特許第5940806号(P5940806)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコープレシジョン株式会社の特許一覧

特許5940806フォーカルプレーンシャッタ及び光学機器
<>
  • 特許5940806-フォーカルプレーンシャッタ及び光学機器 図000002
  • 特許5940806-フォーカルプレーンシャッタ及び光学機器 図000003
  • 特許5940806-フォーカルプレーンシャッタ及び光学機器 図000004
  • 特許5940806-フォーカルプレーンシャッタ及び光学機器 図000005
  • 特許5940806-フォーカルプレーンシャッタ及び光学機器 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940806
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】フォーカルプレーンシャッタ及び光学機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/36 20060101AFI20160616BHJP
   G03B 9/40 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   G03B9/36 C
   G03B9/40
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-278784(P2011-278784)
(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公開番号】特開2013-130648(P2013-130648A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】396004981
【氏名又は名称】セイコープレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100135622
【弁理士】
【氏名又は名称】菊地 挙人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕士
(72)【発明者】
【氏名】大石 誠一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 満
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 翔一
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−341704(JP,A)
【文献】 特開昭56−099330(JP,A)
【文献】 特開昭54−000619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/36
G03B 9/40
G03B 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有した基板と、
前記開口を開閉する第1及び第2幕と、
前記開口を開閉するように前記第1及び第2幕をそれぞれ駆動し前記基板に支持された第1及び第2駆動源と、を備え、
前記第1及び第2駆動源は、それぞれ、ロータと、コイルと、前記ロータと対向する第1及び第2磁極部を有し前記コイルが巻回され磁性体である本体部、前記本体部の途中に設けられた凹部、前記凹部に対向して移動可能であり磁性体である可動部、を含むステータと、を含み、
前記第1及び第2駆動源のコイルは互いに対向し、前記第1及び第2駆動源の可動部は、前記第1及び第2駆動源のコイルを介して前記開口を開閉するように前記第1及び第2幕が駆動する方向に並んでおり、
前記可動部は、前記凹部内を回転可能、前記凹部内を前記本体部が伸びる方向に直交する方向に移動可能、及び前記凹部内を前記開口の光軸方向に移動可能、の何れかである、フォーカルプレーンシャッタ。
【請求項2】
開口を有した基板と、
前記開口を開閉する第1及び第2幕と、
前記開口を開閉するように前記第1及び第2幕をそれぞれ駆動し前記基板に支持された第1及び第2駆動源と、を備え、
前記第1及び第2駆動源は、それぞれ、ロータと、コイルと、前記ロータと対向する第1及び第2磁極部を有し前記コイルが巻回され磁性体である本体部、前記本体部の途中に設けられた凹部、前記凹部に対向して移動可能であり磁性体である可動部、を含むステータと、を含み、
前記第1駆動源の前記可動部と前記第2駆動源のコイルは対向し、前記第1及び第2駆動源の可動部は、前記第2駆動源のコイルを介して前記開口を開閉するように前記第1及び第2幕が駆動する方向に並んでおり、
前記可動部は、前記凹部内を回転可能、前記凹部内を前記本体部が伸びる方向に直交する方向に移動可能、及び前記凹部内を前記開口の光軸方向に移動可能、の何れかである、フォーカルプレーンシャッタ。
【請求項3】
前記本体部は、前記凹部における前記ステータの薄肉部を有し、
前記第1磁極部から前記第2磁極部までの間の磁路に直交する前記本体部の断面の面積は、前記薄肉部が最小である、請求項1又は2のフォーカルプレーンシャッタ。
【請求項4】
