特許第5940823号(P5940823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940823
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】コンクリートの締め固め管理方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/06 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
   E04G21/06
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-21784(P2012-21784)
(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公開番号】特開2013-159939(P2013-159939A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】天明 敏行
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 淳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋一
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−156865(JP,A)
【文献】 特開2002−054302(JP,A)
【文献】 特開2005−030073(JP,A)
【文献】 特開2012−193601(JP,A)
【文献】 特開2013−053492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/06 − 21/08
E02D 3/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設したコンクリートの締め固め施工域に油圧式のバイブレータを挿入し、振動を加えて締め固める際に、各種のコンクリートの締め固め評価基準によりコンクリートの締め固め程度を評価し、コンクリートの締め固め完了を判定するコンクリートの締め固め管理方法において、
前記コンクリートの締め固め施工域の地図を作成し、前記地図に複数のマス目を入れて前記地図を分割しておき、
前記コンクリートの締め固め施工域において前記バイブレータにより締め固めを行う位置毎に、各種の測量方法により、前記コンクリートの締め固め施工域における前記バイブレータの挿入位置を求めて前記地図上に特定し、 当該締め固め施工位置について前記各種のコンクリートの締め固め評価基準により評価した前記バイブレータによるコンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度を前記地図上に特定したバイブレータの挿入位置に基づいて前記地図上の該当するマス目に記録し、これらのマス目に記録したコンクリートの締め固めの程度から前記各種のコンクリートの締め固め評価基準により締め固め完了と判定した範囲を前記地図上の該当するマス目に表示し、締め固め完了と判定されない範囲は、引き続き、前記バイブレータにより締め固めを行う毎にコンクリートの締め固めの程度を積算して評価し、締め固めの完了を判定する
ことを特徴とするコンクリートの締め固め管理方法。
【請求項2】
バイブレータにGPSセンサを搭載し、コンクリートの締め固め施工域の地図を複数のマス目とともにGPS対応のモニターに表示して、前記バイブレータによりコンクリートの締め固めを行う毎に、前記モニターの地図上の該当するマス目に、GPS測量で求めたコンクリートの締め固め施工域におけるバイブレータの挿入位置を表示し、前記モニターの地図上の該当するマス目に締め固め施工位置についての前記バイブレータによるコンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度を記録し、締め固め完了と判定した範囲を表示する請求項1に記載のコンクリートの締め固め管理方法。
【請求項3】
コンクリートの締め固め評価基準は、バイブレータを打設したコンクリートに挿入してコンクリートを締め固める間、前記バイブレータのコンクリートを締め固めるときの油圧を測定して、前記バイブレータの油圧の経時変化により、コンクリートの締め固め程度を評価するものとする請求項1又は2に記載のコンクリートの締め固め管理方法。
【請求項4】
