(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940564
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】ポリアミン系スケール防止剤組成物および工程流れの中のスケールを処理する方法
(51)【国際特許分類】
C02F 5/10 20060101AFI20160616BHJP
C02F 5/00 20060101ALI20160616BHJP
C08G 73/02 20060101ALI20160616BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
C02F5/10 620Z
C02F5/00 620A
C08G73/02
C09K3/00 R
C09K3/00 106
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-2223(P2014-2223)
(22)【出願日】2014年1月9日
(62)【分割の表示】特願2009-532495(P2009-532495)の分割
【原出願日】2007年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-65924(P2014-65924A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2014年1月9日
(31)【優先権主張番号】60/829,411
(32)【優先日】2006年10月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594060532
【氏名又は名称】サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハワード・アイ・ハイトナー
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド・ピー・スピツアー
【審査官】
内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−506973(JP,A)
【文献】
特許第5543208(JP,B2)
【文献】
特表2006−514877(JP,A)
【文献】
特表2008−529774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/04
C02F 5/00
C02F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程流れの中のスケールを処理する方法であって、ポリアミン、1番目の窒素反応性化合物および2番目の窒素反応性化合物の重合反応生成物を工程流れと混合することからなり、ただし、前記組成物は前記工程流れの中にスケールを減少または除去するのに有効な量で存在し、前記1番目の窒素反応性化合物は−Si(OR”)3基および窒素反応性基を含み、ここでR”はH、場合により置換されていてもよいC1−C20アルキル、場合により置換されていてもよいC6−C12アリール、場合により置換されていてもよいC7−C20アラルキル、場合により置換されていてもよいC2−C20アルケニル、I族金属のイオン、II族金属のイオンまたはNR14であり、かつ各R1が独立してH、場合により置換されていてもよいC1−C20アルキル、場合により置換されていてもよいC6−C12アリール、場合により置換されていてもよいC7−C20アラルキルおよび場合により置換されていてもよいC2−C20アルケニルから選択され、前記2番目の窒素反応性化合物は窒素反応性基を含有しかつ−Si(OR”)3基を含有せず、そして、前記ポリアミンおよび前記2番目の窒素反応性化合物の少なくとも一方は炭素数が2から40の場合により置換されていてもよいヒドロカルビル基を含有しており、前記工程流れは少なくとも1g/Lの硫酸塩濃度、少なくとも20mg/Lの酸化鉄濃度、少なくとも20mg/Lのソーダ石濃度および少なくとも0.5モル濃度の組み合わせ硝酸塩/亜硝酸塩濃度の少なくとも1つを含んでなる、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記重合反応生成物が式(I)で表される単位と式(II)で表される単位:
【化2】
[前記式中、
TおよびEは、各々独立して、炭素を2から40個含有する1番目の場合により置換されていてもよいヒドロカルビル基であり、
Qは、H、または炭素を1から40個含有する2番目の場合により置換されていてもよいヒドロカルビル基であり、
A
1およびA
2は、各々独立して、直接結合または炭素を1から20個含有する有機連結基であり、そして
R”はH、場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキル、場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニル、I族金属のイオン、II族金属のイオンまたはNR
14であり、かつ各R
1は独立してH、場合により置換さ
れていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキルおよび場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニルから選択される]
を含有して成る、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
式(II)に関連して、Qが−Si(OR”)3基を含有しないという1番目の条件およびA2が非置換−C(=O)−アルキレンではないという2番目の条件の少なくとも1つを適用する請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程流れがバイエル工程流れである請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程流れ中のアルミノケイ酸塩スケールを減少させるか或は除去するに有効な重合体量が工程流れを基準にした重量で表して1ppmから500ppmの範囲内である請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
R”がI族金属のイオン、II族金属のイオンまたはNR14である請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミンおよびそれらをいろいろな産業工程流れに入っているスケールを処理する目的で用いる方法に関する。好適な態様は、疎水修飾Si含有ポリアミンに関し、これは、特に、処理が困難な産業工程流れ、例えばバイエル(Bayer)のアルミナ工程、核廃棄流れおよびクラフト紙粉砕放流流れなどに入っているアルミノケイ酸塩スケールの処理で用いるに有用であることを見いだした。
【背景技術】
【0002】
いろいろな産業工程流れにスケールが発生することが問題になっている。スケールは、水性工程流れにさらされる装置の表面に一般に発生する固体状材料である。スケールは典型的に水溶解度が比較的低い無機材料を含有し、そのような材料には、例えばいろいろな水和アルミノケイ酸ナトリウム材料、例えば非晶質アルミノケイ酸塩(例えばアルミノケイ酸塩ヒドロゲル)、ゼオライト、方ソーダ石およびカネリナイト(canerinites)などが含まれる。スケールを機械的方法、例えば削り取りなどで除去するのはしばしば好ましくない、と言うのは、そのような手順は工程休止時間の点でかなりの費用を伴う可能性がありかつ近づくのが困難な工程装置の表面にスケールが生じた場合には実用的でない可能性があるからである。
