特許第5940576号(P5940576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940576
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20160616BHJP
   F24C 3/12 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   A47J37/06 366
   F24C3/12 A
   F24C3/12 S
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-40401(P2014-40401)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-164494(P2015-164494A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】根笹 典政
【審査官】 西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−022425(JP,A)
【文献】 特開2003−106533(JP,A)
【文献】 特開2013−215420(JP,A)
【文献】 特開2002−340342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
F24C 3/12
F24C 7/02
F24C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱庫と、
被調理物を加熱するガスバーナと、
前記加熱庫の庫内温度を検知する温度検知部と、
前記加熱庫内に被調理物が載置される皿状のグリルプレートを導入して調理を行うプレート調理モード、及び前記グリルプレートを導入せず前記加熱庫内に焼網等の調理具を導入して調理を行う非プレート調理モードを選択可能な調理モード選択部と、
前記調理モード選択部で選択された調理モードを記憶する調理モード記憶部と、
前記調理モード選択部で選択された調理モードに応じて、前記ガスバーナの燃焼を制御する燃焼制御部と、を有し、
前記燃焼制御部は、前記調理モード選択部でプレート調理モードが選択されたときに、前記調理モード記憶部に記憶された前回の調理モードがプレート調理モードである場合、調理開始時の庫内温度が調理を実行するための所定の第1受付可能温度以下であれば、前記ガスバーナを点火して燃焼を開始させ、
前記調理モード選択部でプレート調理モードが選択されたときに、前記調理モード記憶部に記憶された前回の調理モードが非プレート調理モードである場合、調理開始時の庫内温度が前記第1受付可能温度よりも低い調理を実行するための所定の第2受付可能温度以下になるまで、前記ガスバーナの点火を禁止する加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記ガスバーナは、被調理物を上方から加熱する上バーナ、及び被調理物を下方から加熱する下バーナを備え、前記上下バーナは、点消火が連動して行われる加熱調理器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱調理器において、
前記調理モード記憶部は、前記調理モード選択部で選択された調理モードでの調理時間が一定時間以上である場合に、選択された調理モードを記憶する加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被調理物を調理する加熱庫を備えた加熱調理器に関する。特に、本発明は、加熱庫内に、焼網等の調理具以外に、被調理物を載置するグリルプレートを導入して調理が可能な加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱庫と、被調理物を加熱する上下バーナと、加熱庫内の庫内温度を検知する温度センサとを有し、加熱庫内に魚などの被調理物が載置された焼網を導入して手動で上下バーナの加熱量を調節しながら調理する手動調理以外に、調理中の上下バーナの加熱量を自動で調節する自動調理が可能な加熱調理器が知られている(特許文献1)。この種の加熱調理器では、使用者が調理モード選択部で自動調理を選択すると、被調理物の種類や焼き加減に応じて、所定の調理時間、所定の加熱量で被調理物が加熱される。
【0003】
