(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940686
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】タービン翼
(51)【国際特許分類】
F01D 9/02 20060101AFI20160616BHJP
F01D 5/18 20060101ALI20160616BHJP
F02C 7/18 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
F01D9/02 102
F01D5/18
F02C7/18 A
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-305(P2015-305)
(22)【出願日】2015年1月5日
(62)【分割の表示】特願2011-68851(P2011-68851)の分割
【原出願日】2011年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-63997(P2015-63997A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2015年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102864
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】藤村 大悟
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−072201(JP,A)
【文献】
特表2002−508045(JP,A)
【文献】
特開平08−338203(JP,A)
【文献】
特開平02−241902(JP,A)
【文献】
特開平08−074503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/00− 9/02
F02C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼壁と、
前記翼壁の内部に形成された空間に挿入された第1インサート
とを具備し、
前記第1インサートは、
前記翼壁の第1内面に対向するように設けられ、前記第1内面に対向する位置に第1孔及び第2孔を備えた外側インサート板と、
前記翼壁の反対側の前記外側インサート板の面に対向して設けられた内側インサート板と、
前記外側インサート板と前記内側インサート板とを連結するブリッジ
とを備え、
前記翼壁と前記外側インサート板との間の第1空間と前記外側インサート板の反対側の前記内側インサート板の面に接する第2空間とを連通する開口が前記ブリッジを通過して設けられ、
前記開口が前記第1孔及び前記第2孔の間に位置し、
前記外側インサート板と前記内側インサート板との間の第3空間に供給された冷却媒体が前記第1孔及び前記第2孔から前記翼壁の前記第1内面に噴射され、
前記翼壁の内面に噴射された前記冷却媒体は、前記開口を介して前記第2空間に導入され、
前記第2空間に供給された前記冷却媒体が、前記翼壁の前記第1内面と対向する第2内面に噴射されて前記第2内面の冷却に使用される
タービン翼。
【請求項2】
請求項1に記載のタービン翼であって、
更に、
前記翼壁の内部に形成された空間に、前記第2内面に対向するように設けられた第2インサートを具備し、
前記第2インサートは、前記第2内面に対向する位置に第3孔を備えており、
前記第2空間に供給された前記冷却媒体が、前記第3孔から前記翼壁の前記第2内面に噴射される
タービン翼。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタービン翼であって、
前記第2空間に供給された前記冷却媒体の全量が前記第2内面の冷却に使用される
タービン翼。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のタービン翼であって、
前記翼壁には、前記第2内面と当該タービン翼の外部とを連通する冷却孔が設けられ、
前記翼壁の前記第2内面に噴射された冷却媒体が、前記冷却孔を介して当該タービン翼の外部に噴出され、当該タービン翼の外面のフィルム冷却に使用される
タービン翼。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のタービン翼であって、
前記第1内面は、前記翼壁の腹側の部分の内面であり、
