(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940804
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】スライドドア車のシール構造
(51)【国際特許分類】
B60J 10/86 20160101AFI20160616BHJP
B60R 13/06 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
B60J5/00 501K
B60R13/06
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-277779(P2011-277779)
(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公開番号】特開2013-129206(P2013-129206A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】浅窪 孝一
【審査官】
常盤 務
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3152469(JP,U)
【文献】
特開2003−159947(JP,A)
【文献】
特開2004−237937(JP,A)
【文献】
特開平07−156655(JP,A)
【文献】
特開2006−088984(JP,A)
【文献】
実開昭60−105550(JP,U)
【文献】
特開2008−055977(JP,A)
【文献】
特開2009−202798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/86
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジ式フロントドアと併用されるリアドアとしてのスライドドアの前端部に上下方向に沿ってパーティングシールを装着し、双方のドア閉時に上記パーティングシールをフロントドアの後端部に当接させることで当該フロントドアの後端部とスライドドアの前端部とのパーティング部をシールするようにしたスライドドア車のシール構造であって、
上記スライドドアの前端部には、スライドドアの外側面よりも室内側に向かって一段低くなるフランジ部とともに当該フランジ部と上記スライドドアの外側面とを接続している縦壁部を形成することで当該部位を内アングル状の段状部としてあるとともに、
この段状部に受容されるかたちで中空状のパーティングシールを装着してあり、
このパーティングシールは、上記段状部に着座することになるアングル状の取付基部と、この取付基部の両端同士を接続しつつ円弧状に膨出して当該取付基部とともに中空部を形成しているシール壁部と、を有しているとともに、上記シール壁部のうち取付基部に対する室内側の根元部近傍を上記縦壁部とほぼ平行となるように設定してあり、
さらに、上記取付基部をソリッドのゴム系材料で、上記シール壁部をスポンジゴム系材料でそれぞれ形成してあるとともに、
上記シール壁部のうち取付基部に対する室内側の根元部近傍に重合するように取付基部側から補強壁部を延設し、
上記シール壁部と補強壁部との重合部分をシール壁部の他の部位に比べて厚肉に形成して厚肉部としてあることを特徴とするスライドドア車のシール構造。
【請求項2】
上記補強壁部の根元部にノッチ部を形成してあることを特徴とする請求項1に記載のスライドドア車のシール構造。
【請求項3】
上記フランジ部はスライドドアの前端のヘミング結合部であって、
上記パーティングシールの取付基部の一部を共有するかたちで断面略U字状のウエルト部を一体に形成し、
このウエルト部を上記ヘミング結合部に嵌合保持させることでパーティングシールを上記段状部に固定支持させてあることを特徴とする請求項1または2に記載のスライドドア車のシール構造。
【請求項4】
上記取付基部を止着手段にて段状部に対し直接的に固定支持させてあることを特徴とする請求項1または2に記載のスライドドア車のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ式フロントドアと併用されるリアドアとしてスライドドアを備えたスライドドア車のシール構造に関し、より詳しくは、ヒンジ式フロントドアとスライドドアとの間のパーティング部をシールするシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のスライドドア車のシール構造として、例えば特許文献1に記載のものが提案されている。この従来の技術では、
