(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、調理量が多い場合など、繰り返し加熱庫を利用した調理が行われるが、初回調理で加熱容器を用いた調理が終了した後、被調理物を入れ替えて同じ加熱容器を加熱庫内に導入して調理を行う場合、加熱庫及び加熱容器はいずれも高温の状態から調理が開始される。
【0006】
しかしながら、複数種の調理具を用いた調理が可能な加熱調理器では、初回調理で焼網を用いた調理が行われた後、続けて加熱容器を用いた調理が行われる場合がある。このような場合、加熱庫の初期温度は高いが、加熱容器の温度は室温程度と低い。それゆえ、加熱庫の初期温度が高いホットスタートの場合であっても、調理開始時の加熱容器の温度状態によって被調理物の調理の進行度合いが異なってくるから、例えば、加熱庫及び加熱容器の温度がいずれも高い場合のみを考慮して、初期温度が低いコールドスタートの場合と異なる燃焼パターンを設定した場合、初期温度が高くても、加熱容器の温度が低い場合には加熱不足となる可能性がある。一方、初期温度は高いが、加熱容器の温度が低い場合を考慮して燃焼パターンを設定すると、初期温度、及び加熱容器の温度がいずれも高い場合には、焼き過ぎや焦げ付きが生じやすい。特に、加熱容器を用いた調理では、調理初期の加熱量が加熱容器の温度を上昇させるのに使用されるため、加熱容器の温度によって被調理物の焼き上がりの相違が顕著となる。
【0007】
上記観点から、特許文献1のように初期温度からの温度上昇幅に基づき加熱容器の有無を判定するだけでなく、調理開始時の加熱容器の温度状態を判定することも考えられるが、加熱容器に収容される被調理物の種類や量、さらに加熱容器を固定するための容器固定枠等の他の調理具を用いた場合、それらによっても温度上昇幅が異なってくるため、調理開始時の加熱容器の温度状態を正確に判定することが難しい。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、加熱容器を加熱庫内に導入して調理を行う容器調理モードと、焼網等の加熱容器以外の調理具を加熱庫内に導入して調理を行う非容器調理モードとを選択可能な加熱調理器で繰り返し加熱庫を利用した調理が行われるときに、今回の調理モードで容器調理モードが選択された場合、調理開始時の加熱容器の温度状態を考慮して、適切な火力で被調理物を過不足なく加熱して、焼き上がりの良好な被調理物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、加熱庫と、
前記加熱庫内を加熱するガスバーナと、
前記加熱庫の庫内温度を検知する温度検知部と、
前記加熱庫内に被調理物を収容した加熱容器を導入して調理を行う容器調理モード、及び前記加熱容器の代わりに前記加熱庫内に焼網等の調理具を導入して調理を行う非容器調理モードを選択可能な調理モード選択部と、
前記調理モード選択部で選択された調理モードを実行する制御装置と、を有する加熱調理器であって、
前記制御装置は、前記調理モード選択部で選択された調理モードを記憶し、
前記調理モード選択部で容器調理モードが選択されると、記憶された前回の調理モードに基づき調理開始時の加熱容器の温度状態を判定する制御構成を有する加熱調理器である。
【0010】
上記加熱調理器によれば、調理開始時の加熱容器の温度状態の判定は、記憶された前回の調理モードに基づき行われるから、被調理物の種類や量、さらには容器固定枠などの他の調理具の温度状態により変化しやすい初期温度からの温度上昇幅などの温度特性に依存することなく、正確に調理開始時の加熱容器の温度状態を判定することができる。これにより、繰り返し加熱庫を利用して、容器調理モードで調理を行う場合に、加熱容器の温度状態を考慮してより適切な火力で被調理物を調理することができる。
【0011】
上記加熱調理器において、好ましくは、
前記制御装置は、さらに調理開始時の加熱庫の初期温度に基づき調理開始時の加熱容器の温度状態を判定する。
【0012】
