(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一ガス化剤供給口が、上下に対向して隣接する二つの前記第一羽根部のうち、上側の前記第一羽根部に近接して設けられている請求項1に記載のバイオマスガス化装置。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーの利活用に対する関心が高まる中、再生可能エネルギーの一つであるバイオマスのエネルギー利用が注目されている。
【0003】
バイオマスのエネルギー利用は種々の形態が存在するが、その一つとして、バイオマスから水性ガスを生成して発電から熱供給までを行うことが提案されている。
【0004】
バイオマスから水性ガスを生成するためには、まずバイオマスを炭化する必要があるところ、例えば特許文献1には、略円筒形の本体と本体に収容された円筒体とを含む炭化炉が開示されている。
【0005】
また、炭化したバイオマスから水性ガスを生成するためには、熱分解によって熱分解・ガス化する必要があるところ、例えば特許文献2には、筒状の外筒と、内筒と、ターンテーブルと、蓄熱性突起とを備える熱分解ガス化装置が開示されている。
【0006】
上述のように、バイオマスから水性ガスを生成するためには、大きく分けてバイオマスを炭化させる工程と炭化したバイオマスを熱分解・ガス化させる工程の2つの工程があり、従来はそれぞれの工程に応じて、上述のような装置が別々に提案されていた。
【0007】
しかしながら、バイオマスを炭化させる工程と炭化したバイオマスを熱分解・ガス化させる工程とに応じて装置が別々となっていることにより、大きな熱的損失が生じていた他、バイオマスを炭化させる工程で生じた熱によって熱分解・ガス化炉の温度を上昇させる場合においてその温度を安定させるまでに長い時間を要し、また、熱分解・ガス化炉の温度分布を均一とすることが困難であった。
【0008】
さらに、炭化したバイオマスを熱分解・ガス化させた後の反応残渣が装置の内部に固着することを防止する技術が求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るバイオマスガス化装置の一実施形態を詳細に説明する。
【0019】
まず、有機廃棄物を炭化させて炭化物を得るための構成について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るバイオマスガス化装置100を示した部分断面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る第一円筒体114及び第一切り出し部材115を示した斜視図である。
【0021】
バイオマスガス化装置100は、本体110と、第一円筒体114と、第一切り出し部材115とを備えている。
【0022】
本体110は、バイオマスガス化装置100の本体であり、支持部材180によって立設されている。本体110の形状は特に限定されないが、筒状であるとより好ましい。ここでいう筒状とは、略円筒形を指す。
【0023】
本体110の大きさについては特に限定されず、処理する有機廃棄物の量や生成する炭化物の量に応じて適宜選択して良い。本体110を構成する材料についても特に限定されず、公知の材料、例えば、ステンレスを用いることができる。
【0024】
本体110は、有機廃棄物の投入口150と、空気供給口152と、空気供給口154と、排気口141と、排出口156と、バーナー(図示せず)とを備えている。
【0025】
有機廃棄物は、投入口150から本体110の内部へ投入される。投入口150は、
図1に示されるように、筒状部材111によって構成されても良い。また、有機廃棄物を本体110の内部へ安定的に投入するため、例えば、有機廃棄物を本体110の内部へ搬送するためのベルトコンベア機構を筒状部材111の内部に設けても良い。
【0026】
有機廃棄物(バイオマス)とは、炭素を含む廃棄物である。具体的には、食品廃棄物、建築廃材、シュレッダーダスト、畜産廃棄物、間伐材、剪定枝、製材くず、竹、刈り草のような樹木製の廃材、汚泥、稲藁、家庭から排出される一般廃棄物が挙げられる。有機廃棄物は、炭化の効率や炭化物の収率を高くするため、あらかじめ乾燥機などで乾燥させた上でその含水率が適切に調整されていることが好ましい。
