【文献】
Cancer Lett., 2011, Vol. 312, No. 2, pp. 228-234
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蛍光標識オリゴヌクレオチドは、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少するかまたは増加する、請求項1記載のプローブ。
前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少する、請求項2記載のプローブ。
請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法によりabl遺伝子における多型を検出する工程、および多型の有無に基づいて抗白血病薬に対する耐性または抗白血病薬の薬効を判定する工程を含む、抗白血病薬に対する耐性または抗白血病薬の薬効の判定方法。
さらに、abl遺伝子の配列番号1に示す塩基配列におけるP1のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域を増幅するためのプライマーを含む、請求項9に記載の試薬キット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、abl遺伝子における点突然変異のT1076G (F359C)、T757C (Y253H)、A764T(E255V)、およびG895C/T (V299L)を検出するのに有効な検出用プローブを特定し、abl遺伝子における点突然変異のT1076G (F359C)、T757C (Y253H)、A764T (E255V)、およびG895C/T (V299L)を検出する方法、ならびにそのための試薬キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、abl遺伝子における点突然変異のT1076G (F359C)、T757C (Y253H)、A764T (E255V)、およびG895C/T (V299L)を含む特定の領域に基づいてプローブを設計し、該プローブを用いるTm分析を行うことにより当該変異部位における多型を検出できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)abl遺伝子の多型を検出するためのプローブであって、下記P1〜P9から選択される少なくとも1種の蛍光標識オリゴヌクレオチドからなることを特徴とする多型検出用プローブ。
(P1)配列番号1または2に示す塩基配列において塩基番号125〜133を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号125に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド、
(P2)配列番号3または4に示す塩基配列において塩基番号135〜146を含む12〜
50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号146に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド、
(P3)配列番号3または4に示す塩基配列において塩基番号135〜144を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号144に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド、
(P3’)配列番号3または5に示す塩基配列において塩基番号142〜144を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号144に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド、
(P4)配列番号3または4に示す塩基配列において塩基番号134〜135を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号134に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド、
(P5)配列番号3または5に示す塩基配列において塩基番号138〜142を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号138に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド、
(P6)配列番号3または5に示す塩基配列において塩基番号142〜153を含む12〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号153に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド、
(P7)配列番号3または5に示す塩基配列において塩基番号142〜150を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号150に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド、
(P8)配列番号6〜8に示す塩基配列において塩基番号126〜135を含む10〜50塩基長の塩基配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号135に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド、
(P9)配列番号6〜8に示す塩基配列において塩基番号126〜129を含む10〜50塩基長の塩基配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号129に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド。
(2)P1のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号125に対応する塩基を3’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P2のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号146に対応する塩基を5’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P3およびP3'のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号144に対応する
塩基を5’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P4のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号134に対応する塩基を3’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P5のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号138に対応する塩基を3’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P6のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号153に対応する塩基を5’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P7のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号150に対応する塩基を5’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P8のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号135に対応する塩基を3’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P9のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号129に対応する塩基を3’末端から数えて1〜3番目の位置に有する、(1)記載のプローブ。
(3)P1のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号125に対応する塩基を3’末端に有し、
P2のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号146に対応する塩基を5’末端に有し、
P3およびP3'のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号144に対応する
塩基を5’末端に有し、
P4のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号134に対応する塩基を3’末端に有し、
P5のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号138に対応する塩基を3’末端に有し、
P6のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号153に対応する塩基を5’末端に有し、
P7のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号150に対応する塩基を5’末端に有し、
