特許第5940556号(P5940556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940556
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】エマルジョンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 3/08 20060101AFI20160616BHJP
   B01F 5/06 20060101ALI20160616BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20160616BHJP
   C07C 69/30 20060101ALI20160616BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20160616BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20160616BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20160616BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20160616BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20160616BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20160616BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20160616BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   B01F3/08 A
   B01F5/06
   B01J13/00 A
   C07C69/30
   A61K9/107
   A61K47/28
   A61K47/34
   A61K47/06
   A61K8/06
   A61K8/63
   A61K8/92
   A61K8/891
【請求項の数】13
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2013-546646(P2013-546646)
(86)(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公表番号】特表2014-507261(P2014-507261A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】EP2011072112
(87)【国際公開番号】WO2012089474
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年10月7日
(31)【優先権主張番号】10197187.7
(32)【優先日】2010年12月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590003065
【氏名又は名称】ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ペトルス・マルティヌス・マリア・ボンヘルス
(72)【発明者】
【氏名】ヘネリタ・サントス・リベイロ
(72)【発明者】
【氏名】グレーム・ニール・アーヴィング
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジョン・イーガン
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−098441(JP,A)
【文献】 特開2003−001080(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/089320(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/089322(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/091983(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/105323(WO,A1)
【文献】 特開昭58−208400(JP,A)
【文献】 米国特許第06004917(US,A)
【文献】 英国特許出願公開第02106407(GB,A)
【文献】 特開2008−194692(JP,A)
【文献】 特表平08−503936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 3/08
B01F 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を連続相とするエマルジョンの製造方法であって、
前記エマルジョンの分散相が親油性化合物を含み、前記分散相のザウタ平均粒径が1マイクロメートル未満であり、前記分散相の濃度が前記エマルジョンの少なくとも20質量%であり、
(a) 水と水中油型乳化剤を混合して水相を形成するステップと、
(b) 前記親油性化合物を液体の形態にして、親油性相を形成するステップと、
(c) ステップa)の前記水相とステップb)の前記親油性相を変形抑制ダイナミックミキサータイプまたはキャビティトランスファーミキサータイプの分布および分散混合装置で混合して、水を連続相とするエマルジョンを作製するステップと
を含み、前記ミキサーが、伸長流を液体組成物中で誘導、狭い間隔で並んだ相対的に移動可能な、少なくとも1つが中に一連の空洞を有する対向表面を含み、各表面上の前記空洞が、使用時に前記液体の流れの断面積が前記装置を通して少なくとも3倍連続的に増減するように配置される製造方法。
【請求項2】
ステップa)において、混合物の温度が最大で110℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップb)において、前記親油性化合物が、温度を上昇させて前記化合物を融解させることによって液体の形態にされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記親油性化合物が、レシチン、脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、フィトステロール、フィトスタノール、フィトステリル-脂肪酸エステル、フィトスタニル-脂肪酸エステル、ワックス、脂肪アルコール、カロテノイド、油溶性着色剤、油溶性ビタミン、油溶性香料、油溶性フレグランス、油溶性薬物、鉱油もしくは誘導体、ペトロラタムもしくは誘導体、またはシリコーン油もしくは誘導体、あるいはこれらの化合物の組合せを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記親油性化合物が、フィトステロール、カロテノイド、およびこれらの化合物の誘導体の群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)において、前記親油性化合物が非水性相と混合される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非水性相中の前記親油性化合物の濃度が、少なくとも5質量%である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
後続のステップにおいて、ステップc)の前記混合物が冷却される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記分散相の前記ザウタ平均粒径が500ナノメートル未満である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記分散相の前記濃度が、前記エマルジョンの少なくとも40質量%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップc)において、前記変形抑制ダイナミックミキサーまたはキャビティトランスファーミキサーが、距離(7)によって間隔が置かれた2つの対向表面(1、2)を含み、
第1の表面(1)は、少なくとも3つの空洞(3)を含み、前記空洞の少なくとも1つは、前記表面(1)に対して深さ(9)を有し、
第2の表面(2)は、少なくとも3つの空洞(4)を含み、前記空洞の少なくとも1つは、表面(2)に対して深さ(10)を有し、
前記装置を通過する間に利用可能な前記液体の流れの断面積が少なくとも3回連続的に増減し、
前記表面(1)は、2つの空洞の間で長さ(5)を有し、
前記表面(2)は、2つの空洞の間で長さ(6)を有し、
前記表面(1、2)は、対応する前記長さ(5、6)が重なって長さ(8)を有するスリットを作り、または重ならず、長さ(81)を作るように位置され、
前記空洞は、前記装置を通過する間に利用可能な前記液体の流れの前記断面積が少なくとも3倍前記空洞内で連続的に増大し、少なくとも3分の1に前記スリット内で減少するように配置され、
前記2つの表面(1、2)の間の前記距離(7)は、2マイクロメートル〜300マイクロメートルの間であり、
前記長さ(8)と前記2つの表面(1、2)の間の前記距離(7)との比が0〜250の範囲であり、
または前記長さ(81)と前記2つの表面(1、2)の間の前記距離(7)との比が0〜30の範囲である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ミキサーが200bar未満の圧力で動作する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記表面の一方が、1分間当たり1,000〜25,000回転の間の周波数で他方の表面に対して回転する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形抑制ダイナミックミキサー(Controlled Deformation Dynamic Mixer)またはキャビティトランスファーミキサー(Cavity Transfer Mixer)を使用した、エマルジョンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混合は、分布混合または分散混合と記述することができる。各相の離散領域を含む多相材料において、分布混合は各相の領域の相対的空間位置を変更しようとする一方、分散混合は各相の領域の径および径分布を変更する凝集力を抑えようとする。大部分のミキサーは分布混合または分散混合の組合せを利用するが、対象とする用途に応じて、そのバランスは変わることになる。例えば、ピーナッツおよびレーズンを混合するための機械は、混合対象のものを損傷しないように完全に分布混合になる一方、ブレンダー/ホモジナイザーは分散混合になる。
【0003】
様々なタイプのローター/ステーター型ミキサーが多数知られている。米国特許出願公開第2003/0139543号に開示されるものなどの撹拌反応器は、混合エレメントを内部に取り付けた容器を備え、機能において一般に分布混合型である。ローター-ステーター型ミキサーの他のタイプ(国際公開第2007/105323号に開示されるものなど)は、微細エマルジョンを形成するつもりで設計され、特性において分散混合型である。
【0004】
