特許第5940605号(P5940605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940605
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】高分子凝集剤
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20160616BHJP
   C02F 1/56 20060101ALI20160616BHJP
   C02F 11/14 20060101ALI20160616BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20160616BHJP
   C08F 220/60 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   B01D21/01 107A
   B01D21/01 101A
   C02F1/56 ZZAB
   C02F11/14 D
   C08F220/34
   C08F220/60
【請求項の数】4
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-155920(P2014-155920)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-51428(P2015-51428A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2015年3月24日
(31)【優先権主張番号】特願2013-162968(P2013-162968)
(32)【優先日】2013年8月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辻村 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真平
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−053617(JP,A)
【文献】 特開2005−205403(JP,A)
【文献】 特開2007−029766(JP,A)
【文献】 特開2007−289928(JP,A)
【文献】 国際公開第99/020677(WO,A1)
【文献】 特開2014−087766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00〜21/34
C02F 1/00〜 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される水溶性カチオンモノマー(a1)およびメタアクリロイルアミノエチルメタアクリレートである水溶性2価不飽和モノマー(b)を含有する水溶性不飽和モノマー(a)を構成単位とする水溶性(共)重合体(A)を含有してなり、該(a)の重量に基づく該(b)の含有量が0.10〜50ppmである高分子凝集剤(P)。

CH2=C(CH3)−CO−X1−Q−N+123・Z- (1)

[式中、R1〜R3はH;X1はOまたはNH;Qは炭素数1〜4のアルキレン基;Z-はプロトン酸のH+を除く残基を表す。]
【請求項2】
水溶性(共)重合体(A)を構成するモノマーの合計重量に基づく(a1)の含有量が20〜99.99995%である請求項1記載の高分子凝集剤。
【請求項3】
水溶性(共)重合体(A)が下記の関係式を満足する請求項1または2記載の高分子凝集剤。

9≦Vw/Vs≦100

[式中、Vwは0.2重量%水溶液の粘度(mPa・s、25℃)、Vsは0.5重量%塩水溶液の粘度(mPa・s、25℃)を表す。]
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ固液分離する汚泥または廃水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子凝集剤に関する。さらに詳しくは、脱水性に優れる汚泥または廃水処理用等の高分子凝集剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水等の汚泥処理、廃水処理、あるいは土木現場での泥水処理、浚渫埋め立て時の泥水の沈降分離促進用等の処理剤として、さらには製紙用脱水剤や紙力増強剤等として水溶性高分子からなる高分子凝集剤が広く使用されている。とくに近年、発生する汚泥量等の増加から、脱水処理速度向上のニーズが高まってきていることや、有機性汚泥の性状の難脱水化に伴う、脱水ケーキの焼却処分費用の増大、並びに脱水ケーキをそのまま埋め立て処分する際の埋め立て地の逼迫した状況等から、より強固で、粗大なフロックを形成させ、脱水ケーキの含水率を大幅に低減することができる高分子凝集剤が強く望まれている。より強固で、粗大なフロックを形成させるために、例えば架橋型ポリマー(例えば特許文献1、2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−255378号公報
【特許文献2】特開2001−129311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の高分子凝集剤は、架橋剤の反応性が低く、分岐構造が多いためケーキ脱水時の圧力に対しフロックの強度が不十分であるという問題があった。また、特許文献2記載の高分子凝集剤は、架橋が不均一なため、架橋度の高い部分の水への溶解性が悪くなるという問題もあり改善が望まれていた。
本発明の目的は、水への溶解性を維持しつつ、フロックの強度に優れる高分子凝集剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される水溶性カチオンモノマー(a1)および下記一般式(2)で表される水溶性2価不飽和モノマー(b)を含有する水溶性不飽和モノマー(a)を構成単位とする水溶性(共)重合体(A)を含有してなり、該(a)の重量に基づく該(b)の含有量が0.10〜50ppmである高分子凝集剤(P)である。

CH2=C(CH3)−CO−X1−Q−N+123・Z- (1)

[式中、R1〜R3はH;X1はOまたはNH;Qは炭素数1〜4のアルキレン基;Z-はプロトン酸のH+を除く残基を表す。]

CH2=CR4−CO−OCH2CH2−X2−Y (2)

[式中、R4はHまたはメチル基;X2はOまたはNH;Yは炭素数2〜4の1価の不飽和基を表す。]
【発明の効果】
【0006】
本発明の高分子凝集剤(P)は下記の効果を奏する。
(1)フロック強度が強く、破壊、再分散されにくいことから、凝集または脱水時の再汚染がなく、凝集または脱水処理の安定性と処理速度の著しい向上が図れる。
(2)フロック強度が強く、脱水ケーキの含水率が低いことから、発生する廃棄物量および焼却処理コストを大幅に削減できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[水溶性(共)重合体(A)]
本発明における水溶性(共)重合体(A)は、下記一般式(1)で表される水溶性カチオンモノマー(a1)および下記一般式(2)で表される水溶性2価不飽和モノマー(b)を含有する水溶性不飽和モノマー(a)を構成単位とする水溶性(共)重合体である。
ここにおいて、水溶性とは、水に対する溶解度が1g以上/水100g(20℃)であることを意味し、後述する水不溶性とは、水に対する溶解度が1g未満/水100g(20℃)であることを意味する。

CH2=C(CH3)−CO−X1−Q−N+123・Z- (1)

