【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバー(19)は、前記基板(18)に注ぐ前記電磁放射線(8)に対して透過性を持ち、且つ、前記連続反射シールド(37)と前記キャビティ(20)との間に配置された支持壁(36)を備える、ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
前記カバー(19)は、前記電磁放射線(8)に対して透明性を持つ支持壁(36)により形成された外部壁を備え、前記連続反射シールド(37)は、前記支持壁(36)と前記キャビティ(20)との間に配置され、且つ、前記基板(18)と直接接している、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
前記支持壁(36)は、単結晶、多結晶又はアモルファスのシリコン、単結晶、多結晶又はアモルファスのゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム合金、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、酸化シリコン、及び、酸硫化シリコンから選択された材料により形成される、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の装置。
前記カバー(19)は、前記連続反射シールド(37)と前記キャビティ(20)との間に配置された構造層(25)を備える、ことを特徴とする請求項4又は7に記載の装置。
前記連続反射シールド(37)は、アルミニウム、チタン、金、ニッケル、タンタル、タングステン、モリブデン、これらの窒化物及びシリサイド物、及び、これらの合金から選択される少なくとも1つの金属材料の金属層により形成される、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の装置。
前記カバー(19)は隣り合う2つの前記基準検出器の間に配置された少なくとも1つの内部分離壁(41)を有し、前記カバー(19)は前記基板(18)とともに複数の前記キャビティ(20)を形作り、前記各キャビティはそこに格納された基準ボロメータ(10)を有する、ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【背景技術】
【0002】
電磁放射線を検出するための装置は、1つ又は複数の電磁放射線検出器を集積する。電磁放射線検出器は複数のボロメータを備え、ボロメータは、抵抗率又は誘電率といったボロメータを形成する材料の電気的特性の熱誘導変化(thermally-induced change)を用いる。
【0003】
ボロメータは、放射線を電気信号に変換することにより、テラヘルツ範囲の電磁放射線又は赤外線のパワーを測定することができる。
図1及び2に示されるように、抵抗型(resistive type)のボロメータ測定器は、基板2の上方に懸架された(suspend)ボロメータプレート(bolometric plate)1を備える。
【0004】
ボロメータプレート1は、電磁放射線を吸収する膜3と、感熱性半導体材料により形成されたサーミスタ4とにより形成され、その温度が変化するとその電気抵抗が変化する特徴を有する。膜3は、固定点(anchoring point)6によって基板2に取り付けられた断熱アーム(thermal insulating arms)5により懸架されている。膜3は入射線を吸収し、それを熱に変換し、熱をサーミスタ4に伝送する。サーミスタ4の熱上昇は、好適な電気アセンブリで測定されるボロメータ検出器における電圧又は電流変化を導く。電極(不図示)は例えば固定点6の面に配置される。通常、読み出し回路(read circuit)は基板2に集積され、実行された測定結果を用いる。断熱アーム5は基板2から膜3を断熱し、よって測定感度を改善する。
【0005】
ボロメータ検出器の高いパフォーマンスの動作は、主に3つの条件を要求する:低い熱容量であること、基板2から膜3を良好に断熱すること、熱を電気信号に変換する際に高い感度であること。最初の2つの条件は、ボロメータ検出器を形成する薄膜により得ることができる。
【0006】
室温で動作するモノシリック赤外撮像装置(monolithic infrared imager)は、CMOS又はCCD型のシリコン多重回路(silicon multiplexing circuit)にボロメータ検出器アレイを直接接続することにより製造される。
【0007】
ボロメータ検出器の読み出しは、サーミスタ4の抵抗値とその変化との測定に基づいている。その変化が非常に小さい場合には、特に赤外線(IR)検出においては、検出された信号は、高増幅アンプ又は積分ステージ(integrator stage)によって読み出し回路内で増幅される。通常、バンド幅を本質的に小さくし、よってホワイトノイズを除去することから、積分ステージが好ましい。
【0008】
積分器の場合、ボロメータ検出器に起因し、積分器に集積される電流は、集積回路(読み出し集積回路、ROIC)の出力信号をすぐに飽和させる。よって、撮像情報(scene information)を含む有益な電流は、集積された電流全体の一部にすぎない。読み出し感度を増加させるために、電流の不変部分は、回路のベースライン・ブランチ(base lining branch)と呼ばれるものに通常伝送され、撮像(imaged scene)に対応する電流の可変部分は積分器に伝送される。
【0009】
図3は、ボロメータ検出装置の読み出し原理を示す。装置は、入射した電磁放射線8を吸収し、放射線8を測定することができるアクティブボロメータ7(active bolometer)を備える。アクティブボロメータ7の抵抗変化は放射線8の値を示す。電流の読み出しは例えばこの測定を行うために用いる。アクティブボロメータ7の出力における電流は、可変部分と不変部分とを備える。実際、測定装置は絶対的なオペレーションを行い、すなわち、検出装置は、バックグラウンド信号と比べて通常小さいものであり、可変、且つ、有益な信号の測定を妨げる連続する不変なバックグラウンド信号を検出する。従って、放射線の値を好適に測定するために、この電流の不変部分を除去することが求められる。