欧州特許出願公開第194 812号(A2)には、キャビティトランスファーミキサー(CTM)が開示されている。国際公開第96/20270号にも、対向表面を含み、表面にはそれぞれ、その中に一連の空洞が形成され、表面は相互に相対的に移動し、液体材料が表面間を通り、各表面の空洞を連続的に通過する経路に沿って流れる「キャビティトランスファーミキサー」が記載されている。空洞は、液体が表面間を流れるときせん断が液体に加えられるように当該表面上に配置されている。典型的な実施形態において、ミキサーは、外側スリーブおよびぴったり閉まる内側ドラムを備える。スリーブおよびドラムの対向表面には両方とも、空洞が重なり合って、曲がりくねった変化する流路を形成し、ドラムとスリーブが互いに対して回転するにつれて流路が変化するように、空洞が設けられている。このタイプのミキサーは、ミキサー作動時に、互いを通り越し、バルク流の方向を横切り、ミキサーを通り過ぎる向かい合った空洞を設けたステーターおよびローターエレメントを有する。このようなミキサーにおいては、主に分布混合が得られる。材料の流れに対して概ね垂直方向における表面の相対的運動によって、せん断が加えられる。上述する典型的な実施形態において、これは、ドラムとスリーブの相対的回転によって行われる。このようなデバイスにおいて、材料がデバイスを軸方向に下行するとき、流れの断面積は比較的わずかしか変化しない。一般に、流れの断面積は、この装置を通して3倍未満しか変わらない。
【0005】
国際公開第96/20270号には、以下、「変形抑制ダイナミックミキサー(Controlled Deformation Dynamic Mixer)」(CDDM)と呼ぶ新規ミキサーも記載されている。CTMと同様に、このタイプのミキサーは、ミキサー作動時に、互いを通り越し、バルク流の方向を横切り、ミキサーを通り過ぎる向かい合った空洞を設けたステーターおよびローターエレメントを有する。CDDMは、材料が伸長変形も受けるという点でCTMと区別される。伸長流および効率的な分散混合は、ミキサーを通して液体のバルク流の断面積がこの装置を通して少なくとも5倍連続的に増減するように配置された空洞を設けた対向表面を有することによって確実である。上述するCTMの実施形態と比べて、CDDMの空洞は、対向表面に沿って軸方向に流れる材料が強制的に細隙を通過させられ、空洞に沿ってかつ空洞間を流れるように、一般に軸方向に整列または若干オフセットしている。CDDMは、CTMの分布混合性能を分散混合性能と組み合わせたものである。したがって、CDDMは、分散混合が不可欠であるエマルジョンの液滴径の低減などの問題により適している。
【0006】
米国特許第6,468,578号(B1)には、脂肪連続相中水滴エマルジョンを作製するためのキャビティトランスファーミキサーの使用が開示されている。
【0007】
国際公開第2010/089320号(A1)、国際公開第2010/089322号(A1)、および国際公開第2010/091983号(A1)には、CDDMタイプまたはCTMタイプの特定のタイプの分布および分散混合装置であって、その中に空洞を有する2つの対向表面を備える混合装置が開示されている。これら特定のタイプを、エマルジョンの処理に使用することができる。
【0008】
国際公開第2010/105922号(A1)には、マイクロ流動化装置を使用することによって、乳化剤としてPET-POETポリマーを含有する水溶液中で水を連続相とする5%シリコーンワックスのエマルジョンを作製できることが開示されている。このマイクロ流動化装置は1,200barの高圧で作動して、エマルジョンをホモジナイズする。
【0009】
国際公開第96/28045号には、分布および分散混合帯を設けた、チューインガムを作製するためのミキサーが開示されている。
【0010】
米国特許出願公開第2010/220545号(A1)には、乳化に使用することができる、分布および分散作用を有するミキサーが開示されている。
【0011】
国際公開第2008/125380号(A1)には、最長の大きさが最も好ましくは2,000マイクロメートルである細長い結晶の形態で存在する植物ステロールを含む食用脂肪連続スプレッドが開示されている。
【0012】
国際公開第93/05768号および国際公開第00/67728号には、直径が10ナノメートル〜10マイクロメートルの固体脂質粒子が開示されている。これらは、水相中で脂質相を溶融し、その後高圧ホモジナイザーを使用してホモジナイズすることによって製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0139543号
【特許文献2】国際公開第2007/105323号
【特許文献3】欧州特許出願公開第194812号
【特許文献4】国際公開第96/20270号
【特許文献5】米国特許第6,468,578号
【特許文献6】国際公開第2010/089320号
【特許文献7】国際公開第2010/089322号
【特許文献8】国際公開第2010/091983号
【特許文献9】国際公開第2010/105922号
【特許文献10】国際公開第96/28045号
【特許文献11】米国特許出願公開第2010/220545号
【特許文献12】国際公開第2008/125380号
【特許文献13】国際公開第93/05768号
【特許文献14】国際公開第00/67728号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これらの開示内容には、比較的多量の分散相を有する濃縮された水中油型エマルジョンの製造についての記載はない。これは、食品(例えば、マーガリンまたは他のスプレッド)、パーソナルケア製品(例えば、スキンクリーム)、またはホームケア製品(例えば、液体洗濯用洗剤)、化粧品(例えば、口紅、アイ用およびリップ用製品などのメーキャップ用品)、および医薬品(例えば、標的とされたインビボでの送達のための貧可溶性親油性薬物のカプセル化)などの消費者製品の材料としてのこれらのエマルジョンの使用には特に重要となるはずである。油相に分散された植物ステロールをさらに含有する微細分散油相を含むエマルジョンを提供することは特に重要になるはずである。植物ステロールの植物油と水に対する溶解性は、特に室温で共に非常に低い。これらのエマルジョンを食品材料として使用すれば、ヒトにおいてLDL-コレステロールレベルを低下させることができる。LDL-コレステロール降下剤として有効であるためには、植物ステロールを含有する分散相は、可能な限り微細分散されているべきであり、さらに植物ステロールは結晶化しないことが好ましい。植物ステロールが結晶化する場合、インビボ(腸)でのバイオアクセシビリティは、結晶の大きい結晶サイズおよび形状のため、植物ステロールが非晶質であるときより低い。
【0015】
同様に、室温における植物油に対しても、水に対しても可溶性が非常に悪いカロテノイドを提供することが望まれている。カロテノイドは、インビボで抗酸化剤として働くことができ、さらにβ-カロテンはビタミンAの前駆体である。
【0016】
したがって、本発明の目的の1つは、非常に微細に分散された脂質相を有する水中油型エマルジョンの製造方法を提供すること、ならびに室温のオイルに対してかつ水に対して貧可溶性である比較的高濃度の親油性化合物を含むエマルジョンを提供することである。これらのエマルジョンは、食品、またはホームケア製品、またはパーソナルケア製品、または化粧品、または医薬品で使用することができる。
【0017】
さらに、本発明の目的は、記載のエマルジョンを低エネルギー入力および高スループットで調製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
今回、これらの目的の1つまたは複数は、親油性化合物を液体の形態にし、CDDMまたはCTMタイプのミキサーを使用して乳化し、ザウタ平均粒径を最大限1マイクロメートルにする方法で実現できると判断された。これによって、食品、ホームケア製品、パーソナルケア製品、化粧品、または医薬品で使用することができる高濃度の親油性化合物を含む親油性材料の微細分散相になる。
【0019】
さらに、CDDMまたはCTMタイプのミキサーを使用することによって、必要とされる圧力は比較的低いものの、安定な微細分散エマルジョンを作製することができる。既存の高圧ホモジナイザーに比べて、実現できる分散相の濃度は高く、必要とされる圧力は20倍まで低い。これによって、(高圧に耐えられる)装置の設計の材料仕様が重くなくなり、圧力を装置に加えるためのエネルギー消費が少なくなり、したがってより環境に優しい方法およびより少ない二酸化炭素排出量とされる。
【0020】
したがって、本発明は、水を連続相とするエマルジョンの製造方法であって、エマルジョンの分散相が親油性化合物を含み、分散相のザウタ平均粒径が1マイクロメートル未満であり、分散相の濃度がエマルジョンの少なくとも20質量%であり、
a) 水と水中油型乳化剤を混合して、水相を形成するステップと、
b) 親油性化合物を液体の形態にして、親油性相を形成するステップと、
c) ステップa)の水相とステップb)の親油性相を変形抑制ダイナミックミキサータイプまたはキャビティトランスファーミキサータイプの分布および分散混合装置で混合して、水を連続相とするエマルジョンを作製するステップと
を含み、ミキサーは、伸長流を液体組成物中で誘導するのに適しており、狭い間隔で並んだ相対的に移動可能な、少なくとも1つが中に一連の空洞を有する対向表面を含み、各表面上の空洞を、使用時に液体の流れの断面積が装置を通して少なくとも3倍連続的に増減するように配置される製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】キャビティトランスファーミキサー(CTM)の略図である;1:ステーター、2:環;3:ローター;下図は断面図である。
図2】変形抑制ダイナミックミキサー(CDDM)の略図である;1:ステーター、2:環;3:ローター;下図は断面図である。
図3】実施例1によるMCT油に分散している7%植物ステロール小滴の粒度分布である;CDDMでの流速20mL/s、様々な回転速度(0=0rpm、5=5,000rpm、12=12,000rpm、15=15,000rpm)。
図4】実施例1による2つの7%植物ステロール添加コロイド分散体(70%分散相を含む)の走査型電子顕微鏡画像である。A像(左図):流速22.9mL/s、速度8,250rpm;像幅約12マイクロメートル、バー幅1マイクロメートル。B像(右図):流速67.6mL/s、速度0rpm(静的);像幅約12マイクロメートル、バー幅1マイクロメートル。
図5】実施例1による植物ステロール添加コロイド分散体の走査型電子顕微鏡画像である;CDDM 流速22.9mL/s、速度8,250rpm。A像(左図);70%分散相、分散体に基づいて7質量%植物ステロール;像幅約12マイクロメートル、バー幅1マイクロメートル。B像(右図):10%分散相に希釈されたA像からの分散体;分散体に基づいて1質量%植物ステロール;像幅約60マイクロメートル、バー幅10マイクロメートル。
図6】実施例1による植物ステロール添加コロイド分散体(70%分散相を含む)の走査型電子顕微鏡画像;CDDM 流速22.9mL/s、速度0rpm(静的)。A像(左図):70%分散相、分散体に基づいて7質量%植物ステロール;像幅約60マイクロメートル、バー幅10マイクロメートル。B像(右図):10%分散相に希釈されたA像からの分散体;分散体に基づいて1質量%植物ステロール;像幅約60マイクロメートル、バー幅10マイクロメートル。
図7】実施例1による、CDDM流速20mL/sで製造された異なる2つの濃度におけるTween 20によって安定化された7質量%植物ステロール添加コロイド分散体の液滴径分布である;静的および動的プロセス;(0=0rpm、5=5,000rpm、8=8,000rpm、12=12,000rpm、15=15,000rpm);左像 7質量%Tween 20、および右像9質量%Tween 20。
図8】実施例1による、CDDM中、流速80mL/sおよび12,000rpmで製造された13質量%植物ステロール添加コロイド分散体(65%分散相を含む)の走査型電子顕微鏡画像である;像幅約6マイクロメートル(バー幅1マイクロメートル)。
図9】実施例2による、7質量%MCT油および3質量%植物ステロールを含む分散体の光学顕微鏡画像(左図)、または6質量%MCT油および4質量%植物ステロールを含む分散体の光学顕微鏡画像(右図)、バー幅10マイクロメートル。
図10】CDDM装置の好ましい実施形態の略図、断面図(好ましくは左から右へのバルク流の方向)である。
図11】CTM装置の好ましい実施形態の略図、断面図(好ましくは左から右へのバルク流の方向)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される科学技術用語はすべて、当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。