【0027】
有機廃棄物を燃焼させる際に用いられる空気は、空気供給口152及び空気供給口154から本体110の内部へ供給される。空気供給口152及び空気供給口154の具体的な大きさ及び形状については特に限定されない。また、空気供給口152及び空気供給口154は、それぞれ筒状部材112及び筒状部材113によって構成されても良く、また、それぞれ本体110の内部へ空気を送り込むための送風機を備えても良い。
【0028】
有機廃棄物を燃焼させる際に生じる熱分解ガス(混合ガス)は、二次燃焼された上で、本体110の上端近傍に設けられている排気口141から本体110の外部へ排気される。この二次燃焼によって得られた熱は、第一シリンダー126を加熱するための熱源として用いられる他、例えば、過熱蒸気発生装置へ供給した上で水蒸気を生成するために用いることができる。
【0029】
バーナーは、本体110の内部へ投入された有機廃棄物に着火するためのものである。バーナーは、有機廃棄物に着火することができればどの位置に設けられても良いが、投入口115より下方に設けられていることが好ましい。
【0030】
バイオマスガス化装置100は、蓄熱性を有する第一円筒体114を本体110の内部に備えている。第一円筒体114は、
図2において符号200で示される筒状の軸部を備えている略円柱状の部材であり、本体110の内部において有機廃棄物を炭化させる際、いわゆる焼き玉として機能する。また、第一円筒体114は、周囲に存在する炭化物に対して輻射熱を与えて炭化を促進させる。第一円筒体114は、それ自体を加熱するための加熱装置を備えていても良いが、有機廃棄物を燃焼させる際に生じる熱及び熱分解ガスを二次燃焼することで得られた熱によって加熱されることが好ましい。
【0031】
第一円筒体114は、第一円筒体114の底面及び天井面の中心を通る垂直を軸として回転可能であることが好ましい。第一円筒体114が回転することにより、第一円筒体114の周囲が均一に加熱されるため、炭化効率が向上する他、炭化物の純度が向上する。第一円筒体114を回転させるための手段は特に限定されず、例えば、第一円筒体114の底面中心から下方へ回転軸に沿って延伸するような軸部材を設け、その軸部材を公知の手段によって回転させて良い。
【0032】
第一円筒体114の下部には、
図2において符号200で示される筒状の軸部を備えている略円盤状で回転可能な第一切り出し部材115が設けられている。第一切り出し部材115は、本体110の内部で生成された炭化物を受ける受盤であり、その外周部が本体110の内面との間に隙間を設けるようにして設けられている。第一切り出し部材115が回転することにより、その上面において受けた炭化物を本体110の内面との間の隙間から下方へ落下させる。炭化物が塊となっている場合等は、本体110の内面との間の隙間において炭化物を破砕することが好ましい。第一切り出し部材115は、第一円筒体114と一体的に連結された上で第一円筒体114とともに回転しても良く、第一円筒体114とは別に独立して回転しても良い。
【0033】
第一切り出し部材115から落下した炭化物は、排出口156を通って本体110の外部へ排出され、投入口161から第二シリンダー118の内部へ投入される。なお、炭化物を排出口156から効率良く排出するため、例えば、第一切り出し部材115とともに回転して炭化物を掻き出すスクレーパー状部材を第一切り出し部材115の下部に設けても良い。
【0034】
本体110の内部は、概念的に、燃焼領域130Aと、炭化領域130Bと、精練領域130Cと、消火領域130Dとに区分けすることができる。燃焼領域130Aは大よそ、本体110の内部における天井面から空気供給口152の高さまでの領域を指し、炭化領域130Bは大よそ、空気供給口152の高さから第一円筒体114の上端の高さまでの領域を指し、精練領域130Cは大よそ、第一円筒体114の上面の高さから第一円筒体114の中間の高さまでの領域を指し、消火領域130Dは大よそ、第一円筒体114の中間の高さから第一円筒体114の底面の高さまでの領域を指す。
