(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、開度が予め設定された開度以上となっている前記流量調整弁の個数が、予め設定された限界個数以上となっているときには、前記省動力制御モードを実行しないことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱媒体循環システム。
前記制御部は、前記ポンプ作動変更機能の実行時には、前記特定制御弁の開度変更に基づいて、予め決められた変更幅にて前記ポンプ装置の吐出圧力を段階的に低下させることを特徴とする請求項10に記載の熱媒体循環システム。
前記制御部は、前記熱交換器で必要とされる熱交換能力に応じて前記流量調整弁の開度を決定し、前記流量調整弁の開度を当該決定された開度にする制御モードが実行可能であることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載に熱媒体循環システム。
前記省動力制御モードの実行時においては、前記制御部は、前記ポンプ装置の吐出部から所定寸法以上離れた部位での圧力が予め設定された圧力以上となるように前記ポンプ装置の作動を制御することを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の熱媒体循環システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する「発明の実施形態」は実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的手段や構造等に限定されるものではない。
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「複数」や「2つ以上」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。
【0014】
(第1実施形態)
1.空調システムの構成
1.1 空調システムの概要
本実施形態は、サーバ室や通信機器室等の空調を行う空調システムに本発明に係る熱媒体循環システムを適用したものである。すなわち、本実施形態に係る空調システムは、情報通信技術用機器(以下、ICT機器という。)等の発熱機器に冷却用の空気を供給することにより、複数のICT機器等を冷却する。
【0015】
複数のICT機器1は、
図1に示すように、ラック3に組み付けられた状態でデータセンタ室等に設置される。ラック3は、金属製の棚枠及び柱壁等を組み合わせた枠状の収納棚にて構成されている。
【0016】
ラック3を挟んで一方には、冷風が供給される冷風通路(コールドアイル)3Aが設けられている。冷風は、冷風通路3Aの床下に設けられたダクト空間3Cからラック3側に供給された後、床に設けられた複数の冷風吹出口(図示せず。)から冷風通路3Aに供給される。
【0017】
なお、ラック3を挟んで冷風通路3Aと反対側の通路3Bには、冷風吹出口が設けられていない。当該通路3Bには、冷風通路3AからICT機器1に供給された空気であって、ICT機器1との熱交換を終えた空気が流通する。つまり、通路3Bは、加熱された空気(温風)が流通する温風通路(ホットアイル)となる。
【0018】
空調ユニット5はICT機器1側に供給される冷却風を生成する。複数のICT機器1が設置されたサーバ室等には、少なくとも1台(
図1では、2台)の空調ユニット5が設置されている。
【0019】
各空調ユニット5は、
図2に示すように、室内熱交換器5A、流量調整弁5B及び室内送風機5C等を有するエアーハンドリングユニット(AHU)にて構成されている。室内熱交換器5Aは、熱源装置7から供給される冷水と熱交換対象をなす空気とを熱交換する。
【0020】
熱源装置7は冷熱を生成する。当該冷熱は熱媒体をなす冷水により室内熱交換器5Aに供給される。熱媒体、つまり冷水は、一次ポンプP1及び二次ポンプP2により室内熱交換器5A(空調ユニット5)に供給される。
【0021】
流量調整弁5Bは各室内熱交換器5Aに設けられている。当該流量調整弁5Bは、室内熱交換器5Aに供給する冷水の循環水量を調節する。室内送風機5Cは、ICT機器1側に冷風を供給するとともに、その風量を調節可能な送風機である。