CH2=CR4−CO−OCH2CH2−X2−Y (2)
【0008】
一般式(1)中、R1〜R3はH、X1はOまたはNH、QはC1〜4のアルキレン基(メチレン、エチレンおよびプロピレン基等)を表す。アルキレン基の炭素数(以下、Cと略記。)が4を超えると水への溶解性が悪くなる。
-はプロトン酸のH+を除く残基を表す。プロトン酸とはプロトンを与える酸と定義されるもので、該プロトン酸としては、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)、および有機酸[スルホン酸(メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等)、カルボン酸(シュウ酸、 酢酸、マレイン酸等)、ホスホン酸(メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等)等]が挙げられる。これらのうち、凝集性能の観点から好ましいのは無機酸および有機酸のうちのスルホン酸、さらに好ましいのは塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、とくに好ましいのは硫酸、メタンスルホン酸である。
一般式(2)中、R4はHまたはメチル基、X2はOまたはNH、YはC2〜4の1価不飽和基(ビニル、アリル、アクリロイル、メタアクリロイル基等)を表す。1価の不飽和基のCが4を超えると水への溶解性が悪くなる。
【0009】
[水溶性不飽和モノマー(a)]
水溶性不飽和モノマー(a)には、前記一般式(1)で表される水溶性カチオンモノマー(a1)が含まれる。
(a1)としては、以下の塩[無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩、有機酸(メタンスルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸)塩等]、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0010】
(a11)窒素原子含有メタアクリレートの塩
窒素原子含有メタアクリレートとしては、C5〜8のもの、例えばアミノメチルメタアクリレート、アミノエチルメタアクリレート、アミノプロピルメタアクリレート、アミノブチルメタアクリレート;
(a12)窒素原子含有メタアクリルアミドの塩
窒素原子含有メタアクリルアミドとしては、C5〜8のもの、例えばアミノメチルメタアクリルアミド、アミノエチルメタアクリルアミド、アミノプロピルメタアクリルアミド、アミノブチルメタアクリルアミド。
【0011】
これらの(a11)、(a12)のうち、凝集性能および共重合性の観点から好ましいのは(a11)、さらに好ましいのはアミノエチルメタアクリレートおよびアミノプロピルメタアクリレートの塩、とくに好ましいのはアミノエチルメタアクリレートの塩である。さらに、これらの塩のうち好ましいのは塩酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、さらに好ましいのは硫酸塩、メタンスルホン酸塩、とくに好ましいのは硫酸塩である。
【0012】
水溶性不飽和モノマー(a)には、前記水溶性カチオンモノマー(a1)、後述の水溶性2価不飽和モノマー(b)以外に、その他の水溶性不飽和モノマー(a2)を含有させることができる。
【0013】
その他の水溶性不飽和モノマー(a2)としては、下記のカチオン性モノマー(a21)、ノニオン性モノマー(a22)、アニオン性モノマー(a23)、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
(a21)カチオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[例えば無機酸(塩酸、硫酸、リン酸および硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a211)前記(a1)以外の窒素原子含有(メタ)アクリレート
C5〜30のもの、例えばN,N−ジアルキル(アルキル基はC1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート[N,N−ジメチルアミノ−エチルおよび−プロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノ−エチルおよび−プロピル(メタ)アクリレート等]、複素環含有(メタ)アクリレート[N−モルホリノエチル(メタ)アクリレート等];なお、本発明において(メタ)アクリレートはメタアクリレートおよびアクリレートを意味する。
(a212)アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物
C2〜21のもの、例えばビニルアミン、ビニルアニリン、(メタ)アリルアミン、p−アミノスチレン;
(a213)アミンイミド基を有する化合物
C6〜21のもの、例えば1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド。
【0015】
(a22)ノニオン性モノマー
下記のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a221)(メタ)アクリレート
C4以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定は後述の測定条件でのゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]5,000以下のもの、例えば水酸基含有(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル、ジエチレングリコールモノ、ポリエチレングリコール(重合度3〜50)、モノおよび(ポリ)グリセロール(重合度1〜10)モノ(メタ)アクリレート]およびアクリル酸アルキル(アルキル基はC1〜2)エステル(C4〜5のもの、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル);
(a222)(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体
C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜3)(メタ)アクリルアミド[N−メチルおよびイソプロピル(メタ)アクリルアミド等]、N−アルキロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等]、N−アルキロール(C1〜2)(メタ)アクリルアミドのアルキレンオキシド(C2〜3、以下AOと略記。)1〜8モル付加物;
(a223)前記(a1)、(a21)および(a222)以外の窒素原子含有エチレン性不飽和化合物
C3〜30のもの、例えばアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルスクシンイミド、N−カルバゾールアルキル(C1〜3)(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルマレイミドのAO2〜10モル付加物。
【0016】
(a23)アニオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等、以下同じ。)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等、以下同じ。)塩、アンモニウム塩およびアミン(C1〜20)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0017】
(a231)不飽和カルボン酸
C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、ビニル安息香酸、アリル酢酸;
(a232)不飽和スルホン酸
脂肪族不飽和スルホン酸(C2〜20、例えばビニルスルホン酸)、芳香族不飽和スルホン酸(C6〜20、例えばスチレンスルホン酸)、スルホ基含有(メタ)アクリレート[C2〜24、例えばスルホアルキル(C2〜20)(メタ)アクリレート[2−(メタ)アクリロイルオキシエタン、−プロパンおよび−ブタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルオキシメチルベンゼンスルホン酸等]、スルホ基含有(メタ)アクリルアミド[2−(メタ)アクリロイルアミノエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルアミノプロパンスルホン酸、2−および4−(メタ)アクリロイルアミノブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルアミノメチルベンゼンスルホン酸等]、アルキル(C1〜20)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル[メチル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル等]等;
(a233)(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン(アルキレン基はC1〜3)硫酸エステル
(メタ)アクリロイルポリオキシエチレン[エチレンオキシド(以下EOと略記)付加モル数2〜50]硫酸エステル等。
【0018】
本発明におけるMnおよび後述の重量平均分子量(Mw)のGPC測定は次の測定条件に従うものとする。
<GPC測定条件>
GPC機種:HLC−8120GPC、東ソー(株)製
カラム :TSKgel GMHXL2本+TSKgel
Multipore HXL−M、東ソー(株)製
溶媒 :テトラヒドロフラン(THF)
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard
POLYSTYRENE)、東ソー(株)製
【0019】
上記の水溶性不飽和モノマー(a2)のうち水溶性(共)重合体(A)の共重合性の観点から好ましいのは、(a211)、(a22)、(a231)、(a232)、さらに好ましいのは(a211)、(a222)、(a223)、(a231)、および(a232)のうちスルホ基含有(メタ)アクリレート、スルホ基含有(メタ)アクリルアミド、最も好ましいのは(a211)のうちのN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩、(a222)のうちの(メタ)アクリルアミド、(a223)のうちのアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、(a231)のうちの(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸およびこれらのアルカリ金属塩、(a232)のうちの2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩である。また、これらの(a2)は、任意に混合して共重合させることができる。
【0020】
[水溶性2価不飽和モノマー(b)]
前記一般式(2)で表される水溶性2価不飽和モノマー(b)は、重合性不飽和基を2個有するものであり、下記のアクリレートモノマー(b1)、メタアクリレートモノマー(b2)、およびこれらのうちの2種またはそれ以上の混合物が含まれる。
(b1)としては、例えばオレフィン基含有アクリレート[ビニルオキシエチルアクリレート、アリルオキシエチルアクリレート等]、メタクリロイルオキシエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アクリロイルアミノエチルアクリレートが挙げられる。
(b2)としては、例えばオレフィン基含有メタアクリレート[ビニルオキシエチルメタアクリレート、アリルオキシエチルメタアクリレート等]、エチレングリコールジメタアクリレート、メタアクリロイルアミノエチルメタアクリレートが挙げられる。
【0021】
これらの(b1)、(b2)のうち、凝集性能の観点から好ましいのは(b2)、さらに好ましいのはエチレングリコールジメタアクリレートおよびメタアクリロイルアミノエチルメタアクリレート、とくに好ましいのはメタアクリロイルアミノエチルメタアクリレートである。
【0022】
水溶性モノマー(a)の重量に基づく前記水溶性2価不飽和モノマー(b)の含有量は、0.10〜50ppmであり、好ましくは0.50〜45ppm、さらに好ましくは1.0〜40ppmである。該(b)の含有量が0.10ppm未満であると、凝集性能が不十分となり、50ppmを超えると後述の(共)重合体(A)の塩水不溶解分が増大し、凝集性能が低下する。
【0023】
[水溶性不飽和モノマー(a)以外のその他のモノマー]
水溶性(共)重合体(A)を構成するモノマーとしては、前記水溶性不飽和モノマー(a)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により水不溶性不飽和モノマー(x)を併用することができる。
水不溶性不飽和モノマー(x)としては、以下の(x1)〜(x5)、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
(x1)C6〜23の(メタ)アクリレート
脂肪族または脂環式アルコール(C3〜20)の(メタ)アクリレート[プロピル−、ブチル−、ラウリル−、オクタデシル−およびシクロヘキシル(メタ)アクリレート等]およびエポキシ基(C4〜20)含有(メタ)アクリレート[グリシジル(メタ)アクリレート等];
【0025】
(x2)[モノアルコキシ(C1〜20)、モノシクロアルコキシ(C3〜12)およびモノフェノキシ]ポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコールは以下、PPGと略記)[プロピレンオキシド(以下POと略記)付加モル数2〜50]の不飽和カルボン酸モノエステル