【0035】
燃焼領域130Aは、有機廃棄物が燃焼した際に発生する、H(水素)、CO(一酸化炭素)、CO2(二酸化炭素)、S(硫黄)、N(窒素)等を含む熱分解ガス(混合ガス)を溜める領域であり、また、熱分解ガスを二次燃焼させる領域である。なお、この燃焼領域130Aを形成するため、空気供給口152は、本体110の上端よりも低い位置に設けられることが好ましい。
【0036】
炭化領域130Bは、投入口150から本体110の内部へ投入された有機廃棄物を燃焼ガスに接触させて燃焼・炭化させる領域である。有機廃棄物はここで燃焼・炭化され、炭化物を多く含む固形分と熱分解ガスとが生成される。
【0037】
精練領域130Cは、有機廃棄物を燃焼させる際に生じる熱及び熱分解ガスを二次燃焼することで得られた熱によって加熱された第一円筒体114から発せられる輻射熱を炭化領域130Bから移動してきた炭化物に対して与え、炭化物の中に存在している熱分解ガスを燃焼させて不純物を除去する領域であり、また、空気を供給しつつ炭化物を高温の状態で維持して炭化を進行させる領域である。なお、この精練領域130Cを形成するため、空気供給口154は、第一円筒体114の天井面から第一円筒体114の中間までの高さに設けられることが好ましい。
【0038】
消火領域130Dは、精練領域130Cから移動してきた炭化物を遮断された空気によって消火する領域である。
【0039】
次に、炭化物を熱分解・ガス化させて水性ガスを生成するための構成について説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係るバイオマスガス化装置100を示した部分断面図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る第一スクリューコンベア122を示した正面図である。
図4は、本発明の一実施形態に係る第一スクリューコンベア122を示した断面図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る第二円筒体123及び第二切り出し部材124を示した斜視図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る第二円筒体123及び第二切り出し部材124を示した断面図である。
図7は、本発明の他の実施形態に係る第二円筒体123及び第二切り出し部材124を示した断面図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る第二スクリューコンベア120を示した正面図である。
図9は、本発明の一実施形態に係る第二スクリューコンベア120を示した断面図である。
【0041】
バイオマスガス化装置100は、第一シリンダー126と、第一シリンダー126の内部において回転可能な第一スクリューコンベア122と、第二円筒体123と、第二切り出し部材124と、第二シリンダー118と、第二シリンダー118の内部において回転可能な第二スクリューコンベア120とを備えている。
【0042】
第一シリンダー126は筒状に構成されており、本体110、第一円筒体114及び第一切り出し部材115を軸方向に貫通するようにして設けられている。熱分解・ガス化炉としての第一シリンダー126がこのように設けられていることにより、第一シリンダー126は本体110の内部において有機廃棄物を燃焼させる際に生じる熱及び熱分解ガスを二次燃焼することで得られた熱によって迅速且つ均一に加熱される。また、熱分解・ガス化炉としての第一シリンダー126がこのように設けられていることにより、第一シリンダー126は、本体110の内部において有機廃棄物を燃焼させる際に生じる熱及び熱分解ガスを二次燃焼することで得られた熱によって少ない熱的損失で直接的に加熱される。さらに、熱分解・ガス化炉としての第一シリンダー126がこのように設けられていることにより、蓄熱性を有する第一円筒体114は、本体110の内部において有機廃棄物を炭化させる際にいわゆる焼き玉として機能し、また、周囲に存在する炭化物に対して輻射熱を与えて炭化を促進させるだけでなく、熱分解・ガス化炉としての第一シリンダー126を加熱させて且つその温度を保持する加熱・保温部材としても機能する。