【0010】
読み出し感度を増加させるために、オフセット電流と呼ばれる電流の不変部分は、好ましくはバイパスブランチに回され、有用な電流と呼ばれる電流の可変部分が積分器9に伝送される。可能な限り妨害が起きることを少なくするために、電気的には、バイパスブランチで用いられる素子は可能な限りノイズレスでなければならない。この目的のために、ブランチは、アクティブボロメータ7と同じオーダーの値を持つ抵抗によって形成される。抵抗は、共通ゲートでアセンブルされた、もしくは、ダイレクトインジェクションアセンブルされたMOSトランジスタと接続され、このMOSトランジスタは、抵抗をバイアスすることと、抵抗と増幅ステージとの間のインピーダンス整合を行うこととの両方を行うことができる。
【0011】
従来の解決法は、バイパスブランチ抵抗として基準ボロメータ10を備え、すなわち、これは電磁放射線8を検出しないボロメータ10である。
【0012】
従って、
図3に示されるように、バイパスブランチは基準ボロメータ10を備え、基準ボロメータ10は、電磁放射線8と基準ボロメータ10との間に位置する保護シールド11によって目隠しされている。従って、基準ボロメータ10は、放射線を吸収せず、基準として用いられるパッシブボロメータ(passive bolometer)である。
【0013】
このタイプの検出器装置の利点は、基準ボロメータ10の特性に基づくものであり、且つ、全体的な目隠し能力に基づくものである。
【0014】
図4に示すように、米国特許文献2007138395は、同じ第1の基板2aの上に形成されたアクティブボロメータ7と基準ボロメータ10とを備える検出装置を提供する。第1及び第2のカバーは第2の基板2bから形成され、アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10とをそれぞれ覆うために密封材料によって第1の基板2aに密封される。第2のカバーは、入射電磁放射線8と基準ボロメータ10との間の第2のカバーの外部表面に配置された不透明層11を堆積することによって、入射電磁放射線8に対して不透明にすることができる。
【0015】
記載された検出装置は、大きな容量を持つという欠点を有する。しかしながら、密封は、操作し、且つ、装置の機械的制約に応じることができるような十分に大きな形状を持つカバーを用いることを求めている。図に示すように、赤外線検出器は、一般的には50μmから100μmの範囲の膜厚の高い側壁を持ち、10μmの検出波長のために、ボロメータ7及び10に亘る平面AAと、平面AAと平行であってカバー2bに亘る平面BBとの間の、典型的には160μmの重要な空間dを持つ。平面AAから不透明層11を隔てる有意な距離は、一方で、基準ボロメータ10からアクティブボロメータ7を分離して配置し、他方では、基準ボロメータ10に比べて大きい反射シールドを使用することとなる。実際には、カメラフォーカスシステムに起因する光線の入射角を考慮するために、不透明層11は、基準ボロメータ10の表面領域よりもほぼ大きいサイズを持つように、一般的にしなくてはならない。赤外線カメラで通常用いられるレンズに対応する解放光学システム(open optical system)F/1のために、通常−30°から+30°の範囲の入射角はマイクロボロメータを持つ検出器に基づく。同様に、このような形状に関する条件と与えられる電磁放射線8の入射角とにおいて、アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10とは、アクティブボロメータ7を妨害することなく、基準ボロメータ10を正確に覆うために十分な距離をもって隔てなくてはならない。
【0016】
このような形状の制約は、実際の検出装置のコストにのみ影響を与えるだけでなく、検出装置のサイズに依存する容積を持つ光学システムのコストにも影響を与える。コストの要因は、ピクセル数を増加させ、多数のボロメータ7及び10を備えることによって改善することを必要とする解決策を持つ最近の赤外線検出装置において、顕著である。
【0017】
さらに、壊れやすいボロメータのセットの操作であり、且つ、制約のあるクリーンルームもしくは高価なクリーンな仕様において通常行われることから、密封オペレーションは、特にデリケートで高価なものである。
【0018】
最終的には、基準ボロメータ10の上方で不透明層11を用いることは、オフセット電流を好適に抑えるためには十分なものではなく、よって、非常に低い信号を検出することができない。この欠点は、ボロメータ抵抗をパルス状にバイアスすることにより得られる、IR撮像信号(IR imaging scene signal)を検出する高ゲインの使用を必要とするIR撮像装置においては、特に有害である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
他の利点及び特徴は、本発明の特有の実施形態についての下記の説明により、さらに明らかにされる。本発明の特有の実施形態は、単なる例示であって、本発明を限定するものではない。本発明の特有の実施形態は、添付の図面により示される。
【0025】
電磁放射線8の検出装置は、好ましくはIR及びテラヘルツ(THz)を検出する装置である。
【0026】
図5に示される第1の特有の実施形態によれば、電磁放射線8の検出装置は、電磁放射線8に感度を持つ第1の素子12が設けられた電磁放射線8のアクティブ検出器7と、この電磁放射線8に感度を持つ素子13を備える基準検出器10とを備える。
【0027】
基準検出器10は、好ましくは電磁放射線8のアクティブ検出器7と同じである。基準検出器10を形成する形状、及び/又は、材料は、与えられた電磁放射線に対するアクティブ検出器7の温度応答と同じ温度応答が得られるように選択される。
【0028】
