(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
[変性ポリシロキサン化合物]
本発明に係る変性ポリシロキサン化合物は、上記式(1)で表され、下記式(a)で表されるシロキサン単位と、下記式(b)で表されるシロキサン単位からなるランダム又はブロック共重合体である。下記式中、R
7、R
8、R
9、Aは前記に同じ。
【化6】
【0017】
上記式中、Aは上記式(2)で表される基、上記式(3)で表される基、及び水素原子から選択される基を示す。すなわち、上記式(a)で表されるシロキサン単位は、下記式(a1)、(a2)、及び(a3)で表されるシロキサン単位の何れかである。下記式中、R
9、R
10、R
11、R
12は前記に同じ。
【化7】
【0018】
但し、本発明に係る変性ポリシロキサン化合物は、Aが上記式(2)で表される基であるシロキサン単位(すなわち、上記式(a1)で表されるシロキサン単位)、及びAが上記式(3)で表される基であるシロキサン単位(すなわち、上記式(a2)で表されるシロキサン単位)を少なくとも有している。
【0019】
式中、R
1〜R
9は、同一又は異なって、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基、及び炭素数3〜6の環状アルキル基から選択される炭化水素基を示す。p、qは、それぞれ括弧内に示されるシロキサン単位の数の平均値を示し、pは1以上の数、qは2以上の数である。R
10は単結合、又は炭素数1〜17の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基を示す。R
11は単結合、又は炭素数1〜17の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基を示し、R
12は水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基を示す。pが2以上の場合、2個以上のR
7、R
8は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。また、2個以上のR
9は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
R
1〜R
9における炭素数1〜20の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル基等を挙げることができる。炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル基等を挙げることができる。炭素数3〜6の環状アルキル基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0021】
R
10における炭素数1〜17の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン基等の直鎖状アルキレン基;メチルメチレン、メチルエチレン等の、前記直鎖状アルキレン基に炭素数1〜3程度のアルキル基が結合した分岐鎖状アルキレン基等を挙げることができる。本発明におけるR
10としては炭素数2〜13の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基(特に、直鎖状アルキレン基)が好ましい。
【0022】
R
11における炭素数1〜17の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基としては、上記R
10における炭素数1〜17の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基の例と同様の例を挙げることができる。本発明におけるR
11としては炭素数2〜13の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基(特に、直鎖状アルキレン基)が好ましい。
【0023】
R
12における炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等を挙げることができる。本発明におけるR
12としては、なかでも、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0024】
p、qは、それぞれ括弧内に示されるシロキサン単位の数の平均値を示し、pは1以上の数、好ましくは2〜2000、さらに好ましくは4〜500、最も好ましくは10〜30である。qは2以上の数であり、好ましくは2〜2000、さらに好ましくは4〜500、最も好ましくは10〜30である。
