(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940727
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】洗浄冷却装置、EGRユニット、及びエンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F02M 26/35 20160101AFI20160616BHJP
F02M 26/22 20160101ALI20160616BHJP
【FI】
F02M26/35 Z
F02M26/22
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-506612(P2015-506612)
(86)(22)【出願日】2014年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2014001551
(87)【国際公開番号】WO2014148048
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2015年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-55160(P2013-55160)
(32)【優先日】2013年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細野 隆道
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 克浩
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 英和
(72)【発明者】
【氏名】西村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】東田 正憲
(72)【発明者】
【氏名】野上 哲男
【審査官】
川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−332919(JP,A)
【文献】
特開平09−038448(JP,A)
【文献】
特開平07−328380(JP,A)
【文献】
特開2005−087828(JP,A)
【文献】
特開昭52−076525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/00−26/74
B01D 53/00−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGRユニットの一部を構成する装置であって、
洗浄液を用いて排気ガスを洗浄する洗浄部と、
前記洗浄部に隣接し、前記洗浄部で洗浄された排気ガスを冷却する冷却部と、を備え、
前記洗浄部は、洗浄に使用する洗浄液が溜められている液体エリアを有し、
前記冷却部は、冷却される排気ガスが流れる気体エリアと、排気ガスの冷却によって発生した凝縮水を受ける液体エリアを有し、
前記洗浄部の液体エリアと前記冷却部の液体エリアとが直接接続されており、
前記冷却部の気体エリアには排気ガスを冷却する熱交換器が設けられており、
前記熱交換器は、排気ガスが当該熱交換器を通過する際、排気ガスが当該熱交換器の鉛直方向上側から鉛直方向下側に向かって流れるように配置されている、
洗浄冷却装置。
【請求項2】
前記洗浄部は洗浄された排気ガスが流れる気体エリアを有し、
前記洗浄部の気体エリアと前記冷却部の気体エリアとが直接接続されている、
請求項1に記載の洗浄冷却装置。
【請求項3】
前記洗浄部及び前記冷却部は、外枠ケースの内壁と、該外枠ケースの内部空間を仕切る仕切部材とによって画されている、請求項2に記載の洗浄冷却装置。
【請求項4】
前記洗浄部の気体エリアと前記冷却部の気体エリアとが前記仕切部材の上端付近において直接接続されており、前記洗浄部の液体エリアと前記冷却部の液体エリアとが前記仕切部材の下端付近において直接接続されている、請求項3に記載の洗浄冷却装置。
【請求項5】
前記仕切部材は板状に形成されている、請求項4に記載の洗浄冷却装置。
【請求項6】
前記洗浄部は液体エリアの洗浄液を汲み上げて排気ガスに噴射するように構成されている、請求項1乃至5のうちいずれか一の項に記載の洗浄冷却装置。
【請求項7】