【0023】
別段の記述のない限り、百分率はすべて、質量百分率を指す。略語「wt%」または「%(w/w)」は、質量百分率を指す。
【0024】
本発明の文脈において、平均粒子径は、通常d3,2値として表され、別段の記載のない限り、ザウタ平均粒径である。ザウタ平均粒径は、対象となる粒子と同じ体積/表面積比を有する球体の直径である。また、d4,3値は体積加重平均粒径であり、これも本明細書で使用される。体積基準の粒径は、所与の粒子と同じ体積を有する球体の直径に匹敵する。
【0025】
多分散性、すなわち粒度分布の幅は、スパンによって決まる。
スパン=[90%積算径における粒子径]-[10%積算径における粒子径]/[50%積算径における粒子径]。
【0026】
スパンは、分布の広がりが狭いかそれとも広いか否かを示す無次元数である。小さいスパンは、径分布が狭いことを示唆する。
【0027】
範囲が記載されている場合、所与の範囲は記載の端点を含む。
【0028】
本発明の文脈において食用品または食品は、スプレッド、サラダドレッシング、乳製品、飲料、食事療法用食品、栄養補助食品、医薬組成物などを含めて食品を包含するが、これらに限定されない。製品は当技術分野において一般的な材料を含有することがあり、当技術分野において一般的な方法で作製することができる。
【0029】
本発明の文脈において、ホームケア製品は、家庭における硬い表面などの品目を洗浄するまたは皿や他のキッチンハードウェアなどの品目を洗浄するのに通常使用される製品であり、あるいは液体もしくは固体の形態の洗濯用洗剤(散剤、錠剤)とすることができ、または洗濯用柔軟剤とすることができる。このような製品の例は、キッチン、浴室、または便所用の液状またはゲル状クリーナー、および食器洗浄用液体である。ホームケア製品は、香料および/もしくは芳香を含むマイクロカプセル、または洗浄助剤を含有することができる。洗濯用洗剤または洗濯用柔軟剤の場合に、マイクロカプセルは香料または芳香を含有することができ、マイクロカプセルを洗濯プロセス時に衣類に被着させることができる。その後、マイクロカプセルは、衣類の装着中に香料および/もしくは芳香を放つことができ、または例えば衣類のアイロンかけ中に放出することができる。
【0030】
本発明の文脈において、パーソナルケア製品は、洗浄、衛生、および/または美容のために消費者が使用する製品である。本発明の文脈において、化粧品は、スキンクリーム、ボディーローション、シャンプー、ヘアコンディショナー、歯磨きペースト、消臭剤、ヘアスタイリング製品、パーソナル棒石けん、およびパーソナル液体石けんを包含するが、これらに限定されない。これらの製品の場合に、マイクロカプセルは香料および/もしくは芳香を含有することができ、または皮膚の健康および/もしくは美容にとって有益な例えば1つもしくは複数の化合物を含有することができる。
【0031】
キャビティトランスファーミキサー(CTM)
国際公開第96/20270号と同様に、CTMは、対向表面を含み、表面の少なくとも1つ、好ましくは両面が、その中に形成された一連の空洞を有し、表面が相互に相対的に移動し、液体材料が表面間を通り、各表面の空洞を連続的に通過する経路に沿って流れるミキサーと定義される。空洞は、液体が表面間を流れるときせん断が液体に加えられるように当該表面上に配置されている。空洞は、材料がミキサーを通過するとき、流れ有効断面積(effective cross sectional flow area)の変化が比較的小さくなるように、それぞれの表面に配置されている。このようなミキサーにおいては、主に分布混合が得られる。一般に、流れの断面積は、装置を通して3倍未満しか変わらない。表面間の材料の流れに対して概ね垂直方向における表面の相対的運動によって、せん断が加えられる。
【0032】
ここで、CTMを、「同心円筒」デバイスとして構成され、外側ステーター内にジャーナルされた内側ローターを含むCTMを通して、軸方向断面1つおよび横径方向断面4つを示す図1を参照することにより例示する。簡潔に言えば、軸方向断面は、時間に独立なローターおよびステーター空洞の相対的軸方向位置を示す一方、横断面(A-A、B-B、C-C、D-D)は、軸方向に材料流れの利用可能な断面積における軸方向変化を示す:
・ステーター空洞が、「ローター環」すなわちローター空洞の連続する環を分離する周方向に延びる環によって対向している位置におけるステーター空洞を通したA-A;
・ステーター空洞がローター空洞によって対向している位置におけるステーター空洞とローター空洞との間のB-B;
・ローター空洞が「ステーター環」すなわちステーター空洞の連続する環を分離する周方向に延びる環によって対向している位置におけるローター空洞を通したC-C;
・ローター空洞がステーター空洞によって対向している位置におけるローター空洞とステーター空洞との間のD-D。
【0033】
留意すべき重要な特徴は、材料がデバイスを軸方向に下行するとき、流れの断面積はわずかしか変化しないことである。
【0034】
変形抑制ダイナミックミキサー(CDDM)
国際公開第96/20270号と同様に、CDDMは、対向表面を含み、表面の少なくとも1つ、好ましくは両面が、その中に形成された一連の空洞を有し、表面が相互に相対的に移動し、液体材料が表面間を通り、各表面の空洞を連続的に通過する経路に沿って流れ、伸長変形および/またはせん断変形、好ましくは伸長変形とせん断変形の両方を受けるミキサーとして説明されることによってCTMと区別される。空洞は、表面間の材料の流れと概ね垂直な方向で、表面の相対的な移動によってせん断が加えられるように当該表面上に配置されている。せん断に加えて、著しい伸長流ならびに効率的な分布および分散混合は、対向表面と、装置を通して液体の流れの断面積が少なくとも5倍連続的に増減するように配置された、対向表面内の空洞とを有する装置を設けることによって確実になり得る。
【0035】
ここで、CDDMを、外側ステーター内にジャーナルされた内側ローターを含む「同心円筒」デバイスとして構成されたCDDMを通して、軸方向断面1つおよび横径方向断面4つを示す図2を参照することにより例示する。簡潔に言えば、軸方向断面は、時間に独立なローターおよびステーター空洞の相対的軸方向位置を示す一方、横断面(A-A、B-B、C-C、D-D)は、軸方向に材料流れの利用可能な断面積における軸方向変化を示す:
・ステーター空洞が、「ローター環」、すなわちローター空洞の連続する環を分離する周方向に延びる環によって対向している位置におけるステーター空洞を通したA-A;
・「ローター環」がステーター環によって対向している位置において形成される環を通したステーター空洞とローター空洞との間のB-B;
・ローター空洞が「ステーター環」、すなわちステーター空洞の連続する環を分離する周方向に延びる環によって対向している位置におけるローター空洞を通したC-C;
・ローター空洞がステーター空洞によって対向している位置におけるローター空洞とステーター空洞との間のD-D。
【0036】
材料は、「ローター環」と「ステーター環」との間(BB)、および対向するローター空洞とステーター空洞との間(D-D)に形成される環を軸方向に通過するので、明らかに流れの断面積の著しい変形がある。
【0037】
図1および図2を比較すると、CDDMは、ローターとステーターとの相対的位置、および結果として起こる流れの伸長成分の取り込みによってCTMと区別されることが理解される。したがって、CDDMは、CTMの分布混合性能を、複数の膨張-収縮静的ミキサーの分散混合性能と組み合わせる。
【0038】
エマルジョンの製造方法
本発明は、水を連続相とするエマルジョンの製造方法であって、エマルジョンの分散相が親油性化合物を含み、分散相のザウタ平均粒径が1マイクロメートル未満であり、分散相の濃度がエマルジョンの少なくとも20質量%であり、
a) 水と水中油型乳化剤を混合して、水相を形成するステップと、
b) 親油性化合物を液体の形態にして、親油性相を形成するステップと、
c) ステップa)の水相とステップb)の親油性相を変形抑制ダイナミックミキサータイプまたはキャビティトランスファーミキサータイプの分布および分散混合装置で混合して、水を連続相とするエマルジョンを作製するステップと
を含み、ミキサーは、伸長流を液体組成物中で誘導するのに適しており、狭い間隔で並んだ相対的に移動可能な、少なくとも1つが中に一連の空洞を有する対向表面を含み、各表面上の空洞は、使用時に液体の流れの断面積が装置を通して少なくとも3倍連続的に増減するように配置される製造方法を提供する。
【0039】
ステップa)において、混合物の温度は、最大で110℃であることが好ましい。温度を上昇させると、乳化剤の分散を改善するのに有用となり得る。さらに、高温では、混合されるすべての化合物が液体状態であるとき、その後の乳化を、より低い温度においてより効率的に実施することができる。このステップa)は、大気圧で実施されることが好ましい。好ましくは、温度は最大で100℃であり、より好適には、最大で95℃である。
【0040】
乳化剤は、水中で油を乳化するのに使用することができる任意の化合物とすることができる。好ましくは、乳化剤のHLB値は7超であり、好ましくは8〜18である。乳化剤のHLB値(親水性親油性バランス)は、乳化剤が親水性であるか親油性であるかの程度の尺度であり、水中油または油中水の乳化剤の乳化能力を決定する。このような乳化剤の例は、Tween(登録商標)20として商業的に公知であるポリオキシエチレン(20)モノラウリン酸ソルビタン、およびポリマーPET-POET(国際公開第2010/105922号(A1)に記載されているポリエチレンテレフタレート-コ-ポリオキシエチレンテレフタレート)である。「PET」は親油性であり、「POET」は疎水性である。PET-POETの化学構造は:
【0041】
【化1】
【0042】
である。
【0043】
他の好適な乳化剤には、7超のHLB値を有する糖エステル、または温度に敏感でない任意の親水性乳化剤が含まれる。
【0044】
ステップb)における親油性化合物は、天然起源に由来することが多い親油性材料であることが好ましいが、これらは、合成化合物であってもよい。
【0045】
ステップb)では、後続のステップc)において親油性相を細かく分散させることができるように、親油性化合物が液体の形態にされる。液体の形態にあるとき、ステップb)で形成される親油性相は、ステップc)の混合ステップにおいて分解して液滴になり、ステップa)の水相中に分散することになる。好ましくは、ステップb)において、親油性化合物は、温度を上昇させて化合物を融解させることによって液体の形態にされる。要求される温度は、特定の親油性化合物に依存し、好ましくは、ステップb)の温度は、最大で160℃、好ましくは最大で150℃、好ましくは最大で110℃、好ましくは最大で95℃である。
【0046】
好ましくは、親油性化合物は、レシチン、脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、フィトステロール、フィトスタノール、フィトステリル-脂肪酸エステル、フィトスタニル(phytostanyl)-脂肪酸エステル、ワックス、脂肪アルコール、カロテノイド、油溶性着色剤、油溶性ビタミン、油溶性香料、油溶性フレグランス、油溶性薬物、鉱油もしくは誘導体、ペトロラタムもしくは誘導体、またはシリコーン油もしくは誘導体、あるいはこれらの化合物の組合せを含む。これらの化合物の組合せも本発明の範囲内である。
【0047】
乳脂肪、または植物油もしくは藻類油などの油および脂肪は、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドの一般的な源である。脂肪可溶性ビタミンの例は、ビタミンA、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE、およびビタミンKである。これらのビタミンには、それぞれのビタミンとして機能するすべての化合物が含まれる。カロテノイドには、α-カロテン、β-カロテン、リコペン、カンタキサンチン、アスタキサンチン、ルテイン、およびゼアキサンチン、ならびにこれらのエステル体が含まれる。これらの化合物は、食品の成分として使用することができる。