【0025】
また、(p+q)は、例えば、4〜5000程度、好ましくは8〜1000、さらに好ましくは10〜50、最も好ましくは10〜40である。
【0026】
式(a)で表されるシロキサン単位と式(b)で表されるシロキサン単位の全体(100モル%)に対する式(a)で表されるシロキサン単位の割合としては、例えば5〜90モル%程度であり、好ましくは10〜90モル%、より好ましくは10〜70モル%、更に好ましくは30〜60モル%、特に好ましくは35〜50モル%、最も好ましくは40〜50モル%である。つまり、q/(p+q)は、0.05〜0.9程度、好ましくは0.1〜0.9、より好ましくは0.1〜0.7、更に好ましくは0.3〜0.6、特に好ましくは0.35〜0.5、最も好ましくは0.4〜0.5である。
【0027】
また、式(a)で表されるシロキサン単位と式(b)で表されるシロキサン単位の全体(100モル%)に対する式(b)で表されるシロキサン単位の割合としては、例えば5〜90モル%程度であり、好ましくは10〜90モル%、より好ましくは10〜70モル%、特に好ましくは30〜60モル%、最も好ましくは50〜60モル%である。つまり、p/(p+q)が0.05〜0.9程度、好ましくは0.1〜0.9、より好ましくは0.1〜0.7、特に好ましくは0.3〜0.6、最も好ましくは0.5〜0.6である。
【0028】
更に、式(a)で表されるシロキサン単位全体(100モル%)に対する、式(a)中のAが式(2)で表される基であるシロキサン単位(すなわち、上記式(a1)で表されるシロキサン単位)の割合は、75〜99モル%程度であることが好ましく、なかでも80〜98モル%、特に80〜95モル%の範囲であることが、他の配合原料との混和性に優れる点で好ましい。上記式(a1)で表されるシロキサン単位の割合が上記範囲を下回ると、炭化水素系ワックスやオイル等との混和性が低下する傾向がある。一方、上記式(a1)で表されるシロキサン単位の割合が上記範囲を上回ると、シリコーン系の成分等との混和性が低下する傾向がある。
【0029】
更にまた、式(a)で表されるシロキサン単位全体(100モル%)に対する、式(a)中のAが式(3)で表される基であるシロキサン単位(すなわち、上記式(a2)で表されるシロキサン単位)の割合は、1モル%以上であることが好ましく、なかでも2〜25モル%、特に5〜20モル%の範囲であることが好ましい。上記式(a2)で表されるシロキサン単位の割合が上記範囲を下回ると、皮膜形成性及び皮膚密着性が低下する傾向がある。一方、上記式(a2)で表されるシロキサン単位の割合が多すぎても、粘度が高くなりすぎたり、油剤への溶解性が低下する等により、製造工程でのハンドリング性や使用性が低下する傾向がある。
【0030】
また、式(a)で表されるシロキサン単位全体(100モル%)に対する、式(a)中のAが水素原子であるシロキサン単位(すなわち、上記式(a3)で表されるシロキサン単位)の割合は、10モル%以下程度(なかでも5モル%以下、特に2モル%以下)であることが好ましく、上記式(a3)で表されるシロキサン単位が実質的に含まれていなくてもよい。上記式(a3)で表されるシロキサン単位の割合が上記範囲を上回ると、撥水性、撥油性、乳化安定性、分散性、配合性、及び保存安定性が低下する傾向がある。
【0031】
本発明の式(1)で表される変性ポリシロキサン化合物の用途は特に制限がなく、一般に両親媒性化合物を使用し得る用途(例えば、分散剤や高分子乳化剤、コーティング剤等への添加剤等)に用いることができるが、とりわけ化粧料用組成物(例えば、口紅用皮膜形成剤、各種サンスクリーン剤向け無機UV吸収剤の表面コーティング剤や分散剤、有機UV吸収剤の分散剤、ファンデーション用顔料の分散剤等)として有用である。
【0032】
本発明の式(1)で表される変性ポリシロキサン化合物は、式(2)で表される親油性基を有するシロキサン単位と式(3)で表される親水性基を有するシロキサン単位を有するため、極端に高い温度での溶解工程を必要とせず比較的低温で化粧品油剤へ混和でき、製造コスト及び、環境負荷を低減することができる。
【0033】
また、本発明の式(1)で表される変性ポリシロキサン化合物は乳化安定性及びゲル化能に優れ、顔料等を分散する能力(分散性)に優れるだけでなく、撥水・撥油性に優れるため、本発明の式(1)で表される変性ポリシロキサン化合物を含有する油性固形化粧料やクリーム化粧料、乳液化粧料等は、撥水・撥油性に優れた皮膜を形成することができ、仕上がり及び使用感が良好であり、特に皮膚への密着性(すなわち、化粧持ち)が良好である。