【0022】
熱源装置7は室外に設置されている。熱源装置7にて生成された冷水は、一次ポンプP1にて室内(空調ユニット5)側に供給された後、二次ポンプP2にて各空調ユニット5に分配供給される。
【0023】
バイパス流路L1は、一次ポンプP1の吐出流量と二次ポンプP2の吐出流量とが相違する際に、その流量差を吸収する冷水回路である。例えば、流量調整弁5Bの開度が小さくなり、二次ポンプP2の吐出流量が減少したときには、その減少分はバイパス流路L1を流通する。
【0024】
熱源装置7は、熱源機7A、冷却塔7B及び冷却水ポンプP3等を有して構成されている。熱源機7Aは、フロン等の冷媒を循環させて低温側の熱を高温側に移動させる蒸気圧縮式冷凍機にて構成されている。
【0025】
冷却塔7Bは、冷媒と熱交換した冷却水を大気及び水のうち少なくとも一方と熱交換させて当該冷却水を冷却する。本実施形態に係る冷却塔7Bは、
図3に示すように、密閉式冷却塔である。当該冷却塔7Bには、室外送風機7C、散水器7D及び室外熱交換器7E等が設けられている。
【0026】
室外熱交換器7Eは、主に大気と冷却水とを熱交換する。室外送風機7Cは、室外熱交換器7Eに大気を送風するとともに、その送風量を調節可能な送風機である。このため、室外送風機7Cの回転数を増減させて送風量を増減させれば、冷却水と大気との熱交換能力を増減させることができる。
【0027】
散水器7Dは室外熱交換器7Eに水を散水する。室外熱交換器7Eに散水されると、散水された水が室外熱交換器7Eから吸熱して蒸発又は温度上昇する。これにより、散水しない場合に比べて冷却水が大きく冷却される。つまり、散水器7Dの作動を制御することにより、冷却水と大気との熱交換能力を調節できる。
【0028】
1.2 空調システムの能力調整装置
室内熱交換器5Aで発生する熱交換能力、つまり室内熱交換器5Aで発生する冷却能力は、流量調整弁5Bの開度、室内送風機5Cの送風量、室内熱交換器5Aに供給される冷水量(二次ポンプP2の送水量)、及び当該冷水の温度(熱源装置7で発生する冷凍能力)によって変化する。
【0029】
熱源装置7で発生する冷凍能力、つまり熱源機7A(蒸気圧縮式冷凍機)で発生する冷凍能力は、冷却塔7Bの冷却能力、冷却水の循環水量等に加えて、蒸気圧縮式冷凍機に設けられた圧縮機の回転数及び膨張弁の開度等によって変化する。冷却塔7Bの冷却能力は、室外送風機7Cの送風量及び散水器7Dの散水量等によって変化する。
【0030】
つまり、流量調整弁5B、室内送風機5C、二次ポンプP2、冷却水ポンプP3、室外送風機7C及び散水器7D等は、室内熱交換器5Aで発生する熱交換能力を調整する能力調整装置として機能する。なお、以下、流量調整弁5B及び室内送風機5C等を総称するときは、能力調整装置という。
【0031】
図2に示すように、能力調整装置の作動は統合制御装置10により制御されている。統合制御装置10は、空調機制御部10A、二次ポンプ制御部10B、一次ポンプ制御部10C、熱源制御部10D、冷却水ポンプ制御部10E、及び冷却塔制御部10Fを介して、能力調整装置を構成する各機器を間接的に制御する。
【0032】
空調機制御部10Aは、空調ユニット5、つまり流量調整弁5B及び室内送風機5C等の作動を制御する。二次ポンプ制御部10Bは、二次ポンプP2の作動を制御して空調ユニット5に供給する冷水量を制御する。
【0033】
一次ポンプ制御部10Cは一次ポンプP1の作動を制御する。熱源制御部10Dは、熱源機7A、つまり圧縮機の回転数及び膨張弁の開度等を制御する。冷却水ポンプ制御部10Eは、冷却水ポンプP3の作動を制御して冷却水の循環量を制御する。冷却塔制御部10Fは、室外送風機7Cの送風量及び散水器7Dの散水量等を制御する。
【0034】
なお、統合制御装置10及び各制御部10A〜10Fは、CPU、ROM及びRAM等を有するコンピュータを有して構成されている。制御を実行するためのプログラムは、統合制御装置10及び各制御部10A〜10Fに設けられたROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されている。
【0035】
2.統合制御装置等による制御作動
2.1 制御作動の概要
<各制御部の自律制御>
