特許第5940650号(P5940650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940650
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】組織治癒
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/00 20060101AFI20160616BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20160616BHJP
   A61M 27/00 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   A61F13/00 301Z
   A61F13/02 310M
   A61F13/02 310R
   A61M27/00
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-510868(P2014-510868)
(86)(22)【出願日】2011年11月2日
(65)【公表番号】特表2014-518711(P2014-518711A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】GB2011001553
(87)【国際公開番号】WO2012156655
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2014年10月29日
(31)【優先権主張番号】1108229.4
(32)【優先日】2011年5月17日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】391018787
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】サマンサ・ドーン・ハートウェル
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド・アンソン・ハドソン
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/122665(WO,A1)
【文献】 特開2010−000159(JP,A)
【文献】 特表2008−529618(JP,A)
【文献】 特表2005−536245(JP,A)
【文献】 特表2007−509680(JP,A)
【文献】 特表2011−504126(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0066946(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
13/15 − 13/84
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧創傷療法(NPWT)が適用される創傷部位において、瘢痕のない創傷の治癒を促進する装置であって、前記装置は、
シリコーンと開口領域を備える創傷接触層を備え
前記創傷部位から前記開口領域を介して除去される滲出液を保持するために、前記創傷接触層に対して近位に位置する少なくとも1つの滲出液吸収層をさらに備え、
前記滲出液吸収層が、3Dニット層と、吸収体を含有する層と、を備える装置。
【請求項2】
前記装置は、複数の貫通穴を備える前記創傷接触層をさらに備え、前記貫通穴の組合せ面積が、前記開口領域を構成し、かつ前記開口領域が、前記創傷接触層の全体面積の20%以下を構成する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
スリット、および/または、スロット、および/または、円形の穴、および/または、四角形の穴、および/または、多角形の穴、および/または、楕円形の穴を備える前記貫通穴をさらに備える請求項2に記載の装置。
【請求項4】
シリコーン接着層を備える前記創傷接触層をさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記滲出液吸収層によって保持される滲出液が、NPWTの間に、前記創傷のために湿潤環境を提供する液体を構成することをさらに備える請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記滲出液吸収層によって保持される滲出液が、治癒剤を備え、前記創傷の治癒を促進するために、前記創傷が治癒するときに、前記創傷部位に提供される請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記シリコーンが、ポリシロキサン、または、ポリオルガノシロキサン、または、ポリジメチルシロキサンを備えることをさらに備える請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
瘢痕組織形成の抑制が、完全なまたは部分的な瘢痕化の防止または低減を含むことをさらに備える請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
瘢痕化が、創傷の治癒から結果として生じる瘢痕化であることをさらに含む請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
瘢痕化が、皮膚、腱、靱帯または筋肉、腹腔、骨盤腔、および、胸腔などからなる群から選択された組織において生じることをさらに含む請求項に記載の装置。
【請求項11】
陰圧療法(NPT)が適用される組織部位において、瘢痕のない治癒を促進する装置であって、前記装置は、
シリコーンと開口領域とを備える組織接触層、及び
創傷部位から前記開口領域を介して除去される滲出液を保持するために、創傷接触層に対して近位に位置する少なくとも1つの滲出液吸収層を備え、
前記滲出液吸収層が、3Dニット層と、吸収体を含有する層と、を備え、
瘢痕組織が線維性疾患に関連する装置。
【請求項12】
前記線維性疾患が、皮膚線維症、筋肉線維症、および、腹部、骨盤、脊柱、または腱において生じるものなどのような癒着などからなる群から選択されたことをさらに含む請求項11に記載の装置。
【請求項13】
創傷部位に連結可能な陰圧供給源であって、前記陰圧供給源が、連続的および/または間欠的な陰圧を提供するように適合されている、陰圧供給源をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記陰圧供給源が、−20mmHgから−200mmHgの間の範囲にある陰圧を提供することをさらに備える請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記陰圧供給源が、−50mmHgから−150mmHgの間の範囲にある陰圧を提供することをさらに備える請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、瘢痕のない組織の治癒を促進する方法および装置に関する。とりわけ、本発明の実施形態は、陰圧創傷療法(NPWT)が適用される創傷部位において、瘢痕のない創傷の治癒を促進する装置に関するが、それに限らない。
【背景技術】
【0002】
瘢痕は、「身体の任意の組織における傷害または病気の部位に形成される繊維状の結合組織」として定義されてきた。したがって、瘢痕化は、創傷の治癒から、または、特定の線維性疾患に関連する瘢痕組織の沈着によって、結果として生じることがある。
【0003】
創傷治癒から結果として生じるものであろうと、または、関連の線維性疾患から結果として生じるものであろうと、瘢痕化の悪影響は周知であるが、これらの影響を部分的にまたは完全に低減させることができる効果的な療法は依然として存在しない。
【0004】
たとえば、シリコーン瘢痕治療は、瘢痕形成を妨げるために、および、既存の瘢痕外観を改善するために、使用されることが多い。また、圧力被覆材が、とりわけ、熱傷または肥厚性瘢痕に対処するときに、一般に使用される。実際には、両方の従来の技術に関する性能の改善が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,964,766号明細書
【特許文献2】米国特許出願第12/744,055号(米国特許出願公開第2011/0172615号明細書)
【特許文献3】米国特許出願第12/744,277号(米国特許出願公開第2011/0028918号明細書)
【特許文献4】米国特許出願第12/744,218号(米国特許出願公開第2011/0054421号明細書)
【特許文献5】米国特許出願第13/092,042号明細書