また、上記のような焼網を利用した調理の他に、加熱庫を利用して食パンやピザなどを調理するため、調理具として、これらの被調理物を載置する皿状のグリルプレートを加熱庫内に導入して調理するプレート調理が可能な加熱調理器が知られている。このようなグリルプレートを利用したプレート調理を行う場合、被調理物の上面は上バーナの直火により加熱されるが、被調理物の下面はグリルプレートを介して加熱されるため、被調理物の下面の調理の進行度合いが上面よりも遅くなる。また、グリルプレートは、一般に、線材で構成されている焼網よりも大きな熱容量を有しているため、調理初期における加熱量がグリルプレートの温度上昇に消費されてしまう。それゆえ、プレート調理を行うにあたって、下バーナにより被調理物の下面を十分に加熱するために調理時間を長くすると、上バーナによる被調理物の上面の加熱の方が過剰となって、上面に焦げ付きが発生しやすい。一方、上面の焦げ付きを防止するために調理時間を短くすると、被調理物の内部まで加熱されず、調理不足が発生しやすい。このため、プレート調理が可能な加熱調理器では、加熱庫内でのグリルプレートの高さや熱容量を調整し、被調理物の上下面を均等にバランスよく調理できるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−20718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、調理量が多いときや異なる種類の被調理物を調理するときなど、繰り返し加熱庫を利用した調理が行われる場合がある。このような繰り返し加熱庫を利用した調理では、加熱庫の庫内温度が高温の状態から調理が開始されるため、初回調理に比べて調理中に庫内温度が過度に高くなる虞があり、また被調理物の焦げ付きが生じやすい。そのため、調理開始時の庫内温度が所定温度に低下するまで、調理の開始を制限する制御構成を設けることが考えられる。
【0006】
しかしながら、焼網やグリルプレートなどの複数種の調理具を用いた調理が可能な加熱調理器では、焼網を用いて調理を行った後、続けてグリルプレートを用いてプレート調理を行う場合がある。このような異なる調理具を用いた調理を連続して行う場合、庫内温度は高くても、グリルプレートの温度は室温程度と低い。それゆえ、グリルプレートの温度状態によって被調理物の調理の進行度合いが異なってきて、上下面で均等な焼き上がりが得られないという問題がある。
【0007】
例えば、焼網を用いて調理を行った後、短時間内にグリルプレートを用いたプレート調理を行うと、庫内温度が高い状態で被調理物の上面は上バーナにより直火で加熱され、被調理物の下面は低温のグリルプレートに接した状態でグリルプレートを介して下バーナにより加熱されるから、下面の調理の進行度合いが上面に比べて遅くなり、上面と下面とで焼き上がりが大きく異なってしまい、上面が焼き上がる調理時間では下面の加熱不足が生じやすい。一方、前回の調理が終了した後、一律に庫内温度が低下するまで調理の開始を禁止すると、全体の調理時間が長くなり不便なだけでなく、前回の調理で調理した被調理物が冷めてしまい食味が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、グリルプレートを使用したプレート調理モードと、グリルプレートを使用しない非プレート調理モードとを使用者が任意に選択可能な加熱調理器で繰り返し加熱庫を利用した調理が行われるときに、今回の調理モードがグリルプレートを使用したプレート調理モードである場合、前回の調理モードに関わらず、被調理物の上下面を過不足なく加熱して、焼き上がりの良好な被調理物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、加熱庫と、
被調理物を加熱するガスバーナと、
前記加熱庫の庫内温度を検知する温度検知部と、
前記加熱庫内に被調理物が載置される皿状のグリルプレートを導入して調理を行うプレート調理モード、及び前記グリルプレートを導入せず前記加熱庫内に焼網等の調理具を導入して調理を行う非プレート調理モードを選択可能な調理モード選択部と、
前記調理モード選択部で選択された調理モードを記憶する調理モード記憶部と、
前記調理モード選択部で選択された調理モードに応じて、前記ガスバーナの燃焼を制御する燃焼制御部と、を有し、
前記燃焼制御部は、前記調理モード選択部でプレート調理モードが選択されたときに、前記調理モード記憶部に記憶された前回の調理モードがプレート調理モードである場合、調理開始時の庫内温度が調理を実行するための所定の第1受付可能温度以下であれば、前記ガスバーナを点火して燃焼を開始させ、
前記調理モード選択部でプレート調理モードが選択されたときに、前記調理モード記憶部に記憶された前回の調理モードが非プレート調理モードである場合、調理開始時の庫内温度が前記第1受付可能温度よりも低い調理を実行するための所定の第2受付可能温度以下になるまで、前記ガスバーナの点火を禁止する加熱調理器である。
【0010】
上記加熱調理器によれば、前回の調理モードに関わらず、後の調理がプレート調理モードで行われる場合に、調理開始時の庫内温度が調理を実行するための所定の第1受付可能温度以下でなければ調理が開始されないから、調理中の加熱庫の過熱や、高温の庫内温度による被調理物の焼き過ぎを防止することができる。