モノオール(C1〜20)もしくは1価フェノール(C6〜20)のPO付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−メトキシPPG、ω−エトキシPPG、ω−プロポキシ、ω−ブトキシPPG、ω−シクロヘキソキシPPGおよびω−フェノキシPPGモノ(メタ)アクリレート等]、および2価アルコール(C2〜20)もしくは2価フェノール(C6〜20)のPO付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−ヒドロキシエチル(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等]等;
【0026】
(x3)C2〜30の不飽和炭化水素
エチレン、ノネン、スチレン、1−メチルスチレン等;
(x4)不飽和アルコール[C2〜4、例えばビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール]のカルボン酸(C2〜30)エステル(プロピオン酸ビニル等);
(x5)ハロゲン含有モノマー(C2〜30、例えば塩化ビニル)。
【0027】
水溶性(共)重合体(A)を構成するモノマーの合計重量に基づく前記各モノマーの含有量は、水溶性カチオンモノマー(a1)は、凝集性能の観点から下限は好ましくは20%、さらに好ましくは40%、とくに好ましくは60%、最も好ましくは80%、同様の観点から上限は好ましくは99.99995%、さらに好ましくは99.9999%、とくに好ましくは99.999%、最も好ましくは99.99%;水溶性不飽和モノマー(a2)は、好ましくは80%以下、凝集性能および高分子量化の観点から好ましくは80%以下、さらに好ましくは60%以下、とくに好ましくは40%以下、最も好ましくは20%以下;水不溶性不飽和モノマー(x)は、通常20%以下、凝集性能および高分子凝集剤の水への溶解性の観点から好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、とくに好ましくは5%以下である。
【0028】
水溶性(共)重合体(A)は、ラジカル重合開始剤(d)、必要によりラジカル重合用連鎖移動剤(c)を用いて、上記モノマーを、公知の水溶液重合(例えば、特開昭55−133413号公報に記載の断熱重合、薄膜重合、噴霧重合等)や、公知の逆相懸濁重合(例えば特公昭54−30710号公報、特開昭56−26909号公報、特開平1−5808号公報に記載のもの)を含む種々の重合法[光重合(例えば特公平6−804公報に記載のもの)、沈澱重合(例えば特開昭61−123610公報に記載のもの)、逆相乳化重合(例えば特開昭58−197398号、特開平9−276605号に記載のもの)等]で、製造することができる。
該重合法のうち、工業上の観点から好ましいのは水溶液重合、逆相懸濁重合、光重合および逆相乳化重合、さらに好ましいのは水溶液重合、逆相懸濁重合および逆相乳化重合である。
【0029】
ラジカル重合開始剤(d)としては、種々のもの、例えばアゾ化合物〔水溶性のもの[アゾビスアミジノプロパン(塩)、アゾビスシアノ吉草酸(塩)等]および油溶性のもの[アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシー2,4−ジメチルバレロニトリル)等]〕および過酸化物〔水溶性のもの[過酢酸、t−ブチルパーオキサイド、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等]および油溶性のもの[ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロキシパーオキシド等]〕が挙げられる。
【0030】
上記アゾ化合物における塩としては、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩およびアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
上記過酸化物は還元剤と組み合わせてレドックス開始剤として用いてもよく、還元剤としては重亜硫酸塩(重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等)、還元性金属塩[硫酸鉄(II)等]、遷移金属塩のアミン錯体[塩化コバルト(III)のペンタメチレンヘキサミン錯体、塩化銅(II)のジエチレントリアミン錯体等]、有機性還元剤〔アスコルビン酸、3級アミン[ジメチルアミノ安息香酸(塩)、ジメチルアミノエタノール等]等〕が挙げられる。
また、アゾ化合物、過酸化物およびレドックス開始剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもいずれでもよい。
【0031】
上記ラジカル重合開始剤(d)のうち、得られる水溶性(共)重合体(A)の水不溶解分低減の観点からアゾ化合物が好ましい。
また、(d)の使用量は(A)の最適な分子量を得るとの観点から、(A)を構成するモノマーの全重量に基づいて、好ましい下限は0.001重量%、さらに好ましくは0.005重量%、とくに好ましくは0.01重量%、好ましい上限は1重量%、さらに好ましくは0.5重量%、とくに好ましくは0.1重量%、最も好ましくは0.05重量%である。
【0032】
ラジカル重合用連鎖移動剤(c)としては特に限定なく、例えば分子内に1つまたは2つ以上の水酸基を有する化合物[分子量32以上かつMn50,000以下、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量100以上かつMn50,000以下)およびポリエチレンポリプロピレングリコール(分子量100以上かつMn50,000以下)]、アンモニア、分子内に1つまたは2つ以上のアミノ基を有する化合物[例えばアミン(C1〜30、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミンおよびプロパノールアミン)]、分子内に1つまたは2つ以上のチオール基を有する化合物(後述)、および(次)亜リン酸化合物〔亜リン酸、次亜リン酸、およびこれらの塩[アルカリ金属(Na、K等)塩等]、並びにこれらの誘導体等〕が挙げられる。
これらのうちで(A)の分子量制御の観点から好ましいのは、分子内に1つまたは2つ以上のチオール基を有する化合物である。
【0033】
分子内にチオール基を有する化合物には、以下の(1)、(2)、これらの混合物およびこれらの塩[アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウムおよびカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えばマグネシウムおよびカルシウム)塩、アンモニウム塩、アミン(C1〜20)塩および無機酸(例えば塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸)塩]が含まれる。
(1)1価チオール
脂肪族チオール[C1〜20、例えばメタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、n−オクタンチオール、n−ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、n−オクタデカンチオール、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、1−チオグリセロール、チオグリコール酸モノエタノールアミン)、1−チオグリセロール、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオマレイン酸、システインおよび2−メルカプトエチルアミン]、脂環式チオール(C5〜20、例えばシクロペンタンチオールおよびシクロヘキサンチオール)および芳香(脂肪)族チオール(C6〜12、例えばベンジルメルカプタンおよびチオサリチル酸)が挙げられる。
【0034】
(2)多価チオール
ジチオール[脂肪族(C2〜40)ジチオール(例えばエタンジチオール、ジエチレングリコールジメルカプタン、トリエチレングリコールジメルカプタン、プロパンジチオール、1,3−および1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、ネオペンタンジチオール等)、脂環式(C5〜20)ジチオール(例えばシクロペンタンジチオールおよびシクロヘキサンジチオール)および芳香族(C6〜16)ジチオール(例えばベンジルメルカプタン、ビフェニルジチオール)、トリチオール(C3〜20、例えばチオグリセリン)が挙げられる。
【0035】
ラジカル重合用連鎖移動剤(c)の使用量は、(A)を構成する重合性モノマーの合計重量に基づいて、通常15重量%以下、高分子凝集剤の水への溶解性、凝集性能および(A)として最適な分子量を得るとの観点から、好ましい下限は0.0001%、さらに好ましくは0.0005%、とくに好ましくは0.001%、最も好ましくは0.005%、好ましい上限は10%、さらに好ましくは5%、とくに好ましくは3%、最も好ましくは1%である。
【0036】
水溶性(共)重合体(A)の製造方法のうち逆相懸濁重合法としては、例えば次の方法が挙げられる。
疎水性分散媒(e)および分散剤(f)を重合槽に仕込み、必要に応じて加熱しながら所定の重合温度(通常20〜100℃、好ましくは30〜80℃)に調整した後、槽内を不活性ガス(例えば窒素)で十分置換する。
一方、前記水溶性カチオンモノマー(a1)および水溶性2価不飽和モノマー(b)を含有する水溶性不飽和モノマー(a)、ラジカル重合開始剤(d)、および必要によりラジカル重合用連鎖移動剤(c)、並びに水不溶性不飽和モノマー(x)を加えたモノマー水溶液を調製し、不活性ガスで十分置換した後、撹拌下で重合槽内に投入し、懸濁させながら重合させる。
モノマー水溶液の投入方法としては、一括投入または滴下のいずれでもよい。また、その際モノマー水溶液としては、(a1)、(b)、(d)および必要により加える(a2)、(c)、および/または(x)の均一水溶液としてもよいし、別々の水溶液とした上で、滴下直前で混合してもよいし、別々に同時滴下してもよい。モノマー水溶液等を不活性ガスで置換する方法としては、モノマー水溶液等に不活性ガスをバブリング供給する方法、滴下ライン中でスタティックミキサー等により不活性ガスをブレンドする方法等が挙げられ、重合の均一性の観点からスタティックミキサーで不活性ガスをブレンドする方法が好ましい。
【0037】
疎水性分散媒(e)とは、水に対する溶解度(20℃)が1g未満/水100gである分散媒を意味し、下記のものが挙げられる。
(1)炭化水素
脂肪族(C5〜12、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン)、脂環含有(C5〜12、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン)および芳香環含有炭化水素(C6〜12、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン)等;
(2)ケトン
脂肪族(C3〜10、例えばメチル−n−プロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、脂環含有(C5〜10、例えばシクロペンタノン、シクロヘキサノン)および芳香環含有ケトン(C8〜13、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン)等
(3)エーテル
脂肪族(C4〜8、例えばジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル)、環状(C4〜18、例えばテトラヒドロピラン)および芳香環含有エーテル(C7〜12、例えばアニソール)等
(4)エステル
脂肪族(C3〜10、例えば酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル)、脂環含有(C7〜12、例えば酢酸シクロヘキシル、シクロヘキサンカルボン酸メチル)および芳香環含有エステル(C8〜13、例えば安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−ブチル、酢酸ベンジル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート)等
これらのうち、製造時の取り扱い性、および重合時の温度制御の観点から、好ましいのは脂肪族および脂環含有炭化水素、脂肪族および脂環含有エステル、さらに好ましいのはn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチルおよび酢酸シクロヘキシルである。
【0038】
疎水性分散媒(e)の使用量は、分散系の安定性の観点からモノマー水溶液の全重量に基づいて、好ましい下限は25%、さらに好ましくは40%、とくに好ましくは65%、生産性の観点から好ましい上限は1,000%、さらに好ましくは400%、とくに好ましくは200%である。
【0039】
分散剤(f)としては、逆相懸濁粒子の分散安定性、および得られる高分子凝集剤の粉体流動性を制御する観点から、好ましくはHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)が1〜8、さらに好ましくは2〜7、とくに好ましくは3〜5の、種々の油溶性物質が挙げられる。ここにおいてHLBとは親水性と親油性とのつり合いを表し、下記の式から求められる(「界面活性剤の合成と其応用」、501頁、1957年槇書店刊;「界面活性剤入門」、212−213頁、2007年三洋化成工業刊、等参照)。