【特許文献6】「SYSTEMS AND METHODS FOR CONTROLLING OPERATION OF A REDUCED PRESSURE THERAPY SYSTEM」という発明の名称の2011年11月2日に出願された米国出願およびPCT出願(代理人事件整理番号SMNPH.194A, SMNPH.194WO)
【特許文献7】「REDUCED PRESSURE THERAPY APPARATUSES AND METHODS OF USING SAME」という発明の名称の2011年11月2日に出願された米国出願およびPCT出願(代理人事件整理番号SMNPH.195A, SMNPH.195WO)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、上述の問題を少なくとも部分的に軽減することである。
【0007】
本発明のある実施形態の一目的は、陰圧創傷療法(NPWT)が適用される創傷の瘢痕のない治癒を促進する装置および方法を提供することである。
【0008】
本発明のある実施形態の一目的は、抗瘢痕化の治療における局所的な管理によって、シリコーンまたはその薬学的に許容可能な均等物の有効な1日用量を提供し、それによって、従来の創傷被覆材治療から予期される瘢痕化と比べて、瘢痕化のレベルの低減が、ホスト(host)によって経験される、薬剤送出システムを提供することである。
【0009】
本発明のある実施形態の一目的は、陰圧療法(NPT)が適用される多種多様の組織部位において、瘢痕のない組織を促進する方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の実施形態によれば、陰圧創傷療法(NPWT)が適用される創傷部位において、瘢痕のない創傷の治癒を促進する装置であって、装置は、
シリコーンと、創傷部位においてNPWTが適用されるときに、瘢痕組織形成を抑制するのに十分な量および比率の開口面積(open area)と、から構成されている創傷接触層を備える装置が提供される。
【0011】
第2の実施形態によれば、陰圧療法(NPT)が適用される組織部位において、瘢痕のない治癒を促進する装置であって、装置は、
シリコーンと、組織部位においてNPTが適用されるときに、瘢痕組織を低減するのに十分な量および比率の開口面積と、から構成されている組織接触層であって、前記瘢痕組織が、線維性疾患に関連する、組織接触層を備える、装置が提供される。
【0012】
第3の実施形態によれば、創傷接触層を備える創傷被覆材とともに行う陰圧創傷療法(NPWT)の使用であって、創傷接触層は、シリコーンと、創傷接触層の全体面積の約20%以下の開口面積と、から構成され、それによって、実質的に瘢痕のない切開創傷の治癒を促進する、使用が提供される。
【0013】
第4の実施形態によれば、局所的に制御された薬剤送出システムであって、薬剤送出システムは、シリコーンまたはその薬学的に許容可能な均等物の有効な1日用量を備え、抗瘢痕化の治療において、創傷を患うホストに対して陰圧創傷療法(NPWT)を適用することと組み合わせられた局所的な管理によって、局所的にシリコーンを保持するジェル被覆材の形態の従来の創傷被覆材治療と比べて、瘢痕化のレベルの低減が、ホストによって経験される、薬剤送出システムが提供される。
【0014】
第5の実施形態によれば、陰圧療法(NPT)が適用される組織部位において、瘢痕のない治癒を促進する方法であって、方法は、
組織部位に創傷被覆材を位置付けるステップであって、創傷被覆材が、組織接触層を備え、組織接触層が、シリコーンと、組織部位においてNPTが適用されるときに、瘢痕組織を低減するのに十分な量および比率の開口面積と、から構成されている、ステップと、
創傷被覆材を介して組織部位にNPTを適用するステップと、
組織部位において瘢痕組織を少なくとも低減させるステップと、
を備える、方法が提供される。
【0015】
第6の実施形態によれば、創傷の治療のための方法であって、方法は、
シリコーン創傷接触層および水蒸気透過性のカバー層を備える創傷被覆材を提供するステップと、
被覆材を創傷部位の上方に位置付けて、創傷部位の上方に密封された空洞を形成するステップと、
創傷部位から密封された空洞の中へ流体を吸い込むために、創傷部位に陰圧を適用するステップと、
を備える方法が提供される。
【0016】
本発明のある実施形態は、創傷からの流体が創傷被覆材における密封された空洞の中に含有されることを提供することが可能である。ある実施形態は、前記シリコーン創傷接触層のない創傷被覆材を使用して生じることとなる瘢痕組織形成と比較して、創傷部位における瘢痕組織形成が、低減されることを提供することが可能である。たとえば、瘢痕組織形成は、バンクーバー瘢痕スケール(Vancouver Scar Scale)またはマンチェスター瘢痕スケール(Manchester Scar Scale)によると、少なくとも1ポイント低減させられる。いくつかの実施形態では、創傷接触層から創傷部位へ漏れるシリコーンの量は、瘢痕組織形成を低減させるのに十分である。
【0017】
本発明のある実施形態は、創傷の上方に位置付けられる被覆材の創傷接触層が、シリコーンと、下側の創傷に対して小さい開口面積を提供する開口面積と、を含有するときに、および被覆材を介して陰圧療法が適用されるときに、瘢痕組織形成が、完全にまたは部分的に、妨げられるかまたは低減されるという利点を提供する。
【0018】
本発明のある実施形態は、瘢痕組織が現存している任意の組織部位において、または、瘢痕組織形成が予期されることとなる任意の組織部位において、利用される。シリコーンを含み、また、限定された開口面積を有する組織接触層を含む被覆材と併用して、陰圧療法を利用することによって、瘢痕材料が低減されるか、または、瘢痕材料の形成が抑制される。
【0019】
本発明のある実施形態は、そうでなければ、局部的に適用される従来のシリコーン被覆材、軟膏、または圧力被覆材で予期されることとなるものよりもはるかに少ない瘢痕化を結果として生じる技術によって、所定の量および比率で、組織部位にシリコーンを投薬することができる手法および装置を提供する。
【0020】
本発明のある実施形態は、使用時に、被覆材と下に位置する組織との間の界面領域において、増加した静電荷を提供することができる方法および装置を提供する。負の電荷を帯びたイオンと組織流体および/または皮膚のイオン電荷との間の相互作用が、全体的なもしくは部分的な瘢痕組織形成の防止、または、瘢痕低減を助ける。
【0021】
本発明のある実施形態は、手術において、または、前から存在する瘢痕の改善において生じる瘢痕などのような、任意のタイプの瘢痕化で利用される。瘢痕組織の段階および成熟度に応じて、使用は、美容的な魅力の観点から、および、生理学的におよび機械的に、より機能的であるという観点から、改善された皮膚表面を残すように選択される。
【0022】
本発明のある実施形態は、シリコーン保持層からシリコーンオイルが漏れることを可能にする。実質的に閉塞性の層を所有しながら、このことが、創傷治療において大幅な改善を提供する創傷被覆材につながる。
【0023】
本発明のある実施形態は、シリコーン保持層が、下に位置する皮膚表面から水分損失を限定し、水和物を助ける、方法および装置を提供する。また、皮膚表面への酸素のアクセスを限定しない層が、提供される。したがって、全体として、瘢痕形成が、妨げられるか、または低減される。
【0024】
本発明のある実施形態は、美容上の目的のために使用されてもよい。
【0025】
本発明のある実施形態は、圧縮力および接着力の同時発生的な適用を可能にし、また、組織部位において外部のせん断力を和らげるのを助ける創傷被覆材を提供する。結果として、瘢痕のない治癒/組織形成を助けるために、とりわけ最適な環境が提供される。
【0026】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、単なる例として、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】創傷被覆材システムの実施形態を示す図である。
図2】創傷被覆材システムの実施形態を示す図である。
図3】創傷被覆材システムの実施形態における層を示す図である。
図4】創傷接触層の実施形態における開口部の開口面積を示す図である。
図5】動作の弛緩モード(relaxed mode)の状態の透過層の実施形態を示す図である。
図6】動作の強制モードの状態の透過層の実施形態を示す図である。
図7】圧力オフセットを示す図である。
図8】動作の弛緩モードの状態の透過層および上方に位置する吸収剤の実施形態を示す図である。
図9】圧縮力を受けている吸収層および透過層の実施形態を示す図である。
図10】せん断力を受けている吸収層および透過層の実施形態を示す図である。
図11】手術後の創傷を示す図である。