容器調理モードで繰り返し加熱庫を利用した調理が行われる場合でも、前回の調理が終了してから一定時間が経過すると、加熱庫及び加熱容器の温度はいずれも低下する。従って、前回の調理モードだけでなく、調理開始時の加熱庫の初期温度を利用すれば、より正確に調理開始時の加熱容器の温度状態を判定することができる。
【0013】
上記加熱調理器において、好ましくは、
前記制御装置は、前記調理モード選択部で容器調理モードが選択されると、
記憶された前回の調理モードが非容器調理モードである場合、調理開始時の加熱容器の温度状態を低温と判定し、
記憶された前回の調理モードが容器調理モードであり、且つ調理開始時の加熱庫の初期温度が所定のホットスタート温度以上である場合、調理開始時の加熱容器の温度状態を高温と判定し、
記憶された前回の調理モードが容器調理モードであるが、調理開始時の加熱庫の初期温度が所定のホットスタート温度未満である場合、調理開始時の加熱容器の温度状態を低温と判定する。
【0014】
前回の調理モードが焼網等を用いた非容器調理モードである場合、加熱庫の初期温度は高いが、加熱容器の温度は室温程度と低い。このような加熱容器の温度状態の場合に、加熱庫及び加熱容器がいずれも高温の状態から繰り返し容器調理モードで調理が行われる場合と同じ燃焼パターンで調理を行うと、加熱不足が生じやすい。しかしながら、上記加熱調理器によれば、前回の調理モードが非容器調理モードである場合、加熱庫の初期温度に関わらず、調理開始時の加熱容器の温度状態を低温と判定するから、適切な燃焼パターンで被調理物を調理することができる。
また、容器調理モードでの調理が終了した後、短時間内に繰り返し容器調理モードでの調理が行われる場合、加熱庫及び加熱容器はいずれも高温の状態から調理が開始されるが、前回の容器調理モードでの調理が終了してから一定時間が経過している場合、庫内温度の低下に伴って、加熱容器も温度が低下している可能性が高い。このため、容器調理モードでの調理が繰り返される場合であっても、調理開始時の加熱庫の初期温度が所定のホットスタート温度以上であるかどうかを判定することにより、適切な燃焼パターンで被調理物を調理することができる。
【0015】
上記加熱調理器において、好ましくは、
前記制御装置は、前記調理モード選択部で選択された調理モードでの調理時間が一定時間以上である場合に、選択された調理モードを記憶する。
【0016】
容器調理モード、非容器調理モードいずれでも、調理終了後に使用者が被調理物の調理不足を解消するために、短時間の追い加熱を行う場合がある。そのため、このような追い加熱も前回の調理モードとして記憶させると、調理開始時の加熱容器の温度状態が誤判定される虞がある。しかしながら、上記加熱調理器によれば、前回の調理モードでの調理時間が一定時間以上であった場合にのみ調理モードが記憶されるから、前回の調理における加熱容器の実際の使用の有無に基づいて後の容器調理モードでの調理における加熱容器の温度状態を正確に判定することができる。
【0017】
上記加熱調理器において、好ましくは、
前記制御装置は、前記調理開始時の加熱容器の温度状態、及び前記温度検知部で検知される調理開始時の加熱庫の初期温度に応じて設定されている燃焼パターンで前記ガスバーナを燃焼させる。
【0018】
加熱容器は焼網等の他の調理具と比べて大きな熱容量を有しているから、調理開始時の加熱庫の初期温度だけでなく、調理開始時の加熱容器の温度状態が被調理物の焼き上がりに大きく影響する。従って、上記加熱調理器によれば、調理開始時の加熱容器の温度状態、及び調理開始時の加熱庫の初期温度に応じて設定された適切な燃焼パターンで調理を行うことができ、被調理物を過不足なく加熱できる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、連続して容器調理モードで調理が行われる場合だけでなく、前回、非容器調理モードで調理が行われた後、容器調理モードで調理が行われる場合でも、調理開始時の加熱容器の温度状態を正確に判定できるから、加熱庫の初期温度だけでなく、加熱容器の温度状態も考慮してより適切な火力で被調理物を調理することができる。その結果、繰り返し加熱庫を利用した調理が行われる場合でも、被調理物の焼き具合の過不足が抑えられ、料理の食味向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本実施の形態に係る加熱調理器を具体的に説明する。