【0048】
鉱油、ペトロラタム、およびシリコーン油、ならびにこれらの化合物の誘導体などの材料も、親油性化合物として本発明において使用することができる好適な化合物である。これらの化合物は、パーソナルケア製品、例えば、スキンクリームおよびボディローション、またはホームケア製品、例えば、洗濯洗剤組成物、特に液体洗濯洗剤組成物における成分として使用することができる。
【0049】
レシチン:植物起源(例えば、ダイズ)または動物起源(例えば、卵黄)に由来し得る混合物の一般用語であり、乳化剤として使用される。レシチンの中で最も重要な化合物は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、およびホスファチジルイノシトールである。市販のレシチン中には、遊離脂肪酸、トリグリセリド、ならびにモノ-およびジグリセリドも存在し得る。リン酸基および前記脂肪酸の性質により、レシチンの乳化特性が決まる。
【0050】
脂肪酸:本発明において適当な脂肪酸は、C3脂肪酸、およびより長鎖、好ましくは少なくともC12、最大で好ましくはC26の脂肪酸である。脂肪族末端は、飽和していても不飽和であってもよい。鎖は、非分枝であっても、ヒドロキシ、メチル基、またはエチル基などの分枝を有していてもよい。本発明において適当な脂肪酸は、最低3個の炭素原子および最大26個の炭素原子からなる。
【0051】
モノグリセリド:脂肪酸を上述した通りとすることができる、グリセロールと1つの脂肪酸とのエステル。
【0052】
ジグリセリド:脂肪酸を上述した通りとすることができる、グリセロールと2つの脂肪酸とのエステル。
【0053】
トリグリセリド:上述した3つの脂肪酸でエステル化されたグリセロール。脂肪酸は、飽和していても、単不飽和またはポリ不飽和であってもよい。本発明の文脈において、トリグリセリドは、食用の油および脂肪であると理解される。本明細書において、用語「油」は、溶液中で純粋であり、または化合物を含有する油および脂肪の総称として使用される。油は、懸濁液中で粒子も含有することができる。
【0054】
本明細書において、用語「脂肪」は、80%超のトリグリセリドを含有する化合物の総称として使用される。これらは、ジグリセリド、モノグリセリド、および遊離脂肪酸も含有することができる。共通語において、液体脂肪は、油と呼ばれることが多いが、本明細書では、用語の脂肪は、そのような液体脂肪の総称としても使用される。脂肪として、植物油(例えば:アランブラキア油、杏仁油、ラッカセイ油、アルニカ油、アルガン油、アボカド油、ババス油、バオバブ油、ブラックシード油、ブラックベリー種子油、ブラックカラント種子油、ブルーベリー種子油、ルリヂサ油、キンセンカ油、カメリナ油、ツバキ種子油、ヒマシ油、チェリーカーネルオイル、カカオバター、ヤシ油、コーン油、綿実油、月見草油、グレープフルーツ油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、麻実油、イリペバター、レモン種子油、ライム種子油、亜麻仁油、ククイナッツ油、マカダミア油、トウモロコシ油、マンゴーバター、メドウフォーム油、メロン種子油、モリンガ油、モーラバター、マスタード種子油、オリーブ油、オレンジ種子油、パーム油、パーム核油、パパイヤ種子油、パッションシードオイル、桃仁油、プラム油、ザクロ種子油、ケシ種子油、カボチャ種子油、菜種(もしくはアブラナ)油、レッドラズベリー種子油、米糠油、ローズヒップ油、サフラワー油、シーバックソーン油、ゴマ油、シアバター、ダイズ油、イチゴ種子油、ヒマワリ油、甘扁桃油、クルミ油、コムギ胚芽油);魚油(例えば:イワシ油、サバ油、ニシン油、タラ肝油、カキ油);動物油(例えば:バターもしくは共役リノール酸、ラードもしくはタロウ);またはこれらの任意の混合物もしくは断片が挙げられる。油および脂肪は、硬化、分留、化学的もしくは酵素的エステル交換、またはこれらのステップの組合せによって変性させることもできる。
【0055】
フィトステロール:植物中に天然に存在する植物化学物質であるステロイドアルコールの群。室温で、これらは、穏やかな、特徴的な匂いを伴った白色粉末であり、水に不溶性であり、アルコールに可溶性である。これらは、ヒトの血漿中のLDLコレステロールレベルを下げるのに使用することができる。
【0056】
フィトスタノール:フィトステロールと同様であり、植物中に天然に存在する植物化学物質であるステロイドアルコールの群。これらは、フィトステロールの硬化によっても得ることができる。
【0057】
フィトステリル-脂肪酸エステル:フィトステロールを脂肪酸とエステル化することによって修飾されたフィトステロール。
【0058】
フィトスタニル-脂肪酸エステル:フィトスタノールを脂肪酸とエステル化することによって修飾されたフィトスタノール。
【0059】
ワックス:ワックスは、以下の特徴的な特性を有する非グリセリド脂質物質である:通常の周囲温度で可塑性(可鍛性);約45℃を超える融点;融解されるとき比較的低粘度(多くのプラスチックと異なる);水に不溶性であるが一部の有機溶媒に可溶性;疎水性。ワックスは、天然であっても人工であってもよいが、天然ワックスが好適である。蜜蝋、キャンデリラおよびカルナバ(植物ワックス)、いぼた蝋(Chinese wax)、エピクチクラワックス、日本蝋、ホホバ油、ラノリンまたはウォールワックス(woll wax)、モンタンワックス、オーリキュリーワックス、パラフィン(ミネラルワックス)、ワセリン、レタモワックス(retamo wax)、米糠ワックス、シェラックワックス、鯨蝋、サトウキビワックスは、天然に発生する、一般に見られるワックスである。同様の特性を呈するいくつかの人工材料も、ワックスまたはワックス状のものとして記述される。化学的に言えば、ワックスは、エチレングリコール(エタン-1,2-ジオール)と2つの脂肪酸とのエステルとすることができ、グリセロール(プロパン-1,2,3-トリオール)と3つの脂肪酸とのエステルである脂肪と対照的である。これは、脂肪アルコールと脂肪酸、アルカン、エーテル、またはエステルとの組合せとすることもできる。好適なワックスは、キャンデリラ、カルナバワックス、シェラックワックス、もしくは蜜蝋、もしくはシリコーンワックス、またはこれらの合成均等物から選ばれる1つまたは複数のワックスである。パラフィン系合成ワックスも本発明の範囲内である。ワックスとして、ポリエチレンワックス、重合α-オレフィン、化学修飾されたワックス、すなわち通常エステル化された、または鹸化された置換アミドワックスも挙げることができる。
【0060】
最も好適には、親油性化合物は、フィトステロール、カロテノイド、およびこれらの化合物の誘導体の群から選択される。これらの化合物の混合物も本発明の範囲内である。これらの化合物は、消費される場合、栄養の有益性を有するので、食品の成分であることに特に興味が持たれる。フィトステロールは、消費されるときのLDLコレステロール低下効果で公知の化合物である。
【0061】
用語のフィトステロールおよび植物ステロールは、同義であるとみなされ、これらは、「ステロール」と呼ばれる場合もある。フィトステロールは、4-デスメチルステロール、4-モノメチルステロール、および4,4'-ジメチルステロールである3つの群に分類することができる。油中では、これらは、遊離ステロール、および脂肪酸のステロールエステルとして主に存在するが、ステロールグルコシドおよびアシル化ステロールグルコシドも存在する。3つの主要なフィトステロール、すなわちβ-シトステロール、スチグマステロール、およびカンペステロールが存在する。
【0062】
それぞれの5α-飽和誘導体(「スタノール」)、例えば、シトスタノール、カンペスタノール、およびエルゴスタノール、ならびにこれらの誘導体なども、用語フィトステロールの中に包含される。
【0063】
好ましくは、フィトステロールは、β-シトステロール、β-シトスタノール、カンペステロール、カンペスタノール、スチグマステロール、ブラシカステロール、ブラシカスタノール、またはこれらの混合物を含む群から選択される。フィトステロールの適当な源は、例えば、ダイズまたはトールオイルに由来する。
【0064】
フィトステロールは、脂肪中での溶解度が低く、水に非混和性であるためにその遊離形態で食品中に配合することが困難であり、これは、芳しくない官能特性(organoleptic properties)、例えば、ザラザラする口当たりを有する食品をもたらす場合がある。このことは、フィトステロールと脂肪酸とのエステル化によって先行技術において部分的に緩和されているが、追加の処理ステップを必要とし、したがってコストを増大させる。非常に小さいフィトステロール粒子を使用することによって、フィトステロールの官能特性に対する悪影響をある程度軽減することが可能となり得ることも文献に記載されている。一般に、このような粒子のサイズは、数十ミクロンの程度であるが、1ミクロンを超える粒径は、胃腸管内で十分にバイオアクセシブルでない。さらに、エマルジョン中の官能特性に対するフィトステロールの負の影響は、フィトステロールを乳化剤で乳化することによってある程度緩和され得ることが文献に記載されている。
【0065】
本発明の文脈において、用語フィトステロールは、別段の指定のない限り、遊離フィトステロール、すなわち、非エステル化フィトステロールを指す。
【0066】
ステップb)において、親油性化合物は、非水性相と混合されることが好ましい。この混合によって、親油性化合物は、非水性相中に溶解することによって液体の形態になる。このステップは、混合物の温度が、最大で160℃、好ましくは最大で150℃、好ましくは最大で110℃、好ましくは最大で95℃の温度に上昇している間に実施されることが好ましい。
【0067】
「非水性相」は、この文脈では、周囲条件(約20℃の温度、大気圧)での液体に関連づけることができ、この場合、1秒当たり1〜1秒当たり500の範囲のせん断速度γ(ガンマ)で、貯蔵弾性率G'より大きい損失弾性率G''を有することによって判定される場合に、前記液体は流れる傾向を有する。非水性相は、室温で固体であり、融解することによって液体にされてもよい。非水性の特徴は、周囲条件下で水に10質量%を超えて溶解することができず、好ましくは5質量%未満、好ましくは1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、好ましくは0.2質量%未満溶解することができる物質として定義される。
【0068】
非水性相は、植物油、例えば、ヒマワリ油、パーム油、オリーブ油、菜種油、もしくは任意の他の適当な油、または油の組合せ、あるいはワックス(例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、または先に本明細書で記載した他のワックス)を含むことが好ましい。油は、室温で液体であってもよく、または代わりに室温で固体であってもよく、この場合、油は、温度を上昇させることによって最初に融解されるべきである。動物起源の脂肪または油、例えば、魚油、乳脂肪、ラード、またはタロウなども同様に使用することができる。ステップb)から得られるこのような植物油、または動物油、または藻類油を、食品の成分として使用することができる。
【0069】
任意選択の非水性相は、鉱油、ペトロラタム、およびシリコーン油、ならびにこれらの化合物の誘導体、ならびにこれらの組合せなどの材料から選ぶこともできる。その場合、ステップb)から得られる構造化された非水性相を、ホームケア製品またはパーソナルケア製品の成分として使用することができる。
【0070】
好ましくは、非水性相中の親油性化合物の濃度は、少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%である。親油性化合物は、カロテノイドおよびフィトステロール(例えば、室温における植物油中)などの場合において、非水性相中で貧可溶性である場合があるが、非水性相中のこのような高濃度の親油性化合物を、本発明の方法において使用することができる。濃度が高いということは、最終エマルジョンが非水性相中で高い量の親油性化合物を含有することになり、この非水性相は、液滴サイズがステップc)の後で非常に小さいので、コロイド分散物として分散されるという利点を有する。親油性化合物は、非水性相と混合される際に結晶形態であってもよい。