P8のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号135に対応する塩基を3’末端に有し、
P9のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号129に対応する塩基を3’末端に有する、(1)記載のプローブ。
(4)前記蛍光標識オリゴヌクレオチドは、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少するかまたは増加する、(1)〜(3)のいずれかに記載のプローブ。
(5)前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少する、(4)記載のプローブ。
(6)P1、P3、P3'、P4、P5、P7、P8、P9のオリゴヌクレオチドの塩基長が10〜30
であり、P2およびP6のオリゴヌクレオチドの塩基長が12〜30である、(1)〜(5)のいずれかに記載のプローブ。
(7)前記プローブが、融解曲線分析用のプローブである、(1)〜(6)のいずれかに記載のプローブ。
(8)abl遺伝子における多型の検出方法であって、(1)〜(7)のいずれかに記載のプローブを用いることを特徴とする方法。
(9)abl遺伝子における多型の検出方法であって、下記工程(I)〜(V)を含むことを特徴とする方法。
(I)DNAを含有する試料に、(1)〜(7)のいずれかに記載のプローブを添加して前記DNAに前記プローブをハイブリダイズさせる工程、
(II)温度を変化させて前記DNAと前記プローブとのハイブリッド形成体を解離させ、ハイブリッド形成体の解離に基づくシグナルの変動を測定する工程、
(III)前記シグナルの変動を解析してTm値を決定する工程、および
(IV)前記Tm値から目的の多型の有無または多型を有する塩基配列の存在比を決定する工程。
(10)さらに、(I)の工程の前または(I)の工程と同時にDNAを増幅することを
含む、(9)に記載の方法。
(11)(8)〜(10)のいずれかに記載の方法によりabl遺伝子における多型を検出する工程、および多型の有無に基づいて抗白血病薬に対する耐性または抗白血病薬の薬効を判定する工程を含む、抗白血病薬に対する耐性または抗白血病薬の薬効の判定方法。
(12)abl遺伝子における多型を検出するための試薬キットであって、(1)〜(7)のいずれかに記載のプローブを含むキット。
(13)さらに、abl遺伝子の配列番号1に示す塩基配列におけるP1のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域、配列番号3に示す塩基配列におけるP2、P3、P3’、P4、P5、P6、もしくはP7のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域、または配列番号6に示す塩基配列におけるP8もしくはP9のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域を増幅するためのプライマーを含む、(12)に記載の試薬キット。
なお、上記においてabl遺伝子の多型は同遺伝子の近傍領域の多型をも含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプローブによれば、検出目的の変異を有するabl遺伝子(bcr−abl融合遺伝子におけるabl遺伝子を含む。以下同様。)(変異遺伝子)と変異が発生していないabl遺伝子(正常遺伝子)とが共存している場合でも、前記目的の変異が発生した検出対象配列を検出できる。Tm分析においては、プローブが一塩基のみ異なる変異遺伝子と正常遺伝子の双方にハイブリダイズすると、融解曲線において両者のシグナルが重なり、変異遺伝子の存在を検出することが非常に困難である。これに対して、本発明のプローブによれば、変異遺伝子と正常遺伝子の双方にハイブリダイズするものの、融解曲線において、両者のシグナルを十分に分離できる。このため、本発明によれば、従来よりも優れた感度で、変異遺伝子を検出することができる。
本発明のプローブをPCRなどの遺伝子増幅系中に添加しておけば、遺伝子増幅反応終了
後、Tm分析を行うだけで、高感度で複数の遺伝子変異型のタイピングが可能となる。さらに、全血や口腔粘膜懸濁液などを直接検査することが可能であるため、手間やコストを低減することができる。
本発明のプローブは、特異性が高く、検出感度が高い。
本発明の方法を用いることにより、PCRを行う場合であっても、増幅産物を取り出す必
要がないため、コンタミネーションの危険性がほぼ無い。また、本発明の方法は、手順が簡単なので自動化が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、以下、検出目的の変異を有するabl遺伝子を「変異遺伝子」、検出目的の変異を有する配列を「変異配列」、検出目的の変異が発生していないabl遺伝子を「正常遺伝子」、検出目的の変異が発生していない配列を「正常配列」、変異の有無を検出する試料中のDNAを「標的DNA」ともいう。
本発明において検出する多型としては、例えば、一塩基多型(SNP)等が挙げられる。
また、本明細書において、T1076G (F359C)とはabl遺伝子の1076番目の塩基におけるT(野生型)からG(変異型)への変異を表し、カッコ内は塩基の変異に伴い359番目のアミノ酸がFからCに変化することを意味する。その他の変異の表記についても同様である。
なお、abl遺伝子の塩基配列はNational Center for Biotechnology Information
(NCBI)アクセッションNo.NG_012034に登録されている。下記に示す配
列番号1,3,6の配列はいずれもこれらの配列に含まれている。
以下に、本発明のプローブについて説明する。
【0015】
<プローブ>
本発明のプローブは、前述のように、abl遺伝子の多型を検出するためのプローブであって、前記P1〜P9からなる群から選択された少なくとも一つのオリゴヌクレオチドからなることを特徴とする。
【0016】
(P1)配列番号1または2に示す塩基配列において塩基番号125〜133を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号125に
対応する塩基がシトシンであり蛍光標識されている、オリゴヌクレオチド
ここで、「塩基番号125に対応する塩基」とは、前記相補配列又は相同配列において、配列番号1および2の塩基番号125のg(グアニン)に対応する相補塩基c(シトシン)を意味する。P1のプローブにおいては、このcが3’末端から数えて1〜3番目の位置に存在することが好ましく、このcが3’末端に存在することがより好ましい。
P1のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号1の塩基配列における133番目の塩基の多型を検出するためのプローブである。この塩基はT1076G変異の塩基に該当し、野生型であればT,変異型であればGである。T1076を含む領域の配列を配列番号1
(野生型:133番目がT)および2(変異型:133番目がG)に示す。
当該多型を検出するためのプローブの長さは、好ましくは10〜30塩基長、より好ましくは15〜25塩基長である。
なお、P1のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号1に示す塩基配列において塩基番号125〜133を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号125に対応する塩基がシトシンであり蛍光標識されている、野生型検出用オリゴヌクレオチドと、配列番号2に示す塩基配列において塩基番号125〜133を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号125に対応する塩基がシトシンであり蛍光標識されている、変異型検出用オリゴヌクレオチドのいずれか一方でもよいし、両方でもよい。
好ましくは、変異型検出用の下記配列番号9の塩基配列を有するプローブが挙げられる。
5’−cctgtggatgCagtttttc*−3’(配列番号9)
ここで、c*は3’側に蛍光標識されたcを示す(以下同様)。
なお、これに対応する野生型検出用プローブは大文字のCがAである。
【0017】
(P2)配列番号3または4に示す塩基配列において塩基番号135〜146を含む12〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号146に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド
ここで、「塩基番号146に対応する塩基」とは、前記相補配列又は相同配列において、配列番号3および4の塩基番号146のgに対応する相補塩基cを意味する。P2のプローブにおいては、このcが5’末端から数えて1〜3番目の位置に存在することが好ましく、このcが5’末端に存在することがより好ましい。
P2のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号3の塩基配列における135番目の塩基の多型を検出するためのプローブである。この塩基はT757C変異の塩基に該当
し、野生型であればT,変異型であればCである。T757Cを含む領域の配列を配列番号3
(野生型:135番目がT)および4(変異型:135番目がC)に示す。
当該多型を検出するためのプローブの長さは、好ましくは12〜30塩基長、より好ましくは15〜30塩基長であり、さらに好ましくは15〜25塩基長である。
