特許第5940685号(P5940685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5940685ポアソン・ベースの通信システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940685
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】ポアソン・ベースの通信システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/00 20130101AFI20160616BHJP
【FI】
   H04B9/00 101
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-560138(P2014-560138)
(86)(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公表番号】特表2015-510373(P2015-510373A)
(43)【公表日】2015年4月2日
(86)【国際出願番号】US2013029070
(87)【国際公開番号】WO2013134236
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2014年8月29日
(31)【優先権主張番号】13/413,303
(32)【優先日】2012年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503178185
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】NORTHROP GRUMMAN SYSTEMS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】サンダース、オリバー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】カドタ、ラッセル ケイ.
【審査官】 高野 洋
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04493114(US,A)
【文献】 特開昭63−274238(JP,A)
【文献】 特開2008−193701(JP,A)
【文献】 特表2005−519290(JP,A)
【文献】 特開2007−124484(JP,A)
【文献】 LEE C.,PHOTON COUNTING TECHNIQUES FOR THE BANDLIMITED OPTICAL CHANNEL,AEROSPACE CONFERENCE 2005 IEEE,米国,IEEE,2005年 3月 5日,P1598-1603
【文献】 CHENG MICHAEL K.,OPTIMIZATIONS OF A HARDWARE DECODER FOR DEEP-SPACE OPTICAL COMMUNICATIONS,IEEE TRANSACTIONS ON CIRCUITS AND SYSTEMS I: REGULAR PAPERS,米国,IEEE,2008年 3月 1日,V55 N2,P644-658
【文献】 QUIRK KEVIN J.,OPTICAL PPM DETECTION WITH SAMPLE DECISION PHOTON COUNTING,GLOBAL TELECOMMUNICATIONS CONFERENCE, 2005,米国,IEEE,2005年11月28日,V1,P148-151
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00−10/90
H04J 14/00−14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポアソン・ベースの通信システムであって、
受信機を備え、該受信機は、
光子を受信して、該受信された光子に基づきパルスを生成する光検出器と、
該光検出器によって生成されたパルス数をカウントするサンプリング・イベント・カウンタと、
復調器であって、該復調器は、
所定の時間間隔に該サンプリング・イベント・カウンタのサンプリングを行い、光パルス・エネルギーが送信機によって送信され該光検出器によって受信されたとき、第1の状態の発生を決定し、光パルス・エネルギーが該送信機によって送信されておらず該光検出器によって受信されていないとき、第2の状態の発生を決定するサンプリング工程と、