請求項1乃至の何れかのフォーカルプレーンシャッタを備えた光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカルプレーンシャッタ及びそれを備えた光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステータの外側に配置された永久磁石の位置を調節することにより、コイルに印加される電力を調整しなくてもロータの回転速度を調整できるアクチュエータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−287432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ステータの外側に永久磁石を配置しなければならないので、アクチュエータ全体が大型化する。
【0005】
そこで本発明は、コイルへ印加される電力を調整しなくてもロータの回転速度を調整可能であり小型化されたアクチュエータを備えたフォーカルプレーンシャッタ、及びそれを備えた光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、開口を有した基板と、前記開口を開閉する第1及び第2幕と、前記開口を開閉するように前記第1及び第2幕をそれぞれ駆動し前記基板に支持された第1及び第2駆動源と、を備え、前記第1及び第2駆動源は、それぞれ、ロータと、コイルと、前記ロータと対向する第1及び第2磁極部を有し前記コイルが巻回され磁性体である本体部、前記本体部の途中に設けられた凹部、前記凹部に対向して移動可能であり磁性体である可動部、を含むステータと、を含み、前記第1及び第2駆動源のコイルは互いに対向し、前記第1及び第2駆動源の可動部は、前記第1及び第2駆動源のコイルを介して前記開口を開閉するように前記第1及び第2幕が駆動する方向に並んでおり、前記可動部は、前記凹部内を回転可能、前記凹部内を前記本体部が伸びる方向に直交する方向に移動可能、及び前記凹部内を前記開口の光軸方向に移動可能、の何れかである、フォーカルプレーンシャッタによって達成できる。また、上記目的は、開口を有した基板と、前記開口を開閉する第1及び第2幕と、前記開口を開閉するように前記第1及び第2幕をそれぞれ駆動し前記基板に支持された第1及び第2駆動源と、を備え、前記第1及び第2駆動源は、それぞれ、ロータと、コイルと、前記ロータと対向する第1及び第2磁極部を有し前記コイルが巻回され磁性体である本体部、前記本体部の途中に設けられた凹部、前記凹部に対向して移動可能であり磁性体である可動部、を含むステータと、を含み、前記第1駆動源の前記可動部と前記第2駆動源のコイルは対向し、前記第1及び第2駆動源の可動部は、前記第2駆動源のコイルを介して前記開口を開閉するように前記第1及び第2幕が駆動する方向に並んでおり、前記可動部は、前記凹部内を回転可能、前記凹部内を前記本体部が伸びる方向に直交する方向に移動可能、及び前記凹部内を前記開口の光軸方向に移動可能、の何れかである、フォーカルプレーンシャッタによって達成できる。
【0007】
可動部が本体部に対して移動することにより、ステータ内を通過する磁束量が変化する。これにより、ステータとロータとの間に作用する磁力を調整される。これにより、コイルへ印加される電力を調整することなくロータの回転速度を調整することができる。
【0010】
上記目的は、上記フォーカルプレーンシャッタを備えた光学機器によっても達成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コイルへ印加される電力を調整しなくてもロータの回転速度を調整可能であり小型化されたアクチュエータを備えたフォーカルプレーンシャッタ、及びそれを備えた光学機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1A〜1Cは、本実施例のアクチュエータの説明図である。
図2図2は、本実施例のアクチュエータを採用したフォーカルプレーンシャッタの正面図である。
図3図3A、3Bは、第1変形例のアクチュエータの説明図である。
図4図4は、第2変形例のアクチュエータの説明図である。
図5図5A、5Bは、第2変形例のアクチュエータの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施例を説明する。図1A〜1Cは、本実施例のアクチュエータ70の説明図である。アクチュエータ70は、ロータ71、コイル73、コイル73が巻回されたステータ75、を含む。ロータ71は、周方向に複数の磁極が着磁された永久磁石である。ロータ71は円柱状である。ロータ71の中心にはロータ軸711が設けられており、ロータ軸711によりロータ71は回転可能に支持されている。
【0014】
コイル73は、不図示のコイルボビンに巻回されており、このコイルボビンがステータ75に装着されている。ステータ75は、ステータ75を支持する基板等に固定される本体部76、本体部76に対して移動可能に設けられた可動部78を含む。ステータ75は、略U字状である。本体部76、可動部78は、何れも磁性体である。本体部76は、互いに略平行で直線状の腕部761、762を含む。また、本体部76は、腕部761、762に連続して腕部761、762に直交する方向に伸びた連続部763を含む。腕部761にコイル73が巻回されたコイルボビンが装着されている。腕部761の先端、及び腕部762の先端には、それぞれロータ71と対向する磁極部765、766が形成されている。磁極部765、766は、それぞれロータ71の外周に沿うように湾曲した曲面を有している。