【0043】
第一シリンダー126の上端は閉止しており、下端は排出口163を備えて開口している。排出口163は、第一シリンダー126の内部において炭化物が熱分解・ガス化された際に生じる水性ガスと反応残渣である灰分とを排出するためのものである。
【0044】
第一スクリューコンベア(反応撹拌スクリューコンベア)122は、第一シリンダー126の内部に同軸に設けられている。
【0045】
図3に示されるように、第一スクリューコンベア122は、第一軸部300と、第一軸部300の周りに螺旋状に延びる第一羽根部301を備えている。第二シリンダー118との連通部から第一シリンダー126の内部へ到達した炭化物は、第一スクリューコンベア122が回転することにより、第一シリンダー126の内部を第二円筒体123の方向へ移動する。ここで、第一スクリューコンベア122の回転に伴って第一羽根部301が炭化物及び反応残渣を掻き出すように作用するため、炭化物及び反応残渣が第一シリンダー126の内部において固着することがない。第一軸部300には、第一シリンダー126の内部を移動する炭化物に対してガス化剤を供給する第一ガス化剤供給口190が設けられている。第一ガス化剤供給口190の数は特に限定されないが、第一シリンダー126の内部を移動する炭化物に対してガス化剤を十分に供給するため、適宜間隔をあけて複数個設けられることが好ましい。第一ガス化剤供給口190を設ける位置についても特に限定されないが、第一スクリューコンベア122の回転に伴って炭化物が第一シリンダー126の内面に擦りつけられながら移動すること、また、炭化物が第一羽根部301の上面を滑りながら移動することを考慮すると、第一ガス化剤供給口190は
図3において符号302で示されるように、上下に対向して隣接する二つの第一羽根部301のうち上側の羽根部に近接して設けられることがより好ましい。
【0046】
第一ガス化剤供給口190を設ける位置について
図3を参照しながら具体的に説明すると、第一ガス化剤供給口190Aは、上下に対向して隣接する第一羽根部301U及び第一羽根部301Lのうち、上側の羽根部である第一羽根部301Uに近接する位置、つまり、符号302Aで示される位置に設けられることが好ましい。第一ガス化剤供給口190をこのような位置に設けることにより、第一シリンダー126の内部を移動する炭化物によって第一ガス化剤供給口190が目詰まりすることがより効果的に防止される。
【0047】
図4に示されるように、第一スクリューコンベア122は、第一スクリューコンベア122の内部にガス化剤を導入する第一ガス化剤導入口400を上端に備えている。また、第一スクリューコンベア122は、第一ガス化剤導入口400から導入されたガス化剤を第一ガス化剤供給口190へ移動させるための第一ガス化剤通路402を備えている。さらに、第一スクリューコンベア122は、下端が開口401を備えて開口しており、第一ガス化剤通路402と第一スクリューコンベア122の下部に設けられる第二円筒体123の内部とが連通するように構成されている。第一ガス化剤通路402の直径については特に限定されず、第一シリンダー126の内部を移動する炭化物に対して供給するガス化剤の量や第二円筒体123の内部に送出するガス化剤の量に応じて適宜選択して良い。
【0048】
第一スクリューコンベア122の大きさについては特に限定されないが、第一シリンダー122の内面との間には、熱による膨張を考慮した隙間を設けることが好ましい。第一スクリューコンベア122の材料についても特に限定されず、公知の材料、例えば、SUS310Sなどのステンレスを用いることができる。
【0049】