図6に示すように、リアドアであるスライドドア101の前端部に断面形状が略扇形状の中空構造をなすパーティングシール102を装着し、双方のドア閉時にパーティングシール102をフロントドア103の後端部に圧接または弾接させることで、フロントドア103とスライドドア101との間のパーティング部104を埋めるべく当該パーティング部104をパーティングシール102にてシールするようになっている。なお、
図6はパーティングシール102に対しフロントドア103の後端部が圧接または弾接していないパーティングシール102の自由状態を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3152469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、
図7に示すように、リアドアとしてのスライドドア101の特殊性として、スライドドア101の閉動作時における末期にはその進入軌跡L1が室外側後方から室内側前方に向かって斜めのものなり、実質的にスライドドア101の前端部がフロントドア103の後端部よりも室内側に潜り込むような挙動となるため、フロントドア103の後端部とスライドドア101の前端部とのなすパーティング部(パーティング隙間)104にパーティングシール102の中空シール部105の一部を噛み込んでしまい、同図に示すように、そのパーティングシール102の一部が双方のドアの外板面よりも外側にはみ出して突出したままとなることがあり、外観品質の向上の上でなおも改善の余地を残している。
【0005】
また、スライドドア101の開動作時に、当該スライドドア101の動きに追従してパーティングシール102がスライドドア101側の着座面から前方に向かって一旦起き上がり気味となり、定位置に戻る際にパネルに当たって打音を発生することがある。
【0006】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、基本的には前述の従来技術と同様のシール構造を採用した上で外観等の品質を改善したスライドドア車のシール構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ヒンジ式フロントドアと併用されるリアドアとしてのスライドドアの前端部に上下方向に沿ってパーティングシールを装着し、双方のドア閉時に上記パーティングシールをフロントドアの後端部に当接させることで当該フロントドアの後端部とスライドドアの前端部とのパーティング部をシールするようにしたスライドドア車のシール構造である。
【0008】
その上で、上記スライドドアの前端部には、スライドドアの外側面よりも室内側に向かって一段低くなるフランジ部とともに当該フランジ部と上記スライドドアの外側面とを接続している縦壁部を形成することで当該部位を内アングル状の段状部としてあるとともに、この段状部に受容されるかたちで中空状のパーティングシールを装着してある。
【0009】
そして、このパーティングシールは、上記段状部に着座することになるアングル状の取付基部と、この取付基部の両端同士を接続しつつ円弧状に膨出して当該取付基部とともに中空部を形成しているシール壁部と、を有してい
るとともに、上記シール壁部のうち取付基部に対する室内側の根元部近傍を上記縦壁部とほぼ平行となるように設定してあり、
さらに、上記取付基部をソリッドのゴム系材料で、上記シール壁部をスポンジゴム系材料でそれぞれ形成してあるとともに、上記シール壁部のうち取付基部に対する室内側の根元部近傍に重合するように取付基部側から補強壁部を延設し、上記シール壁部
と補強壁部との重合部分をシール壁部の他の部位に比べて厚肉に形成して厚肉部としてあることを特徴とする。
【0011】
また、請求項
2に記載の発明のように、上記補強壁部の根元部にノッチ部を形成してあると、補強壁部がシール壁部とともに撓み変形する際の挙動がより安定したものとなる。
【0012】
ここで、スライドドアに対するパーティングシールの具体的な装着方法としては、例えば請求項
3に記載の発明のように、上記フランジ部をスライドドアの前端のヘミング結合部としたならば、上記パーティングシールの取付基部の一部を共有するかたちで断面略U字状のウエルト部を一体に形成し、このウエルト部を上記ヘミング結合部に嵌合保持させることでパーティングシールを上記段状部に固定支持させるものとする。
【0013】
あるいはウエルト部を併用しない場合には、請求項
4に記載のように、前述の取付基部を止着手段にて段状部に対し直接的に固定支持させる方式としても良い。