前記第2内面は、前記翼壁の背側の部分の内面である
タービン翼。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のタービン翼であって、
前記第1孔及び前記第2孔と、その間に設けられた前記開口の翼壁の側の端は、略同一平面上にある
タービン翼。
【請求項7】
翼壁と、
前記翼壁の内部に形成された空間に挿入されたインサート
とを具備し、
前記インサートは、
前記翼壁の内面に対向するように設けられ、前記翼壁に対向する位置に孔を備えた外側インサート板と、
前記翼壁の反対側の前記外側インサート板の面に対向して設けられた内側インサート板と、
前記外側インサート板と前記内側インサート板とを連結する第1ブリッジ及び第2ブリッジ
とを備え、
前記翼壁と前記外側インサート板との間の第1空間と前記外側インサート板の反対側の前記内側インサート板の面に接する第2空間とを連通する第1開口及び第2開口が、それぞれ、前記第1ブリッジ及び前記第2ブリッジを通過して設けられ、
前記外側インサート板に設けられた前記孔は、前記第1開口及び前記第2開口の間に位置し、
前記第2空間に供給された冷却媒体が、前記第1開口及び前記第2開口から前記翼壁の内面に噴射され、
前記翼壁の内面に噴射された前記冷却媒体は、前記外側インサート板に設けられた前記孔を介して前記外側インサート板と前記内側インサート板との間の第3空間に導入され、
前記孔の面積が、前記第1開口及び前記第2開口の面積よりも広い
タービン翼。
【請求項8】
請求項7に記載のタービン翼であって、
前記第3空間の前記冷却媒体が、当該タービン翼の他の部分に供給されて冷却に使用される
タービン翼。
【請求項9】
請求項7に記載のタービン翼であって、
前記第3空間の前記冷却媒体が、当該タービン翼の外部に回収される
タービン翼。
【請求項10】
請求項7に記載のタービン翼であって、
前記第1開口は、複数であり、且つ、第1方向に並んで配置され、
前記第2開口は、複数であり、且つ、前記第1方向に並んで配置され、
前記孔は、前記第1方向に長い形状に形成されている
タービン翼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン翼に関し、特に、ガスタービンのタービン翼をインピンジメント冷却によって冷却する冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンのタービン翼(静翼及び動翼)は、燃焼ガスに晒されるため、何らかの冷却機構によって冷却する必要がある。タービン翼を冷却するための一つの方法は、インピンジメント冷却である。例えば、中空構造の翼壁内に挿入されたインピンジメント板に冷却媒体(典型的には冷却空気)を噴出する孔が設けられ、その孔から翼壁の内面に冷却媒体が噴射することでタービン翼が冷却される。一般には、タービン翼に挿入されるインサートがインピンジメント板として使用される。インピンジメント冷却によってガスタービンの高温部材(特に、タービン静翼)を冷却する技術については、例えば、特開2002−161705号公報、特表2003−532821号公報、特許第3110227号、特開平6−093801号公報、特開平9−41991号公報、及び、特開平9−53406号公報に開示がある。
【0003】
タービン翼のインピンジメント冷却における一つの問題は、インサートと翼内面との間の隙間において翼内面に沿った方向に冷却媒体が流れる現象、即ち、いわゆるクロスフローである。翼壁の内面に衝突した冷却媒体は、翼内面に沿った方向に向きを変えて流れる。この流れが、翼壁の内面に向けて噴出される冷却媒体と干渉すると、冷却効率が低下してしまう。
【0004】
特開2010−38141号公報は、クロスフローを低減するための技術を開示している。
図1は、この公報に開示されたインピンジメント冷却による冷却構造を示す斜視図である。
図1の冷却構造では、複数のノズル管109が、高温部材105(例えば、タービン翼の翼壁)の冷却面105aに沿って設けられている。ノズル管109には、冷却面105aに対向する位置に空気噴出口109aが設けられており、更に、冷却面105aのノズル管109の間の位置にリブ115が設けられている。この構造では、ノズル管109から高温部材105の冷却面105aに向けて噴出した噴流が、冷却面105aに衝突した後、ノズル管109の間の間隙から高温部材105の冷却面105aの反対側へ流れる。
図1では、高温部材105の冷却面105aの反対側への冷却媒体の流れが符号fで図示されている。