第一スクリューコンベア122の下部には、蓄熱性を有する第二円筒体(滞流反応シリンダー)123が設けられている。第二円筒体123は略円柱状の部材であり、第一シリンダー126の断面積を狭めることによって、炭化物が第二円筒体123の側面を通過する際に滞流しやすくなるように構成されている。第二円筒体123は、第一シリンダー126の内部において炭化物を熱分解・ガス化させる際にいわゆる焼き玉として機能する他、周囲に存在する炭化物に対して輻射熱を与えて熱分解・ガス化を促進させる。第二円筒体123は、それ自体を加熱するための加熱装置を備えていても良いが、本体110の内部において有機廃棄物を燃焼させる際に生じる熱及び熱分解ガスを二次燃焼することで得られた熱によって加熱されることが好ましい。
【0050】
第二円筒体123は、第二円筒体123の底面及び天井面の中心を通る垂直を軸として回転可能であることが好ましい。第二円筒体123が回転することにより、第二円筒体123の周囲が均一に加熱されるため、熱分解・ガス化効率が向上する。第二円筒体は、第一スクリューコンベア122と一体的に連結された上で第一スクリューコンベア122とともに回転しても良く、第一スクリューコンベア122とは別に独立して回転しても良い。
【0051】
図5に示されるように、第二円筒体123の上面には、第一スクリューコンベア122が備える開口401に対応する開口500が設けられている。また、第二円筒体123の側面には、周囲に存在する炭化物に対してガス化剤を供給する第三ガス化剤供給口192が設けられている。第三ガス化剤供給口192の数及び第三ガス化剤供給口192を設ける位置については特に限定されないが、周囲に存在する炭化物に対してガス化剤を十分に供給するため、第二円筒体123の側面の全周に亘って複数個設けられることが好ましい。
【0052】
図6に示されるように、第二円筒体123は、開口401及び開口500を介して第一ガス化剤通路402と連通する内部空間600を備えている。第一ガス化剤導入口400から導入され、第一ガス化剤通路402を介して内部空間600へ送出されたガス化剤は、第三ガス化剤供給口192を通って、第二円筒体123の周囲に存在する炭化物へ供給される。
【0053】
第二円筒体123の下部には、略円盤状で回転可能な第二切り出し部材124が設けられている。第二切り出し部材124は、第一シリンダー126の内部において炭化物が熱分解・ガス化された際に生じる灰分(反応残渣)を受ける受盤であり、その外周部が第一シリンダー126の内面との間に隙間を設けるようにして設けられている。第二切り出し部材124が回転することにより、その上面において受けた灰分を第一シリンダー126の内面との間の隙間から下方へ落下させる。灰分が塊となっている場合等は、第一シリンダー126の内面との間の隙間において灰分を破砕しても良い。第二切り出し部材124は、第二円筒体123と一体的に連結された上で第二円筒体123とともに回転しても良く、第二円筒体123とは別に独立して回転しても良い。
【0054】
第二切り出し部材124から落下した灰分は、排出口163を通って第一シリンダー126の外部へ排出される。なお、配分を排出口163から効率良く排出するため、例えば、第二切り出し部材163とともに回転して灰分を掻き出すスクレーパー状部材を第二切り出し部材124の下部に設けても良い。
【0055】
第二切り出し部材124は、中実に構成されても良く、
図7に示されるように内部空間700を備えて中空に構成されても良い。第二切り出し部材124が内部空間700を備える場合、内部空間700を内部空間600に連通させることにより、第一ガス化剤導入口400から導入されるガス化剤の量を増加させることができる。
【0056】
第二シリンダー(炭化物搬送シリンダー)118は筒状に構成されている。第二シリンダー118は、一端が第一シリンダー126の上端近傍において第一シリンダー126と連通しており、他端の近傍には、排出口156から排出された炭化物を第二シリンダー118の内部へ投入する投入口161が設けられている。
【0057】
第二スクリューコンベア(破砕スクリューコンベア)120は、第二シリンダー118の内部において同軸に設けられている。
【0058】