各制御部10A〜10Fは、当該制御部の制御対象を駆動する駆動回路等を有し、当該制御対象を直接的に制御する。統合制御装置10は、各制御部10A〜10Fに制御指令信号を発する。
【0036】
つまり、各制御部10A〜10Fは、統合制御装置10からの制御指令信号を受信した後、その制御指令信号の内容を実現するための具体的な制御を自律的に実行する。統合制御装置10及び各制御部10A〜10Fは、制御モードとして、少なくとも通常制御モード及び省動力制御モードが実行可能である。
【0037】
例えば、各空調ユニット5には吹出空気温度センサS1が設けられている。吹出空気温度セサS1は、空調ユニット5から室内に供給される空気、つまり室内熱交換器5Aにて熱交換が終了した空気の温度(以下、熱交換後温度という。)を検出する。
【0038】
空調機制御部10Aは、通常制御モード時においては、吹出空気温度センサS1にて検出された熱交換後温度(以下、吹出空気温度という。)が、統合制御装置10により設定された「目標とする熱交換後温度(以下、目標吹出温度Taoという。)」となるように、流量調整弁5B及び室内送風機5Cを制御する。
【0039】
つまり、空調機制御部10Aは、新たな目標吹出温度Taoが統合制御装置10により設定されない限り、現状の目標吹出温度Taoとなるように空調ユニット5の作動を自律的に制御する。
【0040】
具体的には、空調機制御部10Aは、目標吹出温度Taoが低くなるほど、流量調整弁5Bの開度を大きくして室内熱交換器5Aに供給される冷水流量を大きくし、かつ、目標吹出温度Taoが高くなるほど、流量調整弁5Bの開度を小さくして室内熱交換器5Aに供給される冷水流量を小さくする。
【0041】
なお、本実施形態に係る空調機制御部10Aは、目標吹出温度Taoに対して流量調整弁5Bの開度を一義的に決めていない。つまり、空調機制御部10Aは、現在の吹出空気温度(吹出空気温度センサS1の検出温度)を監視しながら、現在の吹出空気温度と目標吹出温度Taoとが小さくなるように流量調整弁5Bの開度を順次変更する。
【0042】
空調機制御部10Aは、サーバ室内の温度(室内温度)を急速に低下させる必要があるとき、つまり、現在の吹出空気温度から目標吹出温度Taoを減じた値が大きくなるほど、室内送風機5Cによる送風量を増大させる。
【0043】
なお、室内熱交換器5Aに供給される冷水の温度及び流量(流量調整弁5Bの開度)が一定の状態で送風量が増大すると、吹出空気温度が上昇する。このため、空調機制御部10Aは、吹出空気温度を目標吹出温度Taoに維持すべく、送風量の増大に応じて流量調整弁5Bの開度を大きくする。
【0044】
一次ポンプ制御部10C及び二次ポンプ制御部10Bは、通常制御モード時においては、統合制御装置10からの流量変更指令を受信しない限り、予め設定された流量(以下、目標冷水循環量Wroという。)の冷水が循環するように一次ポンプP1、二次ポンプP2を自律的に制御する。
【0045】
なお、一次ポンプ制御部10C及び二次ポンプ制御部10Bは、通常制御モード時において、統合制御装置10からの流量変更指令を受信したときには、その受信した新たな循環量を目標冷水循環量Wroとして、一次ポンプP1、二次ポンプP2を自律的に制御する。
【0046】
一次ポンプP1又は二次ポンプP2(本実施形態では、一次ポンプP1)の吐出側には、冷水の温度を検出する冷水温度センサS2が設けられている。熱源制御部10Dは、通常制御モード時においては、冷水温度センサS2にて検出された冷水温度(以下、冷水吐出温度という。)が、統合制御装置10により設定された「目標とする冷水吐出温度(以下、目標冷水温度Twoという。)」となるように、熱源機7Aを制御する。
【0047】
つまり、熱源制御部10Dは、新たな目標冷水温度Twoが統合制御装置10により設定されない限り、現状の目標冷水温度Twoとなるように熱源機7Aの作動を自律的に制御する。
【0048】
冷却水ポンプ制御部10Eは、通常制御モード時においては、冷却水の循環量が、統合制御装置10により設定された「目標とする冷却水の循環量(以下、目標循環量Wfoという。)」となるように冷却水ポンプP3を制御する。
【0049】