【0011】
また、プレート調理モードで繰り返し加熱庫を利用した調理が行われる場合、グリルプレートが高温の状態から調理が開始される。それゆえ、高温のグリルプレートによって被調理物の下面の調理の進行度合いが早まるから、調理開始時の庫内温度が調理を実行するための所定の第1受付可能温度以下であれば、直ちに調理を開始しても、被調理物の上下面の焼き上がりを同等にすることができる。
【0012】
一方、非プレート調理モードで調理が行われた後、プレート調理モードで調理が行われる場合、庫内温度は高いにも関わらず、グリルプレートは低温の状態から調理が開始される。それゆえ、前回の調理終了後、庫内温度が第1受付可能温度以下であった場合に直ちに調理を開始させると、被調理物の上面と下面とで調理の進行度合いの差が大きくなる。しかしながら、上記加熱調理器によれば、前回の調理モードが非プレート調理モードである場合は、庫内温度が第1受付可能温度よりも低い調理を実行するための第2受付可能温度まで低下しなければガスバーナを点火して調理を開始させないから、被調理物の上下面の調理の進行度合いを同等にすることができる。
【0013】
上記加熱調理器において、好ましくは、
前記ガスバーナは、被調理物を上方から加熱する上バーナ、及び被調理物を下方から加熱する下バーナを備え、前記上下バーナは、点消火が連動して行われる。
【0014】
上記加熱調理器によれば、被調理物の下面が下バーナによりグリルプレートを介して加熱され、上面のみが上バーナの直火により加熱されるプレート調理モードで調理を行うにあたって、各バーナに接続されたガス供給管にバーナの点消火を個別に制御するための制御手段を設けることなく、また複雑な制御構成を採用することなく、安価な構成により繰り返し加熱庫を利用した調理が行われる場合に、庫内温度、及びグリルプレートの温度に応じて被調理物の上下面を過不足なく調理することができる。
【0015】
上記加熱調理器において、好ましくは、
前記調理モード記憶部は、前記調理モード選択部で選択された調理モードでの調理時間が一定時間以上である場合に、選択された調理モードを記憶する。
【0016】
プレート調理モード、非プレート調理モードいずれでも、調理終了後に使用者が被調理物の調理不足を解消するために、手動調理あるいは自動調理で短時間の追い加熱を行う場合がある。そのため、このような追い加熱も前回の調理モードとして記憶させると、グリルプレートの温度の状態が誤判定される虞がある。しかしながら、上記加熱調理器によれば、前回の調理モードでの調理時間が一定時間以上であった場合にのみ調理モード記憶部に調理モードが記憶されるから、前回の調理におけるグリルプレートの実際の使用の有無に基づいて後のプレート調理モードでの調理を開始させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、今回の調理モードでプレート調理モードが選択された場合、前回の調理モードが確認されるから、加熱庫の初期温度に関わらず、グリルプレートの温度状態を正確に判定することができる。また、連続してプレート調理モードで調理が行われる場合には、庫内温度が調理を実行するための第1受付可能温度以下であれば、直ちに調理を開始させることができる。このため、円滑に繰り返し加熱庫を利用した調理を行うことができるだけでなく、庫内温度が低下するまでの間に高温のグリルプレートによって被調理物の下面の焼き過ぎが生じるのを防ぐこともできる。
【0018】
一方、非プレート調理モードで調理が行われた後、プレート調理モードで調理が行われる場合には、庫内温度が第1受付可能温度より低い調理を実行するための第2受付可能温度以下に低下するまで調理を開始させないから、被調理物の上下面の調理の進行度合いを同等とすることができ、いずれか一方の面の焼き過ぎあるいは焼き不足を防ぐことができる。
【0019】
従って、本発明によれば、前回の調理モードに関わらず、後のプレート調理モードでの調理では被調理物の上下面を過不足なく加熱して、食味の良好な被調理物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の一例を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1の加熱調理器の概略縦断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器に用いられる調理具(グリルプレート、汁受け皿、及び支持枠)の一例を示す概略分解斜視図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の制御回路図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器で自動調理を行う場合の制御動作の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本実施の形態に係る加熱調理器を具体的に説明する。