HLB=10×(無機性/有機性)

上記式中、( )内は有機化合物の無機性と有機性の比率を表し、該比率は上記文献に記載されている値から計算することができる。
【0040】
(f)には、重量平均分子量[以下Mwと略記。測定は前記条件でのGPC法による。]が5,000未満(さらに好ましくは100〜3,000、とくに好ましくは100〜1,000)の低分子分散剤(f1)、およびMwが5,000以上(さらに好ましくは7,000〜1,000,000、とくに好ましくは10,000〜100,000)の高分子分散剤(f2)が含まれる。
【0041】
(f1)には、多価(2〜8またはそれ以上)アルコールの脂肪酸(C10〜30)エステル〔ショ糖脂肪酸エステル(C22〜120、例えばショ糖ジステアレート、ショ糖トリステアレート)、ソルビタン脂肪酸エステル(C16〜120、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート)、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(C12〜120、例えばグリセリンモノステアレート)、ポリエチレングリコール(以下、PEGと略記することがある)脂肪酸エステル[Mw100〜5,000未満、例えばPEGのモノステアレート]等〕、アルキル(C1〜30)アリルエーテル等が含まれる。
【0042】
上記(f1)のうち、製造時における装置への重合粒子付着防止および高分子凝集剤の粉体流動性の観点から好ましいのは、多価アルコールの脂肪酸エステル、さらに好ましいのは、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、PEG脂肪酸エステルである。
【0043】
(f2)には、アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体またはその誘導体[例えば1−オレフィン(C11〜100)/(無水)マレイン酸共重合体、およびそのアミン反応物]、長鎖アルキル基(C12〜50)含有(メタ)アクリレート(共)重合体、変性(アミノ、カルボキシ、エポキシ、ヒドロキシ、メルカプト、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド変性等)オルガノポリシロキサン、セルロースエーテル(例えばエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース)、エチレン・酢酸ビニル共重合体、および無水マレイン酸変性された、エチレン・酢酸ビニル共重合体等が含まれる。
【0044】
分散剤(f)の使用に当たっては、逆相懸濁粒子の分散安定性および高分子凝集剤の粉体流動性、粒度分布の観点から(f1)と(f2)を併用することが好ましく、併用する際の重量比[(f1)/(f2)]は、同様の観点から好ましくは70/30〜1/99、さらに好ましくは50/50〜5/95である。
(f1)と(f2)を併用する場合、粒度分布の観点から好ましい組合せは、多価アルコールの脂肪酸エステルと無水マレイン酸変性されたエチレン・酢酸ビニル共重合体の組合せ、さらに好ましいのはPEG脂肪酸エステルと無水マレイン酸変性されたエチレン・酢酸ビニル共重合体の組み合わせである。
【0045】
(f)の使用量は、疎水性分散媒(e)の重量に基づいて、通常20重量%以下、逆相懸濁粒子の安定性、高分子凝集剤の粉体流動性および粒子径制御の観点から、好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.05〜5重量%である。
【0046】
重合性モノマー水溶液中のモノマー濃度(重量%)は、下限は通常30%、高分子量化の観点から好ましくは40%、さらに好ましくは45%、とくに好ましくは50%、最も好ましくは55%、上限は通常90%、重合温度制御の観点から好ましくは85%、さらに好ましくは80%、とくに好ましくは75%、最も好ましくは70%である。
【0047】
重合温度は、下限は通常10℃、重合速度の観点から好ましくは20℃、より好ましくは30℃、とくに好ましくは40℃、最も好ましくは50℃、上限は通常95℃、ポリマーの熱劣化防止の観点から好ましくは90℃、さらに好ましくは80℃、とくに好ましくは70℃、最も好ましくは60℃である。
また、重合中は所定重合温度を一定(例えば所定重合温度±5℃)に保つよう、適宜加熱、冷却して調節することが好ましい。重合温度を一定に保つために、予め所定重合温度に温調した分散媒に撹拌下でモノマーを随時滴下してもよい。その際の滴下時間は、モノマー濃度、および重合反応発熱量により異なるが、通常0.5〜20時間、生産性および温度制御の観点から好ましくは1〜10時間である。
【0048】
重合時間は重合による発熱がなくなった時点で終了が確認できるが、通常発熱により重合開始を確認した時点から1〜24時間、工業的観点および重合を完結し、残存モノマーを減少させるとの観点から、好ましくは2〜12時間である。逆相懸濁重合の場合のように、モノマーを随時滴下する場合は滴下終了後から上記時間重合することが好ましい。
上記のモノマー濃度、重合温度および重合時間は、モノマー組成、および開始剤種類等によって適宜調整することができる。
【0049】
重合時の圧力(単位はkPa、以下絶対圧力を示す。)は、特に限定されないが、逆相懸濁重合の場合、重合時の温度調節が容易である点から、好ましくは重合温度において、分散媒が沸騰する圧力または疎水性分散媒と水とが共沸する圧力が好ましい。具体的には、好ましい下限は5kPa、さらに好ましくは12kPa、とくに好ましくは25kPa、好ましい上限は95kPa、さらに好ましくは80kPa、とくに好ましくは65kPaである。
【0050】
重合時のモノマー水溶液のpHは、特に限定されないが、重合速度、得られる水溶性重合体の溶解性の観点から、好ましくは0.5〜7、さらに好ましくは1〜6、とくに好ましくは1.5〜5である。
【0051】
また、(A)は予め上記の方法による製造の後、ポリマー変性反応させたものでもよい。ポリマー変性反応としては、例えばアクリルアミド等の加水分解性官能基を分子内に有する水溶性不飽和モノマーを使用した場合に、重合時または重合後に苛性アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)または炭酸アルカリ(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)を添加して、モノマーのアミド基を部分的に加水分解(加水分解率は全モノマーの合計モル数に基づいて約1〜60モル%)してカルボキシル基を導入する方法(例えば、特開昭56−16505号公報)、ホルムアルデヒド、ジアルキル(C1〜12)アミンおよびハロゲン化(例えば塩化、臭化およびヨウ化)アルキル(C1〜12)(例えばメチルクロライドおよびエチルクロライド)を加え、マンニッヒ反応によって部分的にカチオン性基を導入する方法、およびアクリロニトリル等のニトリル基と、ビニルホルムアミド等の加水分解により得られるアミノ基との閉環反応により分子内にアミジン環を形成させる方法(例えば特開平5−192513号公報)が挙げられる。
【0052】
また、(A)として2種以上の水溶性(共)重合体を用いる場合、予めそれぞれを製造した後に混合してもよいし、一方を予め製造しておき、他方の製造時のモノマーに加えて製造してもよい。
【0053】
水溶性(共)重合体(A)の0.2重量%水溶液の粘度(単位:mPa・s、25℃、以下Vwと表記)の、(A)の0.5重量%塩水溶液の粘度(単位:mPa・s、25℃、以下 Vsと表記)に対する比[Vw/Vs]は、後述するフロック強度およびケーキ含水率低減の観点から、好ましくは9〜100、さらに好ましくは11〜96である。
【0054】
Vw/Vsと凝集性能との関係について次のような仮説を立てた。すなわち、Vw/Vsは塩水中での分子の縮こまりを示し、ポリマー鎖が過剰に縮まっている場合には、汚泥粒子表面の電荷を中和しにくく、強度の弱いフロックが形成されて含水率が高くなり、また、ポリマー鎖が過剰に拡がっている場合には、汚泥粒子表面の電荷は中和されるものの、凝集に際しては水を多く含んだフロックが形成されて含水率が高くなると推定されることから、ポリマー鎖が適度な拡がりを有する場合が凝集性能に優れるとの仮説である。
【0055】
本発明における水溶性(共)重合体(A)のVwは以下の方法によって測定される。なお、該測定は室温下(約25℃)で行う。
(1)測定試料(0.2重量%水溶液)の調製
あらかじめ試料0.4g(固形分含量換算したもの)を精秤し、別途500mlのガラス製ビーカーにイオン交換水を約199gとり、ジャーテスター[型式「JMD−6HS−A」、宮本理研工業(株)製、以下同じ。]に板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)2枚を十字になるように上下に連続して撹拌棒に取り付けた撹拌装置を用い、200rpmの速度で撹拌する。試料を加え、全体の重量(試料とイオン交換水の合計重量)が200gとなるようにイオン交換水を加えた後、3時間撹拌して完全に溶解し、0.2重量%の水溶性(共)重合体(A)溶液を調製する。
なお、水溶性(共)重合体(A)の固形分含量は、試料約1.0gをシャーレ(内径105mm、深さ20mm)に秤量(W1)して、循風乾燥機中105±5℃で90分間乾燥させた後の残存重量を(W2)として、次式から算出した値である。

