特許第5940554号(P5940554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5940554高収量の組換えタンパク質発現を得るためのMGMTに基づく方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940554
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】高収量の組換えタンパク質発現を得るためのMGMTに基づく方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160616BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20160616BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20160616BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20160616BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12P21/02 C
   C07K19/00
【請求項の数】49
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2013-542568(P2013-542568)
(86)(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公表番号】特表2014-502163(P2014-502163A)
(43)【公表日】2014年1月30日
(86)【国際出願番号】EP2011072387
(87)【国際公開番号】WO2012076715
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2014年3月26日
(31)【優先権主張番号】10306389.7
(32)【優先日】2010年12月9日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/505,694
(32)【優先日】2011年7月8日
(33)【優先権主張国】US
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4357
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4381
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4382
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4368
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4369
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4581
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4565
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4566
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4567
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4568
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4569
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4570
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4571
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4572
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4576
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4577
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4578
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4579
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4580
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4583
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4584
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4585
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4586
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-4582
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501173391
【氏名又は名称】アンスティテュ・パストゥール
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100188651
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 広介
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、デプレ
(72)【発明者】
【氏名】シルビー、ポル
(72)【発明者】
【氏名】エロディー、クリュブル
【審査官】 森井 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−501286(JP,A)
【文献】 特表2010−519904(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/012962(WO,A1)
【文献】 国際公開第2000/031284(WO,A1)
【文献】 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (2004) vol.101, no.27, p.9955-9959
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫細胞において組換えタンパク質を発現するためのベクターであって、単一のオープンリーディングフレーム内に、5’から3’方向に、
a)前記昆虫細胞において機能的であるペプチド分泌シグナル、
b)6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ酵素(MGMT、EC2.1.1.63)、または、配列番号4と少なくとも90%同一であるか、もしくは配列番号2のSNAP突然変異体と少なくとも90%同一である、その機能的MGMT突然変異体、および
c)組換えタンパク質
をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、ベクター。
【請求項2】
前記MGMT酵素が配列番号4のタンパク質である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項3】
前記MGMT突然変異体が配列番号2のSNAPタンパク質である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項4】
前記オープンリーディングフレームが、前記ペプチドシグナルと同じ昆虫細胞において機能的である誘導プロモーターと機能的に連結されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項5】
前記分泌ペプチドシグナルおよび前記誘導プロモーターが昆虫細胞において機能的である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項6】
前記昆虫細胞がショウジョウバエS2細胞である、請求項5に記載の発現ベクター。
【請求項7】
前記組換えタンパク質が診断用および/または治療用タンパク質および/またはポリペプチドからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項8】
前記診断用および治療用タンパク質および/またはポリペプチドが、
−細菌またはウイルス免疫原性タンパク質、および
−血液因子、抗凝固因子、増殖因子、ホルモン、治療用酵素およびモノクローナル抗体およびサイトカイン、
−抗腫瘍タンパク質、
−微生物、ウイルスおよび/または寄生虫ポリペプチド、
−癌抗原などの抗原
からなる群から選択される、請求項7に記載の発現ベクター。
【請求項9】
前記細菌またはウイルス免疫原性タンパク質が、デング熱ウイルス、日本脳炎(JE)ウイルス、ダニ媒介脳炎(TBE)ウイルス、黄熱(YF)ウイルス、ウスツ(USU)ウイルス、ロシオウイルス、マレー脳炎(MVE)ウイルス、ベッセルブロン(WSL)ウイルス、ジカウイルスもしくは西ナイル(WN)ウイルス由来のEDIIIタンパク質、またはリフトバレー熱(RVF)ウイルスもしくはトスカナ(TOS)ウイルス由来の核タンパク質N、またはチクングニアウイルス由来のE2エンベロープタンパク質の可溶型、または西ナイルウイルスのEエンベロープタンパク質の可溶型である、
請求項8に記載の発現ベクター。
【請求項10】
前記診断用および治療用タンパク質がIFNα、グランザイムM、FasL、SSX2、NERCMSL、hSULF2ΔTMDおよびCNTN4からなる群から選択される、請求項7に記載の発現ベクター。
【請求項11】
前記MGMT酵素が配列番号3または配列番号68のDNA配列によりコードされている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項12】
前記MGMT酵素突然変異体が配列番号1または配列番号47のDNA配列によりコードされている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項13】
少なくとも1つのペプチド切断部位をさらにコードする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項14】
前記ペプチド切断部位が、MGMT酵素またはその突然変異体と組換えタンパク質との間に位置する、請求項13に記載の発現ベクター。
【請求項15】
標識をさらにコードする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項16】
前記標識が組換えタンパク質のC末端に位置する、請求項15に記載の発現ベクター。
【請求項17】
スペーサー配列をさらにコードする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項18】
前記スペーサー配列が前記MGMT酵素またはその突然変異体と前記組換えタンパク質との間、かつ/または前記組換えタンパク質と前記標識との間に位置する、請求項17に記載の発現ベクター。
【請求項19】
−ペプチドBiP昆虫シグナル、
−配列番号2のSNAPタンパク質、
−請求項10に定義される組換えタンパク質、
−エンテロキナーゼペプチド切断部位、
−ポリヒスチジン標識、および
−アミノ酸配列グリシン−グリシン−グリシン−セリン(GGGS)を有する2つのスペーサー配列
をコードする、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項20】
−BiP様ペプチドシグナル、
−配列番号2のSNAPタンパク質、
−請求項10に定義される組換えタンパク質、
−proTEVペプチド切断部位、
−ポリヒスチジン標識、および
−アミノ酸配列グリシン−グリシン−グリシン−セリン(GGGS)を有する2つのスペーサー配列
をコードする、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項21】
昆虫細胞において組換えタンパク質を発現するためのベクターであって、単一のオープンリーディングフレーム内に、5’から3’方向に、
a)BiP様ペプチドシグナル、
b)配列番号4のMGMTタンパク質または配列番号2のSNAPタンパク質、
c)2つのproTEVペプチド切断部位、
d)ポリヒスチジン標識、および
e)アミノ酸配列グリシン−グリシン−グリシン−セリン(GGGS)を有する2つのスペーサー配列
をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、ベクター。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の発現ベクターを含んでなるプラスミドにより安定にトランスフェクトされた組換え細胞。
【請求項23】
配列番号59または配列番号69を含んでなる、請求項22に記載の発現ベクターを含んでなるプラスミドにより安定にトランスフェクトされた組換え細胞。
【請求項24】
細菌である、請求項22に記載の安定にトランスフェクトされた組換え細胞。
【請求項25】
前記細菌が大腸菌細胞である、請求項24に記載の安定にトランスフェクトされた組換え細胞。
【請求項26】
細菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞、または鳥類細胞である、請求項22に記載のトランスフェクトされた組換え細胞。
【請求項27】
ショウジョウバエS2細胞またはその誘導体;CHO細胞、YB2/O細胞、COS細胞、HEK細胞、NIH3T3細胞、HeLa細胞、PER.C6細胞またはそれらの誘導体;およびEBx細胞から選択される、請求項26に記載のトランスフェクトされた組換え細胞。
【請求項28】
前記鳥類細胞が、EB66細胞またはそれらの誘導体である、請求項26に記載のトランスフェクトされた組換え細胞。
【請求項29】
請求項1〜21のいずれか一項に定義される発現ベクターを生産するための、請求項22〜28のいずれか一項に記載の組換え細胞の使用。
【請求項30】
組換えタンパク質を生産するための、請求項22、23、26または27のいずれか一項に記載の昆虫組換え細胞の使用。
【請求項31】
請求項1〜5および7〜18のいずれか一項に記載の発現ベクターにより安定トランスフェクトされた、昆虫組換え細胞。
【請求項32】
キイロショウジョウバエ細胞である、請求項31に記載の安定にトランスフェクトされた細胞。
【請求項33】
前記キイロショウジョウバエ細胞がショウジョウバエS2細胞である、請求項32に記載の安定にトランスフェクトされた細胞。
【請求項34】
i)前記発現ベクターが、
−配列番号19、または2010年8月19日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス パリ)に番号CNCM I−4357として寄託された細胞にクローニングされたヌクレオチド配列を含んでなるベクター、
−配列番号22、または2010年10月27日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所に番号CNCM I−4381として寄託された細胞にクローニングされたヌクレオチド配列を含んでなる請求項7のベクター、
−配列番号21、または2010年10月27日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所に番号CNCM I−4382として寄託された細胞にクローニングされたヌクレオチド配列を含んでなる請求項7のベクター、
−配列番号9、または2010年9月29日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所に番号CNCM I−4368として寄託された細胞にクローニングされたヌクレオチド配列を含んでなるベクター、
−配列番号20、または2010年9月29日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所に番号CNCM I−4369として寄託された細胞にクローニングされたヌクレオチド配列を含んでなる請求項7のベクター、
−配列番号10または59または69を含んでなる請求項21のベクター、
−配列番号64、または2011年12月9日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所に番号CNCM I−4581として寄託された細胞にクローニングされたヌクレオチド配列のベクター、
−配列番号71のベクター、
−配列番号55、配列番号57もしくは72もしくは74、配列番号77、79もしくは81、配列番号89、配列番号84もしくは86、配列番号92、または配列番号96を含んでなる請求項10のベクター
からなる群から選択されるか、あるいは
ii)それが、
−2010年8月19日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所に番号CNCM I−4357として寄託された細胞、
−2010年10月27日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所に番号CNCM I−4381として寄託された細胞、
−2010年10月27日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所に番号CNCM I−4382として寄託された細胞、
−2010年9月29日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所に番号CNCM I−4368として寄託された細胞、
−2010年9月29日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所に番号CNCM I−4369として寄託された細胞、
−2011年12月5日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4565として寄託された細胞、
−2011年12月5日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4566として寄託された細胞、
−2011年12月5日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4567として寄託された細胞、
−2011年12月5日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4568として寄託された細胞、
−2011年12月5日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4569として寄託された細胞、
−2011年12月5日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4570として寄託された細胞、
−2011年12月5日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4571として寄託された細胞、
−2011年12月5日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4572として寄託された細胞、
−2011年12月8日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4576として寄託された細胞、
−2011年12月8日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4577として寄託された細胞、
−2011年12月8日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4578として寄託された細胞、
−2011年12月8日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4579として寄託された細胞、
−2011年12月8日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4580として寄託された細胞、
−2011年12月9日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4583として寄託された細胞、