バイブレータの油圧の測定に油圧計及び/又は油圧センサを用い、前記油圧計及び/又は油圧センサに、バイブレータの油圧が前記バイブレータの挿入とともに増加を開始し、時間の経過とともに上昇してピークに達し、コンクリートの締め固めの進行とともに前記油圧が徐々に低下し、略一定値に近づく前記油圧の経時変化を表示して、前記油圧若しくは前記油圧の変化の傾きがあらかじめ定めたしきい値よりも低下した時点、又は前記油圧の低下の割合が減少する時点をコンクリートの締め固め完了と判定する請求項3に記載のコンクリートの締め固め管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムコンクリートなどのマスコンクリートの締め固め施工時の締め固めの及ぶ範囲、程度の評価、及び締め固め完了の判定に使用するコンクリートの締め固め管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートダムの施工において、ダムコンクリートの締め固め作業はダム本体の水密性や耐久性、強度を確保する上で大変重要である。土木学会標準示方書(ダム編)によれば、内部振動機による締め固めでは、「打ち込んだコンクリートに一様な振動が与えられるように、振動機の挿入間隔及び1箇所当たりの振動時間を定め、これらをあらかじめ作業員に周知させておくことが必要である。」とされている。さらに、締め固めが十分である証拠として、コンクリートとせき板との接触面にセメントペーストの線が現れることであることや、コンクリートの容積が減っていくのが認められなくなり、表面に光沢が現れてコンクリート全体が均一に溶けあったように見えることなどから判断することとされている。そして、一般のコンクリートの場合、締め固め時間の目安は5〜15秒であるとされている。
ところで、このようなダムの施工では、内部振動機に、ダムコンクリートの主たる部分でバイバックというバイブレータを装備した油圧重機を用いるため、振動機の挿入間隔は既に設置されているバイブレータの間隔、例えば60cm程度となる。また、ダムコンクリートの場合、バイバックによる締め固め時間は一般コンクリートよりも長くなり、ダムコンクリートの積算基準から判断すると、約40秒である。また、この場合、コンクリートの締め固め時間はオペレータの目視によって判定されているが、バイブレータのかけ忘れあるいは不十分な稼動時間による締め固めの不足、過度な稼動時間による材料分離など、均質なコンクリートを得るための管理状況としては必ずしも十分ではない。
そこで、従来から、バイブレータの負荷やコンクリートの物性変化を定量的に観測することによって、コンクリートの締め固めの完了を評価、判定することが提案されている。この種の締め固め管理方法が特許文献1、2などに記載されている。
【0003】
特許文献1はコンクリートバイブレータの有効運転管理装置に関するもので、この管理装置では、力率、周波数、音量の何れかのコンクリートバイブレータ運転時の負荷と相関関係を有する運転状況データを検出し、その検出された値をしきい値と比較することによって、コンクリートバイブレータが締め固めに寄与する運転状況であるかどうかを判別するものである。このようにして有効運転時間を管理することにより、作業者は経験に頼ることなく基準に合致した締め固め作業を行うことができ、管理者は有効運転時間を数値データとして管理することができる。その結果、基準にあったコンクリート締め固め作業が行われることとなり、コンクリート締め固め作業、ひいてはコンクリート強度の信頼性を向上させることができる。
【0004】
特許文献2はコンクリート締め固め判定方法に関するもので、この判定方法では、入力値をバイブレータの振動による音圧が、コンクリートの締め固め開始から締め固め終了までに、時間の経過と共に上昇してピークを越え、所定の音圧レベルまで下降するまでの経時変化データとし、出力値を合致率としてニューラルネットワークを構築する工程と、コンクリートの締め固め開始から締め固め終了までのバイブレータの振動による音圧の適正な経時変化データを包絡線で近似し、合致率が最大値の教師データとして、結合荷重係数を設定することによって、ニューラルネットワークを完成する工程と、実際の締め固め作業において、コンクリートの締め固め開始からバイブレータの振動による音圧の経時変化を検出しながら、検出される振動による音圧の経時変化を前記ニューラルネットワークを用いて逐次前記教師データと比較して両者の合致率を求める工程と、合致率が所定のしきい値以上の場合に締め固め終了と判定する工程とを含むものである。このようにして人の判断によらずバイブレータを停止させる適切なタイミングを知ることができるので、バイブレータをかける時間が短過ぎて十分な強度が得られなかったり、バイブレータをかける時間が長過ぎてブリージング水が発生したりという問題を解決することが可能となるとともに、作業者が締め固め判断のタイミングを監視する負担を軽減でき、さらには、熟練者が不足している現状にも対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3605576号公報