複数の所定の時間間隔を通じた前記第1の状態および前記第2の状態の発生のパターンに基づくものであるシンボル波形中に符号化されたメッセージ・データまたは波形を回復するように、該シンボル波形を復号する工程であって、前記シンボル波形は、ゼロ復帰(RZ)フォーマットおよび非ゼロ復帰(NRZ)フォーマットのうちの一方に基づく、復号工程と、
前記サンプリング・イベント・カウンタのカウント値から整合フィルタの応答を計算し、この応答の形状を使用して、前記サンプリング・イベント・カウンタから受信される信号エネルギーのカウントを最大にするように、前記サンプリング・イベント・カウンタの前記サンプリング工程を、前記第1の状態および前記第2の状態の発生のパターンに対応する入力シンボル波形に同期させるように前記サンプリング・イベント・カウンタにフィードバックする、計算工程とを実行する復調器と
を備える、システム。
【請求項2】
前記シンボル波形は、オンオフ変調(OOK)されたフォーマットに基づく、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記復調器は、所与の所定の期間のうちの第1の所定の時間間隔に前記第1の状態の発生が決定され、それに続き前記所与の所定の期間のうちの第2の所定の時間間隔に前記第
2の状態の発生が決定された場合、第1の論理状態を決定し、
前記復調器は、所与の所定の期間のうちの第1の所定の時間間隔に前記第2の状態の発生が決定され、それに続き前記所与の所定の期間のうちの第2の所定の時間間隔に前記第1の状態の発生が決定された場合、第2の論理状態を決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記復調器によってサンプリングが行われた、前記第1の状態に関連する前記カウント値は、前記送信機から送信された光パルス・エネルギーに関連する信号と前記光検出器によって検出された雑音との両方に基づき、
前記復調器によってサンプリングが行われた、前記第2の状態に関連する前記カウント値は、前記光検出器によって検出された雑音だけに基づく、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記復調器は、所与の所定の期間のうちの第1の所定の時間間隔に決定されたカウント値が、該第1の所定の時間間隔の後に続く前記所与の所定の期間のうちの第2の所定の時間間隔に決定されたカウント値より大きいとき、第1の論理状態を決定し、
前記復調器は、所与の所定の期間のうちの第1の所定の時間間隔に決定されたカウント値が、該第1の所定の時間間隔の後に続く前記所与の所定の期間のうちの第2の所定の時間間隔に決定されたカウント値より小さいとき、第2の論理状態を決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
送信機をさらに備え、該送信機は、
メッセージ・データまたは波形を受け取り、該メッセージ・データまたは波形をシンボル波形に変換するシンボル・マッパと、
エミッタから前記受信機への光パルス・エネルギーの出力を、該シンボル波形に基づき制御する変調器とを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
光通信システムにおいて通信を行うための方法であって、
メッセージ・データまたは波形をオンオフ変調(OOK)されたフォーマットに基づくシンボル波形に変換する変換工程と、
該シンボル波形のオン状態およびオフ状態に基づき、光パルス・エネルギー送信と光パルス・エネルギー非送信との間で変調を行う変調工程と、
サンプリング・イベント・カウンタにおいて、複数の時間間隔のそれぞれを通じて、送信されたシンボル波形に関連する、受信された光子数をカウントするカウンティング工程と、
前記サンプリング・イベント・カウンタにおいて、該複数の時間間隔の所与の時間間隔に関連するカウント値が、送信された光パルス・エネルギーの該受信を示す所定の閾値を超えた場合、オン状態を決定して割り当て、送信された光パルス・エネルギーの非受信を示す該複数の時間間隔の所与の時間間隔にオフ状態を割り当てる決定・割り当て工程と、
前記複数の所定の時間間隔を通じた前記オン状態およびオフ状態の発生のパターンに基づき、前記シンボル波形中に符号化されたメッセージ・データまたは波形を回復するように、前記シンボル波形を復号する工程であって、前記シンボル波形は、ゼロ復帰(RZ)フォーマットおよび非ゼロ復帰(NRZ)フォーマットのうちの一方に基づく、復号工程と、