図12】所定の位置にある創傷被覆材システムの実施形態とともに図11の創傷を示す図である。
図13】従来の被覆材で治療された創傷と、図12に示す被覆材システムの実施形態で治療された創傷との比較を示す図である。
図14A】創傷治療システムの実施形態の患者に対する使用および適用を示す図である。
図14B】創傷治療システムの実施形態の患者に対する使用および適用を示す図である。
図14C】創傷治療システムの実施形態の患者に対する使用および適用を示す図である。
図14D】創傷治療システムの実施形態の患者に対する使用および適用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面において、同じ参照符号は同じ番号を示す。
【0029】
正常なもしくは異常な創傷治癒から結果として生じているか、または、線維性疾患に関連しているかについて瘢痕を定量化するために、いくつかの様式が考えられてきた。瘢痕評価は、客観的または主観的である。主観的評価は観察者に依存するが、客観的な評価は、瘢痕の定量的測定を提供する。本発明のある実施形態は、組織を治療する方法および装置を提供し、それによって、瘢痕形成が抑制され、すなわち、全体的にもしくは部分的に、妨げられるかもしくは低減され、または、それによって、既に形成された瘢痕が低減される。
【0030】
創傷被覆材および創傷治療システムを開示する追加的な出願が、以下の発行された同時係属中の特許出願、すなわち、2011年6月21日に発行され、「WOUND CLEANSING APPARATUS INSULT」という発明の名称の米国特許第7,964,766号;2010年5月20日に出願され、「VACUUM ASSISTED WOUND DRESSING」という発明の名称の米国特許出願第12/744,055号(米国出願公開第2011/0172615号として公開されている);2010年9月20日に出願され、「WOUND DRESSING」という発明の名称の米国特許出願第12/744,277号(米国出願公開第2011/0028918号として公開されている);2010年9月20日に出願され、「WOUND DRESSING」という発明の名称の米国特許出願第12/744,218号(米国出願公開第2011/0054421号として公開されている);2011年4月21日に出願され、「WOUND DRESSING AND METHOD OF USE」という発明の名称の米国特許出願第13/092,042号;「SYSTEMS AND METHODS FOR CONTROLLING OPERATION OF A REDUCED PRESSURE THERAPY SYSTEM」という発明の名称の2011年11月2日に出願された米国出願およびPCT出願(代理人事件整理番号SMNPH.194A, SMNPH.194WO);および、「REDUCED PRESSURE THERAPY APPARATUSES AND METHODS OF USING SAME」という発明の名称の2011年11月2日に出願された米国出願およびPCT出願(代理人事件整理番号SMNPH.195A, SMNPH.195WO)に見られる。これらの開示の全体が、参照により本明細書に組み込まれている。
【0031】
既存のデバイスが、柔軟性、堅さ、色、灌流、厚さ、および3−Dトポグラフィーなどのような瘢痕に関連するパラメーターを評価する。この観点において、現在、少なくとも5つの瘢痕スケールが存在し、それは、主観的なパラメーターを客観的な方式で評価するように設計されているということを留意されたい。たとえば、バンクーバー瘢痕スケール(VSS)、マンチェスター瘢痕スケール(MSS)、患者および観察者瘢痕評価スケール(Patient and Observer Scar Assessment Scale)(POSAS)、視覚的アナログスケール(Visual Analogue Scale)(VAS)、および、Stony Brook瘢痕評価スケール(Stony Brook Scar Evaluation Scale)(SBSES)である。より具体的には、VSSは、瘢痕の血管分布、高さまたは厚さ、柔軟性、および色素沈着などのようなパラメーターを評価する。VASは、瘢痕の血管分布、色素沈着、容認性、観察者快適性、および輪郭などのようなパラメーターを評価する。MSSは、VASからのもの、ならびに、瘢痕の色、肌のきめ、周囲の皮膚(surrounding skin)との関係、質感、周辺、サイズ、および数を含む、パラメーターを評価する。POSASは、VSSからのもの、ならびに、表面積、痛みの患者評価、かゆみ、色、剛性、厚さ、および起伏を含む、パラメーターを評価する。SBSESは、VASからのもの、ならびに、幅、高さ、色、および、縫合またはステープラーの跡の存在などのようなパラメーターを評価する。
【0032】
本発明のある実施形態は、従来の治療メカニズムと比べて、瘢痕の低減、または瘢痕の抑制を生じさせることを可能にし、そのような低減または抑制は、1つまたは複数の上述の測定技術に従って観察される。瘢痕の外観は、ある程度、主観的であるが、本明細書で説明した実施形態を使用して治療された瘢痕は、上記に述べた基準を使用して瘢痕化を最小化するように観察された。たとえば、本明細書で説明した実施形態での治療は、従来の被覆材方法と比較して、瘢痕の赤味の低減(瘢痕の色が、周囲の皮膚の色に、よりよく似るようになる)、瘢痕の高さの低減、瘢痕の上および瘢痕の周りの掻痒感の低減、および、周囲の皮膚の質感に、よりよく似た瘢痕の質感を生じさせた。
【0033】
従来の被覆材方法は、任意の追加的な陰圧療法を使用しないが、吸収パッドを備える創傷被覆材、および、接着剤がコーティングされた膜、または、繊維状の織られた材料層を含むことが可能である。そのような被覆材には、Smith & Nephew製のOPSITE POST OP(登録商標)およびPRIMAPORE(登録商標)が含まれる。OPSITE POST OP(登録商標)被覆材は、アクリル接着剤でコーティングされている高い水蒸気透過率のポリウレタン膜の頂部層と、吸収パッドと、穿孔されたポリエステル膜から作製された低い接着性の創傷接触層と、を備える。頂部層の水蒸気透過率は、水分の存在下で、37℃で11000g/m/24時間の最小値を有する。PRIMAPORE(登録商標)被覆材は、柔らかいアクリル接着剤固定層を備える不織ビスコースおよびポリエステルの吸収パッドを備える。
【0034】
本明細書で説明した切開部に適用される創傷被覆材システムの実施形態は、従来の被覆材方法による治療と比較して、得点(scoring)の相当な低減を生じさせた。たとえば、1つの臨床試験では、本明細書で開示した創傷被覆材の実施形態で治療された瘢痕が、従来のOPSITE POST OP(登録商標)被覆材と比較して、VSSにおいて瘢痕高さと色の両方の1ポイントの改善を示した。好ましくは、本明細書で説明した実施形態による治療は、従来の被覆材方法と比較して、VSSまたはMSSにおいて、少なくとも3ポイントの低減を生じさせる。好ましくは、VSSまたはMSSにおいて、統計的に有意な(p<0.05)得点の低減は、1ポイント以上である。
【0035】
図1は、創傷被覆材100の一実施形態の断面図を示す。創傷被覆材100の上から見た平面図が図2に示されており、線A−Aは、図1に示す断面の位置を示す。図1が、装置100の概略図を示すことが理解されよう。本発明の各実施形態が局所陰圧(TNP)療法システムでの使用に一般的に適用可能であることが理解されよう。簡単に言えば、陰圧療法は、組織の浮腫を抑制し、血流を促進し、肉芽組織の形成を刺激し、余分な滲出液を除去することによって、多くの形態の「治癒するのが困難な」創傷の閉鎖および治癒を助けることができ、細菌負荷(したがって、感染リスク)を低減させることができる。さらに、この治療は、創傷がくずれるのを抑制するのを可能にし、創傷をより早く治癒させる。TNP療法システムは、流体を除去し、並置された閉鎖位置における組織を安定化させるのを助けることによって、外科的に閉鎖された創傷が治癒するのを助けることもできる。TNP療法のさらなる有効な用途としては、余分な流体を除去することが重要であり、かつ組織の生存能力を確保するうえで植皮を組織の極めて近くに配置する必要がある植弁および皮弁がある。
【0036】
創傷被覆材100は、治療すべき創傷部位の上方に配置されてもよい。被覆材100は、創傷部位の上方に密封された空洞を形成する。本明細書全体にわたって創傷が参照されることが多いことが理解されよう。この意味において、「創傷」という用語は広義に解釈されるべきであり、皮膚が裂けるか、皮膚が切れるか、または皮膚に穴が開くか、あるいは外傷によって挫傷が生じる、開放され閉鎖される創傷を包含することを理解されたい。したがって、創傷は、流体が生じることも生じないこともある組織の傷ついた任意の領域として広義に定義される。そのような創傷の例には、切開、裂傷、磨耗傷、挫傷、火傷、糖尿病性潰瘍、じょく瘡、瘻孔、外科的創傷、外傷、および静脈性潰瘍などが含まれるが、それらに限定されない。本発明のある実施形態は、以下により詳細に述べるような創傷での使用に制限されない。