【特許文献2】特許第4404494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2によるコンクリートの締め固め管理方法では、コンクリートの締め固め施工域においてバイブレータにより締め固め作業が実施されたその位置でのコンクリートの締め固めの評価、判定であるため、この締め固め施工域全体に亘って、締め固め程度を評価したり締め固め完了の範囲を判定したりすることは困難であるという問題がある。
従来、このような締め固め施工域全体に亘る締め固め程度の評価や締め固め完了の判定はバイブレータのオペレータの経験的感覚などで行われており、見逃しがあると、コンクリートの締め固めの不完全な箇所が発生する。この締め固めの不完全な箇所が型枠近傍であれば、型枠を脱型した際に、ジャンカの状態になって発見することができるが、コンクリート内部の場合は発見が極めて難しい。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種のコンクリートの締め固め管理方法において、複雑な装置を用いることなく、簡易な方法により、コンクリートの締め固め施工域全体の締め固め程度の評価や締め固め完了の範囲の判定を客観的かつ定量的に行うこと、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、打設したコンクリートの締め固め施工域に油圧式のバイブレータを挿入し、振動を加えて締め固める際に、各種のコンクリートの締め固め評価基準によりコンクリートの締め固め程度を評価し、コンクリートの締め固め完了を判定するコンクリートの締め固め管理方法において、 前記コンクリートの締め固め施工域の地図を作成し、前記地図に複数のマス目を入れて前記地図を分割しておき、 前記コンクリートの締め固め施工域において前記バイブレータにより締め固めを行う位置毎に、各種の測量方法により、前記コンクリートの締め固め施工域における前記バイブレータの挿入位置を求めて前記地図上に特定し、 当該締め固め施工位置について前記各種のコンクリートの締め固め評価基準により評価した前記バイブレータによるコンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度を前記地図上に特定したバイブレータの挿入位置に基づいて前記地図上の該当するマス目に記録し、これらのマス目に記録したコンクリートの締め固めの程度から前記各種のコンクリートの締め固め評価基準により締め固め完了と判定した範囲を前記地図上の該当するマス目に表示し、締め固め完了と判定されない範囲は、引き続き、前記バイブレータにより締め固めを行う毎にコンクリートの締め固めの程度を積算して評価し、締め固めの完了を判定する、ことを要旨とする。
また、この方法は次のように具体化することが好ましい。
(1)バイブレータにGPSセンサを搭載し、コンクリートの締め固め施工域の地図を複数のマス目とともにGPS対応のモニターに表示して、前記バイブレータによりコンクリートの締め固めを行う毎に、前記モニターの地図上の該当するマス目に、GPS測量で求めたコンクリートの締め固め施工域におけるバイブレータの挿入位置を表示し、前記モニターの地図上の該当するマス目に締め固め施工位置についての前記バイブレータによるコンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度を記録し、締め固め完了と判定した範囲を表示する
(2)コンクリートの締め固め評価基準は、バイブレータを打設したコンクリートに挿入してコンクリートを締め固める間、前記バイブレータのコンクリートを締め固めるときの油圧を測定して、前記バイブレータの油圧の経時変化により、コンクリートの締め固め程度を評価するものとする