前記サンプリング・イベント・カウンタによるカウント値から整合フィルタの応答を計算し、この応答の形状を使用して、前記サンプリング・イベント・カウンタから受信される信号エネルギーのカウントを最大にするように、前記サンプリング・イベント・カウンタによる前記決定および割り当てを、前記オン状態およびオフ状態の発生のパターンに対応する入力シンボル波形に同期させるように、前記サンプリング・イベント・カウンタにフィードバックする計算工程と、
を備える方法。
【請求項8】
所与の所定の期間のうちの第1の所定の時間間隔に前記オン状態の発生が決定され、それに続き前記所与の所定の期間のうちの第2の所定の時間間隔に前記オフ状態の発生が決定された場合、第1の論理状態を決定し、
所与の所定の期間のうちの第1の所定の時間間隔に前記オフ状態の発生が決定され、それに続き前記所与の所定の期間のうちの第2の所定の時間間隔に前記オン状態の発生が決定された場合、第2の論理状態を決定する工程をさらに備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の論理状態に関連する前記光子の前記カウント値は、光パルス・エネルギーに関連する信号と雑音との両方に基づき、
前記第2の論理状態に関連する前記光子の前記カウント値は、雑音だけに基づく、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に通信に関し、具体的にはポアソン・ベースの通信システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているポアソン分布のエミッタを適用するための現況技術は、光/電気(OE:optical−to−electrical)変換装置(または回路)を使用して、受信された信号を直ちにアナログ形態に変換することである。次いで、通常RF通信に関連するガウス・ベースの検出規則を使用して、処理される。アナログ形態への変換により、ガウス雑音が信号経路中に導入され、元のポアソン・ベースの信号の統計的特性が変更される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ガウス・アプローチは、十分理解された信号処理の方法論に依存しているので、普及している。処理が比較的簡単であること、および拡大された動作領域の両方の点に関してポアソン・ベースの方法論を使用する利点は、まだ十分に理解されていない。これは、ある程度、システム性能の数学的な解析が困難なこと、および低コストの実装形態がないことによる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様では、ポアソン・ベースの通信システムが提供される。このシステムは受信機を備え、この受信機は、光子を受信して、受信された光子に基づきパルスを生成する光検出器と、光検出器によって生成されたパルス数をカウントするサンプリング・イベント・カウンタと、復調器とを備える。復調器は、所定の時間間隔でサンプリング・イベント・カウンタのサンプリングを行い、光パルス・エネルギーが送信機によって送信され光検出器によって受信されたとき、第1の状態の発生を決定し、光パルス・エネルギーが送信機によって送信されておらず光検出器によって受信されていないとき、第2の状態の発生を決定する。
【0005】
本発明の別の態様では、送信機および受信機からなるポアソン・ベースの通信システムが提供される。送信機は、メッセージ・データまたは波形を受け取り、そのメッセージ・データまたは波形をシンボル波形に変換するシンボル・マッパと、光パルスを受信機に送信するように構成されるエミッタと、シンボル波形に基づき、エミッタからの光パルス・エネルギーの出力を制御する変調器とからなる。受信機は、エミッタから光パルス・エネルギーを受信して、光検出器によって検出されたポアソン分布のイベント数に基づきパルスを生成する光検出器と、光検出器によって生成されたパルス数をカウントするサンプリング・イベント・カウンタと、復調器とからなる。復調器は、所定の時間間隔でサンプリング・イベント・カウンタのサンプリングを行い、エミッタから送信された光パルスおよび雑音が光検出器によって検出されて受信されたとき、第1の状態の発生を決定し、雑音だけが光検出器によって受信されて検出されたとき、第2の状態の発生を決定する。
【0006】
本発明の別の態様によれば、光通信システム中において通信するための方法が提供される。この方法は、メッセージ・データまたは波形を、オンオフ変調(OOK)されたフォーマットに基づくシンボル波形に変換する工程と、シンボル波形のオン状態およびオフ状態に基づき、光パルス・エネルギー送信と光パルス・エネルギー非送信との間で変調を行う工程と、複数の時間間隔のそれぞれにわたって、送信されたシンボル波形に関連する、