図1は、本実施の形態に係るガスコンロであり、天板30の上面に複数のコンロバーナ31,32,36を備え、コンロ本体3の内部には、焼網15やグリルプレート20を用いた調理を行うためのグリル庫2(加熱庫)が設けられている。また、天板30上面の前方には、運転状態や調理モード、さらに調理条件等を表示する液晶表示部300が配設されており、表示盤が視認できるように構成されている。
【0022】
図1、及び図2に示すように、グリル庫2の前面開口部100には、前後にスライド開閉するグリル扉21が設けられている。グリル扉21の後面部下方には、グリル庫2内へ向かって連結板210が延設されており、連結板210に支持枠19が連結されている。これにより、グリル扉21を手前に引くことで、支持枠19とともにグリルプレート20及び汁受け皿16がグリル庫2の前方に引き出され、グリル扉21を後方に押すことで、支持枠19とともにグリルプレート20及び汁受け皿16がグリル庫2内に収容されるように構成されている。なお、本明細書では、グリル扉21とグリル庫2の奥側とが対向する方向を前後方向、グリル庫2の幅方向を左右方向、グリル庫2の高さ方向を上下方向という。
【0023】
図3に示すように、支持枠19は、前後辺をそれぞれ上方に突出させて、平面視略コ字状になるように金属製の丸棒材を折り曲げた折り曲げ体191と、折り曲げ体191の前後端部にそれぞれ取り付けられた前後支持板195,196とを備えている。支持枠19の前後辺の上方に突出させた各突出部192,193は、正面視略凸状に形成されており、グリルプレート20あるいは焼網15の前後端部を下方から支持する台座を構成している。
【0024】
グリルプレート20を用いた調理を行う場合、グリル庫2内には、支持枠19に着脱自在に支持された皿状のグリルプレート20及び汁受け皿16と、所望により焼網15が導入される。グリルプレート20及び汁受け皿16を用いる場合には、グリルプレート20は、汁受け皿16の上方に位置するように支持枠19に支持される。また、グリルプレート20、汁受け皿16、及び焼網15を用いる場合には、後述する支持枠19上に支持された焼網15上にグリルプレート20が重ねて載置される。本実施の形態のグリルプレート20はアルミニウム製の鋳物からなり、全体として浅い矩形の皿状に形成されている。より詳細には、グリルプレート20は、略矩形の本体部201と、本体部201の前後両端部で本体部201の外周縁から略水平に延在する前後フランジ部202,203と、本体部201の左右両端部で本体部201の外周縁から斜め上方に延在する左右フランジ部204,205とから構成されている。また、本体部201には、被調理物のグリルプレート20への接触面積をできるだけ小さくして、被調理物が貼りつき難くなるように、左右方向に延在する凸条部が前後方向に等間隔で複数形成されている。さらに、前後フランジ部202,203の中央部には切り欠き部206,207が形成されている。従って、グリルプレート20の前後フランジ部202,203の左右両端部を支持枠19の突出部192,193の両端で下方から支持し、切り欠き部206,207内に支持枠19の突出部192,193の中央部を配置することにより、グリルプレート20がグリル庫2内の一定位置に収容される。なお、グリルプレート20は、調理中に被調理物から生じる水分や油などを下方に落とすために、小孔を有していてもよい。
【0025】
汁受け皿16は、金属薄板を所定形状に成形した後、耐熱クリア塗装や琺瑯等の仕上げ塗装が施されて形成されており、平面視略矩形状の浅い皿部161と、皿部の外周縁に形成された前後フランジ部162,163及び左右フランジ部164,165とを備えている。汁受け皿16は、皿部161が支持枠19の折り曲げ体191に嵌め込まれるとともに、前後フランジ部162,163がそれぞれ支持枠19の前後支持板195,196で下方から支持されることによりグリル庫2内の一定位置に収容される。
【0026】
また、焼網15を用いた調理を行う場合、グリル庫2内には、汁受け皿16及び図1に示す焼網15が導入される。本実施の形態の焼網15は、金属製の丸棒材を平面視略矩形状に折り曲げて形成された焼網枠体151と、焼網枠体151の左右方向に対向する辺を連結する複数の金属製の線材152と、焼網枠体151の前後辺の左右両端部からそれぞれ前後方向に突出する被支持部153とを備えている。焼網枠体151の前後辺の中央部は内方に折り曲げられて、凹部154が形成されており、前後辺の左右両端部に金属製の線材を折り曲げた被支持部153が接合されている。従って、焼網15の被支持部153を支持枠19の突出部192,193の両端で下方から支持し、支持枠19の突出部192,193の中央部を凹部154内に配置することにより、焼網15がグリル庫2内の一定位置に収容される。なお、焼網15を併用しない場合のグリルプレート20の本体部201上面と焼網15の線材152上面とはグリル庫2内で略同一の高さに位置するように構成されている。