冷却塔制御部10Fは、冷却塔7Bにて冷却された冷却水の温度が、統合制御装置10により設定された「目標とする冷却水の温度(以下、目標冷却水温度Tcoという。)」となるように冷却塔7Bを制御する。「冷却水の温度」は、冷却水温度センサS3により検出される。
【0050】
なお、通常制御モード時において、熱源機7Aの制御のみでは、冷水吐出温度を目標冷水温度Twoまで冷却することができない場合には、統合制御装置10は、冷却水ポンプ制御部10E及び冷却塔制御部10Fのうち少なくとも一方に対して目標循環量Wfoを増大させる指令、又は目標冷却水温度Tcoを低下させる指令を発する。
【0051】
2.2 省動力制御及び余裕度
<省動力制御モード>
省動力制御モードとは、通常制御モード時に比べて流量調整弁5Bの開度を大きくして二次ポンプP2の負荷(吐出圧)を小さくすることにより、空調システムの消費電力の低減を図る制御モードである。
【0052】
具体的には、省動力制御モードでは、(1)複数の流量調整弁5Bのうち少なくとも1つの
流量調整弁(以下、当該
流量調整弁を特定制御弁5Bsという。)の開度が、省動力制御モードを実行する前、つまり通常制御モード時に比べて大きくされ(以下、この機能を開度変更機能という。)、かつ、(2)特定制御弁5Bsの開度変更に基づいて、少なくとも二次ポンプP2の作動が変更制御される(以下、この機能をポンプ作動変更機能という。)。
【0053】
統合制御装置10は、ポテンショメータ等にて構成された開度検出部S4から出力される開度信号により、流量調整弁5Bの開度を判断する。そして、開度変更機能の実行時には特定制御弁5Bsの開度は、予め設定された開度以上に制御される。なお、開度信号は、空調機制御部10Aを介して統合制御装置10に入力される。
【0054】
ポンプ作動変更機能時には、特定制御弁5Bsの開度が変更される前と同等の循環冷水量となるように二次ポンプP2が制御される。つまり、省動力制御モード時には、統合制御装置10は、特定制御弁5Bsを選択した後、空調機制御部10Aに対して当該特定制御弁5Bsの開度を現状より大きくさせる旨の指令を発する。
【0055】
これにより、二次ポンプ制御部10Bにおいて、現状の冷水循環量を維持する自律制御機能が働くので、二次ポンプP2の回転数(吐出圧)が低下する。このとき、二次ポンプ制御部10Bは、特定制御弁5Bsの開度変更に基づいて、予め決められた変更幅にて二次ポンプP2の回転数(吐出圧力)を段階的に低下させていく。
【0056】
さらに、二次ポンプ制御部10Bは、二次ポンプP2の吐出部から所定寸法以上離れた部位での圧力が予め設定された下限圧力以上となる範囲で二次ポンプP2の回転数(吐出圧力)を段階的に低下させていく。
【0057】
「吐出部から所定寸法以上離れた部位での圧力」とは、いわゆる「末端圧力」を意図するものである。つまり、二次ポンプP2から離れた室内熱交換器5Aほど、圧力損失の影響を受けて循環冷水量が小さくなる。このため、必要な循環冷水量を確保するには、「末端圧力」を予め決められた圧力以上に維持する必要がある。
【0058】
なお、「末端圧力(吐出部から所定寸法以上離れた部位での圧力)」は、現実に末端に位置する部位での圧力は、勿論のこと、「配管長及び流量等を利用して推定した圧力」のうちいずれであってもよい。
【0059】
なお、本実施形態では、冷水循環量を直接的に検出する流量計等は設けられていない。そこで、本実施形態では、二次ポンプP2の回転数(吐出圧力)と流量調整弁5Bの開度と冷水循環量との関係を予め試験により求め、当該試験結果を用いて二次ポンプP2の回転数(吐出圧力)を推定している。
【0060】
統合制御装置10は、以下の規則に従って特定制御弁5Bsを選択する。すなわち、複数の流量調整弁5Bのうち、開度が予め設定された開度未満となっている
流量調整弁の中から少なくとも1つの特定制御弁を選択する。
【0061】
なお、本実施形態に係る統合制御装置10は、「開度が予め設定された開度未満となっている
流量調整弁」のうち開度が最も大きい
流量調整弁を特定制御弁5Bsとして選択する。つまり、本実施形態に係る省動力制御モードでは、1つの流量調整弁5Bが特定制御弁5Bsとして選択される。
【0062】
そして、統合制御装置10は、原則として、予め設定された所定周期毎に省動力制御モードを実行する。しかし、以下の場合には、省動力制御モードを実行しない。