この場合、バイブレータの油圧の測定に油圧計及び/又は油圧センサを用い、前記油圧計及び/又は油圧センサに、バイブレータの油圧が前記バイブレータの挿入とともに増加を開始し、時間の経過とともに上昇してピークに達し、コンクリートの締め固めの進行とともに前記油圧が徐々に低下し、略一定値に近づく前記油圧の経時変化を表示して、前記油圧若しくは前記油圧の変化の傾きがあらかじめ定めたしきい値よりも低下した時点、又は前記油圧の低下の割合が減少する時点をコンクリートの締め固め完了と判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンクリートの締め固め管理方法によれば、コンクリートの締め固め施工域の地図を作成し、地図に複数のマス目を入れて地図を分割しておき、 コンクリートの締め固め施工域においてバイブレータにより締め固めを行う位置毎に、各種の測量方法により、コンクリートの締め固め施工域におけるバイブレータの挿入位置を求めて地図上に特定し、 当該締め固め施工位置について各種のコンクリートの締め固め評価基準により評価したバイブレータによるコンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度を地図上に特定したバイブレータの挿入位置に基づいて地図上の該当するマス目に記録し、これらのマス目に記録したコンクリートの締め固めの程度から各種のコンクリートの締め固め評価基準により締め固め完了と判定した範囲を地図上の該当するマス目に表示し、締め固め完了と判定されない範囲は、引き続き、バイブレータにより締め固めを行う毎にコンクリートの締め固めの程度を積算して評価し、締め固めの完了を判定するようにしたので、複雑な装置を用いることなく、簡易な方法により、コンクリートの締め固め施工域全体の締め固め程度の評価や締め固め完了の範囲の判定を客観的かつ定量的に行うことができる、という格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明によるコンクリートの締め固め管理方法を示す図
図2】同管理方法に用いるコンクリートの締め固め評価基準の説明に使用する油圧式バイブレータの油圧の経時変化及び1階、2階、3階微分曲線を示す図
図3】同管理方法に用いるモニターに表示する地図と、コンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度及び締め固め完了と判定した範囲の記録例を示す図
図4】同管理方法においてコンクリート締め固め域全体の管理方法の説明に用いる図
図5】同管理方法においてコンクリート締め固め域全体の管理方法の説明に用いる図
図6】同管理方法においてコンクリート締め固め域全体の管理方法の説明に用いる図
図7】同管理方法においてコンクリート締め固め域全体の管理方法の説明に用いる図
図8】同管理方法においてコンクリート締め固め域全体の管理方法の説明に用いる図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。図1にコンクリートの締め固め管理方法を示している。
図1に示すように、このコンクリートの締め固め管理方法では、油圧ポンプの駆動により当該油圧ポンプから油圧ホース(油圧管)10を通じて供給する圧油により、バイブレータ11を振動させる油圧式バイブレータ1を用いて、打設したコンクリートCに振動を加え締め固めるコンクリートの締め固め施工の際に、バイブレータ1の運転時の負荷と相関関係を有するバイブレータ1の油圧を測定してコンクリートCの締め固め程度を評価し、コンクリートCの締め固め完了を判定する。従来の、バイブレータ運転時の負荷と相関関係を有する力率、周波数、音量やバイブレータの振動による音圧に対して、油圧は、力学的な負荷を最も包括的に表現することができると考えられ、実測した負荷変動の値は理論的な予測と近いのが特徴である。
なお、このコンクリートの締め固め施工においては、ダムコンクリートなどのマスコンクリートを締め固めるために、油圧式バイブレータ1を専用ベースマシンに搭載した建設機械のバイバック2が採用される。ここで、バイバック2は、クローラ21と、クローラ21上に旋回可能に配設される運転室22及び機械室23と、運転室22の前側に装備されるアクチュエータ24及び油圧式バイブレータ1とを備え、アクチュエータ24は運転室22の前部にシリンダ241により傾動可能に支持されるブーム242、ブーム242の先端部にシリンダ243によって回動可能に支持されるアーム244とを有し、このアーム244の先端部に油圧式バイブレータ1がシリンダ245によって回動可能に取り付けられる。この場合、油圧式バイブレータ1は4本の棒状バイブレータ11からなり、油圧ポンプ(図示省略)の駆動によりこの油圧ポンプから油圧ホース10を通じて供給する圧油により油圧モータ(図示省略)を駆動して、各棒状バイブレータ11を振動させるようになっている。