有利には、電磁放射線8のアクティブ検出器7と基準検出器10とは、それぞれ電磁放射線8のアクティブボロメータ7と基準ボロメータ10とである。
【0029】
アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10とは、有利には、温度変化及び測定電流の変化に対して同じ応答するように設計されている。アクティブボロメータ7及び基準ボロメータ10の電気及び温度特性が同じであることは、「マッチング」を呼ばれ、電気と同様に熱に対しても憂慮すべき影響を差し引き、アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10との異なる読み出しによる、アクティブボロメータ7に特有の信号を保存することができる。
【0030】
有利には、感度を持つ第1の素子及び第2の素子とは、それぞれ、入射する電磁放射線8に面した第1の主面14及び15と、第2の主面16及び17を有する。第1の主面14及び15は、好ましくは第2の主面16及び17と平行である。
【0031】
アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10とは、同じ基板18の上に配置され、有利には、主面14及び15が同一平面Pに位置するように、同じ列に従って互いに隣り合う。平面Pは好ましくは基板18の主面と平行である。アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10とは同じ環境となるように互いに近接している。従って、基準ボロメータ10は、アクティブボロメータ7とできる限り近接した位置にあり、しかしながら、アクティブボロメータ7の応答と同じ熱及び電気ノイズに対する応答を得るために、接触させることはない。さらに、2つのボロメータ7及び10を近接させることは、検出装置をさらにコンパクトにすることにも寄与する。
【0032】
基板18は、一般的にはシリコンから形成された支持体(support)である。基板18は、アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10との機械的堅固性を確保し、好ましくは、サーミスタ抵抗(不図示)をバイアスし、且つ、読み出す装置を備える。基板18は、特に複数のマイクロボロメータのアレイを有するIR測定装置の場合において、有用な撮像システムにより用いることが可能なように出力の数を減少させるために、異なるボロメータに起因する信号をシリアルに変換し、それらを伝送することができる多重化部品(multiplexing component)を備える。アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10とを接合することは、2つのボロメータ7及び10により変換された信号の差動読み出し(differential reading)を可能にし、電気及び熱ノイズに対する検出装置の感度をキャンセル又は少なくとも最小限にしつつ、入射した電磁放射線8に起因する信号を抽出することができる。
【0033】
図5及び
図6に示すように、アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10とは、有利にはマイクロボロメータ型のマイクロブリッジを有する絶縁構造(insulating structure)を持つ。各構造は一般的には、熱伝導を最小にするために固定点6と断熱アーム5とを備える(
図6)。マイクロブリッジ構造は、有利には電磁放射線8の検出装置により伝送された信号の応答時間を短縮し、信号−ノイズ比を改善する。
【0034】
電磁放射線8を検出するための装置はカバー19を備え、カバー19は、接することなく電磁放射線8に晒される第2の感受素子13を覆う。カバー19と基板18とは、そこに格納された基準ボロメータ10を有するキャビティ20を形作る。
【0035】
特有の実施形態によれば、カバー19は、上部面(upper side)21と上部面21とほぼ垂直な2つの側面(lateral side)22とにより形成され、基板18上に、その2つの端が解放されている逆さまのUを形成する。
【0036】
カバー19は基板18の上に2つの側面22を介して位置し、基準ボロメータ10上方にブリッジを形成することにより基準ボロメータ10を覆う。各側面22は、連続する内部表面と連続する外部表面とを有する。外部表面は、カバー19の内側、すなわち、キャビティ20に面した内部表面と反対側にある、カバー19の外側に向いた表面を形成する。
【0037】
第2の反射手段は、少なくとも連続した内部表面と側面22の連続した外部表面とを形成する。
【0038】
図5及び
図6に示されるように、上部面21と2つの側面22とは、基準ボロメータ10上方にブリッジを形成する。キャビティ20は、カバー19の2つの端部において解放されている。上部面21は好ましくは第2の感受素子13の第1の主面15と平行であり、入射する電磁放射線8から基準ボロメータ10を覆う(mask)ために入射電磁放射線8に面した連続する外部表面を有する。
【0039】
各側面22は連続した外部表面を有する。カバー19のディメンションは基準ボロメータ10のディメンションよりも大きい。
【0040】
「連続する外部表面」というタームが用いられるにもかかわらず、上部面21と側面22との外部表面は、検出された波長に比べて小さなディメンションを持つ各開口部23を与えるような1つ又は複数の貫通開口部が存在していても連続であるとみなされる。開口部23は異なる形状を持ち、例えば四角形又は円形状である。各開口部23は大きいディメンションであっても1μm未満のサイズを有し、開口部23を介してカバー19内部への入射電磁放射線8の伝送を十分に減衰させる。
【0041】
カバー19は、第2の感受素子13の第1の主面の上方に空間を形成する。空間は、有利には、できるかぎり電磁放射線8を検出する装置の容積を減少させるように小さいものである。空間は、有利は0.5μmから5μmの間の範囲で、好ましくは0.5μm以上2μm未満の距離dを持ってカバー19から主面15を隔てる。詳細には、距離dは、カバー19の上面21の内部表面から第1の主面15を隔てる。