【0027】
図2に示すように、グリル庫2内の上壁の中央部には、被調理物を上方から加熱するための上バーナ56が設けられている。また、グリル庫2内の左右の側壁の中央部より下方位置であって、グリル扉21を閉じたときに、グリルプレート20の本体部201あるいは焼網15の線材152よりも下方に位置するように、被調理物を下方から加熱するための下バーナ55が設けられている。従って、グリルプレート20上に被調理物を載置して調理を行うときは、被調理物の上面は上バーナ56の直火により加熱されるが、被調理物の下面は下バーナ55によりグリルプレート20を介して加熱され、焼網15上に被調理物を載置して調理を行うときは、被調理物の上下面が上下バーナ56,55の直火により加熱される。
【0028】
グリル庫2の後端(奥側)には排気ダクト17が連設されており、排気ダクト17が排気通路13を構成している。そして、この排気通路13の上流端近傍には、第1温度センサ14aが配設されており、グリル庫2の後壁には、第2温度センサ14bが配設されている。これら第1及び第2温度センサ14a,14bにより、グリル庫2内の庫内温度が検知される。なお、庫内温度を検知するために、第1及び第2温度センサ14a,14bのいずれか一方のみを用いてもよい。
【0029】
図1に戻って、グリル庫2のグリル扉21の右側に位置する操作部23には、電源スイッチ29とコンロバーナ31,32,36の点・消火と火力調整機能を兼備した点消火スイッチ24,25,28が配設されている。一方、グリル庫2のグリル扉21の左側に形成された操作部22には、上下バーナ56,55の点・消火と火力調整機能を兼備したグリル用スイッチ37と、その下方の引き出し式操作部38が設けられている。グリル用の引き出し式操作部38は、コンロ本体3に対して引出し・押し込み自在に装着されており、不使用時には引き出し式操作部38をコンロ本体3に対して押し込んだ収納状態にできるように構成されている。
【0030】
本実施の形態のガスコンロは、使用者がグリル用スイッチ37を手動で操作して上下バーナ56,55の加熱量を調節する手動調理の他、自動調理として焼網調理モードと容器調理モードの両方を有しており、図1に示すように、グリル用の引き出し式操作部38をコンロ本体3から引き出すと、引き出し式操作部38の内部に設けられたタッチパネル式操作部380が現れる。
【0031】
タッチパネル式操作部380には、調理モード選択部として、グリルプレート20上に魚や食パンなどの被調理物を載置して自動調理するときに選択されるプレート調理モード用のグリルプレートスイッチ41と、焼網15上に被調理物を載置して自動調理するときに選択される焼網調理モード用のオートスイッチ42とが設けられている。また、タッチパネル式操作部380には、被調理物の焼き加減を調節するための焼き加減スイッチ43が設けられている。
【0032】
さらに、タッチパネル式操作部380には、上記のグリルプレートスイッチ41、オートスイッチ42、及び焼き加減スイッチ43の各調理スイッチの操作回数に応じて点灯する表示部を備えている。具体的には、グリルプレートスイッチ41が操作されるごとに、タイマ、焼き魚、トーストが択一的に選択されて点灯されるようになっており、オートスイッチ42が操作されるごとに、干物、切身、姿焼が択一的に選択されて点灯されるようになっており、さらに焼き加減スイッチ43が操作されるごとに、強め、標準、弱めが択一的に選択されて点灯されるようになっている。
【0033】
また、タッチパネル式操作部380には、グリルプレートスイッチ41でタイマが選択された場合に、調理時間を設定するためのタイマスイッチ47と、調理時間を表示するタイマ表示部48とが配設されている。なお、本実施の形態のガスコンロでは、グリル用スイッチ37のみを使用して手動調理が行われた場合、後述する調理モード記憶部には、焼網調理モードでの調理として記憶されるように構成されている。
【0034】
図4は、本実施の形態のガスコンロのブロック図である。なお、制御装置Cは、上下バーナ56,55だけでなく、コンロバーナ31,32,36の燃焼も制御するが、以下では上下バーナ56,55についてのみ説明し、コンロバーナ31,32,36については説明を省略する。
【0035】