図1は、天板30の上面に複数のコンロバーナ31,32,36を備えたガスコンロであり、コンロ本体3の内部には、焼網や加熱容器5を用いた調理を行うためのグリル庫2(加熱庫)が設けられている。また、天板30上面の前方には、運転状態や調理モード、さらに調理条件等を表示する液晶表示部300が配設されており、表示盤が視認できるように構成されている。
【0022】
図2に示すように、グリル庫2の前面開口部100には、前後にスライド開閉するグリル扉21が設けられている。グリル扉21の後面部には、グリル庫2内へ向かってトレイ受け枠19が延設されており、さらにトレイ受け枠19の上部には、被調理物の油や水分を受けるためのグリルトレイ16が載置されている。図示しないが、焼網を用いた調理を行う場合は、グリルトレイ16の上面に焼網が載置される。一方、加熱容器5を用いた調理を行う場合には、焼網に代えて容器固定枠20がグリルトレイ16の上面に取り付けられ、容器固定枠20の上部に金属製や陶器製の加熱容器5が載置される。
【0023】
容器固定枠20は、金属製の複数の線材により構成されており、その上部は、加熱容器5の容器本体の底部形状に合致する凹状に形成されている。加熱容器5は、容器固定枠20の上部に嵌め込むようにして載置され、グリル扉21が閉じられることで、グリル庫2内の一定位置に収容される。また、容器固定枠20の後端部には、後述する排気通路13に設けた温度センサ14(温度検知部)を覆うための遮蔽板8が設けられている。これにより、加熱容器5を載せた容器固定枠20がグリル庫2内に導入されると、遮蔽板8が温度センサ14の周囲に配置される。その結果、遮蔽板8により排気通路13に設けられた温度センサ14に対して温度センサ14の上方と前方からの排気の流れ込みが抑制され、加熱容器5を用いた調理を行うときの温度センサ14への排気の接触が低減される。
【0024】
図2に示すように、グリル庫2内の上壁の中央部には、被調理物や加熱容器5を上方から加熱するための上バーナ56が設けられている。また、グリル庫2内の左右の側壁の中央部より下方位置には、被調理物や加熱容器5を側方及び下方から加熱するための下バーナ55が設けられている。下バーナ55は、一方の側壁にのみ設けられてもよい。グリル庫2の奥端には排気ダクト17が連設されており、排気ダクト17が排気通路13となっている。そして、この排気通路13の上流端近傍には、排気通路13を流れる燃焼排気の温度を検知する温度センサ14が配設されており、温度センサ14によりグリル庫2の庫内温度が検知される。温度センサ14は、複数設けられてもよい。
【0025】
図1に戻って、グリル庫2のグリル扉21の右側に位置する操作部23には、電源スイッチ29とコンロバーナ31,32,36の点・消火と火力調整機能を兼備した点消火スイッチ24,25,28が配設されている。一方、グリル庫2のグリル扉21の左側に形成された操作部22には、グリル用スイッチ37と、その下方の引き出し式操作部38が設けられている。グリル用の引き出し式操作部38は、コンロ本体3に対して引出し・押し込み自在に装着されており、不使用時には引き出し式操作部38をコンロ本体3に対して押し込んだ収納状態にできるように構成されている。
【0026】
本実施の形態の加熱調理器は、使用者がグリル用スイッチ37を手動で操作して上下バーナ56,55の加熱量を調節する手動調理の他、自動調理モードとして焼網調理モードと容器調理モードの両方を有しており、