なお、P2のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号3に示す塩基配列において塩基番号135〜146を含むで終わる12〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号146に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、野生型検出用オリゴヌクレオチドと、配列番号4に示す塩基配列において塩基番号135〜146を含む12〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号146に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、変異型検出用オリゴヌクレオチドのいずれか一方でもよいし、両方でもよい。
好ましくは、変異型検出用の下記配列番号10の塩基配列を有するプローブが挙げられる(大文字が変異塩基を示す、以下同じ)。
5’−*cacctccccgtGctg−3’(配列番号10)
ここで、*cは5’側に蛍光標識されたcを示す(以下同様)。
なお、これに対応する野生型検出用プローブは大文字のGがAである。
【0018】
(P3)配列番号3または4に示す塩基配列において塩基番号135〜144を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号144に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド
ここで、「塩基番号144に対応する塩基」とは、前記相補配列又は相同配列において、配列番号3および4の塩基番号144のgに対応する相補塩基cを意味する。P3のプローブにおいては、このcが5’末端から数えて1〜3番目の位置に存在することが好ましく、このcが5’末端に存在することがより好ましい。
P3のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号3の塩基配列における135番目の塩基の多型を検出するためのプローブである。
当該多型を検出するためのプローブの長さは、好ましくは10〜30塩基長、より好ましくは15〜25塩基長である。
なお、P3のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号3に示す塩基配列において塩基番号135〜144を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号144に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、野生型検出用オリゴヌクレオチドと、配列番号4に示す塩基配列において塩基番号135〜144を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号144に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、変異型検出用オリゴヌクレオチドのいずれか一方でもよいし、両方でもよい。
好ましくは、変異型検出用の下記配列番号11の塩基配列を有するプローブが挙げられる。
5’−*cctccccgtGctggc−3’(配列番号11)
なお、これに対応する野生型検出用プローブは大文字のGがAである。
【0019】
(P3’)配列番号3または5に示す塩基配列において塩基番号142〜144を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号144に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド
ここで、「塩基番号144に対応する塩基」とは、前記相補配列又は相同配列において、配列番号3および5の塩基番号144のgに対応する相補塩基cを意味する。P3'のプ
ローブにおいては、このcが5’末端から数えて1〜3番目の位置に存在することが好ましく、このcが5’末端に存在することがより好ましい。
P3’のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号3の塩基配列における142番目の塩基の多型を検出するためのプローブである。この塩基はA764T変異の塩基に該
当し、野生型であればA,変異型であればTである。A764Tを含む領域の配列を配列番号
3(野生型:142番目がA)および5(変異型:142番目がT)に示す。
当該多型を検出するためのプローブは、好ましくは10〜30塩基長、より好ましくは15〜25塩基長であり、配列番号3に示す塩基配列において塩基番号142〜144を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号144に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、野生型検出用オリゴヌクレオチドと、配列番号5に示す塩基配列において塩基番号142〜144を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号144に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、変異型検出用オリゴヌクレオチドのいずれか一方でもよいし、両方でもよい。
好ましくは、変異型検出用の下記配列番号16の塩基配列を有するプローブが挙げられる。
5’−*ccAccccgtactggcc−3’(配列番号16)
なお、これに対応する野生型検出用プローブは大文字のAがTである。
【0020】
(P4)配列番号3または4に示す塩基配列において塩基番号134〜135を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号134に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド
ここで、「塩基番号134に対応する塩基」とは、前記相補配列又は相同配列において、配列番号3および4の塩基番号134のgに対応する相補塩基cを意味する。P4のプローブにおいては、このcが3’末端から数えて1〜3番目の位置に存在することが好ましく、このcが3’末端に存在することがより好ましい。
P4のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号3の塩基配列における135番目の塩基の多型を検出するためのプローブである。
当該多型を検出するためのプローブの長さは、好ましくは10〜30塩基長、より好ましくは15〜25塩基長である。
なお、P4のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号3に示す塩基配列において塩基番号134〜135を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号134に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、野生型検出用オリゴヌクレオチドと、配列番号4に示す塩基配列において塩基番号134〜135を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号134に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、変異型検出用オリゴヌクレオチドのいずれか一方でもよいし、両方でもよい。
好ましくは、変異型検出用の下記配列番号12の塩基配列を有するプローブが挙げられる。
5’−gtacacctccccgtGc*−3’(配列番号12)
なお、これに対応する野生型検出用プローブは大文字のGがAである。
【0021】
(P5)配列番号3または5に示す塩基配列において塩基番号138〜142を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号138に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド
ここで、「塩基番号138に対応する塩基」とは、前記相補配列又は相同配列において、配列番号3および5の塩基番号138のgに対応する相補塩基cを意味する。P5のプローブにおいては、このcが3’末端から数えて1〜3番目の位置に存在することが好ましく、このcが3’末端に存在することがより好ましい。
P5のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号3の塩基配列における142番目の塩基の多型を検出するためのプローブである。
当該多型を検出するためのプローブの長さは、好ましくは10〜30塩基長、より好ましくは15〜25塩基長である。
なお、P5のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号3に示す塩基配列において塩基番号138〜142を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号138に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、野生型検出用オリゴヌクレオチドと、配列番号5に示す塩基配列において塩基番号138〜142を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号138に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、変異型検出用オリゴヌクレオチドのいずれか一方でもよいし、両方でもよい。