【0034】
[変性ポリシロキサン化合物の製造方法]
上記式(1)で表される変性ポリシロキサン化合物は、上記式(4)で表されるポリシロキサン化合物に、上記式(5)で表される化合物、及び、上記式(6)表される化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトする工程を経て製造される。
【0035】
式(4)中、R
1〜R
9は、同一又は異なって、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基、及び炭素数3〜6の環状アルキル基から選択される炭化水素基を示す。p、qは、それぞれ括弧内に示されるシロキサン単位の数の平均値を示し、pは1以上の数、qは2以上の数である。R
1〜R
9及びp、qは、式(1)で表される変性ポリシロキサン化合物におけるR
1〜R
9及びp、qに対応する。
【0036】
式(5)中、R
10は単結合、又は炭素数1〜17の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基を示す。R
10は式(1)で表される変性ポリシロキサン化合物における式(2)で表される基中のR
10に対応する。
【0037】
式(6)中、R
11は単結合、又は炭素数1〜17の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基を示し、R
12は水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基を示す。R
11、R
12は式(1)で表される変性ポリシロキサン化合物における式(3)で表される基中のR
11、R
12に対応する。
【0038】
上記式(4)で表されるポリシロキサン化合物と、上記式(5)で表される化合物、及び、上記式(6)表される化合物のヒドロシリル化反応は、触媒の存在下で行うことが好ましい。前記触媒としては、一般にヒドロシリル化反応に用いられる触媒であれば特に限定されることがないが、本発明においては、なかでも、塩化白金酸、Karstedt触媒、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)白金、塩化パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)等の白金族遷移金属化合物;白金/炭素、パラジウム/炭素、白金/アルミナ等の固体担持白金族金属触媒;各種白金化合物を界面活性剤存在下に還元して調製される白金保護コロイド等を好適に用いることができる。
【0039】
触媒の使用量は特に限定されることがなく、例えば、式(5)で表される化合物、及び、式(6)表される化合物の合計量(1モル)に対して10
-7〜10
-2モル(好ましくは、10
-6〜10
-3、特に好ましくは10
-5〜10
-4)の範囲が好ましい。触媒量が少なすぎると長時間の反応時間が必要となるため、熱履歴による着色や副生成物の製品への混入など、品質への悪影響が懸念される。また、ヒドロシリル化反応に用いられる上記触媒は一般に高価であるため、過剰量の触媒の使用は製造コストの増大要因となり好ましくない。
【0040】
反応温度は、例えば、10〜110℃程度、好ましくは65〜90℃程度である。反応時間は特に制限がなく、式(4)で表されるポリシロキサン化合物由来のヒドロシリル基の消費、又は上記式(5)で表される化合物、及び、上記式(6)表される化合物の消費をアルカリ滴定、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、NMR、TLCなどの適切な分析方法により追跡し、所望の反応率となった時点で反応を終了すればよいが、例えば、4〜80時間程度、好ましくは、10〜60時間程度の範囲となるように反応温度や原料仕込み法を調節するのが品質および生産性の面から好適である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0041】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0042】
特に、触媒として白金族遷移金属化合物を使用する場合は、式(5)で表される化合物、及び、式(6)で表される化合物の末端不飽和基が内側に転移する副反応が一定の頻度で発生し、その結果、下記式(7)及び/又は下記式(8)で表される化合物が副生して混入する場合がある。