受信された光子数をカウントする工程とからなる。本方法は、複数の間隔の所与の時間間隔に関連するカウント値が、送信された光パルス・エネルギーの受信を示す、所定の閾値を超えたとき、オン状態を決定して割り当て、送信された光パルス・エネルギーの非受信を示す複数の間隔の所与の時間間隔にオフ状態を割り当てる工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の態様による光通信システムを例示する図。
図2】本発明の態様によるシンボル・フォーマットをもたらすための、NRZシンボル波形とともに、RZシンボル波形を例示する図。
図3】本発明の態様によるRZシンボルの平均値カウント波形表現を例示する図。
図4】例示的な整合フィルタの出力波形のセットを例示する図。
図5】本発明の態様によるRZシンボル波形を例示する図。
図6】本発明の態様による、光通信システム中において通信するための方法の実施例を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、一般に、ポアソン・ベースの光通信システムおよび方法に関する。本発明の一態様は、時間でサンプリングを行うイベント・カウンタを利用して、サンプル間隔中においてポアソン分布のイベント数(すなわち強度、光子数)を、アナログ電圧を用いてそれらイベント数を近似するのではなく直接取り込むものである。これは、連続的なアナログ処理のサンプリングを行う、入力レベルに対応するデジタル・ワードを出力するA/D変換器の使用に、いくぶんか類似している。この場合、サンプリング間隔を通じてイベント数がカウントされる。そのとき、連続するカウント・データ出力によって、受信された処理の時刻歴が生成される。すべてのカウントは、正確であり、A/D変換に関連するエラーに相当するもの(たとえばサンプルおよびホールド・エラーおよび量子化雑音)を有さない。
【0009】
本発明によって、通信用途においてポアソン・ベースのエミッタを効率的に使用できるようになり、それによって、そうでなければ実現性がないはずの広範な運用環境を通じて効果的な運用を達成するために、それらの独特な性質が活用される。本発明に関するもっとも一般的な応用がデジタル形態でデータを伝えることになるはずであるが、また、それは、アナログ(非デジタル化)信号を伝達するのに容易に適合される。本発明は、これらのシステムが、ポアソン過程の独特な性質を活用して、極めて遅い信号環境中および高いバックグラウンド雑音レベルの存在中の両方で動作できるようにすることを可能にする新しい構成要素および処理概念を導入するアーキテクチャを導入する。この方法論は、高コスト、超高性能システムと、性能が適度である、大量生産の低コスト・システムの両方に適合させることができる。
【0010】
図1は、本発明の態様による光通信システム10を例示する。光通信システム10は、送信機12および受信機20からなる。送信機12は、メッセージ・データまたは波形を受け取り、そのメッセージ・データまたは波形をシンボル波形フォーマット(たとえばオンオフ変調(OOK)されたフォーマット)に変換するシンボル・マッパ14からなる。シンボル波形は、送信光学系17を通ったエミッタ16からの光パルス・エネルギーの出力(たとえば光子)を、シンボル波形(たとえばシンボル波形のオン・オフ状態)に基づき制御する変調器15に、提供される。次いで、光エネルギーは、物理的な送信チャネル18、たとえば自由空間または水中を通じて受信機20に送られる。受信機20は、光子の形態で受信光学系19を通じて光パルス・エネルギーを受信する光検出器22からなる。光検出器22は、サンプリング・イベント・カウンタ24によってカウントされる、受信された光子(各ポアソン分布のイベントとして参照する)毎にパルスを出力する。
【0011】