【0012】
このコンクリートの締め固め管理方法においては、バイバック2の油圧ポンプとバイブレータ1との間に連結され、油圧ポンプからバイブレータ1に圧油を供給する油圧ホース10にバイブレータ1の油圧を測定するための油圧計3及び/又は油圧センサを設置し、振動するバイブレータ1を打設したコンクリートCに挿入してコンクリートCを締め固める間、油圧計3及び/又は油圧センサによりバイブレータ1のコンクリートCを締め固めるときの油圧を測定して、バイブレータ1の油圧の経時変化により、コンクリートCの締め固め程度を評価する。そして、この油圧の経時変化を利用して、あらかじめ定めた方法によりコンクリートCの締め固め完了の時点を判定する。
【0013】
油圧計3及び/又は油圧センサを油圧ホース10に設置する場合、バイバック2の油圧回路は複雑であるが、油圧ポンプからバイブレータ用の油圧回路に接続される油圧系統は独立しているため、この独立した部分に油圧計3及び/又は油圧センサを設置し、油圧計3及び/又は油圧センサが他の油圧系統の影響を受けないようにすることにより、ブーム242やアーム244の使用の有無に関わらず、バイブレータ1のみに作用する油圧を測定することが可能である。そして、このバイブレータの油圧計3を運転室22又は運転席から見える位置に配置することで、バイバック2のオペレータが油圧計3でバイブレータ1の油圧を常時確認することができる。また、油圧センサをパソコンに接続することにより、油圧センサで油圧を電圧変換し、これをパソコンなどに記録することができる。
【0014】
このように油圧計3及び/又は油圧センサをバイバック2のバイブレータ1の油圧ホース10に設置することで、バイバック2のオペレータがバイブレータ1の油圧を簡易に測定することが可能となる。オペレータは、振動するバイブレータ1を打設したコンクリートCに挿入してコンクリートCを締め固める間、油圧計3及び/又は油圧センサにバイブレータ1の油圧の変化を表示し、油圧のモニタリングを行いながら、コンクリートCの締め固めの進行を確認する。なお、この場合、バイブレータ1の油圧を測定する前に、バイブレータ1の暖気運転を行い、圧油の温度を一定にすることが好ましい。そして、コンクリートCを締め固める間、油圧計3及び/又は油圧センサで、バイブレータ1の油圧の経時変化を表示すると、バイブレータ1の油圧はバイブレータ1の挿入とともに増加を開始し、時間の経過とともに上昇してピークに達し、コンクリートCの締め固めの進行とともに油圧が徐々に低下し、略一定値に近づいていく。オペレータは、この油圧の経時変化からコンクリートCの締め固め程度を評価する。
【0015】
油圧計及び/又は油圧センサで、バイブレータのコンクリートを締め固めるときの油圧を測定し、この油圧の測定結果を油圧の経時変化曲線にして見ると、図2に示すような結果を得ることが判明している。この曲線の傾向は既往の研究におけるバイブレータの負荷トルクのモニタリング結果と同様であり、このコンクリートの締め固めの挙動について考察を行うと、負荷トルクの文献によれば、コンクリートの締め固めは2段階で行われる。第1段階では、セメントペーストが液状化し、骨材粒子の配列移動が行われ、水平状に置かれた骨材粒子は垂直状に変わろうとし、最大負荷トルクが生じる。ここでは、コンクリートとバイブレータが密着した状態となり、バイブレータへの負荷が最大となる。これが初期沈下の段階である。第2段階では、コンクリート中の気泡(主にエントラップドエア)が上方に移動し、脱泡が起こる。バイブレータの近傍には液状化したセメントペースト層が形成され、材料分離を起こす。ここでは、コンクリートとバイブレータの密着度が減少する。これにより振動波の伝達が落ち、負荷トルクの低下を招くと考えられる。ここで、表面の沈下が収まり安定となり、空転時のトルクに近づく。この段階を長く持続すると材料分離が生じる。かかる負荷トルクを簡単かつ確実に把握するのに油圧計や油圧センサは有効である。
【0016】
このコンクリートの締め固めの評価方法では、バイブレータの油圧の経時変化(油圧の経時変化曲線の形状)を利用するが、コンクリートの締め固め程度はコンクリートの物性や施工の条件などによって異なるため、その点を踏まえて、施工現場単位で試験を行い、バイブレータの油圧の経時変化からコンクリートの締め固め完了の時点を判定する。その判定方法はいくつかあるが、代表的なものを挙げると、次のとおりである。