【0044】
上記式(7)で表される化合物は、式(5)で表される化合物の二重結合が内側に転位したものであり、R
13、R
14は、同一又は異なって、単結合、又は直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基を示す。R
15、R
16は、同一又は異なって、水素原子又は直鎖状、若しくは分岐鎖状アルキル基を示す。R
13、R
14、R
15、R
16の炭素数の和は、(R
10の炭素数−1)個である。また、上記式(8)で表される化合物は、式(6)で表される化合物の二重結合が内側に転位したものであり、R
17、R
18は、同一又は異なって、単結合、又は直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基を示す。R
19、R
20は、同一又は異なって、水素原子又は直鎖状、若しくは分岐鎖状アルキル基を示す。R
17、R
18、R
19、R
20の炭素数の和は、(R
11の炭素数−1)個である。R
12は前記に同じ。
【0045】
R
13、R
14、R
17、R
18における直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基としては、R
10における直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基の例のうち、炭素数1〜16の例を挙げることができる。また、R
15、R
16、R
19、R
20における直鎖状、若しくは分岐鎖状アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル基等を挙げることができる。
【0046】
式(1)で表される変性ポリシロキサン化合物の用途によっては、上記式(7)及び/又は上記式(8)で表される化合物の混在が、長期保存時の酸化劣化による臭気発生や有害物質の発生等の品質低下を引き起こす原因となりうる。その場合は、式(4)で表されるポリシロキサン化合物に、式(5)で表される化合物、及び、式(6)で表される化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトした後で、副生した上記式(7)及び/又は上記式(8)で表される化合物を高真空条件下で脱低沸処理したり、酸処理により分解したり(特開平2−302438参照)、水添処理により飽和炭化水素化する(特開平9−165318参照)等の後処理工程を追加することが好ましい。
【0047】
また、本発明に係る変性ポリシロキサン化合物の製造方法では、下記式(9)
【化9】
(式中、R
11、R
12は上記に同じ)
で表される化合物が副生する場合があるが、本発明の式(1)で表される変性ポリシロキサン化合物を化粧料用組成物として使用する場合は、上記式(9)で表される化合物は化粧料用組成物の調製工程(特に、溶解混合工程)において、極性基同士の相互作用による架橋を弱めてハンドリング性を向上することができ、また、式(1)で表される変性ポリシロキサン化合物が他の配合材料と共に高次構造を形成してゲル化する際に、前記高次構造の隙間に入り込んで構造をより強固なものとすることができ、ゲル状態をより安定に保つことができるため有用である。
【0048】
本発明に係る変性ポリシロキサン化合物の製造方法によれば、式(1)で表される変性ポリシロキサン化合物を効率よく製造することができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0050】
実施例1(3−(10−ウンデセノイルアミド)プロパン−1,2−ジオールの合成)
還流管、3方コック付き窒素導入口、3方コック付きベント、減圧シール付き撹拌翼、温度計を備えた容量1リットルの5ツ口フラスコに10−ウンデセン酸メチル 333.15g(1.68mol)、3−アミノプロパン−1,2−ジオール 157.66g(1.73mol)、24% ナトリウムメトキサイドメタノール溶液 3.78g(16.8ミリmol)を添加し、250hPa〜40hPaで減圧しつつ110℃〜115℃で加熱撹拌して、生成するメタノールを留去しながら9時間反応して室温に冷却し、単黄色常温固体の粗生成物を得た。これにエタノール396gを加えて80℃で加熱撹拌したのち、冷却して生成した結晶をろ過してエタノールそれぞれ100gおよび150gで2回洗浄した後、恒量値まで乾燥して、白色粉末として3−(10−ウンデセノイルアミド)プロパン−1,2−ジオール 328.15g(収率:75.9%)を得た。尚、得られた反応生成物の構造は、
