【実施例】
【0024】
実施例1
(R)−(E)−2−(4−(2−(5−(1−(3,5−ジクロロピリジン−4−イル)エトキシ)−1H−インダゾール−3−イル)ビニル)−1H−ピラゾール−1−イル)エタノール一水和物形態1:
反応槽を窒素でパージし、(R)−(E)−2−(4−(2−(5−(1−(3,5−ジクロロピリジン−4−イル)エトキシ)−1H−インダゾール−3−イル)ビニル)−1H−ピラゾール−1−イル)エタノールおよび11%水/アセトニトリルからなる溶媒混合物で満たす。得られた懸濁液を内部温度66〜68℃まで加熱して溶液を精製する。溶液をゆっくりと56−58℃に冷却し、次いで11%水/アセトニトリル混合物中の種晶の懸濁液で播種し、ゆっくり攪拌する。反応混合物をまず48−50℃に冷却し、次いで19−20℃に冷却する。生成物を、固体ケーキを通して、少なくとも80%の相対湿度を有する窒素流の存在下で濾過により単離する。次いで窒素流における湿度レベルを続いて40%に変化させ、乾燥を継続し、標題化合物の生成を得る。種晶が以下と同様に得られることに留意されたい。反応槽を窒素でパージし、(R)−(E)−2−(4−(2−(5−(1−(3,5−ジクロロピリジン−4−イル)エトキシ)−1H−インダゾール−3−イル)ビニル)−1H−ピラゾール−1−イル)エタノールおよび11%水/アセトニトリルからなる溶媒混合物で満たす。得られた懸濁液を70℃の内部温度まで加熱して、溶液を生成する。次いで、溶液をゆっくりと冷却し、結晶化し、濾過し、乾燥させる。この化合物は、FGFRの強力な阻害剤であり、大規模処理特性、結晶化による精製容易性、ならびに、製剤過程および保存の条件下での熱力学的安定性を有する上質固体の前形態に関連する有効な特性を提供し得る。
【0025】
実施例1の化合物、XRPD
XRPDパターンを、Optixロングファインフォーカスソースを用いて生成されたCuKa放射(λ=1.54059Å(電圧:45kVおよびアンペア:40
mA))を備えたPANalytical X’Pert(商標)Pro MPD PW3040 Pro回折計を使用して収集する。標本を3ミクロン厚フィルムの間に入れ、透過幾何学で分析し、1秒当たり1回転で回転させ、配向統計を最適化する。分析の前に、シリコン標本(NIST標準参照材料640c)を分析して、シリコン111ピークの位置を検証する。1つのパナリティカルパターンを、この材料について分析し、好ましい配向および粒子統計効果を、単一の結晶解析からの模擬XRPDパターンとの比較によって評価する。楕円形漸変多層膜鏡(elliptically graded multilayer mirror)を用いて、標本を通し、検出器上に、ソースのCu Ka X線をフォーカスする。回折パターンを標本から240mmに位置されたスキャン位置高感度検出器(X’Celerator)を用いて収集する。データを、1.01から39.99度(2θ)から収集する。ここで、ステップサイズは0.017度 2θであり、スキャンスピードは1.2度/分であり、0.5度の発散スリットであり、0.25度の分散スリットである。ビームストップを用いて、空中分散により生成されたバックグラウンドを最小化する。ソーラースリットを、入射ビームおよび回折ビームに対して用いて、軸方向の発散を最小化する。観察されたピークを表1に示す。5%の強度閾値を用いる。
【0026】
【表1】
【0027】
したがって、適切に調製された実施例1のサンプルを、表1に示したような回折ピーク(2θ値)を有するCuK
α放射を用いるX線回折パターンにより特徴付け得る。この回折ピークは、具体的には、3.54、12.51、および19.16のピークの1つ以上と共に14.65でのピークを有し、より具体的には、14.65でのピークを有し、0.1度、より好ましくは0.01度の回折角に対する許容度を有する。
【0028】
FGF/FGFR経路の異常調節は、多くの形態のヒト悪性腫瘍に関与している。FGFRおよびFGFは、多くの場合、多数の癌において過剰発現し、それらの発現は、多くの場合、予後不良と相関する。FGFRキナーゼドメインでの活性化突然変異は、乳癌、NSCLC、膀胱癌、胃癌、前立腺癌、大腸癌、および、多発性骨髄腫を含む、いくつかの型の腫瘍で見出されている。また、FGFR遺伝子座のゲノム増幅も、多くの乳癌患者、胃癌患者、および肺癌患者で検出された。また、FGFRまたはFGFの過剰発現も、膀胱癌、多発性骨髄腫、前立腺癌、および、肺癌などの多くの異なるタイプの腫瘍で見出されている。FGFRファミリー経路阻害剤治療による効果を得られ得る他の癌としては、AML、肝臓癌、黒色腫、頭頸部癌、甲状腺癌、膵臓癌、腎細胞癌、膠芽細胞腫、および、睾丸癌が挙げられる。腫瘍形成および進行におけるそれらの役割に加えて、FGFおよびFGFRも、特に腫瘍増殖の間の血管形成の重要な調節因子である。また、FGF/FGFR軸も、癌関連繊維芽細胞などの他の腫瘍間質細胞を増大させる重要な役割を担う。また、FGFの上方調節は、抗血管形成および他の化学療法に対する耐性をもたらす。最終的に、FGFRの小分子阻害剤は、いくつかの前臨床腫瘍モデルで抗腫瘍活性を証明しており、診療所で検討されている。まとめると、FGF/FGFR経路は、癌細胞でのいくつかの重要な細胞プロセスに必須である。これらの理由により、FGFRおよび/またはFGFシグナル伝達を標的とすることに基づく治療は、腫瘍細胞に直接および腫瘍血管形成の両方に影響を与え得る。