固形分含量(重量%)=(W2)×100/(W1)
【0056】
(2)粘度の測定
(1)で調製した水溶液を200mlトールビーカーに全量移し、水浴中で25℃に温度調整し、ローターガードを付けたブルックフィールド粘度計[型式「TV−10M」、東機産業(株)製、以下同じ。]で、30rpmでローターを回転し、回転開始から5分後の粘度を測定する。使用するローター番号は機器の測定可能な粘度範囲に従って、付け替える。
【0057】
本発明における水溶性(共)重合体(A)のVsは0.5重量%水溶性(共)重合体(A)塩水溶液(塩水は4重量%塩化ナトリウム水溶液)の粘度を示し、以下の方法によって測定される。
(1)測定試料(0.5重量%塩水溶液)の調製
あらかじめ試料2.5g(固形分含量換算したもの)を精秤し、別途500mlのガラス製ビーカーにイオン交換水を約470gとり、上記と同じ撹拌装置で200rpmの速度で撹拌する。試料を加え、全体の重量(試料とイオン交換水の合計重量)が480gとなるようにイオン交換水を加えた後、4時間撹拌する。4時間撹拌した時点で、塩化ナトリウム20gを加え、さらに30分間撹拌し、0.5重量%塩水溶液を調製する。
なお、水溶性(共)重合体(A)の固形分含量の求め方は、上記Vwの場合と同じである。
【0058】
(2)粘度の測定
(1)で調製した水溶液の一部を200mlトールビーカーに移し、水浴中で25℃に温度調整し、ローターガードを付けたブルックフィールド粘度計で60rpmでローターを回転し、回転開始から5分後の粘度を測定する。使用するローター番号は機器の測定可能な粘度範囲に従って、付け替える。
【0059】
上記Vwは、(A)を構成する全モノマーの重量に対する水溶性2価不飽和モノマー(b)の重量比で制御され、(b)の重量比が増えるほど、Vwは大きくなる。また、Vsは、(A)を構成する全モノマーの重量に対する、重合時に用いるラジカル重合用連鎖移動剤(c)の重量比で制御され、(c)の重量比が増えるほどVsは小さくなる。従って、前記Vw/Vsを大きくするには、(b)および/または(c)を増やすことで制御でき、逆にVw/Vsを小さくする場合は、(b)および/または(c)を減らすことで制御できる。
【0060】
水溶性(共)重合体(A)のVwは、凝集性能および汚泥等の中の懸濁粒子との反応速度の観点から好ましくは50〜2,500、さらに好ましくは100〜2,000、とくに好ましくは150〜1,500である。
【0061】
水溶性(共)重合体(A)のVsは、凝集性能および汚泥等の中の懸濁粒子との反応性の観点から好ましくは1〜100、さらに好ましくは3〜80、とくに好ましくは5〜60である。
【0062】
水溶性(共)重合体(A)の塩水不溶解分は、好ましくは50g以下、さらに好ましくは30g以下である。
本発明において(A)の塩水不溶解分は、0.5重量%塩水溶液を目開き180μmの金網で濾過した後に、金網上に残る固形分の重量(g)を示し、下記方法で測定される。
(1)塩水不溶解分(単位:g)[水への溶解性の評価]
上記、Vsの測定用に調製した液(約500g)全量を、あらかじめ空重量(W1)を測った目開き180μmのステンレス製篩上に移し入れ、篩上の残留物を3分間流水(5000cm3/分)で洗浄し、篩に付着した水滴を拭き取り、全体(篩+篩上の固形分)の重量(W2)を測定し、下記式より不溶解分を算出する。