復調器25が、サンプリング・イベント・カウンタ24のサンプリングを行うことができ、それによって、光検出器22によって検出されたポアソン分布のイベントまたは光子の数に対応する、サンプリング・イベント・カウンタ24中のカウントを決定する。復調器25は、サンプリング・イベント・カウンタ24へのサンプリング制御(SC:sampling control)信号を介してサンプリング時間を制御するコントローラなどの制御構成要素からなる。このようにして、復調器25は、出力パルスがエミッタ16によって送信されたのかどうかの検出、および送信されたパルスからなるエネルギーが光検出器22によって受信されたのかどうかの検出を最適にするようにサンプリングを調整する。オンおよびオフの送信、受信およびカウンティングによって、送信機12によって送られたメッセージ・データまたは波形のシンボル・コードがフォーマッティングされ(たとえばオンオフ変調)、それは、さらに以下で議論するように、復調器25によって復号することができる。次いで、復調器25は、受信機20によって受信された、受信されたメッセージ・データまたは波形にマッピングするために、復号されたシンボルをデータ・マッパ26に提供する。復調器25は、所定の間隔でサンプリング・イベント・カウンタ24を読み出して、送信機12からの出力パルスが光検出器22によって受信されているのかどうかを決定する。復調器25は、各読み出しの後にサンプリング・イベント・カウンタ24をリセットする、またはカウンタの前の値を減じることができ、それによって所定の間隔に関連するサンプリング・イベント・カウンタ24のカウント値が決定される。様々な他の構成要素、たとえばインターフェース構成要素、タイミングおよびパワー構成要素が送信機12および受信機20によって用いられることになることを認識すべきである。
【0012】
本発明の態様によれば、波形および関連する復調技法は、ポアソン過程の独特な性質を活用するように適合されており、次のようである。
1)ポアソン過程のサンプリング値は、非負整数である(ゼロは、有効な結果である)、2)ポアソン過程の平均値および分散は、同一である、
3)ポアソン過程の標準偏差は、その平均の平方根に等しい、
4)分散の平均値は、直接加算される、すなわちPois(a)+Pois(b)=Pois(a+b)である、ただしaおよびbは、加算されたポアソン過程の平均値である。
【0013】
この最後の性質は、信号が、ガウス雑音と同様に雑音中に溶け込む代わりに、雑音上に乗っている状態を定義する。
ポアソン関数の独特な性質の1つは、その確率分布関数の形状が、その平均値とともに変化することである。この理由のために、SNRまたはエネルギー/ビット対雑音(Eb/No:energy/bit−to−noise)パワー密度など、正規化された信号対雑音(SNR:signal−to−noise)測定基準の使用は、ビット誤り率または受信されたアナログ信号の忠実度を計算するとき、独立変数として使用することができない。そのかわり、平均信号率(mean signal rate)および平均雑音率(mean noise rate)によって定義される各実際の動作点(OP(S、N)として表す)は、これらの計算中で使用する必要がある。
【0014】
本発明の態様では、各シンボルは、複数のカウント値の形態で、受信されるシンボル波形に同期されているサンプリング・イベント・カウンタ24から復調器25によって受信される。シンボル波形は、1つまたは複数のメッセージ・ビットを表すことができる。復調器25は、シンボル決定処理を最適化するように、これらのカウント値から整合フィルタ(matched filter)の応答を計算する。その応答の形状によって、サンプリング・イベント・カウンタ24のサンプリングを入力信号に同期させるようにサンプリング・イベント・カウンタ24にフィードバックされ、それによって整合フィルタが、サンプリング・イベント・カウンタ24から最大の信号エネルギーのカウントを抽出する。本発明の態様によれば、シンボル・フォーマットは、ゼロ復帰(RZ:return
to zero)波形を用いて形成することができ、それによってメッセージ・データまたは波形を送信し受信するためのOOK(オンオフ変調)された信号がもたらされる。RZ波形(マンチェスター・コーディッドとしても知られている)は、簡単な、しかし大いに有効な送信スキームのための基礎として用いることができる。あるいは、シンボル・フォーマットは、非ゼロ復帰(NRZ:non−return to zero)を用いて形成することができ、それによってメッセージ・データまたは波形が送信され受信される。
【0015】