すなわち、(1)統合制御装置10の制御下にある複数の室内熱交換器5Aのうちいずれかの室内熱交換器5Aに関する余裕度Aが予め設定された警告閾値以下となっているときには、省動力制御モードを実行しない。なお、余裕度Aの詳細は後述する。
【0063】
(2)流量調整弁5Bの開度が予め設定された開度(以下、限界開度という。)以上となっている流量調整弁5Bの個数が、予め設定された限界個数以上となっているときには、省動力制御モードを実行しない。
【0064】
なお、「省動力制御モードを実行しない」とは、(a)省動力制御モードが実行される前(通常制御モード時)においては、次回の省動力制御モード実行タイミングになっても省動力制御モードを実行しない場合、及び(b)省動力制御モードの実行中においては、省動力制御モードを停止又は中止する場合のいずれかをいう。
【0065】
本実施形態に係る限界開度及び限界個数は、室内熱交換器5Aで必要とされる冷却能力(以下、空調負荷という。)に基づいて統合制御装置10にて決定変更される。つまり、限界開度及び限界個数は、省動力制御モードを停止等させる条件を示している。
【0066】
省動力制御モードでは流量調整弁5Bの開度を大きくするので、後述する数式1に示されるように、省動力制御モードでは余裕度Aが小さくなる傾向にある。そこで、実施形態では、空調負荷の増加率が正である場合には、空調負荷の増加率が負である場合に比べて限界開度及び限界個数を小さくしている。
【0067】
なお、本実施形態では、吹出空気温度センサS1の検出温度と目標吹出温度Taoとの温度差を利用して空調負荷が決定される。つまり、吹出空気温度センサS1の検出温度から目標吹出温度Taoを減じた値が大きくなるほど、統合制御装置10は空調負荷が大きいと判断する。
【0068】
<余裕度>
余裕度Aとは、能力調整装置にて調整可能な最大熱交換能力と現実の熱交換能力との差に関するパラメータをいう。なお、本実施形態では、通常制御モード時に自律制御にて各機器が制御されている場合も、各機器についての余裕度Aが予め決められた値以上に維持されるように制御される。
【0069】
例えば、空調ユニット5についての余裕度Aは、下記のいずれかにより定義される。
(1)1−(複数の流量調整弁5Bの平均開度)
(2)1−{(現実の室内送風機5Cの回転数/室内送風機5Cの最大回転数)の平均}
最大回転数:各室内送風機5Cの上限回転数
(3)1/{(吹出空気温度−目標吹出温度Tao)の平均}
(4)1−{(吹出空気温度−目標吹出温度Tao)の平均}/n
n:(吹出空気温度−目標吹出温度Tao)に相当する値であって、予め設定された値
つまり、nは許容温度差(許容乖離温度)を意味する。
(5)1/{(冷水吐出温度−目標冷水温度Two)の平均}
(6)1−{(冷水吐出温度−目標冷水温度Two)の平均}/n
n:(冷水吐出温度−目標冷水温度Two)に相当する値であって、予め設定された値
つまり、nは許容温度差(許容乖離温度)を意味する。
【0070】
2.3 制御作動の詳細
図4は、省動力制御モード時における制御フローを示す。本制御を実行するためのプログラムは、統合制御装置10に設けられたROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されている。当該プログラムは、統合制御装置10のCPUにて実行される。
【0071】
本制御は、空調システムの起動と同時に起動される。本制御が起動されると、先ず、前回省動力制御モードが実行された時、又は空調システムが起動した時から所定時間が経過したか否かが判定される(S1)。
【0072】
所定時間が経過していないと判定された場合には(S1:NO)、再び、S1が実行される。所定時間が経過したと判定された場合には(S1:YES)、限界開度及び限界個数が設定される(S3、S5)。
【0073】
次に、複数の流量調整弁5Bの中から特定制御弁5Bsが選択された後(S7)、その選択された特定制御弁5Bsを有する空調ユニット5(室内熱交換器5A)が担う空調ゾーンの余裕度Aが演算される(S9)。
【0074】
S9にて演算された余裕度Aが警告閾値以上であるか否かが判定される(S11)。余裕度Aが警告閾値未満であると判定された場合には(S11:NO)、二次ポンプP2の吐出圧(回転数)が予め決められた値だけ上昇変更された後(S13)、S1が実行される。