【0003】
いろいろな産業工程流れ中のスケールを除去しそして/またはスケールの発生を防止する化学的処理が数多く開発されてきた。そのような化学的処理は一般に処理用化学品を工程流れと混合することで適用され、そのようにして、近づくのが困難な表面を処理しかつ休止時間を短縮させるか或はなくすことを可能にするものである。いろいろなSi含有重合体が近年開発されかつスケールの処理に適用された。例えば特許文献1、2、3、4、5、6、7および8を参照。この上に示した特許公開は引用することによって全体が本明細書に組み入れられ、特にいろいろな種類のスケールを記述する目的ばかりでなく特定のSi含有重合体およびそれらを特定の産業工程流れに入れる抗スケール剤として用いることに関して本明細書に組み入れられる。
【0004】
この上に記述したSi含有重合体およびそれらの使用方法は当該技術分野における重要な進展に相当するが、産業工程流れ中にスケールが発生すると言った問題を完全に解決するものではない。処理が困難な産業工程流れが特に厄介である。例えば、硫酸塩、微分散酸化鉄(例えば「赤泥」)、微分散方ソーダ石および/または組み合わせ硝酸塩/亜硝酸塩を比較的高濃度で含有する工程流れ中のスケールを減少させそして/または防止する化学処理および方法が長年に渡る要求である。
【0005】
様々なSi含有重合体が他の目的で開発されてきているが、そのような当該技術とは異なる技術をスケールの処理に適用しようとする特定の動機は全く見られない。例えば特許文献9、10、11、12、13、14、15、16、17、非特許文献1および2を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,814,873号
【特許文献2】米国特許公開番号2005/0010008
【特許文献3】米国特許公開番号2004/0162406
【特許文献4】米国特許公開番号2006/0124553
【特許文献5】米国特許公開番号2004/0162406
【特許文献6】米国特許公開番号2004/0011744
【特許文献7】米国特許公開番号2005/0274926
【特許文献8】WO 2004 009606
【特許文献9】米国特許第3,560,543号
【特許文献10】米国特許第5,354,829号
【特許文献11】米国特許第6,262,216号
【特許文献12】米国特許第6,410,675号
【特許文献13】米国特許第6,429,275号
【特許文献14】米国特許第6,486,287号
【特許文献15】米国特許第6,743,882号
【特許文献16】米国特許公開番号2006/0159975
【特許文献17】カナダCA 2,193,155
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yang他、Prepr.Pap.−Am.Chem.Soc.、Div.Fuel Chem.2004、49(2)、599−600
【非特許文献2】Macromol.Symp.2004、210、329
【発明の概要】
【0008】
ここに、産業工程流れ中のスケールを処理するに適した新規なSi含有重合体および方法を開発した。驚くべきことに、比較的疎水性のSi含有重合体が示す性能の方が疎水性がより低い以外は匹敵する重合体が示すそれよりも実質的に高い可能性があることを見いだした。
【0009】
1つの態様では、式(I)で表される繰り返し単位と式(II)で表される繰り返し単位:
【0011】
[前記式中、
TおよびEは、各々独立して、炭素を約2から約40個含有する1番目の場合により置換されていてもよいヒドロカルビル基であり、
Qは、H、または炭素を約1から約20個含有する2番目の場合により置換されていてもよいヒドロカルビル基であり、
A
1およびA
2は、各々独立して、直接結合または炭素を約1から約20個含有する有機連結基であり、
R”=H、場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキル、場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニル、I族金属のイオン、II族金属のイオンまたはNR
14であり、かつ各R
1は独立してH、場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12ア
リール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキルおよび場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニルから選択される]
を含有して成る重量平均分子量が少なくとも約500の重合体を提供するが、但し
A
2−QがHの時にはTおよびEの中の少なくとも一方が炭素原子を4個以上含有することを1番目の条件とし、
A
2−QがHでない時にはTおよびEの中の少なくとも一方が炭素原子を2個以上含有することを2番目の条件とし、
QがSi(OR”)
3基を含有しないことを3番目の条件とし、
A
2が非置換−C(=O)−アルキルではないことを4番目の条件とし、かつ
QがOHまたはNH
2の時にはA
1とA
2の両方ともがアルキレンであることはないことを5番目の条件とする。
【0012】
別の態様では、少なくともポリアミン、1番目の窒素反応性化合物および2番目の窒素反応性化合物の重合反応生成物を含有して成る組成物を提供し、ここで、
前記重合反応生成物は少なくとも約500の重量平均分子量を有し、
前記1番目の窒素反応性化合物は−Si(OR”)
3基および窒素反応性基を含有して成りかつR”=H、場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキル、場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニル、I族金属のイオン、II族金属のイオンまたはNR
14でありかつ各R
1は独立してH、場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキルおよび場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニルから選択され、
前記2番目の窒素反応性化合物は窒素反応性基を含有しかつSi(OR”)
3基を含有せず、そして
前記ポリアミンおよび前記2番目の窒素反応性化合物の中の少なくとも一方は炭素数が約2から約40の場合により置換されていてもよいヒドロカルビル基を含有する。
【0013】
別の態様では、産業工程におけるスケールを減少させるか或は除去する方法を提供し、この方法は、前記工程に本明細書に記述する如き重合体または組成物を添加することを含んで成る。
【0014】
別の態様では、処理が困難な工程流れ中のスケールを処理する方法を提供し、この方法は、ある重合体をある工程流れに前記工程流れ中のアルミノケイ酸塩スケールを減少させるか或は除去するに有効な量で混合することを含んで成り、かつ
前記工程流れは少なくとも約1g/Lの硫酸塩濃度、少なくとも約20mg/Lの微分散酸化鉄濃度、少なくとも約20mg/Lの微分散方ソーダ石濃度および少なくとも約0.5モル濃度の組み合わせ硝酸塩/亜硝酸塩濃度から選択される少なくとも1つを含んで成り、かつ