図4に示すように、上下バーナ56,55にはそれぞれ、ガス供給管550から分岐した分岐管551,561が接続されており、ガス供給管550には、メイン弁V1が配設されている。分岐管551,561には、火力切替弁V2,V3が配設されており、火力切替弁V2,V3のバイパス管553,563にはオリフィス554,564が設けられている。これらメイン弁V1、及び火力切替弁V2,V3は、制御装置Cでその開閉が制御される。具体的には、メイン弁V1が開閉すると、上下バーナ56,55の両方に燃料ガスが供給または停止される。また、火力切替弁V3が開弁すると、分岐管561及びバイパス管563の両方から上バーナ56に燃料ガスが供給されて、上バーナ56が強火燃焼し、火力切替弁V3が閉弁すると、バイパス管563のみから燃料ガスが供給されて、上バーナ56が弱火燃焼する。さらに、火力切替弁V2が開弁すると、分岐管551及びバイパス管553の両方から下バーナ55に燃料ガスが供給されて、下バーナ55が強火燃焼し、火力切替弁V2が閉弁すると、バイパス管553のみから燃料ガスが供給されて、下バーナ55が弱火燃焼する。また、上下バーナ56,55の各炎孔近傍には、イグナイタ600から高電圧を印加させることによって火花放電する点火電極501,601と、炎孔に形成された炎センサ502,602とが配設されている。
【0036】
制御装置Cには、上記第1及び第2温度センサ14a,14b、電源スイッチ29、グリル用スイッチ37、メイン弁V1、火力切替弁V2,V3、液晶表示部300、グリルプレートスイッチ41やオートスイッチ42を含むタッチパネル式操作部380、イグナイタ600、及び炎センサ502,602などが電気配線を介して接続されている。なお、グリルプレートスイッチ41、オートスイッチ42、及び焼き加減スイッチ43の操作回数は3進カウンタ(図示せず)でカウントされるとともに、3進カウンタの出力によって、選択された被調理物の種類や焼き加減が判断されるように構成されている。
【0037】
制御装置Cは、マイクロコンピュータ、タイマなどで構成されている。マイクロコンピュータには、被調理物の加熱調理を実行する制御プログラムが組み込まれており、制御プログラムに基づいて上下バーナ56,55の加熱量や調理時間などが制御される。また、図示しないが、マイクロコンピュータは、機能構成として、メイン弁V1や火力切替弁V2,V3を開閉して上下バーナ56,55の加熱量を制御する燃焼制御部と、第1及び第2温度センサ14a,14bによって検知される庫内温度が所定の第1または第2受付可能温度以下であるかどうかを判定する庫内温度判定部と、調理モード選択部であるグリルプレートスイッチ41またはオートスイッチ42が選択されて所定時間以上、調理が実行された場合に、調理モードを記憶する調理モード記憶部とを有している。さらに、マイクロコンピュータのメモリには、グリルプレートスイッチ41またはオートスイッチ42や焼き加減スイッチ43が選択された場合に、被調理物の種類や焼き加減だけでなく、庫内温度に応じて、所定の調理時間、上下バーナ56,55を所定の加熱量で燃焼させる燃焼パターンや、第1及び第2受付可能温度などの設定値を含むデータテーブルが格納されている。なお、燃焼パターンや第1及び第2受付可能温度などの設定値は、ガスコンロの特性に基づいて実験により予め求めることができる。
【0038】
次に、本実施の形態のガスコンロを用いて自動調理を行う場合の制御動作を説明する。図5は、マイクロコンピュータに組み込まれているグリルプレートスイッチ41またはオートスイッチ42が選択された場合に自動調理を行うための制御プログラムの一例を示すフローチャートである。なお、タイマ調理が行われた場合も同様の制御が行われる。
【0039】
まず、使用者が電源スイッチ29をオンした後、グリルプレートスイッチ41またはオートスイッチ42が操作されると、選択された今回の調理モードがプレート調理モードであるかどうかかが判定される(ステップST1)。そして、使用者がグリルプレートスイッチ41を操作した場合(ステップST1で、Yes)、調理モード記憶部に記憶されている前回の調理モードがプレート調理モードであるかまたは焼網調理モードであるかどうかが判定される(ステップST2)。
【0040】
前回行われた調理モードがプレート調理モードである場合(ステップST2で、Yes)、第1及び第2温度センサ14a,14bで検知される庫内温度Th1,Th2がいずれも調理を実行するための第1受付可能温度Tr1(例えば、275℃)以下であるかどうかが判定される(ステップST3)。そして、庫内温度Th1,Th2がいずれも第1受付可能温度Tr1以下であれば(ステップST3で、Yes)、使用者のグリルプレートスイッチ41の操作を受付け、グリルプレートスイッチ41及び焼き加減スイッチ43の操作回数に応じて選択された被調理物の種類及び焼き加減のランプを点灯させて、調理モードを確定する(ステップST4)。
【0041】