【0075】
余裕度Aが警告閾値以上であると判定された場合には(S11:YES)、流量調整弁5Bの開度(X%)が限界開度(X)以上となっている流量調整弁5Bの個数が限界個数Nmax以上となっているか否かが判定される(S15)。
【0076】
限界開度(X)以上となっている流量調整弁5Bの個数Nmaxが限界個数以上となっていると判定された場合には(S15:YES)、S1が実行される。限界開度(X)以上となっている流量調整弁5Bの個数Nmaxが限界個数未満であると判定された場合には(S15:NO)、特定制御弁5Bsの開度が全開以下であって、かつ、限界開度(X)以上の開度に設定されるとともに、現状の冷水循環量が維持されるように二次ポンプP2の吐出圧が下げられる(S17)。
【0077】
3.本実施形態に係る空調システムの特徴
本実施形態では、特定制御弁5Bsの開度を大きくするとともに、増大した開度に応じて二次ポンプP2の作動を変更するので、必要な循環冷水量を確保しつつ、流量調整弁5Bで発生する圧力損失を低減できる。したがって、消費動力を低減することが可能な冷水循環システムを得ることが可能となる。
【0078】
(第2実施形態)
本実施形態に係る「省動力制御モード」は、『(a)複数の流量調整弁5Bの開度を積算した合計開度若しくは平均開度の値、又は複数の流量調整弁5Bのうち最大開度が予め決められた値以上となるように、(b)二次ポンプP2の作動及び流量調整弁5Bの開度を制御する』ものである。
【0079】
すなわち、統合制御装置10が目標吹出温度Taoを変更する旨の指令を空調機制御部10Aに対してしない限り、空調機制御部10Aは現状の冷水循環量を維持する自律制御を実行する。
【0080】
このため、統合制御装置10が、目標吹出温度Taoを変更する旨の指令を空調機制御部10Aに対しすることなく、二次ポンプP2の吐出圧を低下させる指令を二次ポンプ制御部10Bにすると、空調機制御部10Aは、現状の冷水循環量を維持すべく、流量調整弁5Bの開度を大きくする。
【0081】
そこで、本実施形態では、複数の流量調整弁5Bの開度を積算した合計開度若しくは平均開度の値、又は複数の流量調整弁5Bのうち最大開度が予め決められた値以上となるまで二次ポンプP2の吐出圧を低下させる。
【0082】
すなわち、
図5は、本実施形態に係る省動力制御モード時における制御フローを示す。本制御を実行するためのプログラムは、統合制御装置10に設けられたROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されている。当該プログラムは、統合制御装置10のCPUにて実行される。なお、
図5は「複数の流量調整弁5Bの開度の平均開度」を用いた例である。
【0083】
本制御は、空調システムの起動と同時に起動される。本制御が起動されると、先ず、前回省動力制御モードが実行された時、又は空調システムが起動した時から前記所定時間が経過したか否かが判定される(S21)。
【0084】
所定時間が経過していないと判定された場合には(S21:NO)、再び、S1が実行される。所定時間が経過したと判定された場合には(S21:YES)、複数の流量調整弁5Bのうち以下の除外要件を満たす流量調整弁5Bが、開度を積算した合計開度又は平均開度の値を演算する際の対象となる流量調整弁5Bから除外される(S23)。
【0085】
「除外要件」とは、『(a)送風量が予め決められた風量以下となっている室内送風機5Cに対応する室内熱交換器5Aであって、(b)当該室内熱交換器5Aに供給される冷水量を調整する流量調整弁5Bの開度が予め決められた開度以上となっているもの』をいう。
【0086】
次に、複数の流量調整弁5Bのうち除外対象外の流量調整弁5Bの平均開度の値が、予め決められた目標値以上であるか否かが判定される(S25)。平均開度の値が目標値以上の場合は(S25:YES)、二次ポンプP2の吐出圧(回転数)が予め決められた範囲だけ上昇させられた後(S29)、S1が実行される。
【0087】
平均開度の値が目標値未満の場合は(S25:NO)、二次ポンプP2の吐出圧(回転数)が予め決められた範囲だけ下げられた後(S27)、S1が実行される。