好ましくは、変異型検出用の下記配列番号13の塩基配列を有するプローブが挙げられる。
5’−cctcgtacaccAcccc*−3’(配列番号13)
なお、これに対応する野生型検出用プローブは大文字のAがTである。
【0022】
(P6)配列番号3または5に示す塩基配列において塩基番号142〜153を含む12〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号153に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド
ここで、「塩基番号153に対応する塩基」とは、前記相補配列又は相同配列において、配列番号3および5の塩基番号153のgに対応する相補塩基cを意味する。P6のプローブにおいては、このcが5’末端から数えて1〜3番目の位置に存在することが好ましく、このcが5’末端に存在することがより好ましい。
P6のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号3の塩基配列における142番目の塩基の多型を検出するためのプローブである。
当該多型を検出するためのプローブの長さは、好ましくは12〜30塩基長、より好ましくは15〜30塩基長であり、さらに好ましくは15〜25塩基長である。
なお、P6のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号3に示す塩基配列において塩基番号142〜153を含む12〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号153に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、野生型検出用オリゴヌクレオチドと、配列番号5に示す塩基配列において塩基番号142〜153を含む12〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号153に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、変異型検出用オリゴヌクレオチドのいずれか一方でもよいし、両方でもよい。
好ましくは、変異型検出用の下記配列番号14の塩基配列を有するプローブが挙げられる。
5’−*cctcgtacaccAcccc−3’(配列番号14)
なお、これに対応する野生型検出用プローブは大文字のAがTである。
【0023】
(P7)配列番号3または5に示す塩基配列において塩基番号142〜150を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号150に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド
ここで、「塩基番号150に対応する塩基」とは、前記相補配列又は相同配列において、配列番号3および5の塩基番号150のgに対応する相補塩基cを意味する。P7のプローブにおいては、このcが5’末端から数えて1〜3番目の位置に存在することが好ましく、このcが5’末端に存在することがより好ましい。
P7のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号3の塩基配列における142番目の塩基の多型を検出するためのプローブである。
当該多型を検出するためのプローブの長さは、好ましくは10〜30塩基長、より好ましくは15〜25塩基長である。
なお、P7のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号3に示す塩基配列において塩基番号142〜150を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号150に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、野生型検出用オリゴヌクレオチドと、配列番号5に示す塩基配列において塩基番号142〜150を含む10〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号150に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、変異型検出用オリゴヌクレオチドのいずれか一方でもよいし、両方でもよい。
好ましくは、変異型検出用の下記配列番号15の塩基配列を有するプローブが挙げられる。
5’−*cgtacaccAccccgta−3’(配列番号15)
なお、これに対応する野生型検出用プローブは大文字のAがTである。
【0024】
(P8)配列番号6〜8に示す塩基配列において塩基番号126〜135を含む10〜50塩基長の塩基配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号135に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド
ここで、「塩基番号135に対応する塩基」とは、前記配列において、配列番号6〜8の塩基番号135のcを意味する。P8のプローブにおいては、このcが3’末端から数えて1〜3番目の位置に存在することが好ましく、このcが3’末端に存在することがより好ましい。
P8のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号6の塩基配列における126番目の塩基の多型を検出するためのプローブである。この塩基はG895C/T変異の塩基に該
当し、野生型であればG,変異型であればCまたはTである。G895C を含む領域の配列を配列番号6(野生型:126番目がG)、配列番号7(変異型:126番目がC)および
8(変異型:126番目がT)に示す。
当該多型を検出するためのプローブの長さは、好ましくは10〜30塩基長、より好ましくは15〜25塩基長である。
なお、P8のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号6に示す塩基配列において塩基番号126〜135を含む10〜50塩基長の塩基配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号135に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、野生型検出用オリゴヌクレオチドと、配列番号7に示す塩基配列において塩基番号126〜135を含む10〜50塩基長の塩基配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号135に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、変異型検出用オリゴヌクレオチドと、配列番号8に示す塩基配列において塩基番号126〜135を含む10〜50塩基長の塩基配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号135に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、変異型検出用オリゴヌクレオチドのいずれか一つでもよいし、2または3つでもよい。
好ましくは、変異型検出用の下記配列番号17または19の塩基配列を有するプローブが挙げられる。
5’−cctgCtgcagctcc*−3’(配列番号17)
5’−aacctgTtgcagctcc*−3’(配列番号19)
なお、これらに対応する野生型検出用プローブは大文字のCまたはTがGである。
【0025】
(P9)配列番号6〜8に示す塩基配列において塩基番号126〜129を含む10〜50塩基長の塩基配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号129に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、オリゴヌクレオチド
ここで、「塩基番号129に対応する塩基」とは、前記配列において、配列番号6〜8の塩基番号129のcを意味する。P9のプローブにおいては、このcが3’末端から数えて1〜3番目の位置に存在することが好ましく、このcが3’末端に存在することがより好ましい。
P9のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号6の塩基配列における126番目の塩基の多型を検出するためのプローブである。
当該多型を検出するためのプローブの長さは、好ましくは10〜30塩基長、より好ましくは15〜25塩基長である。
なお、P9のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、配列番号6に示す塩基配列において塩基番号126〜129を含む10〜50塩基長の塩基配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号129に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、野生型検出用オリゴヌクレオチドと、配列番号7に示す塩基配列において塩基番号126〜129を含む10〜50塩基長の塩基配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号129に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、変異型検出用オリゴヌクレオチドと、配列番号8に示す塩基配列において塩基番号126〜129を含む10〜50塩基長の塩基配列又はそれに相同な配列を有し、塩基番号129に対応する塩基がシトシンであり蛍光色素で標識されている、変異型検出用オリゴヌクレオチドのいずれか一つでもよいし、2または3つでもよい。