図1のような構造によれば、クロスフローを低減して冷却効率を向上させることができる。
【0005】
しかしながら、発明者の検討によれば、この技術には、更なる改良の余地がある。即ち、
図1の冷却構造では、高温部材105を冷却した後の冷却媒体の流れが十分に制御されない。高温部材を冷却した後の冷却媒体の流れを積極的に制御することには、技術的な利点がある。例えば、冷却媒体の流れを積極的に制御して冷却媒体を効率よく回収すれば、冷却媒体の再利用の上で好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−161705号公報
【特許文献2】特表2003−532821号公報
【特許文献3】特許第3110227号
【特許文献4】特開平6−093801号公報
【特許文献5】特開平9−41991号公報
【特許文献6】特開平9−53406号公報
【特許文献7】特開2010−38141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、インピンジメント冷却を行うタービン翼において、クロスフローを低減すると共に冷却媒体の流れを積極的に制御し、冷却媒体を効率よく回収することを可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の観点では、タービン翼が、翼壁と、翼壁の内部に形成された空間に挿入されたインサートとを具備する。インサートは、翼壁の内面に対向するように設けられ、翼壁に対向する位置に第1孔及び第2孔を備えた外側インサート板と、翼壁の反対側の外側インサート板の面に対向して設けられた内側インサート板と、外側インサート板と内側インサート板とを連結するブリッジとを備えている。翼壁と外側インサート板との間の第1空間と外側インサート板の反対側の内側インサート板の面に接する第2空間とを連通する開口がブリッジを通過して設けられている。開口は、第1孔及び第2孔の間に位置している。外側インサート板と内側インサート板との間の第3空間に供給された冷却媒体が第1孔及び第2孔から翼壁の内面に噴射される。このような構造では、例えば第1孔から翼壁の内面に噴射された冷却媒体が第2孔から噴射された冷却媒体に干渉せずに開口から回収される。加えて、翼壁の内面に噴射された冷却媒体が第2空間に回収されるように冷却媒体の流れが制御され、冷却媒体を効率よく回収できる。
【0009】
外側インサート板が、翼壁に向けて突出する第1突出部及び第2突出部を備えており、第1孔が第1突出部に設けられ、第2孔が第2突出部に設けられ、開口が第1突出部と第2突出部の間に設けられてもよい。このような構成では、第1孔と第2孔と翼壁の内面の距離を低減して冷却効率を向上しながら、クロスフローを抑制できる。
【0010】
その代わりに、第1孔及び第2孔と、その間に設けられた開口の翼壁の側の端とが、略同一平面上にあってもよい。
【0011】
第2空間に回収された冷却媒体は、当該タービン翼の他の部分に供給されて冷却に使用されてもよく、当該タービン翼の外部に回収されてもよい。
【0012】
本発明の他の観点では、翼壁と、翼壁の内部に形成された空間に挿入されたインサートとを具備する。インサートは、翼壁の内面に対向するように設けられ、翼壁に対向する位置に孔を備えた外側インサート板と、翼壁の反対側の外側インサート板の面に対向して設けられた内側インサート板と、外側インサート板と内側インサート板とを連結する第1及び第2ブリッジとを備えている。翼壁と外側インサート板との間の第1空間と外側インサート板の反対側の内側インサート板の面に接する第2空間とを連通する第1開口及び第2開口が、それぞれ、第1及び第2ブリッジを通過して設けられている。外側インサート板に設けられた孔は、第1及び第2開口の間に位置している。第2空間に供給された冷却媒体は、第1及び第2開口から翼壁の内面に噴射される。このような構造では、例えば第1開口から翼壁の内面に噴射された冷却媒体が第2開口から噴射された冷却媒体に干渉せずに外側インサート板に設けられた孔から回収される。加えて、翼壁の内面に噴射された冷却媒体が外側インサート板と内側インサート板との間の第3空間に回収されるように冷却媒体の流れが制御され、冷却媒体を効率よく回収できる。
【0013】
第3空間に回収された冷却媒体は、当該タービン翼の他の部分に供給されて冷却に使用されてもよく、当該タービン翼の外部に回収されてもよい。
【0014】