次いで、選択された被調理物の種類、焼き加減、及び庫内温度に応じて設定されている燃焼パターンや調理時間が読み込まれ(ステップST5)、使用者がグリル用スイッチ37をオンして調理を開始させると、タイマをスタートさせるとともに、メイン弁V1及び火力切替弁V2,V3が開弁され、さらにイグナイタ600から高電圧が点火電極601に印加されて、上下バーナ56,55が点火される(ステップST6)。そして、所定の燃焼パターンで上下バーナ56,55の加熱量が調整され、所定の調理時間が経過すると(ステップST7で、Yes)、今回のプレート調理モードを調理モード記憶部に記憶し、メイン弁V1を閉弁して、調理を終了させる。なお、調理モードの誤選択等により調理開始から短時間内に使用者が調理を中断させたときや追い加熱などの調理時間が所定時間(例えば、2分間)未満である場合、今回の調理モードを調理モード記憶部に記憶することなく、調理を終了させる(ステップST8〜ST10)。
【0042】
一方、使用者がグリルプレートスイッチ41を操作し、今回の調理モードがプレート調理モードであるが、前回行われた調理モードが焼網調理モードである場合(ステップST2で、No)、第1及び第2温度センサ14a,14bで検知される庫内温度Th1,Th2が第1受付可能温度Tr1より低い調理を実行するための第2受付可能温度Tr2(例えば、130℃)以下であるかどうかが判定される(ステップST13)。そして、庫内温度Th1,Th2がいずれも第2受付可能温度Tr2以下であれば(ステップST13で、Yes)、上記と同様に、調理モードを確定し、選択された被調理物の種類や焼き加減のランプを点灯させるとともに、上下バーナ56,55に点火して、庫内温度に応じて設定されている燃焼パターンで所定の調理時間、調理が行われる(ステップST14〜ST20)。
【0043】
しかしながら、前回行われた調理が焼網調理モードであり、第1及び第2温度センサ14a,14bで検知される庫内温度Th1,Th2のいずれかが第2受付可能温度Tr2より高ければ(ステップST13で、No)、庫内温度Th1,Th2が第2受付可能温度Tr2以下になるまでグリルプレートスイッチ41の操作を受け付けず、被調理物のランプを点灯させない状態を維持する(ステップST21)。この場合、液晶表示部300や図示しないスピーカなどから、庫内温度が高温であるため、グリルプレートスイッチ41の操作が受け付けられないことを報知する(ステップST22)。
【0044】
そして、庫内温度Th1,Th2がいずれも第2受付可能温度Tr2以下になれば、使用者のグリルプレートスイッチ41の操作を受付け、上記と同様に、調理モードを確定し、選択された被調理物の種類や焼き加減のランプを点灯させるとともに、所定の燃焼パターンで所定の調理時間、調理を行ない、調理終了後に今回のプレート調理モードを調理モード記憶部に記憶する(ステップST14〜ST20)。なお、庫内温度Th1,Th2が第2受付可能温度Tr2以下になったときに液晶表示部300等から庫内温度が低下したことを報知させてもよい。
【0045】
さらに、前回行われた調理がプレート調理モードであり、使用者がグリルプレートスイッチ41を操作したときに第1及び第2温度センサ14a,14bで検知される庫内温度Th1,Th2のいずれかが調理を実行するための第1受付可能温度Tr1より高ければ(ステップST3で、No)、庫内温度が調理に不適な温度であるとして、庫内温度が第1受付可能温度Tr1以下になるまでグリルプレートスイッチ41の操作を受け付けず、被調理物のランプ等を点灯させない状態を維持し、液晶表示部300等から報知する(ステップST11〜ST12)。
【0046】
また、使用者がオートスイッチ42を操作した場合(ステップST1で、No)、調理モード記憶部に記憶されている前回の調理モードを判定することなく、第1及び第2温度センサ14a,14bで検知される庫内温度Th1,Th2が調理を実行するための第1受付可能温度Tr1(例えば、275℃)以下であるかどうかが判定される(ステップST23)。庫内温度Th1,Th2がいずれも第1受付可能温度Tr1以下である場合、及び庫内温度Th1,Th2のいずれかが第1受付可能温度Tr1より高い場合の制御動作は、上記のプレート調理モードのそれらと同様である(ステップST24〜ST32)。
【0047】
上記ガスコンロによれば、今回の調理モードでプレート調理モードが選択された場合、調理モード記憶部に記憶されている前回行われた調理の調理モードが確認されるから、今回のプレート調理モードにおけるグリルプレート20の温度状態を正確に判別することができる。すなわち、前回の調理モードが同じプレート調理モードであれば、グリルプレート20は高温の状態と考えられる。従って、庫内温度が調理を実行するための第1受付可能温度以下の高温であれば、直ちに上下バーナ56,55を点火して調理を開始させても、被調理物の上面及び下面の調理の進行を同等にすることができる。これにより、前回のプレート調理モードでグリル庫2内が高温になっていても、短い待機時間で円滑に調理を行うことができるとともに、上下面で焼き上がりの良好な被調理物を得ることができる。また、長時間、高温のグリルプレート20上に被調理物が置かれないから、被調理物の下面のみの焼き過ぎを防止できる。