好ましくは、変異型検出用の下記配列番号18または20の塩基配列を有するプローブが挙げられる。
5’−accctaacctgCtgc*−3’(配列番号18)
5’− tcaaacaccctaacctgTtgc*−3’(配列番号20)
なお、これらに対応する野生型検出用プローブは大文字のCまたはTがGである。
【0026】
本願における「相同」とは、特定の塩基配列において、塩基配列の相補鎖または当該塩基配列に80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有する配列を有している塩基配列をさす。
本発明のプローブは、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ標的配
列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少(消光)するかまたは増加する蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブであることが好ましい。その中でも標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少する蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブであることがより好ましい。このような蛍光消光現象(Quenching phenomenon)を利用したプローブとしては、一般的
に、グアニン消光プローブと呼ばれており、いわゆるQProbe(登録商標)として知られている。中でも、オリゴヌクレオチドを3'末端もしくは5'末端がCとなるように設計し、その末端のCが、Gに近づくと発光が弱くなるように蛍光色素で標識化されたプローブが好ましい。
なお、本明細書において、「5’末端から数えて1〜3番目」という場合は、5’末端を1番目として数え、「3’末端から数えて1〜3番目」という場合は、3’末端を1番目として数える。
【0027】
前記蛍光色素は、制限されないが、例えば、フルオレセイン、リン光体、ローダミン、ポリメチン色素誘導体等が挙げられ、市販の蛍光色素としては、例えば、BODIPY
FL(商標名、モレキュラー・プローブ社製)、FluorePrime(商品名、アマシャムファルマシア社製)、Fluoredite(商品名、ミリポア社製)、FAM(ABI社製)、Cy3およびCy5(アマシャムファルマシア社製)、TARMA(モレ
キュラープローブ社製)等が挙げられる。プローブの検出条件は、特に制限されず、使用
する蛍光色素により適宜決定できるが、例えば、Pacific Blueは、検出波長
445〜480nm、TAMRAは、検出波長585〜700nm)、BODIPY F
Lは、検出波長520〜555nmで検出できる。このようなプローブを使用すれば、シグナルの変動により、ハイブリダイズと解離とを容易に確認することができる。
【0028】
また、本発明のプローブは、例えば、3'末端にリン酸基が付加されてもよい。後述す
るように、変異の有無を検出するDNA(標的DNA)は、PCR等の遺伝子増幅法によって調製することができ、この際、本発明のプローブを遺伝子増幅反応の反応液中に共存させることができる。このような場合に、プローブの3'末端にリン酸基を付加させてお
けば、プローブ自体が遺伝子増幅反応によって伸長することを十分に防止できる。また、3'末端に前述のような標識化物質を付加することによっても、同様の効果が得られる。
【0029】
上記塩基配列を有し、5’末端または3’末端のCが蛍光色素で標識されたプローブの
具体例を以下の表1に示す(大文字の塩基は変異点を示し、Pはリン酸基を示す)。ただ
し、本発明のプローブは以下のものに限定されない。
【表1】
【0030】
本発明のプローブは、abl遺伝子の多型の検出に使用することができる。検出方法は、何ら制限されず、検出対象配列とプローブとのハイブリダイズを利用する方法であればよい。本発明のプローブを適用する方法の一例として、Tm分析を利用した多型の検出方法について、以下に説明する。
【0031】
<多型検出方法>
本発明の多型検出方法は、前述のように、abl遺伝子における多型の検出方法であって、下記工程(I)〜(IV)を含むことを特徴とする。なお、本発明の多型検出方法は、本発明のプローブを使用することが特徴であって、その他の構成や条件等は、以下の記載に制限されない。
(I)DNAを含有する試料に、本発明のプローブを添加し、前記DNAに前記プローブをハイブリダイズさせる工程
(II)前記DNAと前記プローブとのハイブリッド形成体について、温度変化に伴うシグナルの変動を測定する工程
(III)前記シグナルの変動を解析してTm値を決定する工程
(IV)前記Tm値から目的多型の有無または多型を有する塩基配列の存在比を決定する工程
なお、(III)でTm値を決定することには、Tmの温度を決定することだけでなく、T
mのピークの高さを決定することを含む。ピークの高さにより、多型を有する塩基配列の存在比を決定することができる。なお、多型を有する塩基配列の存在比をより定量的に決定するには、下記に示すような検量線を作成し、それに基づいて存在比を決定することが好ましい。
【0032】
多型を有する塩基配列の存在比を定量的に決定する方法について、野生型と特定の変異型の存在比の決定を例に挙げて以下に示す。ただし、この方法は一例にすぎず、多型を有する塩基配列の存在比の決定の仕方はこれに限定されない。
【0033】
まず、野生型の核酸Wtと変異型の核酸Mtとの2種類の核酸の存在比を各々異ならせた複数の核酸混合物を作製し、複数の核酸混合物の各々について、融解曲線解析装置等を
用いて融解曲線を得る。
図1(A)に、ある1つの核酸混合物の温度と蛍光強度との関係で表された融解曲線、及び
図1(B)に温度と蛍光強度の微分値との関係で表された融解曲線(微分融解曲線ともいう)を示す。この微分融解曲線からピークを検出することにより、核酸Wtの融解温度Tm
W及び核酸Mtの融解温度Tm
Mを検出して、Tm
W及びTm
Mを含む温度範囲の各々を設定する。Tm
Wを含む温度範囲ΔT
Wとしては、例えば、Tm
WとTm
Mとの間で蛍光強度の微分値が最小となる温度を下限、蛍光強度のピークの裾野に対応する温度を上限とする温度範囲を設定することができる。また、Tm
Mを含む温度範囲ΔT
Mとしては、例えば、Tm
WとTm
Mとの間で蛍光強度の微分値が最小となる温度を上限、蛍光強度のピークの裾野に対応する温度を下限とする温度範囲を設定することができる。なお、温度範囲ΔT
W及び温度範囲ΔT
Mは、同一の幅(例えば、10℃)または異なる幅(例えば、温度範囲ΔT
Wが10℃、温度範囲ΔT
Mが7℃)となるように設定することができる。また、温度範囲ΔT
W及び温度範囲ΔT
Mは、それぞれの融解温度TmからプラスX℃、マイナスX℃の幅(X℃は例えば15℃以内、望ましくは10℃以内)というように設定することができる。
【0034】
次に、温度範囲ΔT
W及び温度範囲ΔT
Mの各々について、微分融解曲線の温度範囲の下限に対応する点と上限に対応する点とを通る直線と微分融解曲線とで囲まれた面積(
図1(B)の斜線部分)を求める。面積の求め方の一例として、具体的に以下のように求めることができる。温度Tにおける蛍光強度の微分値をf(T)とし、温度Tにおけるベース値をB(T)として、下記(1)式により求める。
面積S={f(T
s+1)−B(T
s+1)}+{f(T
s+2)−B(T
s+2)}
+・・・+{f(T
e-1)−B(T
e-1)} ・・・(1)
ただし、T
sは各温度範囲における下限値、T
eは上限値である。また、各温度Tにおけるベース値B(T)は、下記(2)式により求まる値であり、蛍光強度の検出信号に含まれるバックグラウンドレベルを表すものである。このベース値を蛍光強度の微分値から減算することにより、蛍光強度の検出信号に含まれるバックグラウンドの影響を除去する。
B(T)=a×(T−T
s)+f(T
s) ・・・(2)
ただし、a={f(T
e)−f(T
s)}/(T
e−T
s) である。
【0035】
上記(1)式及び(2)式に従って、各核酸混合物について、温度範囲ΔT
Wにおける
面積S
W及び温度範囲ΔT
Wにおける面積S
Mを求め、面積比と各核酸混合物の存在比との
関係を表す検量線を作成する。
図2に、横軸に存在比(核酸混合物の総量に対する核酸Mtの割合)をとり、縦軸に面積比(S
M/S
W)をとった検量線の一例を示す。なお、面積比はS
W/S
Mで定めてもよい。
実際の試料を用いて得られた融解曲線と微分融解曲線から面積比を算出し、上記のようにしてあらかじめ作成した検量線に基づいて、実際の試料中に含まれる多型を有する塩基配列の存在比を決定することができる。
【0036】
本発明において、試料中のDNAは、一本鎖DNAでもよいし二本鎖DNAであってもよい。前記DNAが二本鎖DNAの場合は、例えば、前記ハイブリダイズ工程に先立って、加熱により前記試料中の二本鎖DNAを解離させる工程を含むことが好ましい。二本鎖DNAを一本鎖DNAに解離することによって、次のハイブリダイズ工程において、検出用プローブとのハイブリダイズが可能となる。
【0037】
本発明において、試料に含まれるDNAは、例えば、生体試料に元来含まれるDNAでもよいが、検出精度を向上できることから、生体試料に元来含まれているDNAを鋳型としてPCR等によりabl遺伝子の変異箇所を含む領域を増幅させた増幅産物であることが好ましい。増幅産物の長さは、特に制限されないが、例えば、50〜1000merであり、好ましくは80〜200merである。また、試料中のDNAは、例えば、生体試