図2は、本発明の態様によるシンボル・フォーマットを提供するための、NRZシンボル波形40とともに、RZシンボル波形42を例示する。NRZシンボル・フォーマット40に関して図2に示すように、第1の論理状態(たとえば論理「1」状態)は、所定の期間を通じてエネルギーを送信する(オン状態)ことによって設定することができ、一方第2の論理状態(たとえば論理「0」状態)は、所定の期間を通じてエネルギーを送信しない(オフ状態)ことによって設定することができる。RZシンボル・フォーマット40に関して図2に例示するように、第1の論理状態(たとえば論理「1」状態)は、所定の期間の第1の時間間隔を通じてエネルギーを送信する(オン状態)ことと、それに続く所定の期間の第2の時間間隔を通じてエネルギーを送信しない(オフ状態)ことによって設定することができ、さらに、第2の論理状態(たとえば論理「0」状態)は、所定の期間の第1の時間間隔を通じてエネルギーを送信しない(オフ状態)ことと、それに続く所定の期間の第2の時間間隔を通じてエネルギーを送信する(オン状態)ことによって設定することができる。
【0016】
本発明の目的のためには、RZシンボル・フォーマットは、NRZシンボル・フォーマットを超える、いくつかの全く性質が異なる利点、たとえば固定の50%デューティ・サイクル、自己ロッキング(シンボル毎に少なくとも1回の遷移が存在する)および自己閾値化(self thresholding)(エネルギー状態および非エネルギー状態がすべてのシンボル中に起きる)を有する。RZシンボル・フォーマットに関して次の実施例を例示するが、本発明の他の実施形態がNRZシンボル・フォーマットまたは他のシンボル・フォーマット(たとえば、より高次のシンボル・フォーマット)を用いることができることを認識すべきである。
【0017】
再び図1を参照すると、カウントは、光検出器22で受信されるRZシンボルの各半分の間に行われる。RZシンボルの一方の半分は、検出器によって生成される内部雑音のカウントに加算された、受信された光エネルギーによって生成されるカウントを含むことになる。平均値は、S+Nになる。RZシンボルの他方の半分は、その平均値がNである検出器の雑音だけからのカウントを有することになる。その関係は、図3の波形50に例示された1つのRZシンボルについて示されている。復調器25は、所定のカウント値を用いてカウントをチェックすることができ、それによってRZシンボルの半分がオン状態またはオフ状態であるのかが決定される。
【0018】
本発明の一態様によれば、ビット決定には、次の簡単な規則が使用される。すなわち、シンボルの第1の半分および第2の半分中のカウント数を比較すること;第1の半分がより大きい場合、そのシンボルは、第1の論理状態(たとえば論理「1」)であると宣言され、第2の半分が等しいまたはより大きい場合、そのシンボルは、第2の論理状態(たとえば論理「0」)であると宣言されることである。たとえば、論理「1」が送られたとき、第1の半分中のカウントは、その平均値が、受信された信号の平均と、所与の期間のその時間間隔の間に生成された検出器の雑音の平均の和に等しくなり;第2の半分中のカウントは、その平均値が、所与の期間の第2の時間間隔中だけの検出器の雑音の平均値に等しくなる。図3に示すように、Pois(S+N)は、シンボルの信号の半分の間のポアソン過程を表し、Pois(N)は、雑音だけの半分の間のポアソン過程を表す。論理状
態は、論理「1」が、エネルギーがシンボルの第2の半分中に受信されたエネルギーであることに基づき、かつ論理「0」が、エネルギーがシンボルの第1の半分中に受信されたエネルギーに基づくように、置き換えることができる。
【0019】
サンプリング処理と入力波形の間のタイミング・エラーは、復調器25中に存在する整合フィルタの出力波形の対称性を測定することによって評価される。図4は、例示的な整合フィルタの出力波形のセットを例示する。所望のように位置合わせすると、時間通りの整合フィルタの出力波形62で例示されたような時間対称の出力がもたらされる。非対称性は、サンプリングが、速い整合フィルタの出力波形60で例示されるように「早い」、または遅い整合フィルタの出力波形64で例示されるように「遅い」、いずれかを表す。相対的な非対称性の量は、エラーの程度に関する評価をもたらす。タイミング・エラーの評価は、補正信号の基礎を形成し、その信号は、サンプリング・タイミング発生器、たとえばデジタル・ダイレクト・シンセサイザ(Digital Direct Synthesizer)にフィードバックされる。小さいタイミング・エラーは、有意には性能を低下させない、したがって絶えずタイミング・エラーを完全になくす必要はない。この理由のために、この評価/補正処理は、連続的に実行させる必要はなく、むしろユーザ定義の間隔で(たとえば1秒当たり数回)行うほうがよい。エラー信号には、一般に雑音が含まれており、評価が補正として使用される前に、その評価を平滑化するために、フィルタリングが適用される。
【0020】