前記重合体は式(I)で表される繰り返し単位と式(II)で表される繰り返し単位:
【0016】
[前記式中、
TおよびEは、各々独立して、炭素を約2から約40個含有する1番目の場合により置換されていてもよいヒドロカルビル基であり、
Qは、H、または炭素を約1から約20個含有する2番目の場合により置換されていてもよいヒドロカルビル基であり、
A
1およびA
2は、各々独立して、直接結合または炭素を約1から約20個含有する有機連結基であり、そして
R”=H、場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキル、場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニル、I族金属のイオン、II族金属のイオンまたはNR
14であり、かつ各R
1は独立してH、場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキルおよび場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニルから選択される]
を含有して成る。
【0017】
前記および他の態様を以下により詳細に説明する。
【0018】
好適な態様の詳細な説明
スケールを処理する方法を記述する文脈における「処理」および「処理する」の如き用語は、当業者が理解する如き通常の意味で本明細書で用いる幅広い用語であり、従って、それには、結果としてスケール生成の抑制および/または予防をもたらすばかりでなく現存するスケールの減少、除去および/または排除をもたらす方法が含まれる。
【0019】
用語「スケール」は、当業者が理解する如き通常の意味で本明細書で用いる幅広い用語であり、従って、それには、産業工程流れにさらされる装置の表面に生じる様々な主にもしくは完全に無機の付着物が含まれる。スケールの例には、水和アルミノケイ酸ナトリウム材料、例えば非晶質アルミノケイ酸塩(例えばアルミノケイ酸塩ヒドロゲル)、ゼオライト、方ソーダ石およびカネリナイトなどが含まれる。
【0020】
化学品材料を記述する目的で本明細書で用いる用語、例えば「抗スケール剤」、「スケール防止剤」、「スケール減少用添加剤」などは、当業者が理解する如き通常の意味で本明細書で用いる幅広い用語であり、従って、それには、スケールの処理で用いるに有用な化学品材料(例えば重合体など)が含まれる。
【0021】
用語「重合体」は、当業者が理解する如き通常の意味で本明細書で用いる幅広い用語であり、従って、それには共重合体も含まれる。本明細書で重合体の分子量を言及する場合、これはサイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(光散乱検出)で測定した時の重量平均分子量を言及すると理解する。いろいろな態様において、Si含有重合体(例えば本明細書に記述する重合体P1を包含)の分子量は少なくとも約500、少なくとも約1,000、少なくとも約2,000または少なくとも約5,000であり得る。いくつか態様では、より高いか或はより低い分子量の方が好適である。ある種の重合体を本明細書では「疎水修飾」を受けたと言及することがあり得るが、その用語を便利さの目的で用いかつそのような重合体を前以て存在する重合体に疎水修飾を受けさせることで生じさせた重合体に限定するものでないことは理解されるであろう。
【0022】
用語「炭化水素」および「ヒドロカルビル」は、当業者が理解する如き通常の意味で本明細書で用いる幅広い用語であり、従って、それには、元素である炭素と水素で排他的に構成されている有機化合物もしくは基が含まれる。そのような部分には、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニルおよびアリール部分が含まれる。そのような部分には、
また、他の脂肪もしくは環式炭化水素基で置換されているアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール部分、例えばアルカリール、アルケンアリールおよびアルキンアリールなども含まれる。特に明記しない限り、そのような部分の炭素原子数は好適には1から40である。ヒドロカルビル基は、元素である炭素と水素で排他的に構成されてはいない様々な基で置換されていてもよく、このように、置換されているヒドロカルビル基はヘテロ原子、例えば酸素および/または窒素などを1個以上含有していてもよい。
【0023】
用語「置換されている」は、用語「場合により」を先行詞として有するか否かに拘らず、当業者が理解する如き通常の意味で本明細書で用いる幅広い用語である。従って、「置換されている」には、所定構造物の中の1個以上の水素基が1個以上の置換基(これは所定構造の許容される有機置換基のいずれであってもよい)に置き換わっていることが含まれる。所定構造物に許容され得る置換基の例には、ヒドロキシ、C
1−10アルキル、C
1−10アルケニル、アリル、ハロゲン、C
1−10ハロアルキル、C
1−10アルコキシ、ヒドロキシC
1−10アルキル、カルボキシ、C
1−10カルボアルコキシ(またアルコキシカルボニルとも呼ぶ)、C
1−10カルボキシアルコキシ、C
1−10カルボキサミド(またアルキルアミノカルボニルとも呼ぶ)、シアノ、ホルミル、C
1−10アシル、ニトロ、アミノ、C
1−10アルキルアミノ、C
1−10ジアルキルアミノ、アニリノ、メルカプト、C
1−10アルキルチオ、スルホキサイド、スルホン、C
1−10アシルアミノ、アミジノ、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、複素環、フェノキシ、ベンゾイル;アミノ、ヒドロキシ、メトキシ、メチルまたはハロで置換されているベンゾイル;ベンジルオキシおよびヘテロアリールオキシが含まれる。置換されている基がアルキルセグメントを含有する場合、同じ炭素原子が有する2個の水素原子がその炭素原子と二重結合している単一の置換基、例えばオキソ(=O)などに置き換わっていてもよい。
【0024】
本明細書では、重合体および重合反応生成物を包含するいろいろ組成物ばかりでなくそのような組成物を用いるいろいろな方法も記述する。当業者は、本明細書に記述するいろいろな組成物をその記述する方法のいずれかで用いることができかつその記述する方法でその記述する組成物のいずれかを用いることができることを理解するであろう。このように、本明細書に記述する発明を特定の態様の説明に限定するものでないことは理解されるであろう。
【0025】
組成物およびそれの製造方法
1つの態様では、式(I)で表される繰り返し単位と式(II)で表される繰り返し単位:
【0027】
[前記式中、
TおよびEは、各々独立して、炭素を約2から約40個含有する1番目の場合により置換されていてもよいヒドロカルビル基であり、
Qは、H、または炭素を約1から約20個含有する2番目の場合により置換されていてもよいヒドロカルビル基であり、
A
1およびA
2は、各々独立して、直接結合または炭素を約1から約20個含有する有機連結基であり、そして
R”=H、場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキル、場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニル、I族金属のイオン、II族金属のイオンまたはNR