本発明の更に他の観点では、インピンジメント冷却構造が、冷却対象に対向するように設けられ、冷却対象に対向する位置に第1孔及び第2孔を備えた外側インピンジメント板と、冷却対象の反対側の外側インピンジメント板の面に対向して設けられた内側インピンジメント板と、外側インピンジメント板と内側インピンジメント板とを連結するブリッジとを備えている。冷却対象と外側インピンジメント板との間の第1空間と外側インピンジメント板の反対側の内側インピンジメント板の面に接する第2空間とを連通する開口が、ブリッジを通過して設けられている。開口は、第1孔及び第2孔の間に位置している。外側インピンジメント板と内側インピンジメント板との間の第3空間に供給された冷却媒体が、第1孔及び第2孔から冷却対象に噴射される。
【0015】
本発明の更に他の観点では、インピンジメント冷却構造が、冷却対象の内面に対向するように設けられ、冷却対象に対向する位置に孔を備えた外側インピンジメント板と、冷却対象の反対側の外側インピンジメント板の面に対向して設けられた内側インピンジメント板と、外側インピンジメント板と内側インピンジメント板とを連結する第1及び第2ブリッジとを備えている。冷却対象と外側インピンジメント板との間の第1空間と外側インピンジメント板の反対側の内側インピンジメント板の面に接する第2空間とを連通する第1開口及び第2開口は、それぞれ、第1及び第2ブリッジを通過して設けられている。外側インピンジメント板に設けられた孔は、第1及び第2開口の間に位置している。第2空間に供給された冷却媒体が第1及び第2開口から冷却対象に噴射される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インピンジメント冷却を行うタービン翼において、クロスフローを低減すると共に冷却媒体の流れを積極的に制御し、冷却媒体を効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来のインピンジメント冷却による冷却構造を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態のガスタービン静翼が使用されているガスタービンの構成を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態のガスタービン静翼の構造を示す断面図である。
【
図4】第1の実施形態のガスタービン静翼の前縁近傍の内部空間に挿入された2重構造のインサートの構造を示す断面図である。
【
図5】第1の実施形態のガスタービン静翼の後縁近傍における内部空間に挿入された2重構造のインサートの構造を示す断面図である。
【
図6】第1の実施形態の2重構造のインサートの構造を示す斜視図である。
【
図7】第1の実施形態の2重構造のインサートの構造を示す正面図である。
【
図8A】第1の実施形態の2重構造のインサートの、I−I断面における構造を示す断面図である。
【
図8B】第1の実施形態の2重構造のインサートの、II−II断面における構造を示す断面図である。
【
図9】第2の実施形態のガスタービン静翼の構造を示す断面図である。
【
図10】第2の実施形態の2重構造のインサートの構造を示す斜視図である。
【
図11】第2の実施形態の2重構造のインサートの構造を示す断面図である。
【
図12】第2の実施形態におけるガスタービン静翼の他の構造を示す断面図である。
【
図13】第2の実施形態におけるガスタービン静翼の更に他の構造を示す断面図である。
【
図14】第3の実施形態のガスタービン静翼の構造を示す断面図である。
【
図15】第3の実施形態における2重構造のインサートの構造を示す正面図である。
【
図16A】第3の実施形態の2重構造のインサートの、III−III断面における構造を示す断面図である。
【
図16B】第3の実施形態の2重構造のインサートの、IV−IV断面における構造を示す断面図である。
【
図17】第2の実施形態のガスタービン静翼の構造の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態のガスタービン静翼が使用されているガスタービン、特に、燃焼器1から第1列目の静翼10に燃焼ガスが流れ込む部分の構造を示す図である。燃焼器1の尾筒の末尾に設けられた取付フランジ2と外側シュラウド4とが、尾筒出口シール3を介して固定されている。静翼10は、外側シュラウド4と内側シュラウド5の間に固定されている。燃焼ガス8が燃焼器1から静翼10の列に向けて流れ込むと、該燃焼ガス8が静翼10によって所望の方向に向けられて静翼10の下流に位置する動翼(図示されない)を回転させ、これにより回転駆動力が得られる。
図1には第1列目の静翼10しか図示されていないが、一般には、複数の静翼の列と複数の動翼の列が設けられる。