料由来のRNA(トータルRNA、mRNA等)からRT−PCR(Reverse T
ranscription PCR)により合成したcDNAであってもよい。
【0038】
本発明の多型検出方法を適用する試料は、abl遺伝子が存在する試料が挙げられる。具体例としては、白血球細胞等の血球試料、全血試料等が挙げられる。なお、本発明において、試料の採取方法、DNAの調製方法等は、制限されず、従来公知の方法が採用できる。
【0039】
本発明において、前記試料中のDNAに対する、本発明のプローブの添加割合(モル比)は、制限されないが、検出シグナルを十分に確保できることから、試料中のDNAに対して1倍以下が好ましく、0.1倍以下がより好ましい。この際、試料中のDNAとは、例えば、検出目的の多型が発生している検出対象DNAと前記多型が発生していない非検出対象DNAとの合計でもよいし、検出目的の多型が発生している検出対象配列を含む増幅産物と前記多型が発生していない非検出対象配列を含む増幅産物との合計でもよい。なお、試料中のDNAにおける前記検出対象DNAの割合は、通常、不明であるが、結果的に、前記プローブの添加割合(モル比)は、検出対象DNA(検出対象配列を含む増幅産物)に対して10倍以下となることが好ましく、より好ましくは5倍以下、さらに、好ましくは3倍以下である。また、その下限は特に制限されないが、例えば、0.001倍以上であり、好ましくは0.01倍以上であり、より好ましくは0.1倍以上である。
【0040】
前記DNAに対する本発明のプローブの添加割合は、例えば、二本鎖DNAに対するモル比でもよいし、一本鎖DNAに対するモル比でもよい。
【0041】
Tm値について説明する。二本鎖DNAを含む溶液を加熱していくと、260nmにおける吸光度が上昇する。これは、二本鎖DNAにおける両鎖間の水素結合が加熱によってほどけ、一本鎖DNAに解離(DNAの融解)することが原因である。そして、全ての二本鎖DNAが解離して一本鎖DNAになると、その吸光度は加熱開始時の吸光度(二本鎖DNAのみの吸光度)の約1.5倍程度を示し、これによって融解が完了したと判断できる。この現象に基づき、融解温度Tmとは、一般に、吸光度が、吸光度全上昇分の50%に達した時の温度と定義される。
【0042】
本発明において、Tm値を決定するための温度変化に伴うシグナル変動の測定は、前述のような原理から260nmの吸光度測定により行うこともできるが、本発明のプローブに付加した標識のシグナルに基づくシグナルであってDNAとプローブとのハイブリッド形成の状態に応じて変動するシグナルを測定することが好ましい。このため、本発明のプローブとして、前述の標識化プローブを使用することが好ましい。前記標識化プローブとしては、例えば、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少(消光)する蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブ、または標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が増加する蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブが挙げられる。前者のようなプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖DNA)を形成している際にはシグナルを示さないか、シグナルが弱いが、加熱によりプローブが遊離するとシグナルを示すようになるか、シグナルが増加する。また、後者のプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖DNA)を形成することによってシグナルを示し、加熱によりプローブが遊離するとシグナルが減少(消失)する。したがって、この標識に基づくシグナルの変化をシグナル特有の条件(吸光度等)で検出することによって、前記260nmの吸光度測定と同様に、融解の進行ならびにTm値の決定を行うことができる。標識化プローブにおける標識化物質は、例えば、前述のとおりであるが蛍光色素標識化プローブが好ましい。
【0043】
次に、本発明の多型検出方法について、本発明のプローブとして、蛍光色素で標識化された標識化プローブを使用する例を挙げて説明する。なお、本発明の多型検出方法は、本発明のプローブを使用すること自体が特徴であり、その他の工程や条件については何ら制限されない。
【0044】
まず、全血からゲノムDNAを単離する。全血からのゲノムDNAの単離は、従来公知の方法によって行うことができ、例えば、市販のゲノムDNA単離キット(商品名GFX
Genomic Blood DNA Purification kit;GEヘルスケ
アバイオサイエンス社製)等が使用できる。
【0045】
次に、単離したゲノムDNAを含む試料に標識化プローブを添加する。前記標識化プローブとしては、例えば、QProbeがある。このQProbeとは、一般に、プローブ末端のシトシン塩基を蛍光色素で標識化したプローブであり、これが検出対象配列にハイブリッドすることで前記蛍光色素と検出対象配列のグアニン塩基とが相互作用し、その結果、蛍光が減少(または消光)するものである。標識化プローブの配列は、前述の通りであって、検出目的の多型に応じて、適宜選択すればよい。
【0046】
前記検出用プローブは、単離したゲノムDNAを含む液体試料に添加してもよいし、溶媒中でゲノムDNAと混合してもよい。前記溶媒としては、特に制限されず、例えば、Tris−HCl等の緩衝液、KCl、MgCl
2、MgSO
4、グリセロール等を含む溶媒、PCR反応液等、従来公知のものが挙げられる。
【0047】
前記検出用プローブの添加のタイミングは、特に制限されず、例えば、後述するPCR等の増幅処理を行う場合、増幅処理の後、PCR増幅産物に対して添加してもよいし、増幅処理前に添加してもよい。このようにPCR等による増幅処理前に前記検出用プローブを添加する場合は、例えば、前述のように、その3'末端に、蛍光色素を付加したり、リ
ン酸基を付加することが好ましい。
【0048】
好ましくは、単離したゲノムDNAを鋳型として、PCR等の遺伝子増幅法によって検出目的の多型を生じる部位を含む配列(検出対象配列および/または非検出対象配列)を増幅させる。前記遺伝子増幅法は、制限されず、例えば、PCR(PolymeraseChain Reaction)法、NASBA(Nucleic acid seque
nce based amplification)法、TMA(Transcription−mediated amplification)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法等が挙げられるが、PCR法が
好ましい。なお、以下、PCR法を例にあげて、本発明を説明するが、これには制限されない。なお、PCRの条件は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0049】
PCRのプライマーの配列は、目的の検出対象配列および/または非検出対象配列(プローブがハイブリダイズする領域)を増幅できるものであれば特に制限されず、目的の配列に応じて、従来公知の方法により適宜設計できる。プライマーの長さは、特に制限されず、一般的な長さ(例えば、10〜50mer)に設定できる。以下に、前記P1〜P9のプローブを使用する際の、検出対象配列の増幅に使用できるプライマーセットの一例を示す。なお、これらは例示であって、本発明を制限するものではない。
【0050】
P1プローブ用のプライマーセット
センスプライマー 配列番号21
5’− ggccggccccgtggtgctgctgtacatg−3’
アンチセンスプライマー 配列番号22
5’− tccatggcgcaggctgcctg−3’
P2〜P4プローブ用のプライマーセット
センスプライマー 配列番号23
5’− gacaagtgggagatggaacgc−3’
アンチセンスプライマー 配列番号24
5’− cacggccaccgtcagg−3’
P8〜P9プローブ用のプライマーセット
センスプライマー 配列番号25
5’− gaaagaagctgcagtcatgaaagagat−3’
アンチセンスプライマー 配列番号26
5’− cgcgagaccctctcttcagagc−3’
P5〜P7プローブ用のプライマーセットも配列番号3に基づいて容易に設計することができる。
【0051】
なお、増幅の際、リアルタイムPCRによって増幅をモニタリングし、試料に含まれるDNA(検出対象配列)のコピー数を調べることもできる。すなわち、PCRによるDNA(検出対象配列)の増幅に従ってハイブリッドを形成するプローブの割合が増えるので蛍光強度が変動する。これをモニタリングすることで、試料に含まれる検出対象配列(正常DNAまたは変異DNA)のコピー数や存在比を調べることができる。
【0052】
次に、得られたPCR増幅産物の解離、および、解離により得られた一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリダイズを行う。
【0053】
前記解離工程における加熱温度は、前記増幅産物が解離できる温度であれば特に制限されないが、例えば、85〜95℃である。加熱時間も特に制限されないが、通常、1秒〜10分であり、好ましくは1秒〜5分である。
【0054】