【0071】
親油性化合物を液体中に溶解させると、親油性化合物は非晶形になる。親油性化合物の濃度は、乳化後およびエマルジョンの冷却後に分散相が過飽和となるほど高くてもよい。分散相の液滴サイズが小さいので、疎水性化合物は、非晶質状態で残ることができ、結晶化しないか、限定的にのみ結晶化する。親油性化合物が液体状態または準安定状態で残ることさえ起こり得る。結晶化が低いことは、液滴が安定なままであることを意味し、その理由は、さもなければ結晶が成長する場合があり、油滴と連続水相との界面に突き刺さり、干渉する針状晶を形成し、液滴を壊す場合があるためである。したがって、本発明による方法は、エマルジョンの安定性を改善するだけでなく、結晶性でない親油性化合物を分散させる。
【0072】
フィトステロールの場合では、非晶質フィトステロールは、結晶化フィトステロールより腸管内でミセル中に容易に組み込まれる。ミセルの一部として、フィトステロールの機能は、血漿へのLDLコレステロールの吸着および脱離に影響を与え、血漿中のLDLコレステロールレベルを低下させることである。したがって、本発明の方法の利点の1つは、ステロールが非水性相と混合され、その後乳化されるとき、非晶質相は、結晶化ステロールと比較して、バイオアクセシビリティーおよび/またはバイオアベイラビリティーを改善することができることである。
【0073】
ステップc)は、ステップa)の水相とステップb)の親油性相を混合した後に得られる温度で実施されることが好ましい。ステップc)の前に、ステップc)の乳化を改善するために、プレエマルジョンを作製して水相と親油性相とを混合することができる。この予混合は、混合物を液体に保つために温度制御下で実施することができる。この任意選択の予混合ステップ中の温度は、好ましくは最大で110℃、好ましくは最大で100℃(大気圧のとき)、好ましくは最大で95℃である。ステップc)における乳化の温度を制御することによって、ステップa)の水相およびステップb)の親油性相が液体のままであることを保証することができる。通常、ステップc)における混合は、ステップa)とb)からの予混合物の温度で実施されることになる。通常、乳化ステップの間、混合物の温度は、混合プロセスにエネルギーが入力されるために低下しない。したがって、ステップc)から出てくるエマルジョンの温度は、上昇する場合がある。
【0074】
ステップc)から得られるエマルジョンは、食品、またはパーソナルケア製品、またはホームケア製品、または化粧品、または医薬品の成分として使用することができる。その場合では、ステップc)のエマルジョンは、このような製品の他の成分のいずれとも接触させることができる。その後、このような製品の通常の調製プロセスを実施することができる。ステップc)のエマルジョンを使用する前に、ステップc)の混合物を冷却することができる。この任意選択の冷却は、任意の適当な方法を使用して行うことができる。
【0075】
親油性化合物が非水性液体中に取り込まれるために、分散相液滴は、特に、ステップc)から得られるエマルジョンが冷却される場合、ステップc)の後に固体になる場合がある。その時、本発明による方法は、親油性化合物が非水性相中にカプセル化されるカプセル化プロセスであるとみなすことができる。したがって、本発明による方法は、好ましくは、親油性化合物をカプセル化する方法も提供する。
【0076】
ステップc)の後に得られる分散相のザウタ平均粒径は、1マイクロメートル未満である。分散相のザウタ平均粒径は、500ナノメートル未満であることが好ましい。さらにより好適には、分散相のザウタ平均粒径は、400ナノメートル未満であり、より好適には300ナノメートル未満である。好ましくは、分散相のザウタ平均粒径は、少なくとも100ナノメートル、より好適には少なくとも150ナノメートルである。分散相の平均サイズがこれらの値ほど小さいとき、分散した液滴のサイズは可視光の波長より小さいので、エマルジョンは透明になり得る。この特性は、以前に達成できなかった特性を伴った、消費者にとって興味深い製品を配合するのに使用することができる。
【0077】
ステップc)から得られるエマルジョン中の分散相の濃度は、エマルジョンの少なくとも20質量%である。本発明による方法の利点の1つは、得ることができる分散相の濃度が高いことである。特に、高圧ホモジナイザーによって製造されるエマルジョンと比較した場合。好ましくは、分散相の濃度は、エマルジョンの少なくとも40質量%、好ましくは、エマルジョンの少なくとも50%である。好ましくは、分散相は、エマルジョンの少なくとも60質量%を占める。好ましくは、エマルジョンは、エマルジョンの最大で95質量%の分散相、好ましくは最大で85質量%、好ましくは最大で75質量%を含有する。このような高度に分散したエマルジョンは、食品、またはパーソナルケア製品、またはホームケア製品、または化粧品、または医薬品中に使用される場合、比較的少量のエマルジョンのみが製品を配合するのに必要とされるという利点を有する。
【0078】
濃縮された水を連続相とするエマルジョン(高い分散相濃度、および非水性相中の高濃度の親油性化合物の両方)を製造する別の利点は、例えば、高圧ホモジナイザーで処理されるより希薄なエマルジョンと比較した場合、水相および親油性相を加熱するのに必要とされるエネルギーが低減されることである。これは、水と親油性化合物と非水性相との間の熱容量の大きな差異に起因する。
【0079】
CDDM装置および/またはCTM装置
ステップc)において、水を連続相とするエマルジョンが、変形抑制ダイナミックミキサータイプまたはキャビティトランスファーミキサータイプの分布および分散混合装置で、ステップa)の水相とステップb)の親油性相とを混合することによって調製され、ここでミキサーは、伸長流を液体組成物中で誘導するのに適しており、狭い間隔で並んだ相対的に移動可能な、少なくとも1つが中に一連の空洞を有する対向表面を含み、各表面上の空洞は、使用時に液体の流れの断面積が装置を通して少なくとも3倍連続的に増減するように配置される。
【0080】
CTMまたはCDDMの動作を一般に理解する目的で、国際公開第96/20270号の開示が参照により本明細書に組み込まれている。分布混合の領域(流路が広い場合)は、液体のバルク流に垂直な方向で互いに横断するCTM様空洞を備える。分布混合のこれらの領域同士間は、流路がより狭く、流れがより伸張的である領域である。本発明による方法で使用されるミキサーが、並置が、配置がCTM様であるようになっている1つまたは複数の領域、および配置がCDDM様である1つまたは複数の領域を備えることが可能である。CDDM装置は、本発明による方法で使用されることが好ましい。
【0081】
好適な実施形態では、CDDM装置またはCTM装置は、以下によって記述することができる。図10および図11を参照すると、好ましくは、CDDMまたはCTM装置は、距離7によって間隔が置かれた2つの対向する表面1、2を備え、
第1の表面1は、少なくとも3つの空洞3を含み、空洞の少なくとも1つは、表面1に対して深さ9を有し、
第2の表面2は、少なくとも3つの空洞4を含み、空洞の少なくとも1つは、表面2に対して深さ10を有し、
装置を通過する間に利用可能な液体の流れの断面積が少なくとも3回連続的に増減し、
表面1は、2つの空洞の間で長さ5を有し、
表面2は、2つの空洞の間で長さ6を有し、
表面1、2は、対応する長さ5、6が重なって長さ8を有するスリットを作り、または重ならず、長さ81を作るように位置され、
空洞は、装置を通過する間に利用可能な液体の流れの断面積が少なくとも3倍空洞内で連続的に増大し、少なくとも3分の1にスリット内で減少するように配置され、
2つの表面1、2の間の距離7は、2マイクロメートル〜300マイクロメートルの間であり、
長さ8と2つの表面1、2の間の距離7との比が0〜250の範囲であり、
または長さ81と2つの表面1、2の間の距離7との比が0〜30の範囲である。
【0082】
図10および図11を参照すると、CTMおよびCDDMと同様に、混合装置についていくつかの可能な構成が存在する。1つの好適な組合せでは、対向表面1、2は円筒形である。このような構成では、装置は一般に、円筒形ドラムおよび同軸スリーブを備える。対向表面1、2は、ドラムの外表面およびスリーブの内表面によって規定される。しかし、対向表面が円形またはディスク形状である代替の構成が存在する。構成のこれらの2つの両極端の間は、対向表面が円錐形または円錐台形(frusto-conical)であるものである。非円筒形の実施形態は、ミキサーを通る流れの異なる部分におけるせん断のさらなるバリエーションを可能にする。
【0083】
対向表面1、2が最も狭い間隔で並んだ領域は、ミキサー内のせん断速度が最高になる傾向がある領域である。対向表面1、2の間の表面同士間のスリット7が、長さ8または81と合わさってこの領域を形成する。高せん断は、電力消費および加熱の一因となる。これは、ミキサーの対向する表面が、約50マイクロメートル未満のギャップによって間隔が置かれている場合に特に当てはまる。有利には、高せん断領域を相対的に短い領域に閉じ込めることは、特にCTM様領域において、対向表面が相対的に広く相隔たっている場合に、電力消費および加熱作用を低減することができることを意味する。
【0084】
したがって、良好な混合が得られる一方で、装置に対する圧力低下を可能な限り小さく保つように装置を設計することができる。以下で説明するように装置の様々な部品の寸法を調整することによって、設計を改変することができる。
【0085】
対応する表面同士間の距離7は、好ましくは2マイクロメートル〜300マイクロメートルであり、これは、スリットの高さに対応する。好ましくは、距離7は、3マイクロメートル〜200マイクロメートルの間、好ましくは5マイクロメートル〜150マイクロメートルの間、好ましくは5マイクロメートル〜100マイクロメートルの間、好ましくは5マイクロメートル〜80マイクロメートルの間、好ましくは5〜60マイクロメートルの間、好ましくは5マイクロメートル〜40マイクロメートルの間である。より好ましくは、距離7は、8マイクロメートル〜40マイクロメートルの間、より好ましくは8マイクロメートル〜30マイクロメートルの間、より好ましくは10マイクロメートル〜30マイクロメートルの間、より好ましくは10マイクロメートル〜25マイクロメートルの間、より好ましくは15マイクロメートル〜25マイクロメートルの間である。
【0086】
スリット7の実際の高さは、装置の寸法、および必要とされる流量に依存し、当業者は、装置内のせん断速度が装置のサイズに関係なく相対的に一定のままであるように装置を設計する方法が分かる。
【0087】
それぞれが少なくとも3つの空洞3、4を含む表面1および2は、混合される2つの流体が流れるための、表面同士間の体積を作る。表面内の空洞は、流れに利用可能な表面積を有効に増大させる。空洞が存在するために、表面1と2の間の流れのための小さい範囲は、高さ7を有するスリットとみなすことができる。表面1内の2つの空洞の間の距離5、および表面2内の2つの空洞の間の距離6、およびこれらの対応する部分の相対的な位置により、スリットの最大長さが決まる。
【0088】
好ましくは、ステップa)の水相をステップb)の親油性相と混合するための体積を一緒に形成する、空洞3、4を有する2つの表面1、2は、表面の対応する長さ5、6(スリット重なり部分を作る)が、表面同士間の距離7の最大で250倍大きい、スリットの長さ8を作る(バルク流の方向に)ように位置されている。好ましくは、長さ8と2つの表面1、2の間の距離7との比は、0〜100、好ましくは0〜10、好ましくは0〜5の範囲である。あるいは長さ81は、好ましくは最大で600マイクロメートルである。
【0089】
好ましくは、かつ代わりに、表面1、2は、重なりがまったく作られないが、その場合、長さ81が作られるように位置されている。長さ81と2つの表面1、2の間の距離7との比は、好ましくは0〜30の範囲である。その場合、表面の対応する部分同士間で重なりはまったくなく、「負の重なり」と呼ぶことができるものでスリットが作られる。この「負の重なり」は、2つの対応する表面1と2の間の0に近い距離7の可能性に適応する。好ましくは、長さ81は、長さ81と2つの表面1、2の間の距離7との比が0〜15、より好適には0〜10、より好ましくは0〜5、最も好ましくは0〜2の範囲であるようになっている。