【0037】
本発明のある実施形態の陰圧範囲は約−20mmHgから−200mmHgの間であってもよいと考えられる(これらの圧力が標準周囲大気圧に対する圧力であり、したがって、−200mmHgは実際的には約560mmHgであることに留意されたい)。適切な形態において、圧力範囲は約−40mmHgから−150mmHgの間であってもよい。代替として、−75mmHg以下、−80mmHg以下、または−80mmHgを超える圧力範囲を使用してもよい。適切な形態において、−75mmHgよりも低い圧力範囲を使用してもよい。代替として、−100mmHgを超えるかまたは−150mmHgを超える圧力範囲を使用してもよい。
【0038】
本発明のある実施形態によれば、ある期間にわたって事前に定められた1つまたは複数の所望の圧力プロファイルに従って発生する圧力を変調してもよいことが理解されよう。たとえば、そのようなプロファイルは、陰圧を2つの所定の陰圧P1とP2との間で変調し、圧力を所定の期間T1にわたってP1に実質的に一定に保持し、次いでポンプ動作を変化させることまたは流体の流れを制限することなどのような適切な手段によって、さらなる所定の期間T2にわたって実質的に一定に保持することのできる新しい所定の圧力P2に調整することを含んでもよい。場合によっては、2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多くの所定の圧力値およびそれぞれの期間を利用してもよい。適切な形態では、正弦波、歯痛(sore tooth)、心臓収縮−拡張に関する波形などのような圧力流プロファイルのより複雑な振幅/周波数波形を生成してもよい。
【0039】
図1に示すように、創傷被覆材100の下面101は任意の創傷接触層102によって構成されている。創傷接触層102は、たとえば、ホットピンプロセス、レーザアブレーションプロセス、超音波プロセス、もしくは他の何らかの方法で穿孔されるか、または液体および気体を透過するようにされたポリウレタン層、ポリエチレン層、または他の可撓性の層であってもよい。創傷接触層は下面101と上面103とを有する。穿孔104は、流体が創傷接触層を通過するのを可能にする創傷接触層の貫通穴である。創傷接触層は、創傷被覆材の他の材料に組織が内部成長するのを妨げるのを助ける。穿孔は、存在する場合、この要件を満たし、それにもかかわらず流体を通過させるのに十分な小さいサイズを有する。創傷接触層は、創傷被覆材全体を保持するのを助け、吸収パッドの周りに気密シールを形成して創傷の所に陰圧を維持するのを助ける。創傷接触層は、任意の下部接着層および上部接触層(図示せず)用の担体としても働く。たとえば、創傷被覆材の下側面101上に下部感圧接着剤を設けてもよく、一方、創傷被覆材の上側面103上に上部感圧接着剤を設けてもよい。感圧接着剤は、シリコーン、ホットメルト、親水コロイド、もしくはアクリル系の接着剤またはそのような他の接着剤であってもよく、創傷接触層の両側に形成しても、あるいは任意に選択された一方の側に形成してもよく、あるいはどちらの側にも形成しなくてもよい。下部感圧接着剤を利用すると、創傷被覆材を創傷部位の周りの皮膚に付着させる助けになる。また、小さい穿孔が、任意の上部接着層および下部接着層において作られる。
【0040】
適切な形態において、ポリシロキサンまたはポリオルガノシロキサンが、感圧シリコーン接着剤を形成するために使用されるポリマーの一般的なカテゴリーである。たとえば、ポリジメチルシロキサンなどが、使用される。適切な形態において、公式化(formulation)は、アルキルペンダント型(alkyl pendant)シロキサンの混合物であってもよく、これらは、2つの部分が触媒と混合するとき、スプレッド(spread)およびキャスト(cast)されることが可能であり、最終的な重合ステップが、キャスティングまたはスプレッディングに続いて起こるようになっている。
【0041】
穿孔されていないシリコーン接着剤(コーティング重量130グラム毎平方メートル(gsm)公称)として、および、押し出しEU30ポリウレタン透明膜(27〜37gsm)の両側にコーティングされた完全にスプレッドされたアクリル接着剤(27〜37gsm)として構成された層に実施される試験とともに、シリコーン層(穿孔されていない形態)の水蒸気透過性が試験された。下側位置の、すなわち、Paddingtonカップ中の水に最も近いシリコーン層の水蒸気透過性が測定された。これは、製品が所定の臨床設定で使用されるときの透過性の方向を擬態するのを助ける。結果が、下記に示される。
【0042】
【表1】
【0043】
適切な形態において、水蒸気透過率を制御する被覆材における層(本明細書で説明したシリコーン層は、そのような層の適切な例である)は、gm−2/24時間で350から410の間に測定される水蒸気透過性を有する。適切な形態において、平均の水蒸気透過性は、約380gm−2/24時間である。当業者は、不透過性の層の量に対して、500gm−2/24時間より小さい数値を考慮し得るということが諒解されよう。本発明のある実施形態によれば、上述の範囲の水蒸気透過性を有する層は、創傷被覆材における任意の適切な場所において提供されてもよく、水蒸気透過性を、ひいては、組織部位の環境を制御するようになっているということが諒解されよう。適切な形態において、この層は、シリコーン接着剤創傷接触層によって提供されてもよい。
【0044】
適切な感圧接着剤の例は、Wacker silres PSA45接着剤である。本発明のある実施形態によれば、Dow Corning 7-4107エラストマー膜などのような非接着性のシリコーン層が、使用されてもよい。本発明の実施形態は、シリコーン層に関して説明した特定の材料に制限されないということが理解されよう。
【0045】
多孔性材料の層105が創傷接触層の上方に配置されてもよい。この多孔性層は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上部層に透過させるのを可能にする透過層として働く。特に、透過層105は、吸収層が実質的な量の滲出液を吸収したときでも創傷領域の上方に陰圧を伝達するように開放された空気流路を維持できるようにする。透過層は、上述のように陰圧創傷閉鎖療法を実施するときに加えられる通常の圧力の下で開放されたままになるべきであり、それによって創傷部位全体が等しい陰圧を受ける。層105は、三次元構造を有する材料で形成されている。たとえば、編まれるかまたは織られたスペーサ布(たとえば、Baltex7970横編みポリエステル)。もちろん、他の材料を使用してもよい。
【0046】
適切な形態において、透過層は、84/144加工ポリエステルである頂部層(すなわち、使用時に創床に対して遠位に位置する層)、100デニールフラットポリエステルである底部層(すなわち、使用時に創床に対して近位に位置する層)と、編みポリエステルビスコース、セルロースなどのモノフィラメント繊維によって定義された領域である、この2つの層の間に挟まれた第3の層とを含む3Dポリエステルスペーサ布層を備える。もちろん、他の材料および他の線質量密度の繊維を使用してもよい。
【0047】
本開示の全体にわたってモノフィラメント繊維を参照するが、もちろん、代わりに多重撚り線繊維を使用してもよいことが理解されよう。
【0048】
したがって、頂部スペーサ布は、それを形成するのに使用される糸に、底部スペーサ布層を形成するのに使用される糸を構成するフィラメントの数よりも多くのフィラメントを有する。
【0049】
間隔を置いて配置された層同士のフィラメント数のこの差は、透過層を横切る水分の流れを制御するのを助ける。特に、頂部層よりもフィラメント数を多くすることによって、底部層において使用される糸よりも多くのフィラメントを有する糸から頂部層が形成され、底部層よりも多くの液体が頂部層に沿って移動する傾向がある。使用時には、この差によって、液体が創床から創傷被覆材の中央領域に吸い込まれ、吸収層が液体を保持するか、または液体層自体が液体をカバー層の方へ外側に移動させ、カバー層において液体を蒸散させることができる。
【0050】