【0019】
静翼10には、外側シュラウド4から冷却空気6が供給される。冷却空気6は、静翼10の内部に導入されて静翼10の冷却に使用される冷却媒体である。後述のように、本実施形態では、静翼10が、冷却空気6の一部が回収されるように構成されている。回収された空気は、
図2では回収空気7として図示されている。
【0020】
図3は、静翼10の構造を示す断面図である。静翼10は、翼壁11と隔壁12、13、14と、インサート15、16、17、18とを備えている。インサート15は、静翼10の前縁付近の翼壁11と隔壁12とによって形成される空間Aに挿入されている。インサート16は、静翼10の中央部且つ腹側の、翼壁11及び隔壁12、13、14によって形成される空間Bに挿入されている。インサート17は、静翼10の中央部且つ背側の、翼壁11及び隔壁12、13、14によって形成される空間Cに挿入されている。インサート18は、静翼10の後縁付近の、翼壁11及び隔壁13によって形成される空間Dに挿入されている。
【0021】
ここで、4つのインサートのうち、空間Aに挿入されたインサート15と、空間Dに挿入されたインサート18は、2重構造を有している。
図4に示されているように、インサート15は、内側インサート板21と外側インサート板22とを備えており、隔壁12に設けられた支持部12a、12bによって支持されている。内側インサート板21と外側インサート板22との間の空間は冷却空気6を供給するための流路として使用され、その冷却空気6は、外側インサート板22に設けられた孔から翼壁11の内壁に噴出されてインピンジメント冷却に使用される。翼壁11の内壁に衝突した冷却空気は、内側インサート板21と外側インサート板22とを貫通するように設けられた通路を介して内側インサート板21の内側の空間(即ち、内側インサート板21の外側インサート板22と反対側の面に接する空間)に導入され、回収される。回収される冷却空気は、符号7で図示されている。
図5に示されているインサート18でも同様に、インサート18は、内側インサート板21と外側インサート板22とを備えた2重構造を有している。ただし、インサート18では、内側インサート板21で囲まれた空間に回収された冷却空気は、冷却ピン20が設けられた静翼10の尾部に導入されて静翼10の尾部の冷却に使用された後、静翼10の後縁に設けられた開口から静翼10の外部に放出される。後述されるように、このような2重構造は、クロスフローを低減させながら、翼壁11の内壁に衝突した冷却空気の流れを内側インサート板21の内部に誘導し、回収空気7として回収することを可能にする。インサート15、18で使用されている2重構造については、後に詳細に説明する。
【0022】
一方、
図3に図示されている構造では、インサート16、17は、一般的な1重構造を有している。インサート16、17の内部空間に導入された冷却空気は、それらに設けられた孔を介して翼壁11の内壁に吹き付けられる。翼壁11に吹き付けられた冷却空気は、翼壁11に設けられた冷却孔19を介して静翼10の外部に噴出され、翼壁11の外面のフィルム冷却に使用される。ただし、インサート16、17についても、上述の2重構造を適用することは可能であることに留意されたい。
【0023】
以下、本実施形態のインサート15、18で使用されている2重構造について、詳細に説明する。以下では、インサート15の構造について詳細に説明するが、インサート18についても同様の構造を有している。
【0024】
図6は、内側インサート板21と外側インサート板22の構造を示す斜視図であり、
図7は、外側インサート板22を翼壁11から見た正面図である。また、
図8Aは、
図7のI−I断面における内側インサート板21と外側インサート板22の構造を示す断面図であり、
図8Bは、
図7のII−II断面における内側インサート板21と外側インサート板22の構造を示す断面図である。
【0025】
図8A、
図8Bに図示されているように、翼壁11に対向するように外側インサート板22が設けられ、その外側インサート板22に対向するように内側インサート板21が設けられる。外側インサート板22には、翼壁11に向かって突出する突出部22aが設けられておりその突出部22aの先端に孔23が設けられている。
図6、
図7に示されているように、突出部22aは、冷却空気6の流れに平行な方向に延伸するように設けられており、孔23は、冷却空気6の流れに平行な方向に並んで配置されている。
【0026】