−2011年12月9日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4584として寄託された細胞、
−2011年12月9日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4585として寄託された細胞、および
−2011年12月9日にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4586として寄託された細胞
からなる群から選択される
請求項32または33に記載の安定にトランスフェクトされたS2細胞。
【請求項35】
請求項1〜4、6〜18、20および21のいずれか一項に記載の発現ベクターにより安定にトランスフェクトされた、脊椎動物組換え細胞。
【請求項36】
哺乳動物細胞である、請求項35に記載の安定にトランスフェクトされた細胞。
【請求項37】
前記哺乳動物細胞が、CHO細胞、YB2/O細胞、COS細胞、HEK細胞、NIH3T3細胞、HeLa細胞またはそれらの誘導体である、請求項36に記載の安定にトランスフェクトされた細胞。
【請求項38】
前記発現ベクターが、配列番号57もしくは72もしくは74(目的タンパク質がIFNαである場合)、配列番号77、79もしくは81(目的タンパク質が癌抗原SSX2である場合)、配列番号55(目的タンパク質がグランザイムMである場合)、配列番号89(目的タンパク質がFasLである場合)、配列番号84もしくは86(目的タンパク質が癌抗原NERCMSLである場合)、または配列番号92(目的タンパク質がコンタクチンCNTN4である場合)、または配列番号96(目的タンパク質がhSULF2ΔTMDである場合)を含んでなる請求項10のベクターである、請求項3537のいずれか一項に記載の安定にトランスフェクトされた哺乳動物細胞。
【請求項39】
組換えタンパク質の発現を増強する方法であって、前記タンパク質およびペプチド分泌シグナルを、酵素6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ酵素(MGMT、EC2.1.1.63)、または、配列番号4と少なくとも90%同一であるか、もしくは配列番号2のSNAP突然変異体と少なくとも90%同一である、その機能的MGMT突然変異体とともに共発現させることを含んでなり、前記共発現が昆虫細胞で行われる、方法。
【請求項40】
前記MGMT酵素が配列番号4のタンパク質である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記MGMT突然変異体酵素が配列番号2のSNAPタンパク質である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
細胞培養において組換えタンパク質を生産する方法であって、
a)請求項1〜20の発現ベクターを提供すること、
b)前記発現ベクターを昆虫細胞に導入すること、
c)前記昆虫細胞に導入されたヌクレオチドの発現を可能として組換えタンパク質を生産すること
を含んでなる、方法。
【請求項43】
前記組換えタンパク質が、回収された細胞培養上清の少なくとも40mg/Lまたはそれを上回って発現される、請求項3942のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
複製ベクターまたは欠陥ベクターを感染させた昆虫細胞において異種タンパク質の生産を増強するための、6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ酵素(MGMT、EC2.1.1.63)、または、配列番号4と少なくとも90%同一であるか、もしくは配列番号2のSNAP突然変異体と少なくとも90%同一である、その機能的MGMT突然変異体の使用。
【請求項45】
前記MGMT酵素が配列番号4のタンパク質である、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記MGMT突然変異体が配列番号2のSNAPタンパク質である、請求項44に記載の使用。
【請求項47】
保存培地中、血漿中もしくはバッファー中での組換えタンパク質の半減期を改善するため、薬剤もしくはワクチンとして用いられる組換えタンパク質の半減期を改善するため、または診断キットで用いられる組換えタンパク質の半減期を改善するために、組換えタンパク質と融合される保護ポリペプチドとしての、6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ酵素(MGMT、EC2.1.1.63)、または、配列番号4のタンパク質と少なくとも90%同一であるか、もしくは配列番号2のSNAP突然変異体と少なくとも90%同一である、その機能的MGMT突然変異体の使用。
【請求項48】
前記組換えタンパク質がインスリン、IFNα、グランザイムM、SSX2、FasL、エンドスルファターゼ(hSULF)、コンタクチンおよびメソテリン(NERMCSL)の中から選択される、請求項47に記載の使用。
【請求項49】
前記ペプチド分泌シグナルが昆虫ssBiP、BiP様ペプチドシグナルおよび西ナイルウイルスのエンベロープEタンパク質からなる群から選択される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学および分子生物学の分野に関する。特に、本発明は、宿主細胞におけるタンパク質生産の新規なエンハンサーに関する。さらに、本発明は、前記エンハンサータンパク質をコードするDNA配列を含有するベクター、また、真核生物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)タンパク質およびウイルスタンパク質を含む、医薬使用のための工業生産酵素またはタンパク質などの組換えタンパク質を発現させるためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
目的ポリペプチドまたはタンパク質が組換え生物または細胞で生産されるタンパク質生産系は、商業的バイオテクノロジーの中軸である。
【0003】
大腸菌(E. coli)などの宿主における細菌発現に基づいた最も初期の系は、真核生物宿主、特に、培養哺乳動物細胞、培養および完全昆虫の形態双方での昆虫細胞、ならびにヒツジおよびヤギなどのトランスジェニック哺乳動物に基づく系と結びついてきた。
【0004】
原核細胞培養系は維持が容易で、実施も安価である。しかしながら、原核細胞は真核生物のタンパク質の翻訳後修飾が可能でない。さらに、多くのタンパク質が不適切に折り畳まれ、それらの再折り畳みを行う特別な手順を必要とし、製造コストが加算される。
【0005】
真核細胞培養系は、いくつかの出願に記載されている。例えば、哺乳動物細胞は翻訳後修飾が可能であり、一般に、適切に折り畳まれた可溶性のタンパク質を生産する。哺乳動物細胞系の主要な欠点には、特殊で高コストの培養設備の必要性、その培養系全体が失われかねない感染リスク、および有害である可能性のある哺乳動物タンパク質が最終産物を汚染するリスクが含まれる。別法としては、昆虫細胞がポリペプチド発現に用いられる。昆虫細胞で用いられる最も汎用されている発現系は、バキュロウイルスベクターに基づくものである。バキュロウイルス発現ベクターは、バキュロウイルスの主構造タンパク質をコードするバキュロウイルスのポリヘドリン遺伝子を、強力な天然ポリヘドリンプロモーターの制御下、異種遺伝子に置き換えることにより構築される。培養昆虫宿主細胞に組換えウイルスを感染させ、それにより生産されたタンパク質は、細胞自体から、または好適な分泌シグナルを用いる場合には培養培地から回収することができる。
【0006】
しかしながら、両系とも、組換えタンパク質発現レベルおよび品質の再現性、培養物の感染に関連する問題があり、特殊な培養設備を必要とする場合がある。さらに、ある種のタンパク質の生産のためのバキュロウイルス原株は、GMP条件下で作製しなければならない場合があり、時間が経てば常に安定というわけではない。
【0007】
タンパク質発現のためのショウジョウバエ細胞、特に、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)S2細胞は、米国特許第5,550,043号、同第5,681,713号および同第5,705,359号に開示されている。目的タンパク質が感染昆虫細胞の溶解時にのみ提供される従来技術のバキュロウイルス系とは対照的に、S2細胞に基づく方法は、異種タンパク質の連続細胞発現系を提供し、従って、より高い発現レベルをもたらす。
【0008】
宿主細胞における異種タンパク質の発現を増強するための他の手段もいくつか提案されており、例えば、米国特許第5,919,682号には、tacプロモーターの制御下でpCWベクターを用いて原核生物において機能的硝酸シンターゼを過剰生産し、シャペロンを有するタンパク質を共発現させる方法が記載されている。また、米国特許第4,758,512号は、それらのDNA配列内に、その生物に外来産物分解能の低下を示させる特定の突然変異を有する宿主細胞の生産に関するものである。これらの変異型宿主生物は、遺伝的に操作された外来タンパク質の収量を高めるために使用することができる。
【0009】
脊椎動物細胞、特に、哺乳動物細胞もまた、組換えタンパク質の発現に広く使用されてきた。培養系で増殖する細胞から経時的タンパク質生産の量は、例えば、細胞密度、細胞周期、タンパク質の細胞生合成速度、細胞の生存率および成長を支えるために使用される培地の条件、ならびに培養細胞の寿命(すなわち、プログラムされた細胞死、またはアポトーシスに屈するまでの期間)などのいくつかの因子によって決まる。培養細胞の生存率および寿命を改善する種々の方法が、例えば、栄養素、細胞密度、酸素および二酸化炭素含量、乳酸デヒドロゲナーゼ、pH、浸透圧、異化代謝産物などを制御することにより所望のタンパク質の生産性を高める方法とともに開発されてきた。
【0010】
異種組換えタンパク質を生産するための他の宿主細胞、特に、植物細胞および酵母細胞も使用可能である。
【0011】
哺乳動物起源の多くの医薬タンパク質が植物で合成されている。これらの範囲は、年間需要量が500トンを超えるヒト血清アルブミンなどの血液製剤から、必要量はもっと少ないサイトカインおよびその他のシグナル伝達分子に及ぶ。ほとんどの植物由来タンパク質は、トランスジェニックタバコで生産され、葉から直接抽出されている。一般に、これらのタンパク質は総可溶性タンパク質の0.1%未満といった低レベルで生産される。このような低レベルの生産は、おそらく、最も重要なものの中でも、不十分なタンパク質折り畳みおよび安定性を伴う複数の因子の組合せを表している。もっと最近では、ヒトタンパク質をはるかに高いレベルで発現させるためにタバコ葉緑体系が使用されている(MA JKC et al, 2004)。
【0012】
酵母系は、長年、工業的および生物薬剤的用途で大量のタンパク質を生産するための主力品であった。酵母は、十分定義された培地で極めて高密度まで増殖させることができる。酵母内の組換えタンパク質は過剰発現させることができ、従って、その産物は細胞から分泌され、発酵溶液中での回収に利用することができる。酵母により分泌されたタンパク質は、コンセンサスグリコシル化部位で高度にグリコシル化されている。従って、酵母系における組換えタンパク質の発現は、歴史的に、翻訳後グリコシル化パターンがタンパク質の機能に影響を及ぼさないタンパク質に限られてきた。サッカロミセス属(Sacharomyces)、シゾサッカロミセス・ポムベ(Scizosacchromyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)およびハンセヌラ・ポリモルファ(Hansanuela polymorpha)を含むいくつかの酵母発現系が組換えタンパク質発現に使用されている。最近、酵母において組換え糖タンパク質産生能を有する新規な系が、哺乳動物細胞で産生される分泌型ヒト糖タンパク質と類似するグリコシル化配列を持って現れた。ピキア・パストリスのグリコシル化経路は、N−グリコシル化中間体に高マンノース鎖を付加する内因性酵素を排除することにより改良された。さらに、ヒト化オリゴ糖鎖の合成に関与する少なくとも5つの活性酵素が特異的にP.パストリスに導入された。酵母において大量のヒト化糖タンパク質を生産できるということは、グリコシル化構造が極めて均一で容易に精製できるという意味で有利となる。さらに、哺乳動物細胞よりもはるかに短い発酵時間の酵母での流加生産を使用することにより、哺乳動物ウイルスおよび他の哺乳動物宿主糖タンパク質によるクロスコンタミネーションが解消できる。
【0013】
しかしながら、これらの系を使用することで、異種タンパク質の生産は培養細胞上清においておよそ1〜2mg/Lとなり、工業製品の目標値に比べて極めて低い。
【0014】
よって、有意に高レベルの異種タンパク質発現を達し得る系を提供する差し迫った必要性がある。
【発明の概要】
【0015】
本発明はこの必要性に応え、生産レベルをタンパク質生産の既存の手段の100倍に(すなわち、上清中のタンパク質が200mg/Lに)達するタンパク質発現法を提供する。
【0016】
本発明者らは、実際に、ヒト6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ(hMGMT)タンパク質に由来のタンパク質をコードするヌクレオチドベクター(前記hMGMT由来タンパク質が目的タンパク質に直接的または非直接的に連結されている)を使用すれば、前記目的タンパク質の生産が平均40mg/L〜200mg/Lの収量まで高められることを証明した。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)5’から3’方向に、シグナルペプチド、MGMT mRNA配列、スペーサー、プロテアーゼ切断部位、組換えタンパク質遺伝子(外来遺伝子)、スペーサー、および標識(His)−タグを含む、本発明のMGMT融合タンパク質配列をコードするmRNAの概略図、および(B)i)昆虫ssBiPシグナルペプチド(斜体)、ii)SNAPをコードするエンハンサー配列(グレー)、iii)DNAスペーサー配列、iv)エンテロキナーゼ部位をコードする配列(太字)、v)クローニング部位EcoRV/Xmal(下線)およびvi)Hisタグ標識をコードするDNA(太字の斜体)を含んでなるベクターの同じ部分のDNA配列およびアミノ酸配列(配列番号5も参照)を開示する。
図2】(A)Hisタグ標識に連結された、融合タンパク質SNAP(グレー)およびリフトバレー熱ウイルスのN核タンパク質(RVF.N、太字)のアミノ酸配列(両タンパク質はスペーサーGGGSにより分離されている)、(B)10日間カドミウムで刺激した場合または刺激しなかった場合の、配列番号19のDNAベクター(SNAP−RVF)によりトランスフェクトされたS2細胞の細胞上清に対する、抗Histag抗体を用いた免疫ブロットアッセイ、および(C)大腸菌B21溶解液の不溶性(INS)または可溶性(SOL)タンパク質画分に対する抗His抗体を用いて行った免疫ブロットアッセイ(前記細菌はpET302/RVF.N+proTEV+GSTプラスミドを担持している)、(D)10日間刺激S2細胞からの、TalonカラムおよびSuperdex 75カラムを用いた分泌キメラタンパク質SNAP−RVF.Nの二段階精製後に得られる連続画分サンプル中のSNAP−RVF.Nの量を示す免疫ブロットアッセイを開示する。
図3】(A)Hisタグ標識(太字)に連結された融合タンパク質SNAP(斜体)および西ナイルウイルス由来エンベロープタンパク質Eの可溶型(グレー)のDNA配列およびアミノ酸配列(これらのタンパク質はスペーサーGGGSにより分離されている)(配列番号20)、および(B)10日間カドミウムで刺激した場合または刺激しなかった場合の、SNAP−WNsEをコードする本発明のDNAベクター(配列番号20)でトランスフェクトされたS2細胞の上清中における、西ナイルウイルスのエンベロープタンパク質Eタンパク質の可溶型の分泌を示す、抗Hisタグ抗体を用いた免疫ブロットアッセイを開示する。
図4】(A)BiPペプチドシグナル、MGMT様コード配列(SNAP様)、IFNα配列(huIFNΑI)の各側の2つのpro−TEV切断部位もよびHisタグ標識を含むDNAカセットのスキーム、(B)融合タンパク質SNAP(グレー、その前に昆虫ペプチドシグナル(斜体)がある)およびIFNα(太字)、その後のHisタグ標識(太字の斜体)のDNA配列およびアミノ酸配列(前記SNAPとIFNαタンパク質はエンテロキナーゼ切断部位(下線)およびスペーサー配列GGGSで分離されている)、(C)Cd2+で刺激した場合または刺激しなかった場合の、IFNαをコードする本発明のベクターによりトランスフェクトされたS2細胞(S2/SNAP−IFN)または対照ベクターによりトランスフェクトされたS2細胞の上清においてIFNα発現を検出するための、抗Hisタグ抗体を用いた免疫ブロットアッセイ、(D)10日間のカドミウム含有または不含で誘導された、S2/DeSNAPuniv−IFNα細胞の上清10μlに対する、抗SNAP抗体を用いた免疫ブロットアッセイ、(E)ウミシイタケルシフェラーゼを発現するチクングニアウイルスを感染させたHeLa細胞におけるルシフェラーゼ活性(前記細胞は、種々の用量の、商業ソース(Intergen)から入手したIFNαまたは本発明の方法により生産されたIFNαで処理した)、(F)ウミシイタケルシフェラーゼを発現するチクングニアウイルスを感染させたHeLa細胞におけるルシフェラーゼ活性(前記細胞は、種々の用量の、本発明の生産方法により得られたSNAP−IFNαタンパク質で処理した)を開示する。
図5】本発明の組換えタンパク質生産法の様々な行程を示す。
図6】(A)融合タンパク質SNAP(グレー、その前に昆虫ペプチドシグナルがある)、およびグランザイムM、その後のHisタグ標識のDNA配列およびアミノ酸配列(前記SNAPとグランザイムMタンパク質は、エンテロキナーゼ切断部位およびスペーサー配列GGGSで分離されている)、(B)SNAP中のGrMプロテアーゼの3つの可能性のある切断部位を強調した、キメラ融合タンパク質SNAP−GrMの概略図、(C)GrMをコードする本発明のベクターによりトランスフェクトされたS2細胞(S2/SNAP−GrM、配列番号55)の上清におけるSNAP−GrMの発現を検出するための、抗SNAP抗体または抗Hisタグ抗体を用いた免疫ブロットアッセイを開示する。
図7】(A)BiP様ペプチドシグナル、MGMTコード配列、IFNα配列(huIFNΑI)の各側の2つのpro−TEV切断部位、およびHisタグ標識を含むユニバーサルDNAカセットのスキーム、(B)融合タンパク質SNAP(グレー、その前に昆虫BiP様ペプチドシグナルがある)、およびヒトIFNα1(太字のアミノ酸)、その後のHisタグ標識のDNA配列およびアミノ酸配列(前記SNAPタンパク質とIFNαタンパク質は、proTEV切断部位およびスペーサー配列GGGSで分離されている)、(C)ペプチドシグナルを含まずにSNAP単独をコードするベクター(pSNAPfベクター)またはその前にデング熱ウイルスペプチドシグナルがあるSNAP単独をコードする(pDVlssprM−SNAP)ベクター、または(A)に定義されるDNA配列を含んでなるIFNαをコードする本発明のベクター(pDeSNAP−4/SNAP−IFNΑ1、配列番号57)のいずれかによりトランスフェクトされたHeLa細胞の上清におけるSNAP−IFNαの発現を検出するための、抗SNAP抗体を用いた免疫ブロットアッセイを開示する。
図8】(A)はBiP様ペプチドシグナル、SNAPコード配列、2つのpro−TEV切断部位、Hisタグ標識、目的遺伝子のクローニングのための4つのユニークなクローニング部位BamHI、EcoRV、XmaI、およびApaI、ならびにスペーサー配列GGGSを含むユニバーサルDNAカセット(DeSNAP univ、配列番号59および60)を開示する。5’末端のユニークな部位NheIと3’末端のユニークな部位NotI/HindIIIは、哺乳動物発現ベクター(例えば、プラスミドpcDNA3またはpCI−neo)におけるサブクローニング工程に必要であり、5’末端のユニークな部位BglIIと3’末端のAgeIは、無脊椎動物DES系におけるサブクローニング工程に必要である。(B)のスキームは、BiP様ペプチドシグナル、MGMTコード配列、2つのpro−TEV切断部位、Hisタグ標識、目的遺伝子のクローニングのための4つのユニークなクローニング部位BamHI、EcoRV、XmaI、およびApaI、ならびにスペーサー配列GGGSを含むユニバーサルDNAカセット(DeMGMT univ、配列番号69および70)を開示する。
図9】目的外来遺伝子をDeMGMT Univに挿入するための手段を開示する。
図10】−80℃、4℃、25℃または37℃で4日間(A)、または−80℃、4℃、25℃または37℃で2ヶ月間(B)インキュベートしたSNAP融合タンパク質CHIK.sE2−SNAP、SNAP−WN.EDIIIおよびSNAP−IFNαIの温度感受性を開示する。