図1に示すように、グリル用の引き出し式操作部38をコンロ本体3から引き出すと、引き出し式操作部38の内部に設けられたタッチパネル式操作部380が現れる。このタッチパネル式操作部380には、グリル庫2内の焼網上に魚などの被調理物を載置して、自動調理する焼網調理モード用のオートスイッチ41と、グリル庫2内に容器固定枠20と被調理物を収容した加熱容器5とを設置し、自動調理する容器調理モード用のメニュースイッチ42とを個別に配置した調理モード選択部が設けられており、さらに、各種設定を変更する設定変更スイッチ43と、子供による悪戯を防止するためのロックキー44とが設けられている。
【0027】
また、タッチパネル式操作部380には、オートスイッチ41やメニュースイッチ42を押すことにより選択された調理モードに基づき、被調理物の種類や焼き加減の調理条件をそれぞれ選択する調理条件選択部として上下スイッチ45,46と+及び−スイッチ47,48とが設けられている。上下スイッチ45,46は、メニュースイッチ42を押して容器調理モードを選択した後、上スイッチ45または下スイッチ46を繰り返して押すごとに、「焼き魚」や「鶏もも焼」等の被調理物の種類が選択できるように構成されている。また、+及び−スイッチ47,48は、メニュースイッチ42を押して容器調理モードを選択した後、+スイッチ47または−スイッチ48を繰り返して押すごとに、「弱め」、「標準」、及び「強め」の被調理物の焼き加減が選択できるように構成されている。さらに、オートスイッチ41を押して焼網調理モードを選択した後、上スイッチ45または下スイッチ46を繰り返して押すごとに、焼網調理するときの、「姿焼」、「切身」、及び「干物」の被調理物の種類が選択できるように構成されている。そして、オートスイッチ41を押して焼網調理モードを選択した後、+スイッチ47または−スイッチ48を繰り返して押すごとに、「弱め」、「標準」、及び「強め」の被調理物の焼き加減が選択できるように構成されている。なお、本実施の形態のガスコンロでは、グリル用スイッチ37のみを使用して手動調理が行われた場合、後述する調理モード記憶部には、焼網調理モードでの調理として記憶されるように構成されている。
【0028】
図3は、本実施の形態のガスコンロのブロック図である。なお、制御装置Cは、上下バーナ56,55だけでなく、コンロバーナ31,32,36の燃焼も制御するが、以下では上下バーナ56,55についてのみ説明し、コンロバーナ31,32,36については説明を省略する。
【0029】
図3に示すように、上下バーナ56,55にはそれぞれ、ガス供給管550から分岐した分岐管551,561が接続されており、ガス供給管550には、メイン弁V1が配設されている。分岐管551,561には、火力切替弁V2,V3が配設されており、火力切替弁V2,V3のバイパス管553,563にはオリフィス554,564が設けられている。これらメイン弁V1、及び火力切替弁V2,V3は、制御装置Cでその開閉が制御される。具体的には、メイン弁V1が開閉すると、上下バーナ56,55の両方に燃料ガスが供給または停止される。また、火力切替弁V3が開弁すると、分岐管561及びバイパス管563の両方から上バーナ56に燃料ガスが供給されて、上バーナ56が強火燃焼し、火力切替弁V3が閉弁すると、バイパス管563のみから燃料ガスが供給されて、上バーナ56が弱火燃焼する。さらに、火力切替弁V2が開弁すると、分岐管551及びバイパス管553の両方から下バーナ55に燃料ガスが供給されて、下バーナ55が強火燃焼し、火力切替弁V2が閉弁すると、バイパス管553のみから燃料ガスが供給されて、下バーナ55が弱火燃焼する。また、上下バーナ56,55の各炎孔近傍には、イグナイタ600から高電圧を印加させることによって火花放電する点火電極501,601と、炎孔に形成された炎センサ502,602とが配設されている。
【0030】
制御装置Cには、上記温度センサ14、電源スイッチ29、グリル用スイッチ37、メイン弁V1、火力切替弁V2,V3、液晶表示部300、オートスイッチ41やメニュースイッチ42を含むタッチパネル式操作部380、イグナイタ600、及び炎センサ502,602などが電気配線を介して接続されている。