【0090】
バルク流の方向における対向表面の通常の分離のこのバリエーションのさらなる有益性は、特に、短い滞留時間とともに、高せん断の相対的に小さい領域を有することによって、ミキサーに沿った圧力低下を、混合性能を損なうことなく低減することができることである。
【0091】
表面1、2の対応する部分同士間の重なりが小さいことにより、より長い重なりを有し、したがってやはりより高い圧力を必要とする装置と比較して、微細な分散を作るのに必要とされる圧力が相対的に小さくなる。通常、スリットの距離が長いほど(またはキャピラリーがより長いほど)、分散相の液滴がより小さくなる。今では、本発明者らは、短いキャピラリーで、またはさらにはキャピラリーなしで、より長い重なりと比較して、分散相の液滴が小さいままである一方、必要とされる圧力は相対的に低いことを見出した。例えば、高圧ホモジナイザーは、最大1,600barまたはさらにより高い圧力で動作することができる。好ましくは、本発明によるミキサーは、200bar未満、好ましくは80bar未満、好ましくは60bar未満、好ましくは40bar未満、最も好適には30bar未満の圧力で動作する。これらの相対的に低い圧力で、良好な混合プロセスが得られる。
【0092】
相対的に低い圧力の追加の利点は、圧力を印加するためのエネルギー消費量が、1マイクロメートル未満のサイズを有する分散相を実現するのに1,000bar以上の圧力を使用する従来のデバイスよりはるかに低いことである。さらに、高圧に耐えるための装置を設計するのに、それほど厳格でない材料基準が要求され、その結果、原料を節約することができる。
【0093】
図10および図11を参照すると、流体は、好ましくは装置を通って左から右に流れる。スリットにより、流れは加速され、一方スリットの出口では、流体は、流れの表面積の増大および発生する膨張のために減速する。加速および減速により、分散相の大きい液滴が壊されて、連続相中に細かく分散した液滴が作られる。すでに小さい液滴は、相対的にそのままで残る。空洞内の流れは、分散相の液滴が最終的に連続相中で均等に分布した状態になるようになっている。
【0094】
装置を通過する間に利用可能な液体の流れの断面積は、少なくとも3倍連続的に増減し、こうした通過により、2つの流体が有効に混合される。これは、空洞内の液体の流れの断面積が、スリット内の液体の流れの断面積より少なくとも3倍大きいことを意味する。これは、長さ11と7の間の比に関係する。好ましくは、流れの断面積は、装置を通過する間に利用可能な液体の流れの断面積が、少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、好ましくは少なくとも25倍、好ましくは少なくとも50倍、最大100〜400倍の好適な値で連続的に増減するように設計される。流体の流れの断面表面積は、第1の表面1内の空洞3の深さ9、および第2の表面2内の空洞4の深さ10によって決まる。全断面積は、反対表面内の2つの対応する空洞の底部同士間の長さ11によって決まる。
【0095】
表面1、2はそれぞれ、少なくとも3つの空洞3、4を含む。その場合、流れは、通過する間に少なくも3回拡張し、流れは、通過の間に少なくとも3つのスリットを通過する。好ましくは、装置を通過する間に利用可能な液体の流れの断面積は、4〜8回連続的に増減する。これは、通過中の流れは、4〜8の間のスリットおよび空洞の存在を経験することを意味する。
【0096】
空洞3の形状は、任意の適当な形をとることができ、例えば、断面は、矩形でなくてもよいが、例えば、台形、または平行四辺形、または隅が丸められた矩形の形状をとることができる。上記から見て、空洞は、矩形、正方形、もしくは円形、または任意の他の適当な形状であり得る。任意の空洞の配置、および空洞の数、および空洞のサイズが、本発明の範囲内となり得る。
【0097】
装置は、静的モード(回転なし)、および動的モード(回転あり)の両方で動作することができる。その場合、好ましくは表面の一方は、1分間当たり10〜40,000回転の間、好ましくは1分間当たり20〜35,000回転の間、より好ましくは1分間当たり1,000〜25,000回転の間の周波数で他方の表面に対して回転することができる。
【0098】
一般に、回転により混合プロセスが改善され、より小さい分散相液滴が作られる。静的な稼動は、混合に必要とされるエネルギーがより少ないという利点を有する。回転のないデバイスの稼働は、流体の非常に効率的で有効な混合をもたらす。回転なしで、高圧または回転のためのエネルギーの使用の必要なく、同様の分散相サイズを得ることができる。一方、高い周波数で回転させると、エマルジョンを作るのに2つの流体が混合される場合に、分散相の非常に細かく分散した液滴をもたらすことができる。
【0099】
公知のCTMおよびCDDMの追加の特徴を、本明細書に記載されるミキサーに組み込むことができる。例えば、対向表面の一方または両方に、これを加熱または冷却するための手段を備えることができる。対向表面内に空洞が備わっている場合、これらは、せん断条件をさらに変更するために、ミキサーの様々な部分に様々な幾何学的配置を有することができる。
【0100】
好適な一例では、本発明で使用されるこのようなCDDM装置の寸法は、2つの表面の間の距離7が10〜20マイクロメートルの間であり、かつ/またはスリット8の長さが、最大で2ミリメートル、例えば、80マイクロメートル、または20マイクロメートル、またはさらには0マイクロメートルであるものである。合わせたスリット8の長さと空洞17、18の長さは、最大で10ミリメートルであり、かつ/または空洞9、10の深さは最大で2ミリメートルである。その場合、好ましくは、外表面の内径は、20〜30ミリメートルの間、好ましくは約25ミリメートルである。その場合の装置の全長は、7〜13センチメートルの間、好ましくは約10センチメートルである。この長さは、これが、流体が混合されるゾーンであることを意味する。このような好適な装置の回転速度は、好ましくは0(静的)、またはより好適には代わりに1分当たり5,000〜25,000回転である。
【0101】
液体の流れの面積の形状は、様々な形をとることができ、対向表面の形状に自然に依存する。表面が平らである場合、流れの断面積は、矩形とすることができる。2つの対向表面は、円形、例えば、円筒パイプの中心に位置した円筒形ローターとすることもでき、ここで、円筒形ローターの外側は1つの表面を形成し、円筒パイプの内表面は他方の表面を形成する。2つの対向表面の間の円環は、液体の流れに利用可能である。
【0102】
本発明による方法によって得られるエマルジョン
本発明は、本発明による方法によって得られる、水を連続相とするエマルジョンも提供する。このようなエマルジョンは、親油性化合物を含む分散相を含み、分散相のザウタ平均粒径は、1マイクロメートル未満であり、分散相の濃度は、エマルジョンの少なくとも20質量%である。
【0103】
本発明の文脈において先に本明細書で開示した好適な態様は、変更すべきところは変更して、本発明のこのさらなる態様にも適用可能である。
【0104】
好ましくは、親油性化合物は、レシチン、脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、フィトステロール、フィトスタノール、フィトステリル-脂肪酸エステル、フィトスタニル-脂肪酸エステル、ワックス、脂肪アルコール、カロテノイド、油溶性着色剤、油溶性ビタミン、油溶性香料、油溶性フレグランス、鉱油もしくは誘導体、ペトロラタムもしくは誘導体、またはシリコーン油もしくは誘導体、あるいはこれらの化合物の組合せを含む。より好適には、親油性化合物は、フィトステロール、カロテノイド、およびこれらの化合物の誘導体の群から選択される。これらの化合物の混合物も、本発明の範囲内である。
【0105】
好ましくは、親油性化合物は、非水性相と混合され、これらは一緒に、エマルジョンの分散相を形成する。好ましくは、非水性相は、植物油、例えば、ヒマワリ油、パーム油、オリーブ油、菜種油、もしくは任意の他の適当な油、または油の組合せを含む。油は、室温で液体であってもよく、または代わりに室温で固体であってもよく、この場合、油は、温度を上昇させることによって最初に融解されるべきである。動物起源の脂肪または油、例えば、魚油、乳脂肪、ラード、またはタロウなども同様に使用することができる。ステップb)から得られるこのような植物油または動物油を、食品の成分として使用することができる。
【0106】
任意選択の非水性相は、鉱油、ペトロラタム、およびシリコーン油、ならびにこれらの化合物の誘導体、ならびにこれらの組合せなどの材料から選ぶこともできる。
【0107】
好ましくは、非水性相中の親油性化合物の濃度は、少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%である。
【0108】
分散相のザウタ平均粒径は、1マイクロメートル未満、好ましくは500ナノメートル未満である。さらにより好適には、分散相のザウタ平均粒径は、400ナノメートル未満、より好適には、300ナノメートル未満である。
【0109】
ステップc)から得られるエマルジョンの分散相の濃度は、エマルジョンの少なくとも20質量%である。好ましくは、分散相の濃度は、エマルジョンの少なくとも40質量%、好ましくは、エマルジョンの少なくとも50%である。好ましくは、分散相は、エマルジョンの少なくとも60質量%を占める。
【0110】
主に好適には、本発明による方法によって得られる、水を連続相とするエマルジョンは、フィトステロールを含む分散相を含み、分散相のザウタ平均粒径は、1マイクロメートル未満であり、分散相の濃度は、エマルジョンの少なくとも20質量%である。フィトステロールは、非水性相中に分散していることが好ましい。好ましくは、非水性相は、植物油、例えば、ヒマワリ油、パーム油、オリーブ油、菜種油、もしくは任意の他の適当な油、または油の組合せを含む。動物起源の脂肪または油、例えば、魚油、乳脂肪、ラード、またはタロウなども同様に使用することができる。好ましくは、非水性相中のフィトステロールの濃度は、少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%である。好ましくは、分散相のザウタ平均粒径は、500ナノメートル未満、好ましくは400ナノメートル未満、より好適には300ナノメートル未満である。好ましくは、分散相の濃度は、エマルジョンの少なくとも40質量%、好ましくはエマルジョンの少なくとも60%である。好ましくは、エマルジョンの質量に基づくフィトステロールの全濃度は、エマルジョンの5〜20質量%の間である。
【0111】
本発明は、本発明の第1の態様によるエマルジョンを含む食品、またはパーソナルケア製品、またはホームケア製品、または化粧品、または医薬品も提供する。本発明による方法によって得られるエマルジョンは、そのまま、あるいは油中水型エマルジョンもしくは水中油型エマルジョンなどの食品の成分、またはスキンクリームなどのパーソナルケア製品として、あるいは液体洗濯洗剤などのホームケア製品中の成分として使用することができる。これらのパーソナルケア製品は、水中油型エマルジョンであってもよい。二重エマルジョンおよび多重エマルジョン(油中水中油型および水中油中水型エマルジョンなど)も、本発明の範囲内であるエマルジョンである。例えば、水を連続相とするエマルジョンを使用して油中水中油型エマルジョンを作ることができ、本発明による方法のステップc)から得られる、水を連続相とするエマルジョンは、連続油相中で乳化することができる。
【0112】
食品の場合では、非水性相は、脂質相、例えば、水中油型エマルジョンを形成するための水相中に分散した乳脂肪またはヒマワリ油の液滴とすることができる。水中油型エマルジョンの例は、ドレッシングおよびマヨネーズタイプ製品、ディリースプレッド、ならびにボディローションおよびスキンクリームである。乳飲料、例えば、ヨーグルト飲料またはミルクなども、これらが無脂肪である場合、水中油型エマルジョンである。油中水型エマルジョン、例えば、マーガリン、バター、および他のスプレッドなどの場合では、脂質相を、適用可能な場合、連続植物油相またはバター脂肪相であるとみなすことができる。