図8Bに図示されているように、内側インサート板21と外側インサート板22とは、中空ブリッジ25によって連結されている。中空ブリッジ25は中空であり、中空ブリッジ25の内部空間は、
図6に図示されているように、翼壁11と外側インサート板22との間の空間と外側インサート板22と反対側の内側インサート板21の面に隣接する空間とを連通する開口24として使用される。開口24及び中空ブリッジ25は、2つの突出部22aの間(即ち、2つの孔23の列の間)に設けられている。
【0027】
以下、このような構造のインサート15を用いたインピンジメント冷却について説明する。
図8Aに図示されているように、内側インサート板21と外側インサート板22の間の空間に供給された冷却空気6は、外側インサート板22に設けられた孔23から翼壁11に向かって噴出される。翼壁11に衝突した冷却空気は、
図8Bに図示されているように、2つの孔23の列の間に設けられた開口24から内側インサート板21の内部の空間に導入される。内側インサート板21の内側の空間は、回収空気7を回収するための流路として利用される。このような構造のインサート15は、ある列の孔23から噴出された冷却空気が、翼壁11に衝突した後、他の列の孔23の近傍に流れてクロスフローを発生させることを防ぐことができ、インピンジメント冷却の冷却効率を向上させることができる。加えて、冷却空気の流れが開口24を介して内側インサート板21の内部の空間に誘導されるので、冷却空気の流れを効率よく制御して冷却空気を回収することができる。
【0028】
加えて、翼壁11に向けて突出部22aが突出している構造は、翼壁11と孔23との距離を近くする一方で、外側インサート板22の突出部22aの間の部分と翼壁11の間の距離を大きくすることを可能にしている。このような構造は、第1に、翼壁11と孔23との距離を近くすることでインピンジメント冷却の冷却効率を向上させるという利点がある。第2に、翼壁11に衝突した冷却空気を外側インサート板22の突出部22aの間の部分と翼壁11の間の空間が大きくなることでクロスフローが一層に発生しにくくなるという利点がある。
【0029】
(第2の実施形態)
図9、
図10、
図11は、本発明の第2の実施形態のガスタービン静翼の構造を図示しており、特に、2重構造を有するインサートの別の構造を示している。
図9〜
図11の構造では、2重構造が、静翼10の中央部且つ腹側の、翼壁11及び隔壁12、13、14によって形成される空間Bに挿入されるインサート16Aに適用されている。インサート16Aは、隔壁12に設けられた支持部12cと隔壁13に設けられた支持部13aによって支持されている。
【0030】
図9〜
図11に図示されているインサート16Aは、
図6、
図7、
図8A、
図8Bのインサート15と類似した構造を有しているが、突出部22aが設けられていない点が異なる。
図10を参照して、インサート16Aは、内側インサート板31と外側インサート板32を備えている。外側インサート板32には、孔33が設けられている。孔33は、冷却空気6が流入する方向に並んで配置されている。内側インサート板31と外側インサート板32は、中空ブリッジ35と端部ブリッジ36によって連結されている。端部ブリッジ36は、内側インサート板31と外側インサート板32の端を連結しており、この端部ブリッジ36が、隔壁12に設けられた支持部12cに連結されている。加えて、
図11に図示されているように、中空ブリッジ35の内部が、外側インサート板32と翼壁11の間の空間と外側インサート板32と反対側の内側インサート板31の面に接する空間を連通する開口34として使用される。開口34は、2つの孔33の列の間に位置している。本実施形態では、外側インサート板32に突出部が設けられていないため、特定の2つの孔33の列とその間に設けられた開口34の翼壁11の側の端は、略同一平面上にある。
【0031】
このような構造のインサート16Aでは、以下のようにしてインピンジメント冷却が行われる。冷却空気6は、内側インサート板31と外側インサート板32の間の空間に供給される。内側インサート板31と外側インサート板32の間の空間に供給された冷却空気6は、外側インサート板32に設けられた孔33から翼壁11に向かって噴出される。
図9に示されているように、翼壁11に衝突した冷却空気は、2つの孔33の列の間に設けられた開口34から、内側インサート板31と隔壁14の間の空間に回収される。
【0032】
ここで、