【0042】
カバー19は第1の反射手段と第2の側面反射手段とを備える。第1及び第2の反射手段は、例えば金属層から形成された反射体(reflector)により形成される。
【0043】
図5及び
図6に示されるような特有の実施形態によれば、第1の反射手段はカバー19の上部面21を形成し、第2の反射手段は側面22を形成する。第2の側面反射手段は第1の反射手段まで連続し、第1の反射手段とともに連続反射シールドを形成する。
【0044】
カバー19は、連続反射シールドにより全体的に形成される。反射シールドを形成するカバー19は、検討される電磁放射線8に対して不透明性の高い少なくとも1つの材料の反射薄層により形成することができる。不十分な不透明性を持ったカバー19と、電磁放射線8に対する基準ボロメータ10の余計な感度(residual sensitivity)とに起因したゴースト画像が生成されることを避けるために、入射電磁放射線8の減衰率は、好ましくは約60dBから約80dBの間の範囲にある。
【0045】
カバー19は、有利には、アルミニウム、チタン、金、ニッケル、タンタル、タングステン、モリブデン、これらの窒化物及びシリサイド、及び、これらの合金から選択される少なくとも1つの金属材料の金属層から形成される。タングステンシリサイド(WSi)及び窒化チタン(TiN)を一例として説明する。
【0046】
連続反射シールドは、好ましくは100nmから1000nmの範囲の平均膜厚と1μΩcmから500μΩcmの範囲の抵抗値を持つ金属薄膜である。
【0047】
変形例としては、連続反射シールドは、金属ポリマー反射体(metal polymer reflector)、又は、異なる屈折率を持つ2つの材料の層を交互に配置することにより一般的に形成されるブラッグフィルタ型の反射体により作られる。
【0048】
第1の反射手段は入射電磁放射線8を反射する。第1の反射手段は、カバー19を介して基準ボロメータ10に電磁放射線8が伝送されることを避ける。従って、第1の反射手段は基準ボロメータ10を覆い、基準ボロメータ10の入射電磁放射線8に対する感度を失わせる。
【0049】
しかしながら、第2の側面反射手段は、電磁放射線の干渉による電磁放射線8の伝送に起因する二次電磁放射線の伝送を妨げる。
【0050】
しかし、
図4に示される従来技術の検出装置においては、基準ボロメータ10から不透明層11を隔てる空間が検出する波長よりも小さい場合には、カバーを形成する第2の基板2bの不透明層11の端部と基準ボロメータ10との間に電磁放射線の干渉が顕著に起きる。基準ボロメータ10から不透明層11を隔てる距離が160μmである米国特許文献20070138395Aの場合においては、このような電磁放射線の干渉は無視できるほどである。しかしながら、検出する波長に比べて空間が小さい場合に、特に0.5μmから5μmの範囲の場合に、電磁放射線の干渉は、熱赤外線8に対して10μmオーダーで測定されるようになる。このような干渉は、基準ボロメータ10へのカバー19内部の入射電磁放射線8の好ましくない伝送に変換される。カバーの中への電磁放射線8の伝送は、測定を妨害する二次電磁放射線を生成する。二次電磁放射線はプラズモンタイプの表面波に起因し、カバー19の上部21上の第1の反射手段の面に入射電磁放射線8の影響に晒すこととなり、ペロ−ファブリ側面キャビティ(lateral Perot-Fabry cavity )として動作する。ペロ−ファブリキャビティにより吸収された表面波のエネルギーは、側面ペロ−ファブリキャビティの共鳴モデルと組み合わされる二次電磁放射線の形状で伝送される。二次電磁放射線は側面ペロ−ファブリキャビティの中では顕著であり、閉じ込められたエネルギーは基準ボロメータ10により吸収される。第2の側面反射手段22の存在は、二次電磁放射線を妨げることによりこのような欠点を抑制することができる。第2側面反射手段22は、二次電磁放射線のエネルギーを基板18へと案内し、カバー19の中へと入射することを避ける。
【0051】
図7及び
図8に示される変形例によれば、カバー19は、基板18の上のランドを形成する、側面22の各端部に沿った端部24を有する。
【0052】
図7に示すように、端部24はランドを形成する水平の曲がり角(horizontal return)19により形成される。
【0053】
図8に示されるように、端部24は、変形例としては、基板18上にランドを形成し、上部21と実質的に同じ面において、カバー19の上部21の高さまでの第2の部分から水平の曲り角を形成する第3の部分まで連続する、第1の水平の曲り角から形成される(
図8の上部)。このようなカバー19の形成は、有利には、従来の薄膜堆積とエッチング技術とから達成される。
【0054】
図9に示されるような第2の特有の実施形態によれば、カバー19は、キャビティ20の中に位置する基準ボロメータ10を全体的に封入する。カバー19は、接触することなく、基準ボロメータ10を全体的に覆う。従って、カバー19は、閉じられたキャビティ20を形成するカプセルを形成し、可能であれば、しっかりとその中に基準ボロメータ10を配置する(
図9)。閉じられたキャビティ20は、上部はカバー19により(
図9の上部)、下部は基板18により形作られる(
図9の下部)。
【0055】
図9に示されるように、カバー19は基板18上に設置され、基板18の部分に延びる端部24を備える。端部24はカバー19の周りのすべてに存在し、よって、接着を改善し、可能であればカバー19の密封性も改善する。
【0056】
図10に示される第3の特有の実施形態によれば、検出装置は今まで説明した特有の実施形態と異なり、カバー19は、連続反射シールドとキャビティ20との間に配置された追加構造層25を備える。カバー19は外部壁と内部壁とにより形成され、外部壁は内部壁と部分的に異なる。しかしながら、カバー19の外部壁は連続反射シールドを形成し、構造層25はカバー19の内部壁の部分を形成する。特に、上部21は、第1の反射手段と構造層25とにより形成された2つの層の積層により形成される。構造層25と第1の反射手段とは好ましくは第2の感受素子13の第1の主面15と平行である。
