特許第5940552号(P5940552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5940552有機光電子デバイス、及び、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940552
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】有機光電子デバイス、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20160616BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160616BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/10
【請求項の数】27
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-536550(P2013-536550)
(86)(22)【出願日】2011年10月24日
(65)【公表番号】特表2014-500582(P2014-500582A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】NL2011050720
(87)【国際公開番号】WO2012057618
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年9月25日
(31)【優先権主張番号】10188769.3
(32)【優先日】2010年10月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508351406
【氏名又は名称】ネダーランゼ・オルガニサティ・フォーア・トゥーゲパスト−ナトゥールヴェテンシャッペリーク・オンデルゾエク・ティーエヌオー
(73)【特許権者】
【識別番号】504202999
【氏名又は名称】コーニンクリク・フィリップス・ナムローゼ・フエンノートシャップ
(73)【特許権者】
【識別番号】504177804
【氏名又は名称】ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ワイエル ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ファン モル アントニウス マリア ベルナルドゥス
(72)【発明者】
【氏名】ガーランド エミリー
(72)【発明者】
【氏名】フランツ リシャール
(72)【発明者】
【氏名】コッツェフ ディミテル ルボミロフ
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−079291(JP,A)
【文献】 特開2007−184279(JP,A)
【文献】 特開2005−353398(JP,A)
【文献】 特開2004−311385(JP,A)
【文献】 特表2008−536968(JP,A)
【文献】 特開2003−096184(JP,A)
【文献】 特開2006−134888(JP,A)
【文献】 特開2005−298598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層保護層(30)と更なる保護層とにより包囲された光電子素子(10)を有する有機光電子デバイスであって、
前記多層保護層(30)及び前記更なる保護層は前記光電子デバイス(10)を大気物質から保護するための保護包囲体を形成し、
前記多層保護層(30)は、以下の順で積層された、
−第1のセラミック層(32)と;
−ゲッタ材を含む第1の有機層(34)と;
−ゲッタ材を含まない第2の有機層(36)と;
−第2のセラミック層(38)と;を有し、
前記第1のセラミック層及び前記第2のセラミック層は前記第1の有機層及び前記第2の有機層を包囲し、
前記ゲッタ材は前記第1の有機層(34)内にナノサイズ粒子として分布しており、前記第2の有機層(36)の厚さは少なくとも10μmである、有機光電子デバイス。
【請求項2】
前記第1の有機層に含まれる前記ナノサイズ粒子は、組成物全量に対して4〜20重量%の量で含まれる、請求項1に記載の有機光電子デバイス。
【請求項3】
前記ナノサイズ粒子は金属酸化物から構成される、請求項1に記載の有機光電子デバイス。
【請求項4】
前記金属酸化物はアルカリ土類金属酸化物である、請求項3に記載の有機光電子デバイス。
【請求項5】
前記第2の有機層(36)の厚さは少なくとも20μmである、請求項1又は2に記載の有機光電子デバイス。
【請求項6】
前記第2の有機層(36)の厚さは最大100μmである、請求項1又は2に記載の有機光電子デバイス。
【請求項7】
前記第1の有機層(34)の厚さは10〜100μmの範囲である、請求項1又は2に記載の有機光電子デバイス。
【請求項8】
前記第1の有機層(34)に含まれる前記ナノサイズ粒子の濃度は5〜15重量%である、請求項3に記載の有機光電子デバイス。
【請求項9】
前記第2の有機層(36)は前記第1の有機層(34)に画定される領域を超えて側方に延在する、請求項1又は2に記載の有機光電子デバイス。
【請求項10】
前記第2の有機層(36)は、その全周が前記第1の有機層(34)に画定される領域を超えて側方向に延在する、請求項7に記載の有機光電子デバイス。
【請求項11】
前記第2のセラミック層(38)上に保護膜として設けられた更なる有機層(40)を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機光電子デバイス。
【請求項12】
多層保護層と更なる保護層との間に光電子素子を包囲する工程を含む有機光電子デバイスの製造方法であって、
前記多層保護層は、
b)第1のセラミック層を成膜する工程と;
c)ナノサイズ粒子として分布するゲッタ材を含む第1の有機層を成膜する工程と;
d)厚さが10〜100μmの範囲である、ゲッタ粒子を含まない第2の有機層を成膜する工程と;
e)第2のセラミック層を成膜する工程と;により提供され、これにより、光電子素子、前記第1のセラミック層、前記第1の有機層、前記第2の有機層、及び、前記第2のセラミック層を順に有し、前記第1のセラミック層及び前記第2のセラミック層が前記第1の有機層及び前記第2の有機層を包囲する積層体を得る、有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記第1の有機層に含まれる前記ナノサイズ粒子は、組成物全量に対して4〜20重量%の量で含まれる、請求項12に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記第1の有機層(34)及び/又は第2の有機層(36)は、
(A)少なくとも1つの芳香族であるアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(B)少なくとも1つの1官能性であるアクリレート、メタアクリレート、ビニルアミド、アクリルアミド又はメタアクリルアミド成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を活性光照射により硬化することにより得られる、請求項12又は13に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(A)30〜90重量%の前記芳香族であるアクリレート又はメタアクリレート成分Aと;
(B)1〜30重量%の前記1官能性であるアクリレート、メタアクリレート、ビニルアミド、アクリルアミド又はメタアクリルアミド成分Bと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む、請求項14に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記第1の有機層(34)及び/又は第2の有機層(36)は、
(D)少なくとも1つのポリブタジエンアクリレート又はポリブタジエンメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(E)ポリブタジエン基を有さない少なくとも1つのアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を活性光照射により硬化することにより得られる、請求項12又は13に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項17】
前記光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(D)10〜60重量%の前記ポリブタジエンアクリレート又はポリブタジエンメタアクリレート成分Dと;
(E)1〜89.9重量%の前記アクリレート又はメタアクリレート成分Eと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む、請求項16に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項18】
前記第1の有機層(34)及び/又は第2の有機層(36)は、
(F)少なくとも1つのウレタンアクリレート又はウレタンメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(E)ウレタン基を有さない少なくとも1つのアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を活性光照射により硬化することにより得られる、請求項12又は13に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項19】