図11】10日のカドミウム誘導後(+)または誘導なし(−)の、S2細胞に導入された本発明のベクターによる、全上清(A)または種々の画分(B)中の融合タンパク質SNAP−SSX2およびSNAP−sFasLの生産を開示する。
図12】(A)BiP様ペプチドシグナル、MGMTコード配列(SNAP様)、SSX2癌抗原の各側の2つのpro−TEV切断部位、およびHisタグ標識を含むユニバーサルDNAカセットのスキーム、(B)BiP様ペプチドシグナル、MGMTコード配列、NERMCSLタンパク質の各側の2つのpro−TEV切断部位、およびHisタグ標識を含むユニバーサルDNAカセットのスキーム、(C)IFNα、SSX2およびNERMCSLの細胞外または細胞内生産を示す、2日間の一時的トランスフェクトHeLa細胞に対する、マウス抗SNAP抗体を用いた免疫ブロットアッセイを開示する。
図13】(A)BiP様ペプチドシグナル、MGMTコード配列(SNAP様)、hSULF−2ΔTMDポリペプチドの各側の2つのpro−TEV切断部位、およびHisタグ標識を含むユニバーサルDNAカセットのスキーム、(B)融合タンパク質SNAP(濃いグレー、その前に昆虫BiP様ペプチドシグナルがある)およびhSULF−2ΔTMD、その後のHisタグ標識のDNA配列およびアミノ酸配列(前記SNAPとhSULF−2ΔTMDタンパク質は、proTEV切断部位およびスペーサー配列GGGSで分離されている)、および(C)2日間pcDNA3/DeSNAPuniv−hSULF−2ΔTMDで一時的にトランスフェクトされたHEK293細胞により分泌されたキメラDeSNAP−hSULF−2ΔTMDの酵素活性を開示する。
図14】(A)BiPペプチドシグナル、MGMTコード配列(SNAP様)、NERMCSLタンパク質の各側の2つのpro−TEV切断部位、およびHisタグ標識を含むDNAカセットのスキーム、および(B)Cd2+で刺激した場合または刺激していない場合の、NERMCSLタンパク質をコードする本発明のベクターによりトランスフェクトされたS2細胞(S2/SNAP−NERMCSL)またはチクングニアウイルスの可溶性タンパク質E2をコードするベクター(CHIK.sE2−SNAP)によりトランスフェクトされたS2細胞のいずれかの上清においてNERMCSLタンパク質の発現を検出するための、抗SNAP抗体を用いた免疫ブロットアッセイを開示する。
【発明の具体的説明】
【0018】
本発明者らは、6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ酵素(MGMT)と目的組換えタンパク質との共発現が、S2細胞などの昆虫細胞ならびにHeLa細胞などの哺乳動物細胞での前記組換えタンパク質の生産を大幅に改善することを見出した。
【0019】
6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ酵素(MGMT、ATアーゼまたはAGTとしても知られ、以下、「MGMT」と称する)は、IUBMB酵素命名法でEC2.1.1.63の番号が付けられている。この酵素は、207アミノ酸残基の6−アルキルグアニン−DNA−アルキルトランスフェラーゼDNA修復酵素であり、細胞におけるその機能は、アルキル化されたDNAを修復することである。より厳密には、MGMTは、S2反応においてメチル基を反応性システイン残基(Cys 145)へ転移することにより、DNAの0−メチル化グアニンに作用する。この修復機構は、タンパク質が不可逆的に不活性化されるので、異常なものである(Pegg A.E. et al, Mutat. Res. 2000; 462, 82-100)。この酵素は現在、分子生物学において、0−ベンジルグアニン誘導体での不可逆的標識反応を介してタンパク質をin vivoにおいてリポーター分子で標識するために使用されている(Juillerat A. et al, Chemistry & Biology, vol.10, 313-317, 2003およびWO2005/085470)。
【0020】
MGMTに由来する種々の酵素がこれまでに記載されている(Lim A. et al, EMBO J. 15: 4050-4060, 1996; Daniels D.S. et al, EMBO J. 19: 1719-1730, 2000; Juillerat A. et al, Chemistry & Biology, vol.10, 313-317, 2003、WO2005/085470、WO2004/031405)。特に、アミノ酸182で末端切断された突然変異Cys62Ala、Lys125Ala、Ala127Thr、Arg128Ala、Gly131Lys、Gly132Thr、Met134Leu、Arg135Ser、Cys150Ser、Asn157Gly、Ser159Gluを含む20kDaの変異型タンパク質が見出されている(WO2005/085470ではいわゆる「AGT26」突然変異体、WO2006/114409では「SNAP26」とも称される)。この特定の突然変異体「SNAP26」は、高い標識活性を有することが示されている。しかしながら、それが結合している組換えタンパク質の発現を増強し得るということはこれまでに示されたり示唆されたりしたことはない。
【0021】
本発明者らは、ここで初めて、宿主細胞、特に、無脊椎動物および脊椎動物宿主細胞においてタンパク質生産を増強するための、MGMT酵素(EC2.1.1.63)、その突然変異体、触媒ドメインまたは部分断片の使用を提案する。この増強効果は、宿主細胞が、少なくともi)前記宿主細胞内で機能的なペプチド分泌シグナル、ii)MGMT酵素、その突然変異体、触媒ドメインまたは部分断片、およびiii)目的タンパク質を含んでなる融合ポリペプチドを発現する場合に見られる。増強効果を生じさせるには、MGMT酵素は、直接的または間接的に(スペーサーおよびその他のアミノ酸を導入してもよい)目的タンパク質と物理的に連結される。特定の理論に縛られるものではないが、MGMT酵素は、タンパク質、例えば、宿主細胞からの分泌に有利とし、合成された融合ポリペプチドを宿主細胞の上清中で安定化させることにより、またはその合成および宿主細胞からの分泌の最中およびその後にそれが代謝されるのを防ぐために、シャペロンとして働き得ると考えられる。
【0022】
さらに、MGMTは、αヘリックスを含んでなる3次元球状構造を有することも見出されており(Wibley J.E.A. et al, 2000)、MGMTの足場の役割と適合している。
【0023】
本明細書において、「宿主」細胞とは、「無脊椎動物」細胞、脊椎動物細胞、植物細胞、酵母細胞、または原核生物細胞などの組換えタンパク質を生産するために使用可能な任意の細胞である。宿主細胞は好ましくは、無脊椎動物細胞および脊椎動物細胞である。
【0024】
無脊椎動物は種々の門を含んでなり、最も知られたものとして、昆虫、クモ類、甲殻類、軟体動物類、環形動物類、つるあし類、放射相称動物、腔腸動物類および滴虫類がある。無脊椎動物は現在、海綿や扁形動物などの単純な生物から節足動物や軟体動物などの複雑な動物まで、30を超える門に分類されている。本発明において、無脊椎動物細胞は好ましくは、ショウジョウバエまたは蚊細胞などの昆虫細胞、より好ましくは、ショウジョウバエS2細胞である。
【0025】
宿主細胞株として有用な脊椎動物生物由来の細胞の例としては、非ヒト胚性幹細胞またはその誘導体、例えば、鳥類EBX細胞;SV40配列により形質転換されたサル腎臓CVI株(COS−7、ATCC CRL1651);ヒト胚性腎臓株(293);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO);マウスセルトリ細胞[TM4];サル腎臓細胞(CVI、ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頚癌細胞(HeLa、ATCC CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファローラット肝臓細胞(BRL3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB8065);マウス乳癌細胞(MMT060562、ATCC CCL51);ラット肝細胞腫細胞[HTC、M1.5];YB2/O(ATCC No CRL1662);NIH3T3;HEKおよびTRI細胞が挙げられる。本発明において、脊椎動物細胞は好ましくは、EBX、CHO、YB2/O、COS、HEK、NIH3T3細胞またはそれらの誘導体である。
【0026】
本発明において使用可能な植物細胞は、タバコ栽培品種Bright Yellow2(BY2)およびニコチアナ・タバカム(Nicotiana Tabaccum)1(NT−1)である。
【0027】
本発明において使用可能な酵母細胞は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポムベ(Schizosaccharomyces pombe)およびハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ならびにピキア・パストリス(Pichia pastoris)およびピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)などのメチル資化酵母(methylotropic yeast)である。
【0028】
本発明において使用可能な原核生物細胞は、一般に、大腸菌または枯草菌(Bacillus Subtilis)である。
【0029】
よって、本発明は、少なくともa)好ましくは無脊椎動物細胞または脊椎動物細胞で機能的なペプチド分泌シグナル、およびb)6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ酵素、その突然変異体、部分断片または触媒ドメインをコードするヌクレオチド発現ベクターを開示する。
【0030】
本明細書において用語「ベクター」は、外来遺伝子のDNA配列またはRNA配列を、それが形質転換されて、導入された配列の発現を促進するように宿主細胞に導入することができる担体を意味する。ベクターとしては、例えば、プラスミド、ファージ、およびウイルスが含まれてよく、下記に詳しく述べる。実際に、目的タンパク質の発現が望まれる宿主細胞に導入可能な組換え核酸構築を作製するために、いずれのタイプのプラスミド、コスミド、YACまたはウイルスベクターでも使用可能である。あるいは、特定のタイプの宿主細胞で目的タンパク質の発現が望まれる場合には、所望の細胞種または組織種に選択的に感染するウイルスベクターを使用することができる。また、本発明において重要なのは、遺伝子療法に使用するための(すなわち、核酸分子を宿主生物に送達することができる)ベクターである。
【0031】
ウイルスベクターは、例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイル、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、および望ましい細胞向性を備えた他の組換えウイルスなどである。ウイルスベクターを構築および使用するための方法は当技術分野で公知である(Miller and Rosman, BioTechniques, 7:980-990, 1992参照)。
【0032】
本発明において実際に好ましいウイルスベクターは、脊椎動物および無脊椎動物細胞における使用に十分適したものである。
【0033】
無脊椎動物細胞の場合、好ましいベクターは、節足動物ベクターであるアルボウイルスであり、西ナイルウイルスが特に好ましい。無脊椎動物細胞で効率的に発現されることが知られている他のベクターとしては、バキュロウイルスがある。
【0034】
脊椎動物細胞の場合、レンチウイルス、AAV、バキュロウイルスおよびアデノウイルスベクターが好ましい。哺乳動物宿主細胞における発現に適したベクターはまた、非ウイルス(例えば、プラスミドDNA)起源のものであってもよい。好適なプラスミドベクターとしては、限定されるものではないが、pREP4、pCEP4(Invitrogene)、pCI(Promega)、pCDM8およびpMT2PC、pVAXおよびpgWizが挙げられる。
【0035】
原核生物細胞の場合、プラスミド、バクテリオファージおよびコスミドベクターが好ましい。原核生物系で用いるのに好適なベクターとしては、限定されるものではないが、pBR322(Gibco BRL)、pUC(Gibco BRL)、pBluescript(Stratagene)、p Poly、pTrc;pET 11d;pIN;およびpGEXベクターが挙げられる。
【0036】
植物細胞の場合、Tiプラスミドなどのプラスミド発現ベクター、ならびにカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)およびタバコモザイクウイルスTMVなどのウイルス発現ベクターが好ましい。
【0037】
酵母細胞における組換えタンパク質の発現は、組込み型ベクター(YIp)、エピソームプラスミド(YEp)、および動原体プラスミド(YCp)という3タイプのベクターを用いて行うことができ、酵母(例えば、S.セレビシエ)での発現に好適なベクターとしては、限定されるものではないが、pYepSecl、pMFa、pJRY88、pYES2(Invitrogen Corporation、San Diego、Calif.)およびpTEF−MF(Dualsystems Biotech Product code:P03303)が挙げられる。
【0038】
遺伝子療法に使用可能なベクターは当技術分野で周知である。それらは例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、泡沫状ウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)である。ウイルスベクターは複製能を持つこともできるし、または複製欠陥型または複製障害型となるように遺伝的に不能にすることができる。好ましい遺伝子療法ベクターは、WO1999/055892、米国特許第6,682,507号およびWO2001/27300に記載されているようなDNA Flapベクターである。
【0039】
RNA、ポリペプチド、タンパク質または酵素などの発現産物を「コードする」配列は、発現された際にそのRNA、ポリペプチド、タンパク質または酵素の生産をもたらすヌクレオチド配列であり;すなわち、そのヌクレオチド配列はそのRNAを「コードする」か、またはそのポリペプチド、タンパク質または酵素のアミノ酸配列をコードする。
【0040】
本発明において、酵素の「触媒ドメイン」とは、酵素の活性部位、または言い換えれば、その基質の触媒反応(ここでは、S2反応におけるメチル基の反応性システイン残基への転移)を生じる酵素分子の一部を意味する。従って、用語「その触媒ドメイン」とは、好ましくは天然MGMT酵素の触媒活性の少なくとも80%を有する、MGMTポリペプチドの任意の断片または相同配列を表す。これらの断片(「部分断片」とも呼ばれる)は、20〜180の間、好ましくは30〜100の間のアミノ酸を含んでなり得る。前記触媒ドメインの相同配列は、前記触媒活性の部分的または全面的喪失をもたらす1以上の突然変異を持ち得る。
【0041】
本発明において、MGMT酵素は、配列番号4の配列のヒトMGMT(NP_002403.2で示される)、NP_032624.1(配列番号45)で示されるマウスMGMT、NP_036993.1(配列番号46)で示されるラットMGMTまたはそれらの相同配列であり得る。
【0042】
用語「相同」とは、配列類似性を有する配列を意味する。用語「配列類似性」は、その総ての文法形において、核酸配列またはアミノ酸配列間の同一性または一致の程度を意味する。本発明において、2つのアミノ酸配列は、そのアミノ酸の少なくとも約80%、あるいは少なくとも約81%、あるいは少なくとも約82%、あるいは少なくとも約83%、あるいは少なくとも約84%、あるいは少なくとも約85%、あるいは少なくとも約86%、あるいは少なくとも約87%、あるいは少なくとも約88%)、あるいは少なくとも約89%、あるいは少なくとも約90%、あるいは少なくとも約91%、あるいは少なくとも約92%、あるいは少なくとも約93%、あるいは少なくとも約94%、あるいは少なくとも約95%、あるいは少なくとも約96%、あるいは少なくとも約97%、あるいは少なくとも約98%、あるいは少なくとも約99%が類似している場合に「相同」である。好ましくは、類似のまたは相同なポリペプチド配列は、Needleman and Wunschのアルゴリズムを使用することにより同定される。
【0043】
好ましくは、6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ酵素との相同配列は、配列番号4と少なくとも64%のアミノ酸配列同一性、好ましくは、少なくとも約65%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約66%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約67%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約68%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約69%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約71%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約72%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約73%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約74%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約76%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約77%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約78%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約79%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも80%のアミノ酸同一性、あるいは少なくとも約81%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約82%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約83%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約84%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約86%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約87%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約88%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約89%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約91%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約92%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約93%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約94%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約96%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約97%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性およびあるいは少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する。好ましい態様では、配列番号4の相同な配列は、配列番号4と少なくとも64%、好ましくは70%、より好ましくは80%同一である。
【0044】