【0015】
コイル73への通電によりステータ75が励磁されると、磁極部765、766は、互いに異なる極性に励磁される。磁極部765、766とロータ71との間に作用する磁気的吸引力、反発力により、ロータ71が回転する。コイル73が通電されることにより、本体部76には、腕部761から連続部763を通過して腕部762へ磁束が通過する磁路が形成される。
【0016】
腕部762には凹部768が形成されている。凹部768は、本体部76の外側に設けられている。可動部78は、凹部768に対向する位置に設けられている。従って、可動部78は、腕部761、762の間に挟まれる位置には設けられていない。また、可動部78はコイル73とは直接には対向していない。可動部78は、半円柱状であり、軸781により回転可能に支持されている。凹部768は、可動部78の外周曲面に対応した湾曲面を含む。薄肉部764は、凹部768の裏側に位置している。
【0017】
磁極部765から磁極部766までの間の磁路に直交する本体部76の断面の面積は、薄肉部764が最小である。可動部78の軸方向の厚みは、本体部76の厚みと同じである。
【0018】
可動部78は、所望の位置で停止可能である。例えば、可動部78を所望の位置で固定する固定手段を設ける。固定手段としては、例えば、軸781を支持する基板の軸孔と同心状にネジ孔を設け、軸781の内部にもネジ孔を設け、可動部78の位置を調整した後に、基板のネジ孔と軸781のネジ孔とを単一のネジにより螺合させることにより、可動部78を固定してもよい。または、可動部78の位置を調整した後に軸781を軸孔に接着剤等により固定してもよい。
【0019】
図1A〜1Cでは、可動部78と凹部768との間には若干の隙間が形成されているが、このような隙間がなくてもよい。すなわち、可動部78が凹部768の表面に当接して摺動するように設けてもよい。
【0020】
図1Aの場合、可動部78が腕部762内に位置し凹部768に完全に収納されている。図1Bの場合、可動部78の一部が凹部768の外に位置している。図1Cの場合、可動部78の半分が凹部768の外に位置している。このように、可動部78は、凹部768の内と外との間を移動可能に設けられている。
【0021】
図1A〜1Cにおいては、磁束が通過する可動部78の部分に斜線を描いている。ここで、本体部76を通過する磁束は、可動部78が凹部768に完全に収納されている状態で最大となり、可動部78が移動するにつれて少なくなる。図1Aの場合、磁束は薄肉部764及び可動部78の双方を通過する。図1Bの場合、磁束は薄肉部764と可動部78の一部とを通過する。図1Cの場合、磁束は薄肉部764のみを通過し可動部78は通過しない。図1Bの場合では、図1Aと比較して、磁束が通過する断面の面積が小さい。また、図1Cの場合では、磁束が通過する断面の面積は最小となる。従って、図1Aの場合では、本体部76内を通過する磁束量が最大となり、図1Cの場合では本体部76内を通過する磁束量は最小となる。よって、図1Aの場合で、ロータ71とステータ75との間に作用する磁力は最大となる。図1Aの状態から可動部78を回転させることにより、ロータ71とステータ75との間に作用する磁力は減少していく。これにより、ロータ71の回転速度を低下させることができる。
【0022】
このように可動部78を回転させることにより、ステータ75内を通過する磁束が変化する。これにより、コイル73への電力量を変化させなくても、ステータ75とロータ71との間に作用する磁力は変化する。よって、コイル73への電力量を調整することなくロータ71の回転速度を調整することができる。
【0023】
図1Aに示したように、可動部78は凹部768内に収納可能に設けられている。よって、可動部78を設けた場合であってもアクチュエータ70の大型化が抑制されている。
【0024】
ここで、ロータ71周辺に永久磁石を配置し、永久磁石の位置又は姿勢を変更することにより、ロータ71の回転速度を調整することも考えられる。しかしながら、このような構成では、例えば、このアクチュエータに隣接された電子部品は、ロータのみならずこの永久磁石からも磁力を常に受ける。これにより、電子部品によっては、強い磁力によって影響を受けるおそれがある。また、このアクチュエータに隣接して他のアクチュエータを配置する場合には、一方のアクチュエータに設けられた永久磁石の磁力が、他のアクチュエータのロータの回転に影響を与える恐れがある。
【0025】
本実施例のアクチュエータ70では、磁性体である可動部78を移動させることにより、ステータ75を通過する磁束の量を調整し、これによりロータ71の回転速度を調整している。このため、上記のような問題は生じない。
【0026】