前記洗浄部は液体エリアの洗浄液中に排気ガスを放出するように構成されている、請求項6に記載の洗浄冷却装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか一の項に記載の洗浄冷却装置を備え、前記洗浄冷却装置によって洗浄及び冷却した排気ガスをエンジンに再循環させる、EGRユニット。
【請求項9】
請求項8に記載のEGRユニットを備えた、エンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスを洗浄して冷却する洗浄冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから排出される窒素酸化物(NOx)の量を低減させる手法として、排気ガスの一部をエンジンに戻す排気再循環(EGR;Exhaust Gas Recirculation)が知られている。排気ガスの一部をエンジンに戻すことにより、酸素濃度が低い状態で燃焼が行われ、その結果、燃焼温度が低下してNOxの生成が抑制される。ただし、使用する燃料によっては、排気ガスに粒子状物質(PM;Particulate Matter)や硫黄酸化物(SOx)が大量に含まれる場合があり、この場合には再循環させる排気ガスからPMやSOxを取り除く必要がある。排気ガスからPMやSOxを取り除くには、洗浄液によってこれらを取り除く湿式ガス洗浄装置(スクラバ)が有効である(特許文献1の
図2の符号15参照)。
【0003】
また、EGRユニット内において上記のスクラバを設置した場合には、スクラバの下流にガス冷却器を設置する場合がある。スクラバによって洗浄された排気ガスは飽和状態にあり、大量の水分を含んでいる。そのため、洗浄された排気ガスをガス冷却器で冷却すると、排気ガス中の大量の水分が凝縮水となって排出され、排気ガスに含まれる水分を取り除くことができる。よって、このようにしてガス冷却器を設置することにより、ガス冷却器よりも下流に位置する機器に排気ガスの水分が付着するのを防ぎ、それらの機器が腐食等するのを抑えることができる。
【0004】
上述したスクラバで使用した洗浄液、及びガス冷却器で発生した凝縮水は、通常、別途設けられたサージタンクに排出され一時的に溜められる。使用後の洗浄液や凝縮水をこのサージタンクに溜めるのは、これらを洗浄液としてスクラバで再利用するためである。ただし、洗浄液として再利用するには、中和剤をサージタンク又は配管中に投入する必要がある。なぜなら、洗浄液や凝縮水はSOxを吸収することでpH値が低下して酸性となるが、このようなpH値が低い液体を洗浄液として使用すると、脱硫反応が進まなくなり、SOxの除去を効率よく行えなくなるからである。一方で、サージタンクに溜められた液体のpH値を高くしすぎると塩が固着したり、また、CO
2までも溶解してしまい中和剤をさらに投入する必要が生じる。なお、排気ガス中のSOxの濃度は、エンジンの負荷やEGR率(EGRラインへのバイパス率)によって変化し、これに伴ってサージタンクに溜められた液体のpH値も変動する。そのため、排気ガスの洗浄を効率よく行うには、サージタンクに溜められた液体のpH値を常に観測し、そのpH値に応じて適切な量の中和剤を投入しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−157959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、サージタンク内の液体のpH値は、中和剤を投入することで調整されるが、実際にはEGRユニット内を循環する洗浄液の量は非常に多いため、pH値の応答反応は遅く、pH値を理想的な範囲で安定させるのは容易ではない。
【0007】
また、サージタンクをスクラバやガス冷却器から離れて設置する場合には、サージタンク内をEGRラインの内圧と同程度の高い圧力に保つことは実質的に不可能であり、サージタンク内の液体は大気圧下で貯蔵されることになる。この場合、サージタンク内の液体を洗浄液としてスクラバに供給するには、大気圧まで下がった洗浄液の圧力をスクラバの内圧程度にまで昇圧しなければならない。そのため、使用するポンプが大型化するとともに、ポンプの消費電力も増大する。
【0008】
さらに、サージタンクに流れ込む洗浄液や凝縮水は酸性であるため、これらが流れる配管類は耐食性のものを使用しなければならず、EGRシステムの製造コストの増大にもつながる。
【0009】
また、安定的に洗浄液をスクラバに供給するには、サージタンクの容量を大きくする必要があり、EGRユニットがサージタンクを備えると、当然ながらEGRユニットはサージタンクに取り付けられる配管類も備えなければならない。つまり、EGRユニットの小型化が望まれるところ、そもそもサージタンクの設置はEGRユニットの小型化にとって障害となっている。