14であり、かつ各R
1は独立してH、場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキルおよび場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニルから選択される]
を含有して成る重合体を提供する。
【0028】
本明細書では、用語「重合体P1」を式(I)で表される繰り返し単位と式(II)で表される繰り返し単位を含有して成る重合体を指す目的で用いることもあり得る。1つの態様における重合体P1は、R”がI族金属のイオン(例えばNa)、(II)族金属のイオン(例えばK)および/またはNR
14(例えばアンモニウム)である式(I)で表される繰り返し単位を含有して成る。いろいろな態様において、重合体P1は下記の条件の中の1つ以上を受けているとして更に記述可能である:A
2−QがHの時にはTおよびEの中の少なくとも一方が炭素原子を4個以上含有すると言った1番目の条件、A
2−QがHでない時にはTおよびEの中の少なくとも一方が炭素原子を2個以上含有すると言った2番目の条件、QがSi(OR”)
3基を含有しないと言った3番目の条件、A
2が非置換−C(=O)−アルキルではないと言った4番目の条件および/またはQがOHまたはNH
2の時にはA
1とA
2の両方ともがアルキレンであることはないと言った5番目の条件。その上、重合体P1は他の繰り返し単位も含有して成っていてもよいことは理解されるであろう。例えば、1つの態様において、式(I)で表される繰り返し単位と式(II)で表される繰り返し単位を含有して成る重合体は、更に、式−((CH
2)
n−NH)−[式中、nは約2から約10の範囲内の整数である]で表される繰り返し単位も含有して成る。その重合体P1中の繰り返し単位の量は幅広い範囲に渡って多様であり得る。例えば、1つの態様における重合体P1は、重合体P1中の繰り返し単位の総モルを基準にして前記式(I)で表される繰り返し単位を少なくとも約0.1モルパーセント、好適には少なくとも約1モルパーセントおよび前記式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも約0.1モルパーセント、好適には少なくとも約1モルパーセント含有して成る。
【0029】
この上に示したように、重合体P1中の前記式(I)および(II)で表される繰り返し単位はA
1およびA
2を含有し、これらは各々独立して直接結合または炭素数が約1から約20の有機連結基である。適切な有機連結基の例には、A
1およびA
2が各々独立して−A
3−A
4−A
5−A
6−で表され、かつ
A
3=直接結合、NR’またはOでありかつR’がHまたはC
1−3アルキルであり、
A
4=直接結合、C=O、場合により置換されていてもよいC
1−C
10アルキレンまたは場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリールであり、
A
5=直接結合、O、NR”’、アミド、ウレタンまたは尿素でありかつR”’がHまたはC
1−3アルキルであり、そして
A
6=直接結合、O、場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニルまたは場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキルである、
有機連結基が含まれる。
【0030】
有機連結基A
1およびA
2の例には、−CH(OH)−CH
2−、−CH
2−CH(OH)−、−CH(OH)−CH
2−O−、−CH
2−CH(OH)−O−、−CH
2−CH(OH)−CH
2−O−、−C(=O)−CH(CO
2M)−、−C(=O)−CH(CH
2CO
2M)−および−C(=O)−CH
2−CH(CO
2M)−が含まれ、ここで
、MはH、金属カチオン、例えばNaなど、アンモニウムカチオン、例えばテトラアルキルアンモニウムまたはNH
4など、または有機基、例えば場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキルまたは場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニルなどである。好適な態様では、前記有機連結基A
1およびA
2の中の少なくとも一方が−CH
2−CH(OH)−CH
2−O−である。
【0031】
当業者は、重合体P1に疎水性をいろいろな様式で組み込むことができることを理解するであろう。1つの態様において、前記1番目および2番目のヒドロカルビル基T、EおよびQの中の少なくとも1つは、場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキルまたは場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニルである。例えば、いくつかの態様では、前記1番目のヒドロカルビル基TおよびEの中の少なくとも一方を−(CH
2)
2−およびヒドロキシプロピレン、例えば−CH
2−CH(OH)−CH
2−などから選択する。Qを好適にはプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、C
7−C
20アルキルフェニル(例えばクレシル、ノニルフェニル)、セチル、オクテニルおよびオクタデシルから選択する。いくつか態様では、Qをブチル、2−エチルヘキシル、フェニル、クレシル、ノニルフェニル、セチル、オクテニルおよびオクタデシルから選択する。A
2−QがHの時にはTおよびEを好適には各々独立して場合により置換されていてもよいC
2−C
8アルキレン、イソホロンおよびヒドロキシプロピレンから選択する。
【0032】
別の態様では、少なくともポリアミン、1番目の窒素反応性化合物および2番目の窒素反応性化合物の重合反応生成物を含有して成る組成物を提供し、ここで、
前記重合反応生成物は少なくとも約500の重量平均分子量を有し、
前記1番目の窒素反応性化合物は−Si(OR”)
3基および窒素反応性基を含有して成りかつR”=H、場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキル、場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニル、I族金属のイオン、II族金属のイオンまたはNR
14でありかつ各R
1は独立してH、場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキルおよび場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニルから選択され、
前記2番目の窒素反応性化合物は窒素反応性基を含有しかつSi(OR”)
3基を含有せず、そして
前記ポリアミンおよび前記2番目の窒素反応性化合物の中の少なくとも一方は炭素数が約2から約40の場合により置換されていてもよいヒドロカルビル基を含有する。
【0033】
用語「PRP1」を本明細書ではそのような重合反応生成物を指す目的で用いることもあり得る。PRP1を製造する時にいろいろなポリアミンを用いることができる。例えば、1つの態様におけるポリアミンは、式−(CH
2)
r−NR””)−[式中、rは1から約20の範囲内の整数でありそしてR””はH、場合により置換されていてもよいC