前記光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(F)5〜50重量%の前記ウレタンアクリレート又はウレタンメタアクリレート成分Fと;
(E)1〜94.9重量%の前記アクリレート又はメタアクリレート成分Eと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む、請求項18に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
前記第1の有機層(34)及び/又は第2の有機層(36)は、
(G)clogP値が>2である、少なくとも1つのアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(H)少なくとも1つのチオール成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を活性光照射により硬化することにより得られる、請求項12又は13に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項21】
前記光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(G)20〜98.9重量%の前記アクリレート又はメタアクリレート成分Gと;
(H)1〜20%重量%の前記チオール成分Hと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む、請求項20に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項22】
前記第1の有機層(34)及び/又は第2の有機層(36)は、
(I)少なくとも1つのエポキシポリシロキサン成分と;
(J)少なくとも1つのカチオン性光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を
含む光硬化性樹脂組成物を活性光照射により硬化することにより得られる、請求項12又は13に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項23】
前記光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(I)20〜99.9重量%の前記エポキシポリシロキサン成分Iと;
(K)0.2〜79.9重量%の、ポリシロキサン基を有さないエポキシ官能又はオキセタン官能有機成分、或いは、当該エポキシ官能又はオキセタン官能有機成分の混合物と;
(J)0.1〜10重量%の前記カチオン性光開始剤Jと;を含む、請求項22に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項24】
前記第1の有機層(34)及び/又は第2の有機層(36)は、
clogP値が>2である光硬化性樹脂組成物を活性光照射により硬化することにより得られる、請求項12又は13に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項25】
前記1官能性であるアクリレート、メタアクリレート、ビニルアミド、アクリルアミド又はメタアクリルアミド成分の30℃における粘性は100mPa・s未満である、請求項14に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項26】
前記ポリブタジエン基を有さない少なくとも1つのアクリレート又はメタアクリレート成分の30℃における粘性は100mPa・s未満である、請求項16に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【請求項27】
前記ウレタン基を有さない少なくとも1つのアクリレート又はメタアクリレート成分の30℃における粘性は100mPa・s未満である、請求項18に記載の有機光電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層保護層に関する。また、本発明は有機光電子デバイス(organic opto-electric device)に関する。さらに、本発明は多層保護層の製造方法に関する。さらに、本発明は有機光電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機LED(小分子系及びポリマー系)、OPV、CI(G)S系太陽電池などの感湿デバイスは、周囲雰囲気に暴露されるとデバイス性能が失われる。OLEDの場合、水や酸化物質が侵入すると、活性有機層が劣化して効率損失が生じたり、カソードが酸化してデバイスが局所的に故障することがある。
【0003】
水の侵入はアノード側、カソード側の両面から起こりうる。現在のOLEDは、基板としてガラスを使用し、またガラス又は金属製の蓋を使用してカソード側を封止することにより水の浸入を防止している。従来、封止はカバー蓋を端部に接着することにより行われており、ゲッタを使用して接着剤を透過しうる水を吸収している。本封止方法は高価であり、大面積デバイス、特にフレキシブルデバイスには実用的ではない。
【0004】
フレキシブルデバイスにも適用可能なコスト効率がより高い代替手段としては薄膜バリアを使用する方法があり、薄膜バリアはプラスチック箔上に設置されて基板とされたり、また、最終封止として使用したりできる。
【0005】
以下、この種のバリアに係る問題を理解するためにOLED内に水が浸入するメカニズムを簡単に説明する。OLEDデバイスのカソードは、比較的厚いAl層で被覆されたBa(ポリマー系LEDの場合)又はLiF(小分子系OLEDの場合)の薄膜(1〜10nm)からなることが最も多い。
【0006】
アルミニウムはピンホールが存在しなければ水に対する優れたバリアであり、ピンホールの大部分は粒子が原因である。このような粒子は複数の要因に起因するものであり、これら粒子の存在を回避することは実際問題として困難である。周囲雰囲気からの水はカソード層内のピンホールを通過して浸透する。カソード/ポリマー界面の金属が酸化されると、デバイス動作時のカソードからポリマーへの電子注入が阻害されるため、局所的な未発光点、すなわち、電界発光の明域内に暗点が発生する。暗点の成長はピンホールからの水の拡散速度により決まる。生じる円形の点の面積は経時で直線的に増加する。暗点の形成・成長は「棚効果(shelf effect)」、つまり、本プロセスの駆動に電流や電圧を必要としない。
【0007】
OLEDの上面に無機バリア層を設けると、大部分の粒子は被覆されるためそれに応じて暗点の数が減少する。しかしながら、残存する暗点の密度は全ての実用面で未だに大きすぎるものである。バリア層を厚くしてもピンホール密度はほとんど減少しない。一旦ピンホールがこのような層に存在すると、当該層の材料を堆積している間も継続して存在する。
【0008】
Graffらは、複数の有機層によってバリア層の成長を妨害するという、現在では一般的な戦略を記載している(非特許文献1)。これにより、後の層におけるピンホールは分断されるため、周囲雰囲気からデバイス内のカソードまでの間に複雑な水輸送経路が形成される。他の種類の無機物質などを含む異なる化学組成の層もまた、かかる目的に使用される。Graffらは、厚さが0.1〜3μmのポリマー分断層を使用することを調査し、そして、より薄いポリマー分断層でも更なる改善がもたらされうることを示唆している。
【0009】
特許文献1には、多層保護層を有するOLEDディスプレーが開示されており、多層保護層は、有機層及び無機層が連続して交互に積層され、かつ、少なくとも1つの水分吸収層が多層保護層に挟まれた構造を有する。特に、特許文献1には多層保護層が第1の無機層、水分吸収層、有機層、及び、第2の無機層をこの順で有する実施形態が記載されている。水分吸収層が存在することにより、光電子素子への水の侵入が更に低減される。水分吸収層は有機金属化合物溶液から形成され、金属又は金属酸化物などの添加物を含みうる。水分吸収層の厚さは3〜50nmでありうる。特許文献1には水分吸収層と第2の無機層との間の有機層の厚さは水分吸収層の厚さよりも大きくされうることが述べられている。厚さをどの程度大きくすべきについて具体的に開示はされていないものの、参照図面から第2の有機層は約2〜3倍厚いことが示唆される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/289549A1号明細書
【特許文献2】米国特許第6,277,929号明細書
【特許文献3】米国特許第3,661,744号明細書
【特許文献4】米国特許第4,119,617号明細書
【特許文献5】米国特許第3,445,419号明細書
【特許文献6】米国特許第4,289,867号明細書
【特許文献7】欧州特許出願第056922号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“Mechanisms of vapor permeation through multilayer barrier films: Lag time versus equilibrium permeation”, J. of Applied Physics, Vol. 96, Nr. 4, pp. 1840-1849
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、大気物質に対するバリア性を改善した多層保護層を提供することを目的とする。
【0013】
本発明はまた、大気物質に対するバリア性を改善した光電子デバイスを提供することを目的とする。
【0014】
本発明はまた、前記多層保護層の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