【0031】
グリル庫2を制御する制御装置Cは、マイクロコンピュータ、タイマなどで構成されている。マイクロコンピュータには、被調理物の加熱調理を実行する制御プログラムが組み込まれており、制御プログラムに基づいて上下バーナ56,55の加熱量や調理時間などが制御される。また、図示しないが、マイクロコンピュータは、機能構成として、温度センサ14によって検知される調理開始時のグリル庫2の初期温度に基づいて、コールドスタートかホットスタートかを判定する初期温度判定部と、調理モード選択部であるオートスイッチ41またはメニュースイッチ42が選択されて所定時間以上、調理が行われた場合に、調理モードの種類を記憶する調理モード記憶部と、調理モード記憶部に記憶されている前回の調理モードや調理開始時のグリル庫2の初期温度から調理開始時の加熱容器5の温度状態を判定する容器温度判定部と、後述する燃焼パターンに基づいてメイン弁V1や火力切替弁V2,V3を開閉して上下バーナ56,55の加熱量を制御する燃焼制御部とを有している。さらに、マイクロコンピュータのメモリには、選択された調理モード、被調理物の種類や焼き加減などの調理条件、調理開始時のグリル庫2の初期温度、及び調理開始時の加熱容器5の温度状態に応じて設定された上下バーナ55,56の加熱量を制御するための各燃焼パターンの設定条件、調理時間や、調理開始時のグリル庫2の初期温度を判定するためのホットスタート温度などの設定値が格納されている。これらの数値は、ガスコンロの特性に基づいて実験により予め求めることができる。
【0032】
表1及び表2は、本実施の形態のガスコンロで、容器調理モードが選択された場合に使用される、被調理物の種類が「焼き魚」、焼き加減が「弱め」の場合の燃焼パターンに設定されている各種設定値のデータテーブルの一例を示す。表1は、調理開始時の加熱容器5の温度状態が「高」(例えば、70℃以上)と判定された場合に使用される高温燃焼パターンを示し、表2は、調理開始時の加熱容器5の温度状態が「低」(例えば、70℃未満)と判定された場合に使用される燃焼パターンを示す。なお、説明は省略するが、制御装置Cは、他の被調理物の種類や焼き加減、さらに他の調理モードに応じて複数の燃焼パターンのデータテーブルを備えている。
【0035】
上記表1及び表2に示すように、本実施の形態では、同種の被調理物(例えば、「焼き魚」)を、同一の焼き加減(例えば、「弱め」)で容器調理モードにより調理する場合、調理開始時の加熱容器5の温度状態、及び調理開始時のグリル庫2の初期温度に基づいて異なる燃焼パターンで上下バーナ56,55の火力が変更される。
【0036】
これをより詳細に説明すると、表1に示すように、被調理物の種類が「焼き魚」に、焼き加減が「弱」に設定され、調理開始時の加熱容器5の温度状態が「高」と判定された場合、温度センサ14で検知される初期温度T0がホットスタート温度(例えば、100℃)以上である「SH」(例えば、200℃以上)の状態から調理が開始されるときの燃焼パターンでは、まず上下バーナ56,55の初期火力P0がいずれも「強火」で制御され、第1切替時間t1(例えば、調理開始から5分間)が経過すると、上下バーナ56,55の火力が第1切替火力P1(例えば、上バーナ56が「強火」、下バーナ55が「弱火」)に弱められる。次いで、火力変更が行われた後、第2切替時間t2(例えば、調理開始から8分間)が経過すると、上下バーナ56,55の火力が第2切替火力P2(例えば、上バーナ56が「弱火」、下バーナ55が「弱火」)に弱められる。さらに、第3切替時間t3(例えば、設定されている調理時間終了より1分間前)が経過すると、上下バーナ56,55がいずれも消火されて、調理時間が終了するまで、余熱で調理する余熱調理時間が設けられ、調理時間が終了すると、図示しないスピーカ等から調理終了が報知される。なお、表1の燃焼パターンでは、加熱時間のみに基づいて上下バーナ56,55の火力を低下させるタイミングが設定されているが、調理中の庫内温度にも基づいて火力を低下させるタイミングを設定してもよい。