【0010】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、サージタンクのないEGRユニットを構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある形態に係る洗浄冷却装置は、EGRユニットの一部を構成する装置であって、洗浄液を用いて排気ガスを洗浄する洗浄部と、前記洗浄部に隣接し、前記洗浄部で洗浄された排気ガスを冷却する冷却部と、を備え、前記洗浄部は、洗浄に使用する洗浄液が溜められている液体エリアを有し、前記冷却部は、排気ガスの冷却によって発生した凝縮水を受ける液体エリアを有し、前記洗浄部の液体エリアと前記冷却部の液体エリアとが直接接続されている。
【0012】
ここで、「直接接続されている」とは、タンクを介さずに接続されているという意味であって、タンクを介して「間接的に接続されている」ような場合は排除される。例えば、洗浄部の液体エリアと冷却部の液体エリアが共通の貯水部として一体に形成されている場合、洗浄部の液体エリアと冷却部の液体エリアが互いに配管で接続されている場合、及び、洗浄部の液体エリアと冷却部の液体エリアがそれぞれ収容する液体をポンプ等で直接やりとりできるように構成されている場合は、洗浄部の液体エリアと冷却部の液体エリアは「直接接続されている」といえる。上記の構成によれば、洗浄部の液体エリアと冷却部の液体エリアが直接接続されているため、冷却部で発生した凝集水が他の機器に搬送されることもなく、そのまま洗浄液として使用される。そのため、上記の洗浄冷却装置を備えたEGRユニットは、洗浄液を貯蔵するサージタンクが不要となる。
【0013】
また、上記の洗浄冷却装置において、前記洗浄部は洗浄された排気ガスが流れる気体エリアを有し、前記冷却部は冷却される排気ガスが流れる気体エリアを有し、前記洗浄部の気体エリアと前記冷却部の気体エリアとが直接接続されていてもよい。この構成によれば、洗浄部と冷却部とが直接接続されているため、EGRユニットをより小型化することができる。
【0014】
また、上記の洗浄冷却装置において、前記洗浄部及び前記冷却部は、外枠ケースの内壁と、該外枠ケースの内部空間を仕切る仕切部材とによって画されていてもよい。この構成によれば、洗浄冷却装置を非常に単純な構造とすることができる。
【0015】
また、上記の洗浄冷却装置において、前記洗浄部の気体エリアと前記冷却部の気体エリアとが前記仕切部材の上端付近において直接接続されており、前記洗浄部の液体エリアと前記冷却部の液体エリアとが前記仕切部材の下端付近において直接接続されていてもよい。この構成によれば、外枠ケース内の空間を有効に使用することができる。
【0016】
また、上記の洗浄冷却装置において、前記仕切部材は板状に形成されていてもよい。この構成によれば、洗浄冷却装置をより単純な構造とすることができる。
【0017】
また、上記の洗浄冷却装置において、前記洗浄部は液体エリアの洗浄液を汲み上げて排気ガスに噴射するように構成されていてもよい。
【0018】
また、上記の洗浄冷却装置において、前記洗浄部は液体エリアの洗浄液中に排気ガスを放出するように構成されていてもよい。この構成によれば、洗浄部の液体エリアを有効に利用して、溜水方式の洗浄を行うことができる。
【0019】
さらに、本発明のある形態に係るEGRユニットは、上記の洗浄冷却装置を備え、前記洗浄冷却装置によって洗浄及び冷却した排気ガスをエンジンに再循環させる。
【0020】
さらに、本発明のある形態に係るエンジンシステムは、上記のEGRユニットを備えている。
【発明の効果】
【0021】
以上のとおり、EGRユニットが上述した洗浄冷却装置を備えることで、サージタンクのないEGRユニットを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るエンジンシステムのブロック図である。
【
図2】
図2は、上記エンジンシステムの洗浄冷却装置の概略図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係るエンジンシステムの洗浄冷却装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0024】
(第1実施形態)
はじめに、
図1及び
図2を参照して、第1実施形態について説明する。
【0025】
<エンジンシステム>
まず、本実施形態に係るエンジンシステム100について説明する。