より好ましい相同MGMT配列は、その位置が配列番号4(SNAP26の開始メチオニン残基は配列番号4の32番のメチオニン残基に相当する)を参照して容易に転移できる、WO2005/085470に記載の突然変異を含む(従って、配列番号4において対応するものを得るためには、WO2005/085470に開示されている位置に31個のアミノ酸を付加する)。
【0045】
好ましくは、本発明において有用なMGMT相同配列は、1〜30個の間、好ましくは6〜25個の間、特には、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されている、かつ/またはC末端の1〜40個、好ましくは1〜20個、特には10〜20個のアミノ酸、より好ましくは15個のアミノ酸が欠失されている配列番号4の野生型MGMT配列に相当する。
【0046】
好ましい態様では、MGMT相同配列は、配列番号4に比べて以下の突然変異:
(A)Argで置換されたLys31、もしくはSerで置換されたMet32、もしくはAlaで置換されたCys93、もしくはAlaで置換されたLys156、もしくはThrで置換されたAla158、もしくはAlaで置換されたArg159、もしくはLysで置換されたGly162、もしくはThrで置換されたGly163、もしくはLeuで置換されたMet165、もしくはSerで置換されたArg166、もしくはSerで置換されたCys181、もしくはGlyで置換されたAsn188、もしくはGluで置換されたSer190、もしくはProで置換されたGly214、もしくはAlaで置換されたSer215、もしくはGlyで置換されたSer216、もしくはIleで置換されたGly217、もしくはGlyで置換されたLeu218、もしくはProで置換されたGly220、もしくはGlyで置換されたAla221、もしくはSerで置換されたTrp222、または
(B)Arg−Serで置換されたLys31−Met32、もしくはThr−Alaで置換されたAla158−Arg159、もしくはLys−Thrで置換されたGly162−Gly163、もしくはLeu−Serで置換されたMet165−Arg166、もしくはLys−Thr/Leu−Serで置換されたGly162−Gly163/Met165−Arg166、もしくはGly/Gluで置換されたAsn188/Ser190、もしくはPro−Ala−Gly−Ile−Glyで置換されたGly214−Ser215−Ser216−Gly217−Leu218、もしくはPro−Gly−Serで置換されたGly220−Ala221−Trp222、好ましくは(A)に挙げられた他の任意のアミノ酸置換との組合せ、または
(C)Leu223の後での末端切断(アミノ酸224〜238が欠失)、好ましくは、(A)または(B)に挙げられた他の任意のアミノ酸置換との組合せ
を含む。
【0047】
好ましいMGMT相同配列は、Leu223の後で末端切断されたものである。
【0048】
好ましいMGMT相同配列は、(B)の改変のうち2つが存在し、場合によりLeu223の後で末端切断されたものである。
【0049】
好ましいMGMT相同配列は、(B)の改変のうち3つが存在し、場合によりLeu223の後で末端切断されたものである。
【0050】
好ましいMGMT相同配列は、(B)の改変のうち4つが存在し、場合によりLeu223の後で末端切断されたものである。
【0051】
好ましいMGMT相同配列は、(B)の改変のうち5つが存在し、場合によりLeu223の後で末端切断されたものである。
【0052】
好ましいMGMT相同配列は、(B)の改変のうち6つが存在し、場合によりLeu223の後で末端切断されたものである。
【0053】
他の好ましいMGMT相同配列は、(A)に開示されている改変の中から選択される2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の突然変異の組合せと、場合によりLeu223の後での末端切断を含むものである。
【0054】
特に好ましいのは、突然変異Lys31Arg、Met32Ser、Cys93Ala、Lys156Ala、Ala158Thr、Arg159Ala、Gly162Lys、Gly163Thr、Met165Leu、Arg166Ser、Cys181Ser、Asn188Gly、Ser190Glu、Gly214Pro、Ser215Ala、Ser216Gly、Gly217Ile、Leu218Gly、Gly220Pro、Ala221Gly、Trp222SerおよびLeu223の後での末端切断を含む相同配列(すなわち、配列番号2のSNAP配列)である。
【0055】
いっそうより好ましい態様では、MGMT酵素は、配列番号2のSNAP変異型タンパク質またはその同族体である。配列番号2のSNAP突然変異体は、ヒト6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ(NP_002403.2、配列番号4)のアミノ酸配列と77%の相同性を有し、マウス6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ(NP_032624.1、配列番号45)のアミノ酸配列と70%の相同性を有する。
【0056】
好ましくは、SNAPタンパク質に対する前記相同配列は、配列番号2の配列のSNAPタンパク質に対して少なくとも、80%、好ましくは81%、より好ましくは82%、より好ましくは83%、より好ましくは84%、より好ましくは85%、好ましくは86%、より好ましくは87%、より好ましくは88%、より好ましくは89%、より好ましくは90%、より好ましくは91%、より好ましくは92%、より好ましくは93%、より好ましくは94%、より好ましくは95%)、より好ましくは96%、いっそうより好ましくは97%を超える同一性を示す。
【0057】
好ましくは、本発明のヌクレオチド発現ベクターは、目的タンパク質をコードする異種DNA配列のインフレーム挿入を可能とするクローニング部位をさらに含んでなる。
【0058】
本発明において意味するように、用語「ペプチド分泌シグナル(peptidic secretion signal)」は、タンパク質の輸送を指示する短い(3〜60アミノ酸長の)ペプチド鎖を表す。
【0059】
本発明に適当な分泌シグナルの例としては、限定されるものではないが、接合因子(MF)α(米国特許第5,879,926号);インベルターゼ(WO84/01153);PHO5(デンマーク特許第3614/83号);YAP3(酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3;WO95/02059);およびBAR1(WO87/02670)のシグナルペプチド配列が挙げられる。
【0060】
本発明において、このペプチド分泌シグナルは、好ましくは、無脊椎動物細胞もしくは脊椎動物細胞のいずれか、または両方で機能的である。
【0061】
昆虫細胞において機能的なペプチド分泌シグナルの例としては、昆虫ssBiP(例えば、配列番号11のDNA配列を有する配列番号48)、配列番号51のBiP様ペプチドシグナル(例えば、配列番号50のDNA配列を有する)、およびアルボウイルスに存在する任意のペプチドシグナル、例えば、西ナイルウイルスのエンベロープEタンパク質(配列番号15)がある。
【0062】
興味深いことに、上述のBiP様ペプチドシグナルは、無脊椎動物細胞と脊椎動物細胞の両方において機能的である。このBiP様シグナルは、最後のグリシンアミノ酸が、デング熱ウイルスのEタンパク質の切断部位に相当するアミノ酸配列Pro Thr Ala Leu Ala(配列番号61)で置換された、配列番号48のBiPペプチドシグナルに相当する。よって、このBiP様シグナルは、有利にも、そのタンパク質が翻訳されて、宿主細胞の上清中に分泌されたところで切断される。
【0063】
酵母宿主細胞、例えば、S.セレビシエでの発現にも様々な分泌シグナルが利用可能である。これらには、プレプロα因子、HSp150、PHO1、SUC2、KILM1(killer toxin type 1)、およびGGP1が含まれる。
【0064】
クローニング部位は、目的タンパク質をコードする遺伝子の発現系へのクローニングを助ける配列である。これには制限部位、または制限認識部位、すなわち、制限酵素により認識される特異的ヌクレオチド配を含むDNA分子上の位置が含まれる(例えば、図面を参照)。これらは一般に回文配列であり(制限酵素は通常、ホモ二量体として結合するため)、特定の制限酵素は、その認識部位内または近傍のいずれかの場所で、配列を2つのヌクレオチドの間で切断することができる。クローニング部位は当業者に周知である。
【0065】
より好ましくは、ヌクレオチド発現ベクターは、前記クローニング部位に挿入された目的の異種タンパク質または異種ポリペプチドをコードする異種DNA配列をさらに含んでなる。
【0066】
用語「異種」とは、天然に存在しない要素の組合せを意味する。例えば、本発明は、「目的のタンパク質/ポリペプチド」をコードする「異種DNA配列」を含み、これらのDNA配列は、タンパク質発現に使用される宿主細胞には天然に存在しないか、その宿主細胞の染色体部位内にはない。
【0067】
目的の異種タンパク質またはポリペプチドをコードする異種DNA配列が本発明のヌクレオチドベクター内に挿入される場合、好ましくは、それが、前記ペプチドシグナル、前記MGMT酵素、その突然変異体または同族体と、前記目的異種タンパク質/ポリペプチドとを含んでなる融合ポリペプチドをコードする。
【0068】
本発明の好ましい態様では、前記MGMT酵素をコードするDNA配列は、前記目的異種タンパク質をコードするDNA配列の5’または3’、好ましくは、5’に位置する。従って、MGMT酵素は目的の異種タンパク質/ポリペプチドと直接的または間接的に連結され、好ましくは、目的の異種タンパク質/ポリペプチドのN末端に位置する。
【0069】
IFNαなどの目的の異種タンパク質/ポリペプチドの活性ドメインがそのC末端部分に位置する場合には、その前記MGMT酵素をコードするDNA配列は、前記目的異種タンパク質/ポリペプチドをコードするDNA配列の5’に位置することが特に好ましい。同様に、目的の異種タンパク質/ポリペプチドの活性ドメインがそのN末端部分に位置する場合には、前記MGMT酵素をコードするDNA配列は、前記目的の異種タンパク質/ポリペプチドをコードするDNA配列の3’に位置することが特に好ましいと言える。
【0070】
より厳密には、第1の側面において、本発明は、宿主細胞、好ましくは、無脊椎動物および/または脊椎動物宿主細胞、より好ましくは、昆虫細胞において、組換えタンパク質を発現するためのベクターであって、単一のオープンリーディングフレーム内に、5’から3’方向に、
a)前記宿主細胞において機能的であるペプチド分泌シグナル、
b)6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ酵素(MGMT、EC2.1.1.63)、その突然変異体または触媒ドメイン、および
c)組換えタンパク質
をコードするヌクレオチド配列を含んでなるベクターに関する。
【0071】
本発明において、用語「組換えタンパク質」または「目的タンパク質」は、タンパク質生産細胞に対して外来である遺伝子産物またはポリペプチドを表し、好ましくは、診断用および治療用タンパク質またはポリペプチドからなる群から選択される。
【0072】
より好ましくは、前記診断用および治療用タンパク質またはポリペプチドは、
・細菌またはウイルス免疫原性タンパク質、より好ましくは、(感染性、病原性)ウイルスタンパク質、例えば、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、ウスツウイルス、ロシオウイルス、マレー脳炎ウイルス、ベッセルブロンウイルス、ジカウイルスもしくは西ナイルウイルス由来のEDIIIタンパク質、またはリフトバレー熱ウイルスもしくはトスカナウイルス由来の核タンパク質N、またはチクングニアウイルス由来のE2エンベロープタンパク質の可溶型、または西ナイルウイルスのEエンベロープタンパク質の可溶型、
・血液因子、抗凝固因子、増殖因子、ホルモン、ワクチン、治療用酵素、モノクローナル抗体およびサイトカイン(IFNα、グランザイムMおよびFasLなど)、
・抗原、例えば、癌抗原(癌精巣抗原SSX2など)、またはERC/メソテリンのN末端領域(NERCMSL)、
・抗腫瘍タンパク質、例えば、FasL、またはヘパラン硫酸6−O−エンドスルファターゼ(hSULF)、
・微生物、ウイルスおよび/または寄生虫ポリペプチド、
・他の任意の有用タンパク質(例えば、コンタクチン)
からなる群から選択される。
【0073】
タンパク質FasLは、抗腫瘍薬として使用可能なアポトーシス誘導タンパク質である。これは例えば配列番号88によりコードされている。
【0074】
hSulfタンパク質(またはhSULF)は、ヘパリン硫酸の構造を調節し、in vivoにおいて悪性細胞の増殖および進行に劇的な影響を持つヘパラン硫酸6−O−エンドスルファターゼである(Dai et al, 2005)。本発明において、これは、好ましくは、hSulf2タンパク質、より好ましくは、その溶解度を高めるためにトランスメンブランドメイン(TMD)が欠失されたhSulf−2ΔAMD(この突然変異体は配列番号95のアミノ酸配列を有し、例えば、配列番号94によりコードされている)である。
【0075】
本発明のベクターはまた、目的のペプチドおよび/またはポリペプチドを発現および精製するために使用することができる。本発明において用語「ペプチド」および「ポリペプチド」は、ペプチド結合により連結されたアミノ酸モノマー(「残基」とも呼ばれる)の短いポリマーを表す同義語であるものとする。これらのポリマーは、好ましくは、100残基未満、より好ましくは、50残基未満を含有する。
【0076】
特に、本発明のベクターは、細菌、ウイルスまたは寄生虫ポリペプチドなどの診断用微生物ポリペプチドを発現および精製するために使用可能である。このようなポリペプチドの例としては、細菌、ウイルスまたは寄生虫により分泌または発現される抗原ペプチド、ムチンおよび/または毒素がある。好ましくは、前記抗原ペプチドは、インフルエンザウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルス、HIVウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、ウスツウイルス、西ナイルウイルス、リフトバレー熱ウイルス、トスカナウイルス、チクングニアウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(Respiratory Synticial virus)、ロシオウイルス、マレー脳炎ウイルス、ベッセルブロンウイルス、ジカウイルス、リンパ性脈絡髄膜炎ウイルス(Lymphocytic Choreomeningitis virus)、ヒトパルボウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、または任意の同定済みウイルスにより発現される。好ましくは、前記抗原ペプチドは、寄生原虫(赤痢アメーバー(Entamoeba histolytica)もしくはランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)など)、蠕虫(線虫、条虫もしくは吸虫など)、または節足動物(甲殻類、昆虫、クモ類など)により発現される。好ましくは、前記抗原ペプチドは、例えば、連鎖球菌属(Streptococcus)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、および大腸菌属の感染性細菌により発現される。感染性毒素は当技術分野で周知である。例えば、ボツリヌス菌神経毒、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)ε毒素、リシン、サキシトキシン、志賀毒素、テトロドトキシン、ブドウ球菌内毒素などが挙げられる。ムチンも当技術分野で公知である。MUC5AC、MUC5BおよびMUC2がその例である。これらの例に限定されるものではなく、いずれのペプチド/ポリペプチドでも本発明の方法により発現させることができる。
【0077】
コンタクチンは、もっぱら神経系で発現される免疫グロブリンスーパーファミリーに属す分子のサブグループである(Shimoda and Watanabe, 2009の総説を参照)。コンタクチンは精神障害、特に自閉症に関連づけられている。本発明の系により生産すべき好ましいコンタクチンは、コンタクチン2および4である。コンタクチン4(CNTN4)は、例えば、配列番号91(全長タンパク質NP_783200.1のアミノ酸19〜990に相当)によりコードされている。
【0078】
多くの癌抗原が、癌を治療するための有効なワクチンであることが知られている。このようなポリペプチド(Cheever et al, 2009のリストを参照)を大量に生産することは、有効な癌ワクチンを得るために極めて重要であると思われる。興味深いことに、本発明のベクターは、免疫療法に使用可能な高レベルの組換え癌抗原を得ること、または癌の診断法において抗体を生産することを可能とする。
【0079】
SSX2およびNERCMSLは、癌抗原の2つの例である。SSX2癌抗原は、配列番号76(Genebank:NM_175698)を有するDNAによりコードされている。ERC/メソテリン(NERCMSL)のN末端領域は、配列番号83によりコードされている。この抗原は、悪性中皮(malign mesothelium)に罹患している患者において検出抗原として慣用されている。
【0080】
いずれのタンパク質でも本発明の方法により生産することができる。
【0081】
さらに、好ましいタンパク質として、インスリン、IFN、FasL、メソテリン、hSULFまたはコンタクチンなどの治療用タンパク質がある。
【0082】
もっと一般には、好ましいタンパク質は、これまで大量に生産することが難しかったものである。このようなタンパク質としては、例えば、FasL、グランザイムM、hSULF、メソテリンおよびコンタクチンがある。
【0083】
前記ペプチドシグナル、前記MGMT酵素、突然変異体または触媒ドメイン、および前記目的組換えタンパク質を含んでなる融合ポリペプチドをコードするDNA配列は、そのペプチドシグナルと同じ宿主細胞で機能的である誘導プロモーターと機能的に連結することができる。
【0084】
より好ましくは、本発明のベクターにおいて、前記オープンリーディングフレームは、そのペプチドシグナルと同じ宿主細胞で機能的である誘導プロモーターと機能的に連結される。
【0085】
あるコード配列は、RNAポリメラーゼがそのコード配列をRNAへと転写し、次に、トランスRNAスプライシングを受け(それがイントロンを含む場合)、その配列がタンパク質をコードしていればタンパク質へと翻訳される場合に、細胞内で発現制御配列(すなわち、転写制御配列および翻訳制御配列)と「機能的に連結されている」という。
【0086】
「プロモーター」とは、下流(すなわち、二本鎖DNAのセンス鎖上の3’側)に機能的に連結されたDNAの転写がそれから開始され得る、ヌクレオチド配列である。プロモーター配列内には、転写開始部位(好都合には、例えばヌクレアーゼS1を用いたマッピングにより見出される)、ならびにRNAポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見られる。
【0087】
本発明において、遺伝子発現を制御するために使用可能なプロモーターは、例えば、無脊椎動物細胞または脊椎動物細胞において機能的なものである。例えば、無脊椎動物細胞では、メタロチオネイン遺伝子の調節配列が使用可能である(Brinster et al, Nature, 296:39-42, 1982)。
【0088】
好ましくは、本発明のベクター中に存在する誘導プロモーターは、昆虫細胞、より好ましくはショウジョウバエ細胞でプロモーター活性を有する。それは例えば、ショウジョウバエメタロチオネインプロモーター(Lastowski-Perry et al, J.Biol. Chem. 260: 1527 (1985))であり、このプロモーターは金属、例えば、CuSOの存在下で高レベルの遺伝子転写を指示する。
【0089】
あるいは、構成プロモーターであって金属の添加を必要としないショウジョウバエアクチン5C遺伝子プロモーターも使用可能である(B. J. Bond et al, Mol. Cell. Biol. 6:2080 (1986))。他の既知のショウジョウバエプロモーターの例としては、例えば、誘導型熱ショックプロモーター(Hsp70)およびCOPIA LTRプロモーターが挙げられる。SV40初期プロモーターは、ショウジョウバエメタロチオネインよりも低いレベルの発現を与える。
【0090】