【0037】
一方、表2に示すように、被調理物の種類が「焼き魚」に、焼き加減が「弱」に設定され、調理開始時の加熱容器の温度状態が「低」と判定された場合、温度センサ14で検知される初期温度T0がホットスタート温度(例えば、100℃)以上である「SH」(例えば、200℃以上)の状態から調理が開始される燃焼パターンでは、まず上下バーナ56,55の初期火力P0がいずれも「強火」で制御され、第1切替時間t1(例えば、調理開始から7分間)が経過すると、上下バーナ56,55の火力が第1切替火力P1(例えば、上バーナ56が「強火」、下バーナ55が「弱火」)に弱められる。次いで、火力変更が行われた後、第2切替時間t2(例えば、調理開始から10分間)が経過すると、上下バーナ56,55の火力が第2切替火力P2(例えば、上バーナ56が「弱火」、下バーナ55が「弱火」)に弱められる。さらに、第3切替時間t3(例えば、設定された調理時間終了より1分間前)が経過すると、上下バーナ56,55がいずれも消火されて、調理時間が終了するまで、余熱で調理する余熱調理時間が設けられる。
【0038】
また、表1及び表2に示すように、グリル庫2の初期温度T0がホットスタート温度(例えば、100℃)以上である「HH」や「H」の状態から調理が開始される場合でも、上記と同様に、調理開始時の加熱容器5の温度状態が「高」の場合の燃焼パターンは、「低」の場合の燃焼パターンに比べて火力切替のタイミングが早期になるように設定されている。このように、調理開始時のグリル庫2の初期温度T0が所定のホットスタート温度以上であり、しかも調理開始時の加熱容器5の温度状態が高温の場合の燃焼パターンは、調理開始時の加熱容器5の温度状態が低温の場合の燃焼パターンに比べて、早期に火力を低下させるように設定されている。従って、本実施の形態の容器調理モードで設定されている燃焼パターンを用いることにより、容器調理モードで繰り返し調理が行われる場合に被調理物の焼き過ぎを防止でき、一方、焼網調理モードなどの非容器調理モードで自動調理が行われた後、続けて容器調理モードで自動調理が行われる場合でも、被調理物の加熱不足を防止できる。なお、調理開始時のグリル庫2の初期温度T0がホットスタート温度(例えば、100℃)未満である「L」の場合、前回の調理が終了してから一定時間が経過しており、グリル庫2及び加熱容器5はいずれも温度が低下していると考えられるから、同一の燃焼パターンが設定されている。
【0039】
さらに、本実施の形態の容器調理モードで使用される燃焼パターンは、調理開始時の加熱容器5の温度状態だけでなく、調理開始時のグリル庫2の初期温度に応じて複数の温度帯に分類されており、各温度帯で設定された条件で燃焼制御が行われる。このように、加熱庫2の初期温度に基づいて、同一の調理条件でも、4つ以上の温度帯に分類した燃焼パターンを設定することにより、各温度帯でフォローできる範囲が狭くなるから、細かな燃焼制御を行うことができ、より適切に被調理物を調理することができる。
【0040】
次に、本実施の形態のガスコンロを用いて自動調理を行う場合の制御動作を説明する。
図4は、オートスイッチ41またはメニュースイッチ42が選択された場合に自動調理を行うための制御プログラムの一例を示すフローチャートである。なお、各調理モードでタイマ調理が行われた場合も同様の制御が行われる。
使用者が電源スイッチ29をオンした後、オートスイッチ41またはメニュースイッチ42が操作されると、選択された今回の調理モードが容器調理モードであるかどうかが判定される(ステップST1)。そして、使用者がメニュースイッチ42を操作した場合(ステップST1で、Yes)、調理モード記憶部に記憶されている前回の調理モードが容器調理モードであるかまたは焼網調理モードであるかどうかが判定される(ステップST2)。
【0041】