【0057】
このような電磁放射線8の検出装置の特有の実施形態を、
図11から
図18を用いてさらに詳細に説明する。議論を簡単にするために、すべての説明において赤外線に適用された検出装置とするが、しかしながら、従来技術を少し修正したものであるような、他のタイプの放射線に適用することができる。
【0058】
図11に示されるように、
図9の電磁放射線8を検出するための装置の製造方法は、既知のシリコンマイクロエレクトロニクスにより得られる完全な読み出し回路(不図示)をすでに含むシリコン基板18から金属接続パッド26を形成することを備える。金属接続パッド26は、一方が読み出し回路の電気装置であり、他方がアクティブボロメータ7と基準ボロメータ10とであるような間において電気的接続を形成することができる。絶縁パッシベーション層27は、基板18を覆い、金属接続パッド26の面に覆われていない部分28を形成する。
【0059】
図12に示されるように、例えばアルミニウムにより形成された金属層は、有利には堆積され、既知の方法によりフォトリソグラフィ及びエッチングにより形作られ、読み出し回路の表面に2つの赤外線反射体29a及び29bを形成する。通常ポリイミドにより形成される第1の犠牲層30は広がっており、可能であればアニールされる。
【0060】
図13に示されるように、ボロメータプレート31a及び31bは、それぞれアクティブボロメータ7及び基準ボロメータ10のものであり、既知の方法により第1の犠牲層30上に構成される。ボロメータプレート31a及び31bは、それぞれ第1及び第2の感受素子12及び13を備える。除去されることとなる第1の犠牲層30は、それぞれボロメータプレート31a及び31bから各反射体29a及び29bを隔てる空間を与えることができる。よって、ボロメータプレート31a及び31bは読み出し回路から断熱されている。空間は、10μm中心の波長幅を検出するために、例えば2.5μmオーダーの4分の1波長の共鳴キャビティを形成するために好適である。
【0061】
図14に示すように、第1の犠牲層30と同じ性質の第2の犠牲層32は、有利には、アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10との上方に広がっている。そこに構成されたカバー19を持ち、且つ、除去されることとなる第2の犠牲層32は、基準ボロメータ10の第1の主面15とカバー19との間に事前に形成された空間を与えることができる。第2の感受素子13の第1の主面15からカバー19を隔てる距離dは、好ましくは約0.5μmから5μmの間の範囲である第2の犠牲層32の膜厚に対応する。空間を最終的に形成することは、第1の主面15とカバー19との間に顕著な断熱を達成する。
【0062】
図14に示すように、構造層25は既知の方法により形成される。構造層25は、例えば、第2の犠牲層32の表面にアモルファスシリコン又はアルミニウムにより形成された第1の層33の堆積し、次いでフォトリソグラフィ及びエッチングを行うことにより得られる。第1の層33のエッチングは、アクティブボロメータ7及び基準ボロメータ10の上方の局所領域に亘って行われる。このステップの終わりには、構造層25と第1の残渣層(first residual layer)33とは、第2の犠牲層32の表面に得られる。
【0063】
図15に示されるように、第1及び第2の犠牲層30及び32をすべて基板18に対して垂直な方向に沿って容易にエッチングするために、構造層25と第1の残渣層33とはハードマスクとして用いられる。エッチングは、カバー19の所望の形状に従って凹部34を形成する。特に、基準ボロメータ10を完全に密封し、且つ、閉じられたキャビティ20を形成するために、凹部34は、基準ボロメータ10を取り囲み、且つ、第1及び第2の犠牲層30及び32の膜厚全体を横切る連続するトレンチにより形成される。しかしながら、上部21と2つの側面22とを有するブリッジ形状のカバー19を得るために、凹部34は、基準ボロメータ10のそれぞれのサイドにおける2つのほぼ平行なトレンチにより形成される(
図15の右側及び左側)。
【0064】
エッチング条件は、特に構造層25と第2の犠牲層32との間の界面において、小さなオーバーハングを持つエッチング側面を得ることができるようなものとされる。このようにするために、反応性イオンエッチング(RIE)が好ましい。例えば、2.5μmの膜厚を有する第1のポリイミド層30と2μmの膜厚を有する第2のポリイミド層とは、以下のようなRIE条件においてオーバーハングを限定的なものとすることによって得ることができる。
− 室温約300K
− 3ミリトールから30ミリトールの範囲の圧力
− 10cm
3/minから100cm
3/minの範囲の流量の酸素
− 10cm
3/minから100cm
3/minの範囲の流量のアルゴン又は窒素
− 440kHzから13.56MHzの範囲の周波数で励起されたプラズマ
− 100Wから1000Wの範囲のプラズマ生成パワー
【0065】
図16に示されるように、好ましくは金属である第2の反射層35は、第1の層33に広がった領域とともに構成層25を覆うように、既知の方法により堆積される。第2の層35は凹部34の側面及び底部を覆う。構造層25のカバーは、カバー19の上部21を形成することができる。この金属堆積により覆われた凹部34の1つ又は複数の側面は、二次電磁放射線に対するカバー19の良好な不透明性を得るために特に重要である。しかしながら、1つ又は複数の側面22は、二次放射線タイプに感度のない検出器を形成するように、電磁放射線8の検出装置の第2の反射手段を形成し、且つ、二次電磁放射線から保護するシールドを形成する。オーバーハングの無いエッチング側面を得ることとは別に、均一なタイプの第2の反射層35の堆積が好ましく、その性質が連続反射シールドの効果と基準ボロメータ10の保護の改善とに寄与するからである。