【0029】
調製物10は、下記アッセイにおいて以下に説明するように基本的に検査される。アッセイとしては、FGFR1酵素アッセイ(フィルタ結合)、FGFR3酵素アッセイ(フィルタ結合)、RT−112セルベースアッセイにおけるFGF9誘導p−ERK(BSAの存在下で)、および、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)セルベースアッセイにおけるERKリン酸化反応(Thr202/Tyr204)のAlphaScreen SureFire検出が挙げられる。これらのアッセイは、調製物10がFGFRファミリー経路阻害剤であり、抗癌活性を有することを証明する。よって、非晶形の(R)−(E)−2−(4−(2−(5−(1−(3,5−ジクロロピリジン−4−イル)エトキシ)−1H−インダゾール−3−イル)ビニル)−1H−ピラゾール−1−イル)エタノールで得られた結果は、本発明の化合物で得られた結果を示す。化合物の結晶形はさらに有益である。なぜなら、それらは、大規模処理特性、結晶化による精製容易性、ならびに、製剤過程および保存の条件下での熱力学的安定性を有する上質固体の前形態に関連する特性を提供し得るからである。
【0030】
FGFR1およびFGFR3酵素アッセイ(フィルタ結合)
FGFR1またはFGFR3キナーゼ(0.15ng/μLヒトFGFR1または0.32ng/μLヒトFGFR3)を、10mMの4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタン−スルホン酸(HEPES)pH7.5、8mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス−HCl)、pH7.5、5.0mMジチオスレイトール(DTT)、10.0μMアデノシン三リン酸(ATP)、10mMのMnCl
2、150mMのNaCl、0.01%のTRITON(登録商標)X−100、0.5μCi
33P−ATP、および0.05μg/μLのポリ(Glu−Tyr)を含有する50μLのバッファ中でインキュベートする。反応を50μLの容量で室温にて30分間実施し、次いで、130μLの10%H
3PO
4を加えてクエンチする。反応物(120μL)を96ウェルの1.0μmガラス繊維フィルタプレートに移し、室温で20〜30分間インキュベートし、次いで、TITERTEK(登録商標)Zoom上で0.5%H
3PO
4を用いて3回洗浄する。ウェルを風乾し、その後、40μLのMicroScint(商標)20(Packard)を加え、次いで、Wallac Micobetaカウンタでカウントする。化合物阻害のために、本化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)中の10mMストックとして提供する。化合物を、20%DMSO中で1:3に連続希釈して、10点の濃度反応曲線を生成し、反応プレートへと1:5(4%最終DMSO濃度中の20μMから0.001μM最終濃度)に希釈する。その後、フィルタプレート中に反応混合物を加えて、化合物活性を決定する。コントロールウェルは、4%DMSOのみを含有し、一方で、基準値を、0.1Mエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有するコントロールウェルにより確立する。各10濃度についての阻害値率を、各プレート上のコントロールウェルから算出し、その後、10点の濃度反応データを、得られたカーブフィットから推定された4パラメータロジスティック式および絶対IC
50値を用いてActivityBaseソフトウェア(IDBS)を使用することで、分析する。FGFR1およびFGFR3酵素アッセイは、それぞれ、1.38および1.47の推定IC
50についての最小有意比(MSR)を有する。これらのアッセイにおいてFGFR1およびFGFR3についての調製物10のIC
50結果を、それぞれ、0.0077および0.0064μMと推定する。このデータは、調製物10が強力なFGFR1およびFGFR3酵素阻害剤であることを証明している。
【0031】
