像信号Bかを判定する。ステップS10において、映像信号Wであると判定されると、フローは、ステップS11に進む。一方、ステップS10において、映像信号Bであると判定されると、フローは、ステップS12に進む。
【0051】
ステップS11において、画素検査部17は、映像信号Wを構成する各画素の配置位置に対応する映像の部分に暗い部分があるか否かを調べることで、暗い画素の数を検出し、フローは、ステップS13に進む。すなわち、映像信号Wは、全体がホワイトアウトした映像信号なので、正常な画素による映像信号であれば、同じくホワイトアウトしているはずである。にもかかわらず、映像信号Wの中で暗い部分があれば、その部分に対応する位置の画素は常時暗い状態(すなわち、常時最小画素値)であり、故障していると判定する。
【0052】
ステップS12において、画素検査部17は、映像信号Bを構成する各画素の配置位置に対応する映像の部分に明るい部分があるか否かを調べることで、明るい画素の数を検出し、フローは、ステップS13に進む。すなわち、映像信号Bは、全体がブラックアウトした映像信号なので、正常な画素による映像信号であれば、同じくブラックアウトしているはずである。にもかかわらず、映像信号Bの中で明るい部分があれば、その部分に対応する位置の画素は常時明るい状態(すなわち、常時最大画素値)であり、故障していると判定する。
【0053】
ステップS13において、画素検査部17は、ステップS11およびステップS12で検出した故障した画素数の情報を検査結果表示部18に出力して1周期分の処理を終了する(END)。
【0054】
このようにして、画素検査部17では、常時最小画素値となってしまった画素および常時最大画素値となってしまった画素の画素数をそれぞれ検出し、その検査結果を検査結果表示部18に表示することができる。なお、ここでは、故障した画素数を検査結果表示部18に表示する例を説明したが、故障した画素数のみならず故障した画素の撮像素子7上の位置情報を併せて表示してもよい。さらに、単に故障した画素数またはその画素位置を表示するのみならず故障の種類(常時最小画素値または常時最大画素値)の情報も併せて表示してもよい。
【0055】
これによれば、管理者は、検査結果表示部18に表示された検査結果によって、カメラ装置2の撮像素子7における画素の状態を認識することができる。
【0056】
また、抽出部13は、カメラ装置2から入力した映像信号列12を分類した結果得られた映像信号Fを映像表示装置4に送出する。これにより映像表示装置4には、カメラ装置2によって撮像された被写体5の映像が不図示のモニタ画面に映し出される。管理者は、映像表示装置4のモニタ画面に映し出された被写体5の映像から被写体5の状態を認識することができる。
【0057】
以上説明したように、映像表示システム1によれば、映像表示装置4によって、被写体5の状態を監視しながら、カメラ装置2の正常性を監視することができる。このとき、カメラ装置2自体の正常性と、カメラ装置2の撮像素子7における画素レベルの正常性とを同時に監視することができる。さらに、カメラ装置2自体の正常性の監視には、複雑な演算処理等を必要としないため、きわめて高い信頼性での正常性の監視を実現することができる。
【0058】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態では、光学レンズ6に絞り調整機構を有すると説明したが、絞り調整機構は、光学レンズ6とは異なる位置に設ける構成としてもよい。または、絞り調整機構を省略し、その代わりに、撮像素子7の利得を調整するようにしてもよい。
【0059】
また、上述の実施の形態では、警報部16の音声信号をスピーカ19から出力する例を説明したが、警報部16の出力が接点のON/OFF信号であれば、スピーカ19に代えて、ランプの点灯または点滅などでもよい。また、警報部16の出力が論理回路のHIGH/LOW信号であれば、スピーカ19に代えて、パーソナルコンピュータなどを接続し、そのモニタ画面に異常を表示させてもよい。
【0060】
また、上述の実施の形態では、抽出部13が送出する映像信号Fを映像表示装置4のモニタ画面に表示し、管理者が表示を目視確認する例を説明したが、その他にも、抽出部13が送出する映像信号Fを不図示の画像解析装置に入力することで、管理者がモニタ画面を目視確認することなく、被写体5の状態を自動的に監視したり、異常発生に対応するための各種機器が自動的に起動するようにしてもよい。
【0061】
また、
図1および
図4に示す映像表示システム1の全体構成では、説明を分かり易くするために、カメラ装置2、正常性検出装置3、および映像表示装置4とに分けたが、これらの構成要素を互いに組み合わせてもよい。たとえば、カメラ装置2の内部に、正常性検出装置3を内蔵してもよい。これによれば、カメラ装置2は、自己診断機能を有するものとなる。その他にも正常性検出装置3に映像表示装置4を内蔵して1つの装置が2種類の画面を備えてもよいし、検査結果表示部18が映像表示装置4の機能を兼ね備えて1つの画面に2種類の表示を行ってもよい。反対に、映像表示装置4に検査結果表示部18を内蔵して1つの装置が2種類の画面を備えてもよいし、映像表示装置4が検査結果表示部18の機能を兼ね備えて1つの画面に2種類の表示を行ってもよい。
【0062】
また、カメラ装置2および正常性検出装置3などの正常性検出機能の設置位置と、映像表示装置4、検査結果表示部18、警報部16(スピーカ19)、および正常性表示部20(パイロットランプ(PL))などの外部報知機能の設置位置とを別にし、その間を無線通信やネットワーク等によって接続してもよい。
【0063】
また、画素の異常は、頻繁に発生するものではなく、また、仮に、画素の一部に異常が発生してもカメラ装置2の機能自体が即座に失われるものではない。よって、画素検査部17による画素の検査は、一時間に一回、一日一回、または一週間に一回など、一定の期間毎に行うようにしてもよい。