図8に示されるように、第二スクリューコンベア120は、第二軸部800と、第二軸部800の回りに螺旋状に延びる第二羽根部801を備えている。第二スクリューコンベア120が回転することにより、投入口161から投入された炭化物は、第一シリンダー126との連通部の方向へ第二シリンダー118の内部を移動する。ここで、第二スクリューコンベア120の回転に伴って第二羽根部801が炭化物及び反応残渣を掻き出すように作用するため、炭化物及び反応残渣が第二シリンダー118の内部において固着することがない。第二軸部801には、第二シリンダー118の内部を移動する炭化物に対してガス化剤を供給する第二ガス化剤供給口191が設けられている。第二ガス化剤供給口191の数は特に限定されないが、第二シリンダー118の内部を移動する炭化物に対してガス化剤を十分に供給するため、適宜間隔をあけて複数個設けられることが好ましい。第二ガス化剤供給口191を設ける位置についても特に限定されず、適宜選択して良い。
【0059】
ここで、第一シリンダー126の内部において炭化物をより効率的に熱分解・ガス化させるためには、炭化物を十分に破砕してその表面積を大きくしておくことが好ましい。そのため、第二スクリューコンベア120は、投入口161から投入された炭化物を第一シリンダー126との連通部の方向へ破砕しながら移動させることが好ましい。この場合、第二羽根部801は、リボン型に構成されたいわゆるリボンスクリューであることが好ましい。第二羽根部801は、支持部材802によって支持されて良い。支持部材802の大きさ、形状及び材料については特に限定されず、粉砕の度合いや必要となる強度等に応じて適宜選択して良い。
【0060】
図9に示されるように、第二スクリューコンベア120は、第二スクリューコンベア120の内部にガス化剤を導入する第二ガス化剤導入口900を一端に備えている。また、第二スクリューコンベア120は、第二ガス化剤導入口900から導入されたガス化剤を第二ガス化剤供給口191へ移動させるための第二ガス化剤通路902を備えている。第二ガス化剤通路902の直径については特に限定されず、第二シリンダー118の内部を移動する炭化物に対して供給するガス化剤の量に応じて適宜選択して良い。なお、第二スクリューコンベア120の他端は、開口901を備えて開口するように構成されても良い。
【0061】
以上説明した本発明の一実施形態に係るバイオマスガス化装置100の動作について、以下、説明する。
【0062】
本発明の一実施形態に係るバイオマスガス化装置100は、以下の工程に基づいて動作する。
(1)有機廃棄物を投入する工程
(2)有機廃棄物を燃焼・炭化させる工程
(3)炭化した有機廃棄物を消火する工程
(4)消火した炭化物を排出する工程
(5)排出した炭化物を投入する工程
(6)投入した炭化物を破砕する工程
(7)破砕した炭化物を熱分解・ガス化させる工程
(8)生成した水性ガス・反応残渣を排出する工程
【0063】
(1)有機廃棄物を投入する工程
有機廃棄物を投入口150から本体110の内部へ投入する。
【0064】
(2)有機廃棄物を燃焼・炭化させる工程
投入口150から本体110の内部へ投入された有機廃棄物を炭化領域130Bにおいて燃焼・炭化させる。具体的には、バーナー等によって有機廃棄物に着火するとともに空気供給口152から本体110の内部へ空気を供給して有機廃棄物を燃焼させる。有機廃棄物を燃焼させると、炭化物を多く含む固形分と熱分解ガスとが生成される。炭化物を多く含む固形分は精練領域130Cへ移動し、熱分解ガスは燃焼領域130Aへ移動して二次燃焼される。この二次燃焼によって得られた熱は、第一円筒体114を加熱する他、少ない熱的損失で第一シリンダー126を迅速且つ均一に加熱する。精練領域130Cへ移動した炭化物を多く含む固形分の内部には熱分解ガスが存在しているため、このまま消火されると、炭化物に含まれる不純物が多くなり、また、炭化物の収量が低下するおそれがある。そこで、本工程では、空気供給口154から空気を供給するとともに第一円筒体114から輻射熱を与えることによって、炭化物を多く含む固形分の内部に存在している熱分解ガスの燃焼を促進させて炭化を促進させる。これにより、炭化物を多く含む固形分の内部に存在している熱分解ガスを除去することができる。このとき、第一円筒体114が回転することにより、第一円筒体114の周囲が均一に加熱され、炭化が均一に促進される。本工程では、投入口150付近及び燃焼領域130Aの温度を800℃から1000℃とすることが好ましく、精練領域130Cの温度を600℃から800℃程度とすることが好ましい。なお、燃焼領域130Aでの熱分解ガスの滞留時間を2秒以上とすると、ダイオキシンの発生を低減できる。