1−C
20アルキル、場合により置換されていてもよいC
6−C
12アリール、場合により置換されていてもよいC
7−C
20アラルキルまたは場合により置換されていてもよいC
2−C
20アルケニルである]で表される繰り返し単位を含有して成る。別の態様におけるポリアミンは、(NR
42)−J−(NR
42)部分[ここで、Jは炭素を約2から約40個含有する場合により置換されていてもよいヒドロカルビルフラグメントであり、そして各R
4は独立してH、場合により置換されていてもよいC
1−8アルキルまたは場合により置換されていてもよいC
6−10アリールである]を含有して成る。前記ヒドロカルビルフラグメントJは、好適には、場合により置換されていてもよいC
3−C
20アル
キル、場合により置換されていてもよいC
3−C
20アルケニル基または場合により置換されていてもよいC
3−C
20アリールである。そのようなポリアミンは、好適にはC
6−C
20脂肪族ジアミンである。適切なポリアミンの例には、ポリエチレンイミン、トリエチレンテトラアミン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,5−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、ジアミノイソホロン、アミノアニリンおよびアミノメチルベンジルアミンが含まれる。
【0034】
PRP1を製造する時にいろいろなSi含有窒素反応性化合物を用いることができる。適切なSi含有窒素反応性化合物は窒素反応性基、例えば適切な形態のハロゲン化物、スルフェート、エポキシド、イソシアネート、無水物、カルボン酸および/または酸クロライド官能を含有する基などを含有して成る。適切な窒素反応性基の例には、ハロゲン化アルキル(例えばクロロプロピル、ブロモエチル、クロロメチルおよびブロモウンデシル)、エポキシ(例えばグリシドキシプロピル、1,2−エポキシアミル、1,2−エポキシデシルまたは3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)、イソシアネート(例えば、反応を起こして尿素結合を生じるイソシアナトプロピルまたはイソシアナトメチル)、無水物(例えば無水マロン酸、無水こはく酸)および前記基の組み合わせ、例えばヒドロキシル基とハロゲン化物の組み合わせ、例えば3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルなどが含まれる。無水トリエトキシシリルプロピルこはく酸、グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよびクロロプロピルトリメトキシシランが−Si(OR”)
3基と窒素反応性基を含有する窒素反応性化合物の例である。そのような化合物が当業者にいろいろ公知であり、例えば米国特許第6,814,873号(これは引用することによって本明細書に組み入れられ、特にそのような化合物およびそれを重合体に組み込む方法を記述する目的で組み入れられる)を参照のこと。
【0035】
PRP1を製造する時、窒素反応性基を含有するがSi(OR”)
3基を含有しないいろいろな窒素反応性化合物を用いることができる。適切な窒素反応性化合物には、上述した窒素反応性基を1個以上含有する化合物が含まれる。窒素反応性基を含有するがSi(OR”)
3基を含有しない窒素反応性化合物の非限定例には、C
1−C
20アルキルハライド(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびオクチルなどの如きアルキルの塩化物、臭化物およびヨウ化物)、アルケニルハライド、例えば塩化アリル、ハロゲン化アラルキル、例えば塩化ベンジルなど、アルキルスルフェート、例えば硫酸ジメチルなど、エポキシド基を少なくとも1個含有する化合物(例えばグリシジルアルコール、フェノールおよびアミン)、および無水基を含有する化合物、例えば無水アルケニルマロン酸および/または無水アルケニルこはく酸などが含まれる。好適な2番目の窒素反応性化合物の例には、ジメチルスルフェート、クロロオクタン、クロロヘキサン、ベンジルクロライド、エピクロロヒドリン、グリシジル4−ノニルフェニルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、C
12−C
14アルキルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、無水オクテニルこはく酸および無水オクタデセニルこはく酸が含まれる。いくつか態様における2番目の窒素反応性化合物[窒素反応性基を含有するがSi(OR”)
3基を含有しない]は、互いに同じもしくは異なってもよい少なくとも2個の窒素反応性官能基を含有する。
【0036】
PRP1を含有して成る組成物は重合体P1を含有して成っていてもよい。例えば1つの態様におけるPRP1は、式(I)で表される繰り返し単位と式(II)で表される繰り返し単位を含有して成り、ここで、T、E、Q、A
1、A
2およびR”は、この上に示した意味と同じ意味を有する。重合体P1に関して上述した1番目、2番目、3番目、4番目および5番目の条件は重合体P1を含有して成るPRP1に関しても単独または任意組み合わせで当てはまり得ることは理解されるであろう。
【0037】
本明細書に記述する重合体および組成物の製造はいろいろな様式で実施可能である。例えば、PRP1および重合体P1の製造は、ポリアミン、1番目の窒素反応性化合物および2番目の窒素反応性化合物(これらの材料は本明細書に記述した如くである)を適切な条件下でいずれかの順で一緒に反応させることで実施可能である。前記ポリアミン、1番目の窒素反応性化合物および2番目の窒素反応性化合物は各々が特定の化合物の混合物を含有して成っていてもよいことは理解されるであろう。当業者は、本明細書に示した指針による情報を用いて常規実験を行うことで適切な反応条件を識別することができかつ幅広く多様な重合体および組成物(例えばPRP1および重合体P1)を製造することができるであろう。
【0038】
PRP1および重合体P1を製造する方法の1番目の態様では、典型的には比較的高い分子量(以下に記述する多官能アミン単量体に比べて)を有するバックボーンポリアミン(例えばポリエチレンイミン)を1番目の窒素反応性化合物と反応させ[それによって−Si(OR”)
3基を取り込ませ]そして2番目の窒素反応性化合物と反応させ[それによって疎水性を組み込むか或は疎水性を向上させ]ることで、それに官能化を受けさせる。多くの場合、前記バックボーンポリアミンの全体的長さは長くならないが、前記ポリアミンの分子量はSi含有基および非Si含有疎水性基が結合することで高くなる。また、架橋によっても分子量が高くなる可能性がある。多くの場合、この反応は本質的に重合ではなく、その代わりに、重合体官能化(恐らくは架橋を伴う)である。そのような反応の生成物(PRP1またはP1であり得る)を本明細書ではシラン化疎水修飾ポリアミンと呼ぶこともあり得る。以下の実施例1−6に、この1番目の態様に従う重合体製造方法を例示する。
【0039】