図1Aに示したように、凹部768は、腕部762の外側に設けられており、可動部78は本体部76に対して外側に設けられているが、これに限定されない。例えば、腕部762の内側に凹部768を設けて、腕部761と腕部762との間に可動部78を設けてもよい。また、連続部763に凹部768を設けてもよい。また、可動部78が本体部76の厚みと同じで半円柱状の例を示したが、可動部78は軸781方向において、少なくとも本体部76の厚み分だけ凹部768に対向する部分が半円柱状の形状を有していればよい。
【0027】
尚、可動部78は、半円柱状の磁性体と非磁性体である合成樹脂とが組みつけられた円柱状の部材であってもよい。
【0028】
図2は、アクチュエータ70、70bを採用したフォーカルプレーンシャッタ1の正面図である。アクチュエータ70bは、アクチュエータ70と同様の構造を有している。フォーカルプレーンシャッタ1は、開口11を有した基板10、開口11を開閉する先幕20及び後幕20B、先幕20を駆動するためのアーム31及び補助アーム32、後幕20Bを駆動するためのアーム31b及び補助アーム32b、アーム31、31bをそれぞれ駆動するための駆動レバー40、40b、を有している。アクチュエータ70、70bは、それぞれ駆動レバー40、40bを駆動する。駆動レバー40、40bは、それぞれアクチュエータ70のロータ71、アクチュエータ70bのロータ71bに固定されている。
【0029】
ロータ71が回転することにより、駆動レバー40は所定の範囲を揺動する。駆動レバー40の先端には駆動ピン43が形成されている。駆動ピン43は、アーム31に形成された嵌合孔に嵌合している。また、基板10には駆動ピン43を逃がす円弧状の逃げ溝13が形成されている。駆動ピン43が逃げ溝13の端部に当接することにより、駆動レバー40の揺動範囲が制限されている。同様の構成により、駆動レバー40bの揺動範囲が制限されている。
【0030】
以上の構成により、ロータ71が回転すると駆動レバー40が揺動してアーム31が揺動する。これにより、先幕20が移動して開口11を開閉する。同様に、ロータ71bが回転すると駆動レバー40bが揺動してアーム31bが揺動する。これにより、後幕20Bが移動して開口11を開閉する。
【0031】
次に、先幕20、後幕20Bの移動速度の調整について説明する。一般的には、コイル73、73bへ印加される電力量、具体的にはコイル73、73bへ印加される電流量を調整することにより、ロータ71、71bの回転速度を調整する。これによって先幕20、後幕20Bの移動速度が一致するように調整する。コイル73、73bにそれぞれ印加される調整後の電流量が異なっていた場合には、コイル73、73bへの通電による温度上昇率も異なる。このため、コイル73、73b間で温度差が生じ、コイル73、73b間で抵抗値に差が生じる恐れがある。この結果、ロータ71、71bの回転速度に差が生じ、先幕20、後幕20Bの移動速度にも差が生じる恐れがある。これにより、露光期間にバラつきが生じて画質に影響を与える恐れがある。
【0032】
しかしながら、本実施例のように、可動部78、78bの位置を調整することにより、コイル73、73bへ印加される電流量を調整することなくロータ71、71bの回転速度を調整することができる。よって、コイル73、73bの温度上昇率の差を抑制しつつ、ロータ71、71bの回転速度を一致させることができる。これにより、先幕20、後幕20Bの移動速度に差が生じることを抑制できる。よって、画質への影響も抑制できる。
【0033】
また、このようにコイル73、73bへの電流値を調整する必要がないので、コイル73、73bへ電力を供給する回路の構成が簡易なものにでき、本実施例のフォーカルプレーンシャッタ1を備えた光学機器のコストを抑制することができる。
【0034】
また、本実施例のフォーカルプレーンシャッタ1では、可動部78、78bがそれぞれ基板10の外側を向くようにアクチュエータ70、70bが配置されている。可動部78、78bが対向するようにアクチュエータ70、70bを配置した場合、可動部78、78bが隣接する。このため、冶具等を用いて可動部78、78bの一方の位置を調整をしている際に、冶具が可動部78、78bの他方に接触して他方の位置がずれるおそれがある。従って、可動部78、78bが直接対向する場合と比較して、可動部78、78bが基板10の外側を向く場合のほうが可動部78、78bの位置調整の作業が容易となる。
【0035】
尚、アクチュエータ70bの可動部78bがアクチュエータ70のコイル73と対向するようにアクチュエータ70、70bを配置してもよい。この場合においても、可動部78、78bは直接対向することはなく、可動部78、78b間の距離を確保することができる。
【0036】
尚、フォーカルプレーンシャッタ1においては、先幕20、後幕20Bをそれぞれ駆動する双方の駆動源として、本実施例のアクチュエータ70、70bを採用した。しかしながら、このような構成に限定されない。例えば、先幕20、後幕20Bの少なくとも一方の駆動源としてアクチュエータ70を採用していればよい。従って、先幕20、後幕20Bの他方の駆動源として可動部78を備えていない通常のアクチュエータを採用してもよい。また、先幕20、後幕20Bの他方の駆動源として、電磁石及びバネを採用してもよい。これらの場合であっても、先幕20、後幕20Bの一方の駆動源として採用されたアクチュエータ70の可動部78を調整することにより、先幕20、後幕20Bの一方の移動速度を調整することができる。これにより、先幕20、後幕20Bの一方の移動速度を他方の移動速度に一致させることができる。