塩水不溶解分(g)=(W2)−(W1)
【0063】
[高分子凝集剤(P)]
本発明の高分子凝集剤(P)は前記水溶性(共)重合体(A)を含有してなる。(P)は(A)以外に、必要に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で、高分子凝集剤に通常用いられる、消泡剤、キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤からなる群から選ばれる添加剤を含有させることができる。添加剤を含有させる方法としては特に限定はなく、(A)とこれらの添加剤を、常温または加熱下、撹拌混合する方法等が挙げられる。
【0064】
上記添加剤の使用量は、(A)の重量に基づいて、消泡剤は通常5%以下、好ましくは1〜3%、キレート化剤は通常30%以下、好ましくは2〜10%、pH調整剤は通常10%以下、好ましくは1〜5%、界面活性剤およびブロッキング防止剤はそれぞれ通常5%以下、好ましくは1〜3%、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤はそれぞれ通常5%以下、好ましくは0.1〜2%である。
なお、(P)中の添加剤を除いた(A)の含有量は、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。
【0065】
本発明の高分子凝集剤(P)は、従来にない特異的な凝集効果を示すことから、下水等の汚泥または工場廃水の処理で生じた有機性汚泥または無機性汚泥の脱水処理用高分子凝集剤として用いることができ、とくに有機性汚泥の脱水処理用として好適に用いられる。
有機性汚泥の場合は、懸濁粒子の大きさが比較的大きく、また水中において懸濁粒子表面がマイナスに帯電しているとの観点から、本発明の高分子凝集剤(P)に用いる水溶性(共)重合体(A)としては、カチオン性水溶性(共)重合体および/または両性水溶性(共)重合体で構成されることが好ましく、本発明の特徴である上記効果をより一層発揮できるとの観点から、さらに好ましいのはカチオン水溶性(共)重合体で構成されるものである。
ここでカチオン性水溶性(共)重合体とは、分子内にカチオン性基を有する水溶性(共)重合体、すなわち水に溶解した際にカチオン性を示す水溶性(共)重合体であり、また両性水溶性(共)重合体とは、分子内にカチオン性基およびアニオン性基を有する水溶性(共)重合体または分子内にカチオン性基を有する水溶性(共)重合体と分子内にアニオン性基を有する水溶性(共)重合体の混合物、すなわち水に溶解した際にカチオン性およびアニオン性を示す水溶性(共)重合体である。これらの水溶性(共)重合体の水中におけるカチオン性またはアニオン性は、コロイド当量値(meq/g)を目安として評価することができる。即ち、カチオン性水溶性(共)重合体中のカチオン性基当量値はカチオンコロイド当量値として求めることができ、両性水溶性(共)重合体中のカチオン性基当量値およびアニオン性基当量値は、それぞれカチオンコロイド当量値およびアニオンコロイド当量値として求めることができる。
【0066】
本発明の高分子凝集剤(P)の形態は、粉末状(例えば破砕状、真球状および葡萄房状)、フィルム状、水溶液状、油中水型(w/o)エマルション状および懸濁液状等、公知の任意形態でよい。
【0067】
本発明の、汚泥または廃水の処理方法は、本発明の高分子凝集剤(P)を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ、固液分離を行う方法であれば特に限定されることはない。
上記処理方法のうち、本発明の効果(凝集性能、すなわち高フロック強度、フロックの粗大化、脱水ケーキの低含水率化)発揮の観点から好ましいのは、高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ、固液分離を行う方法である。なお、高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加するに際してはこれらは予め水溶液の形態としておくことが均一混合の観点から好ましい。
【0068】
また、高分子凝集剤(P)を汚泥または廃水に適用する際には、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の無機凝結剤や有機凝結剤を1種または2種以上併用してもよい。これらを併用する場合は、
(i)(P)に予め添加しておく方法、
(ii)汚泥または廃水への(P)の添加時に同時に添加する方法、
(iii)無機凝結剤および/または有機凝結剤を、(P)とは別にその添加の前および/または後に順序不同で汚泥または廃水に添加する方法
のいずれを採用してもよい。
これらのうち凝集性能の観点から好ましいのは、(iii)のうち(P)の添加の前に無機凝結剤および/または有機凝結剤をまず初めに汚泥または廃水に添加する方法である。
【0069】
無機凝結剤としては、例えば硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄および消石灰が挙げられる。
有機凝結剤としては、例えばエピハロヒドリンとアミンとの重縮合体(もしくはその塩酸塩、以下塩酸塩と略記)、エピハロヒドリンとアルキレンジアミンとの重縮合体(塩酸塩)、ポリエチレンイミン(塩酸塩)、アルキレンジハライド−アルキレンポリアミン重縮合体(塩酸塩)、アニリン−ホルムアルデヒド重縮合体(塩酸塩)、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリビニルピリジン(塩酸塩)、(ジ)メチルジ(メタ)アリルアンモニウムクロライドおよびポリビニルイミダゾリン(塩酸塩)が挙げられる。これらの無機凝結剤および有機凝結剤はそれぞれの1種または2種以上用いても、あるいは両者を併用してもいずれでもよい。
【0070】
該凝結剤を予め(P)に添加しておく場合の使用量は、(P)の重量に基づいて、無機凝結剤は通常100%以下、凝結性能および凝集性能の観点から好ましくは5〜50%、さらに好ましくは10〜30%、有機凝結剤は通常20%以下、同様の観点から好ましくは1〜10%、さらに好ましくは2〜5%である。
【0071】
無機凝結剤および/または有機凝結剤を(P)とは別に汚泥または廃水に添加する場合[上記(iii)の方法]の無機凝結剤および/または有機凝結剤の使用量は、汚泥または廃水の種類、懸濁している粒子の大きさ、および汚泥または廃水中の固形分含量(以下TSと略記)等によって異なるが、汚泥または廃水中のTSに基づいて、無機凝結剤では、フロック強度の観点から、好ましい下限は0.5重量%、さらに好ましくは1重量%、とくに好ましくは2重量%、脱水ケーキ焼却後のスラッジ低減の観点から、好ましい上限は10重量%、さらに好ましくは8重量%、とくに好ましくは5重量%であり、有機凝結剤では、フロック強度の観点から、好ましい下限は0.01重量%、さらに好ましくは0.05重量%、とくに好ましくは0.1重量%、フロック粒径の観点から、好ましい上限は5重量%、さらに好ましくは3重量%、とくに好ましくは1重量%である。
【0072】
また、上記方法における高分子凝集剤(P)の汚泥または廃水への添加方法としては、特に限定はなく、(P)をそのまま汚泥または廃水に添加してもよいが、均一混合の観点から好ましいのは(P)を水溶液にした後に汚泥または廃水に添加する方法である。
(P)を水溶液として用いる場合は、その濃度(重量%)は好ましくは0.05〜3%、さらに好ましくは0.1〜1%である。溶解方法、溶解後の希釈方法は特に限定はないが、例えば予め秤りとった水をジャーテスター等の撹拌装置を用いて撹拌しながら、所定量の粉末状の(X)を加え、数時間(約1〜4時間程度)撹拌して溶解させる方法等が採用できる。
【0073】
上記処理方法において、汚泥または廃水に添加する際の(P)の使用量は、汚泥または廃水の種類、懸濁している粒子の含有量および該高分子凝集剤の分子量等によって異なり、とくに限定はされないが、汚泥または廃水中のTSに基づいて、フロック強度の観点から、好ましい下限は0.01重量%、さらに好ましくは0.1重量%、とくに好ましくは1重量%、最も好ましくは1.5重量%、脱水ケーキの含水率低減の観点から、好ましい上限は10重量%、さらに好ましくは8重量%、とくに好ましくは5重量%、最も好ましくは3重量%である。
【0074】
また、上記の処理方法により形成されたフロック状の汚泥の脱水方法(固液分離法)としては、例えば重力沈降、膜ろ過、カラムろ過、加圧浮上、濃縮装置(例えばシックナー)、脱水装置(例えば遠心脱水機、ベルトプレス脱水機、フィルタープレス脱水機、キャピラリー脱水機)を用いる方法が挙げられる。これらのうち本発明の高分子凝集剤の特異的な凝集性能である高フロック強度の観点から好ましいのは、脱水装置、とくに遠心脱水機、ベルトプレス脱水機、フィルタープレス脱水機を用いる方法である。
【0075】
本発明の高分子凝集剤の、汚泥または廃水処理用途以外のその他の用途としては、例えば掘削・泥水処理用凝集剤、製紙用薬剤(製紙工業用地合形成助剤、濾水歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等)、原油増産用添加剤(原油の二、三次回収用添加剤)、分散剤、スケール防止剤、凝結剤、脱色剤、増粘剤、帯電防止剤および繊維用処理剤が挙げられる。
【実施例】
【0076】
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部、%は重量%を表す。なお、以下において、実施例1〜6は、それぞれ参考例1〜6とする。
水溶性(共)重合体(A)を含有してなる高分子凝集剤(P)のVw、Vs、固形分含量は、前記の方法によって測定した。 なお、下水汚泥等中のTS、浮遊物質(SS)、有機分(強熱減量)は、「下水試験方法」(日本下水道協会、1984年度版)記載の分析方法に準じて行った。
また、本実施例中のフロック粒径、ろ液量、ろ布剥離性、ケーキ含水率は以下の方法に従って評価した。
【0077】
(1)フロック粒径(単位:mm)
ジャーテスター[宮本理研工業(株)製、形式JMD−6HS−A]に板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)2枚を十字になるように上下に連続して撹拌棒に取り付け、下水汚泥等200部を500mlのビーカーに取り、ジャーテスターにセットした。ジャーテスターの回転数を120rpmにし、ゆっくり下水汚泥等を撹拌しながら、固形分含量が0.2%の高分子凝集剤水溶液を一気に添加し、30秒間撹拌した後、撹拌を止め凝集物の大きさを目視にて観察した(回転数120rpmでのフロック粒径を表中に示す)。
続いて回転数を300rpmにセットし、さらに30秒間撹拌した後、撹拌を止め凝集物の大きさを再度目視にて観察した(回転数300rpmでのフロック粒径を表中に示す)。
【0078】
(2)フロック強度
上記(1)における回転数120rpmおよび300rpmでのフロック粒径を比較し、フロック粒径の変化からフロック強度を下記の基準に従って評価する。
<評価基準>
◎ 非常に強固 (粒径に変化なし)
○ 強固 (ごく一部細分化)
△ やや弱い (部分的に細分化)
× 弱い (全体的に細分化)
【0079】
(3)ろ液量(単位:mL)
T−1189のナイロン製ろ布[敷島カンバス(株)製、円形状、直径9cm]、ヌッチェ漏斗、300mlが測れるメスシリンダーをセットし、上記フロック粒径試験後の汚泥を一度に投入して濾過し、ストップウォッチを用いて投入直後から60秒後のろ液量を測定し処理速度を評価した。
【0080】
(4)ろ布剥離性
(3)のろ布上の濾過物の一部をスパーテルで取り出し、プレスフィルター試験機を用いて脱水試験(荷重2kg/cm2、60秒)を行い、試験後のろ布に付着した脱水ケーキをスパーテルで剥離させた場合の脱水ケーキのろ布からの剥離性を下記の基準に従って評価した。
◎:非常に剥がれやすい(ろ布付着物ほとんどなし)
○:剥がれやすい (わずかにろ布付着物あり)
△:多少剥がれにくい (ろ布付着物あり、わずかにろ布内部まで付着)
×:剥がれにくい (ろ布内部まで付着)
【0081】
(5)ケーキ含水率(単位:%)
上記ろ布剥離性試験後の脱水ケーキ約3.0gをシャーレ(内径105cm、深さ20cm)に秤量(W3)して、循風乾燥機中で完全に水分が蒸発するまで(105±5℃で8時間)乾燥させた後、シャーレ内に残った乾燥ケーキの重量を(W4)として、次式からケーキ含水率を算出した。