PRP1および重合体P1を製造する方法の2番目の態様では、比較的低い分子量を有するポリアミン単量体もしくはオリゴマー(例えば多官能アミン単量体、例えばトリエチレンテトラアミン)を1番目の窒素反応性化合物および2番目の窒素反応性化合物と反応させる。この2番目の態様では、前記1番目の窒素反応性化合物および2番目の窒素反応性化合物の中の少なくとも一方が窒素反応性官能基を少なくとも2個含有し、そしてその結果として生じる重合体の全体的生成は、前記ポリアミンと前記1番目/およびまたは2番目の窒素反応性化合物1種または2種以上の間の縮合重合を伴うことに加えて恐らくは架橋を伴うと見なすことができる。以下の実施例7−15に、この2番目の態様に従う重合体製造方法を例示する。
【0040】
スケール処理方法
本明細書に記述する重合体および組成物(例えば、本明細書に記述する態様の全部を包含するPRP1および重合体P1)は、いろいろな産業工程流れ、例えばバイエルの工程流れ、ボイラー水、核廃棄工程流れ、製紙工程流れなどに入っているスケール(例えばアルミノケイ酸塩スケール)の処理で用いるに有用である。スケール処理方法は、当該工程流れに本重合体をスケールを減少させるか或は除去するに有効な量で混合することで実施可能である。好適な態様では、そのような方法を用いると予想外にスケール減少が有意に向上する。1つの態様では、産業工程におけるスケールを減少させるか或は除去する方法を提供し、この方法は、前記工程に本明細書に記述する如き重合体および/または組成物を好適にはスケールを減少させるか或は除去するに有効な量で添加することを含んで成る。そのような工程流れに入っているスケール(例えばアルミノケイ酸塩スケール)を減少させるか或は除去するに有効な本重合体および/または組成物の量は典型的に当該工程流れを基準にした重量で表して約1ppmから約500ppmの範囲内であるが、ある場合には、量を少なくするか或は多くする方が有効であり得る。当業者は、本明細書に示す指針を情報として用いて常規実験を行うことで個々の工程流れに有効な重合体および/または組成物量を識別することができるであろう。
【0041】
好適な態様における本重合体および/または組成物は、特に、処理が困難な産業工程流れ、例えばバイエルのアルミナ工程、核廃棄流れおよびクラフト紙粉砕放流流れなどに入っているアルミノケイ酸塩スケールを処理するに有効である。1つの態様では、処理が困難な工程流れに入っているスケールを処理する方法を提供し、この方法は、ある重合体をある工程流れにこの工程流れに入っているアルミノケイ酸塩スケールを減少させるか或は除去するに有効な量で混合することを含んで成る。当業者は処理が困難な工程流れを周知しており、そのような流れは、下記の特徴の中のいずれか1つまたはいずれかの組み合わせで2つ以上有する可能性がある:少なくとも約1g/Lの硫酸塩濃度、少なくとも約20mg/Lの微分散酸化鉄濃度、少なくとも約20mg/Lの微分散方ソーダ石濃度および/または少なくとも約0.5モル濃度の組み合わせ硝酸塩/亜硝酸塩濃度。
【実施例】
【0042】
試験手順A:
処理が困難な液体を調製しそしてそれを用いて以下の実施例に記述する重合体に試験を受けさせた。アルミン酸ナトリウム、過剰量の水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムが入っているアルミン酸ナトリウム溶液(108ml)にケイ酸ナトリウム溶液を12ml(SiO
2が28.9%のケイ酸ナトリウム溶液を27.7g/L)添加することで、処理が困難な液体を生じさせる。その溶液は混合後にSiO
2を0.8g/L、Al
2O
3を45g/L、NaOHを150g/L、Na
2CO
3を60g/LおよびNa
2SO
4を20g/L含有する。この溶液を一定分量に分けて125mlのポリエチレン製ボトルに入れる。また、以下の実施例に記述する重合体も前記ボトルに加え(この重合体を一般に有効成分含有量が0.1−10%の溶液の形態で添加する)、また、当該重合体が入っていないブランク(対照)サンプルの調製も行う。前記ボトルを密封して撹拌しながら100℃に18±2時間加熱する。この18時間が終了した時点で前記ボトルを開けた後、その溶液を濾過する。その系に重合体を全く添加しない(ブランク試験)とアルミノケイ酸塩がかなりの量で生じ、それを濾紙で回収する。そのブランク試験の時に沈澱したアルミノケイ酸塩の総量は典型的に約200mgである。その沈澱したアルミノケイ酸塩の量が以下の実施例における抗スケール活性の尺度であり、それを、同じ組の試験の一部である相当するブランク実験の時に生じたアルミノケイ酸塩に対するパーセントとして表す。比較重合体を用いた時に得た結果を以下の表の中に「
*」を付けて示す。
【0043】
この処理が困難な液体は硫酸塩および炭酸塩をかなり高い濃度で含有することから、米国特許第6,814,873号に記述されている液体を処理する時よりも困難であると考えており、従って、特に処理が困難なバイエル液に相当する。米国特許第6,814,873号に記述されている液体を用いたブランク試験で生じた沈澱物の量はほんの約150mgであったが、以下の実施例に記述する重合体に試験を受けさせる目的で用いた処理が困難な液体を用いたブランク試験で生じた沈澱物の量はより多い(典型的には約200mg)。
【0044】
試験手順B:
この手順では、前記試験液体に「赤泥」固体を150mg/L添加する以外は試験手順Aの様式と同じ様式で手順を実施する。そのような赤泥固体は、バイエルのアルミナプラントから得た実際の赤泥廃棄物を洗浄、乾燥および粉砕することで得た固体である。
【0045】
試験手順C:
この手順では、前記試験液体に方ソーダ石固体を50mg/L添加しかつ試験時間を18時間ではなく4時間のみにする以外は試験手順Aの様式と同じ様式で手順を実施する。そのような方ソーダ石固体は、カオリンを水酸化ナトリウムと反応させることで生じさせ
た固体である。
【実施例1】
【0046】
生成物A(比較)の製造を下記のようにして実施する:10.00gのポリエチレンイミン(BASFのLupasol WF)を約2.19gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(PEI繰り返し単位の重量を基準にして4モル%)と混合する。その混合物を75℃に16時間加熱することで重合反応生成物を生じさせる。次に、NaOH水溶液(20g/L)を添加してメトキシシラン基に加水分解を受けさせて−Si−ONa基を生じさせることでナトリウム塩が10%の溶液を生じさせる。
【0047】
生成物B1(疎水修飾)の製造を下記のようにして同様な様式で実施する:10.00gのポリエチレンイミン(BASFのLupasol WF)を2.19gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(PEI繰り返し単位の重量を基準にして4モル%)および0.71gのクロロオクタン(PEI繰り返し単位の重量を基準にして2モル%)と混合する。その混合物を75℃に16時間加熱することで重合反応生成物を生じさせる。次に、NaOH水溶液(20g/L)を添加することでナトリウム塩が10%の溶液を生じさせる。
【0048】
生成物B2(疎水修飾)の製造を下記のようにして実施する:8.66gのポリエチレンイミン(BASFのLupasol WF)を1.90gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(PEI繰り返し単位の重量を基準にして4モル%)および1.34gの塩化ベンジル(PEI繰り返し単位の重量を基準にして5.26モル%)と混合する。その混合物を75℃に16時間加熱することで重合反応生成物を生じさせる。次に、NaOH水溶液(20g/L)を添加することでナトリウム塩が10%の溶液を生じさせる。