【0065】
(3)炭化した有機廃棄物を消火する工程
精練領域130Cにおいて炭化物を多く含む固形分を十分に炭化させて得られた炭化物は、消火領域130Dへ移動する。この消火領域130Dは低酸素雰囲気であるため、消火領域130Dへ移動した炭化物は消火される。
【0066】
(4)消火した炭化物を排出する工程
消火領域130Dにおいて消火された炭化物は、第一切り出し部材115の外周部と本体110の内面との間に設けられている隙間から下方へ落下し、排出口156から本体110の外部へ排出される。
【0067】
(5)排出した炭化物を投入する工程
排出口156から本体110の外部へ排出された炭化物を、投入口161から第二シリンダー118の内部へ投入する。ここで、排出口156から投入口161へ炭化物を搬送する手段は特に限定されず、バケットコンベア等、公知の手段を用いて良い。
【0068】
(6)投入した炭化物を破砕する工程
投入口161から第二シリンダー118の内部へ投入された炭化物は、第二スクリューコンベア120が回転することによって第一シリンダー126との連通部の方向へ移動される。このとき、投入口161から第二シリンダー118の内部へ投入された炭化物は、第一シリンダー126との連通部の方向へ破砕されながら移動されることが好ましい。また、投入口161から第二シリンダー118の内部へ投入された炭化物は、第一シリンダー126との連通部の方向へ移動される間も、後述する水性ガス化反応及び水性ガスシフト反応が進行することが好ましい。ここで、第二シリンダー118は第一シリンダー126と連通しているため、第二シリンダー118の内部は、第一シリンダー126の内部と同様の高温となっている。また、ガス化剤としての水蒸気は、第二ガス化剤導入口900から第二スクリューコンベア120の内部へ導入され、第二ガス化剤通路902を通って第二ガス化剤供給口191から噴出し、第二シリンダー118の内部を移動する炭化物へ供給される。
【0069】
(7)破砕した炭化物を熱分解・ガス化させる工程
第二スクリューコンベア120の回転によって第一シリンダー126の内部に到達した炭化物は、第一スクリューコンベア122が回転することによって第一シリンダー126の内部を第二円筒体123の方向へ移動し、その間、水性ガス化反応(C+H
2O→CO+H
2−28.36kcal/mol)及び水性ガスシフト反応(CO+H
2O→CO
2+H
2+9.85kcal/mol)が連続して進行する。このとき、第一スクリューコンベア122の回転に伴って炭化物が第一シリンダー126の内面に擦りつけられながら移動するため、第一シリンダー126によって炭化物が直接的に加熱され、熱分解・ガス化が促進される。ここで、第一シリンダー126は、本体110の内部において有機廃棄物を燃焼させる際に生じる熱及び熱分解ガスを二次燃焼することで得られた熱によって加熱されている。また、第一スクリューコンベア122の回転に伴って炭化物が第一羽根部301の上面を滑るように移動するため、第一羽根部301によって炭化物が直接的に加熱され、熱分解・ガス化が促進される。ここで、第一羽根部301は、本体110の内部において有機廃棄物を燃焼させる際に生じる熱、熱分解ガスを二次燃焼することで得られた熱及び第一シリンダー126から発せられる輻射熱によって加熱されている。ガス化剤としての水蒸気は、第一ガス化剤導入口400から第一スクリューコンベア122の内部へ導入され、第一ガス化剤通路402を通って第一ガス化剤供給口190から噴出し、第一シリンダー126の内部を移動する炭化物へ供給される。その結果、水素(H
2)、一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO
2)の成分を含む熱分解ガス(水性ガス)が生成される。一般的に、低温(750℃から800℃)では、発熱反応である水性ガスシフト反応が促進され、高カロリーの一酸化炭素が消費されて低カロリーの水素が生成されるので、単位体積当たりの発熱量が小さい水素リッチな熱分解ガスが生成される。また、一般的に、高温(900℃から950℃)では、一酸化炭素リッチな熱分解ガスが生成される。さらに、ガス化剤としての水蒸気の供給量が多いほど、熱分解ガス中のH
2/CO比が高くなる。第二円筒体123の付近に到達した炭化物は、第二円筒体123から発せられる輻射熱及び第三ガス化剤供給口192から噴出する水蒸気によって熱分解・ガス化がさらに促進される。このとき、第二円筒体123が回転することにより、第二円筒体123の周囲が均一に加熱され、熱分解・ガス化が均一に促進される。
【0070】
(8)生成した水性ガス・反応残渣を排出する工程
第一シリンダー126の内部において炭化物を熱分解・ガス化することで得られた水性ガスは、排出口163から取り出される。また、第一シリンダー126の内部において炭化物を熱分解・ガス化した後に生じる灰分(反応残渣)は、第二切り出し部材124の外周部と第一シリンダー126の内面との間に設けられている隙間から下方へ落下し、排出口163から第一シリンダー126の外部へ排出される。気体である水性ガスと固体である反応残渣とは、例えば、サイクロンによって分離されて良い。
【0071】
次に、本発明の他の実施形態に係る第一スクリューコンベア122について説明する。
【0072】
図10は、本発明の他の実施形態に係る第一スクリューコンベア122を示した正面図である。図示されるように、第一スクリューコンベア122が備える第一羽根部301は、第一軸部300の軸方向における複数の箇所に分散して設けられている。第一羽根部300がこのように複数の箇所に分散して設けられていることにより、第一羽根部300が設けられていない範囲においては、炭化物が第一シリンダー126の内部を迅速に移動する。そのため、第一羽根部301を第一軸部300の軸方向における複数の箇所に適宜分散して設けることにより、炭化物が第一シリンダー126の内部を移動する時間、即ち、炭化物を熱分解・ガス化させる時間を適宜調節することができる。また、炭化物が第一シリンダー126の内面に擦りつけられながら熱分解・ガス化される箇所は、第一羽根部300が設けられている箇所である。そのため、第一羽根部301が設けられている箇所が互いに重複しない複数の第一スクリューコンベア122を用意した上でそれらの第一スクリューコンベア122を一定期間毎にローテーションして使用することにより、炭化物が第一シリンダー126の内面に擦りつけられながら熱分解・ガス化される箇所が第一シリンダー126の内面における特定の箇所に集中することを防ぐことができ、ひいては第一シリンダー126のロングライフ化が可能となる。
【0073】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能であることは言うまでもない。
【0074】
例えば、第一スクリューコンベア122が備える第一ガス化剤供給口190は、第一羽根部301の下面(裏面)に設けても良い。第一シリンダー126の内部を移動する炭化物は、第一スクリューコンベア122の回転に伴って第一シリンダー126の内面に擦りつけられながら移動し、また、第一羽根部301の上面を滑りながら移動することから、第一ガス化剤供給口190を第一羽根部301の下面(裏面)に設けることにより、第一シリンダー126の内部を移動する炭化物によって目詰まりすることがより効果的に防止される。
バイオマスを炭化した上で水性ガスを生成するバイオマスガス化装置であって、少ない熱的損失で熱分解・ガス化炉の温度を迅速・均一に安定化することができ、且つ、熱分解・ガス化させた後の反応残渣が装置の内部に固着することを防止したバイオマスガス化装置である。バイオマスガス化装置は、本体と、第一円筒体と、第一切り出し部材と、第一シリンダーと、第一スクリューコンベアと、第二円筒体と、第二切り出し部材と、第二シリンダーと、第二スクリューコンベアとを備える。第一シリンダーは、本体、第一円筒体及び第一切り出し部材を軸方向に貫通するようにして設けられ、第一スクリューコンベア、第二スクリューコンベア及び第二円筒体は、それぞれガス化剤供給口を備える。