図1は、エンジンシステム100のブロック図である。
図1に示すように、エンジンシステム100は、エンジン10と、過給器20と、EGRユニット30と、を備えている。
【0026】
本実施形態におけるエンジン10は、船舶の推進用主機であり、2ストロークディーゼルエンジンである。エンジン10には、過給器20から掃気通路11を介して掃気ガス(4ストロークエンジンの場合には「給気ガス」)が供給される。また、エンジン10から排出された排気ガスは排気通路12を介して過給器20に供給される。なお、エンジン10は、4ストロークエンジンであってもよく、ガスエンジンやガソリンエンジンであってもよい。また、エンジン10は船舶に用いられるものに限らず、発電設備に用いられるものであってもよい。
【0027】
過給器20は、空気を昇圧してエンジン10に供給する装置である。過給器20は、タービン部21と、コンプレッサ部22とを有している。タービン部21にはエンジン10から排出された排気ガスが供給され、排気ガスのエネルギによりタービン部21が回転する。タービン部21とコンプレッサ部22は連結シャフト23により連結されており、タービン部21の回転に伴ってコンプレッサ部22も回転する。コンプレッサ部22が回転すると、外部から取り込んだ空気(大気)が圧縮され、圧縮された空気は掃気ガスとしてエンジン10へ供給される。
【0028】
EGRユニット30は、エンジン10から排出された排気ガスをエンジン10へ戻す(再循環させる)ユニットである。EGRユニット30は、排気通路12から排気ガスを抽出し、抽出した排気ガスを洗浄冷却装置31(後で詳述する)で洗浄するとともに冷却して掃気通路11へ送り込む。洗浄冷却装置31の下流側にはEGRブロワ32が設けられており、このEGRブロワ32の動力によってEGRユニット30内の排気ガスを掃気通路11に供給する。このように、排気ガス(既燃ガス)を掃気通路11へ供給することで、エンジン10に供給される掃気ガスの酸素濃度が低下し、NOxの排出量を低減することができる。
【0029】
<洗浄冷却装置>
続いて、EGRユニット30の一部を構成する洗浄冷却装置31について説明する。
図2は、本実施形態に係る洗浄冷却装置31の概略図である。
図2に示すように、洗浄冷却装置31は、洗浄部33と、冷却部34と、循環装置35と、を備えている。
【0030】
洗浄部33は、排気ガスを洗浄する部分である。洗浄部33は、排気ガスで満たされる気体エリア36と、洗浄液で満たされる液体エリア37を有している。気体エリア36及び液体エリア37の範囲は、洗浄液の水面位置によって決定される。気体エリア36には、流入口38が形成されており、この流入口38を通って洗浄部33の内部に排気ガスが流入する。気体エリア36には洗浄液を噴射する噴射ノズル39が設けられており、噴射ノズル39から噴射された洗浄液によって排気ガスは洗浄される。排気ガス中のPM及びSOxを取り込んだ洗浄液は自重によって落下し、液体エリア37に溜められる。また、洗浄液の一部は蒸発して排気ガスに吸収され、排気ガスは飽和状態となる。
【0031】
冷却部34は、洗浄部33で洗浄された排気ガスを冷却する部分である。排気ガスを冷却することで、凝縮水を発生させ、排気ガスから水分を取り除くことができる。冷却部34も、排気ガスで満たされる気体エリア40と、液体(凝集水及び洗浄液)で満たされる液体エリア41を有している。冷却部34の気体エリア40と洗浄部33の気体エリア36とは気体接続口42を介して直接接続されており、洗浄部33で洗浄された排気ガスは洗浄部33の気体エリア36から気体接続口42を通って冷却部34の気体エリア40に流入する。冷却部34の気体エリア40には熱交換器43及びミストキャッチャ44が設けられているとともに、排出口45が形成されている。
【0032】
冷却部34の熱交換器43は、内部に冷却媒体(例えば、海水)が流れており、この冷却媒体と排気ガスとによって熱交換が行われる。冷却部34に流入した排気ガスは、この熱交換器43を通過することで冷却される。熱交換器43を通過した排気ガスは、さらにミストキャッチャ44によって霧状化した洗浄液が捕獲され、最終的に排出口45を通って、洗浄冷却装置31から排出される。排気ガスを冷却することによって発生した凝縮水、及びミストキャッチャ44によって捕獲された洗浄液は自重によって落下し、落下した凝集水及び洗浄液は液体エリア41で受けることになる。
【0033】