ケーキ含水率(%)=[(W3)−(W4)]×100/(W3)
【0082】
以下において、<高分子凝集剤の製造>の実施例もしくは比較例と、<凝集性能評価>の実施例もしくは比較例は、便宜上同じ番号で表記することとする。
【0083】
<高分子凝集剤の製造>
実施例1
アミノエチルメタアクリレートの硫酸塩(a1−1)の80%水溶液750部、水溶性2価不飽和モノマー[エチレングリコールジメタアクリレート、商品名「NKエステル 1G」新中村化学工業(株)製](b−1)の10%水溶液0.0030部、イオン交換水249部、連鎖移動剤として1−チオグリセロール(c−1)の10%水溶液0.12部の混合液を室温(20〜25℃)で調製した。さらにスルファミン酸を用いてモノマー水溶液のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら3.0に調整した。得られた混合液を十分に窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)で置換(溶存酸素濃度100ppb以下)した後、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩の10%水溶液0.60部を加えて均一溶液とし、モノマー水溶液を調製した。
別に還流脱水配管、滴下漏斗、窒素導入管および撹拌翼(マックスブレンド翼)を備えた反応槽にn−デカン1,000部を仕込んだ後、これに分散剤として、無水マレイン酸変性されたエチレン・酢酸ビニル共重合体[商品名「Orevac930S」、アルケマ(株)製]7.0部を加えて、撹拌翼を500rpmの回転数にて撹拌しながら、反応槽内を窒素置換(気相酸素濃度10ppm以下)した後、50℃まで昇温した。50℃に到達後、常圧条件下(103kPa)で、予め滴下漏斗内に仕込んだ前述のモノマー水溶液を反応槽中に60分間かけて全量投入し、投入完了後180分間50℃で撹拌を継続し逆相懸濁重合させた。
重合後、マグネチックスターラーで撹拌しながら、イソプロピルアルコール1,000部に重合後スラリーを加え、10分撹拌した。撹拌後、デカンテーションで上澄み液を取り除き、沈殿物を減圧濾過した。濾過固形物をステンレス製の容器に広げ、50℃の循風乾燥機で10時間乾燥し、水溶性(共)重合体(A−1)を含有してなる高分子凝集剤(P−1)648部を得た(固形分含量92.6%)。
【0084】
実施例2
実施例1において、(b−1)の10%水溶液0.0030部、(c−1)の10%水溶液0.12部に代えて、(b−1)の10%水溶液0.12部、(c−1)の10%水溶液0.37部の混合液とした以外は実施例1と同様にして、水溶性(共)重合体(A−2)を含有してなる高分子凝集剤(P−2)647部を得た(固形分含量92.8%)。
【0085】
実施例3
実施例1において、(b−1)の10%水溶液0.0030部、(c−1)の10%水溶液0.12部に代えて、(b−1)の10%水溶液0.28部、(c−1)の10%水溶液0.66部の混合液とした以外は実施例1と同様にして、水溶性(共)重合体(A3)を含有してなる高分子凝集剤(P−3)642部を得た(固形分含量93.5%)。
【0086】
実施例4
実施例1において、(a1−1)の80%水溶液750部、(b−1)の10%水溶液0.0030部、イオン交換水249部、(c−1)の10%水溶液0.12部に代えて、(a1−1)の80%水溶液526部、アクリルアミド(a2−1)の50%水溶液367部、(b−1)の10%水溶液0.15部、イオン交換水105部、(c−1)の10%水溶液0.06部の混合液とした以外は実施例1と同様にして、水溶性(共)重合体(A−4)を含有してなる高分子凝集剤(P−4)648部を得た(固形分含量93.5%)。
【0087】
実施例5
実施例1において、(a1−1)の80%水溶液750部、(b−1)の10%水溶液0.0030部、イオン交換水249部に代えて、アミノエチルメタクリレートのメタンスルホン酸塩(a1−2)の80%水溶液695部、(a2−1)の50%水溶液88部、(b−1)の10%水溶液0.0042部、イオン交換水216部の混合液とした以外は実施例1と同様にして、水溶性(共)重合体(A−5)を含有してなる高分子凝集剤(P−5)643部を得た(固形分含量93.3%)。
【0088】
実施例6
実施例1において、(a1−1)の80%水溶液750部、(b−1)の10%水溶液0.0030部、イオン交換水249部、(c−1)の10%水溶液0.12部に代えて、(a1−1)の80%水溶液237部、(a2−1)の50%水溶液457部、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレートのメチルクロライド4級アンモニウム塩(a2−2)の80%水溶液155部、アクリル酸(a2−3)の80%水溶液79部、(b−1)の10%水溶液0.090部、イオン交換水71部、(c−1)の10%水溶液0.06部の混合液とした以外は実施例1と同様にして、水溶性(共)重合体(A−6)を含有してなる高分子凝集剤(P−6)644部を得た(固形分含量93.6%)。
【0089】
実施例7
実施例1において、(a1−1)の80%水溶液750部、(b−1)の10%水溶液0.0030部、イオン交換水249部、(c−1)の10%水溶液0.12部に代えて、(a1−1)の80%水溶液229部、(a2−1)の50%水溶液642部、メタアクリロイルアミノエチルメタアクリレート(b−2)の10%水溶液0.24部、イオン交換水129部、(c−1)の10%水溶液0.43部の混合液とした以外は実施例1と同様にして、水溶性(共)重合体(A−7)を含有してなる高分子凝集剤(P−7)543部を得た(固形分含量92.8%)。
【0090】
実施例8
ガラス製断熱反応容器に(a1−2)の80%水溶液750部、(b−2)の10%水溶液0.12部、(c−1)の10%水溶液0.45部、系内のモノマーの合計濃度が60%となるようにイオン交換水243部を加え、系内が均一の水溶液になるまで撹拌した。さらに撹拌を続けながら、硫酸を用いてモノマー水溶液のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら4.0に調整した。次に、水溶液の温度を25℃に調整し、系内を窒素(純度99.999%以上)で充分に置換した(気相酸素濃度10ppm以下)。次いで開始剤としてアゾビスアミジノプロパン塩酸塩の10%水溶液6部、硫酸鉄(II)の1%水溶液0.3部、過酸化水素の1%水溶液0.3部を、撹拌しながら一気に加えた。内容物温度が50℃に到達後、外部から加熱し内容物温度を80℃に調整した。その後同温度を2時間維持して重合反応を完結させた。なお重合中、内容物が高粘度となり撹拌が困難となったため、撹拌は途中で停止した。その後、得られた含水ゲルを取り出し、ミートチョッパー機[型番「12VR−400K」、ROYAL(株)製、目皿の目開き6mm]により混合、混練、さらにミンチ状に細断し、80℃の熱風で2時間乾燥後ジューサーミキサーで粉砕して、粉末状の水溶性(共)重合体(A−8)を含有してなる高分子凝集剤(P−8)647部(固形分含量92.9%)を得た。
【0091】
実施例9
実施例8において、(b−2)の10%水溶液0.12部、(c−1)の10%水溶液0.45部に代えて、(b−2)の10%水溶液0.27部、(c−1)の10%水溶液0.48部の混合液とした以外は実施例8と同様にして、水溶性(共)重合体(A−9)を含有してなる高分子凝集剤(P−9)648部を得た(固形分含量92.7%)。
【0092】
実施例10
実施例8において、(a1−2)の80%水溶液750部、(b−2)の10%水溶液0.12部、(c−1)の10%水溶液0.45部、イオン交換水243部に代えて、(a1−2)の80%水溶液163部、(a2−1)の50%水溶液739部、(b−2)の10%水溶液0.20部、イオン交換水92部、(c−1)の10%水溶液0.08部の混合液とした以外は実施例8と同様にして、水溶性(共)重合体(A−10)を含有してなる高分子凝集剤(P−10)540部を得た(固形分含量92.7%)。