【0049】
試験手順Aに従う生成物A、B1およびB2を比較する試験を行った結果(表1)、疎水性が比較的高い方の生成物B1およびB2を用いると沈澱する方ソーダ石の量の減少度合が有意により良好になることが分かる。
【0050】
【表1】
【実施例2】
【0051】
生成物C(疎水修飾)の製造を下記のようにして実施する:10.00gのポリエチレンイミン(BASFが製造しているLupasol WF)を2.19gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(PEI繰り返し単位の重量を基準にして4モル%)および0.64gのグリシジル4−ノニルフェニルエーテル(PEI繰り返し単位の重量を基準にして1モル%)と混合する。その混合物を75℃に16時間加熱することで重合反応生成物を生じさせる。次に、NaOH水溶液(20g/L)を添加することでナトリウム塩が10%の溶液を生じさせる。
【0052】
試験手順Aに従う生成物AとCを比較する試験を行った結果(表2)、疎水性が比較的高い方の生成物Cを用いると沈澱する方ソーダ石の量の減少度合が有意により良好になることが分かる。
【0053】
【表2】
【実施例3】
【0054】
生成物D(比較)の製造を下記のようにして実施する:5.00gのポリエチレンイミン(BASFのLupasol PR 8515)を約1.1gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(PEI繰り返し単位の重量を基準にして4モル%)と混合する。その混合物を室温に16時間維持した後、75℃に4時間加熱することで重合反応生成物を生じさせる。次に、NaOH水溶液(20g/L)を添加してメトキシシラン基に加水分解を受けさせて−Si−ONa基を生じさせることでナトリウム塩が10%の溶液を生じさせる。
【0055】
生成物E(疎水修飾)の製造を下記のようにして実施する:5.00gのポリエチレンイミン(BASFのLupasol PR 8515)を1.10gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(PEI繰り返し単位の重量を基準にして4モル%)および0.64gのグリシジル4−ノニルフェニルエーテル(PEI繰り返し単位の重量を基準にして1モル%)と混合する。その混合物を室温に16時間維持した後、75℃に4時間加熱することで重合反応生成物を生じさせる。次に、NaOH水溶液(20g/L)を添加することでナトリウム塩が10%の溶液を生じさせる。
【0056】
生成物FおよびGの製造を生成物Eの製造で用いるグリシジル4−ノニルフェニルエーテルの量の代わりに生成物Fの製造ではグリシジル4−ノニルフェニルエーテルを1.61g(PEI繰り返し単位の重量を基準にして5モル%)用いそして生成物Gの製造ではグリシジル4−ノニルフェニルエーテルを3.21g(PEI繰り返し単位の重量を基準にして10モル%)用いる以外は生成物Eの様式と同様な様式で実施する。
【0057】
試験手順Aに従う生成物D、E、FおよびGを比較する試験を行った結果(表3)、疎水性が比較的高い方の生成物E、FおよびGを用いると沈澱する方ソーダ石の量の減少度合が有意により良好になることが分かる。
【0058】
【表3】
【実施例4】
【0059】
生成物H(比較)の製造を下記のようにして実施する:5.00gのポリエチレンイミン(BASFのLupasol PR 8515)を約0.92gのクロロプロピルトリメトキシシラン(PEI繰り返し単位の重量を基準にして4モル%)と混合する。その混合物を室温に16時間維持した後、75℃に4時間加熱することで重合反応生成物を生じさせる。次に、NaOH水溶液(20g/L)を添加してメトキシシラン基に加水分解を受けさせて−Si−ONa基を生じさせることでナトリウム塩が10%の溶液を生じさせる。
【0060】
生成物I(疎水修飾)の製造を下記のようにして実施する:5.00gのポリエチレンイミン(BASFのLupasol PR 8515)を0.92gのクロロプロピルトリメトキシシラン(PEI繰り返し単位の重量を基準にして4モル%)および1.46gの硫酸ジメチル(PEI繰り返し単位の重量を基準にして10モル%)と混合する。その混合物を室温に16時間維持した後、75℃に4時間加熱することで重合反応生成物を生じさせる。次に、NaOH水溶液(20g/L)を添加することでナトリウム塩が10%の溶液を生じさせる。
【0061】
試験手順Aに従う生成物HとIを比較する試験を行った結果(表4)、疎水性が比較的高い方の生成物Iを用いると沈澱する方ソーダ石の量の減少度合が有意により良好になることが分かる。
【0062】
【表4】
【実施例5】
【0063】
生成物J(比較)の製造を下記のようにして実施する:5.00gのポリエチレンイミン(BASFのLupasol PR 8515)を約1.65gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(PEI繰り返し単位の重量を基準にして6モル%)と混合する。その混合物を室温に16時間維持した後、75℃に4時間加熱することで重合反応生成物を生じさせる。次に、NaOH水溶液(20g/L)を添加してメトキシシラン基に加水分解を受けさせて−Si−ONa基を生じさせることでナトリウム塩が10%の溶液を生じさせる。
【0064】
生成物K−R(疎水修飾)の製造を下記のようにして実施する:5.00gのポリエチレンイミン(BASFのLupasol PR 8515)を約1.65gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(PEI繰り返し単位の重量を基準にして6モル%)および表5に示す量の2番目の窒素反応性化合物(PEI繰り返し単位の重量を基準にして5モル%)と混合する。その混合物を室温に16時間維持した後、75℃に4時間加熱することで重合反応生成物を生じさせる。次に、NaOH水溶液(20g/L)を添加してメトキシシラン基に加水分解を受けさせて−Si−ONa基を生じさせることでナトリウム塩が10%の溶液を生じさせる。
【0065】
試験手順Aに従う生成物J−Rを比較する試験を行った結果(表5)、疎水性が比較的
高い方の生成物K−Rを用いると沈澱する方ソーダ石の量の減少度合が有意により良好になることが分かる。
【0066】
【表5】
【実施例6】
【0067】
生成物S(比較)の製造を下記のようにして実施する:10.00gのポリエチレンイミン(BASFのLupasol WF)を約1.1gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(PEI繰り返し単位の重量を基準にして2モル%)と混合する。その混合物を75℃に5時間加熱することで重合反応生成物を生じさせる。次に、NaOH水溶液(20g/L)を添加してメトキシシラン基に加水分解を受けさせて−Si−ONa基を生じさせることでナトリウム塩が10%の溶液を生じさせる。
【0068】
生成物T(疎水修飾)の製造を下記のようにして実施する:10.00gのポリエチレンイミン(BASFのLupasol WF)を1.10gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(PEI繰り返し単位の重量を基準にして2モル%)および0.064gのグリシジル4−ノニルフェニルエーテル(PEI繰り返し単位の重量を基準にして0.1モル%)と混合する。その混合物を75℃に5時間加熱することで重合反応生成物を生じさせる。次に、NaOH水溶液(20g/L)を添加することでナトリウム塩が10%の溶液を生じさせる。