好ましくは、本発明のベクター中に存在する誘導プロモーターは、キイロショウジョウバエ細胞、好ましくはショウジョウバエS2細胞においてプロモーター活性を有する。これは例えば、Lastowski-Perry et al, J.Biol. Chem. 260: 1527 (1985)に十分に記載されているメタロチオネインプロモーターである。
【0091】
哺乳動物細胞における構成的発現に好適なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーター、および単純ヘルペスウイルス(HSV)−1のチミジンキナーゼ(TK)プロモーターが挙げられる。外的に供給される化合物により調節される誘導型真核生物プロモーターとしては、限定されるものではないが、亜鉛誘導メタロチオネイン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(WO98/10088)、エクジソン昆虫プロモーター、テトラサイクリン抑制プロモーター、テトラサイクリン誘導プロモーター、RU486誘導プロモーターおよびラパマイシン誘導プロモーターが挙げられる。
【0092】
好ましくは、本発明のベクター中に存在するプロモーターは、哺乳動物細胞、好ましくはHeLa細胞においてプロモーター活性を有する。それは例えば、SV40プロモーターである。
【0093】
酵母宿主細胞におけるタンパク質発現のためには、ある範囲の酵母プロモーターが利用可能である。ADH2、SUC2などいくつかのものは誘導型であり、GAPDHなどの他のものは発現が構成的である。酵母での発現に好適な他のプロモーターとしては、TEF、PGK、MFα、CYC−1、GAL−1、GAL4、GAL10、PHO5、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPまたはGAPDH)、およびアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)プロモーターが挙げられる。
【0094】
植物細胞における使用では、最もよく使用されているプロモーターはカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターまたはその増強型であるが、ハイブリッド(ocs)3masプロモーター、またはトウモロコシ(Maize)およびシロイヌナズナ(A.Thaliana)由来のユビキチンプロモーターなどのいくつかの別のプロモーターも使用可能である。これらの構成プロモーターとは対照的に、イネα−アミラーゼRAmy3Dプロモーターは糖欠乏により誘導される(Hellwig S et al, 2004)。
【0095】
大腸菌宿主細胞における発現に好適なプロモーターとしては、限定されるものではないが、バクテリオファージλpLプロモーター、lacプロモーター、TRPプロモーターおよびIPTG誘導pTACプロモーターが挙げられる。
【0096】
前記ペプチド分泌シグナルと誘導プロモーターは同じ宿主細胞において機能的であることが好ましい。
【0097】
より好ましくは、前記ペプチド分泌シグナルと誘導プロモーターは、ショウジョウバエS2細胞および脊椎動物細胞の両方において機能的である。
【0098】
プロモーターに適用される場合の用語「誘導」は、当業者に十分に理解されている。本質的に、誘導プロモーターの制御下での発現は、適用された刺激に応答して「スイッチが入る」か、または増大する。この刺激の性質はプロモーターによって異なる。いくつかの誘導プロモーターは、適当な刺激が存在しなければほとんど発現しないかまたは検出可能なレベルの発現を生じない(または全く発現しない)。他の誘導プロモーターは、刺激が存在しなければ検出可能な構成的発現を生じる。どんな発現レベルも刺激の不在下にある場合、いずれの誘導プロモーターからの発現も適正な刺激の存在下で増大する。
【0099】
ひと度、適当なベクターが構築され、選択された宿主細胞、好ましくは、ショウジョウバエ細胞株にトランスフェクトされれば、誘導プロモーターに対して適当な誘導因子を添加することで異種タンパク質の発現が誘導される。例えば、カドミウムまたは銅は、Hsp70プロモーターの誘導因子である。アクチン5Cプロモーターなどの構成プロモーターでは、発現に誘導因子の必要はない。
【0100】
本発明のヒトMGMT酵素は好ましくは、ヒトMGMT遺伝子配列NM_002412.3、遺伝子ID4255(配列番号:3)または配列番号68の最適化配列(わずか50%のG/Cを含んでなる)によりコードされている。しかしながらやはり、そのいずれの相同配列も、それが機能的MGMT酵素、その突然変異体または触媒ドメイン、好ましくは、配列番号4または配列番号2をコードする限り、本発明において使用可能である。
【0101】
前記MGMT突然変異体をコードする好ましいDNA配列は、配列番号1のSNAP DNA配列、またはG/C含量が51%であること以外は配列番号2をコードする配列番号47もしくは配列番号67のDNA配列である。
【0102】
本発明の別の態様では、本発明のヌクレオチドベクターは、目的タンパク質の発現を、それがそれ由来の断片である全長酵素で得られるレベルの少なくとも0.5倍高める生物活性を保持する、MGMT酵素の断片(例えば、配列番号4の断片)、またはその同族体の断片(例えば、配列番号2の配列のMGMT突然変異体の断片)を少なくともコードする。一例として、配列番号4の全長酵素を用いた場合のその生産レベルが100mg/Lであれば、生産レベルが少なくとも50mg/Lである(配列番号4の全長酵素の場合と同じ実験条件で)配列番号4のいずれの断片も本発明の範囲内に包含される。
【0103】
本発明の別の態様では、ヌクレオチド発現ベクターは少なくとも1つのペプチド切断部位をコードし、これは好ましくはMGMT酵素またはその触媒ドメインと目的組換えタンパク質との間に位置する。
【0104】
ペプチド切断部位(「ペプチド切断部位」とも呼ばれる)は、少なくとも1つのプロテアーゼ酵素(中でも例えば、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ)により認識されるアミノ酸配列である。ペプチド切断部位の一例は、例えば配列番号12のDNA配列によりコードされている、配列番号62のエンテロキナーゼ切断部位(AspAspAspAspLys/Asp)である。このエンテロキナーゼは、配列のC末端での切断により不活性トリプシノーゲンを活性トリプシンに変換することが知られているセリンプロテアーゼ酵素(EC3.4.21.9)である:Val−(Asp)−Lys−Ile−Val〜(トリプシノーゲン)→Val−(Asp)−Lys(ヘキサペプチド)+Ile−Val〜(トリプシン)。エンテロキナーゼは、Lysの前に4つのAspがあり、後にプロリン残基がある場合は、リシンの後で切断する。
【0105】
もう1つの有用なペプチド切断部位は、配列番号53または配列番号65のアミノ酸配列(Glu Asn Leu Tyr Phe Gln GlyまたはSer)を有し、例えば、配列番号52または配列番号66のDNA配列によりコードされている、いわゆる「TEVプロテアーゼ」の切断部位である。TEVプロテアーゼは、タバコエッチ病ウイルスによりコードされているタンパク質である核封入体の27kDaの触媒ドメインに対する一般名である。これは市販されている(Invitrogen)。
【0106】
また、デング熱ウイルス血清型1(配列番号61)由来の膜前駆体prMの切断部位も、本発明のベクターにおいて使用可能である。
【0107】
別の態様では、本発明のヌクレオチド発現ベクターは、さらに標識をコードし、この標識は、好ましくは、本発明の融合ポリペプチド(ペプチドシグナル、MGMTタンパク質またはその同族体と組換えタンパク質とを含んでなる)における組換えタンパク質のC末端に位置する。
【0108】
本発明において、「標識」とは、宿主細胞の粗溶解液からのポリペプチドの回収を助けることに特化されたものであり、好ましくは、蛍光タンパク質、ポリヒスチジン(ポリ−his)またはポリ−ヒスチジン−グリシン(ポリ−his−gly)タグ;flu HAタグ;c−mycタグ、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ、Flag−ペプチド、α−チューブリンエピトープ、またはT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグを含んでなる群から選択される。しかしながら、他のいずれの標識も使用可能である。本発明の好ましい態様では、ベクターは、配列番号14を有するヘキサヒスチジンタグをコードするDNAを含んでなる。
【0109】
別の態様では、本発明のヌクレオチド発現ベクターは、さらにスペーサー配列をコードし、このスペーサー配列は、好ましくは、MGMT酵素(またはその触媒ドメイン)と目的組換えタンパク質との間、および/または目的組換えタンパク質と標識との間に位置する。
【0110】
本発明において、スペーサー配列は、連結されている2つのポリペプチドを空間的に分離することに特化された少なくとも3つのアミノ酸を含んでなるアミノ酸配列である(従って、これらのポリペプチドは間接的に連結される)。このようなスペーサーは、例えば、アミノ酸配列グリシン−グリシン−グリシン−セリン(GGGS、配列番号63)であってよく、それをコードするDNAスペーサー配列は配列番号13であり得る。本発明において、このDNA配列は以下「DNAスペーサー配列」と称し、MGMTまたはその触媒ドメインをコードするDNAと組換えDNA配列との間の、好ましくは、ペプチド切断部位をコードするDNA配列の上流に配置される。
【0111】
本発明により開示されるヌクレオチド発現ベクターは、配列番号9の配列、配列番号10の配列または配列番号64(クローニング部位に目的の組換え遺伝子が挿入されていないエンプティーベクターに相当)を有し得る。特定の態様では、本発明のベクターは、
・ペプチドBiP昆虫シグナル(好ましくは、S2ショウジョウバエ細胞において機能的である)または上記で定義されたBiP様シグナル、
・配列番号4のMGMTタンパク質または配列番号2のSNAPタンパク質、
・目的組換えタンパク質、
・エンテロキナーゼペプチド切断部位または上記で定義されたproTEV切断部位、
・ポリヒスチジン標識、および
・アミノ酸配列グリシン−グリシン−グリシン−セリン(GGGS、配列番号63)を有する2つのスペーサー配列
をコードし得る。
【0112】
より好ましい態様では、本発明の発現ベクターは、
・配列番号48のペプチドBiP昆虫シグナル、
・配列番号4のMGMTタンパク質または配列番号2のSNAPタンパク質、
・目的組換えタンパク質、
・配列番号62のエンテロキナーゼペプチド切断部位、
・ポリヒスチジン標識、および
・アミノ酸配列グリシン−グリシン−グリシン−セリン(GGGS)を有する2つのスペーサー配列
をコードする。
【0113】
別の好ましい態様では、本発明の発現ベクターは、
・配列番号51のBiP様ペプチドシグナル、
・配列番号4のMGMTタンパク質または配列番号2のSNAPタンパク質、
・目的組換えタンパク質、
・配列番号53のproTEVペプチド切断部位、
・ポリヒスチジン標識、および
・アミノ酸配列グリシン−グリシン−グリシン−セリン(GGGS)を有する2つのスペーサー配列
をコードする。
【0114】
このようなベクターは例えば、配列番号19(目的タンパク質がRVFウイルスの核タンパク質Nである場合)、配列番号20(目的タンパク質が西ナイルウイルスの核タンパク質Nである場合)、配列番号21もしくは57もしくは72もしくは74(目的タンパク質がIFNαである場合)、配列番号77、79もしくは81(目的タンパク質が癌抗原SSX2である場合)、配列番号55(目的タンパク質がグランザイムMである場合)、配列番号89(目的タンパク質がFasLである場合)、配列番号84もしくは86(目的タンパク質が癌抗原NERCMSLである場合)、または配列番号92(目的タンパク質がコンタクチンCNTN4である場合)の配列を含んでなる。
【0115】
第2の側面において、本発明はまた、宿主細胞において組換えタンパク質を発現するベクターであって、単一のオープンリーディングフレーム内に、5’から3’方向に、
a)ペプチド分泌シグナル、
b)配列番号4のMGMTタンパク質または配列番号2のSNAPタンパク質、
c)少なくとも1つのペプチド切断部位、
d)ポリヒスチジン標識、および
e)少なくとも1つのスペーサー配列
をコードするヌクレオチド配列を含んでなるベクターを開示する。
【0116】
好ましい態様では、前記ペプチド分泌シグナルは、配列番号50のBiP様ペプチドシグナルである。
【0117】
どちらかといえば好ましい態様では、前記ベクターは、配列番号52の2つのproTEVペプチド切断部位および/または配列番号63のアミノ酸配列を有する2つのスペーサー配列を含んでなる。
【0118】
特に好ましい態様では、前記ベクターは、配列番号59または配列番号69の配列を含んでなり、前記配列は本出願ではそれぞれ、ユニバーサルDeSNAPカセット「DeSNAP Univ」およびDeMGMTカセット「DeMGMT Univ」と呼ばれる。
【0119】
これらの「DeSNAP Univ」(配列番号59)および「DeMGMT Univ」(配列番号69)は、異種タンパク質を生産するために宿主細胞をトランスフェクトすることに特化されたいずれの種類のベクター、すなわち、脊椎動物ベクター(pcDNA3またはpCI−neoベクター)ならびに無脊椎動物ベクター(DES系に有用なpMT/BiP/V5−HisA、以下の例を参照)にも挿入することができるので、「ユニバーサル」配列として維持される。
【0120】
前記ユニバーサル配列を含んでなるプラスミドの例は、配列番号64(DeSNAP Univを含んでなるpUC57)および配列番号71(DeMGMT Univを含むpUC57)である。
【0121】
ひと度、目的タンパク質の異種配列がその中にクローニングされれば、このようなベクターは、有利には、目的タンパク質を大量に生産するように脊椎動物または無脊椎動物宿主細胞のいずれかにトランスフェクトすることができる。
【0122】
第3の側面において、本発明は、前記DeSNAP UnivベクターまたはDeMGMT Univベクターにより、すなわち、単一のオープンリーディングフレーム内に、5’から3’方向に、
a)ペプチド分泌シグナル、
b)配列番号4のMGMTタンパク質または配列番号2のSNAPタンパク質、
c)少なくとも1つのペプチド切断部位、
d)ポリヒスチジン標識、および
e)少なくとも1つのスペーサー配列
(各成分は上記で定義された通り)
をコードするヌクレオチド配列を含んでなる発現ベクターにより安定にトランスフェクトされた組換え細胞を対象とする。
【0123】
それは好ましくは、配列番号64(DeSNAP Univを含んでなるpUC57)または配列番号71(DeMGMT Univを含むpUC57)のプラスミド、または少なくとも配列番号59(DeSNAP Univ)もしくは配列番号69(DeMGMT Univ)のヌクレオチド配列を含んでなる。
【0124】
好ましくは、本発明のこの側面において、前記組換え細胞は大腸菌細胞である。
【0125】
この組換え細胞は、本発明の発現ベクター、好ましくは、配列番号59のDeSNAP Univを含んでなるもの(配列番号64など)または配列番号69のDeMGMT Univを含んでなるもの(配列番号71など)を増幅および精製するために使用される。
【0126】
よって、本発明はまた、本発明の発現ベクター(前記ベクターは上記で定義された通り)のいずれかを生産するためのこの組換え細胞の使用を対象とする。
【0127】
本発明のヌクレオチド発現ベクターはまた、選択マーカーおよび/またはターミネーター配列をコードする遺伝子も含んでなり得る。
【0128】
本構築物に含まれ得る選択マーカー遺伝子は一般に、抗生物質(例えば、ブラストサイジン、アンピシリン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ピューロマイシン、クロラムフェニコール)耐性などの選択可能な表現型を付与するものである。
【0129】
第4の側面において、本発明は、宿主細胞、好ましくは、無脊椎動物または脊椎動物細胞、より好ましくは、昆虫細胞において機能的であるペプチド分泌シグナルと上記で定義された6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ酵素(MGMT)(EC2.1.1.63)、その突然変異体または触媒ドメインとを含んでなる融合ポリペプチドに関する。
【0130】
この融合ポリペプチドでは、前記MGMT酵素は好ましくは配列番号4のタンパク質、配列番号2のSNAPタンパク質突然変異体またはその同族体である。
【0131】
この融合ポリペプチドは好ましくは、上記で定義された目的組換えタンパク質をさらに含んでなり、この目的組換えタンパク質は、好ましくは、上記で定義されたMGMT酵素またはその触媒ドメインおよび/または標識のC末端に位置する。この標識は好ましくはポリヒスチジン標識であり、好ましくは、目的組換えタンパク質のC末端に位置する。
【0132】
本発明の融合ポリペプチドは、配列番号33〜43、配列番号56もしくは配列番号58(目的組換えタンパク質がGrMである場合)、配列番号73もしくは75(目的組換えタンパク質がIFNαである場合)、配列番号78もしくは80もしくは82(目的組換えタンパク質が癌抗原SSX2である場合)、配列番号85もしくは87(目的組換えタンパク質がNERCMSLである場合)、配列番号90(目的組換えタンパク質がFasLである場合)、または配列番号93(目的組換えタンパク質がCNTN4である場合)のアミノ酸配列であり得る。
【0133】
興味深いことに、本発明の融合タンパク質は、4℃で数ヶ月間、分解せずに保存することができる。この保存中のin vitro安定化効果は、MGMTタンパク質の足場特性、および/またはMGMTタンパク質が存在するために高濃度が得られること(一般に少なくとも40mg/mL)の結果である可能性がある。
【0134】
より重要なことには、このMGMTとの会合は、分泌されたタンパク質の精製工程中、組換えタンパク質を安定化させる。従って、これは、必要とする被験体にひと度投与されれば、in vivoで組換えタンパク質を安定化させるために使用することができる。MGMTとのカップリングは、in vivoにおけるこのような組換えタンパク質の寿命を延長するための手段となり得る。このin vivo安定化効果は、現在検討中である。
【0135】
第5の側面において、本発明は、本発明の発現ベクターを含んでなる無脊椎動物組換え宿主細胞に関する。
【0136】
無脊椎動物細胞は、昆虫、クモ類、甲殻類、軟体動物類、環形動物類、つるあし類、放射相称動物、腔腸動物類および滴虫類由来のいずれの細胞であってもよい。本発明において、無脊椎動物細胞は、好ましくは昆虫細胞、例えば、ショウジョウバエまたは蚊細胞である。無脊椎動物細胞は、より好ましくは、ショウジョウバエS2細胞である。
【0137】
ショウジョウバエS2細胞は広く記載されている。この細胞は、室温(24±1℃)にて懸濁培養で維持できることから、タンパク質の高収量生産に特に適している。培養培地は5〜10%(v/v)の間の熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)を添加したMである。本発明の好ましい態様では、培養培地は5%FBSを含有する。誘導後、細胞は無血清培地で培養する。この培地では、S2細胞は懸濁培養で、例えば、250mL〜2000mLのスピナーフラスコ中、50〜60rpmで撹拌しながら増殖させることができる。細胞密度は一般に10〜10細胞/mLの間に維持する。
【0138】
本発明はまた、本発明の発現ベクターを含んでなる組換えS2ショウジョウバエ細胞を対象とし、前記発現ベクターは好ましくは、
・プラスミド配列番号64(DeSNAP Univを含むpUC57)、または2011年12月9日に、ブタペスト条約に従い、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4581として寄託された細胞にクローニングされたヌクレオチド配列、
・配列番号19、または2010年8月19日に、ブタペスト条約に従い、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4357として寄託された細胞にクローニングされたヌクレオチド配列を含んでなるベクター、
・配列番号22、または2010年10月27日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所に番号CNCM I−4381として寄託された細胞にクローニングされたヌクレオチド配列を含んでなる本発明のベクター、
・配列番号21、または2010年10月27日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所に番号CNCM I−4382として寄託された細胞にクローニングされたヌクレオチド配列を含んでなる本発明のベクター、