また、冷却部34の液体エリア41と洗浄部33の液体エリア37とは、液体接続口46を介して直接接続されている。よって、冷却部34の液体エリア41と洗浄部33の液体エリア37とによって、水面下で接続されて一体となった貯水部47を形成している。この貯水部47の水位は、洗浄冷却装置31に設けられたレベル計48によって測定されている。また、貯水部47の洗浄液の一部は、廃水処理ユニット60へ排出され、遠心分離機等によって異物が取り除くなどの処理が行われる。そして、廃水処理ユニット60で処理された洗浄液の一部は貯水部47へ戻され、残りは外部(例えば海)へと排出される。また、貯水部47には中和剤投入装置49から中和剤が投入され、清水供給装置50から清水が供給される。
【0034】
上述した、洗浄部33と冷却部34は、外枠ケース51の内壁52と、外枠ケース51の内部空間を仕切る仕切部材53とによって画されている。外枠ケース51及び仕切部材53の形状はいずれも限定されるものではないが、例えば、外枠ケース51は直方体に近い形状に形成されており、仕切部材53は板状に形成されている。
図2の紙面左右方向を「第1方向」とし、紙面に垂直な方向を「第2方向」とすると、本実施形態の仕切部材53は、外枠ケース51の第1方向略中央に位置し、かつ、第2方向に延びている。そして、仕切部材53の第2方向両端部分は、外枠ケース51の内壁52に接している。一方、仕切部材53の上端と外枠ケース51の内壁52との間には隙間が形成されており、この隙間が上述した気体接続口42を構成している。同様に、仕切部材53の下端と外枠ケース51の内壁52との間には隙間が形成されており、この隙間が上述した液体接続口46を構成している。
【0035】
循環装置35は、貯水部47の洗浄液を汲み上げて洗浄部33の噴射ノズル39に供給する装置である。循環装置35は、貯水部47と噴射ノズル39をつなぐ循環配管54と、循環配管54に設けられた循環ポンプ55とによって主に構成されている。また、循環配管54には、pH計56と、SO
4イオン計57が設けられている。そして、洗浄冷却装置31は、pH計56、SO
4イオン計57、及び前述したレベル計48の測定値に基づいて、貯水部47の水位が液体エリア37と液体エリア41の液体接続口46の上端部よりも常に上方に位置するように(つまり、洗浄液の水面が液体接続口46の上端部よりも低くなって、洗浄部33の気体エリア36の排気ガスの一部が、液体接続口46を介して(熱交換器43及びミストキャッチャ44をバイパスして)冷却部34の気体エリア40に流入しないように)、pH値が所定の範囲内となるように、及び、SO
4イオン濃度が一定以下となるように、中和剤投入装置49からの中和剤の投入量、清水供給装置50からの清水の供給量、及び廃水処理ユニット60へ出入りする洗浄液の量を制御するよう構成されている。なお、具体的な制御方法についての説明は省略する。
【0036】
以上のように、本実施形態では、外枠ケース51内において、洗浄部33の液体エリア37と冷却部34の液体エリア41とが直接接続されており、両液体エリア37、41によって一体に構成される貯水部47の洗浄液を汲み上げて噴射ノズル39から噴射している。そのため、噴射ノズル39から噴射する洗浄液をサージタンク等から汲み上げる必要がないため、EGRユニット30にサージタンク等が不要となり、EGRユニット30をコンパクトに構成することができる。これにより、エンジン10によっては、本実施形態に係るEGRユニット30を搭載することも可能となる。
【0037】
また、本実施形態のEGRユニット30は、サージタンクを有しておらず、外枠ケース51内において、洗浄液は洗浄部33及び冷却部34の下方に位置する貯水部47に一体に溜められているため、EGRユニット30内を循環する洗浄液の量を抑えることができる。そのため、中和剤の投入等によるpH値の応答反応は速く、洗浄液のpH値を適切な範囲で維持することができる。また、冷却部34で発生した凝縮水には中和剤が存在していないため、洗浄後にわずかに残った硫黄分が溶け込んでしまう結果、通常は凝縮水のpH値は、洗浄部33において排気ガスと反応した後の洗浄液のpH値よりも低くなる。このように冷却部34の凝縮水と洗浄部33の洗浄液のpH値が異なっても、本実施形態では貯水部47が一体となっているため、両液体がすぐに混合され、一括でpH値の制御を行うことができる。その結果、エンジン10に再循環させる排気ガス中のSOxの除去を効率よく行うことができる。また、循環装置35の循環配管54を通過する洗浄液のpH値は低くなりすぎないため、循環配管54に過度な耐食対策を施す必要もない。さらに、例えば使用した洗浄液を廃水処理ユニット60から海へ排出する場合、EGRユニット30から廃水処理ユニット60へ搬送される洗浄液は、海へ排出する際のpH値の基準(廃水基準)を問題なくクリアできると考えられる。そのため、廃水処理ユニット60で中和処理を行う必要がない。