適切な形態では、透過層を横切る(すなわち、頂部スペーサ層と底部スペーサ層との間に形成された流路領域に垂直な)液体流を改善するために、3D布が、透過層の親水機能に干渉することがある、従来使用されている鉱物油、脂肪、および/またはろうのようなあらゆる工業製品を除去するのを助けるように乾燥洗浄剤(ペルクロロエチレンなどであるがそれに限定されない)によって、処理される。適切な形態では、その後、3Dスペーサ布が親水化剤(Rudolph Groupから市販されているFeran Ice 30g/lなどであるがそれに限定されない)で洗浄される追加の製造ステップを実施してもよい。このプロセスは、各物質上の表面張力が、水などの液体が3Dニット生地に接触した直後に布に進入することができるほど、低くなるようにするのを助ける。このことは、滲出液の液体障害成分(liquid insult component)の流れを制御するのも助ける。
【0051】
透過層105の上方に吸収材料層110が設けられてもよい。吸収材料は、発泡体または不織天然材料もしくは不織合成材料であってもよく、任意に高吸収性材料を含むか、高吸収性材料であってもよく、創傷部位から除去された流体、特に液体を形成し、このような液体をカバー層140の方へ吸い込む。吸収層の材料は、創傷被覆材内に収集された液体が流れる際に跳ね回るのも妨げる。吸収層110は、ウィッキング動作を介して層全体にわたって流体を分散させ、それによって、流体は創傷部位から吸い出され、吸収層全体にわたって格納される。これによって吸収層の領域における凝集が防止される。吸収材料の容量は、陰圧が加えられるときに創傷の滲出液流量を管理するのに十分な容量であることが好ましい。使用時には、吸収層が陰圧を受けるので、吸収層の材料としては、そのような状況の下で液体を吸収する吸収材料の層が選択される。陰圧下で液体を吸収することのできるいくつかの材料、たとえば高吸収性材料が存在する。吸収層110は通常、ALLEVYN(商標)発泡体、Freudenberg114-224-4、および/またはChem-Posite(商標)11C-450から製造されてもよい。
【0052】
適切な形態において、吸収層は、繊維全体にわたって分散された乾燥粒子の形をした高吸収性材料を有する不織セルロース繊維の層である。セルロース繊維を使用すると、被覆材によって取り込まれた液体を高速にかつ均等に分散させるのを助ける高速ウィッキング要素が導入される。複数の撚り糸状繊維を並置すると繊維状パッド内で強力な毛管作用が生じ、液体を分散させる助けになる。このように、高吸収性材料に液体が効率的に供給される。また、吸収層の全ての領域に液体が供給される。
【0053】
ウィッキング作用は液体を上部カバー層に接触させるのを助けて、被覆材の蒸散率を高めるのも助ける。
【0054】
ウィッキング作用は、滲出が減速または休止したときに液体を下方に創床の方へ送出するのも助ける。この送出プロセスは、透過層および下部創床領域を湿潤状態に維持するのを助け、被覆材内の痂皮形成(閉塞を生じさせる恐れがある)を妨げるのを助け、かつ環境を創傷の治癒に最適な状態に維持するのを助ける。
【0055】
適切な形態において、吸収層は風成材料(air-laid material)である。熱可溶繊維を任意に使用してパッドの構造を保持するのを助けてもよい。本発明のある実施形態によれば、高吸収性粒子を使用する代わりにまたはそのような使用に加えて、高吸収性繊維を利用してもよいことが諒解されよう。適切な材料の例には、米国のEmerging Technologies Inc(ETi)から市販されているProduct Chem-Posite(商標)11Cがある。
【0056】
場合によっては、本発明のある実施形態によれば、吸収層は、合成安定繊維および/または二成分安定繊維および/または天然安定繊維および/または高吸収性繊維を含んでもよい。吸収層中の繊維は、ラテックス結合または熱結合または水素結合または任意の結合技術もしくは他の固定機構の組合せによって固定されてもよい。適切な形態において、吸収層は、高吸収性粒子を吸収層内にロックするように働く繊維によって形成される。このことは、高吸収性粒子が吸収層の外部の、下層の創床の方へ移動しなくなるようにするのを助ける。これは、陰圧が加えられたときに吸収パッドが下向きに潰れる傾向があり、この作用によって、高吸収性粒子物質が吸収層の繊維状構造によって保持されない場合に高吸収性粒子物質が創床の方へ押されるので特に有用である。
【0057】
吸収層は好ましくは複数の繊維からなる層を備える。適切な形態において、繊維は、撚り糸状の繊維であり、セルロース、ポリエステル、ビスコースなどで作られる。適切な形態では、乾燥した吸収剤粒子が、使用する準備の整った吸収層全体にわたって分散される。適切な形態において、吸収層は、セルロース繊維のパッドと複数の高吸収性粒子とを備える。適切な形態において、吸収層は、無作為の向きを有するセルロース繊維の不織層である。
【0058】
高吸収性粒子/繊維は、たとえばナトリウム材料、ポリアクリレート材料、またはカルボメトキシセルロース材料など、または材料自体の重量の何倍もの重量を有する液体を吸収することができる任意の材料であってもよい。適切な形態において、この材料は、重量が材料自体の重量の5倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。適切な形態において、この材料は、重量が材料自体の重量の15倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。この材料は、重量が材料自体の重量の20倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。適切な形態において、この材料は、重量が材料自体の重量の30倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。
【0059】
適切な形態において、高吸収体の粒子は、非常に親水性が高く、流体が被覆材に進入するときに流体を把持し、接触時に膨張する。被覆材コア内に均衡状態が確立され、それによって、水分が高吸収体からより乾燥した周囲領域に移り、水分が頂部の膜に衝突すると、膜が切り替わり、流体蒸気が蒸散を開始する。被覆材内に水分傾斜が確立され、創床から流体が連続的に除去され、被覆材が滲出液で重くなることはない。
【0060】
適切な形態において、吸収層は、吸入ポートの下に位置するように配置された少なくとも1つの貫通穴を含む。図1に示すように、単一の貫通穴を使用して、ポート150の下に位置する開口部を形成してもよい。代替として、複数の開口部を利用してもよいことが諒解されよう。さらに、本発明のある実施形態によって複数のポートを利用する場合、高吸収層にそれぞれの各ポートに位置合わせして1つまたは複数の開口部を形成してもよい。本発明のある実施形態に必須ではないが、高吸収層に貫通穴を使用すると、特に抑制されない流体流路が構成され、このことはある状況において有用である。
【0061】
吸収層に開口部を設けると、この層の厚さ自体が、透過層105の上面(すなわち、使用時に創傷から外方に向く表面)から、上方に位置する任意の層を分離するスタンドオフとして働く。この利点は、ポートのフィルタがこのように透過層の材料から分離されることである。このことは、フィルタが濡れ、したがってさらなる動作を妨害する可能性を低減させるのを助ける。
【0062】
吸収層に1つまたは複数の貫通穴を使用することは、使用時に、吸収層が高吸収体などのゲル形成材料を含む場合、その材料が、膨張して液体を吸収するときに、さらなる液体の移動および流体の移動を概して不可能にするバリアを形成することがなくなるという利点も有する。このようにして、吸収層の各開口部は、透過層から直接、創傷に面するフィルタの表面に至り、次いで外側に延びてポート内に入る流体経路を構成する。
【0063】
気体を透過させないが、水蒸気を透過させるカバー層140が、好ましくは創傷被覆材の幅を横切って延在している。カバー層は、たとえば一方の側に感圧接着剤を有するポリウレタン膜(たとえば、Elastollan SP9109)であってもよく、気体を透過させず、したがって、この層は創傷を覆い、上方に創傷被覆材が配置された創腔を密封する。このようにして、陰圧が確立されるカバー層と創傷部位との間に効果的なチャンバが形成される。カバー層140は、たとえば接着技術または溶接技術を介して、被覆材の周囲の境界領域200内に創傷接触層102に対して密封され、境界領域に空気が吸い込まれないようにする。カバー層140は、外部細菌汚染から創傷を保護し(細菌バリア)、創傷滲出液からの液体がこの層を通過して膜の外面から蒸発するのを可能にする。カバー層140は通常、2つの層、すなわちポリウレタン膜とこの膜上に広げられた接着パターンとを備える。ポリウレタン膜は、水蒸気透過性であり、かつ濡れると透水率が高くなる材料から製造されてもよい。
【0064】