・配列番号9、または2010年9月29日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所に番号CNCM I−4368として寄託された細胞にクローニングされたヌクレオチド配列のベクター、
・配列番号20、または2010年9月29日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所に番号CNCM I−4369として寄託された細胞にクローニングされたヌクレオチド配列を含んでなる本発明のベクター、
・配列番号71のベクター、
・配列番号57もしくは72もしくは74(目的タンパク質がIFNαである場合)、配列番号77、79もしくは81(目的タンパク質が癌抗原SSX2である場合)、配列番号55(目的タンパク質がグランザイムMである場合)、配列番号89(目的タンパク質がFasLである場合)、配列番号84もしくは86(目的タンパク質が癌抗原NERCMSLである場合)、配列番号92(目的タンパク質がコンタクチンCNTN4である場合)、または配列番号96(目的タンパク質がhSULF−2ΔTMDである場合)を含んでなる本発明のベクター
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含んでなる。
【0139】
本発明の安定にトランスフェクトされたS2細胞はまた、
・2010年8月19日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4357として寄託された細胞、
・2010年10月27日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4381として寄託された細胞、
・2010年10月27日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4382として寄託された細胞、
・2010年9月29日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4368として寄託された細胞、
・2010年9月29日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4369として寄託された細胞、
・2011年12月5日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4565として寄託された細胞、
・2011年12月5日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4566として寄託された細胞、
・2011年12月5日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4567として寄託された細胞、
・2011年12月5日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4568として寄託された細胞、
・2011年12月5日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4569として寄託された細胞、
・2011年12月5日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4570として寄託された細胞、
・2011年12月5日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4571として寄託された細胞、
・2011年12月5日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4572として寄託された細胞、
・2011年12月8日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4576として寄託された細胞、
・2011年12月8日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4577として寄託された細胞、
・2011年12月8日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)にthe Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4578として寄託された細胞、
・2011年12月8日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4579として寄託された細胞、
・2011年12月8日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4580として寄託された細胞、
・2011年12月9日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4582として寄託された細胞、
・2011年12月9日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4583として寄託された細胞、
・2011年12月9日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4584として寄託された細胞、
・2011年12月9日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4585として寄託された細胞、および
・2011年12月9日に、the Centre National de Culture et de Microorganismes(CNCM),パスツール研究所(フランス 75724 パリ セデックス 15 リュ デュ ドクトール ル 25)に番号CNCM I−4586として寄託された細胞
からなる群から選択することもできる。
【0140】
番号CNCM I−4357として寄託された組換え細胞は、配列番号19(pMT/BiP/SNAP−RVF.N/Hisタグ)(ここで、RVF.Nはリフトバレー熱ウイルス(RVF)のN抗原である)のプラスミドベクターを含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である(Brehin et al, Virology 371 : 185, 2008参照)。
【0141】
番号CNCM I−4381として寄託された組換え細胞は、BiP配列の後に配列番号22(SNAP/WN.EDIII)(ここで、WN.EDIIIは西ナイルウイルスの糖タンパク質EのIIIドメインである)が挿入されたプラスミドベクターpMT/BiP/V5−Hisタグを含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0142】
番号CNCM I−4382として寄託された組換え細胞は、配列番号21(BiP/SNAP/IFNα1)が挿入されたプラスミドベクターpMT/V5−Hisタグを含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。IFNα1は、配列番号32のヒトα1インターフェロンである(Mokkim et al. Protein expression purif. 63:140, 2009)。
【0143】
CNCM I−4369として寄託された組換え細胞は、配列番号20(WN.sE/SNAP/hisタグ)(ここで、WN.sEは西ナイルウイルスのEエンベロープタンパク質の可溶型である)を含有するプラスミドベクターpMT/BiP/V5−Hisタグを含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0144】
CNCM I−4369として寄託された組換え細胞は、配列番号20(WN.sE/SNAP/hisタグ)(ここで、WN.sEは西ナイルウイルスのEエンベロープタンパク質の可溶型である)を含有するプラスミドベクターpMT/BiP/V5−Hisタグを含んでなる、安定なマクロファージマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0145】
CNCM I−4565として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+DV1.EDIII/Hisタグ(ここで、DV1.EDIIIはデング熱ウイルス1のEDIIIタンパク質をコードし、配列番号27の配列を有する)を含んでなる、安定なマクロファージマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0146】
CNCM I−4566として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+DV2.EDIII/Hisタグ(ここで、DV2.EDIIIはデング熱ウイルス2のEDIIIタンパク質をコードし、配列番号28の配列を有する)を含んでなる、安定なマクロファージマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0147】
CNCM I−4567として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+DV3.EDIII/Hisタグ(ここで、DV3.EDIIIはデング熱ウイルス3のEDIIIタンパク質をコードし、配列番号29の配列を有する)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0148】
CNCM I−4568として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+DV4.EDIII/Hisタグ(ここで、DV4.EDIIIはデング熱ウイルス4のEDIIIタンパク質をコードし、配列番号30の配列を有する)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0149】
CNCM I−4569として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+YF.EDIII/Hisタグ(ここで、YF.EDIIIは黄熱病ウイルスのEDIIIタンパク質をコードし、配列番号31の配列を有する)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0150】
CNCM I−4570として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+JE.EDIII/Hisタグ(ここで、JE.EDIIIは日本脳炎ウイルスのEDIIIタンパク質をコードし、配列番号25の配列を有する)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0151】
CNCM I−4571として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+USU.EDIII/Hisタグ(ここで、USU.EDIIIはウスツウイルスのEDIIIタンパク質をコードし、配列番号24の配列を有する)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0152】
CNCM I−4572として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+TBE.EDIII/Hisタグ(ここで、TBE.EDIIIはダニ媒介脳炎ウイルスのEDIIIタンパク質をコードし、配列番号26の配列を有する)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0153】
CNCM I−4576として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+MVE.EDIII/Hisタグ(ここで、MVE.EDIIIはマレー脳炎ウイルスのEDIIIタンパク質をコードする)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0154】
CNCM I−4577として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+Rocio.EDIII/Hisタグ(ここで、Rocio.EDIIIはロシオウイルスのEDIIIタンパク質をコードする)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0155】
CNCM I−4578として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+SLE.EDIII/Hisタグ(ここで、SLE.EDIIIはセントルイス脳炎ウイルスのEDIIIタンパク質をコードする)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0156】
CNCM I−4579として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+WSL.EDIII/Hisタグ(ここで、WSL.EDIIIはベッセルブロンウイルスのEDIIIタンパク質をコードする)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0157】
CNCM I−4580として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+Zika.EDIII/Hisタグ(ここで、Zika.EDIIIはジカウイルスのEDIIIタンパク質をコードする)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0158】
CNCM I−4583として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+SSX2/Hisタグ(ここで、SSX2は配列番号76である)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0159】
CNCM I−4584として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+NERCMSL/Hisタグ(ここで、NERCMSLは配列番号83である)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0160】
CNCM I−4585として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/SNAP+GrM/Hisタグ(ここで、GrMは配列番号54である)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0161】
CNCM I−4586として寄託された組換え細胞は、プラスミドベクターpMT/BiP/ProTEV/Hisタグ(ここで、proTEVは配列番号52である)を含んでなる、安定なマクロファージショウジョウバエ細胞株S2である。
【0162】
第6の側面において、本発明はまた、本発明の発現ベクターにより安定にトランスフェクトされた脊椎動物組換え細胞も対象とする。
【0163】
好ましくは、前記脊椎動物組換え細胞は哺乳動物細胞、好ましくは、CHO、YB2/O、COS、HEK、NIH3T3、HeLa細胞またはそれらの誘導体である。より好ましくは、この場合、本発明の発現ベクターは、配列番号57もしくは72もしくは74(目的タンパク質がIFNαである場合)、配列番号77、79もしくは81(目的タンパク質が癌抗原SSX2である場合)、配列番号55(目的タンパク質がグランザイムMである場合)、配列番号89(目的タンパク質がFasLである場合)、配列番号84もしくは86(目的タンパク質が癌抗原NERCMSLである場合)、配列番号92(目的タンパク質がコンタクチンCNTN4である場合)または配列番号96(目的タンパク質がhSULF2ΔTMDである場合)を含んでなる。第7の側面において、本発明は、ペプチド分泌シグナルを含む前記タンパク質を、酵素6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ(MGMT)(EC2.1.1.63)、その突然変異体または触媒ドメインとともに共発現させることを含んでなる、組換えタンパク質の発現を増強する方法に関する。前記共発現は好ましくは無脊椎動物細胞、より好ましくは昆虫細胞で行われる。
【0164】
より好ましくは、この方法において、MGMT酵素は、配列番号4のタンパク質またはその同族体、例えば、配列番号2のSNAPタンパク質またはその同族体である。
【0165】
本発明において、異種タンパク質の「発現を増強する」という用語は、組換え細胞の上清中、または細胞それ自体の中の前記タンパク質の発現が、従来技術、すなわち、前記タンパク質がMGMTまたはSNAPタンパク質とともに共発現されない場合の組換えベクターで得られる前記タンパク質の発現および/または分泌に比べて、少なくとも2倍、好ましくは5倍、より好ましくは10倍、いっそうより好ましくは20倍改善されることを意味する。好ましい態様では、「発現を増強する」という用語は、本発明のベクターでトランスフェクトされた宿主細胞の上清から少なくとも40mg/L、好ましくは少なくとも50mg/L、より好ましくは少なくとも60mg/Lの目的タンパク質を回収可能であることを意味する。
【0166】
用語「共発現する」とは、i)組換えタンパク質、ii)MGMT酵素、その突然変異体または触媒ドメイン、およびiii)ペプチド分泌シグナルをコードするDNA配列が、同じ発現制御配列(すなわち、転写および翻訳制御配列)と機能的に連結され、それにより調節されることを意味する。従って、ペプチド分泌シグナル、異種目的タンパク質およびMGMT酵素をコードするDNA配列の翻訳は、それらのタンパク質が上記で定義されたスペーサー配列および/または酵素切断部位により分離することができる融合ポリペプチドの形成をもたらす。
【0167】
本発明の融合ポリペプチドの「ペプチド分泌シグナル」は、好ましくは、無脊椎動物細胞もしくは脊椎動物細胞のいずれか、またはその両方において、より好ましくは昆虫細胞、いっそうより好ましくはショウジョウバエS2細胞において機能的である分泌シグナルである。
【0168】
昆虫細胞において機能的であるペプチド分泌シグナルの例としては、配列番号48の昆虫ssBiP、配列番号51のBiP様シグナル、アルボウイルスに存在する任意のペプチドシグナル、例えば、西ナイルウイルスのエンベロープEタンパク質(配列番号15)がある。
【0169】
脊椎動物細胞および無脊椎動物細胞の両方において機能的なペプチド分泌シグナルの一例は、配列番号51のBiP様シグナルである。
【0170】
第8の側面において、本発明は、上記のような本発明のベクター、または上記のような組換え宿主細胞の使用を含んでなる、目的組換えタンパク質の生産を改善するため、または組換えタンパク質を細胞培養で生産するための方法に関する。
【0171】
より厳密には、前記の、目的組換えタンパク質の生産を改善するため、または組換えタンパク質を細胞培養で生産するための方法は、
a)前記目的タンパク質をコードする本発明のヌクレオチド発現ベクターを提供する工程、
b)前記発現ベクターを宿主細胞、好ましくは無脊椎動物または脊椎動物宿主細胞に導入する工程、
c)前記宿主細胞内で導入されたヌクレオチドの発現を可能として前記目的組換えタンパク質を生産する工程
を含んでなる。
【0172】
好ましくは、前記無脊椎動物宿主細胞は、昆虫細胞、例えば、ショウジョウバエS2細胞である。
【0173】
好ましくは、前記脊椎動物宿主細胞は、哺乳動物細胞、例えば、CHO、YB2/O、COS、HEK、NIH3T3、HeLa細胞またはそれらの誘導体である。
【0174】
この方法を使用することにより、目的組換えタンパク質は、少なくとも40mg/L(回収細胞培養上清)以上の発現を示す。
【0175】
遺伝子産物を直接培地中に分泌するショウジョウバエ細胞株S2の使用は本発明の好ましい態様である(このような培地への直接分泌は効率的な一工程精製系を可能とする)。
【0176】
第9の態様において、本発明は、複製ベクターまたは欠陥ベクターに感染した、好ましくは無脊椎動物および/または脊椎動物宿主細胞、より好ましくは昆虫細胞または哺乳動物細胞において、組換えタンパク質の生産レベルを高めるための、酵素6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ(MGMT)(EC2.1.1.63)、その突然変異体または触媒ドメインの使用に関する。
【0177】