(1)油圧があるしきい値よりも下がった時点をコンクリートの締め固め完了と判定する。図2に示すケースでは、65秒の時点を締め固め完了と判断する。
(2)油圧の変化の傾きがあるしきい値よりも小さくなった時点をコンクリートの締め固め完了と判定する。図2に示すケースでは、70秒の時点を締め固め完了と判断する。
(3)コンクリートとバイブレータの密着度が減少し、油圧負荷の低下の割合が減少する時点をコンクリートの締め固め完了と判定する。油圧の経時変化曲線を2階微分した形状は正の数であれば、油圧の経時変化は凹であり、この最大値となる変化点、すなわち凹の変化率が最大となる点が締め固め判断基準と考えることができる。この点は3階微分の曲線が正から負へ推移する点となる。図2に示すケースでは、46秒の時点を締め固め完了と判断する。
なお、バイブレータの挿入位置でのコンクリートの締め固めの判断は、この油圧の変化による自動判定としてもよく、油圧の変化を含めたオペレータの総合判断による判定としてもよい。
【0017】
また、このコンクリートの締め固め管理方法では、特に、コンクリートの締め固め施工域の地図を作成しておき、コンクリートの締め固め施工域においてバイブレータにより締め固めを行う位置毎に、各種の測量方法を用いて、コンクリートの締め固め施工域におけるバイブレータの挿入位置を求めて地図上に特定し、当該締め固め施工位置について上述したコンクリートの締め固めの評価方法を評価基準とし、バイブレータの挿入位置からの距離と振動時間を考慮して評価したコンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度及び締め固め完了と判定した範囲を地図上に特定したバイブレータの挿入位置に基づいて記録し、この地図の記録により、コンクリートの締め固め施工域全体のコンクリートの締め固めの程度及び締め固め完了の範囲を管理するものとする。
この締め固め域全体に亘る管理方法は、コンクリートの締め固め域全体に亘り締め固めが完了したことを確認できるように、締め固めが完了した範囲を地図上に記録するようにした点、また、バイブレータによるコンクリートの締め固めの効果がバイブレータの挿入位置からの距離とバイブレータの作用した時間に関連することから、バイブレータの挿入位置からの距離とバイブレータの振動時間を考慮して、コンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度を評価し、締め固め完了の範囲を判定するようにした点が、特徴である。
【0018】
また、この管理方法においては、ここで使用するバイブレータの影響範囲が広いので、バイブレータからの距離を考慮して、距離による重みを付けて、コンクリートの締め固めの及ぶ範囲及びその程度を評価し、コンクリートの締め固め完了を判定することとする。
そして、この管理方法の場合、周知のGPS(Global Positioning System)システムを利用して、バイブレータにGPSセンサを搭載し、コンクリートの締め固め施工域の地図をGPS対応のモニター、ここでは、前述のパソコンのディスプレイに表示して、バイブレータによりコンクリートの締め固めを行う毎に、モニターの地図上に、GPS測量で求めたコンクリートの締め固め施工域におけるバイブレータの挿入位置を表示し、モニターの地図上に締め固め施工位置についてのコンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度及び締め固め完了と判定した範囲を記録する。
【0019】
図3にモニターに表示する地図と、コンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度及び締め固め完了と判定した範囲の記録例を示す。
図3に示すように、このモニターに表示する地図では、地図上に複数のマス目からなるメッシュを入れて地図を分割し、バイブレータにより締め固めを行う位置毎に、コンクリートの締め固めの及ぶ範囲及び程度、並びにコンクリートの締め固め完了と判定した範囲を地図上の該当するマス目に表示していく。
この場合、コンクリートの締め固めの及ぶ範囲に該当するマス目を無色で又は締め固めの及ぶ範囲を表す色として定めた色を付けて表示し、その締め固めの程度を数値化(この場合、締め固めの程度を百分率(%)で表す)してマス目に表示し、コンクリートの締め固め完了と判定した範囲に該当するマス目は締め固め完了を表す色として定めた色を付けて表示する。
【0020】
この管理方法の設計例を図4乃至図8に示している。