吸収層110は、透過層105よりも広い面積を有してもよく、したがって、吸収層は透過層105の縁部と重なり合い、それによって、透過層がカバー層140に接触することはなくなる。これによって、創傷接触層102と直接接触する吸収層110の外側流路115が構成され、滲出液をより高速に吸収層に吸収する助けになる。さらに、この外側流路115により、場合によっては被覆材の周縁のシールから滲み出して漏出物を形成する可能性のある液体が、創腔の周囲に溜まることはできなくなる。
【0065】
創腔に真空を加えたときに空気流路が開放されたままになるように、透過層105は圧力差による力に抵抗するのに十分な強度および非柔軟性(non-compliant)を有することが好ましい。しかし、この層は、比較的繊細なカバー層140に接触した場合、空気が創腔内に漏れるのを可能にするピンホール開口部をカバー層140に形成するおそれがある。これは、濡れると強度が低くなる切替え可能なポリウレタン膜を使用する場合に特に問題になることがある。吸収層110は概して、透過層105の材料と比較して比較的柔らかく摩擦を生じない材料で形成されており、したがって、カバー層にピンホール開口部を形成しない。したがって、透過層105よりも広い面積を有し、透過層105の縁部と重なり合う吸収層110を設けることによって、透過層とカバー層との接触が妨げられ、カバー層140にピンホール開口部が形成されるのが回避される。
【0066】
吸収層110は、カバー層140と流体接触するように位置している。吸収層が創傷滲出液を吸収すると、滲出液がカバー層140の方へ吸い込まれ、滲出液の水成分が水蒸気透過性カバー層と接触する。この水成分はカバー層自体の内部に吸い込まれ、次いで、被覆材の頂面から蒸発する。このようにして、創傷滲出液の含水量を被覆材から蒸散させることができ、吸収層110によって吸収すべき残りの創傷滲出液の体積が減り、被覆材が満杯になり交換しなければならなくなるまでの時間が延びる。この蒸散プロセスは、創腔に陰圧を加えられたときにも生じ、創腔に陰圧が加えられたときのカバー層の両端間の圧力差が、カバー層の両端間の水蒸気透過率に与える影響が無視できるものであることがわかっている。
【0067】
被覆材100に陰圧を加えることを可能にするカバー膜140がオリフィス145に設けられている。吸引ポート150が、オリフィス145の上方でカバー膜140の頂部に対して密封されており、オリフィス145を通して陰圧を伝達する。ある長さのチューブ220の第1の端部を吸引ポート150に結合し、かつ第2の端部をポンプユニット(図示せず)に結合して流体を被覆材から汲み出すのを可能にしてもよい。このポートは、アクリル、シアノアクリレート、エポキシ、UV硬化可能な接着剤、またはホットメルト接着剤のような接着剤を使用してカバー膜140に接着されカバー膜140に対して密封されている。ポート150は、硬度がショアAスケールで30〜90である柔らかいポリマー、たとえばポリエチレン、塩化ポリビニル、シリコーン、またはポリウレタンから形成されてもよい。
【0068】
オリフィスが直接透過層105に連結されるようにオリフィス145の下方の吸収層110に開口が設けられている。これによって、ポート150に加えられた陰圧を吸収層110を通過せずに透過層105に伝達することができる。これによって、創傷部位に加えられた陰圧が、吸収層が創傷滲出液を吸収するときに吸収層によって抑制されることがなくなる。他の実施形態では、吸収層110に開口をまったく設けなくてもよく、あるいはオリフィス145の下方の複数の開口を設けてもよい。
【0069】
液体を透過させないが気体を透過させるフィルタ要素130が、液体バリアとして働き、かつ創傷被覆材から漏れる液体をなくすように設けられている。このフィルタ要素は、細菌バリアとして働いてもよい。通常、細孔径は0.2μmである。フィルタ要素130のフィルタ材料の適切な材料には、MMTレンジの0.2ミクロンGore(商標) expanded PTFE、PALL Versapore(商標)200R、およびDonaldson(商標)TX6628が含まれる。これよりも大きい細孔径を使用してもよいが、その場合、バイオバーデンを完全に抑制するために二次フィルタ層が必要になる。創傷流体が脂質を含むときは、疎油性フィルタ膜、たとえば0.2ミクロンMMT−323よりも前の1.0ミクロンMMT−332を使用することが好ましいが、必須ではない。これによって、脂質が疎水性フィルタに詰まるのが妨げられる。フィルタ要素は、オリフィス145の上方でポートおよび/またはカバー膜140に取り付けられるかまたはポートおよび/またはカバー膜140に対して密封されてもよい。たとえば、フィルタ要素130は、ポート150内に成形されても、あるいは限定されないがUV硬化接着剤などの接着剤を使用してカバー層140の頂部とポート150の底部の両方に取り付けられてもよい。
【0070】
フィルタ要素130に他の種類の材料を使用してもよいことが理解されよう。より一般的には、高分子材料の薄く平坦なシートである微孔膜を使用してもよく、この膜は数十億個の微孔を含む。選択される膜に応じて、これらの孔のサイズは0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲であってもよい。親水性(水濾過)形態の微孔膜と疎水性(撥水)形態の微孔膜のどちらも利用可能である。本発明のいくつかの実施形態において、フィルタ要素130は、支持層と、支持層上に形成されたアクリルコポリマー膜と、を備える。適切な形態において、本発明のある実施形態による創傷被覆材100は、微孔性疎水性膜(MHM)を使用する。MHMを形成するのに多数のポリマーを使用してもよい。たとえば、PTFE、ポリプロピレン、PVDF、およびアクリルコポリマーを使用してもよい。これらの任意のポリマーは全て、疎水性と疎油性の両方を有してもよい特定の表面特性が得られるように処理されてもよい。したがって、これらのポリマーは、複合ビタミン注射、脂質、界面活性剤、油、および有機溶剤のように、低い表面張力によって脂質をはじく。
【0071】
MHMは、脂質を遮断し、一方、空気が膜を通過するのを可能にする。これらのMHMは、場合によっては潜在的に伝染性のエアロゾルおよび粒子を除去する非常に効率的なエアフィルタでもある。単一のMHMが、機械的な弁または排出口に置き換わるオプションとして周知である。したがって、MHMを組み込むと組立て費を削減することができ、患者の利益費用便益比が改善される。
【0072】
フィルタ要素130は、臭吸収剤材料、たとえば活性炭、炭素繊維布、またはVitec Carbotec-RT Q2003073発泡体などを含んでもよい。たとえば、臭吸収剤材料は、フィルタ要素130の層を形成してもよく、あるいはフィルタ要素内の微孔性疎水性膜同士の間に挟まれてもよい。
【0073】
したがって、フィルタ要素130は、気体をオリフィス145を通して排出するのを可能にする。ただし、脂質、微粒子、および病原体は被覆材に収容される。
【0074】
動作時には、創傷被覆材100が創傷部位に対して密封され、創腔を形成する。ポンプユニット(不図示)がポート150の連結部154の所で陰圧を加え、この陰圧がオリフィス145を通して透過層105に伝達される。流体は、創傷接触層102の下方の創傷部位から創傷被覆材を通してオリフィスの方へ吸い込まれる。流体は、透過層105を通してオリフィスの方へ移動する。流体が透過層105を通過するにつれて、創傷滲出液が吸収層110に吸収される。
【0075】
本発明の一実施形態による創傷被覆材100を示す図2を参照すると、被覆材の中心から透過層105および吸収層110を覆う中央隆起領域201を囲む境界領域200内に外側に延在するカバー層140の上面が示されている。図2に示すように、創傷被覆材の概略図的な形状は丸い隅領域202を含む矩形である。本発明の他の実施形態による創傷被覆材が、方形、円形、または楕円形の被覆材のように異なる形状を有してよいことが諒解されよう。
【0076】
ポンプ230から導管220を介してポート150に陰圧が加えられると、陰圧はカバー層の下方の創腔に伝達される。したがって、この陰圧を目標創傷部位が受ける。空気および創傷滲出液を含む流体は、創傷接触層および透過層105を通過する。創傷被覆材の下層を通過した創傷滲出液は散逸して吸収層110に吸収され、そこに収集されて蓄えられる。空気および水蒸気は、フィルタ層を通して上方に移動して創傷被覆材を通過し、吸引ポートを通して被覆材から流出する。創傷滲出液の含水量の一部は、吸収層を通過してカバー層140に吸い込まれ、次いで被覆材の表面から蒸発する。
【0077】