前回行われた調理モードが容器調理モードである場合(ステップST2で、Yes)、さらに温度センサ14で検知されるグリル庫2の初期温度が所定のホットスタート温度(例えば、100℃)以上であるかどうかが判定される(ステップST3)。そして、初期温度がホットスタート温度以上であった場合(ステップST3で、Yes)、短時間内に繰り返し容器調理モードで調理が行われていると考えられるから、調理開始時の加熱容器5の温度状態が「高」と判定される(ステップST4)。
【0042】
次いで、判定された加熱容器5の温度状態、グリル庫2の初期温度、並びに使用者が設定する被調理物の種類及び焼き加減の調理条件に応じた高温燃焼パターンと、調理時間とが読み込まれ(ステップST5)、使用者がグリル用スイッチ37をオンして調理を開始させると、タイマをスタートさせるとともに、メイン弁V1及び火力切替弁V2,V3が開弁され、さらにイグナイタ600から高電圧が点火電極601に印加されて、上下バーナ56,55が点火される(ステップST6)。そして、所定の燃焼パターンで上下バーナ56,55の加熱量が調整され、所定の調理時間が経過すると(ステップST7で、Yes)、今回の容器調理モードを調理モード記憶部に記憶し、メイン弁V1を閉弁して、調理を終了させる。なお、調理モードの誤選択等により調理開始から短時間内に使用者が調理を中断させたときや追い加熱などの調理時間が所定時間(例えば、2分間)未満である場合、今回の調理モードを調理モード記憶部に記憶することなく、調理を終了させる(ステップST8〜ST10)。
【0043】
また、使用者がメニュースイッチ42を操作し、今回の調理モードが容器調理モードであるが、前回行われた調理モードが焼網調理モードである場合(ステップST2で、No)、前回の調理では加熱容器5は使用されていないと考えられるから、グリル庫2の初期温度がホットスタート温度以上であるかどうかを判定することなく、調理開始時の加熱容器の温度状態が「低」と判定される(ステップST11)。
【0044】
次いで、上記と同様に、判定された加熱容器5の温度状態、グリル庫2の初期温度、並びに使用者が設定する被調理物の種類及び焼き加減の調理条件に応じた低温燃焼パターンと、調理時間とが読み込まれて自動調理が行われ、調理が終了すると、調理モードが記憶される(ステップST12〜ST17)。
【0045】
さらに、使用者がメニュースイッチ42を操作し、前回行われた調理モードも容器調理モードであるが、温度センサ14で検知されるグリル庫2の初期温度が所定のホットスタート温度(例えば、100℃)未満であった場合(ステップST3で、No)、前回行われた調理から一定時間が経過し、グリル庫2及び加熱容器5の温度が低下していると考えられるから、調理開始時の加熱容器5の温度状態は「低」と判定される(ステップST11)。従って、この場合、前回の調理モードが非容器調理モードである場合と同様の低温燃焼パターンで自動調理が行われ、調理が終了すると、調理モードが記憶される(ステップST12〜ST17)。
【0046】
なお、使用者がオートスイッチ41を操作した場合(ステップST1で、No)、所定の焼網調理モードで設定されている燃焼パターンで自動調理が行われ、調理が終了すると、調理モードが記憶される(ステップST18〜ST23)。
【0047】
上記ガスコンロによれば、今回の調理モードで容器調理モードが選択された場合、調理モード記憶部に記憶されている前回行われた調理の調理モード、及びグリル庫2の初期温度が確認されるから、今回の容器調理モードにおける加熱容器5の温度状態を正確に判定することができる。すなわち、前回の調理モードが非容器調理モードである場合、グリル庫2の初期温度に関わらず加熱容器5の温度状態は室温程度で低いと考えられる。従って、グリル庫2の初期温度が高温であっても、熱容量の大きな加熱容器5の温度を上昇させるのに一定の時間が必要となるから、早期に火力切替を行う高温燃焼パターンで被調理物を調理すると、焼き不足が生じやすい。しかしながら、上記ガスコンロでは、前回の調理モードが非容器調理モードであれば、グリル庫2の初期温度に関わらず、低温燃焼パターンで被調理物が調理されるから、被調理物を適切に焼き上げることができる。