本発明はまた、前記光電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、
−第1の無機層と;
−ゲッタ材を含む第1の有機層と;
−ゲッタ材を含まない第2の有機層と;
−第2の無機層と;がこの順で積層され、前記第1の無機層及び前記第2の無機層が前記第1の有機層及び前記第2の有機層を包囲する多層保護層であって、
前記ゲッタ材は前記第1の有機層内にナノサイズ粒子として分布しており、前記第2の有機層の厚さは少なくとも10μmである、多層保護層が提供される。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、
−光電子素子と;
−前記光電子素子を大気物質から包囲して保護するための、本発明の第1の態様に係る多層保護層を含む保護包囲体と;を含む、有機光電子デバイスが提供される。
【0018】
ナノサイズ粒子(以下、ナノ粒子ともいう)は寸法が200nm未満である粒子である。
【0019】
本発明は、当初の有機ゲッタ粒子のサイズは小さいにもかかわらず、これらの粒子は数μmのサイズのクラスターを形成する傾向があるという本発明者らの観察に基づくものである。ゲッタ粒子を粉砕(ミリング)すると平均クラスターサイズが小さい分布が生じるため、かかる粒子を含む層の透明性が良好となることがわかった。このように平均クラスターサイズは小さいにもかかわらず、大きいサイズのクラスターの存在を完全に無視することはできないものと考えられた。よって、厚さが従来の0.1〜3μmである第2の有機層を第1の有機層上に設けると、クラスターが第2の無機層内へ突出しうり、また、クラスター表面の粒子が無機層に欠陥を生じる原因となる傾向がある。本発明によれば、第2の有機層の厚さは従来のものよりも実質的に大きい。水分の側面侵入を防止するように第1の無機層及び第2の無機層が第1の有機層及び第2の有機層を包囲する。
【0020】
ナノサイズ粒子は第1の有機層において水分と効率的に結合する。本発明は特に、ナノ粒子の有機層における含有量が組成物全量に対して4〜20重量%である実施形態に関する。しかしながら、特にこのような高含有量ではナノ粒子がクラスター化する傾向がある。典型的な実施形態において、前記含有量は組成物全量に対して5〜10重量%の範囲であり、例えば、5重量%である。
【0021】
好適な実施形態において、第2の有機層の厚さは少なくともとも20μmである。これには、製造プロセスの公差により第2の有機層の厚さにバラツキが生じたとしても、厚さが依然必要な10μmよりも大きくなるという利点がある。フレキシブル製品の場合、第2の有機層の厚さは100μm未満であることが好ましい。典型的な実施形態において、第2の有機層の厚さは約70μmである。
【0022】
一実施形態において、第1の有機層の厚さは10〜100μmの範囲である。厚さが実質的に小さいと(例えば5μm未満)ゲッタリング能力が不十分であり、厚さが実質的に大きいと(例えば200μm超)フレキシブル製品には望ましくない。
【0023】
一実施形態において、ナノサイズ粒子は金属酸化物から構成される。
【0024】
一実施形態において、金属酸化物はアルカリ土類金属酸化物である。アルカリ土類金属酸化物、特にCaOは非常に効率的に水と結合する。
【0025】
一実施形態において、光電子素子はOLEDであり、カソードとアノードとの間に配設された光電子層を有し、カソードは多層保護層に対向する。OLEDはカソード側が最も水分に対して脆弱であり、多層保護層は水分からの効率的かつ透明な保護を提供する。OLEDの反対面には金属箔などの他の保護層が配設されうる。金属箔はまた、カソード及びアノードのうちの1つの導電体となりうる。他の実施形態において、光電子素子は上述の多層保護層を両面に有する。
【0026】
有機層の樹脂成分は、第1の有機層においてゲッタ材の水除去作用が損なわれない限り特に限定されない。好適な有機材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、及び、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0027】
これらの樹脂は例えば溶融状態で押出しして塗布されうる。エポキシ樹脂は、通常、熱硬化されるか或いは室温において2成分系で硬化される。
【0028】
これらの樹脂の中でも、少なくとも1つのラジカル硬化性化合物とラジカル光開始剤とを含む光硬化性組成物から得られるものが好ましい。光硬化性化合物を使用する利点は硬化がほぼ即座に完了することである。
【0029】
光硬化性組成物は1つ以上のラジカル重合性化合物を含む。ラジカル重合性化合物はエチレン性不飽和であることが好ましく、1つの、より好ましくは2つ以上の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物(1官能性又は多官能性化合物)から選択されることが特に好ましい。より具体的には、光硬化産業で周知であるものから好適に選択することができ、これにはモノマー、プレポリマー(すなわち、ダイマー、トリマー、及び、オリゴマー)、それらの混合物、及び、それらのコポリマーといった化学構造を有するものが含まれる。
【0030】
ラジカル重合性化合物の例としては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、芳香族ビニル化合物、ビニルエーテル、及び、内部二重結合を有する化合物(マレイン酸など)が含まれる。「(メタ)アクリレート)」は、アクリレート、メタクリレート又はその混合物を指し、「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタアクリル又はその混合物を指す。
【0031】
(メタ)アクリレートの例としては、以下に示すものが含まれる。
【0032】
1官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリーオクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,3,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタアクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタアクリロイルオキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタアクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、及び、EO変性2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0033】
2官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化・エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、及び、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0034】
3官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン・トリス((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸のアルキレン変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールプロピオネートトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及び、エトキシ化グリセリントリアクリレートが含まれる。
【0035】
4官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトールプロピオネートテトラ(メタ)アクリレート、及び、エトキシ化ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0036】
5官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、及び、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0037】
6官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ホスファゼンのアルキレンオキシド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、及び、カプロラクトン変性ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0038】
不飽和(ポリ)ウレタンを使用してもよい。不飽和(ポリ)ウレタンは、分子中に少なくとも1つの重合性炭素−炭素不飽和結合を有する不飽和ウレタン化合物又は不飽和(ポリ)ウレタン化合物である。不飽和(ポリ)ウレタンは、例えば、ヒドロキシ基末端(ポリ)ウレタンと(メタ)アクリル酸とを反応させるか、または、イソシアネート末端プレポリマーとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させてウレタンメタアクリレートを得ることにより合成されうる。
【0039】
好ましい脂肪族ウレタンメタアクリレートの例としては、GenomerR 4205、GenomerR 4256、GenomerR 4297や、特許文献2に記載されるものが含まれる。
【0040】
さらに、高分岐ポリエステル型などのより多官能なメタアクリレートを使用してもよい。
【0041】