【0048】
一方、調理モード記憶部に記憶されている前回の調理モードが焼網調理モードの非プレート調理モードであれば、グリルプレート20は室温程度の低温の状態と考えられる。従って、庫内温度が高温の状態から直ちに上下バーナ56,55を点火して調理を開始させると、被調理物の上面は上バーナ56の直火により加熱されて短時間で調理が進行するのに対し、被調理物の下面は低温のグリルプレート20により調理の進行が遅くなり、焼き不足が生じやすい。しかしながら、上記ガスコンロでは、プレート調理モードが選択されたときに庫内温度が所定の第1受付可能温度以下であっても、前回の調理モードが非プレート調理モードであれば、庫内温度が第1受付可能温度より低い調理を実行するための第2受付可能温度以下になるまでグリルプレートスイッチ41の操作を受付けず、上下バーナ56,55の点火を禁止するから、庫内温度が高く、グリルプレート20の温度が低い状態から調理が開始されるのを防止することができる。これにより、被調理物の上下面の調理の進行度合いを同等にすることができ、上下面を過不足なく焼き上げることができる。また、前回の調理によりグリル庫2内が高温になっていても、一律に庫内温度が室温程度まで低下するのを待つことなく後の調理を開始させるから、円滑に調理を行うことができる。しかも、上記ガスコンロでは、同種の被調理物や同一の焼き加減であっても、調理開始時の庫内温度に応じて異なる燃焼パターンで被調理物が調理されるから、より適切に被調理物を調理することができる。
【0049】
従って、上記ガスコンロによれば、上下バーナ56,55の点消火を個別に制御するための流量制御弁や、複数の流量制御弁を個別に制御するための制御構成を設けることなく、安価な構成のガスコンロで繰り返しグリル庫2を利用した調理を行う場合に、前回の調理モードに関わらず、後のプレート調理モードでの調理では被調理物の上下面を過不足なく加熱して、食味の良好な被調理物を提供することができる。
【0050】
さらに、燃焼パターンに基づいて自動調理を行う場合、上下バーナ56,55の加熱量は各調理モードで標準的な値に基づいて設定されるため、被調理物の種類や大きさによっては調理終了時に使用者が被調理物の加熱が不十分と感じる場合がある。このような場合、使用者が自動調理の終了後、手動調理あるいはタイマ調理で短時間の追い加熱を行うことがある。そのため、短時間の調理でも所定の調理モードでの調理として認識して記憶させると、実際に行われた調理モードとは異なる調理モードが前回の調理モードとして判断される虞がある。しかしながら、上記ガスコンロでは、調理時間が所定時間以上行われなければ、調理モードが記憶されないから、そのような短時間の調理によるグリルプレート20の温度の誤判定を確実に防止できる。
【0051】
そして、上記ガスコンロでは、調理モードに関わらず、庫内温度が所定の第1受付可能温度以下でなければ調理が開始されないから、調理中のグリル庫の過熱や、高温の庫内温度による被調理物の焼き過ぎを防止することができる。
【0052】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、プレート調理モード、焼網調理モードのいずれも調理モード記憶部に記憶されるが、いずれか一方のみの調理モードを記憶させれば、前回の調理モードがプレート調理モードであるか、非プレート調理モードであるかを判別できるため、いずれかの調理モードで調理が行われたときのみ、その調理モードを調理モード記憶部に記憶させてもよい。
(2)上記実施の形態では、グリル調理について説明したが、ガスバーナにより発生させた熱気を循環させるオーブン調理にも本発明を適用することができる。
(3)上記実施の形態では、調理モードとしてプレート調理モードと焼網調理モードを有する加熱調理器について説明したが、さらに、非プレート調理モードとしてダッチオーブンなどの加熱容器を用いた容器調理モードが可能な加熱調理器にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
2 グリル庫(加熱庫)
14a,14b 温度センサ(温度検知部)
15 焼網
20 グリルプレート
41 グリルプレートスイッチ
42 オートスイッチ
55 下バーナ
56 上バーナ
C 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5