図9の構造では、インサート16Aの内側インサート板31と隔壁14の間の空間に回収された冷却空気が、更に、翼壁11の背側の部分をインピンジメント冷却するために使用される。詳細には、隔壁14には、静翼10の中央部の腹側の空間Bと背側の空間Cとを連通する開口14aが設けられている。空間Cには、翼壁11の内壁に対向するインサート17Aが設けられている。インサート17Aは、隔壁12に設けられた支持部12dと隔壁13に設けられた支持部13bとによって支持されている。インサート17Aには、インピンジメント冷却のための孔が設けられている。内側インサート板21と隔壁14の間の空間に回収された冷却空気は、開口14aを介して空間Cに導入され、更に、インサート17Aに設けられた孔を介して翼壁11の内面に噴射される。翼壁11の内面に噴射された冷却空気は、冷却孔19を介して静翼10の外部に噴出され、翼壁11の外面のフィルム冷却に使用される。
【0033】
第2の実施形態のインサート16Aは、第1の実施形態のインサート15と同様に、ある列の孔33から噴出された冷却空気が、翼壁11に衝突した後、他の列の孔33の近傍に流れてクロスフローを発生させることを防ぐことができ、インピンジメント冷却の冷却効率を向上させることができる。加えて、冷却空気の流れが開口34を介して内側インサート板31と隔壁14の間の空間に誘導されるので、冷却空気の流れを効率よく制御して冷却空気を回収することができる。
【0034】
加えて、第2の実施形態のインサート16Aは、外側インサート板32に突出部が設けられていないため、第1の実施形態のインサート15と比較すると、設置に必要なスペースが小さく、孔33の列の間の位置における冷却ムラが小さくなり、また、インサート16Aを形成するための加工が容易であるという利点もある。
【0035】
なお、
図12に図示されているように、隔壁14が設けられない構成も可能である。この場合でも、外側インサート板32から孔33を介して腹側の翼壁11の内面に噴射された冷却空気が、開口34を介して、外側インサート板32の反対側の内側インサート板31の面に接する空間に回収される。回収された冷却空気は、インサート17Aに設けられた孔を介して背側の翼壁11の内面に噴射される。翼壁11の内面に噴射された冷却空気は、冷却孔19を介して静翼10の外部に噴出され、翼壁11の外面のフィルム冷却に使用される。
【0036】
また、
図13に図示されているように、内側インサート板31と隔壁14の間の空間に回収された冷却空気が、静翼10の後縁付近の翼壁11と隔壁13とで形成される空間Dに導入され、空間Dにおけるインピンジメント冷却に利用されてもよい。この場合、空間Dには、翼壁11の内面に沿ってインサート18Aが設けられる。インサート18Aは、隔壁13に設けられた支持部13c、13dと、翼壁11の内面に設けられた支持部11aによって支持される。インサート18Aには、インピンジメント冷却に使用される多数の孔が設けられている。内側インサート板31と隔壁14の間の空間に回収された冷却空気は、隔壁13に設けられた開口13eを介して空間Dに導入され、更に、インサート18Aに設けられた孔を介して翼壁11の内面に噴射される。腹側の翼壁11の内面に噴射された冷却空気は、冷却孔19を介して静翼10の外部に噴出され、翼壁11の外面のフィルム冷却に使用される。一方、背側の翼壁11の内面に噴射された冷却空気は、冷却ピン20が設けられた静翼10の尾部に導入されて静翼10の尾部の冷却に使用された後、静翼10の後縁に設けられた開口から静翼10の外部に放出される。
【0037】
(第3の実施形態)
図14、
図15、
図16A、16Bは、本発明の第3の実施形態のガスタービン静翼の構造を図示しており、特に、2重構造を有するインサートの別の態様を示している。第3の実施形態では、2重構造が、静翼10の後縁付近の翼壁11と隔壁13とで形成される空間Dに挿入されるインサート18Bに適用される。
【0038】
インサート18Bは、空間トポロジーとしては、上述の第2の実施形態のインサート16Aと同様の構造を有しているが、冷却空気の流れが逆方向であるように構成されている。即ち、
図14に図示されているように、インサート18Bは、内側インサート板41の内部に供給された冷却空気6がインピンジメント冷却に使用され、インピンジメント冷却に使用された冷却空気が内側インサート板41と外側インサート板42の間の空間に回収されるように構成されている。以下、インサート18Bの構造について詳細に説明する。
【0039】
図16A、
図16Bに図示されているように、内側インサート板41と外側インサート板42は、中空ブリッジ45によって連結されている。中空ブリッジ45の内部が、外側インサート板42と翼壁11の間の空間と外側インサート板42と反対側の内側インサート板41の面に接する空間を連通する開口44として使用される。