【0093】
実施例11
実施例8において、(a1−2)の80%水溶液750部、(b−2)の10%水溶液0.12部、(c−1)の10%水溶液0.45部、イオン交換水243部に代えて、(a1−2)の80%水溶液277部、(a2−1)の50%水溶液558部、(b−2)の10%水溶液0.025部、イオン交換水160部、(c−1)の10%水溶液0.01部の混合液とした以外は実施例8と同様にして、水溶性(共)重合体(A−11)を含有してなる高分子凝集剤(P−11)542部を得た(固形分含量92.4%)。
【0094】
実施例12
還流脱水配管、温度計、窒素導入管および撹拌機(マックスブレンド翼)を備えた反応槽に、ノルマルパラフィン[商品名「ノルマルパラフィンM」、JX日鉱日石エネルギー(株)製]254部、オレイルアルコールのエチレンオキシド5モル付加物21部、ソルビタンモノオレート14部を加え、均一になるまで混合した。次に、(a1−1)の80%水溶液599部、(b−2)の10%水溶液0.22部、(c−1)の10%水溶液0.05部、イオン交換水243部の混合溶液をスルファミン酸でpH2.0に調整し、上記混合物に添加して乳化させた。
撹拌翼を500rpmの回転数にて撹拌しながら、反応槽内を窒素置換(気相酸素濃度10ppm以下)した後、50℃まで昇温した。50℃に到達後、常圧条件下(103kPa)で、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)の10%トルエン溶液を4.3部加え45〜55℃で8時間重合させた。重合後、反応槽からエマルション状凝集剤を取りだし、水溶性(共)重合体(A−12)を含有してなる高分子凝集剤(P−12)998部(固形分含量44.1.%)を得た。
【0095】
実施例13
実施例12において、(a1−1)の80%水溶液599部に代えて、(a1−2)の80%水溶液599部を用いた混合溶液とした以外は実施例12と同様にして、水溶性(共)重合体(A−13)を含有してなる高分子凝集剤(P−13)995部を得た(固形分含量44.0%)。
【0096】
比較例1
実施例1において、(b−1)の10%水溶液0.0030部、イオン交換水249部、(c−1)の10%水溶液0.12部に代えて、(b−1)の10%水溶液0.48部、イオン交換水242部、(c−1)の10%水溶液7.2部の混合液とした以外は実施例1と同様にして、水溶性(共)重合体(比A−1)を含有してなる高分子凝集剤(比P−1)642部を得た。(固形分含量93.6%)。
【0097】
比較例2
実施例1において、(b−1)の10%水溶液0.0030部、(c−1)の10%水溶液0.12部に代えて、(b−1)の1%水溶液0.004部、(c−1)の10%水溶液0.30部の混合液とした以外は実施例1と同様にして、水溶性(共)重合体(比A−2)を含有してなる高分子凝集剤(比P−2)642部を得た(固形分含量93.5%)。
【0098】
比較例3
実施例1において、(a1−1)の80%水溶液750部、(b−1)の10%水溶液0.0030部、イオン交換水249部、(c−1)の10%水溶液0.12部に代えて、(a1−1)の80%水溶液526部、(a2−1)の50%水溶液367部、イオン交換水105部、(b−1)の1%水溶液0.003部、(c−1)の10%水溶液0.6部の混合液とした以外は実施例1と同様にして、水溶性(共)重合体(比A−3)を含有してなる高分子凝集剤(比P−3)648部を得た(固形分含量93.5%)。
【0099】
比較例4
実施例1において、(a1−1)の80%水溶液750部、(b−1)の10%水溶液0.0030部、イオン交換水249部、(c−1)の10%水溶液0.12部に代えて、(a2−2)の80%水溶液767部、(b−1)の10%水溶液0.002部、イオン交換水232部、(c−1)の10%水溶液0.6部の混合液とした以外は実施例1と同様にして、水溶性(共)重合体(比A−4)を含有してなる高分子凝集剤(比P−4)641部を得た(固形分含量93.6%)。
【0100】
比較例5
実施例1において、(b−1)の10%水溶液0.0030部、イオン交換水249部、(c−1)の10%水溶液0.12部に代えて、メチレンビスアクリルアミド(b’−1)の10%水溶液0.13部、イオン交換水246部、(c−1)の10%水溶液3.6部の混合液とした以外は実施例1と同様にして、水溶性(共)重合体(比A−5)を含有してなる高分子凝集剤(比P−5)642部を得た(固形分含量93.5%)。
【0101】
上記で得られた高分子凝集剤について表1に示す。表1中の記号の内容は下記のとおりである。
AEMS(a1−1) :アミノエチルメタアクリレートの硫酸塩
AEMCS(a1−2):アミノエチルメタアクリレートのメタンスルホン酸塩
AAm (a2−1) :アクリルアミド
DAMQ(a2−2) :N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレートの
メチルクライド4級アンモニウム塩
AAc (a2−3) :アクリル酸
水溶性2価不飽和モノマー(b−1) :エチレングリコールジメタアクリレート
[商品名「NKエステル 1G」、新中村化学工業(株)製]
水溶性2価不飽和モノマー(b−2) :メタアクリロイルアミノエチル
メタアクリレート
水溶性2価不飽和モノマー(b’−1):メチレンビスアクリルアミド
【0102】
【表1】
なお、表1中の(A)のモノマー構成における各モノマーの含有量(wt%)は小数点第1位を四捨五入した値である。
【0103】
<凝集性能評価>
実施例1〜13、比較例1〜5
高分子凝集剤(P−1)〜(P−13)、(比P−1)〜(比P−5)をそれぞれイオン交換水に溶解して固形分含量が0.2%の水溶液とした。
H下水処理場から採取した余剰汚泥[pH6.1、TS0.7%、有機分69%]を200部ずつ18個の別々の500mLビーカーに採り、撹拌下で、(P−1)〜(P−13)、(比P−1)〜(比P−5)それぞれの上記水溶液3部を各ビーカーに加え、それぞれのビーカーについて前記評価方法(1)に従って混合処理した〔この時の(P−1)〜(P−13)、(比P−1)〜(比P−5)の固形分添加量は0.4%/TS〕。これらの処理物について前記評価方法(1)〜(5)に従ってフロック粒径、フロック強度、ろ液量、ろ布剥離性、およびケーキ含水率を評価した。結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
表2の結果から、本発明の高分子凝集剤(P)は、比較のものに比べて、大粒径の粗大フロックを形成し、高撹拌下(300rpm)でも一旦形成されたフロックが壊れにくく(フロックが強固)、ろ布剥離性、脱水性(ケーキ含水率)のいずれにおいても優れた効果を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の高分子凝集剤は、従来のものと比較して高い処理速度(すなわち高ろ液量)と高い脱水率(すなわち低いケーキ含水率)を示すことから、下水等または工場廃水等の有機性もしくは無機性汚泥または廃水の脱水処理用高分子凝集剤として用いることができ、とくに有機性汚泥の脱水処理用として好適に用いられる。また、その他の用途としては、例えば掘削・泥水処理用凝集剤、製紙用薬剤(例えば製紙工業用地合形成助剤、濾水歩留向上剤、濾水性向上剤および紙力増強剤)、原油増産用添加剤(原油の二、三次回収用添加剤)、分散剤、スケール防止剤、凝結剤、脱色剤、増粘剤、帯電防止剤および繊維用処理剤が挙げられ、これらのうちとくに掘削・泥水処理用凝集剤、製紙用薬剤および原油増産用添加剤として好適に用いられる。