【0113】
パーソナルケア製品またはホームケア製品の場合では、非水性相は、鉱油、ペトロラタム、およびシリコーン油、ならびにこれらの化合物の誘導体、ならびにこれらの組合せなどの材料から選ぶことができる。
【0114】
このような製品中の非水性相の量は、製品に応じて、製品の1質量%〜99質量%の範囲となり得る。例えば、ショートニングは、99質量%の食用油または脂肪を含有することができる。マーガリンは、約80%の食用油および脂肪を含有する。油中水型スプレッドは、20〜70質量%の食用油および脂肪を含有する場合がある。ドレッシングまたはマヨネーズは、約5質量%〜最大80質量%の非水性脂質相を含有することができる。デアリースプレッドは、約20〜30質量%の食用油および脂肪を含有することができる。乳飲料などは、最大5質量%の食用油および脂肪を含有する場合がある。スキンクリームは、約5〜20質量%の親油性化合物を含有することができる。
【0115】
さらに好ましくは、本発明は、本発明の方法によって調製されるエマルジョンを含む食品を提供する。このような製品は、得られた水を連続相とするエマルジョンを、このような製品の1つまたは複数の成分と接触させることによって、任意の従来の製造法を使用して製造することができる。その後、このような製品の通常の調製プロセスを実施することができる。
【0116】
本発明の食品は、すべての種類の食品、例えば、マリネード、ソース、香味料、バター、スプレー製品、スプレッド、液体シャローフライ用製品、香味料、ドレッシング、マヨネーズ、低脂肪マヨネーズ、およびアイスクリームとすることができる。
【0117】
好ましくは、本発明による食品は、スプレッド(油中水型エマルジョンもしくは水中油型エマルジョン)、マーガリン(油中水型エマルジョン)、バターなどの乳製品(油中水型エマルジョン)、またはシャローフライ用に設計された液体油中水型エマルジョンもしくは液体水中油型エマルジョンである。
【0118】
本発明による他の好適な食品は、本発明による方法から得られるエマルジョンを含有する飲料である。本発明によって調製されるエマルジョンの利点は、好ましくは可視光の波長より小さい、分散相液滴の小さいサイズのために、透明な飲料を製造することができることである。
【0119】
さらに好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様の方法によって調製されるエマルジョンを含むパーソナルケア製品を提供する。この場合、パーソナルケア製品は、例えば、スキンクリーム、ボディローション、ボディウォッシュ、ハンドウォッシュ、フェイシャルフォーム、シャンプー、またはヘアコンディショナーである。
【0120】
さらに好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様の方法によって調製されるエマルジョンを含むホームケア製品を提供する。この場合、ホームケア製品は、例えば、洗濯洗剤組成物、好ましくは液体洗濯洗剤組成物、またはランドリーコンディショナー組成物である。
【0121】
さらに好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様の方法によって調製されるエマルジョンを含む化粧品を提供する。この場合、化粧品は、例えば、口紅、アイ用およびリップ用製品などのメーキャップ用品である。
【0122】
さらに好ましくは、本発明は、本発明の第1の態様の方法によって調製されるエマルジョンを含む医薬品を提供する。この場合、医薬品は、例えば、薬物が、インビボでの標的化送達用に非水性相中にカプセル化されている組成物である。
【0123】
本発明の様々な特徴および実施形態は、以下の個々のセクションに参照されており、必要に応じて、変更すべきところは変更して、他のセクションに適用される。したがって、1つのセクションで特定された特徴を、必要に応じて、他のセクションで特定された特徴と組み合わせることができる。本明細書に述べられるすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれている。記載された本発明の方法および製品の様々な改変およびバリエーションは、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者に明らかになるであろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して説明してきたが、請求した発明は、このような特定の実施形態に不当に限定されるべきでないことが理解されるべきである。実際に、当業者に明らかである、本発明を実施するために記載されたモードの様々な改変は、特許請求の範囲内であることが意図されている。
【実施例】
【0124】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示するものである。
【0125】
CDDM装置
図2および図10に概略的に表したCDDM装置で実験を実施した。この装置は、円筒形ドラムおよび同軸スリーブを備える(対向表面1、2は、円筒形である)。対向表面1、2は、それぞれドラムの外表面およびスリーブの内表面によって規定される。CDDMは、以下のパラメータによって記述することができる:
- スリットの高さ7は、10マイクロメートルであり、
- スリットの長さ8は、120マイクロメートルであり、
- 装置の全長は、10センチメートルであり(長さは、流体が混合されるゾーンを意味する)、
- 軸方向(流れの方向)にCDDMの長さにわたって、流れは、高さ7を有する6つのスリットを経験し、この流れは、6回収縮し、
- 空洞3、4の深さは、最大で2ミリメートルであり、
- ステーターの内径は、25ミリメートルであり、
- 装置の回転速度は、1分間当たり最大25,000回転であり、これは、1分間当たり最大で18,000回転で、これらの実験において稼働した。
【0126】
粒径分布
粒径およびその分布は、計測器のMastersizer 2000およびZetasizer Nano series ZS(Malvern Instruments、UK)を用いて、静的および動的光散乱(それぞれSLSおよびDLS)を使用して求めた。作製した分散液を、脱イオン水を使用して最初に希釈した(約100倍)。SLS技法を使用して、DLS技法によって行った測定と比較し、DLS検出範囲を越えるより大きい粒子の存在も確認した。ザウタ平均粒径(d3,2)、d4,3、およびスパンは、SLSを使用して求めた。
【0127】
走査電子顕微鏡(SEM)
低温電界放出走査電子顕微鏡を使用した。分散液1滴を内径1mmの黄銅リベット上にマウントし、窒素スラッシュの中に入れた。Gatan Alto 2500クライオプランジャー(cryoplunger)、低温プレパレーションチャンバーに移した後、試料を-98℃で砕き、15秒間エッチングし、-110℃に冷却し、2nmのPt/Pdで被覆した。検査は、5KVで稼働される、-150℃のGatanコールドステージを備えたJEOL 6301F走査型電子顕微鏡を使用して実施した。
【0128】
(実施例1)
CDDM装置を使用した、高度に濃縮されたステロール装填コロイド分散液の調製
Myritol(登録商標)318(中鎖トリグリセリド(MCT)油、Cognis、Monheim am Rhein、ドイツ製)、および結晶性フィトステロールブレンド(84%のβ-シトステロール、7%のフィトスタノール、9%の他のステロールを含有、Cognis、Monheim am Rhein、ドイツ製)を分散相材料として使用した。Tween(登録商標)20として商業的に公知の非イオン性乳化剤ポリオキシエチレン(20)モノラウリン酸ソルビタンは、Sigma Aldrich(UK)から購入した。ホスホリポン80は、Phospholipid GmbH(Cologne、ドイツ)によって供給された。
【0129】
フィトステロール装填コロイド分散液を、70:30および65:35(w/w)の分散相:連続相の比で調製した。全コロイド分散液に基づいて7%および13%(w/w)であったフィトステロール濃度に対応する、MCT油およびホスホリポン80中の2つの異なる濃度のフィトステロールを用いて分散相を調製した。乳化剤Tween20の百分率は、7%〜9%に変化させた。全分散液の質量に基づいて1.7%(w/w)で、ホスホリポンを結晶化阻害物質として添加した。
【0130】
すべてのコロイド分散液を製造するために、分散相、すなわちMCT油中のフィトステロールおよびホスホリポンの溶液、ならびに連続相、すなわち水およびTween20を、それぞれ108℃および90℃に別個に加熱した。ローター-ステーターシステム(Fluid Division Mixing)を使用して、フィードホッパー内で分散相を連続的に攪拌した。連続相は、磁気攪拌機を使用して連続的に攪拌しながら、Tween20を含む水を90℃で加熱することによって調製した。
【0131】
ステロールを含有する水中油型(O/W)コロイド分散液を、先に本明細書に記載したCDDM装置を使用してインラインで製造した。実験は、20mL/s〜84mL/sの様々な流量、および0rpm(静的モード)〜18,000rpm(動的モード)の回転速度にわたってCDDMによって実施した。各実験において、分散液50gを、55℃〜70℃の間の最終温度で調製した。その後、試料が室温に到達するまで冷却するために、試料をベンチ上に放置した。
【0132】
高温試料を収集した後、これらの液滴サイズおよびサイズ分布を静的光散乱(SLS)によって測定した。冷却後、これらの形態を走査電子顕微鏡観察(SEM)によって分析して、フィトステロールが分散相中に残り、または油-水界面で結晶化し、それによってプロセス中/冷却後に連続相に移動したか否かを判断した。
【0133】
7%のフィトステロールを含有するコロイド分散液
CDDM装置を、20〜80mL/sの範囲内の流量、および0〜18,000rpmのローター速度で稼働させた。圧力低下は、40〜80barの程度であった。MCT油中に分散したフィトステロールの液滴サイズ分布を静的光散乱によって求め(図3および表1を参照)、これは、すべての回転速度の動的プロセスが、静的プロセスより狭い液滴サイズ分布、したがってより低い多分散性をもたらしたことを示した。15,000rpmで分かるように、より速い速度は、液滴が単分散である液滴サイズ分布に対してより大きいインパクトをもたらし得る。より速い速度で、乳化剤分子は、界面に急速に到達することができ、これは直ちに吸着される。
【0134】
【表1】
【0135】
動的プロセスにより、より小さい液滴およびより少ないフィトステロール結晶を得ることができることが証明され、これは、動的または静的プロセスによって製造されたコロイド分散液の形態で観察することができる(図4)。この方法により、非晶形のフィトステロールを含有するより小さい単分散液滴の製造が可能になる。これが、長い保存可能期間の食品に適したコロイド分散液の最も物理的に安定な形態である。非晶形は、油中の高濃度のフィトステロールにもかかわらず、フィトステロールの針状晶が存在しないことによって証明することができる。ここで得られるナノ分散液の場合では、液滴サイズは、フィトステロール結晶化の防止に対するさらに肯定的な結果をもたらす。
【0136】
図5および図6は、それぞれ動的および静的プロセスによって製造された7%のフィトステロール装填コロイド分散液(濃縮された70/30および希釈された10/90)の形態を示す。希釈後、粒子形態は、過冷却エマルジョンとして特徴づけることができる液滴を示す。
【0137】
図7は、7%および9%の濃度でTween(登録商標)20によって安定化された7%のフィトステロール装填コロイド分散液の液滴サイズ分布を比較するものである。乳化剤濃度が上昇すると、液滴がより小さくなり(より大きい表面積)(表2)、液滴サイズ分布がより狭くなり、合体およびオストワルド熟成に対して液滴を保護することが観察された。
【0138】
【表2】
【0139】
速度がより速いと、乳化プロセスを通じたエネルギー散逸がより多くなり、より小さい単分散液滴を製造することができる。このことを表3に示す。