図15に図示されているように、外側インサート板42には、複数の孔43が設けられており、これらの孔43から、外側インサート板42と翼壁11の間の空間と内側インサート板41と外側インサート板42の間の空間は、孔43を介して連通している。本実施形態では、開口44のそれぞれは、孔43と比較して小さな面積を有している。
【0040】
このような構造のインサート18Bでは、以下のようにしてインピンジメント冷却が行われる。冷却空気6は、内側インサート板41の内側の空間(外側インサート板42と反対側の内側インサート板41の面に接する空間)に供給される。内側インサート板41の内側の空間に供給された冷却空気6は、開口44を介して翼壁11の内面に向かって噴射される。翼壁11に衝突した冷却空気は、2つの開口44の列の間に設けられた孔43から、内側インサート板41と外側インサート板42の空間に回収される。内側インサート板41と外側インサート板42の間の空間に回収された冷却空気は、
図14に図示されているように、冷却ピン20が設けられた静翼10の尾部に導入されて静翼10の尾部の冷却に使用された後、静翼10の後縁に設けられた開口から静翼10の外部に放出される。
【0041】
第3の実施形態のインサート18Bは、第1及び第2の実施形態のインサート15、16Aと同様に、ある列の開口44から噴出された冷却空気が、翼壁11に衝突した後、他の列の開口44の近傍に流れてクロスフローを発生させることを防ぐことができ、インピンジメント冷却の冷却効率を向上させることができる。加えて、冷却空気の流れが孔43を介して内側インサート板41と外側インサート板42の間の空間に誘導されるので、冷却空気の流れを効率よく制御して冷却空気を回収することができる。
【0042】
上述のいずれの実施形態においても、
図17に図示されているように、翼壁11の内面に、翼壁11に衝突した冷却空気の流れを制御するための突起50が設けられてもよい。突起50は、翼壁11から外側インサート板22、32、42に向けて突出するように設けられる。なお、
図17には、第2の実施形態の構造において、翼壁11の内面に突起50が設けられている構成が図示されている。突起50は、冷却空気を翼壁11に噴射する孔23、33又は開口44の列の間の位置に設けられる。突起50は、孔23、33又は開口44の列の方向と平行な方向に延伸するリブとして構成されてもよく、孔23、33又は開口44の列の方向と平行な方向に並べられたピンの列として構成されてもよい。
【0043】
上記には、本発明の様々な実施形態が具体的に述べられているが、本発明は、上記の実施形態に限定されて解釈してはならない。特に、回収された冷却空気が上述の実施形態で言及された用途に限定されず、様々な用途で利用可能であることは、当業者には理解されよう。例えば、冷却空気が、回収空気7として静翼10の外部に回収され、他の部品(例えば、ガスタービン静翼、ガスタービン静翼を支持する分割環(シュラウド、リングセグメント等とも呼ばれる)、燃焼器のライナー(内筒、尾筒)等)の冷却に使用されることも可能である。また、用途に応じて、冷却空気の代わりに他の冷却媒体を使用することも可能である。更に、上述の実施形態では静翼10の冷却について述べられているが、本願発明が、原理的には、他の部材(例えば、ガスタービンの動翼)のインピンジメント冷却に応用可能であることは、当業者には容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0044】
1:燃焼器
2:取付フランジ
3:尾筒出口シール
4:外側シュラウド
5:内側シュラウド
6:冷却空気
7:回収空気
10:静翼
11:翼壁
11a:支持部
12、13、14:隔壁
12a、12b、12c、13a、13b、13c、13d:支持部
14a、13e:開口
15、16、16A、17、17A、18、18A、18B:インサート
19:冷却孔
A、B、C、D:空間
20:冷却ピン
21:内側インサート板
22:外側インサート板
22a:突出部
23:孔
24:開口
25:中空ブリッジ
31:内側インサート板
32:外側インサート板
33:孔
34:開口
35:中空ブリッジ
36:端部ブリッジ
41:内側インサート板
42:外側インサート板
43:孔
44:開口
45:中空ブリッジ
50:突起
105:高温部材
105a:冷却面
109:ノズル管
109a:空気噴出口
115:リブ