BSAを含むFGF9誘導p−ERK
ヒトRT112膀胱癌細胞を、CELLBIND(登録商標)96ウェルプレート(Corning 3340)内で、10%ウシ胎仔血清(FBS,Gibco 10082−147)および1%のペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Gibco 15140−122)が補充された100μLのRPMI 1640(Gibco 11875−085)中に、1ウェル当たり5000細胞の密度で播種し、一晩37℃でインキュベートする。次の朝、増殖培地を除き、20mg/mLウシ血清アルブミン(BSA)で補充された100μLのRPMI 1640と置き換える。37℃で3時間インキュベートした後、6%のDMSO中の20mg/mLのBSAを含むRMPI 1640中の20μLの3×連続希釈化合物を、各ウェルに加える。この得られた10点の用量反応曲線は、1%のDMSO中で10〜0.005μMの範囲に及ぶ。インキュベートを37℃で1時間継続する。細胞を、血清を含まないRPMI中の50μg/mLのFGF9(R&D Systems 273−F9)溶液の50μLで刺激して、最終濃度が500ng/mLのFGF9を得る。細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(3.7%ホルムアルデヒド最終濃度)中の25%ホルムアルデヒド溶液の30μLを加えることで固定し、室温で30分間インキュベートする。細胞をPBSで3回洗浄し、その後、100μLの冷メタノールを加え、−20℃で30分間インキュベートする。メタノールを除去し、細胞を、0.1%のTRITON(登録商標)X−100(PBST)を含有するPBSで処理し、PBSで3回洗浄し、室温で15分間インキュベートする。次いで、2%BSA、0.01%ホスファターゼ阻害剤カクテル1(Sigma P2850)、0.01%ホスファターゼ阻害剤カクテル2(Sigma P5726)、および0.01%プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma P8340)が補充されたPBS中のp−p44/42 MAPK一次抗体(Cell Signaling 9101S)の1:400希釈の50μL中で、軽く揺らしながら、細胞を4℃で一晩インキュベートする。次の朝、プレートをPBSTで2回洗浄し、PBSで2回洗浄する。その後、1%のBSAおよび0.1%のホスファターゼ阻害剤カクテル1、0.01%のホスファターゼ阻害剤カクテル2、および0.01%のホスファターゼ阻害剤カクテルを含むPBS中のAlexa Fluor 488ヤギ抗ウサギIgG H+L二次抗体(Invitrogen A11034)の1:1000希釈の80μL中で、プレートを、暗所で室温にて1時間インキュベートする。細胞をPBSで3回洗浄し、その後、PBS中のヨウ化プロピジウム(PI)(Molecular Probe P−3566)の1:200希釈の100μLを添加し、次いで、暗所で1時間インキュベートする。1ウェル当たりのp−ERK陽性細胞および総細胞を、それぞれ、Alexa 488およびPIについて500−530nMおよび575−640nM光学フィルタを用いてACUMEN EXPLORER(商標)(TTP LabTech Ltd)を使用して同定する。その後、Alexa 488値を用いるpERK/ウェルについての合計平均強度を、サンプルプレート上で実施した最小(MIN)(DMSO中の10μM陽性コントロール化合物)および最大(MAX)(DMSOのみ)コントロールから得られた値を用いて、阻害率に変換する。その後、阻害値率および10点の濃度反応データを、4パラメータS字形用量反応式を使用して分析し、相対IC
50値を得られたカーブから推定する。BSAアッセイにより、FGF9誘導p−ERKは、2.7の推定IC
50についての最小有意比(MSR)を有する。このアッセイにおける調製物10についてのIC
50は、0.0004μMに推定される。このデータは、調製物10がヒト癌細胞においてFGF9誘導ERKリン酸化反応の強力な阻害剤であることを証明している。
【0032】
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)におけるERKリン酸化反応(Thr202/Tyr204)のAlphaScreen SureFire検出
FGF受容体1の阻害に対する化合物の効果を、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)における基本線維芽細胞増殖因子(b−FGF)刺激に反応するERK(pERK)のリン酸化反応をモニターすることで測定する。形成されたpERKレベルを、ALPHASCREEN(登録商標)SUREFIRE(登録商標)システム(TGR Biosciences,TGRES50K)を用いて測定する。これは、リン酸化検体の免疫−サンドイッチ捕捉を利用し、その後、抗体コーティングALPHASCREEN(登録商標)ビーズ(Perkin Elmer)を用いて検出して、増幅シグナルを得る均質アッセイフォーマットである。