【0064】
また、映像信号列12の例として、
図2では、映像信号Bと映像信号Wとの間に、2枚分の映像信号Fが挿入されている例を示したが、映像信号Bと映像信号Wとの間に挿入される映像信号Fの枚数は、様々に変更が可能である。映像信号Bと映像信号Wとの間に挿入される映像信号Fの枚数は、たとえば検査を行う頻度や動画を構成するフレーム数などに応じて適宜変更が可能である。
【0065】
また、照光部9は、環状の発光体を有する例を説明したが、照光部9の構成を他の構成としてもよい。たとえば、照光部9は、光学レンズ6のレンズの周囲の上下左右の4箇所や上下または左右の2箇所に発光体を設けたものでもよい。あるいは、照光部9は、光学レンズ6のレンズの周囲のいずれか1箇所に発光体を設けたものでもよい。照光部9を1個の発光体で実現する場合、撮像素子7に対して均等に光を照射することは難しいが、撮像素子7が全体的にホワイトアウトすれば、光が均等に照射されるか否かは問題にならない。
【0066】
また、
図2の例では、光学レンズ6からみて被写体5の側に照光部9を取り付けたが、照光部9の取り付け位置を、照光部9の照射光が光学レンズ6を通さずに、直接的に撮像素子7に照射される位置である光学レンズ6と遮光部10との間または遮光部10と撮像素子7との間などで被写体5からの入射光を妨げない位置に設けてもよい。これは遮光部10の取り付け位置についても同様であり、遮光部10の位置を、たとえば照光部9の被写体5の側や照光部9と光学レンズ6との間などに設けてもよい。このように、照光部9および遮光部10の取り付け位置を適宜変更することで、市販品のカメラ装置2を利用することもできるようになり、安価かつ短期間に映像表示システム1を実現することができる。
【0067】
また、遮光部10は、
図2に示す構成の他にも様々な構成とすることができる。たとえば映像信号Bの映像信号列12への挿入周期が比較的長い場合には、遮光部10に機械的なシャッタ機構を用いてもよい。または、光学レンズ6のレンズ自体に液晶シャッタの機能を有するようにして遮光部10を省略してもよい。あるいは、照光部9の環状の発光体の開口部に液晶シャッタを装着することで、照光部9が遮光部10の機能も兼ね備えた構成としてもよい。
【0068】
また、照光部9および遮光部10を用いる代わりに、撮像素子7の利得(ゲイン)を調整することにより、ホワイトアウトした状態の映像信号Wとブラックアウトした状態の映像信号Bとを生成してもよい。たとえば撮像素子7の利得を高く調整すると、僅かな照度の光でも画素の画素値が飽和状態になるので、照光部9を用いなくてもホワイトアウトした状態の映像信号Wを生成できる。反対に、撮像素子7の利得を低く調整すると、通常の照度の光では画素の画素値がゼロに近いままなので、遮光部10を用いなくてもブラックアウトした状態の映像信号Bを生成できる。これによれば、照光部9および遮光部10を省略することができ、カメラ装置2の構成を簡易化することができる。また、これによれば、カメラ装置2自体は、内部構成をほとんど変更する必要がなく、市販品をそのまま用いることができるので、安価かつ短期間に映像表示システム1を実現することができる。
【0069】
また、カメラ装置2における撮像制御部8および正常性検出制御部11、正常性検出装置3における抽出部13の制御機能およびリレー駆動電源部14の制御機能、警報部16の制御機能、画素検査部17の制御機能、検査結果表示部18の制御機能などについては、1つまたは複数の情報処理装置が予めインストールされている所定のプログラムを実行することによって実現することができる。このような情報処理装置は、たとえば、メモリ、CPU(Central Processing Unit)、入出力ポートなどを有する。情報処理装置のCPUは、メモリなどから所定のプログラムとして制御プログラムを読み込んで実行する。これにより、情報処理装置には、上述した制御部または制御機能が実現される。なお、CPUの代わりにASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSP(Digital Signal Processor)などを用いてもよい。
【0070】
また、上述の所定のプログラムは、映像表示システム1の出荷前に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであっても、映像表示システム1の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。また、プログラムの一部が、映像表示システム1の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。映像表示システム1の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されるプログラムは、例えば、CD−ROMなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されているものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
【0071】
また、上述の所定のプログラムは、情報処理装置によって直接実行可能なものだけでなく、ハードディスクなどにインストールすることによって実行可能となるものも含む。また、圧縮されたり、暗号化されたりしたものも含む。
【0072】
このように、情報処理装置とプログラムによって映像表示システム1の制御機能を実現することにより、大量生産や仕様変更(または設計変更)に対して柔軟に対応可能となる。
【0073】
なお、情報処理装置が実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。