【0014】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、上記シール壁部のうち取付基部に対する室内側の根元部近傍が他の部位に比べて厚肉の厚肉部となっていて、実質的にこの厚肉形状をもってシール壁部のうち取付基部に対する室内側の根元部近傍が補強されているため、当該シール壁部のうち取付基部に対する室内側の根元部近傍がシール壁部に対して及ぼす反発力は従来よりも大きくなる。そのため、従来の不具合と同様にシール壁部の一部がはみ出そうとした場合に、このはみ出しを引き込もうとする力、すなわち上記はみ出しに対抗するような反発力をシール壁部に付与することができる。これによって、パーティングシールの一部であるシール壁部のはみ出しを未然に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
請求項
1に記載の発明によれば、シール壁部のはみ出しを未然に防止して外観品質の向上に寄与することができるとともに、スライドドア開時の打音の発生も同時に防止できる。
【0016】
また、請求項
2に記載の発明によれば、補強壁部の根元部にノッチ部を形成してあることによって、請求項
1に記載の発明と同様の効果に加えて、補強壁部がシール壁部とともに撓み変形する際の挙動が安定化する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明に係るスライドドア車のシール構造の第1の形態を示す図であって、
図1におけるA−A線に沿う自由状態での拡大断面図。
【
図3】
図2に示したスライドドア車のシール構造においてフロントドアおよびスライドドアの閉動作時の状態を示す拡大断面図。
【
図4】本発明に係るスライドドア車のシール構造の第2の形態を示す図であって、
図2と同等部位の拡大断面図。
【
図5】本発明に係るスライドドア車のシール構造の第3の形態を示す図であって、
図2と同等部位の拡大断面図。
【
図6】従来のスライドドア車のシール構造を示す断面説明図。
【
図7】
図6におけるスライドドアの閉動作時の状態を示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜3は本発明に係るスライドドア車のシール構造を実施するための具体的な第1の形態を示していて、特に
図1は本発明が適用されるスライドドア車の側面説明図を示し、また
図2は
図1におけるA−A線に沿う自由状態での拡大断面図を示している。
【0019】
図1,2において、1は前ヒンジ式のフロントドア、2はフロントドア1と併用されるリアドアとしてのスライドドアである。フロントドア1およびスライドドア2が共に閉止状態(ドア閉状態)にあるときには、双方のドア1,2の外板面同士がほぼ面一状態になるように設定されている。
【0020】
そして、かかるフロントドア1およびスライドドア2の閉止状態においては、フロントドア1の後端とスライドドア2の前端との間にいわゆるパーティング部(パーティング隙間)3の発生が不可避であることから、このパーティング部3を閉塞または封止するために両者の間にパーティングシール4が配設されている。このパーティングシール4は
図1に示す双方のドア1,2のほぼ全高にわたって配設されている。
【0021】
図2に示すように、フロントドア1の後端部はアウタパネル5側を折り返してインナパネル6をクリンチした一般的なヘミング結合部7とされているのに対して、スライドドア2の前端部はフロントドア1の後端部と同様にアウタパネル8側を折り返してインナパネル9をクリンチしたヘミング結合部10ではあっても、フロントドア1側のヘミング結合部7よりも室内側にオフセットした位置にスライドドア2のヘミング結合部10が設定されている。このように、スライドドア2の外側面11よりも当該スライドドア2側のヘミング結合部10が室内側に奥まった位置にあることで、スライドドア2の前端部は有段形状となっている。
【0022】
より具体的には、スライドドア2のヘミング結合部10を上記有段形状におけるフランジ部と理解するならば、スライドドア2の前端部には、当該スライドドア2の外側面11よりも室内側に向かって一段低くなるフランジ部としてのヘミング結合部10とともに、当該ヘミング結合部10とスライドドア2の外側面11とを接続している縦壁部13を形成することで、実質的に当該部位を内アングル状の段状部14として形成してある。そして、スライドドア2の前端部の段状部14にて受容するかたちでパーティングシール4を配設してある。
【0023】