以上のように、本実施形態においても、流量調整弁5Bの開度を大きくするとともに、増大した開度に応じて二次ポンプP2の作動を変更するので、必要な循環冷水量を確保しつつ、流量調整弁5Bで発生する圧力損失を低減できる。したがって、消費動力を低減することが可能な冷水循環システムを得ることが可能となる。
【0088】
なお、本実施形態では、二次ポンプP2の吐出圧を変更することにより、流量調整弁5Bの開度が自律的に変更されていくものであったが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、流量調整弁5Bの平均開度等を所定開度以上に変更させることにより、二次ポンプP2の吐出圧を自律的に低下するように制御してもよい。
【0089】
(その他の実施形態)
上述の本実施形態では、1つ室内熱交換器5Aに1つの流量調整弁5Bが設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の室内熱交換器5Aに対して1つの流量調整弁5Bを設けてもよい。つまり、1つの流量調整弁5Bにて複数の室内熱交換器5Aに供給する冷水量を制御してもよい。
【0090】
上述の実施形態では、同一室内に設置された複数の空調ユニット5(室内熱交換器5A)を例に本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、複数のサーバ室があり、かつ、各サーバ室に少なくとも1台の室内熱交換器5Aが設置された場合に本発明を適用できる。
【0091】
上述の実施形態では、冷熱のみを利用した空調システムに本発明を適したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、本発明は温熱及び冷熱も利用可能な空調システムにも適用できる。
【0092】
上述の実施形態では、熱媒体として水を用い、かつ、熱交換対象が空気であったが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、例えば、熱交換対象を冷却液とし、当該冷却液をICT機器の放熱部に供給する冷却システムにも適用できる。
【0093】
上述の実施形態では、発熱機器としてICT機器1を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ICT機器に電力を供給するための蓄電池や無停電電源装置等の電力供給機器にも適用できる。
【0094】
上述の実施形態に係る熱源装置7は、冷却塔7Bを備える水冷式であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、空冷式の熱源装置7(熱源機7A)であってもよい。
上述の実施形態に係る空調システムは、ICT機器が設置されたサーバ室の空調を行うものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、オフィスビル用空調システムにも適用可能である。
【0095】
上述の実施形態では、各制御部10A〜10Fが自律制御可能なコントローラにて構成され、かつ、統合制御装置10は各制御部10A〜10Fを統合的に制御する構成であったが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0096】
すなわち、例えば、各制御部10A〜10F及び統合制御装置10を1つのコントローラとして、1つの統合制御装置10にて空調システム(熱媒体循環システム)全体を制御する構成であってもよい。
【0097】
上述の実施形態では、省動力制御モードにより開度が変更された特定制御弁5Bsの開度と限界開度とが同一の開度であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、両開度を異なる開度としてもよい。
【0098】
上述の実施形態では、蒸気圧縮機式冷凍機にて冷熱を生成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、廃熱が十分に確保可能な場合には、吸着式冷凍機又は吸収式冷凍機にて冷熱を生成してもよい。
【0099】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。