【0140】
【表3】
【0141】
d3,2に対する流量の影響は、この実験ではそれほど大きくなかったが、d4,3に対する何らかの効果が示された。
【0142】
分散液のザウタ平均粒径(d3,2)は、260〜290ナノメートルの間であった。18,000rpmおよび40mL/sで実行した後、半透明のエマルジョンが製造された。
【0143】
13%のフィトステロールを含有するコロイド分散液
高濃度のフィトステロールを微細な油滴中に順調に組み込むことができた。この種類の配合物では、活性分子は、過飽和の油溶液中にあり、この場合、各1個の液滴の体積は、処理の間にさらに低減される。表面積が増大すると、1滴当たりの結晶核の数が減少し、したがって、結晶核が互いに到達する機会が減り、結晶化はほとんど起こり得ない。
【0144】
図8は、80mL/sおよび12,000rpmで調製した試料のSEM画像を示す。分散相および連続相は、それぞれ65wt%および35wt%であり、分散相中のフィトステロール濃度は約20%であり、分散液中のフィトステロール濃度は約13wt%になった。d3,2およびd4,3は、それぞれ290および500ナノメートルであり、スパンは1.44であった。
【0145】
同様の試料(分散相および連続相は、それぞれ65wt%および35wt%であり、分散相中のフィトステロール濃度は約20%であり、分散液中のフィトステロール濃度は約13wt%になった)を、40mL/sの流量および12,000rpmで作製した。分散相のd3,2は、約320ナノメートルであった。
【0146】
図3.9は、40mL/sおよび様々な回転速度で調製した2つの試料の液滴サイズ分布およびSEM画像を例示する。分散相および連続相は、やはりそれぞれ65%および35%であり、フィトステロール濃度は、7%および13%であった。より小さい液滴およびより狭い液滴サイズ分布が、より高いフィトステロール濃度でさえ、より速い速度で得られた。
【0147】
この実施例1は、濃縮されたサブミクロンエマルジョンの製造を介して化学種の晶癖を制御するための方法に関する。
【0148】
(比較例2)
高圧ホモジナイザーを使用した、ステロール装填コロイド分散液の調製
実施例1と同じ原料を使用し、さらに固体グリセリルトリドデカノエート(glyceryl tridodecanoate)(トリラウリン、Fluka製、46.5℃の融点)をSigma Aldrich(UK)から得た。水中油型(O/W)コロイド分散液を、高圧ホモジナイザー、Microfluidizer M-110S(Microfluidics Internationational Corporation、MA-Newton、USA)を使用して調製した。これは、以下の主要なコンポーネント、すなわち、空気圧モーター、増圧器ポンプ、および相互作用チャンバーからなる。これは、約200〜1,600barの圧力範囲、および約250〜600mL/分(約4〜10mL/s)の流量範囲内で動作することができる。分散相と連続相の比は、10〜90(w/w)であった。連続相中で、乳化剤Tween20の百分率を1%〜4%に変化させ、水の百分率を86%〜89%に変化させた。分散相(10%)は、MCT油またはトリラウリン中の多様なレベルのフィトステロールを用いて調製した。フィトステロールは、全コロイド分散液に基づいて1wt%〜4wt%の範囲であった。これは、10wt%〜40wt%の分散相に等価である。
【0149】
分散液は、フィトステロールを含むMCT油またはトリラウリンを約100℃に加熱することによって調製した。連続相(90%)は、磁気攪拌機を使用して連続的に攪拌しながら、Tween20を含む脱イオン水を90℃で加熱することによって調製した。連続相を、Microfluidizerの試料ユニット内に置き、これを、水浴を使用して95℃に予熱し、次いで分散相を添加した。粗いエマルジョンを、450rpmの速度でヘリックス(helix)を適合させて、ローターステーターシステム(Ultra Turrax IKA T-25 digital;IKA Werke GmbH & Co. KG、Staufen、ドイツ)を使用して調製した。次いでこれを、1165barで、90℃で4回の均質化サイクルを施してMicrofluidizerでさらに処理することによって、フィトステロールが装填されたコロイド分散液を調製した。次いでこれを、撹拌しないで放置して周囲条件で20℃に冷却した(約1℃/分)。流量は、3〜4mL/sであった。
【0150】
粒径に対する結果(DLSを使用して測定した場合)は、フィトステロール濃度の関数および油相の関数として以下のものであった。
【0151】
【表4】
【0152】
より高い濃度、すなわち、エマルジョンの質量に基づいて3wt%および4wt%のフィトステロールを含有する分散液も調製した。顕微鏡画像により、7wt%のMCT油および3wt%のフィトステロール、または6wt%のMCT油および4wt%のフィトステロールを含有する分散液は、それぞれ、針状晶の形でのフィトステロールを含有していることが明らかになった(図9を参照)。これらの針状晶の長さは、最大数十マイクロメートルであった。この作用は、より高いフィトステロール濃度で特に顕著であった。
【0153】
この実施例2は、サブミクロンエマルジョンの製造を介して、固体マイクロカプセル化物(micro-encapsulate)または担体を製造するための方法に関する。
【0154】
CDDM装置をMicrofluidizerと比較すると、CDDMで製造された材料は、Microfluidizerより約6〜7倍高い最終的な分散相画分、および最大30分の1低い圧力低下を有していたことが示される。さらに、CDDM装置を使用して製造されたフィトステロール分散液はまた、小さい分散粒径を保持し、ステロールは、結晶化せず、非晶質状態で残ったことを意味する。
【0155】
(実施例3)
CDDM装置を使用した、高度に濃縮されたシリコーンワックス装填コロイド分散液の調製
分散相としてシリコーンワックス(ステアリルジメチコンであるSilCare 41M65、Clariant、UK製;融点32℃)を含有するエマルジョンを、CDDMを使用して作製した。ポリマーのPET-POET(国際公開第2010/105922号(A1)に記載されているように社内で調製したポリエチレンテレフタレート-コ-ポリオキシエチレンテレフタレート)を乳化剤として使用した。さらに、ポリオキシエチレン(20)モノラウリン酸ソルビタン乳化剤(Tween(登録商標)20、Sigma Aldrich、UK製)を標準的な対照乳化剤として使用した。
【0156】
ワックス状固体、およびワックス状固体中に部分的に埋め込まれたポリマー付着助剤(deposition aid)を含むこれらの粒子をランドリー処理組成物中に使用して、洗浄後の布地に対する軟化効果を改善することができる(国際公開第2010/105922号(A1)に記載されているとおり)。
【0157】
シリコーンワックスのエマルジョンを製造するための標準的な方法は、以下のものであった。最初に、シリコーンワックスを融解させて、その融点の約20℃上にした。PET-POETまたはTween20を含有する水相を、最大で90℃の温度に加熱した。予熱した連続相および分散相をCDDM装置用フィードホッパー内に置き、90℃で維持した。分散相および連続相の均質化を、異なる流量および回転速度で、インラインでCDDMを使用して実施した。エマルジョン中の分散相の量は、65質量%であり、水相は、35質量%の量になった。乳化剤のTween20およびPET-POETの百分率は、全エマルジョンに基づいて、それぞれ13%および9%であった。CDDMを使用した後、試料を50℃で収集し、試料が室温に到達するまで冷却するためにベンチ上に放置した。
【0158】
Tween20によって安定化されたシリコーンワックス分散液
水(27wt%)中のシリコーンワックス(60wt%)コロイド分散液を作製し、Tween20(13wt%)によって安定化させた。CDDM装置に対するd3,2、d4,3、スパン、および圧力低下の結果を以下の表に示す。
【0159】
【表5】
【0160】
一定流量(約70mL/s)で回転速度を増大させると、ザウタ平均粒径およびd4,3が減少した。一方、スパンは、同じプロセスパラメータでわずかに増大した。到達した最小d3,2は、280ナノメートルであった。この挙動は、Tween(登録商標)20によって安定化されたすべてのシリコーンワックス分散液で観察された。速度を増大させると、より大きいエネルギー移動効率、したがってより良好な分散および分布混合がもたらされ、より強力に液滴が変形および分割され、ワックス/水界面上で乳化剤がより速く安定化される。
【0161】
PET-POETによって安定化されたシリコーンワックス分散液
水(31wt%)中のシリコーンワックス(60wt%)コロイド分散液を作製し、PET-POET(9wt%)によって安定化させた。CDDM装置に対するd3,2、d4,3、スパン、および圧力低下の結果を以下の表に示す。
【0162】
【表6】
【0163】
この実験は、60wt%のシリコーンワックスを含有する分散液を製造することができ、ザウタ平均粒径は、1マイクロメートル未満であることを示す。PET-POETをTween20と比較すると、回転速度を増大させると、70mL/sの一定流量で最大10,000rpmまで同様の挙動を示したことが認められる。10k rpm超の速度で、粒径が増大し始め、そのサイズ分布も増大した。この現象は、粒子のいわゆる「橋かけ凝集」に帰することができ、この場合、長鎖ポリマー分子が、静電結合、疎水性結合、ファンデルワールス結合、共有結合、または最も可能性が高いことには水素結合によって粒子表面に吸着される。ポリマーは、周囲の液相中に伸びる長いループおよび末端を残して、比較的少ない部位を介して粒子に付着する。乳化剤濃度を上昇させると、この現象を回避することができ、速度が増大する場合、液滴サイズは減少する。
【0164】
結果は、シリコーンワックス粒子が述べた乳化剤によって安定化された場合の、液滴サイズ分布、d3,2、d4,3、およびスパンに対するプロセスパラメータの影響を示す。
【0165】
(比較例4)
高圧ホモジナイザーを使用した、シリコーンワックスコロイド分散液の調製
実施例3と同じ原料を使用した。連続相として脱イオン水および最大1%の乳化剤、ならびに分散相として5%のシリコーンワックスを用いてエマルジョンを調製した。シリコーンワックスは、約80℃〜90℃で融解させた。連続相も80℃〜90℃に加熱して、分散相の温度に合わせた。1つの試料は、香料をさらに含有した。次いで、分散相を連続相に添加し、ローター-ステーターシステム(Ultra Turrax T25 basic(IKA-WERKE GmbH & Co. KG、Staufen、ドイツ)を使用して、13,500rpmで5〜20分間均質化することによって粗いエマルジョンを形成した。粗いエマルジョンの均質化は、温度がワックスの融点より上で維持されることを保証するために水浴に接続された、二重に密封したビーカー内で実施した。粗いエマルジョンを均質化した後、高圧ホモジナイザーのMicrofluidizer M-110S(Microfluidics Internationational Corporation、MA-Newton、USA)を使用して、1,200barで約2サイクルにわたって、これを直ちにさらに均質化した。試料を滅菌容器内に収集し、試料が室温(20℃)に到達するまで冷却するためにベンチ上に放置した。流量は、1秒当たり約4〜6mLであった。
【0166】
3種のエマルジョンを製造し、その平均粒径を求めた。組成および結果を以下の表に示す。
【0167】
【表7】
【0168】
CDDM装置およびMicrofluidizerを使用して製造された分散液を比較すると、CDDMで製造された材料は、少なくとも約12倍高い最終的な分散相の画分、およびある圧力で、20〜25分の1低い圧力低下を有していた。
【符号の説明】
【0169】
1 表面
2 表面
3 空洞
4 空洞
5 長さ
6 長さ
7 距離
8 長さ
9 深さ
10 深さ
11 長さ
81 長さ
図1
図2
図4
図5
図6
図8
図9
図10
図11
図3
図7