【0037】
図3A、3Bは、第1変形例のアクチュエータ70´の説明図である。アクチュエータ70´は、略直方体の可動部78´を有している。凹部768´も可動部78´の形状に対応しており複数の平面を有している。可動部78´は、ロータ軸711に直交する平面において、腕部762が伸びる方向に直交する方向に移動可能である。例えば、可動部78´は、アクチュエータ70´を支持する基板に設けられたレールにより直線移動可能に支持されている。可動部78´は、凹部768´に接近、退避可能である。可動部78´は、所望の位置で停止可能である。図3A、3Bにおいては、磁束が通過する可動部78´の部分に斜線を描いている。
【0038】
図3Aに示すように、凹部768´に可動部78´が接近していることにより、764´及び可動部78´の双方に磁束が通過する。図3Bに示すように、凹部768´から可動部78´が離れるにつれて、可動部78´を通過する磁束が減少する。これにより、ロータ71の回転速度を低下させることができる。
【0039】
可動部78´が直線状に移動するため、可動部78´を通過する磁束量と可動部78´の移動量とは線形性の関係を有する。従って、可動部78´の移動量を目安にステータ75全体を流れる磁束量を調整することができ、ロータ71の回転速度の調整が容易になる。
【0040】
可動部78´は、所望の位置で停止可能である。例えば、可動部78´を所望の位置で固定する固定手段を設ける。固定手段としては、例えば、可動部78´の底面にネジ孔を設け、可動部78´と対向する基板の部分に可動部78の移動方向に伸びた逃げ孔を設け、可動部78´の位置を調整した後に、逃げ孔周辺の部分をネジのフランジ部と可動部78´の底面とにより挟むようにしてネジを可動部78のネジ孔に螺合することにより、可動部78´を固定してもよい。
【0041】
図3A、3Bでは、可動部78´と凹部768´との間には若干の隙間が形成されているが、このような隙間がなくてもよい。すなわち、可動部78´が凹部768´の表面に当接して摺動するように設けてもよい。
【0042】
図4、5A、5Bは、第2変形例のアクチュエータ70´´の説明図である。図4は、アクチュエータ70´´の一部を示している。アクチュエータ70´´は、可動部78´´を備えている。それ以外の点では、アクチュエータ70´´は、アクチュエータ70´と同じ構成である。図5Aは、図4のA−A断面図である。図5Bは、可動部78´´が移動した後を示した図である。可動部78´´は、ロータ軸711の方向に直線状に移動可能に設けられている。
【0043】
可動部78´´は、図5A、5Bに示すように、直方体部781´´、直方体部781´´よりも上端側に設けられたテーパ部783´´を有している。テーパ部783´´は、直方体部781´´から離れるほど先端が細くなっている。テーパ部783´´と凹部768´の側面との重なり具合により、可動部78´´を通過する磁束量が変化する。これにより、ロータ71の回転速度を調節することができる。
【0044】
可動部78´´は、所望の位置で停止可能である。例えば、アクチュエータ70´´を支持する基板に可動部78´´が挿通する逃げ孔を設けて、可動部78´´を所望の位置で固定する固定手段を設ける。固定手段としては、例えば、2つのネジにより可動部78´´の直方体部781´´の両側面を挟むものであってもよい。
【0045】
図4、5A、5Bでは、可動部78´´と凹部768´との間には若干の隙間が形成されているが、このような隙間がなくてもよい。すなわち、可動部78´´が凹部768´の表面に当接して摺動するように設けてもよい。
【0046】
尚、可動部78´´は、ロータ軸711の方向に移動可能に支持され所望の位置で停止可能であれば、このような形状に限定されない。例えば、可動部78´´は、可動部78´´を通過する磁束量と可動部78´´の移動量とが線形性の関係を有するように下端から上端まで幅、厚みが一定の直方体状であってもよい。
【0047】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0048】
本実施例のアクチュエータは、フォーカルプレーンシャッタ以外に採用してもよい。本実施例のフォーカルプレーンシャッタは、スチールカメラやデジタルカメラなどの光学機器に採用できる。
【0049】
また、上記実施例において、先幕及び後幕はそれぞれ4枚の羽根から構成されるが、これに限定されない。先幕及び後幕は、それぞれ2枚〜5枚の何れであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 フォーカルプレーンシャッタ
10 基板
11 開口
20 先幕
20B 後幕
31、31b アーム
32、32b 補助アーム
40、40b 駆動レバー
70、70b、70´、70´´ アクチュエータ
71、71b ロータ
73、73b コイル
75、75b ステータ
76、76b 本体部
761、762 腕部
763 連続部
765、766 磁極部
768、768´ 凹部
78、78b、78´、78´´ 可動部
図1
図2
図3
図4
図5