(メタ)アクリルアミドの例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、及び、(メタ)アクリロイルモルフォリンが含まれる。
【0042】
芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルメチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2-エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、及び、4−t−ブトキシスチレンが含まれる。
【0043】
1官能性ビニルエーテルの場合のビニルエーテルの例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチル・ビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ペンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテンオキシエチルビニルエーテル、メトキシエチル・ビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシ-エチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロブチルビニルエーテル、クロロエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、及び、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテルが含まれる。
【0044】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、及び、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル;及び、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリトリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリトリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリトリトールヘキサビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルのエチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパントリビニルエーテルのプロピレンオキシド付加物、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテルのエチレンオキシド付加物、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテルのプロピレンオキシド付加物、ペンタエリトリトールテトラビニルエーテルのエチレンオキシド付加物、ペンタエリトリトールテトラビニルエーテルのプロピレンオキシド付加物、ジペンタエリトリトールヘキサビニルエーテルのエチレンオキシド付加物、及び、ジペンタエリトリトールヘキサビニルエーテルのプロピレンオキシド付加物などの多官能ビニルエーテルが含まれる。
【0045】
また、光硬化性組成物は少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤を含む。フリーラジカル光開始剤はラジカル光重合を開始させるために常用されるものから選択されうる。
【0046】
フリーラジカル重合開始剤の例としては、ベンゾイン類(例えば、ベンゾイン、並びに、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、及び、ベンゾイン・アセタートなどのベンゾインエーテル);アセトフェノン類(例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシアセトフェノン、及び、1,1−ジクロロアセトフェノン);ベンジルケタール類(例えば、ベンジルジメチルケタール、及び、ベンジルジエチルケタール);アントラキノン類(例えば、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、及び、2−アミルアントラキノン);トリフェニルフォスフィン;ベンゾイルホスフィンオキシド類(例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド)(Lucirin TPO);ビスアシルホスフィンオキシド類;ベンゾフェノン類(例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン);チオキサントン類及びキサントン類;アクリジン誘導体;フェナジン誘導体;キノキサリン誘導体;1−フェニル−1,2−プロパンジオン2−O−ベンゾイルオキシム;4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−プロピル)ケトン(Irgacure(R)2959);1−アミノフェニルケトン又は1−ヒドロキシフェニルケトン(例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン、フェニル1−ヒドロキシイソプロピルケトン、及び、4−イソプロピルフェニル1−ヒドロキシイソプロピルケトン;及び、それらの組み合わせが含まれる。
【0047】
重合開始剤の含有量は重合性材料に対して0.01〜10%(質量)の範囲であることが好ましく、0.5〜7%(質量)であることがより好ましい。
【0048】
光硬化性組成物はチオール−エン系でありうる。よって、当該樹脂組成物は、(メタ)アクリレート成分及びフリーラジカル光開始剤に加えて、少なくとも1官能性又は多官能性チオールを含みうる。多官能性チオールは、2つ以上のチオール基を有するチオールを意味する。多官能性チオールは異なる多官能性チオールの混合物でありうる。好適な多官能性チオールは特許文献3(第8コラム第76行〜第9コラム第46行)、特許文献4(第7コラム第40〜57行)、特許文献5及び6に記載されている。特に好ましいものは、ポリオールをチオグリコール酸又はs−メルカプトプロピオン酸などのα−メルカプトカルボン酸又はs−メルカプトカルボン酸でエステル化して得られる多官能性チオールである。
【0049】
チオールの例としては、ペンタエリトリトールテトラ−(3−メルカプトプロピオネート)(PETMP)、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(PETMB)、トリメチロールプロパントリ−(3−メルカプトプロピオネート)(TMPMP)、グリコールジ−(3−メルカプトプロピオネート)(GDMP)ペンタエリトリトールテトラメルカプトアセテート(PETMA)、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMA)、グリコートジメルカプトアセテート(GDMA)、エトキシ化トリメチルプロパントリ(3−メルカプト−プロピオネート700(ETTMP 700)、エトキシ化トリメチルプロパントリ(3−メルカプト-プロピオネート1300(ETTMP 1300)、プロピレングリコール3−メルカプトプロピオネート800(PPGMP 800)が含まれる。
【0050】
ゲッタ粒子の有機マトリックスへの分散性を向上させるために分散剤を添加してもよい。分散剤は、低分子量有機分散剤、高分子量有機分散剤、低分子量有機/無機複合分散剤、高分子量有機/無機複合分散剤、有機/無機酸などでありうる。
【0051】
分散剤は、例えば凝集を防止することによりゲッタ粒子を有機層内へ良好に分散させることでゲッタ粒子のサイズを最小化し、その結果ゲッタ粒子をナノメートルオーダーの大きさで存在させて透明な水分吸収層を作製するためのものである。
【0052】
光硬化性組成物は、安定化剤、調節剤(modifier)、強靱化剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、顔料、色素、充填剤、及び、それらの組み合わせなどのその他の成分を更に含みうる。
【0053】
光硬化性組成物は1つ以上のカチオン重合性エポキシポリシロキサン化合物を含みうる。
【0054】
このようなエポキシポリシロキサン化合物の例としては、ビス[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、エポキシプロポキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、エポキシプロポキシプロピル末端ポリフェニルメチルシロキサン、(エポキシプロポキシプロピル)ジメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン、モノ−(2,3−エポキシ)ポリエーテル末端ポリジメチルシロキサン、エポキシシクロヘキシルエチル末端ポリジメチルシロキサンが含まれる。
【0055】
以下に示すものは市販のエポキシポリシロキサン成分の例である。DMS−E12、DMS−E21、DMS−EX21、MCR−E11、MCR−E21、DMS−EC13、SIB1115.0(Gelest);UV9200(Momentive);Silcolease UV POLY220、Silcolease UV POLY200、Silcolease UV POLY201(BLuestar);PC1000、PC1035(Polyset)。
【0056】