このMGMT酵素は、配列番号4の配列のヒトMGMT(NP_002403.2として参照)、NP_032624.1(配列番号45)として示されるマウスMGMT、NP_036993.1(配列番号46)として示されるラットMGMT、その相同配列、またはその部分断片であり得る。
【0178】
好ましくは、このMGMT変異酵素は、配列番号2のSNAPタンパク質、またはその同族体であり、すなわち、同族体は配列番号2の配列のSNAPタンパク質と少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%を超える同一性を示す。
【0179】
前記無脊椎動物細胞は、好ましくは、昆虫細胞、例えば、ショウジョウバエS2細胞である。
【0180】
好ましい態様では、本発明は、複製ベクターまたは欠陥ベクターに感染した脊椎動物細胞、例えば、哺乳動物細胞において、組換えタンパク質の生産レベルを高めるための、酵素6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ(MGMT)(EC 2.1.1.63)、その突然変異体、または触媒ドメインの使用に関する。
【0181】
前記脊椎動物細胞は、好ましくは、EBX、CHO、YB2/O、COS、HEK、NIH3T3細胞またはそれらの誘導体である。
【0182】
また、本発明は、組換え細胞において目的タンパク質の生産レベルを高めるための、MGMT酵素、その突然変異体または触媒ドメインをコードするDNA配列の使用に関する。
【0183】
本発明はまた、i)in vitroおよびin vivoにおいて組換えタンパク質を安定化させ、それによりii)in vitroおよびin vivoにおいてそれらの寿命を延長させるための、MGMT酵素、その突然変異体または触媒ドメインをコードするDNA配列の使用に関する。
【0184】
このようなDNA配列は、例えば、ヒトMGMT遺伝子配列NM_002412.3、遺伝子ID4255(配列番号3)、または機能的MGMT酵素、その突然変異体もしくは触媒ドメインをコードするその任意の相同配列(好ましくは、配列番号1、配列番号47、配列番号67または配列番号68)である。
【0185】
特に、本発明は、保存培地、血漿もしくはバッファー中での組換えタンパク質の半減期を延長するため、薬剤もしくはワクチンとして使用する組換えタンパク質の半減期を延長するため、または診断キットで使用する組換えタンパク質の半減期を延長するために、組換えタンパク質と融合または連結させる保護ポリペプチドとしての、6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ酵素(MGMT、EC2.1.1.63)、その突然変異体または触媒ドメインの使用に関する。
【0186】
本発明において、異種タンパク質の「生産レベルを改善する」または「生産レベルを高める」という用語とは、前記細胞の上清中または前記細胞内での前記タンパク質の発現が、従来技術の、すなわち、本発明のベクターを含まない、組換えベクターを用いた場合に得られる前記タンパク質の発現に比べて少なくとも2倍、好ましくは5倍、より好ましくは10倍、いっそうより好ましくは20倍改善されることを意味する。好ましい態様では、「生産を改善する」とは、本発明のベクターでトランスフェクトされた宿主細胞の上清から少なくとも40mg/L、好ましくは少なくとも50mg/L、より好ましくは少なくとも60mg/Lの目的タンパク質を回収可能であることを意味する。
【0187】
好ましい態様では、前記組換えタンパク質は、インスリン、IFN、SSX2、グランザイムM、FasL、メソテリン(NERMCSL)、エンドスルファターゼ(hSULF)またはコンタクチンの中から選択される。
【0188】
特定の態様では、本発明はまた、目的組換えタンパク質の生産のための方法に関し、該方法は、
(a)目的組換えタンパク質をコードする異種DNA配列を取得する工程;
(b)前記異種DNA配列を本発明のヌクレオチド発現ベクターに挿入する工程(該ベクターは例えば配列番号9、配列番号10、配列番号64または配列番号71のDNA配列を有する);
(c)宿主細胞(好ましくは、昆虫細胞または哺乳動物細胞)を工程(b)で得られたポリヌクレオチドでトランスフェクトする工程;
(d)工程(c)で得られた前記ポリヌクレオチドの発現を可能として目的タンパク質を生産する工程;
(e)場合により、MGMTポリペプチドを切断する工程、
(f)目的タンパク質を回収する工程、
(g)場合により、目的タンパク質を精製する工程
を含んでなる。
【0189】
本発明の方法の種々の工程を実施するためには、当業者の範囲内の従来の分子生物学、微生物学および組換えDNA技術を使用することができる。このような技術は、文献で十分説明されている。例えば、Sambrook, Fitsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (本明細書では「Sambrook et al., 1989」と称する); DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II (D. N. Glover ed. 1985); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed. 1984); Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins, eds. 1984); Animal Cell Culture (R. I. Freshney, ed. 1986); Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, 1986); B. E. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984); F. M. Ausubel et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (1994)参照。
【0190】
用語「トランスフェクション」とは、真核生物宿主細胞が導入された遺伝子または配列を発現して目的の物質、本発明では導入された遺伝子または配列によりコードされているタンパク質を生産するように、宿主細胞に外来核酸を導入することを意味する。導入されたDNAまたはRNAを受容および発現する宿主細胞は「トランスフェクトされた」と言い、「トランスフェクタント」または「クローン」と言う。宿主細胞に導入されるDNAまたはRNAは、宿主細胞と同属もしくは同種の細胞、または異属もしくは異種の細胞を含め、いずれの起源のものであってもよい。
【0191】
本発明において、ポリヌクレオチドでの宿主細胞のトランスフェクションは、当技術分野における従来法、例えば、トランスフェクション、感染、またはエレクトロポレーションによって行うことができる。別の態様では、本発明のベクターはin vivoにおいてリポフェクション(裸のDNAとして)、または他のトランスフェクション促進剤(ペプチド、ポリマーなど)を用いて導入することができる。合成陽イオン脂質を用いて、マーカーをコードする遺伝子のin vivoトランスフェクションのためのリポソームを作製することができる(Feigner et al, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 84:7413-7417, 1987)。核酸の導入に有用な脂質化合物および組成物は、WO95/18863およびWO96/17823、ならびに米国特許第5,459,127号に記載されている。標的化のために脂質を他の分子と化学的にカップリングしてもよい(Mackey et al, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85:8027-8031, 1988参照)。ホルモンもしくは神経伝達物質などの標的ペプチド、および抗体などのタンパク質、または非ペプチド分子をリポソームと化学的にカップリングさせることができる。陽イオンオリゴペプチド(WO95/21931参照)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(WO96/25508参照)、または陽イオンポリマー(WO95/21931参照)などの、in vivoにおける核酸のトランスフェクションを助けるための他の分子も有用である。また、in vivoにおいて裸のDNAプラスミドとしてベクターを導入することもできる。遺伝子療法用の裸のDNAベクターは、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、遺伝子銃の使用、またはDNAベクター輸送体の使用などの当技術分野で公知の方法により、所望の宿主細胞に導入することができる(Wu et al, J. Biol. Chem., 267:963-967, 1992; Wu and Wu, X Biol. Chem., 263:14621-14624, 1988; Williams et al, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88:2726-2730, 1991参照)。
【0192】
本明細書においてポリヌクレオチドの「発現を可能とする」という用語は、ベクター中に存在する調節配列の刺激(例えば、誘導プロモーターを活性化する刺激)と、必要な総ての成分がそのポリヌクレオチドの翻訳が起こるのに十分な量で存在することを意味する。
【0193】
必要であれば、生産された融合タンパク質のMGMT/SNAPポリペプチドの切断が、組換え細胞の上清中にまたは組換え細胞に、定義された切断部位を有するプロテアーゼを加えることによって得られる。例えば、エンテロキナーゼ切断部位DDDK/Dの切断は、組換え細胞の上清中にエンテロキナーゼ酵素を加えることによって得られる。あるいは、組換えタンパク質の寿命を延長するために、MGMT/SNAPポリペプチドを維持することができる。
【0194】
さらに、当業者ならば、発現または分泌されたタンパク質またはポリペプチドが、本宿主細胞を維持または増殖させるために用いる培養培地中で検出できることが分かるであろう。培養培地は、遠心分離または濾過などの既知の手順によって宿主細胞から分離することができる。次にこのタンパク質またはポリペプチドは、そのタンパク質またはポリペプチドに特徴的な既知の特性を利用することにより、無細胞培養培地中で検出することができる。このような特性には、前記タンパク質またはポリペプチドの明瞭な免疫学的、酵素的または物理的特性を含み得る。例えば、タンパク質またはポリペプチドが独特な酵素活性を有する場合、その活性に関するアッセイは、宿主細胞により用いられた培養培地で行うことができる。さらに、所与のタンパク質またはポリペプチドに対して反応性のある抗体が利用可能であれば、このような抗体を用い、任意の既知の免疫アッセイにおいて前記タンパク質またはポリペプチドを検出することができる(例えば、Harlowe, et al., 1988, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressの場合)。
【0195】
目的タンパク質の回収は、限定されるものではないが、分取ディスクゲル電気泳動、等電点電気泳動、FIPLC、逆相HPLC、ゲル濾過、イオン交換および分配クロマトグラフィー、沈殿および塩析クロマトグラフィー、抽出および向流分配などを含む、当技術分野で周知の手段により媒介される。標識と結びついた本発明の組換え系において目的タンパク質を生産することが好ましいが、前記標識は、適当な固相マトリックス上でのクロマトグラフィーにより宿主細胞の粗溶解液からのポリペプチドの回収を容易にする。あるいは、タンパク質に対して、またはそれに由来するペプチドに対して生成された抗体は、回収試薬として使用可能である。
【0196】
精製のさらなる工程(g)を行ってもよいが、興味深いことに、必ずしも必要でない。
【0197】
精製された材料は、もともと会合していた細胞成分を約50%未満、好ましくは約75%未満、最も好ましくは、約90%未満含有し得る。「実質的に純粋」とは、当技術分野で公知の従来の精製技術を用いて達成することのできる最高の純度を示す。
【0198】
本発明の態様では、本発明の方法は、回収された細胞培養上清において少なくとも40mg/L、好ましくは少なくとも50mg/L、より好ましくは少なくとも60mg/Lの実質的に純粋な目的タンパク質を得ることができる。
【0199】
本発明の目的組換えタンパク質および融合タンパク質(すなわち、組換えタンパク質単独の場合よりも安定な、MGMT/SNAPポリペプチドとカップリングされた組換えタンパク質)は、種々の製品において有用であり得る。例えば、これらの組換えおよび/または融合タンパク質は、例えばウイルス感染の処置のための医薬組成物で使用可能である。
【0200】
好ましい態様では、前記組換えタンパク質は、インスリン、IFN、FasL、グランザイムM、SSX2、メソテリン(NERMCSL)、エンドスルファターゼ(hSULF)またはコンタクチンの中から選択される。
【0201】
別の態様では、本発明は、上記の核酸ベクターを含んでなる感染性ウイルス粒子を提供する。一般に、このようなウイルス粒子は、
(a)本発明のウイルスベクターを好適な細胞株に導入する工程、
(b)前記細胞株を、前記感染性ウイルス粒子の生産を可能とするために好適な条件下で培養する工程、
(c)生産された感染性ウイルス粒子を前記細胞株の培養物から回収する工程、および
(d)場合により、前記の回収された感染性ウイルス粒子を精製する工程
を含んでなる方法によって生産される。
【0202】
ウイルスベクターが欠陥型である場合、感染性粒子は通常、相補的細胞株において、または非機能的ウイルス遺伝子をトランスで供給するヘルパーウイルスを介して生産される。例えば、E1欠損アデノウイルスベクターを補足するのに好適な細胞株としては、293細胞ならびにPER−C6細胞が挙げられる。感染性ウイルス粒子は培養上清から、または溶解後の細胞から回収することができる。それらは標準的技術(クロマトグラフィー、例えば、W096/27677、WO98/00524、W098/22588、WO98/26048、WO00/40702、EP1016700およびWO00/50573に記載されているような塩化セシウム勾配中での超遠心分離)に従ってさらに精製することができる。
【0203】
よって、本発明は、本発明の発現ベクター、組換えタンパク質、融合タンパク質、宿主細胞またはウイルス粒子、またはその任意の組合せを含んでなる医薬組成物に関する。このような医薬組成物は、本発明の方法によって得られた、治療的量のベクター、粒子、細胞またはタンパク質を薬学上許容される担体と混合して含んでなる。
【0204】
この組成物は非経口的、静脈内または皮下に、全身投与することができる。全身投与される場合、本発明で用いられる治療組成物は、発熱物質不含の、非経口的に許容されるタンパク質溶液の形態である。pH、等張性、安定性などを考慮したこのような非経口的に許容されるタンパク質溶液の調製は、当業者の範囲内である。
【0205】
投与計画は、担当医により、薬物の作用を改変する種々の因子、例えば、患者の病態、体重、性別(sew)および食事、感染の重篤度、投与時間およびその他の臨床因子を考慮して決定される。医薬担体および医薬組成物の他の成分は当業者ならば選択することができる。
【0206】
さらに、本発明の融合タンパク質および組換えタンパク質は、例えばウイルス感染に対して哺乳動物対象に接種するためのワクチンの成分として使用してもよい。これらのタンパク質は単独で使用してもよいし、または他の組換えタンパク質もしくは治療用ワクチン薬剤とともに使用してもよい。このようなワクチンの成分は、当業者ならば決定することができる。
【0207】
本発明はまた、薬剤、特に、ワクチンの製造のための、本発明の融合タンパク質、発現ベクター、感染性ウイルス粒子、宿主細胞または医薬組成物の使用を包含する。
【0208】
本発明はまた、ヒトまたは動物生物を治療または予防する方法であって、前記生物に治療上有効な量の本発明の融合タンパク質、発現ベクター、感染性ウイルス粒子、宿主細胞または組成物を投与することを含んでなる方法を提供する。
【0209】
最後に、本発明のタンパク質、特に、SNAP−目的タンパク質融合物は、血液、血清、唾液などの体液中における癌、ウイルス感染またはウイルスタンパク質抗体の存在を検出するための診断薬として有用であり得る。これらのタンパク質はまた、体液および組織中のウイルスタンパク質を同定および/または単離するための方法で使用してもよい。よって、これらのタンパク質はこのような方法を実施するためのキットの成分となり得る。
【0210】
よって、別の側面において、本発明はまた、生体サンプル中の病原性または非病原性微生物の存在を同定するための、本発明の方法のいずれかによって得られた病原性または非病原性微生物由来の組換えタンパク質、またはMGMTもしくはSNAPタグ付き組換えタンパク質の使用に関する。好ましい態様では、前記病原性微生物はウイルスであり、前記MGMTもしくはSNAPタグ付きタンパク質は、チクングニアウイルス、デング熱ウイルス、日本脳炎(JE)ウイルス、ダニ媒介脳炎(TBE)ウイルス、黄熱(YF)ウイルス、ウスツ(USU)ウイルスもしくは西ナイルウイルス由来のEDIII、またはリフトバレー熱ウイルスもしくはトスカナウイルス由来の核タンパク質Nなどのウイルスタンパク質である。
【0211】
本発明において、前記生体サンプルは、ウイルスに感染している可能性のある血液サンプル、尿サンプル、または任意の生体サンプルを意味する。
【実施例】
【0212】
1.プラスミドの構築
1.1.プラスミドpMT/BiP/V5−His Aを使用した。このプラスミドは3642ヌクレオチドを含み、下記の特徴を含む:
・メタロチオネインプロモーター:塩基412〜778、
・転写開始:塩基778、
・MTフォワードプライミング部位:塩基814〜831、
・BiPシグナル配列:塩基851〜904(配列番号11)、
・多重クローニング部位:塩基906〜999、
・V5エピトープタグ:塩基1003〜1044、
・ポリヒスチジン領域:塩基1054〜1074、
・BGHリバースプライミング部位:塩基1094〜1111、
・SV40後期ポリアデニル化シグナル:塩基1267〜1272、
・pUC起点:塩基1765〜2438(相補鎖)、
・blaプロモーター:塩基3444〜3542(相補鎖)、
・アンピシリン(bla)耐性遺伝子ORF:塩基2583〜3443(相補鎖)。
【0213】
また、pUC57 Ampベクターも、本発明の目的で使用可能である。このベクターは下記のものを含んでなる。
・独特なクローニング部位EcoRI、
・メタロチオネインプロモーター、
・西ナイルウイルスIS−98−ST1株由来ゲノムRNAの5’非コード領域、
・翻訳開始コドン(ATG)、
・西ナイルウイルスIS−98−ST1株由来エンベロープEタンパク質のシグナルペプチド(配列番号15)、
・2つのリピート配列と3’末端ステム−ループが削除された、西ナイルウイルスIS−98−ST1株由来ゲノムRNAの3’非コード領域、
・S40ポリAシグナルモチーフ、
・独特なクローニング部位ApaI。
【0214】
1.2.SNAPのクローニング
配列番号2のSNAPタンパク質配列をコードするDNAの増幅を、5’−SNAPプライマーと3’−MCSプライマーの組合せを用い、PCRにより、pMT/BiP/CHIK.sE2+SNAPタグを鋳型として行った。
プライマー5’−SNAP:
【化1】
(配列番号7)
プライマー3’−MCS:
【化2】
(配列番号8)
【0215】
次に、このPCR産物をBglIIおよびNotIで消化し、DES系において線状化プラスミドp/MT/BiP/V5−Aの独特なBglII(MCSの5’末端)部位とNotI(MCSの3’末端)部位の間に挿入した。
【0216】
得られたプラスミドは配列番号9のpMT/BiP/SNAP−Hisタグベクターであり、下記のものを含んでなる:
・配列番号11の昆虫ssBiP配列、
・配列番号1のSNAP DNA配列、
・配列番号12のエンテロキナーゼ切断部位、
・EcoRV−SmaI制限部位、
・制限部位の下流に位置する、HisタグをコードするDNA(配列番号14)、
・i)エンハンサー配列とEcoRV−SmaI制限部位の間、およびii)EcoRV−SmaI制限部位とHisタグをコードするDNAの間に位置する、配列番号13の2つのDNAスペーサー配列。
【0217】
また、pMT/BiP/SNAP−Hisタグベクターは、pUC57骨格から得ることもでき、配列番号10の配列を有するベクターが得られる。このベクターは下記のものを含んでなる:
・独特なクローニング部位EcoRI、
・メタロチオニン(Methallothionin)プロモーター、
・西ナイルウイルスIS−98−ST1株由来ゲノムRNAの5’非コード領域、
・翻訳開始コドン、
・配列番号15の、西ナイルウイルスIS−98−ST1株由来エンベロープEタンパク質のシグナルペプチド、