【0069】
生成物UおよびVの製造を生成物Tの製造で用いるグリシジル4−ノニルフェニルエーテルの量の代わりに生成物Uの製造ではグリシジル4−ノニルフェニルエーテルを0.128g(PEI繰り返し単位の重量を基準にして0.2モル%)用いそして生成物Vの製造ではグリシジル4−ノニルフェニルエーテルを0.32g(PEI繰り返し単位の重量を基準にして0.5モル%)用いる以外は生成物Tの様式と同様な様式で実施する。
【0070】
試験手順Aに従う生成物S、T、UおよびVを比較する試験を行った結果(表6)、疎水性が比較的高い方の生成物T、UおよびVを用いると沈澱する方ソーダ石の量の減少度合が有意により良好になりかつノニルフェニル(NP)含有量が比較的低い生成物でも向上した性能を示すことが分かる。
【0071】
【表6】
【0072】
(実施例7−15)
脱イオン水が50mlで50%の水酸化ナトリウムが2.0gの混合物に20.0gのトリエチレンテトラアミン(TETA)を溶解させる。撹拌を行いながら7.8gのグリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを滴下した後、その結果として得た混合物を1時間撹拌する。次に、10.1gのエピクロロヒドリン(Epi)を滴下する。氷浴で冷却することで温度を30℃未満に維持する。発熱が完了した後、冷却を行って温度を30℃未満に維持しながら50%の水酸化ナトリウムを14.6g滴下することで重合反応生成物を生じさせる(実施例7)。
【0073】
実施例8−15の重合体生成物の調製を下記を除いて同様な様式で実施する:実施例8−11および13ではトリエチレンテトラアミンの約1/3(モルを基準)を1,8−ジアミノオクタン(実施例8)、ジアミノイソホロン(実施例9)、1,2−ジアミノエタン(実施例10)、1,3−ジアミノプロパン(実施例11)または1,6−ジアミノヘキサン(実施例13)に置き換え、実施例12では、最初に20.0gのトリエチレンテトラアミンを0.2モル(TETAとEpiを基準)のグリシジルノニルフェノール(GNP)と80℃で5時間反応させた後、エピクロロヒドリン、水酸化ナトリウムおよびグリシジルオキシプロピルトリメトキシシランと反応させ、そして実施例14および15では、TETAの代わりにそれぞれN,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン(BAPED)およびN,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン(BAPPD)を用いる。その結果として生じた重合体の組成を表7Aに示す。「モル%」値を総重合体バックボーン単量体(アミンとエピクロロヒドリンの全部の合計)に対するパーセントとして表す。
【0074】
【表7】
【0075】
実施例7−15の重合体は式(I)で表される繰り返し単位と式(II)で表される繰り返し単位を含有して成り、ここで、Eは−CH
2CH(OH)CH
2−であり、A
1はCH
2CH(OH)CH
2−O−CH
2CH
2CH
2−であり、R”はNaであり、そしてA
2、TおよびQは以下の表7Bに示す通りである。
【0076】
【表8】
【0077】
(実施例16A−N)
試験手順Aに従う実施例7−15の重合体生成物を比較する試験を行った結果(表8)、疎水性が比較的高い方の実施例7−15を用いると一般に沈澱する方ソーダ石の量の減少度合が有意により良好になることが分かる。この試験用のブランクには重合体を含有させない。
【0078】
【表9】
【0079】
(実施例17−30)
処理が困難な合成液体(高レベルの核廃棄流れの代表例)の調製を表9に示す組成をもたらす適切な塩を水に溶解させることで実施する。
【0080】
【表10】
【0081】
クロロオクタンの代わりに塩化ブチル(疎水型:B)、塩化ヘキシル(疎水型:H)または4−ノニルフェニルグリシジルエーテル(疎水型:GNP)を用いる以外は前記実施例1に示した生成物B1に関して記述した様式と同様な様式で一連の疎水修飾ポリエチレンイミンを調製する。表9に記述した処理が困難な合成液体を用いて、結果として得た重合体生成物が示す性能を互いに比較する試験を上述した試験方法に従って実施する。表10に示す結果は、そのような重合体生成物は前記処理が困難な合成液体の中で沈澱する方
ソーダ石の量を減少させるに有用であることを例証している。表10では、スケール%をスケール防止剤を用いていないブランクに対するパーセントとして報告する。
【0082】
【表11】
【0083】
(実施例31−34)
重合体#1の製造をグリシジル4−ノニルフェニルエーテルを2倍多く(PEI単位の重量を基準にして2モル%)用いる以外は実施例2に示した生成物Cと同じ様式で実施する。
【0084】
重合体#2の製造をグリシジル2−エチルヘキシルエーテル(PEI単位の重量を基準にして2モル%)をグリシジル4−ノニルフェニルエーテルの代わりに用いる以外は実施例2に示した生成物Cと同じ様式で実施する。
【0085】
重合体#3の製造をグリシジルオクチル/デシルエーテル(PEI単位の重量を基準にして2モル%)をグリシジル4−ノニルフェニルエーテルの代わりに用いる以外は実施例2に示した生成物Cと同じ様式で実施する。
【0086】
試験手順AおよびCに従う生成物#1、#2および#3を生成物Aと比較する試験を実施する(表11)。その結果から、疎水性が比較的高い方の実施例31−33の重合体を用いると疎水性が低い生成物Aを用いた時に比べて両方の処理が困難な液体に関するスケール減少度合が有意により良好になることが分かる。
【0087】
【表12】
【0088】
(実施例35−52)
以下の表12および13に示す生成物の製造をノニルフェニル基をオクチル/デシル(PEIに対して10モル%)または2−エチルヘキシル(PEIに対して5モル%)に置き換えかつPEIに対するグリシドキシプロピルトリメトキシシランのモル%を示すように変える以外は実施例3に示した生成物Fと同じPEIおよび同じ様式で実施する。試験手順A、BおよびCに従う前記重合体に対して実施した試験の結果から、疎水性が比較的高い方の重合体を用いると一般に対照重合体に比べて前記3種類の処理が困難な液体の全部に関するスケール減少度合が有意により良好になることが分かる。
【0089】
【表13】
【0090】
【表14】
【0091】
(実施例53−104)
重合体生成物の製造および試験を水酸化カリウムを水酸化ナトリウムの代わりに用いて加水分解を起こさせて重合体のカリウム塩を生じさせる以外は前記実施例1−52に記述したようにして実施する。達成した結果は同様である。
【0092】
(実施例105−156)
重合体生成物の製造および試験を水酸化アンモニウムを水酸化ナトリウムの代わりに用いて加水分解を起こさせて重合体のアンモニウム塩を生じさせる以外は前記実施例1−52に記述したようにして実施する。達成した結果は同様である。
【0093】
当業者は、本明細書に開示した態様の範囲から逸脱することなくいろいろな修飾および変更を行うことができることを理解するであろう。そのような修飾形および変形を添付請求項で定義する如き本明細書に開示する態様の範囲内に入れることを意図する。