したがって、樹脂組成物は硬化性能、接着性、機械特性、及び、粘度を調節するためにエポキシ官能性及び/又はオキセタン官能性有機化合物を含みうる。エポキシ官能有機化合物としては、例えば、エポキシド化ポリブタジエン樹脂、リモネンオキシド、4−ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、7−エポキシ−1−オクテン、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、クレジルグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。このようなエポキシド類の混合物もまた好適である。オキセタン官能性有機化合物としては、例えば、3−エチル−3−((2−エチルヘキシロキシ)メチル)オキセタン、トリメチロールプロパンオキセタンが挙げられる。
【0057】
また、光硬化性組成物は少なくとも1つのカチオン性光開始剤を含む。
【0058】
カチオン性光開始剤の例としては、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロアルセネート、及び、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの非求核性アニオンを有する、スルホン酸のオニウム塩及びジアリールヨードニウム塩、スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ボロン酸のジアリールヨードニウム塩、及び、ボロン酸のトリアリールスルホニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
カチオン性光開始剤の塗膜組成物における添加量は、塗膜組成物全量に対して、約0.01〜10%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.5〜3%の量とすることができる。
【0060】
オニウム塩は、正に帯電(通常は+1)されており、負電荷のカウンターイオンが存在する。好適なオニウム塩としては、RMX、RMX、RSeMX、RMX、及び、RMX(式中、各Rは独立して炭素数1〜30のヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり;Mは遷移金属、希土類金属、ランタニド金属、メタロイド、リン、及び、硫黄から選択される元素であり;Xはハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素など)であり;zは「(Xの電荷+Mの酸化数)×z=−1」となるような数値である)から選択される式を有する塩が挙げられる。ヒドロカルビル基の置換基の例としては、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜16のアルキル基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子、シアノ基、カルボキシル基、メルカプト基、並びに、ピリジル基、チオフェニル基、及び、ピラニル基などの芳香族複素環基が含まれるが、これらに限定されない。Mで表される金属の例としては、Fe、Ti、Zr、Sc、V、Cr、及び、Mnなどの遷移金属;Pr、Ndなどのランタニド金属;Cs、Sb、Sn、Bi、Al、Ga、及び、Inなどの他の金属;B、Asなどのメタロイド;及び、Pが含まれるが、これらに限定されない。式MXは非塩基性・非求核性アニオンを表す。MXで表されるアニオンの例としては、BF、PF、AsF、SbF、SbCl、及び、SnClが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
オニウム塩の例としては、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、及び、ジアルキルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのビス−ジアリールヨードニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
スルホン酸のジアリールヨードニウム塩の例としては、パーフルオロブタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、パーフルオロエタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、及び、トリフルオロメタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩などのパーフルオロアルキルスルホン酸のジアリールヨードニウム塩;及び、p−トルエンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、及び、3−ニトロベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩などのアリールスルホン酸のジアリールヨードニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩の例としては、パーフルオロブタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、パーフルオロエタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、及び、トリフルオロメタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩などのパーフルオロアルキルスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩;及び、p−トルエンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、及び、3−ニトロベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩などのアリールスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
ボロン酸のジアリールヨードニウム塩の例としては、パーハロアリールボロン酸のジアリールヨードニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。ボロン酸のトリアリールスルホニウム塩の例としては、パーハロアリールボロン酸のトリアリールスルホニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。ボロン酸のジアリールヨードニウム塩、及び、ボロン酸のトリアリールスルホニウム塩は特許文献7に例示されているように当該技術分野において周知である。
【0065】
市販のカチオン生光開始剤の例としては、UV9390C、UV9380C(Momentive)、Irgacure 250(BASF)、Rhodorsil 2074、Rhodorsil 2076(Rhodia)、Uvacure 1592(UCB Chemicals)、Esacure 1064(Lamberti)が含まれる。中でも、UV9390C、Rhodorsil 2074が特に好ましい。
【0066】
第1の態様に係る多層保護層の一実施形態において、
(A)少なくとも1つの芳香族であるアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(B)好ましくは30℃における粘性が100mPa・s未満である、少なくとも1つの1官能性であるアクリレート、メタアクリレート、ビニルアミド、アクリルアミド又はメタアクリルアミド成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を、UV照射などの活性光照射により硬化することにより、第1の有機層及び/又は第2の有機層を得る。
【0067】
前記実施形態の一実施形態において、光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(A)30〜90重量%の前記芳香族であるアクリレート又はメタアクリレート成分Aと;
(B)1〜30重量%の前記1官能性であるアクリレート、メタアクリレート、ビニルアミド、アクリルアミド又はメタアクリルアミド成分Bと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む。
【0068】
第1の態様に係る多層保護層の一実施形態において、
(D)少なくとも1つのポリブタジエンアクリレート又はポリブタジエンメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(E)好ましくは30℃における粘性が100mPa・s未満である、ポリブタジエン基を有さない少なくとも1つのアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を、活性光照射により硬化することにより、第1の有機層及び/又は第2の有機層を得る。
【0069】
前記実施形態の一実施形態において、光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(D)10〜60重量%の前記ポリブタジエンアクリレート又はポリブタジエンメタアクリレート成分Dと;
(E)1〜89.9重量%の前記アクリレート又はメタアクリレート成分Eと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む。
【0070】
第1の態様に係る多層保護層の一実施形態において、