・配列番号47のSNAP DNA配列、
・外来配列をインフレームで挿入するためのSmaI/XmaIにおける独特なクローニング部位EcoRV、
・SNAPエンハンサーDNAとクローニング部位の間に位置する、配列番号12のエンテロキナーゼ切断部位、
・ヘキサヒスチジンタグ配列をコードするDNA(配列番号14)、
・エンハンサー配列とEcoRV−SmaI制限部位の間、およびii)EcoRV−SmaI制限部位とHisタグをコードするDNAの間に位置する、配列番号13の2つのDNAスペーサー配列、
・2つの翻訳停止コドン、
・2つのリピート配列と3’末端ステム−ループが削除された、西ナイルウイルスIS−98−ST1株由来ゲノムRNAの3’非コード領域、
・S40ポリAシグナルモチーフ、および
・独特なクローニング部位ApaI。
【0218】
また、pMT/BiP様/SNAP−Hisタグベクターは、独特なEcoRV部位とHindIII部位の間に配列番号59(図8も参照)が挿入されたpUC57骨格から得ることもできる。このベクターは配列番号64の配列を有する。このベクターは下記のものを含んでなる:
・独特なクローニング部位EcoRI、
・メタロチオニン(Methallothionin)プロモーター、
・西ナイルウイルスIS−98−ST1株由来ゲノムRNAの5’非コード領域、
・翻訳開始コドン、
・配列番号15の、西ナイルウイルスIS−98−ST1株由来エンベロープEタンパク質のシグナルペプチド、
・配列番号47のSNAP DNA配列、
・外来配列をインフレームで挿入するための独特なクローニング部位BamHI、EcoRV、ApaIおよびXmaI、
・SNAPエンハンサーDNAとHisタグの間に位置する、配列番号52の2つのproTEV切断部位、
・ヘキサヒスチジンタグ配列をコードするDNA(配列番号14)、
・i)エンハンサー配列とEcoRV−SmaI制限部位の間、およびii)ApaI制限部位とHisタグをコードするDNAの間に位置する、配列番号13の2つのDNAスペーサー配列、
・2つの翻訳停止コドン、
・2つのリピート配列と3’末端ステム−ループが削除された、西ナイルウイルスIS−98−ST1株由来ゲノムRNAの3’非コード領域、
・S40ポリAシグナルモチーフ、および
・独特なクローニング部位ApaI。
【0219】
1.3.目的遺伝子のクローニング
1.3.1.リフトバレー熱ウイルスの核タンパク質N(RVF−N)
RFV−Nタンパク質配列をコードするcDNAに対する突然変異誘発を、下記に挙げた5’−Nプライマーと3’−N’プライマーの組合せを用いてPCRにより行った。
プライマー5’−N:
【化3】
(配列番号17)
プライマー3’−N:
【化4】
(配列番号18)
【0220】
1.3.2.非ウイルスタンパク質、例えば、インターフェロンIFNα1またはグランザイムM
配列番号32のヒトIFNα1タンパク質配列も使用可能である。
【0221】
配列番号54のヒトグランザイムMタンパク質配列も使用可能である。グランザイムMは、その基質をMetまたはLeuの後で優先的に切断するキモトリプシン様セリンプロテアーゼである。グランザイムMは、活性化された内在性のエフェクターであるナチュラルキラー細胞で構成的に発現される。このプロテアーゼはまた、抗ウイルス性および抗腫瘍性も有する(van Domselaar R. et al, The Journal of Immunology 2010; Hu D. et al, The Journal of Biological Chemistry 2010)。
【0222】
1.4.pMT/BiP/SNAP−HisタグベクターまたはpMT/BiP様/SNAP−Hisタグベクターへのタンパク質コード遺伝子の挿入による、pMT/BiP/SNAP−タンパク質−HisタグベクターまたはpMT/BiP様/SNAP−タンパク質−Hisタグベクターの取得
1.4.1.RVF.N
1.3.1.項で得られたPCR産物をBssHIIおよびAgeIで消化し、1.2.項で得られた線状化プラスミドp/MT/BiP/SNAP−Hisタグの、独特なBssHII(SNAP遺伝子の3’末端)部位とAgeI(シャトルベクターのMCSの3’末端)の間に挿入した。
【0223】
得られるプラスミドは例えば、pMT/BiP/SNAP−RVF.N/Hisタグ(配列番号19)である。
【0224】
1.4.2.種々のフラビウイルスのEDIIIタンパク質
組換えフラビウイルス抗原に基づくELISAまたは免疫ブロット試験の特異性を高めるために、Eタンパク質の抗原ドメインIII(EDIII)は有望なアプローチであると思われる(Ludolfs et al. 2007)。西ナイル(WN)ウイルス、ウスツ(USU)ウイルス、日本脳炎(JE)ウイルス、ダニ媒介脳炎(TBE)ウイルス、デング熱血清型1〜4(DEN−1、−2、−3、−4)ウイルスおよび黄熱(YF)ウイルスからの組換えEDIIIの製造に関して、本発明の方法を用いて試験した。
【0225】
人畜共通のWN、USUおよびJEウイルスは、JE血清型群に属す。ショウジョウバエS2誘導発現系(DES、Invitrogen)は、無脊椎動物細胞におけるフラビウイルス由来の個々のEDIIIの大量生産のために選択されたものである。フラビウイルスWN、USU、JE、TBE、DEN−1〜DEN−4、およびYF由来Eタンパク質の全長ドメインIIIをコードする合成遺伝子を配列番号23〜配列番号31に一覧化する。EDIII配列を、1.2.で得られたプラスミドpMT/BiP/SNAP−Hisタグ中のSNAPタンパク質のC末端にインフレームで融合させ、融合タンパク質SNAP−EDIIIを作出した。
【0226】
1.4.3.IFNα
プラスミドpMT/BiP/SNAP−IFN−Hisタグ(図4参照)およびpMT/BiP様/SNAP−IFN−Hisタグ(図8の詳細を参照)を得た。
【0227】
1.4.4.グランザイムM
プラスミドpMT/BiP/SNAP−GrM−Hisタグを得た(図6の詳細を参照)。
【0228】
2.宿主細胞へのトランスフェクション
2.1.S2細胞へのトランスフェクション
得られたプラスミドpMT/BiP/SNAP−タンパク質−Histag(Histagで終わる分泌融合タンパク質としてのSNAPタグを有するタンパク質の生産を可能とする)は、選択マーカーpCo−BlastとともにS2細胞に同時トランスフェクトし、アンピシリン耐性を示す安定なS2/sSNAP−タンパク質−Histag細胞株を作出した。
【0229】
スピナー(1000ml)で増殖させた安定なS2細胞株を重金属カドミウム(Cd2+)で10日間刺激し、細胞外培地からタンパク質を濃縮および精製した。
【0230】
重金属カドミウムで10日間誘導した後に、安定なS2/sSNAP−タンパク質−Hisタグ細胞の上清には、分泌された、SNAPタグを有するタンパク質の蓄積が見られた。
【0231】
ヤギ血清抗Hisタグを用いた免疫ブロットアッセイにより、細胞外の、SNAPタグを有するタンパク質を検出することができる(図2B、3B、4B、6C)参照。
【0232】
2.2.HeLa細胞へのトランスフェクション
このプラスミドpMT/BiP様/SNAP−IFN−HistagをHeLa細胞にトランスフェクトした。
【0233】
抗SNAP抗体を用いた免疫ブロットアッセイにより、細胞外の、SNAPタグを有するIFNを検出することができる(図7B参照)。
【0234】
3.組換えタンパク質の精製
細胞外の、HisタグおよびSNAPタグを有するタンパク質を、金属キレート樹脂およびHLPC法を用いて精製した。
【0235】
3.1.RVF−NおよびTOS−N
RVF−N
Plate-Forme 5 Production de Proteines recombinantes et d'Anticorps (Institut Pasteur)との共同研究において、2リットルのS2/sSNAP−RVFV.N−Histag細胞上清から、Cd2+刺激の10日後に、精製度の高い、SNAPタグを有するRVF.Nタンパク質が97mgもの量で得られた。
【0236】
TOS−N
Plate-Forme 5 Production de Proteines recombinantes et d'Anticorps (Institut Pasteur)との共同研究において、2リットルのS2/sSNAP−TOS.N−Histag細胞上清から、Cd2+刺激の10日後に、精製度の高い、SNAPタグを有するRVF.Nタンパク質が41mgもの量で得られた。
【0237】
【表1】
【0238】
3.2.可溶性IFNα1
可溶性IFNα1タンパク質は、エンテロキナーゼ酵素(Novagenキット)を用いて切断することにより、SNAPタグから遊離させた。
3.3.種々のフラビウイルス由来の抗原
【0239】
【表2】
【0240】
・EDIII:フラビウイルスEタンパク質(デング熱[DEN]、西ナイル[WN]、日本脳炎[JE]、ウスツ[USU]、ダニ媒介脳炎[TBE]、黄熱[YF]、マレー脳炎[MVE]、ベッセルブロン[WSL]、ロシオ、ジカ)由来のドメイン抗原III
・ectoM:1型デング熱ウイルス由来Mタンパク質のエクトドメイン
・RVF由来N遺伝子:リフトバレー熱ウイルスの核タンパク質N(主要ウイルス抗原)
・TOS由来N遺伝子:トスカナウイルスの核タンパク質N(主要ウイルス抗原)
・WN由来sE:西ナイルウイルス由来エンベロープEタンパク質の可溶型
・CHIK由来sE2:チクングニアウイルス由来エンベロープE2タンパク質の可溶型
・SNAP−IFNΑI:SNAPと融合したインターフェロン−α1
【0241】
3.4.グランザイムMの生産
7日で、1リットルの培養上清当たり10mgのSNAP−GrMタンパク質が回収された。
【0242】
精製工程後、連結されたGrM酵素によるSNAPタンパク質の切断に対応する3つの形態のSNAP−GrMが検出された(図6C参照)。
【0243】
このことは、ヒトプロテアーゼは本発明の方法により生産された後にも活性があることを明らかに意味する(下記参照)。
【0244】
4.SNAPタグを有するタンパク質の制御
特異的抗体(目的タンパク質および/またはHisタグ標識を認識する)を用いた免疫ブロットアッセイは、細胞外の、SNAPタグを有するタンパク質の実質的生産を検出した:
免疫ブロットアッセイは、ヤギ血清抗Histagを用いて、細胞外の、SNAPタグを有するRVF.Nタンパク質を検出した(図2B)。RVF.Nに対するヒトおよびマウス免疫血清は、組換え型の、SNAPタグを有するRVF.Nタンパク質を特異的に認識する。
【0245】
特異的マウスポリクローナル血清を用いた免疫ブロットアッセイは、組換えWNとUSU EDIIIの間で、高いレベルの配列類似性にもかかわらず交差反応性を示さなかった。よって、最近ヨーロッパでは可能性のある出現アルボウイルスとしてUSUウイルス、およびそれより少ないがJEウイルスが特定されていることから、WNV、JE、USUから分泌された可溶性SNAP−EDIIIは、JE血清型群のメンバーの特異的診断のための組換えウイルス抗原として好適である。
【0246】
5.SNAPタグを有する組換えタンパク質の活性
・誘導を受けたS2/SNAP−IFNα1細胞から分泌された可溶性組換えSNAP−IFNα1はCHIKVに対して強い抗ウイルス効果を示す
誘導10日後に、Cd2+刺激S2/SNAP−IFNα1(5×10細胞/ml)の上清(5ml)を回収した。細胞上清に対して、抗Hisタグ抗体を用いた免疫ブロットにより、可溶性SNAP−IFNα1タンパク質の蓄積が見られた(下記参照)。SNAP−IFNα1の抗ウイルス活性を、ルシフェラーゼ(Luc)遺伝子を発現するチクングニアウイルスに感染させたHeLa細胞で評価した。感染6時間後にLuc活性を測定した。HeLa細胞における、CHIKVに対するその強力な抗ウイルス作用が知られるIFNαcon1(インファゲン)を内部アッセイとして使用した。Cd2+刺激S2/SNAP−Tos.N(トスカナウイルス由来Nタンパク質)の上清を陰性対照として用いた。図4Cに示されたグラフは、1μlの分泌SNAP−IFNα1または0.1μgのインファゲンが感染宿主細胞内でのCHIKV複製を抑制できたことを示す。このグラフには、SNAP−IFNαの用量依存効果が示される。0.1μlの可溶性SNAP−IFNα1または0.01μgのインファゲンでなお20%のLuc活性が見られた。SNAP−TOS−Nを用いた場合には、試験したより高い用量でも抗ウイルス作用は見られなかった。
【0247】
・グランザイムMは、S2細胞の上清で産生された場合、活性型となる
これまでに述べたように、ベクターpMT/BiP/SNAP−GrM−HisタグでトランスフェクトされたS2細胞の上清では、3つの形態のSNAP−GrMが検出された(図6C参照)。
【0248】
これらの3つの形態は、連結されたGrM酵素によるSNAPタンパク質の切断に対応する。SNAPは実際にGrMの3つの潜在的切断部位を含んでいる(図6B参照)。抗His抗体または抗SNAP抗体のいずれかを用いたイムノアッセイでは、これらの3つの形態が実際に分泌された融合タンパク質SNAP−GrMの断片であることが明らかになった。
【0249】
小さい形態(35kDa)は、精製過程でSNAPの大部分が欠損したGrMに相当する。
【0250】
これらの結果は、本発明の系によって生産されたGrMプロテアーゼが、SNAPタンパク質と連結されているものの活性があることを明らかに示す。
【0251】
活性型のヒトプロテアーゼは組換え生産するのが極めて難しいことが知られているので、このことは実に興味深いことである。
【0252】
・hSULF−2ΔTMDは、HEK293細胞の上清で産生された場合、活性型となる
組換えプラスミドpcDNA3/De SNAPuniv−hSULF−2ΔTMDでトランスフェクトされたHEK−293細胞からhSULF−2ΔTMDが発現および精製された(図13A参照)。
【0253】
上清中に得られたhSULF−2ΔTMDポリペプチドの酵素活性を次のように評価した。
【0254】
HEK293細胞をpcDNA3/DeSNAP−hSULF2ΔTMDで一時的にトランスフェクトした。2日後に、細胞上清のアリコートを50mM Tris pH7.5中20mMの非蛍光偽基質4−メチルウンベリフェロン(4−MUS)とともにインキュベートし、20mM MgClをこの酵素(細胞馴化培地中)とともに、96ウェルプレートにて37℃で2〜4時間インキュベートした(1:1、V/V)。この酵素反応を、1.5M NaHCO/NaCO pH10.5を加える(1:1 v/v)ことによって停止させ、蛍光生成物である4−メチルウンベリフェロンを蛍光計(励起:360nm)によりモニタリングした。細胞上清中のSULF活性を460nmでの光学密度(OD)で測定した。
【0255】
興味深いことに、図13Bに示されるように、分泌されたタンパク質(SNAPと連結しているか?)は活性型である。
【0256】
6.SNAPタグを有する組換えタンパク質の安定性
驚くことに、SNAPペプチドを含んでなる融合タンパク質はその不在の場合よりもin vitroにおいてはるかに安定であることが見出された。
【0257】
精製度の高いCHIK.sE2−SNAPタンパク質、SNAP−WN.EDIIIタンパク質およびSNAP−IFNΑIタンパク質を、無菌PBS中0.1mg/ml(Vol:0.1ml)の不飽和濃度で、−80℃、4℃、25℃もしくは37℃で4日間、または同じ温度で2ヶ月間インキュベートした。
【0258】
タンパク質サンプル(1μg)をSDS−PAGE 4〜12%で分離し、PageBlueタンパク質染色溶液(Fermentas)を用いて、クーマシーブリリアントブルーG−250色素で可視化した。
【0259】
図10AおよびBは、3つの異なる融合タンパク質のin vitro安定性を比較することによって得られた結果を示す。
【0260】
重要なことは、4℃で2ヶ月後、また、室温(25℃)または37℃で4日間インキュベーション後も、総ての融合タンパク質が完全な状態を呈していたことである。
【0261】
特に、IFNは体温(37℃)で4日後も影響を受けず、37℃で2ヶ月後にもなお観察されたことから、それをSNAPと連結することでin vivo安定性が著しく高められると思われる。
【0262】
7.S2細胞により産生されたSNAP−RVF.Nのin vitro検出
上述のプロトコールに従って産生されたSNAP−RVF.N融合タンパク質を、感染ヒツジの血清中の抗RVF.N抗体を検出するための診断ツールとして用いた。
【0263】
これらの融合タンパク質を、市販の検出キット(BDSL製のRVF IgG検出キットおよびIdVet製のRVF multi−species)を用いて試験および比較した。
【0264】
試験は46のヒツジ血清で行った(なお、これらのヒツジはRVFワクチンで免疫化したものであった)。SNAP−RVF.N融合タンパク質をウェルの底に直接コーティングするか、またはビオチン化して、ストレプトアビジンをコーティングしたウェルに加えた。
【0265】
PBS中0.2μgの高純度組換え抗原SNAP−RVF.N(濃度:2μgタンパク質/ml)で4℃にて一晩直接コーティングしたマイクロ滴定96ウェルプラークを用いた直接的ELISA法により、抗RVF抗体を検出した。飽和後、希釈した血清をSNAP−RVF.Nとともにインキュベートした。ペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗IgGを二次抗体として用いた。ペルオキシダーゼ基質系を用いてELISAを行い、光学密度(OD)を450nmで測定した。サンプル血清は、そのODが非免疫血清のODの2倍であった場合に陽性とみなした。
【0266】
興味深いことに、これらの結果は、SNAP−RVF.N融合タンパク質が、ウェルに直接コーティングした場合には、市販のタンパク質と同じ感受性および特異性を与えることを示す(示されていない)。これらの結果は、それらのタンパク質をビオチン化した場合には再現しない。
【0267】
自然に免疫を獲得したウシから得られた血清でも同様の結果が得られた(データは示されていない)。
【0268】
これらの結果は、本発明の融合タンパク質が、生体サンプルにおいてウイルス感染または細菌感染を同定するための診断ツールとして使用可能であることを示す。
【0269】
8.マルチプレックスビーズに基づくイムノアッセイ
本発明において、体液中のアルボウイルスに対する抗体の迅速かつ同時検出のためにマルチプレックスビーズに基づくイムノアッセイが開発された。この系はxMAP技術(Luminex corporation)に基づくものであり、特異的ヒト免疫グロブリンの捕捉試薬として抗原をコーティングしたマイクロスフェアの混合物を使用する。異なるマイクロスフェアセット(Magplex、Luminex corporation)を精製MGMT融合タンパク質、すなわち、第3.3節に記載のSNAPタグを有するウイルス組換えタンパク質:sSNAP−DV1.EDIII、sSNAP−DV2.EDIII、sSNAP−DV3.EDIII、sSNAP−DV4.EDIII、sSNAP−WN.EDIII、sSNAP−JE.EDIII、sSNAP−USU.EDIII、sSNAP−TBE.EDIII、sSNAP−YF.EDIII、sSNAP−MVE.EDIII、sSNAP−ロシオ.EDIII、sSNAP−WSL.EDIII、sSNAP−ジカ.EDIII、SNAP−DV1ectoM、sSNAP−N.RVF、sSNAP−N.TOS、およびCHIK.sE2−SNAPと連結した。組換え抗原は、MGMTタンパク質の基質をリンカーとして用いてカルボキシルマイクロスフェア表面に共有結合させ(BG−PEG−NH2、New England Biolabs)、それにより、標準的アミンカップリング手順に比べて抗体捕捉効率を高めた。
【0270】
抗SNAPタグ抗体および特異的マウスモノクローナル抗体を用いた技術のバリデーションにより、カップリング効率を確認し、長期の抗原安定性(最大6ヶ月)を証明した。ビーズコーティングその後の抗体捕捉には任意のペプチドまたはポリペプチドが使用可能であるので、この適用はウイルス抗原に限定されない。
【0271】
参考文献
図1B
図2A-1】
図2A-2】
図3A-1】
図3A-2】
図4B-1】
図4B-2】
図7B-1】
図7B-2】
図10A
図10B
図1A
図2B
図2C
図2D
図3B
図4A
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6A-1】
図6A-2】
図6A-3】
図6B
図6C
図7A
図7C
図8A
図8B
図9
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B-1】
図13B-2】
図13B-3】
図13B-4】
図13B-5】
図13C
図14A
図14B
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]