【0066】
構造層25の存在は、既知のハードマスク技術により、そこに設けられた側面22を有する第1及び第2の犠牲層の側面を形作ることができる。
【0067】
例えば、第2の均一金属層35は、100nmから500nmの範囲の膜厚と200μΩcmオーダーの抵抗値とを有するタングステンシリサイド薄膜(WSi)のLPCVD(低圧化学気相成長法)により得ることができ、堆積条件は先に説明した範囲に対応し、一例として以下に選択された特有の点を有する。
− 温度250℃
− 圧力0.8トール
− 1.4cm
3/minの流量のタングステンヘキサフルオリド(Tungsten hexafluoride)(WF
6)
− 300cm
3/minの流量のシラン(SiH
4)
− 250cm
3/minの流量のアルゴン(Ar)
【0068】
変形例としては、他の金属層として、例えば、好ましくはLPCVDにより堆積された、窒化チタン(TiN)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)の層35を用いることができる。均一性が乏しく、第2の金属層35を厚い膜に形成することを必要とするが、プラズマ化学気相成長法(PECVD)により堆積された第2の金属層35も適している。
【0069】
図17に示すように、広がった第1の層33と第2の金属層35とは、アクティブボロメータ7の位置する前でエッチングされ、可能であれば、1つ又は複数の開口部23に対応するμm未満のディメンションを持つ1つ又は複数の領域を除いては、基準ボロメータの前に位置する。この開口部は、第1及び第2の犠牲層30及び31を連続的に除去することを容易にするものである。
【0070】
エッチング条件は、アクティブボロメータ7上方から広がった第1の層33と第2の金属層35とを除去し、且つ、端部24の形状を含むカバー19の最終的な形状を与えることができるように定められる。
【0071】
図18に示すように、第1及び第2の犠牲層30及び32は、特に開口部23を介して最終的にガス層化学エッチングにより除去される。この工程は、反応性エッチング種とエッチング残渣とをカバー19の内部と外部との間に循環させることができる。第1及び第2の犠牲層30及び32の除去は、カバー19のキャビティ20と、第2の感受素子13とカバー19との間の空間とを露出することができる。
【0072】
この最終的なエッチング工程の最後に、アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10とが、入射電磁放射線8と二次電磁放射線とに感度を持つようにすることができる。
【0073】
図19の第4の実施形態によれば、電磁放射線8を検出する検出装置は、カバー19が、連続反射シールド37とキャビティ20との間に配置され、基板18に位置する電磁放射線8に対して透過性を持つ支持壁36を備える、といったこれまで説明した第3の特有の実施形態と異なる。支持壁36は、カバー19の堅固性に寄与する。
【0074】
図19に示されるように、支持壁36は構造層25に接している。カバー19の上部21は、有利にはカバー19の外側からキャビティ20まで、第1の反射手段と支持壁36の上部と構造層25とに対応する3つの層の積層により形成される。第1の反射手段は連続反射シールド37の上部を形成する。
【0075】
支持壁36は、好ましくは、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、単結晶ゲルマニウム、多結晶ゲルマニウム、アモルファスゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム合金(SiGe)から選択された材料から形成される。赤外電磁放射線8に対しては、支持壁36は、シリコン、ゲルマニウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、酸化シリコン、酸硫化シリコンから選択された少なくとも1つの誘電材料から形成される。
【0076】
支持壁36は、連続反射シールド37と構造層25との間に配置される。
【0077】
カバー19の側面22は、第2の反射手段と支持壁36の側面部とに対応する2つの層の積層により形成される。2つの側面22の連続する外部表面は、第2の反射手段により形成される。従って、第2の反射手段は連続反射シールド37の側面部を形成する。
【0078】
従って、カバー19の内壁は、支持壁36と構造層25との側面部により形成され、カバーの外壁は連続反射シールド37により形成される。
【0079】
図19に示されるように、支持壁36の存在に起因して、連続反射シールド37を形成する外壁は基板18に接合することはなく、この支持壁は、端部24の面において連続反射シールド37と基板18との間に挿入され、且つ、電磁放射線の干渉によって二次電磁放射線を形成することができる端部38を形成する。
【0080】
電磁放射線の干渉を抑制し、二次電磁放射線を避けるために、支持壁36は、有利には10nmから500nmの範囲の薄い膜厚を持つ。
【0081】
図20に示される変形例によれば、電磁放射線8を検出するための装置は、電磁放射線8に対して透過性を持つ追加カバー39を備え、この追加カバー39は、そこに格納されたアクティブボロメータ7を有する。透過性を持つ追加カバー39は、電磁放射線8に透過性を持つ1つ又は複数の材料を選択すること以外はこれまで説明したものと同一である構造層25が設けられている。透過性追加カバー39と支持壁36とは好ましくは、電磁放射線8に透過性を持つ1つ又は複数の材料から形成された単一の層を形成する。
【0082】
追加透過性カバー39の形成は、検出装置の製造コストを大幅に増加させることのない検出装置という利点を与える。マイクロエレクトロニクス分野における既知の共通技術に従い、装置の形成方法の一部として、支持壁36と同時に追加透過性カバー39を形成することができるためである。