図3は、図1および図2に示す被覆材の一部の断面図を示している。特に、図3は、下面101と、貫通穴として形成された複数の穿孔104と、を含む、創傷接触層102の拡大図を示している。創傷接触層の上面103は、透過層105の第1の層300に当接している。透過層105のさらなる上部層301が、第1の層から離れた位置に位置している。透過層の第1の層およびさらなる層は、透過層の2つの層を分離する弾力のある可撓性の柱状物として働く複数のモノフィラメント繊維スペーサ302によって、離れた位置関係で、離れた状態に維持されている。透過層の上部層301は、吸収剤110の下面に隣接しており、吸収剤110は、たとえば、高吸収性粒子状物質によって空間を占められた繊維状セルロース材料のパッドとして形成されている。
【0078】
吸収層110は、陰圧療法の適用時に収集された液体を保持する。この層を透過層の層に流体連通させ、および、好ましくは、接触させることによって、透過層105の領域は、湿潤環境に維持される。このことは、使用時の滲出液の蓄積および痂皮形成を避けるのを助ける。
【0079】
図4は、創傷被覆材の下側の図を示す。より具体的には、創傷被覆材100の下面101は、創傷接触層102の一部である。適切な形態において、創傷接触層102は、ポリウレタン層もしくはポリエチレン層、または、穿孔されている他の可撓性の層である。適切な形態において、材料は、他の材料と接触したときに負に帯電する材料の帯電列から選択される。そのような材料は、ポリエステル、ポリウレタン、サランラップ(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーンフィルム、および/またはビニール(pvc)などであってもよいが、それらに限定されない。図4に示すように、穿孔104は、創傷接触層における貫通穴である。穿孔は、スリットもしくはスロット、または実質的に円形の穴として形成されてもよい。適切な形態において、円形の穴は、0.025mmから1.5mmの範囲にあるサイズを有する。それぞれの穿孔の開口部は、開口面積(open area)と称される断面積を有する。被覆材の下側によって提供される全面積に関連して、開口部によって提供される開口面積は、創傷被覆材に組織が内部成長するのを妨げるのを助け、創傷滲出液が被覆材に流入するのを可能にするのに十分に小さく、かつ、被覆材の下方の水和物のレベルを維持し、使用時に、下に位置する皮膚の表面への酸素のアクセスを提供し、それによって、瘢痕形成が、妨げられるか、または低減される。適切な形態において、開口部の開口面積は、全面積の約20%以下である。適切な形態において、開口面積は、全面積の約17.5%以下である。開口面積は、下に位置する組織に陰圧が完全に連通することを可能にするのに十分な大きさである。すなわち、層の両側には、圧力差が、ほとんどないか、またはまったくない。
【0080】
図4に示すように、創傷接触層102におけるそれぞれの開口部104は、貫通穴であり、使用時に創傷/組織から遠位に位置する創傷接触層の側において、被覆材内に位置する透過層のそれぞれの領域を露出させる。適切な形態において、透過層材料は、負に帯電する帯電列の中の材料から選択され、したがって、他の材料と接触すると、電子を引きつける傾向がある。
【0081】
使用時に、シリコーン接着剤創傷接触層を有する創傷被覆材の配置は、下に位置する創傷の角質層のバリア機能を取り戻すのを助ける。これは、そうでなければ生じることとなる経皮水分損失(TEWL)を低減または最小化するのを助ける。TEWLを低減させることを助けることによって、通常の治癒プロセス(過度のコラーゲンの生成および異常な瘢痕化につながることとなる)の中の様々な段階の刺激が、完全にまたは部分的に妨げられる。創傷接触層において限定された開口面積を提供することは、そのようなTEWLが、抗瘢痕化を助けるように制御されることを可能にし、また、さらに、陰圧療法が、下に位置する組織に適用されることを可能にする。
【0082】
この同時発生的な陰圧療法の適用が、同時に組織に圧力を加えるのを助ける。これは、瘢痕形成の低減させるのを助ける。また、陰圧を加えることは、下に位置する組織全体を収縮および/または圧縮させるのを助ける。また、圧縮は、上方へ向かう組織の過成長を妨げるのを助ける。そして、これは、瘢痕の隆起する外観を低減させるのを助ける。収縮は、下に位置する創傷領域の表皮の位置決めに役立つ。したがって、これは、そうでなければ瘢痕組織形成につながる過度の組織成長の必要を低減させる。
【0083】
また、適切な形態において、NPTの同時の適用は、被覆材と組織との間の静電気の蓄積を増加させる。被覆材の負の電荷を帯びたイオンと組織のイオン電荷との間の相互作用は、創傷治癒および瘢痕治癒への貢献を助ける。
【0084】
適切な形態において、創傷に接触する表面層としてシリコーン接着剤を有することは、接着層から漏れることができるシリコーンオイルの局所的な適用を可能にする。適切な形態において、圧縮力と、接着力と、外部のせん断力を和らげるのを助ける被覆材との同時発生的な適用は、瘢痕のない治癒/組織形成を助けるために、とりわけ最適な環境が提供されることを意味する。これは、瘢痕形成の抑制の改善につながる。
【0085】
図5は、本発明の実施形態による透過層105の第1の上面500と、さらなる下面502と、を示す。図5に示された実施形態では、織り層の繊維503は、第1の表面500とさらなる表面502との間に延在している。本発明のさらなる実施形態によれば、発泡体層が透過層105として使用された場合、発泡体を形成する連結された撚り糸が、スペーサ要素として働くこととなるということが諒解されよう。図5に示すように、動作の弛緩モードでは、すなわち、使用時に、陰圧が創傷被覆材に加えられていないか、または、陰圧が創傷被覆材に加えられるが、外力が創傷被覆材の上には働かないときに、繊維503が、上面および下面に実質的に垂直に延在し、かつ離れた位置に位置している実質的に平行な構成に表面を維持する。
【0086】
図6は、被覆材の外側に外力が働かされているときの透過層105を示す。図6において、外力は、矢印Aによって示されている圧縮力であってもよく、および/または、矢印Bによって示されている水平力であってもよい。示されるように、圧縮力または水平力のいずれかが、繊維503を一方の側に傾かせるように働く。このことは、上面および下面を互いに対して水平方向にオフセットされるようにし、層の厚さを、動作の弛緩モードの状態にある図5に示す分離距離rから、図6に示す圧縮距離cへと低減させる。厚さの低減は、被覆材が陰圧を受けるときでさえも、被覆材においていくらかの「弾力性(give)」を効果的に提供する。被覆材に働く力は、被覆材の表面積の全体にわたって、または、1つまたは複数の特定の領域だけにおいて、生じる可能性があることが諒解されよう。そのような状況では、被覆材の領域は、動作の弛緩モードである可能性があり、かつ、さらなる領域が、動作の圧縮モードである可能性がある。図6に示すように、力が透過層に働かされると、上面および下面を分離している繊維は、一方の側に傾く傾向があり、共通の傾き角を共有する。
【0087】
本明細書にわたって、動作の弛緩モード、および動作の強制モードについて参照することとなる。動作の弛緩モードは、陰圧が加えられていないとき、または、陰圧が加えられているときのいずれかの材料の自然状態に対応するということを理解されたい。いずれの状況でも、たとえば、患者の動きまたは衝撃によって生じさせられる外力は、はっきり見えない。対照的に、外力が圧縮の、水平の、または、他のものであろうとなかろうと、創傷被覆材に圧力をかけることになるときに、動作の強制モードが生じる。そのような力は、重大な損傷、治癒の妨げ、または創傷を生じさせる可能性がある。
【0088】
図7は、どのように、本発明の特定の実施形態が、負荷力をオフセットさせるようにも作動し得るかということを示す。図7に示すように、透過層105の上面500における接触範囲700にわたって、力が働かせられた場合に、この力が、透過層を横切って、および、透過層を通って伝達され、かつ、下に位置する創傷部位に対してより大きな消散範囲701の上方に働かされる。この理由は、透過層として3Dニットを使用する場合に、比較的に堅いスペーサ要素が、層に対して水平方向の少なくともいくらかの剛性を提供するからである。
【0089】
図8は、より詳細に、透過層105および吸収層110を示す。本発明の特定の実施形態によれば、吸収層110が、透過層105の上面500に対して近位に位置付けられており、それに結合されていない。結合されていない場合において、水平力またはせん断力が創傷被覆材に加えられるときには、吸収層110は、下に位置する透過層に対して水平方向に移動することも可能である。また、図9に示す圧縮力が創傷被覆材に働くときに、吸収層は、さらに圧縮することが可能である。図9に示すように、吸収層110は、圧縮力の下で、図8に示す非圧縮された厚さxから、図9に示す圧縮された距離yへと、厚さが減少する。また、圧縮力は、上述のように透過層の上面および下面をオフセットさせるように働き、したがって、被覆材の「弾力性」を強化する。創傷被覆材に働かされる水平力またはせん断力の下で、上面1001が、吸収層の下面1002に対して水平方向に並進する能力が、より詳細に図10に示されている。この水平方向の動きが、吸収層110の厚さxを低減させ、かつ、吸収層の上面および下面を互いに対してオフセットされるようにさせる。この効果は、それ自身、創傷被覆材の全体または一部に働かされるせん断力が、下に位置する創床に伝えられることを妨げるのに十分である。透過層において、対応する効果を有することが可能である。しかし、組合せが、クッション効果を強化する。創床が皮膚植皮領域を備える場合には、せん断力の低減が、とりわけ有利である。