1H−NMRスペクトル、及びIRスペクトルにより確認した(
図1、2参照)。
【0051】
実施例2(3−[N−メチル(10−ウンデセノイルアミド)]プロパン−1,2−ジオールの合成)
還流管、3方コック付き窒素導入口、3方コック付きベント、減圧シール付き撹拌翼、温度計を備えた容量1リットルの5ツ口フラスコに10−ウンデセン酸メチル 317.29g(1.60mol)、3−
(N−メチルアミノ)プロパン−1,2−ジオール 173.27g(1.65mol)、24% ナトリウムメトキサイドメタノール溶液 3.78g(16.0ミリmol)を添加し、500hPa〜50hPaで減圧しつつ108℃〜117℃で加熱撹拌して、生成するメタノールを留去しながら24.5時間反応して室温に冷却し、エタノール 290gを加えて撹拌、希釈したのち、無機合成吸着剤(商品名「キョーワード700」、協和化学工業(株)製)を50g添加して75℃で2時間過熱撹拌してろ過した。ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮して減圧デシケーター中で恒量値まで乾燥して、白色ペーストとして3−[N−メチル(10−ウンデセノイルアミド)]プロパン−1,2−ジオール 382.80g(収率:77.5%)を得た。尚、得られた反応生成物の構造は、
1H−NMRスペクトル、及びIRスペクトルにより確認した(
図3、4参照)。
【0052】
実施例3
3方コック付き水素導入口付きの還流管、3方コック付き窒素導入口、滴下ロート、減圧シール付き撹拌翼、温度計を備えた300mlの5ツ口フラスコに、ジメチルシロキサン−メチルヒドロシロキサン共重合ポリマー(商品名「KF−9901」、信越化学(株)製、式(4)で表され、式中のR
1〜R
9がメチル基である化合物、以後、「KF−9901」と称する場合がある)2.93g、0.2重量%塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液 0.17gを入れ、滴下ロートには1−デセン 2.28g(16.2ミリmol)、3−[N−メチル(10−ウンデセノイルアミド)]プロパン−1,2−ジオール 0.54g(1.8ミリmol)、イソプロパノール 5.8gの混合溶液を入れて反応器内部を窒素置換した。40℃で撹拌しつつ滴下ロート内の混合溶液を1時間かけて滴下した後、3時間かけて80℃まで加熱し、6時間後に1−デセン 0.390g(2.78ミリmol)と12時間後に1−デセン 0.196g(1.40ミリmol)を追加しつつ、19時間撹拌した。反応溶液をサンプリングして0.1N KOH水溶液で水素発生が認められなくなり、かつ
1H−NMR(重クロロホルム)でδ4.65〜4.70ppmに観測されるSi−Hプロトン由来のNMRシグナルが消失したことを確認の上、冷却した。
次に10% パラジウム担持カーボン(エヌイーケムキャット(株)製、PEタイプ)0.030gを添加し、反応器内を水素雰囲気に置換して80℃で加熱撹拌し、反応溶液を適宜サンプリングして
1H−NMR(重クロロホルム)でδ5.3ppm〜δ5.5ppmに観測されるオレフィンプロトン由来のNMRシグナルが消失したことが確認されるまで加熱撹拌した後、冷却した。反応混合物をメンブレンフィルターでろ過してロータリーエバポレーターで濃縮し無色透明オイル状化合物 4.30gを得た。
1H−NMRシグナルの積分値より、式(b)で表されるシロキサン単位(mol%):式(a1)で表されるシロキサン単位(mol%):式(a2)で表されるシロキサン単位(mol%)=59.4:37.0:3.6であることが計算により求められた。また、3−(N−メチル−ウンデカノイルアミド)プロパン−1,2−ジオールの含有量は3.4重量%であった。尚、得られた反応生成物の構造は、
1H−NMRスペクトル、及びIRスペクトルにより確認した(
図5、6参照)。
【0053】
実施例4
3方コック付き水素導入口付き還流管、3方コック付き窒素導入口、滴下ロート、減圧シール付き撹拌翼、温度計を備えた300ml 5ツ口フラスコに、「KF−9901」 58.67g、0.2重量%塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液 2.07gを入れ、滴下ロートには1−デセン 50.67g(360ミリmol)、3−(10−ウンデセノイルアミド)プロパン−1,2−ジオール 10.31g(40ミリmol)、イソプロパノール 119.47gの混合溶液を入れて反応器内部を窒素置換した。40℃で撹拌しつつ滴下ロート内の混合溶液を1時間かけて滴下した後、3時間かけて80℃まで加熱し、5時間後に1−デセン 7.87g(56ミリmol)と12.5時間後に1−デセン3.37g(24ミリmol)を追加して、反応溶液を適宜サンプリングして0.1N KOH水溶液で水素発生が認められなくなり、かつ