また、解離した一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリダイズは、例えば、前記解離工程の後、前記解離工程における加熱温度を降下させることによって行うことができる。温度条件としては、例えば、40〜50℃である。
【0055】
ハイブリダイズ工程の反応液における各組成の体積や濃度は、特に制限されない。具体例としては、前記反応液におけるDNAの濃度は、例えば、0.01〜1μMであり、好ましくは0.1〜0.5μM、前記標識化プローブの濃度は、例えば、前記DNAに対する添加割合を満たす範囲が好ましく、例えば、0.001〜10μMであり、好ましくは0.001〜1μMである。
【0056】
そして、得られた前記一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリッド形成体を徐々に加熱し、温度上昇に伴うシグナルの変動を測定する。例えば、QProbeを使用した場合、一本鎖DNAとのハイブリダイズした状態では、蛍光が減少(または消光)し、解離した状態では、蛍光を発する。したがって、例えば、蛍光が減少(または消光)しているハイブリッド形成体を徐々に加熱し、温度上昇に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
【0057】
蛍光強度の変動を測定する際の温度範囲は、特に制限されないが、例えば、開始温度が室温〜85℃であり、好ましくは25〜70℃であり、終了温度は、例えば、40〜105℃である。また、温度の上昇速度は、特に制限されないが、例えば、0.1〜20℃/秒であり、好ましくは0.3〜5℃/秒である。
【0058】
次に、前記シグナルの変動を解析してTm値として決定する。具体的には、得られた蛍光強度から各温度における値(−d蛍光強度増加量/dt)を算出し、最も低い値を示す温度をTm値として決定できる。また、単位時間当たりの蛍光強度増加量(蛍光強度増加量/t)が最も高い点をTm値として決定することもできる。なお、標識化プローブとして、消光プローブではなく、単独でハイブリッド形成によりシグナル強度が増加するプローブを使用した場合には、反対に、蛍光強度の減少量を測定すればよい。
【0059】
前記Tm値は、例えば、従来公知のMELTCALCソフトウエア(http://www.meltcalc.com/)等により算出でき、また、隣接法(Nearest
Neighbor Method)によって決定することもできる。
【0060】
また、本発明においては、前述のように、ハイブリッド形成体を加熱して、温度上昇に伴うシグナル変動を測定する方法に代えて、例えば、ハイブリッド形成時におけるシグナル変動の測定を行ってもよい。すなわち、前記プローブを添加した試料の温度を降下させてハイブリッド形成体を形成する際に、前記温度降下に伴うシグナル変動を測定してもよい。
【0061】
具体例として、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少(消光)する蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブ(例えば、QProbe)を使用した場合、前記プローブを試料に添加した際には、前記プローブは解離しているため蛍光を発しているが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、前記蛍光が減少(または消光)する。したがって、例えば、前記加熱した試料の温度を徐々に降下して、温度下降に伴う蛍光強度の減少を測定すればよい。
他方、ハイブリッド形成によりシグナルが増加する標識化プローブを使用した場合、前記プローブを試料に添加した際には、前記プローブは解離しているため蛍光を発していないが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、蛍光を発するようになる。したがって、例えば、前記試料の温度を徐々に降下して、温度下降に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
本発明のabl遺伝子多型検出方法によれば、abl遺伝子の、白血病に対する薬剤(例えば、イマチニブ)への耐性に関与する変異の有無を調べることができる。多型の有無や変異配列と正常配列の存在比に基づいて抗白血病薬に対する耐性や抗白血病薬の薬効を判定することができる。そして、本発明の方法は、変異の有無や変異配列の存在比に基づいて、薬剤の投与量の増加、他の治療薬への変更、骨髄移植等への切り替え等の白血病の治療方針を決定するのに有用である。
【0062】
<abl遺伝子多型検出用試薬キット>
本発明のabl遺伝子多型検出用試薬キットは、abl遺伝子の多型の検出に使用する試薬キットであり、本発明のプローブを含むことを特徴とする。本発明の試薬キットにおいて、本発明のプローブは、一種類でもよいし二種類以上であってもよい。後者の場合、二種類以上のプローブは、混合された状態で含まれてもよいし、別個の試薬として含まれていてもよい。また、二種類以上の本発明のプローブが混合された状態で本発明のプローブキットに含まれる場合や、別個の試薬として含まれているが、例えば、使用時に同じ反応系で、各プローブと各検出対象配列とのTm分析を行う場合、各プローブは、別個の蛍光物質で標識化されていることが好ましい。このように蛍光物質の種類を変えることで、同じ反応系であっても、それぞれのプローブについての検出が可能になる。前記蛍光物質としては、例えば、検出波長が異なる物質であることが好ましい。
また、abl遺伝子多型検出用試薬キットは上記多型部位を含む配列(プローブがハイブリダイズする領域)を増幅するためのプライマーセットを含むものであってもよい。
【0063】
前述のように、abl遺伝子には、白血病に関連する複数の変異が知られており、本発
明のプローブによれば、前述した各種変異を検出することが可能である。白血病に関与するabl遺伝子は、いずれか一箇所の変異のみが検出される場合もあるが、複数個所の変異が検出される場合もあるので、複数の変異を検出し、それらの結果を総合的に判断することで、より良い診断や治療が可能になる。したがって、本発明の試薬キットにおいて、本発明のプローブを2種類以上含有させることによって、診断や治療等のための変異の検出をより簡便に行うことができる。
【0064】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は下記の実施例により制限されない。
【実施例1】
【0065】
abl遺伝子の1076番目塩基の点突然変異(T→G)
本発明のプローブを使用して、abl遺伝子における1076番目塩基の点突然変異(T→G)について、全自動SNPs検査装置(商品名i-densy(商標)、アークレイ社製)を
用いてPCRおよびTm分析を行った。
【0066】
配列番号1に示す133番目の塩基Tに変異を有さない正常abl遺伝子配列(配列番号1)を挿入したプラスミド(wtDNA)と、前記133番目の塩基TがGに変異した変異abl遺伝子(ablチロシンキナーゼT1076G(F359C)、配列番号2)を挿入したプラスミド(mtDNA)を所定の割合(mtDNA:wtDNA=25コピー:975コピー)で混合し(変異含有率2.5%)、1,000コピー/μLに希釈調製してこれを鋳型核酸とした。反応溶液は表2の処方とした。PCR反応は95℃で60秒処理した後、95℃1秒および64℃30秒を1サイクルとして50サイクル繰り返した。その後さらに95℃で1秒、40℃で60秒処理し、続けて温度の上昇速度を1℃/3秒で40℃から95℃に加熱していき、経時的な蛍光強度の変化を測定した(WAVE3:585〜700nm)。
【0067】
【表2】
【0068】
センスプライマー 配列番号21
5’−ggccggccccgtggtgctgctgtacatg−3’
アンチセンスプライマー 配列番号22
5’−tccatggcgcaggctgcctg−3’
(実施例1)
検出用プローブP1 配列番号9
5’−cctgtggatgCagtttttc−(TAMRA)−3’
(比較例1)
検出用プローブ 配列番号9
5’−(TAMRA)−cctgtggatgCagtttttc−P−3’
このプローブは、実施例1の検出用プローブと配列は同じであるが、5’末端のc(配列番号2の塩基番号143のgの相補塩基であるc)が蛍光色素で標識されているプローブである。
【0069】
この結果を
図3に示す。
図3Aは、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm分析のグラフである。検出用プローブP1を用いてPCRおよびTm分析を行った結果、wtDNAの
ピークが51℃付近にみられ、mtDNAのピークが61℃付近にみられた。
この結果から、検出用プローブP1によれば、mtDNAとwtDNAとが共存する場合でも、mtDNAの検出感度を向上できることがわかった。
これに対して、
図3Bより、比較例1の検出用プローブを使用した場合、検出ピークがほとんど確認できず、変異の有無が不明であった。以上の結果から、プローブのいずれかのcが蛍光標識されていればよいというわけではなく、125番目のgの相補塩基であるcが蛍光標識されていることが重要であることが理解された。
【実施例2】
【0070】
abl遺伝子の757番目塩基の点突然変異(T→C)
本発明のプローブを使用して、abl遺伝子における757番目塩基の点突然変異(T→C)について、全自動SNPs検査装置(商品名i-densy(商標)、アークレイ社製)を用
いてPCRおよびTm分析を行った。
【0071】