図5は、本発明の態様によるRZシンボル波形70を例示する。RZシンボル波形70は、平均到着率が250カウント/秒であるバックグラウンド雑音が存在する場合、その平均到着率が100カウント/秒である。適切な信号波形設計および検出処理を用いると、信号は、バックグラウンド雑音から容易に抽出することができ、それによって、そうでなければ実現性がないはずの条件下で効果的な動作が可能になる。図5に例示するように、RZシンボル波形70は、論理「1」および「0」の2進法パターン(すなわち「10010111011」))を形成する、一連のシンボルからなる。示すように、論理「1」を有するシンボルは、第1の時間間隔を通じて信号のエネルギーおよび雑音があり、それに続く第2の時間間隔を通じて信号エネルギーがなく雑音だけがあることからなる。論理「0」を有するシンボルは、第1の時間間隔を通じて信号エネルギーがなく雑音だけがあることと、それに続く第2の時間間隔を通じて信号エネルギーおよび雑音があることとからなる。雑音は、通信システムの光検出器および他の構成要素からの雑音だけでなく、送信機の他に他のソースからの光も含むことを認識すべきである。
【0021】
上記に述べた前述の構造的、機能的な特徴に鑑みて、本発明の様々な態様による方法論は、図6を参照すると、十分認識されるはずである。説明を簡単化するために、図6の方法論は、順次に実行されるものとして示し述べているが、本発明は、例示した順序によって限定されない、というのは、本発明によれば、いくつかの態様は、異なる順序で、および/または本明細書で示し述べた態様と異なる他の態様と同時に行うことができるはずであることを理解し認識すべきである。さらにまた、本発明の態様による方法論を実行するためには、すべての例示した特徴を必要としないことがある。
【0022】
図6は、本発明の態様による、光通信システム中において通信するための方法100の実施例を例示する。方法100は、102で始まり、そこでは、メッセージ・データまたは波形がシンボル波形に変換される。シンボル波形は、1つまたは複数のシンボルからなることができる。シンボル波形は、たとえばRZフォーマットまたはNRZフォーマットなど、オンオフ変調されたフォーマットに適合させることができる。104で、光パルス・エネルギーの送信が、シンボル波形に基づき、光パルス・エネルギー送信と光パルス・エネルギー非送信の間で変調される。次いで、方法論100は、106に進む。106で、送信されたシンボル波形に関連する、受信された光子数が、複数の所定のカウント間隔
のそれぞれを通じてカウントされる。108で、オン状態またはオフ状態が、時間間隔毎に、各それぞれの時間間隔に関連するカウント値に基づき決定される。110で、シンボル波形は、シンボル波形中に符号化されたメッセージ・データまたは波形を、複数の所定の間隔を通じたオン状態およびオフ状態の発生のパターンに基づき回復するように復号される。
【0023】
たとえば、所与の論理状態は、期間内の時間間隔が、オン状態(たとえば論理「1」)と、それに続くオフ状態である時間間隔であると決定されているのかどうかに基づき、あるいは期間内の時間間隔が、オフ状態(たとえば論理「0」)と、それに続くオン状態である時間間隔であると決定されているのかどうかに基づき、決定することができる(すなわちRZフォーマット)。あるいは、オン状態は、カウント値が所定の閾値を超えたとき、決定することができ、オフ状態は、カウント値が所定の閾値以下であるとき、決定することができる。次いで、所与の論理状態は、期間が、オン状態(たとえば論理「1」)である、またはオフ状態(たとえば論理「0」)と決定されているのかどうかに基づき、決定することができる(すなわちNRZフォーマット)。さらにまた、論理状態は、カウント値が、その後の時間間隔のカウント値より大きいのか、または小さいのかどうかに基づき、決定することができる。本発明を実施するために、様々なシンボル・フォーマットおよびデコーディング技法を用いることができることを認識すべきである。
【0024】
上記に述べた事項は、本発明の実施例である。もちろん、本発明を述べる目的のために、構成要素または方法論のすべてのあり得る組み合わせを述べることは不可能であるが、当業者は、本発明の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることを認められるはずである。したがって、本発明は、添付の請求項の趣旨および範囲内に含まれる、すべてのそのような変更実施形態、修正実施形態および変形実施形態を包含するものと意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6