このパーティングシール4は、ソリッドのゴム系材料で形成されて上記段状部14に倣うかたちの内アングル状の取付基部15と、取付基部15と一部を共有するかたちで同じくソリッドのゴム系材料で形成された断面略U字状のウエルト部16と、スポンジゴム系材料で形成されて取付基部15とともに中空部17を形成しているシール壁部18によって構成されている。
【0024】
なお、上記取付基部15とウエルト部16の材質であるソリッドのゴム系材料、およびシール壁部18の材質であるスポンジゴム系材料は一例にすぎず、要は上記取付基部15とウエルト部16の材質よりもシール壁部18の材質の方が軟質のものであれば良い。
【0025】
上記ウエルト部16は、相互に対向する側壁部19,20同士をそれらの間に介在する底壁部21をもって相互に接続することにより底壁部21と正対する車両後方側を開口部22として開口させてあるとともに、ウエルト部16には当該ウエルト部16と略相似形をなす芯材23が埋設されている。そして、一方の側壁部19を取付基部15が共有していて、取付基部15はこの一方の側壁部19と縦壁部24とで段状部14と相似形をなす内アングル状のものとして形成されている。
【0026】
ウエルト部16における側壁部20には一対の舌片状の保持リップ25が斜めに突出形成されていて、ヘミング結合部10に対してウエルト部16を押し込むことにより、それ自体の挟持力と保持リップ25の弾性力によって、側壁部19がヘミング結合部10に着座するようにしてパーティングシール4がヘミング結合部10に嵌合保持されている。同時に、取付基部15は内アングル状の段状部14に倣いつつ着座するように位置決めされる。これにより、パーティングシール4はスライドドア2の前端部において上下方向に延在している。
【0027】
また、上記内アングル状の取付基部15のうち縦壁部24の室外側の端部と一方の側壁部19の前端とを円弧状の膨出形状あるいは変形D字状にて接続するかたちでスポンジゴム系材料製のシール壁部18が形成されていて、このシール壁部18は内アングル状の取付基部15を共有するかたちで当該取付基部15とともに中空部17を形成している。そして、先に述べたように
図2はパーティングシール4の自由状態を示しているので、この自由状態においては縦壁部24とシール壁部18とのなすコーナー部が段状部14における縦壁部13に着座しているとともに、シール壁部18の最も室外側の部位がスライドドア2の外側面11よりも突出することがないようにシール壁部18の周長が予め設定されている。
【0028】
シール壁部18のうち取付基部15に対する室内側の根元部近傍、より具体的には、シール壁部18のうち取付基部15とウエルト部16とが共有している一方の側壁部19側の根元部近傍では、取付基部15側から補強壁部26がシール壁部18の内側周長の所定範囲にわたり当該シール壁部18の根元部近傍に重合するように延設されることによって、シール壁部18の他の部位に比べて厚肉となった厚肉部27が形成されている。すなわち、シール壁部18のうち一方の側壁部19側の根元部近傍の内壁面には、当該一方の側壁部19側からソリッドのゴム系材料からなる補強壁部26が延長形成されていて、この補強壁部26がシール壁部18と重なり合うようにいわゆる2層構造のかたちで一体形成され、当該補強壁部26とシール壁部18とで2層構造の厚肉部27が形成されている。この補強壁部26はシール壁部18における根元部の補強部として機能することになる。
【0029】
ここで、ウエルト部16における底壁部21の外周面側(車両前方側)には断面円環状のセンサ用チューブ28が一体に形成されていて、このセンサ用チューブ28の内部にはワイヤ状の感圧センサ29が挿入されている。また、ウエルト部16における側壁部20の車両後方側の端部には断面略C字状のクリップ30が一体に形成されていて、上記感圧センサ29に付帯するワイヤーハーネス31を保持している。そして、例えばスライドドア2の開閉動作がアクチュエータ駆動で行われる自動ドアとなっている場合に、ドア閉動作中にスライドドア2の前端に人体等が当たると上記感圧センサ29はこれを検知して、スライドドア2が直ちに反転動作、すなわちドア開動作に切り換わることになる。
【0030】
なお、上記センサ用チューブ28のうち車両前方側となる少なくとも半分程度がシール壁部18と同様のスポンジ系材料で形成されていると、感圧センサ29の感度向上の上で有利となる。
【0031】
したがって、このように構成されたシール構造によれば、フロントドア1およびスライドドア2が共に閉状態にある時には、パーティングシール4は
図3の状態となってこの状態を自己保持する。
【0032】
特にスライドドア2の閉動作時には、当該閉動作時における末期の進入軌跡が
室外側後方から室内側前方に向かって