(F)少なくとも1つのウレタンアクリレート又はウレタンメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(E)好ましくは30℃における粘性が100mPa・s未満である、ウレタン基を有さない少なくとも1つのアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を、活性光照射により硬化することにより、第1の有機層及び/又は第2の有機層を得る。
【0071】
前記実施形態の一実施形態において、光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(F)5〜50重量%の前記ウレタンアクリレート又はウレタンメタアクリレート成分Fと;
(E)1〜94.9重量%の前記アクリレート又はメタアクリレート成分Eと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む。
【0072】
第1の態様に係る多層保護層の一実施形態において、
(G)clogP値が>2である、少なくとも1つのアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(H)少なくとも1つのチオール成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を、活性光照射により硬化することにより、第1の有機層及び/又は第2の有機層を得る。
【0073】
前記実施形態の一実施形態において、光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(G)20〜98.9重量%の前記アクリレート又はメタアクリレート成分Gと;
(H)1〜20%重量%の前記チオール成分Hと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む。
【0074】
第1の態様に係る多層保護層の一実施形態において、
(I)少なくとも1つのエポキシポリシロキサン成分と;
(J)少なくとも1つのカチオン性光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を
含む光硬化性樹脂組成物を、活性光照射により硬化することにより、第1の有機層及び/又は第2の有機層を得る。
【0075】
前記実施形態の一実施形態において、光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(I)20〜99.9重量%の前記エポキシポリシロキサン成分Iと;
(K)0.2〜79.9重量%の、ポリシロキサン基を有さないエポキシ官能又はオキセタン官能有機成分、或いは、当該エポキシ官能又はオキセタン官能有機成分の混合物と;
(J)0.1〜10重量%の前記光開始剤Jと;を含む。
【0076】
第1の有機層に使用する場合、本組成物は比較的塩基性が低いゲッタ材と併用する場合のみに使用するべきである。CaOなどの比較的塩基性が高いゲッタ材はカチオン性光硬化プロセスを抑制しうる。
【0077】
第1の態様に係る多層保護層の一実施形態において、第1の有機層及び/又は第2の有機層はclogP値が>2である光硬化性樹脂組成物を活性光照射により硬化することにより得る。
【0078】
本発明の第3の態様によれば、
第1の無機層を成膜する工程と;
ナノサイズ粒子として分布するゲッタ材を含む第1の有機層を成膜する工程と;
厚さが10〜100μmの範囲である、ゲッタ粒子を含まない第2の有機層を成膜する工程と;
第2の無機層を成膜する工程と;を含み、これにより、光電子素子、前記第1の無機層、前記第1の有機層、前記第2の有機層、及び、前記第2の無機層を順に有し、前記第1の無機層及び前記第2の無機層が前記第1の有機層及び前記第2の有機層を包囲する積層体を得る、多層保護層の製造方法が提供される。
【0079】
本発明の第4の態様によれば、
−光電子素子を提供する工程と;
−前記多層保護層の製造工程を含む、保護包囲体を提供する工程と;を含む、保護包囲体で包囲された光電子素子を含む光電子デバイスの製造方法が提供される。
【0080】
保護包囲体は、多層保護層を更なる保護層と組み合わせて、光電子素子を当該多層保護層と当該更なる保護層とで包囲することで得られうる。更なる保護層は前記多層保護層であってもよいが、酸化ケイ素層と窒化ケイ素層とが交互に積層されてなる無機層の積層体などの他のバリア構造体であってもよい。更なる実施形態において、光電子デバイスは、金属箔又はガラス板を基板として使用する場合など、それ自身がバリア層として機能する基板を有しうる。
【0081】
また、本発明の第3及び第4の態様に係る方法の工程間に追加の工程を行ってもよい。例えば、第1の無機層を設ける工程の後であって第1の有機層を設ける工程の前に、更なる有機層を設ける追加の工程を行って、第1の無機層と第1の有機層との間に更なる有機層を設けてもよい。これらの及び他の態様を、図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】本発明の第1の態様に係る多層保護層を有する、本発明の第2の態様に係る光電子デバイスの第1の実施形態の概略上面図である。
図2図1のII−IIに係る概略断面図である。
図3図1のIII−IIIに係るより詳細な断面図である。
図4】本発明の第3の態様に係る方法の工程を含む、本発明の第4の態様に係る方法の第1の実施形態を示す図である。
図5図4のVに係る断面のSEM写真を示す図である。
図6】本発明の第2の形態に係る光電子デバイスの第2の実施形態の断面図である。
図7A】本発明の第4の態様に係る方法第2の実施形態を示す図である。
図7B】本発明の第4の態様に係る方法第2の実施形態を示す図である。
図7C】本発明の第4の態様に係る方法第2の実施形態を示す図である。
図7D】本発明の第4の態様に係る方法第2の実施形態を示す図である。
図7E】本発明の第4の態様に係る方法第2の実施形態を示す図である。
図7F】本発明の第4の態様に係る方法第2の実施形態を示す図である。
図7G】本発明の第4の態様に係る方法第2の実施形態を示す図である。
図8】粒径分布を示す図である。
図9】様々な有機材料の疎水性とclogP値との関係について得られた実験データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下の発明の詳細な説明において、本発明を完全に理解するための多くの具体的詳細を記載するが、これらの具体的詳細がなくても本発明が実施されうることは当業者に理解される。他の例では、周知な方法、手順及び要素は本発明の態様がわかりにくくないように詳細に説明しない。
【0084】
以下、本発明の実施形態を示した添付図面を参照して本発明をより完全に記載するが、本発明は多くの様々な形態で具現化されうり、本明細書に記載する実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は本開示が完璧かつ完全となり、かつ、当業者に本発明の範囲を完全に理解させるためのものである。
【0085】
図中、層及び領域のサイズ及び相対的なサイズは明確化を目的に誇張されていることがある。本明細書において、本発明の実施形態は本発明の理想的な実施形態(及び中間構造)の模式図である断面図を参照して説明される。したがって、例えば、製造技術及び/又は製造公差に起因する図示形状からの変化は予想されるものである。よって、本発明の実施形態は本明細書において図示される特定の領域形状に限定されるものではなく、例えば製造に起因する形状偏位を含む。よって、図中に示された領域は本質的に模式的なものであり、その形状はデバイスのある領域の実際の形状を図示する意図はなく、また、本発明の範囲を限定する意図はない。
【0086】
ある要素又は層が他の要素又は層の「上」、或いは、他の要素又は層に「接続」又は「連結」されると言及されている場合、他の要素又は層の直接「上」、或いは他の要素又は層に直接「接続」又は「連結」することができ、或いは介在する要素又は層が存在しうることが理解されよう。逆に、ある要素が他の要素又は層の「直接上」或いは他の要素又は層に「直接接続」又は「直接連結」されると言及されている場合、介在する要素又は層は存在しない。同様の要素には同様の符号が一貫して付される。本明細書において、「及び/又は」との語句は、1以上の列挙された関連項目のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0087】
本明細書において、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの語句は様々な要素、コンポーネント、領域、層及び/又はセクションを記載するために使用されうるが、これらの要素、コンポーネント、領域、層及び/又はセクションはこれらの語句に限定されるものと解釈されるべきではないことが理解されよう。これらの語句は1つの要素、コンポーネント、領域、層及び/又はセクションを他の1つの要素、コンポーネント、領域、層及び/又はセクションと区別するためだけに使用される。したがって、以下議論する第1の要素、第1のコンポーネント、第1の領域、第1の層又は第1のセクションは、本発明の教示から逸脱しない範囲で第2の要素、第2のコンポーネント、第2の領域、第2の層又は第2のセクションと命名されうる。
【0088】
「下」、「下方」、「下側」、「上方」、「上側」などの空間的な相対語は、本明細書において、図示する1つの要素又は特徴の1以上の他の要素又は特徴との関係を簡単に説明するために使用されうる。空間的な相対語は、図示するデバイスの向きだけではなく、使用中又は動作中のデバイスの様々な向きをも包含する意図であることが理解されよう。例えば、図中のデバイスが反転されると、他の要素又は特徴の「下方」又は「下」である記載された要素は当該他の要素又は特徴の「上方」に向くことになる。したがって、例示的な語句である「下方」は上方及び下方の両方の向きを包含しうる。またデバイスの向きは変更(90度回転又は他の向きに回転)されうり、本明細書における空間的な相対記述語はそれに応じて解釈される。