【0038】
また、洗浄部33の噴射ノズル39から噴射する洗浄液は、洗浄部33に溜められた洗浄液を利用するため、循環配管54の入口側の部分と出口側の部分で大きな圧力差は生じない。そのため、循環装置35の循環ポンプ55を大型化する必要もなく、消費電力も抑えることができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、
図3を参照して、第2実施形態について説明する。本実施形態に係るエンジンシステム200は、洗浄部33による洗浄方式がスプレー式と溜水式を組み合わせたものである以外は、第1実施形態のエンジンシステム100と基本的に同じである。以下では、本実施形態に係る洗浄冷却装置31を中心に説明する。
【0040】
図3は、本実施形態に係る洗浄冷却装置31の概略図である。本実施形態に係る洗浄冷却装置31の洗浄部33は液体エリア導入通路58を有している。液体エリア導入通路58は、洗浄部33に形成された流入口38から液体エリア41の洗浄液の中まで延びており、洗浄部33に流入した全ての排気ガスを液体エリア41へ導くことができる。液体エリア導入通路58の流入口38付近には噴射ノズル39が設けられており、噴射ノズル39は洗浄部33(液体エリア導入通路58)に流入した排気ガスに洗浄液を噴射する。なお、噴射ノズル39から噴射される洗浄液は、貯水部47から汲み上げられたものである。そして、洗浄液が噴射された排気ガスは、液体エリア導入通路58の内部を通って、液体エリア37の洗浄液中に放出される。これにより、排気ガスはさらに液体エリア37に溜められた洗浄液によって洗浄されることになる。
【0041】
このように、洗浄部33は液体エリア37にある程度の量の洗浄液を溜めているため、この溜められた洗浄液を用いて、スプレー方式のみならず溜水方式による洗浄を同時に行うことができる。そのため、本実施形態に係るエンジンシステム200では、より効率よく排気ガスの洗浄を行うことが可能となる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、洗浄部33における洗浄方式が、スプレー方式や溜水方式以外の方式であっても、本発明に含まれる。
【0043】
また、上述した実施形態では、洗浄部33の液体エリア37と冷却部34の液体エリア41が、外枠ケース51と仕切部材53の隙間を介して直接接続されていたが、他の形態によって直接接続されていてもよい。例えば、外枠ケース51と仕切部材53の間には隙間はない一方、仕切部材53には貫通穴が形成されており、この貫通穴を介して両液体エリア37、41が直接接続されていても本発明に含まれる。また、同様に外枠ケース51と仕切部材53の間には隙間はない一方、両液体エリア37、41が短いパイプで繋がっており、このパイプを介して両液体エリア37、41が直接接続されていても本発明に含まれる。
【0044】
さらに、外枠ケース51の内部では洗浄部33と冷却部34が連通しないようにして仕切部材53を設けるとともに、両気体エリア36、40を連通させる配管やダクト等と、両液体エリア37、42を連通させる配管やダクト等を外枠ケース51の外側に設けてもよい。また、仕切り板53の下端によって完全に洗浄部33の液体エリア37と冷却部34の液体エリア41の間を封鎖した上で、噴射ノズル39につながる配管と、液体エリア37と、液体エリア41とに接続されるY字配管を設けてもよい。かかる構成によれば、両液体エリア37、41の液体をY字配管内で合流させ、合流させた液体を噴射ノズル39に供給することができる。いずれの場合であっても、貯水部47は、洗浄部33の液体エリア37と冷却部34の液体エリア41によって形成されているといえる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る洗浄冷却装置をEGRユニットが備えることで、サージタンクのないEGRユニットを構成することができる。よって、EGRユニットの技術分野において有益である。
【符号の説明】
【0046】
10 エンジン
30 EGRユニット
31 洗浄冷却装置
33 洗浄部
34 冷却部
36 気体エリア
37 液体エリア
39 噴射ノズル
40 気体エリア
41 液体エリア
51 外枠ケース
52 内壁
53 仕切部材
100、200 エンジンシステム