図4はここで使用する4本のバイブレータの各部の寸法を示している。図4に示すように、4本のバイブレータは180cmの範囲内に横一列に等間隔に配列され、各バイブレータの間隔が60cmになっている。
まず、コンクリートの締め固め域におけるこのバイブレータによる影響範囲を考える。図5にコンクリートの締め固め域の一部を例示し、この締め固め域上にメッシュを作成してこの締め固め域を複数のマス目で分割して示している。各マス目は1辺の長さが20cmあるものとし、図5の中央の横方向に並ぶ9つのマス目(1マス20cm×9=180cm)をバイブレータの挿入位置として、各マス目にバイブレータの挿入位置からの距離を記入してある。
このコンクリートの締め固め域におけるバイブレータの振動の影響力は距離に応じて減衰することから距離の関数で表すことができる。この場合、距離の2乗の関数となると予想して、図5の各マス目の距離を2乗して表すと、図6のとおりとなる。
次に、この図6からバイブレータの影響する位置とその効果について考える。バイブレータの締め固めの効果はバイブレータの挿入位置からの距離とバイブレータの作用した時間に関連し、バイブレータの挿入位置からの距離が近い程大きくなり、距離が遠い程小さくなる。そこで、距離の2乗で締め固めの効果が小さくなるとし、ここではバイブレータによる締め固めの影響がバイブレータの挿入位置から120cmの距離まで及ぶものと考えて、各マス目の距離を2乗した数値と120cmを2乗した数値(本来の数値は1.44となるが、ここでは1.44を四捨五入して1.4と記入する。)との差を締め固めの効果を表す定数とすると、各マス目における締め固めの効果を表す定数は図7のようになる。図7から、バイブレータの位置で定数は1.44、バイブレータから120cm(6マス)離れた位置で定数はゼロとなる。
そして、バイブレータの締め固めの効果はバイブレータの挿入位置からの距離とバイブレータの作用した時間に関連することから、バイブレータの挿入位置と振動時間を考慮し、このバイブレータの挿入位置から距離60cmまでの範囲はコンクリートの締め固めが規定の時間(例えば40秒)で完了すると仮定して、締め固めの効果を示す締め固め効果値、すなわち締め固め程度を求める。この場合、図7によりバイブレータから60cm離れた位置での締め固めの効果を表す定数は1.1であり、ここではこの位置の締め固め効果値(締め固め程度)を100(%)とすると、図7に示す各マス目における締め固め効果値は図8に示すとおりとなる。図8により、バイブレータの挿入位置での締め固め程度は133で、バイブレータの挿入位置から60cmの位置の締め固め程度は100と評価し、締め固め程度が100以上のマス目を規定時間(例えば40秒)で締め固め完了と判定する。また、締め固め程度が100未満のマス目に該当するコンクリートの締め固め域の各地点は、バイブレータによる締め固めの積時間で、引き続き、締め固め程度を評価し、締め固めの完了を判定していく。
このようなコンクリートの締め固め程度の評価、締め固め完了の判定は既述の油圧センサに接続するパソコン、又はこれとは別のパソコンを用いて実行することが可能である。
このようにしてコンクリートの締め固め域においてバイブレータによる締め固め施工位置について求められた締め固めの及ぶ範囲及び締め固め程度を、図3に示す地図の該当する各マス目に表示し、締め固め程度が100以上のマス目を締め固め完了の範囲として色で表示する。
【0021】
このようにコンクリートの締め固め完了と判定した範囲に該当するマス目に締め固め完了を表す色として定めた色を付けて塗り潰していくことで、地図上のマス目の締め固め完了を表す色を見るだけでコンクリートの締め固めが完了した範囲や完了していない部分を確認することができ、地図上のマス目がすべて締め固め完了を表す色で塗り潰された時点で、締め固め域全体の締め固めが完了したことを確認することができる。また、コンクリートの締め固めの及ぶ範囲に該当するマス目を無色で又は締め固めの及ぶ範囲を表す色として定めた色を付けて表示し、その締め固めの程度を数値化してマス目に表示していくことで、締め固めが不足する範囲及びその程度を確認することができ、この締め固めが不足の範囲については締め固めの積算時間により締め固め完了の判定をすることができる。このようにしてコンクリートの締め固め域全体の締め固め施工の進捗状況を一目して把握することができ、適切な施工管理を実行することができる。
【0022】