【0083】
追加透過性カバー39の存在は、有利には脆弱なサスペンド構造を持つアクティブボロメータ7を保護することを可能にする。
【0084】
追加透過性カバー39はボロメータ7及び10を外部環境から隔て、カバー39がない場合では不可能である基本的なブロー又は洗浄方法によって、検出装置を洗浄することを可能にする。このような状況においては、電磁放射線8を検出する装置のパッキングは標準的なものとなり、未洗浄の検出装置の場合であってもウルトラクリーンルームで行う必要はない。その結果、製造コストを大幅に減らすこととなる。
【0085】
さらに、この変形例による追加カバー39の存在は、既知の真空マイクロ密閉方法を用いた真空下でのアクティブボロメータ7と基準ボロメータ10との密閉を可能にする。特に、SPIE会議の予稿集“Infrared Technology and Applications XXXIV, Vol.6940, pages 1Y-1 から1Y-6(2008)に掲載されたG.Dumontらの文献“Innovative on-chip packaging applied to uncooled IRFPA”、もしくは、仏国特許2822541Aに記載されたマイクロ密閉方法を、参考として挙げることができる。電磁放射線8を検出するための装置のボロメータ7及び10の感度は、真空操作より実質的に改善する。
【0086】
先に挙げた文献に記載された例えばバッフル形状の排出孔(不図示)は、開口部23を介して犠牲層を除去することを可能にし、追加カバー39を形成する1つ又は複数の薄膜を堆積することによって密封される。連続反射シールド37は第3の特有の実施形態と同じ方法により形成される。しかしながら、先に説明された第3の特有の実施形態と比べて、開口部23の大きさは、装置効率に効果的なものであるようなパラメータに近づき、よって1μmより大きい。
【0087】
図示しない他の変形例によれば、端部38の存在を抑制し、側面22の第2の側面反射手段が基板18に直接接するように配置するために、支持壁36は、局所的エッチングによりカバー19の端部24の面に開いている。
【0088】
図示しない他の変形例によれば、電磁放射線8を検出する装置は、カバー19の外壁が支持壁36により形成されている第4の特有の実施形態と大部分が異なる。連続反射シールド37は、支持壁36とキャビティ20との間に配置され、例えば、支持壁36と構造層25との間であって、基板18の上に直接配置される。
【0089】
図21に示される第5の特有の実施形態によれば、カバー19は吸収層40により形成された内壁を持つ。吸収層40は、キャビティ20が吸収キャビティを形成するように、基準ボロメータ10の第2の感受素子13により放射された熱放射線を少なくとも吸収する。
【0090】
吸収層40は、有利には、金黒(black-gold)、プラチナ、銀、クロムから選択された多孔質金属の吸収材料の少なくとも1つから形成される。金黒及びプラチナは、通常、焦電検出装置又は熱電気セルの分野で用いられ、銀とクロムとはブラック吸収体を形成する。
【0091】
ボロメータの熱化は、黒体(block body)で形成された内壁を構成する。
【0092】
変形例としては、吸収層40はグラフェンを含む高分子材料から少なくとも形成される。グラフェンを含む高分子材料は、2μmから20μmの範囲の波長を80%まで吸収することができる。高分子とは、エポキシ、ポリイミド、レジストタイプの高分子樹脂のことである。
【0093】
吸収層40の吸収能力を改善するために、この層は、多層積層、及び/又は、異なる性質の複数の吸収材料を備えるものとして形成することができる。
【0094】
よって、これまで説明したカバー19を持つ基準ボロメータ10は、アクティブボロメータのものと同じ、もしくは、ほとんど同じ熱抵抗を有する。
【0095】
第6の特有の実施形態によれば、電磁放射線8を検出する装置は、複数の基準ボロメータ10を備える。
【0096】
電磁放射線8を検出する装置は、複数の基準検出器10と複数のカバー19とを備えることができる。特に、電磁放射線8を検出するための装置は、基準検出器10を個別に覆う少なくとも2つのカバー19を備えることができる。各基準検出器10は有利にはカバー19で覆われている。
【0097】
図22及び23に示される特有の実施形態によれば、電磁放射線8を検出する装置は、複数の基準検出器10と1つのカバー19とを備える。
【0098】
図22に示されるように、カバー19は複数の基準ボロメータ10を覆い、アクティブボロメータ7を覆うことはない。電磁放射線8を検出する装置は、少なくとも3つのアクティブボロメータ7を備える。
【0099】
アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10とは、ライン及びカラムのアレイ状に基板18の上に配置される。各基準ボロメータ10は、基板18上のアレイのライン及び/又はカラムの頭端部に位置する。
【0100】
複数の基準ボロメータ10は1つのキャビティ20の中に格納される。カバー19は、アレイの同じライン又はカラムに配置された複数の基準ボロメータのみを覆う。カバー19は、上部21と2つの側面22とにより形成され、上部21と2つの側面22とは、基準ボロメータ10を覆う1つのキャビティを形成し、且つ、先に説明したように、2つの端部において解放されている逆さまのUを形成する。上部21と側面22とは、逆さまのUのブランチにおいてオーバーハングするように十分に長くなくてはならない。しかしながら、カバー19の端部において電磁放射線の干渉が起きることを少なくする、又は、抑えるために、カバー19は、ライン又はカラムの頭端部に配置された第1の基準ボロメータと最終基準ボロメータとにオーバーラップするように覆わなくてはならない。
【0101】
同じライン又はカラムのアクティブボロメータ7は、連続して読み出され、ライン又はカラムが共通し、且つ、ライン又はカラムの頭端部に位置する基準ボロメータに接続される。
【0102】