【0048】
また、前回の調理モードが容器調理モードであれば、加熱容器5が使用されており、しかもグリル庫2の初期温度も所定のホットスタート温度以上であれば、調理開始時の加熱容器5の温度状態は高温と考えられるから、火力切替の遅い低温燃焼パターンで被調理物を調理すると、被調理物の焼き過ぎが生じやすい。しかしながら、上記ガスコンロによれば、容器調理モードで繰り返し調理が行われたときに、加熱容器5の温度状態が高温と判定された場合には、高温燃焼パターンで被調理物が調理されるから、被調理物を適切に焼き上げることができる。
【0049】
さらに、前回の調理モードが容器調理モードであるが、グリル庫2の初期温度が所定のホットスタート温度未満であれば、前回の調理が終了してから一定時間が経過して加熱容器5の温度状態も低いと考えられるから、高温燃焼パターンで被調理物を調理すると、被調理物の焼き不足が生じやすい。しかしながら、上記ガスコンロによれば、前回の調理モードが容器調理モードであっても、グリル庫2の初期温度に基づき加熱容器5の温度状態が低温と判定された場合には、低温燃焼パターンで被調理物が調理されるから、被調理物を適切に焼き上げることができる。
【0050】
また、燃焼パターンに基づいて自動調理を行う場合、上下バーナ56,55の加熱量は各調理モードで標準的な値に基づいて設定されるため、被調理物の種類や大きさによっては調理終了時に使用者が被調理物の加熱が不十分と感じる場合がある。このような場合、使用者が調理終了後、手動調理あるいはタイマ調理で短時間の追い加熱を行うことがある。そのため、短時間の調理でも所定の調理モードでの調理として認識して記憶させると、実際に行われた調理モードとは異なる調理モードが前回の調理モードとして判断され、加熱容器5の温度状態が誤判定される虞がある。しかしながら、上記ガスコンロでは、調理時間が所定時間以上行われなければ、調理モードが記憶されないから、そのような短時間の調理による加熱容器5の温度状態の誤判定を確実に防止できる。
【0051】
従って、上記ガスコンロによれば、繰り返しグリル庫2を利用した調理が行われる場合に、今回の調理モードで容器調理モードが選択されると、調理開始時の加熱容器5の温度状態が正確に判定され、少なくとも調理開始時の加熱容器5の温度状態、及び調理開始時のグリル庫2の初期温度に応じた適切な燃焼パターンで被調理物が調理されるから、被調理物の焼き具合の過不足が抑えられ、料理の食味を向上させることができる。
【0052】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、容器調理モード、焼網調理モードのいずれも調理モード記憶部に記憶されるが、いずれか一方のみの調理モードを記憶させれば、前回の調理モードが容器調理モードであるか、非容器調理モードであるかを判別できるため、いずれかの調理モードで調理が行われたときのみ、その調理モードを調理モード記憶部に記憶させてもよい。
(2)上記実施の形態では、グリル調理について説明したが、ガスバーナにより発生させた熱気を循環させるオーブン調理にも本発明を適用することができる。
(3)上記実施の形態では、調理モードとして容器調理モードと焼網調理モードを有する加熱調理器について説明したが、さらに、非容器調理モードとしてグリルプレートなどの調理具を用いたプレート調理モードでの調理が可能な加熱調理器にも本発明を適用することができる。
(4)上記実施の形態では、容器調理モードで1種類の加熱容器が用いられる場合の加熱調理器について説明したが、材質や大きさが異なる複数の加熱容器を用いた容器調理モードが可能な加熱調理器にも本発明を適用することができる。この場合、使用される加熱容器ごとに、異なる燃焼パターンが設定されてもよい。
(5)上記実施の形態では、調理開始時の加熱庫の初期温度がホットスタート温度以上である場合、3種の燃焼パターンが設定されているが、被調理物の種類や焼き加減に応じて、1種の燃焼パターンを設定してもよいし、さらに細分化して4種以上の燃焼パターンを設定してもよい。