以上説明したように、このコンクリートの締め固め管理方法によれば、振動するバイブレータを打設したコンクリートに挿入してコンクリートを締め固める間、油圧計及び/又は油圧センサによりバイブレータのコンクリートを締め固めるときの油圧を測定して、バイブレータの油圧の経時変化により、コンクリートの締め固め程度を評価し、油圧若しくは油圧の変化の傾きがあらかじめ定めたしきい値よりも低下した時点、又は油圧の低下の割合が減少する時点をコンクリートの締め固め完了と判定するので、コンクリートの締め固めをより客観的かつ定量的に評価することができ、しかもノイズが少なく、コンクリートの締め固め以外に油圧の変化を受ける条件が少ないため、データが安定する利点を有する。また、バイブレータの油圧系統に油圧計及び/又は油圧センサを設置するだけなので、複雑な装置を用いることなく、簡易であり、故障が少ないという利点がある。
【0023】
また、このコンクリートの締め固め管理方法では、コンクリートの締め固め施工域全体の管理に関し、コンクリートの締め固め施工域の地図をGPS対応のモニターに表示し、コンクリートの締め固め施工域においてバイブレータにより締め固めを行う位置毎に、GPS測量により、コンクリートの締め固め施工域におけるバイブレータの挿入位置を求めて地図上に特定し、当該締め固め施工位置について上述のコンクリートの締め固め評価方法を評価基準とし、バイブレータの挿入位置からの距離と振動時間を考慮して評価したコンクリートの締め固めの及ぶ範囲、程度及び締め固め完了と判定した範囲を地図上に特定したバイブレータの挿入位置に基づいて記録し、この地図への記録により、コンクリートの締め固め施工域全体のコンクリートの締め固めの程度及び締め固め完了の範囲を管理するようにしたので、複雑な装置を用いることなく、簡易な方法により、コンクリートの締め固め施工域全体の締め固め程度の評価及び締め固め完了の範囲の判定を客観的かつ定量的に行うことができる。また、バイブレータ1にGPSセンサを設置するだけなので、複雑な装置を用いることなく、簡易であり、故障が少ないという利点がある。
【0024】
なお、この実施の形態では、コンクリートの締め固め施工域全体の管理方法に関し、コンクリートの締め固め評価基準として、バイブレータを打設したコンクリートに挿入してコンクリートを締め固める間、バイブレータのコンクリートを締め固めるときの油圧を測定して、バイブレータの油圧の経時変化により、コンクリートの締め固め程度を評価するものとしたが、この評価基準には、従来の技術として例示した特許文献1、2など、既に知られている評価基準を用いてもよく、当該評価基準が適切なものである限り、締め固め施工域全体の管理については上記と同様の効果を奏することができる。
また、この実施の形態の場合、地図上のコンクリートの締め固めの及ぶ範囲に該当するマス目を無色で又は締め固めの及ぶ範囲を表す色として定めた色を付けて表示し、その締め固めの程度を数値化してマス目に表示し、コンクリートの締め固め完了と判定した範囲に該当するマス目は締め固め完了を表す色として定めた色を付けて表示するものとしたが、その表示方法は任意であり、締め固めの及ぶ範囲、程度及び締め固め完了の範囲を視覚的に確認することができれば、締め固め施工域全体の管理については上記と同様の効果を得ることができる。
さらに、この実施の形態の場合、地図をモニターに表示するようにしたが、紙材、樹脂材、金属材などからなる地図を使用してもよく、この場合は、地図上に直接、色、数字、文字、記号などを使って、締め固めの及ぶ範囲、程度及び締め固め完了の範囲を同様に表示すればよく、このようにしても締め固め施工域全体の管理については上記と同様の効果を奏することができる。
またさらに、この実施の形態の場合、コンクリートの締め固め施工域におけるバイブレータの挿入位置をGPS測量により求めたが、このバイブレータの挿入位置の測定には、光波や電波を用いて距離を測定する電磁波測距儀など他の測量手段を使用した測定方法を採用してもよく、当該測量方法が適切なものである限り、締め固め施工域全体の管理については上記と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 油圧式バイブレータ
10 油圧ホース(油圧管)
11 棒状バイブレータ
2 バイバック
21 クローラ
22 運転室
23 機械室
24 アクチュエータ
241 シリンダ
242 ブーム
243 シリンダ
244 アーム
245 シリンダ
3 油圧計
C コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8