【0089】
別段定義のない限り、本明細書において使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。常用辞書に定義されている用語は、関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書で特段強調してそのように定義されない限り、理想化された意味合い又は過度に形式的な意味合いに解釈されないことが更に理解されよう。意味が対立する場合、定義を含み、本願明細書が支配する。さらに、材料、方法及び例は単に例示を目的とするものであり、限定的である意図はない。
【0090】
図1は光電子デバイスの概略上面図である。図2図1のII−IIに係る概略断面図である。図3は、多層保護層を有する、図1のIII−IIIに係る断面図の一部をより詳細に示す図である。
【0091】
図1〜3に示す有機光電子デバイスは光電子デバイス10を含み、光電子デバイス10は当該光電子デバイスを大気物質、特に水蒸気から保護するための保護包囲体20により包囲されている。保護包囲体20は、第1の無機層32、ゲッタ材を含む第1の有機層34、ゲッタ材を含まない第2の有機層36、及び、第2の無機層38が順に積層された多層保護層30を含む。図示された実施形態において多層保護層30は更なる有機層40を有する。
【0092】
ゲッタ材は、第1の有機層34内に4〜20重量%の濃度範囲でナノサイズ粒子として分布している。第2の有機層36の厚さは10〜100μmの範囲である。
【0093】
図示された実施形態において、ゲッタ材は金属酸化物、特にアルカリ土類金属酸化物である。さらに特には、選択されるアルカリ土類金属酸化物は酸化カルシウムである。第1の有機層34、第2の有機層36、及び、更なる有機層に使用される有機材料は上述の光硬化性化合物の1つから選択されうる。疎水性が高い化合物を使用することが好ましい。疎水性の望ましい指標はclogP、すなわち、オクタノール/水分配係数の算出対数である。clogP値が比較的大きいことは、その物質の疎水性が比較的高いことを示す。このことは、様々な有機材料の水吸収とclogP値との関係について得られた実験結果を示す図9に示される。特に、clogP値が少なくとも2である有機材料は水吸収が非常に低いことがわかる。したがって、本発明の目的に照らして、clogP値が少なくとも2である有機材料が特に好適である。clogP値は周知のパラメータであり、任意の分子についてその分子構造に関する知識から計算されうる。これを行うことが可能な市販のコンピュータ・プログラムは多数存在し、例えば、Osiris Property Explorer(http://www.organic-chemistry.org/prog/peo/)が挙げられ、アクテリオンファーマシューティカルズ社の社内用物質登録システムの不可欠な部分である。これは、全ての原子の貢献度をその原子の種類、結合性及び化学結合に基づいて加算する増加システムとして実行される。
【0094】
特に、高clogP値の観点から下記の組成物が好適であることがわかった。すなわち、シロキサンを含む組成物;70〜80重量%のシロキサンと20〜30重量%のオキセタンとの混合物を含む組成物;少なくとも5重量%のチオール又はオキシタンを含む、85〜95重量%のアクリレートの混合物を含む組成物;又は、1〜10重量%のチオールを任意で含む、40〜85重量%の1つ以上のアクリレートと10〜55重量%のポリブタジエンアクリレートとの混合物を含む組成物である。光開始剤などの更なる添加物が5重量%までの量で添加されうる。
【0095】
clogP値が少なくとも2である材料を得るためのこのような組成物の幾つかの例を下記表に示す(数値:重量%)。
【0096】
【表1】
【0097】
種類名の意味を下記表に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
有機層は、スピンコーティング法、スロット−ダイコーティング法、キスコーティング法、ホットメルトコーティング法、スプレーコーティング法等などの全ての種類の塗布法、並びに、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ロータリースクリーン印刷法などの全ての種類の印刷法により塗布されうる。
【0100】
塗布後、この光硬化性材料層はUV照射などの活性光照射により硬化されうる。
【0101】
無機層32,38は任意のセラミックで形成されうり、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物が挙げられる。好適な材料としては、例えば、酸化ケイ素(SiO),酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウムスズ(ITO、In+SnO)、炭化シリシウム(SiC)、酸窒化ケイ素(SiON)、及び、それらの組み合わせが挙げられる。
【0102】
無機層32,38の水蒸気透過率は最大で10−4g/m/dayである。無機層は実用上有機層よりも実質的に薄い。無機層の厚さは10〜1000nmの範囲であるべきであり、100〜300nmの範囲であることが好ましい。厚さが10nm未満である無機層はバリア性が実用上不十分である。製品の品質を損なわずに製造プロセスの公差を比較的大きくとれるという点で、少なくとも100nmの厚さの無機層を成膜することが好ましい。フレキシブル製品の場合、無機層の厚さは300nmを超えないことが好ましい。厚さが1000nmを超えても無機層のバリア性はそれ以上向上せず、一方で成膜プロセスの時間が長くなり経済的に魅力的ではない。
【0103】
図3に示すように、実際、無機層32,38はピンホールなどの欠陥32a,38aを有する。有機層34,38は、無機層32,38のピンホールを分断して、大気物質の光電子素子10への流れを低減させるものである。ナノサイズ金属酸化物粒子を含む第1の有機層34は、第2の無機層38内を流れるこれらの物質の大部分を補足する。厚さが少なくとも10μmである第2の有機層36は、これら金属酸化物粒子のクラスターの第2の無機層へのダメージを防止する。
【0104】
図示された実施形態において、第2の有機層36は第1の有機層34を超えて側方に延在する。特に、図1に模式的に示すように、第2の有機層36は第1の有機層34の全周に亘って、第1の有機層34を超えて側方に延在する。
【0105】
図示された実施形態において、多層保護層30は更なる有機材料からなる最上層40を有する。
【0106】
無機層32,38は有機層34,36を超えて延在し、有機層34,36の側面への大気物質の侵入を防止するように有機層34,36を包囲する。
【0107】
第1の有機層34は光電子素子10で画定された領域を完全に被覆する。さらに、第2の有機層36は第1の有機層34の領域を超えて側方に延在する。特に、第2の有機層36は、その全周が第1の有機層34の領域を超えて側方に延在する。
【0108】
無機層32,38の側方の寸法は光電子素子10及び有機層34,36よりも大きい。特に、無機層32,38は有機層34,36を包囲する。多層保護層30は光電子素子10の保護封止体20の一部分を形成する。封止体20は更なる多層保護層、又は、ガラス板や金属箔などのバリア性が十分な他のタイプの層を含みうる。
【0109】
一実施形態において、光電子素子10はOLEDである。OLEDはカソードとアノードとの間に配設された発光層を有する。当該デバイスが金属基板を有する場合、金属基板が電極として機能しうる。機能性を向上させるために、OLEDは通常、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層などの追加の機能層を有する。
【0110】
図4は本発明の第4の実施形態に係る光電子デバイスの例示的な製造方法を示す図である。図4B〜4Eは多層保護層の第3の態様に係る例示的な製造方法を示す図である。
【0111】
図4Aは基板5上に光電子素子10を提供する第1の工程を示す図である。基板5はバリア機能を有しうる。例えば、金属箔又はガラス板が基板として使用されうる。あるいは、基板は多層バリアが設けられたポリマー箔でありうる。
【0112】
図4Bは光電子素子10が設けられた基板5上に第1の無機層32を成膜する第2の工程を示す図である。様々な方法がこの目的に好適であり、例えば、熱蒸着、電子線蒸着、スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、反応性スパッタリング、反応性蒸着などの全ての種類の物理蒸着法、並びに、熱化学蒸着(thermal CVD)、光アシスト化学蒸着(PACVD)、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)などの全ての種類の化学蒸着法が挙げられる。層の厚さは、実際、成膜プロセスの時間により制御することができる。本ケースでは、無機層として厚さ150nmの窒化ケイ素層をPECVDで成膜した。
【0113】
図4Cは第1の有機層34を成膜する第3の工程を示す図である。第3の工程のために、ナノサイズ金属酸化物粒子(ここでは酸化カルシウム粒子)を有機前駆体に分散させた分散液を調製した。この有機前駆体(「POLH9B−1」と標記)は、77.45重量%のイソボルニルアクリレート(Sartomer製、「SR506D」)と、20.59重量%のポリブタジエンジアクリレートオリゴマー(Sartomer製、「SR307」)と、1.96重量%のビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(BASF製「Irgacure 819」)とを含む。CaO粒子はStem Chemicalsから入手したものであり(カタログ#20−1400)、製品仕様は下記のとおりである。BET比表面積:≧20m/g、バルク密度:0.5g/cc、結晶子サイズ:≦40nm、真密度:3.3g/cc、平均孔直径:165Å、平均凝集体サイズ:4μm、全孔体積:≧0.1cc/g、Ca含有量(金属ベース):>99.8%。