【0090】
被覆材は、使用時に、所定の角度でまたは垂直に「逆さまに」使用されてもよいということに留意されたい。したがって、上側および下側についての参照は、説明目的のためだけに使用されている。
【0091】
図11は、乳がんのための治療を以前に受けた41才の女性に対するNPWTの適用の結果を示す。放射線療法に続いて、女性は、再建のために彼女の胸部の中に組織拡張器を設置する手術を受けた。この胸部再建に続く手術後の創傷を図11に示す。創傷は、長さが15cm、幅が0.5cmある。閉じた切開部が、周囲の皮膚のレベルの上方へ隆起しているということに留意されたい。
【0092】
図12は、被覆材が患者の所定の位置にある、第1の評価日(1日目)の創傷被覆材の適用を示す。30cm×10cmの被覆材が、任意の滲出液を処理し、切開線にNPWTを適用するために選択され、患者の不自由も最小化にしながら、創傷に対するリスクを最小化する。図12に示していないが(しかし、後に図13に示す)、トンネルが掘られたIV部位(tunnelled IV site)が、患者の鎖骨の下で、被覆材の場所の上方に位置しており、これは、従来の被覆材によってカバーされていた。
【0093】
被覆材の適用の後で、患者は、被覆材およびポンプとともに帰宅することを許可され、2日目から外来患者として毎日診察された。ポンプは、6日目に取り替えられ、被覆材は、11日目に取り替えられた。図13は、11日目の被覆材除去の後の手術後の創傷を示す。いくらかの凹みが、被覆材自身から示されているが、その他には、健全に周囲の皮膚がはっきり見える。外科的な切開部が閉じられ、滲出液は存在せず、切開部は平坦である。これは、同じ期間を経過したが、従来の被覆材で治療されたトンネルが掘られたIV部位(それは、隆起したままであり、より広範であり、より赤味がある)と比較される。
【0094】
図14A図14Dは、患者の創傷部位を治療するのに使用されるTNP創傷治療システムの一実施形態の使用法を示す。図14Aは、創傷部位190が洗浄されて治療の準備が行われている状態を示す。ここで、創傷部位190の周囲の正常な皮膚を洗浄し、かつ余分な毛を除去するかまたは剃ることが好ましい。必要に応じて、滅菌生理食塩水によって創傷部位190を潅注してもよい。場合によっては、創傷部位190の周囲の皮膚に皮膚保護剤を塗ってもよい。必要に応じて、発泡体またはガーゼのような創傷充填材料を創傷部位190に配置してもよい。このことは、創傷部位190がより深い創傷である場合に好ましいことがある。
【0095】
創傷部位190の周囲の皮膚が乾燥した後、次に図14Bを参照して、創傷被覆材100を創傷部位190の上方に位置させて配置してもよい。創傷接触層102が創傷部位190の上方に位置しおよび/または創傷部位190に接触するように創傷被覆材100を配置することが好ましい。いくつかの実施形態では、場合によっては、創傷部位190の上方に創傷被覆材100を配置する前に除去すべき任意の剥離層によって保護されてもよい接着層が、創傷接触層102の下面101上に設けられる。被覆材100は、ポート150が被覆材100の残りの部分に対して隆起した位置に配置されて流体がポートの周りに溜まるのを避けるように位置することが好ましい。いくつかの実施形態において、被覆材100は、ポート150が創傷を直接覆わず、創傷と同じ高さまたは創傷よりも高い点に配置されるように位置する。TNPが適切に密封されるのを助けるために、被覆材100の縁部は、折り目をつけられたり折り畳まれたりしないように、平滑にされることが好ましい。
【0096】
次に、図14Cを参照する。被覆材100がポンプ800に連結されている。ポンプ800は、被覆材100を介し、通常は導管を通して創傷部位に陰圧を加えるように構成されている。いくつかの実施形態では、上記に図8において説明したように、コネクタを使用して被覆材100からの導管をポンプ800に接合してもよい。ポンプ800によって陰圧が加えられると、被覆材100は、いくつかの実施形態において、部分的に潰れ、被覆材100の下方の空気の一部または全てが真空排気される結果としてしわの寄った外観を呈する。いくつかの実施形態において、ポンプ800は、被覆材100と創傷部位190の周囲の皮膚との間の界面などに、被覆材100に漏れがあるかどうかを検出するように構成されてもよい。漏れが見つかった場合、治療を続ける前にそのような漏れを解消しておくことが好ましい。
【0097】
図14Dを参照する。被覆材100の縁部の周りに追加の固定ストリップ195が取り付けられてもよい。そのような固定ストリップ195は、状況によっては、創傷部位190の周囲の患者の皮膚に対して追加的な密封を実現するうえで有利である場合がある。たとえば、固定ストリップ(fixation strips)195は、患者の動きがより激しいときのためにさらなる密封を実現してもよい。場合によっては、特に、到達するのが困難であるかまたは起伏のある領域の上方に被覆材100を配置する場合、ポンプ800を作動させる前に固定ストリップ195を使用してもよい。
【0098】
創傷部位190の治療は、創傷が所望の治癒レベルに達するまで継続することが好ましい。いくつかの実施形態では、ある期間が経過した後、または被覆材が創傷流体で満杯になった場合に、被覆材100を交換することが望ましいことがある。そのような交換時には、ポンプ800を維持し、被覆材100のみを交換してもよい。
【0099】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体にわたって、「comprise(備える)」および「contain(含む)」ならびにこれらの語の変形形態は、「〜を含むがそれらに限定されない」を意味し、他の部分、添加物、構成要素、整数(integers)、またはステップを除外することを意図したものではない(かつ実際に除外しない)。本明細書の説明および特許請求の範囲全体にわたって、単数形は、文脈に応じて複数形を除外することが必要である場合を除いて複数形を包含する。特に、本明細書では、不定冠詞が使用されている場合、文脈に応じて複数形を除外することが必要である場合を除いて、単数形だけではなく複数形も考慮されていることを理解されたい。
【0100】
本発明の特定の態様、実施形態、または例に関連して説明した要素、整数、特徴、化合物、化学的部分、または化学基は、本明細書で説明した実施形態または例の他のいずれかの態様に、適合不能でないかぎり適用可能であることを理解されたい。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示された全ての特徴、および/または、同様に開示された任意の方法もしくはプロセスの全てのステップは、そのような特徴および/またはステップのうちの少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いて、任意の組合せで組み合わせてもよい。本発明は、任意の前述の実施形態の詳細に制限されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示された全ての特徴のうちの任意の新規のもの、または、任意の新規な組合せに拡張されるか、または、同様に開示された任意の方法もしくはプロセスのうちの任意の新規のもの、または、任意の新規な組合せに拡張される。
【0101】
本出願と関連して、本明細書と同時に、または、本明細書の以前に提出され、かつ、本明細書とともに公衆の閲覧に付される全ての論文および文献に、読者の注目が向けられ、全てのそのような論文および文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0102】
100 創傷被覆材
101 下面
102 創傷接触層
104 開口部、穿孔
105 透過層
110 吸収層
500 上面
502 下面
503 繊維
700 接触範囲
701 消散範囲
1001 上面
1002 下面
c 圧縮距離
r 分離距離
x 非圧縮された厚さ
y 圧縮された距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D