1H−NMR(重クロロホルム)でδ4.65〜4.70ppmに観測されるSi−Hプロトン由来のNMRシグナルが消失したことが確認されるまで過熱撹拌して22時間後に室温まで冷却した。
次に10% パラジウム担持カーボン(エヌイーケムキャット(株)製、PEタイプ)0.6gを添加し、反応器内を水素雰囲気に置換して撹拌しながら80℃に加熱し、反応溶液を適宜サンプリングして
1H−NMR(重クロロホルム)でδ5.3ppm〜δ5.5ppmに観測されるオレフィンプロトン由来のNMRシグナルが消失したことが確認されるまで加熱撹拌した後、冷却した。反応混合物をメンブレンフィルターでろ過してロータリーエバポレーターで濃縮・脱低沸して無色透明オイル状化合物 111.53gを得た。
1H−NMRより、式(b)で表されるシロキサン単位(mol%):式(a1)で表されるシロキサン単位(mol%):式(a2)で表されるシロキサン単位(mol%)=57.4:40.7:1.9であることが判明した。また、3−
(ウンデカノイルアミド)プロパン−1,2−ジオールの含有量は5.0重量%であった。
【0054】
実施例5
3方コック付き水素導入口付き還流管、3方コック付き窒素導入口、滴下ロート、減圧シール付き撹拌翼、温度計を備えた300ml 5ツ口フラスコに、「KF−9901」 58.67g、0.2重量%塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液 2.07gを入れ、滴下ロートには1−デセン 44.90g(320ミリmol)、3−(10−ウンデセノイルアミド)プロパン−1,2−ジオール 20.53g(80ミリmol)、イソプロパノール 124.04gの混合溶液を入れて反応器内部を窒素置換した。40℃で撹拌しつつ滴下ロート内の混合溶液を1時間かけて滴下した後、3時間かけて80℃まで加熱し、5時間後に1−デセン 7.86g(56ミリmol)と12.5時間後に1−デセン 3.37g(24ミリmol)を追加して、反応溶液を適宜サンプリングして0.1N KOH水溶液で水素発生が認められなくなり、かつ1H−NMR(重クロロホルム)でδ4.65〜4.70ppmに観測されるSi−Hプロトン由来のNMRシグナルが消失したことが確認されるまで過熱撹拌して22時間後に室温まで冷却した。
次に10% パラジウム担持カーボン(エヌイーケムキャット(株)製、PEタイプ)0.6gを添加し、反応器内を水素雰囲気に置換して撹拌しながら80℃に加熱し、反応溶液を適宜サンプリングして1H−NMR(重クロロホルム)でδ5.3ppm〜δ5.5ppmに観測されるオレフィンプロトン由来のNMRシグナルが消失したことが確認されるまで加熱撹拌した後、冷却した。反応混合物をメンブレンフィルターでろ過してロータリーエバポレーターで濃縮・脱低沸して無色透明オイル状化合物 110.92gを得た。
1H−NMRシグナルの積分値より、式(b)で表されるシロキサン単位(mol%):式(a1)で表されるシロキサン単位(mol%):式(a2)で表されるシロキサン単位(mol%)=57.8:36.8:5.4であることが計算により求められた。また、3−
(ウンデカノイルアミド)プロパン−1,2−ジオールの含有量は8.9重量%であった。
【0055】
実施例6
3方コック付き水素導入口付き還流管、3方コック付き窒素導入口、滴下ロート、減圧シール付き撹拌翼、温度計を備えた300ml 5ツ口フラスコに、「KF−9901」 58.76g、0.2重量%塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液 2.081gを入れ、滴下ロートには1−デセン 50.50g(360ミリmol)、3−[N−メチル(10−ウンデセノイルアミド)]プロパン−1,2−ジオール 10.83g(40ミリmol)、イソプロパノール 120.07gの混合溶液を入れて反応器内部を窒素置換した。40℃で撹拌しつつ滴下ロート内の混合溶液を1時間かけて滴下した後、3時間かけて80℃まで加熱し、5時間後に1−デセン 7.86g(56ミリmol)と12時間後に1−デセン 3.37g(24ミリmol)を追加して、反応溶液を適宜サンプリングして0.1N KOH水溶液で水素発生が認められなくなり、かつ