【0114】
容量250mLの酸化ジルコニウム製容器と10mm径の酸化ジルコニウム製ミリングボールを使用したボールミル装置(Retch PM100)で、ゲッタ粒子を72時間有機前駆体内でミリングした。
【0115】
図8は、当初得られたCaOパウダーの典型的な粒径分布を点線として示す。動的光散乱ツール(DLS)(Malvern Instruments製「Zetasizer Nano」)で測定した本粒径分布では、第1のピークが約60nm、第2のピークが約550nm、第3のピークが約5μmに現れている。図8はまた、72時間のミリング処理後に得られた典型的な粒径分布を実線で示す。ミリング処理により第1のピークの位置が約20nmシフトしている。驚くべき事に、約5nmの位置の第3のピークが残る一方、第2のピークが消失している。
【0116】
前述の分散液を無機層32の表面上にプロットした。分散液は印刷法で塗布してもよい。プロット表面は、図1にも示すように、光電子素子10により画定される表面を包含する。プロット後、分散液中の有機材料を硬化した。
【0117】
他のゲッタ材も使用されうる。本目的のための特に好適な他のアルカリ土類金属は、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)である。一例として、MgOナノパウダーをStrem Chemicalsから入手してもよい(カタログNo.12−1400)。当該製品の仕様は下記のとおりである。BET比表面積:≧230m/g、真密度:3.2g/cc、結晶子サイズ:≦8nm、平均凝集体サイズ:3.3μm、平均孔直径:50Å、強熱減量:≦8%、全孔体積:≧0.2cc/g、水分含有量:≦1%、バルク密度:0.6g/cc、Mg含有量(金属ベース):≧95%。
【0118】
図4Dは第2の有機層36をインクジェット印刷法で成膜する第4の工程を示す図である。本実施形態において、別の有機前駆体(POLH9B−2と標記)を第2の有機層に使用し、次いで第1の有機層に使用した。この有機前駆体POLH9B−2は、66.35重量%のイソボルニルアクリレート(Sartomer製、「SR506D」)と、11.55重量%のポリブタジエンジアクリレートオリゴマー(Sartomer製、「SR307」)と、9.65重量%のトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(Sartomer製、「SR833S」)と、8.65重量%のトリメチロールプロパントリメタアクリレート(Sartomer製、「SR350」)と、3.8重量%の2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF製「Irgacure 651」)とを含む。あるいは、この前駆体は第1の有機層及び第2の有機層に使用されうる。第2の有機層36を硬化後、第5の工程において第2の無機層を成膜した。第2の有機層36は、第1の有機層34の表面を側方に超えるように成膜される。本発明者らは、第1の有機層34を硬化する際、金属酸化物粒子が埋設されてなる有機材料が無機層の表面端部から後退し、該端部上に粒子のクラスターが残ることを見出した。第1の有機層を超えて側方に延在するように第2の有機層36を成膜することにより、これらクラスターを第2の有機層の有機材料で被覆することができる。
【0119】
図4Eは、第2の無機層38を第1の無機層32と同様に成膜する第5の工程を示す図である。
【0120】
図4Fは、第2の有機層36を成膜した第4の工程の方法と同様の手法で、更なる有機層40を第2の無機層38上に成膜する第6の工程を示す図である。
【0121】
本発明者らは、有機材料からなる最上層40が、それ自体は実質的なバリアを形成せず、また、無機層間の中間層として機能しないにも係わらず、多層保護層30の保護機能を更に向上させることを見出した。理論に拘束されることは望まないが、有機層40は、ダスト粒子などの粒子が無機層38に欠陥を生じる前に、これら粒子を固定する働きを有するものと考えられる。この最上層40の厚さは、典型的には5〜100μmの範囲でありうり、例えば30μmでありうる。
【0122】
図5は、得られた多層保護層30の図4Fの断面VのSEM写真を示す図である。
【0123】
ここで、第1の無機層32及び第2の無機層38は厚さが150nmの窒化ケイ素層である。第1の有機層34は、POLH9B−1のマトリックスに埋設された5wt%のCaO粒子を有し、厚さは約80μmである。
【0124】
第2の有機層36は金属酸化物粒子を含まないPOLH9B−1の層であり、厚さは約70μmである。多層保護層30の最上層を構成する更なる有機層40もまた、金属酸化物粒子を含まないPOLH9B−1の層であり、厚さは約50μmである。
【0125】
第1の有機層及び第2の有機層は両方とも、Dymax Flood Lampを用いて、パワー密度33mW/cmで90秒間光照射することにより硬化した。
【0126】
上述のとおり、基板5には様々なオプションが利用できる。例えば基板は、(水分)バリア機能を元々有する金属箔又はガラス板でありうる。あるいは、基板はバリア構造体が設けられたポリマー箔でありうる。このバリア構造体は、無機材料の層が交互に積層されてなる積層体(例えば、酸化ケイ素層と窒化ケイ素層とが交互に積層されてなる積層体)などの従来公知のバリア構造体でありうる。あるいは、このバリア構造体は層32,34,36,38を含むバリア構造体と同様のものでありうる。かかる場合、このバリア構造体は図4B〜4Eを参照して、上述した工程により得ることができる。
【0127】
図6は本発明の第1の態様に係る光電子デバイスの第2の実施形態を示す図である。本実施形態において、光電子素子10は本発明の第1の態様に係る第1の多層保護層30と第2の従来の多層保護層60との間に配設される。かかる場合、第2の多層保護層60は、例えば酸化ケイ素からなる無機層62、例えばアクリレートからなる有機層64、及び、無機層68を含む。第2の多層保護層60は有機層70に配設される。図示される実施形態において、光電子素子10はOLEDであり、そのカソード(不図示)は第1の多層保護層(ナノサイズ金属酸化物粒子が4〜20重量%の濃度で分布する第1の有機層34と、厚さが10〜100μmの範囲である第2の有機層とを有する)に対向する。第2の多層保護層60は、ナノサイズ金属酸化物粒子を含む有機層を無機層62,68の間に含まない。しかしながら、代替の実施形態において、第2の多層保護層60は第1の多層保護層30のものと同様な層の組み合わせを有しうる。
【0128】
図7A〜7Gは、図6に示す光電子デバイスの考えられる製造方法を示す図である。
【0129】
図7Aは、ガラスプレート又は金属プレートなどの仮基板75を提供する第1の工程を示す図である。
【0130】
図7Bは、剥離有機層70を成膜する第2の工程を示す図である。剥離有機層70は、製造中の工作物に仮基板75への十分な接着性を付与する材料であって、完成後に工作物の容易な剥離を可能とする材料からなる層である。例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリカ有機系ポリマーがこの目的に使用されうる。
【0131】
図7Cは無機層62を成膜する第3の工程を示す図である。
【0132】
図7Dは有機層64を無機層62上に成膜する第4の工程を示す図である。
【0133】
図7Eは無機層64を有機層64上に成膜する第5の工程を示す図である。無機層64は、有機層64を超えて有機層62の何もない端部62e上を側方に延在し、その結果、無機層62,68が有機層64を包囲する。
【0134】
図7Fは、図4A〜4Fを参照して上述したように、後の工程において光電子素子10及び多層保護層30がどのように設けられるかを示す図である。
【0135】
図7Gは、得られた製品がその後どのように剥離工程において基板75から剥離されるのかを説明する図である。
【0136】
OLEDに基づいて本発明を具体的に説明したが、本発明は他の光電子素子、例えば、エレクトロクロミックデバイスや光起電力デバイスを有する光電子デバイスにも同等に適用することができる。
【0137】
本明細書において、語句「含む」、「有する」(comprises, comprising, includes, including, has, having)又はそれらの全ての変形語は、非排他的な包含を意図するものである。例えば、一連の要素を含むとされるプロセス、方法、物品又は装置は必ずしもこれらの要素に限定されず、明示されていないか又は当該プロセス、方法、物品又は装置に内在する他の要素をも含みうる。さらに、断りのない限り、「又は」は包含的な「又は」であり排他的な「又は」ではない。例えば、「条件A又はB」は下記のいずれか1つにより満たされる。Aは真(又は存在)でありBは偽(又は非存在);Aは偽(又は非存在)でありBは真(又は存在);A及びBの双方が真(又は存在)。
【0138】
また、「1つ」(a, an)は本発明の要素及びコンポーネントを記述するために使用されるものである。これは単に便宜上の目的であり本発明の一般的な意義を伝えるためのものである。断りのない限り、かかる記載は1つ又は少なくとも1つを含み、かつ、単数形は複数形を含むものと解釈されるべきである。
図1
図8
図9
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G