【0033】
HUVEC細胞を、10%FBS、0.4%ウシ脳抽出物、0.1%ヒドロコルチゾン、0.1%硫酸ゲンタマイシンアンフォテリシンB、および0.1%表皮増殖因子、継代7までのヒト組み換えが補充された表皮細胞基礎培地(Clonetics,CC−3132)からなる増殖培地中で、回収し、維持する。アッセイのために、細胞を標準的な手順により集菌し、その後カウントする。細胞(20,000/ウェル)を、100μLの増殖培地を含む96ウェルポリ−D−リシンコーティングプレート(BD,354640)へとプレーティングする。プレートを37℃、5%CO
2で一晩インキュベートする。
【0034】
アッセイの日に、細胞を、1.5%のFBSおよび20mg/mLのBSAを含有する100μLのEBM(内皮細胞基本)培地中で、37℃、5%CO
2で3時間、血清飢餓状態にし、その後、37℃で1時間、飢餓倍中で、20μMの3×連続希釈化合物で処理する。これは、1%のDMSO中で10〜0.005μMの範囲に及ぶ10点の濃度−反応曲線を生成する。1時間化合物を処理した後、細胞を、37℃で15分間、50μLのb−FGF(Sigma,F0291,最終b−FGF濃度50ng/mL)で刺激する。細胞および50μL刺激因子b−FGFを含有するウェル内において、最大シグナルを生成し、10μMの陽性コントロール化合物および50μL刺激因子b−FGFを有する細胞が最小を生成する。その後、培地を除去し、50μLの1×SUREFIRE(登録商標)溶解バッファ(TGR Biosciences SUREFIRE(登録商標)キットコンポーネント)をウェルに加え、軽く揺らしながら室温で10分間インキュベートし続ける。pERK検出のために、6μLの溶解物および10μL反応混合物(60部の反応バッファ/10部の活性化バッファ/0.6部の各ドナーおよびアセプタービーズ、Perkin Elmer、6760617R)を384ウェルproxiplate(Perkin Elmer、6006280)へ移す。このプレートを密封し、軽く揺らしながら室温で2時間インキュベートし、その後、標準的なALPHASCREEN(登録商標)設定(Ex
680nmおよびEm
520−620nm)を用いて、TurboModuleを備えるPerkin Elmer EnVisionプレートリーダ上で読み取る。排出データを、各プレートに関する最大(DMSOのみ)および最小(DMSO中の10μMの陽性コントロール化合物)および10点の化合物濃度データから決定された阻害率に変換し、その後、ACTIVITYBASE(登録商標)4.0を用いて4パラメータロジスティック式にフィッティングし、IC
50を推定する。ERKリン酸化反応((Thr202/Tyr204)アッセイのALPHASCREEN(登録商標)SUREFIRE(登録商標)検出は、2.1のIC
50についての最小有意比(MSR)を有する。このアッセイにおける調製物10についてのIC
50は、0.0006μMに推定される。このデータは、調製物10がヒト臍帯内皮細胞においてbFGF誘導ERKリン酸化反応の強力な阻害剤であることを証明している。
【0035】
本発明の化合物は、好ましくは、種々の経路で投与される医薬組成物として処方される。最も好ましくは、このような組成物は、経口投与用または静脈内投与用である。このような医薬組成物およびこれらを調製するプロセスは、当該技術分野において周知である。例えば、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(D.Troy,et al.,eds.,21
sted.,Lippincott Williams & Wilkins,2005)を参照。
【0036】
本発明の化合物は、幅広い投与範囲にわたって一般的に有効である。例えば、1日当たりの投与量は、通常、体重の約0.5mg/kg〜約100mg/kgの範囲内にある。場合によっては、上述した範囲の下限以下の投与レベルが、より適切であり得る。一方で、他の場合において、より大きな投与量が、あらゆる有害な副作用を生じない限り利用され得る。したがって、上述した投与範囲は、決して本発明の範囲を限定することを意図しない。実際に投与される化合物の量は、処置される病態、選択された投与経路、実際に投与される化合物、年齢、体重、個々の患者の反応、および、患者の症状の重篤度を含む、関連する状況を考慮した上で、医師により決定されることが理解される。