図3中の符号Lのように斜めのものなるため、スライドドア2が閉止限位置で止まる直前からシール壁部18とフロントドア1の後端とが摺動し始めるとともにシール壁部18が撓み変形し、上記摺動による摩擦力のためにシール壁部18のうち室外側の部分32、すなわちシール壁部18のうち最終的にパーティング部3に臨む部位32が、フロントドア1やスライドドア2の外側面よりも外側にはみ出そうとする力が作用することになる。この傾向は、シール壁部18が周長方向において矢印t1方向に引っ張られることにほかならない。
【0033】
その一方、シール壁部18が矢印t1方向に引っ張られるのに伴い、そのシール壁部18の根元部と補強壁部26との重合部分である厚肉部27が
図3において実線で示すように縦壁部13に近付く方向に撓み変形しようとするものの、実質的に補強壁部26で補強されているシール壁部18の根元部の剛性が他の部位よりも大きいために、上記矢印t1方向の引っ張り力に対抗して、シール壁部18の根元部と補強壁部26との重合部分である厚肉部27が起き上がるようにして矢印r1方向の反発力が発生する。この反発力r1のために、シール壁部18は矢印t1方向とは反対方向に引っ張られることになり、結果として、シール壁部18のうち最終的にパーティング部3に臨む部位32がフロントドア1やスライドドア2の外側面よりも外側にはみ出すことがなくなる。
【0034】
これに対して、シール壁部18の根元部が
図3のような補強壁部26にて補強されていないと、同図の矢印r1方向の反発力が不足して、先に発明が解決しようとする課題の欄でも述べたように、シール壁部18の一部が双方のドア1,2の外側面11よりも外側にはみ出して突出したままとなる外観不良が発生することになる。
【0035】
図4は本発明に係るスライドドア車のシール構造の第2の形態を示す図で、
図2と共通する部分には同一符号を付してある。
【0036】
図4に示す第2の形態では、パーティングシール54において厚肉部47を形成している補強壁部46の根元部にノッチ部34を形成したものである。この第2の形態では、ノッチ部34があることによって、補強壁部46を含むシール壁部18が撓み変形する際の挙動が安定化して、反復性に優れたものとなるとともに、先の第1の形態に比べて次のような利点がある。
【0037】
図4において、例えばフロントドア1の閉動作時における進入軌跡は矢印Fで示すものとなり、しかもフロントドア1は多かれ少なかれ室内側にオーバースト
ロークした上で最終的に
図4に示す閉止位置で停止することなる。そして、シール壁部18もまたオーバーストローク位置まで撓み変形した上で、フロントドア1に追従して復元することになる。
【0038】
この場合において、先に述べた補強壁部46の剛性や高さ寸法の設定次第では、オーバーストローク位置から閉止位置に戻るフロントドア1の動きに対してシール壁部18が忠実に追従できずに、シール壁部18がオーバーストローク位置に留まったままとなる可能性がある。しかし、補強壁部46の根元部にノッチ部34を形成した
図4の第2の形態では、オーバーストローク位置から閉止位置にフロントドア1が戻る際に補強壁部46が前方に撓み、シール壁部18は反転して元に戻ることができるため、かかる不具合を解消できるようになる。
【0039】
図5は本発明に係るスライドドア車のシール構造の第3の形態を示す図で、
図2と共通する部分には同一符号を付してある。
【0040】
この第3の形態のパーティングシール64では、
図2に示したウエルト部16やセンサチューブ28およびクリップ30等をなくして、補強壁部26を含む断面略内アングル状の取付基部15とシール壁部18とで中空部17を形成しつつパーティングシール64として成立させたものである。そして、スライドドア2の前端部の段状部14への取り付けにあたっては、取付基部15の縦壁部24に挿入されることになる止着手段としてのクリップ35を用いて段状部14に直接的に固定したものである。
【0041】
この第3の形態においても先の第1の形態と同様の効果が得られることは言うまでもない。また、
図5の第3の形態においても、補強壁部26の根元部に
図4と同様のノッチ部34を形成しても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1…ヒンジ式フロントドア
2…スライドドア
3…パーティング部
4…パーティングシール
10…ヘミング結合部(フランジ部)
11…外側面
13…縦壁部
14…段状部
15…取付基部
16…ウエルト部
18…シール壁部
26…補強壁部
27…厚肉部
34…ノッチ部
46…補強壁部
47…厚肉部
54…パーティングシール
64…パーティングシール