図22に示されるように、差動ラインが、ラインの頭端部の基準ボロメータ10により供給された信号の複製を用いて読み取ることができるように、基準ボロメータ10の数は、好ましくはアクティブボロメータ7の数よりも少ない。同時に1つのラインで差動読み出し操作を行うために、ラインの頭端部に位置する基準ボロメータ10により供給された信号の複製は、このラインのアクティブボロメータ7へと再分配される。このような複製及び再分配装置は、既知の方法による電気アセンブリにより形成され、例えば、有利には、シリコン基板18に集積された電流ミラー回路により形成される。
【0103】
電磁放射線8を検出するための装置アレイの各ラインにおいては、一方のアクティブボロメータ7と他方の基準ボロメータ10の複製信号との差動読み出しによる複数のクリーンな信号は、それぞれ信号処理手段(不図示)に伝送される。低いノイズレベルを与えることができるように、アレイのアクティブボロメータ7の表面と比べて大きな表面を与えるよう、信号の処理手段は、例えば、アンプ、サンプラー又はマルチプレクサーによって形成されることができ、好ましくはカラムの最後に位置する(
図22)。
【0104】
第1のラインの読み出しの後に、電磁放射線8の検出装置は連続的に第2のラインのアクティブボロメータ7を読み出し、第2のラインの基準ボロメータ10と接続し、これを電磁放射線8の検出装置のすべてのラインで行う。同じ原理に基づき、カラムの読み出しも可能である。
【0105】
同期させて読み出すことは、時間を通して影響を与えるランダムノイズ源を抑制することを可能にし、このランダムノイズ源は、各時間では異なり、しかしながら、アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10とで共通する、電流測定精度に影響を与えるコモンモード電気ノイズといったものである。イメージを作り出し、パルス読み出し構成の同じ読み出しサイクルを持つように、アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10とは、同時に読み出される。
【0106】
図示しない変形例によれば、1つの基準ボロメータ10を有する代わりに、低平均ノイズ信号を抽出するために、複数の基準ボロメータ10を複製し、ラインの頭端部、及び/又は、カラムの頭端部の複数の基準ボロメータ10を集積する。例えば、基準ボロメータ10で生成される一般的なノイズを限定するために、アレイは、1つのラインの頭端部に対して8つの基準ボロメータ10を備える。他の例においては、アクティブボロメータ7と基準ボロメータ10との間の不完全さを調整することにより導かれる、検出装置の差動読み出しの質の改善に寄与する空間の均一性が損なわれることを抑制するために、アレイは、例えば、各ラインにおいて、ラインの頭端部に4つの基準ボロメータ10と、ラインの他の頭端部に4つの基準ボロメータ10とを備える。よって、基準ボロメータ10は、アレイの中央部に位置するアクティブボロメータ7を形作る。
【0107】
例えば、差動読み出しモードのIR検出装置のピクセルを形成する640×480のアクティブボロメータ7のアレイの効率的な読み出しのために、アレイは、数千の基準ボロメータ10を備える。
【0108】
図23に示される変形例によれば、カバー19が基板18とともにそこに格納された基準ボロメータ10をそれぞれ有する複数のキャビティ20を形作るように、カバー19は、2つの隣り合う基準ボロメータ10の間に配置された内部分離壁41を少なくとも1つ有する。すべての基準ボロメータ10は、厳密に同じ環境を持つ。
【0109】
アレイの中の状況にかかわらず、カバー19は、有利には各基準ボロメータ10に対して厳密に同じ環境を形成することができる。しかしながら、基準ボロメータ10の複数のカラムを密封するカバー19の側面22の境界に位置する複数の基準ボロメータ10は、様々な製造方法の下に晒される。このような様々な製造方法によって、これらは、カバー19の側面22から一定の距離で位置する基準ボロメータ10と異なるものとなる。カバー19により密封された基準ボロメータ10の性質の均一性が失われることは、電磁放射線8の検出装置のオペレーションに悪影響を与える。従って、1つ又は複数の内部壁41は、均一性が損なわれることを避けるために導入される。
【0110】
図23に示されるように、内部分離壁41は、有利には既知の方法による単一の工程において形成される単一の層を支持壁36とともに形成する。
【0111】
図示しない変形例によれば、電磁放射線8を検出するための装置は、複数のアクティブボロメータ7と、アクティブボロメータ7と同じ数の基準ボロメータ10とを備え、基準ボロメータ10に起因する信号の複写を避けることができる。
【0112】
本発明による電磁放射線測定装置は、二次電磁放射線の悪影響を抑制し、よってオフセット電流飽和についての最適化することができるという点で顕著なものである。特に、本発明による電磁放射線検出器は、基準ボロメータの非常に敏感な感度とカバーの不十分な不透明性とに起因したゴーストイメージの生成を避けることができる。本発明による検出装置は、非常に整合のとれたアクティブボロメータと基準ボロメータとの同期された差動読み出しを行うことを可能にする。特に、本発明による装置は、有利には、従来技術の容積、製造の複雑さ、製造コストといった欠点を持つことなしに、非常に正確な信号を格納するため、熱又は電気的な攪乱効果を差し引くことができるという利点を持つ。
【0113】
有利には、
図5及び18に示される一例によれば、第1の感受素子12は、カバー19と基板18とにより形作られたキャビティ20の中に位置していない。よって、キャビティ20は第2の感受素子13のみを含む。言い換えると、第1の感受素子12と第2の感受素子13とがカバー19によって隔てられるように、第1の感受素子12はキャビティ20の外側に位置する。
【0114】
従来技術の検出装置と異なり、本発明による電磁放射線検出装置は、小さくなった容積の装置を与える。この特性は、多数のピクセルを持つIR検出装置において特に有利である。