1H−NMR(重クロロホルム)でδ4.65〜4.70ppmに観測されるSi−Hプロトン由来のNMRシグナルが消失したことが確認されるまで過熱撹拌して22時間後に室温まで冷却した。
次に10% パラジウム担持カーボン(エヌイーケムキャット(株)製、PEタイプ)0.6gを添加し、反応器内を水素雰囲気に置換して撹拌しながら80℃に加熱し、反応溶液を適宜サンプリングして
1H−NMR(重クロロホルム)でδ5.3ppm〜δ5.5ppmに観測されるオレフィンプロトン由来のNMRシグナルが消失したことが確認されるまで加熱撹拌した後、冷却した。反応混合物をメンブレンフィルターでろ過してロータリーエバポレーターで濃縮・脱低沸して無色透明オイル状化合物 122.25gを得た。
1H−NMRシグナルの積分値より、式(b)で表されるシロキサン単位(mol%):式(a1)で表されるシロキサン単位(mol%):式(a2)で表されるシロキサン単位(mol%)=57.6:39.6:2.8であることが計算により求められた。また、3−(N−メチル−ウンデカノイルアミド)プロパン−1,2−ジオールの含有量は3.9重量%であった。
【0056】
実施例7
3方コック付き水素導入口付き還流管、3方コック付き窒素導入口、滴下ロート、減圧シール付き撹拌翼、温度計を備えた300ml 5ツ口フラスコに、「KF−9901」 58.67g、0.2重量%塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液 2.075gを入れ、滴下ロートには1−デセン 44.89g(320ミリmol)、3−[N−メチル(10−ウンデセノイルアミド)]プロパン−1,2−ジオール 21.63g(80ミリmol)、イソプロパノール 125.18gの混合溶液を入れて反応器内部を窒素置換した。40℃で撹拌しつつ滴下ロート内の混合溶液を1時間かけて滴下した後、3時間かけて80℃まで加熱し、5時間後に1−デセン 7.86g(56ミリmol)と12.5時間後に1−デセン 3.37g(24ミリmol)を追加して、反応溶液を適宜サンプリングして0.1N KOH水溶液で水素発生が認められなくなり、かつ
1H−NMR(重クロロホルム)でδ4.65〜4.70ppmに観測されるSi−Hプロトン由来のNMRシグナルが消失したことが確認されるまで過熱撹拌して19時間後に室温まで冷却した。
次に10% パラジウム担持カーボン(エヌイーケムキャット(株)製、PEタイプ)0.6gを添加し、反応器内を水素雰囲気に置換して撹拌しながら80℃に加熱し、反応溶液を適宜サンプリングして
1H−NMR(重クロロホルム)でδ5.3ppm〜δ5.5ppmに観測されるオレフィンプロトン由来のNMRシグナルが消失したことが確認されるまで加熱撹拌した後、冷却した。反応混合物をメンブレンフィルターでろ過してロータリーエバポレーターで濃縮・脱低沸して無色透明オイル状化合物 128.87gを得た。
1H−NMRシグナルの積分値より、式(b)で表されるシロキサン単位(mol%):式(a1)で表されるシロキサン単位(mol%):式(a2)で表されるシロキサン単位(mol%)=59.4:33.6:6.9であることが計算により求められた。また、3−(N−メチル−ウンデカノイルアミド)プロパン−1,2−ジオールの含有量は5.9重量%であった。
【0057】
実施例8〜11、比較例1、2
ポリプロピレン製遠沈管に、下記表1に示した配合比で水(イオン交換水)、油(ジメチルポリシロキサン、商品名「SH200」、東レ・ダウコーニング(株)製)、及び界面活性剤を入れ、スパチュラで混合後さらにボルテックスミキサーで5分間撹拌して、高含水W/O型乳液を得た。得られた乳液を室温(25℃)で1日静置したものについて、水相と油相の分離度合いを観察し、以下の基準で乳化安定性を評価した。
評価基準
○:明確な分離は見られず
△:体積10%未満の分離層あり
×:体積10%以上の分離層あり
【0058】
【表1】
【0059】
尚、界面活性剤としては、下記化合物を使用した。
変性ポリシロキサン化合物1:実施例7で得られた化合物
変性ポリシロキサン化合物2:実施例4で得られた化合物
シリコーン乳化用ポリマー:グリセリルエーテル変性シリコーン、商品名「ペネトールSI−U」、花王(株)製
【0060】
表1より、本発明の変性ポリシロキサン化合物は優れた乳化能を示す物質であることが分かる。そのため、本発明の変性ポリシロキサン化合物は、一般に両親媒性化合物を使用し得る用途(例えば、分散剤や高分子乳化剤、コーティング剤等への添加剤等)、特に乳化応用製品である広範な化粧料組成物に好適に用いられる。