配列番号3に示す135番目の塩基Tに変異を有さない正常abl遺伝子配列(配列番号3)を挿入したプラスミド(wtDNA)と、前記135番目の塩基TがCに変異した変異abl遺伝子(ablチロシンキナーゼT757C(Y253H)、配列番号4)を挿入したプラスミド(mtDNA)を所定の割合(mtDNA:wtDNA=100コピー:900コピー)に混合し(変異含有率10%)、1000コピー/μLに希釈調製してこれを鋳型核酸として反応を行った。なお、検出用プローブP2については変異含有率20%と0%についても評価した。反応溶液は表3の処方とした。PCR反応は95℃で60秒処理した後、95℃1秒および58℃30秒を1サイクルとして50サイクル繰り返した。その後さらに95℃で1秒、40℃で60秒処理し、続けて温度の上昇速度を1℃/3秒で40℃から95℃に加熱していき、経時的な蛍光強度の変化を測定した(WAVE3:585〜700nm)。
【0072】
【表3】
センスプライマー 配列番号23
5’−gacaagtgggagatggaacgc−3’
アンチセンスプライマー 配列番号24
5’−cacggccaccgtcagg−3’
(実施例2−1)
検出用プローブP2 配列番号10
5’−(TAMRA)−cacctccccgtGctg−P−3’
(実施例2−2)
検出用プローブP3 配列番号11
5’−(TAMRA)−cctccccgtGctggc−P−3’
(実施例2−3)
検出用プローブP4 配列番号12
5’−gtacacctccccgtGc−(TAMRA)−3’
【0073】
これらの結果を
図4に示す。
図4は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm分析のグラフである。
図4において、(A)は、実施例2−1、(B)は、実施例2−2、(C)は、実施例2−3の結果である。(A)より、検出用プローブP2を用いてPCRおよびTm分析を行った結果、変異含有率0%ではwtDNAのピークのみが52℃付近にみられ
(I)、変異含有率10%(II)、20%(III)ではwtDNAのピークとともにmtDNAのピークが58℃付近にみられ、mtDNAのピークは変異含有率とともに増大した。検出用プローブP3を用いてPCRおよびTm分析を行った結果、wtDNAのピークが56℃付近にみられ、mtDNAのピークが62℃付近にみられた(B)。検出用プローブP4を用いてPCRおよびTm分析を行った結果、wtDNAのピークが57℃付近にみられ
、mtDNAのピークが63℃付近にみられた(C)。
これらの結果から、検出用プローブP2〜4によれば、mtDNAとwtDNAとが共存する場合でも、mtDNAの検出感度を向上できることがわかった。
配列番号4の塩基番号146、144または134番目のgの相補塩基であるcが蛍光標識されていることが重要であることが理解された。
【実施例3】
【0074】
abl遺伝子の764番目塩基の点突然変異(A→T)
本発明のプローブを使用して、abl遺伝子における764番目塩基の点突然変異(A→T)について、全自動SNPs検査装置(商品名i-densy(商標)、アークレイ社製)を用
いてPCRおよびTm分析を行った。
【0075】
配列番号3に示す142番目の塩基Aに変異を有さない正常abl遺伝子配列(wtDNA)の相補鎖オリゴヌクレオチド(配列番号27)と、前記142番目の塩基AがTに変異した変異abl遺伝子(ablチロシンキナーゼA764T(E255V))(mtDNA)の相補鎖オリゴヌクレオチド(配列番号28)を合成した。そして、両者を所定の割合(mtDNA:wtDNA=1μM:9μM)に混合した(変異含有率10%)。プローブのハイブリダイゼーションおよび蛍光強度の検出を以下表4の組成の反応液を反応チューブに添加し、95℃で1秒、40℃で60秒処理し、続けて温度の上昇速度を1℃/3秒で40℃から95℃に加熱していき、経時的な蛍光強度の変化を測定した(WAVE3:585〜700nm)。
【0076】
【表4】
【0077】
(実施例3−1)
検出用プローブP5 配列番号13
5’−cctcgtacaccAcccc−(TAMRA)−3’
(実施例3−2)
検出用プローブP6 配列番号14
5’−(TAMRA)−cctcgtacaccAcccc−P−3’
(実施例3−3)
検出用プローブP7 配列番号15
5’−(TAMRA)−cgtacaccAccccgta−P−3’
(実施例3−4)
検出用プローブP3’ 配列番号16
5’−(TAMRA)−ccAccccgtactggcc−P−3’
【0078】
これらの結果を
図5に示す。
図5は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm分析のグラフである。
図5において、(A)は、実施例3−1、(B)は、実施例3−2、(C)は、実施例3−3、(D)は、実施例3−4の結果である。検出用プローブP5を用いてTm分析を行った結果、wtDNAのピークが56℃付近にみられ、mtDNAのピークが62℃付近にみられた(A)。検出用プローブP6を用いてTm分析を行った結果、wtDNAのピークが55℃付近にみられ、mtDNAのピークが62℃付近にみられた(B)。検出用プローブP7を用いてTm分析を行った結果、wtDNAのピークが50℃付近にみられ、mtDNAのピークが59℃付近にみられた(C)。検出用プローブP3’を用いてTm分析を行った結果、wtDNAのピークが58℃付近にみられ、mtDNAのピークが63℃付近にみられた(D)。
これらの結果から、検出用プローブP3’、5〜7によれば、mtDNAとwtDNAとが共存する場合でも、mtDNAの検出感度を向上できることがわかった。
配列番号5の塩基番号138、153、150または144番目のgの相補塩基であるcが蛍光標識されていることが重要であることが理解された。
【実施例4】
【0079】
abl遺伝子の895番目塩基の点突然変異(G→C/T)
本発明のプローブを使用して、abl遺伝子における895番目塩基の点突然変異(G→C/T)について、全自動SNPs検査装置(商品名i-densy(商標)、アークレイ社製)
を用いてPCRおよびTm分析を行った。
【0080】
配列番号6に示す126番目の塩基Gに変異を有さない正常abl遺伝子配列(配列番号6)を挿入したプラスミド(wtDNA)と、前記126番目の塩基GがCまたはTに変異した変異abl遺伝子(ablチロシンキナーゼG895C/T(V299L)、配
列番号7または8)を挿入したプラスミド(mtDNA)を所定の割合(mtDNA:wtDNA=50コピー:950コピー)に混合し(変異含有率5%)、1000コピー/μLに希釈調製してこれを鋳型核酸として反応を行った。反応溶液は表5の処方とした。PCR反応は95℃で60秒処理した後、95℃1秒および64℃15秒を1サイクルとして50サイクル繰り返した。その後さらに95℃で1秒、40℃で60秒処理し、続けて温度の上昇速度を1℃/3秒で40℃から95℃に加熱していき、経時的な蛍光強度の変化を測定した(WAVE2:520〜555nm、WAVE3:585〜700nm)。
【0081】
【表5】
センスプライマー 配列番号25
5’−gaaagaagctgcagtcatgaaagagat−3’
アンチセンスプライマー 配列番号26
5’−cgcgagaccctctcttcagagc−3’
(実施例4−1)
検出用プローブP8 配列番号17
5’−cctgCtgcagctcc−(BODIPY FL)−3’
(実施例4−2)
検出用プローブP9 配列番号18
5’−accctaacctgCtgc−(BODIPY FL)−3’
(実施例4−3)
検出用プローブP8 配列番号19
5’−aacctgTtgcagctcc−(TAMRA)−3’
(実施例4−4)
検出用プローブP9 配列番号20
5’−tcaaacaccctaacctgTtgc−(TAMRA)−3’
【0082】
これらの結果を
図6に示す。
図6は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm分析のグラフである。
図6において、(A)は、実施例4−1、(B)は、実施例4−2、(C)は、実施例4−3、(D)は、実施例4−4の結果である。検出用プローブP8を用いてPCRおよびTm分析を行った結果、wtDNAのピークが47℃付近にみられ、mtDN
Aのピークが61℃付近にみられた(A)。検出用プローブP9を用いてPCRおよびTm分
析を行った結果、wtDNAのピークが44℃付近にみられ、mtDNAのピークが58℃付近にみられた(B)。検出用プローブP8を用いてPCRおよびTm分析を行った結果、
wtDNAのピークが52℃付近にみられ、mtDNAのピークが61℃付近にみられた(C)。検出用プローブP9を用いてPCRおよびTm分析を行った結果、wtDNAのピー
クが58℃付近にみられ、mtDNAのピークが63℃付近にみられた(D)。
これらの結果から、検出用プローブP8,9によれば、mtDNAとwtDNAとが共存する場合でも、mtDNAの検出感度を向上できることがわかった。
配列番号7,8の塩基番号135または129番目のcが蛍光標識されていることが重要であることが理解された。
【0083】
実施例1〜4の結果より、P1〜9(配列番号9〜20)のプローブを用いたとき、abl遺伝子の多型(T1076G (F359C)、T757C (Y253H)、A764T (E255V)、およびG895C/T (V299L))について、Tm分析で解析の可能な蛍光強度の変化が認められた。すなわち、変異
型は、野生型のピークに加えて、他のピークを有するものであり、固有の蛍光強度の変化量のパターンの変化が存在する。従って、P1〜9(配列番号9〜20)のプローブを用いることにより、abl遺伝子の多型を検出することができる。