特許第5940845号(P5940845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940845
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】トンネル内防災システムにおける防災盤
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20160616BHJP
   E21F 17/18 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   G08B17/00 D
   E21F17/18
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-58122(P2012-58122)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-191115(P2013-191115A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 隆文
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 礁太
(72)【発明者】
【氏名】田之畑 直希
【審査官】 望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−122495(JP,A)
【文献】 特開2011−187005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00
E21F17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に設置される多数の火災検知器に電気的に接続されて前記火災検知器の状態を監視する防災盤であって、
前記火災検知器は、複数の火災検出部を備えると共に該火災検出部の動作試験を行う試験手段を有し、
前記防災盤は、前記火災検知器と送り配線方式で接続されて、該送り配線を介して前記火災検知器に試験開始を指示する試験信号を送信する試験指示手段を有し、
該試験指示手段は、全ての火災検知器の試験を順次実行する全体試験を指示する全体試験指示手段と、前記火災検知器の前記火災検出部を個別に指定して個別試験を指示する個別試験指示手段を有し、
該個別試験指示手段は、特定の火災検知器の試験実行後において、他の火災検知器の火災検出部を指定したときに、前記特定の火災検知器を起点として前記試験信号を前記火災検出部に送信することを特徴とする防災盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内の火災を監視するために用いられるトンネル内の防災システムに関し、特に多数の火災検知器と、該各火災検知器と接続されてこれらの間で火災信号等を送受信する防災盤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にトンネル内の火災を監視するために、トンネル内には火災を検知するための多数の火災検知器が設置され、これら多数の火災検知器は火災信号等を送受信して集約する防災盤と接続されて防災システムを構成している。
現在用いられている防災システムは、信号の伝送方式によって2つに大別できる。ひとつは、複数の火災検知器と防災盤とが中継器を介して1対の信号線のみで各種信号の送受信を行うもの(R型伝送方式)であり、他のひとつは、各火災検知器と防災盤とが各種信号毎に専用の信号線を用いて送受信を行うもの(P型伝送方式)である。
R型伝送方式は、P型伝送方式と比較して機能面、管理面で様々な利点があるが、火災検知器や中継器等の構成機器が高価である。他方、P型伝送方式は、中継器が不要で火災検知器も安価なため、システム構成費も比較的安価であるが、火災信号を送信するための火災信号線を複数の火災検知器で構成した区画ごとに共有しており、区画単位での火災監視となったり、各種信号毎に専用の信号線が必要なため、トンネルが長くなると配線が多いためシステム構成費が高価になる傾向がある。
【0003】
本発明に係る防災盤は、上記のようなP型伝送方式を採用した防災システムに関するものであり、まずこのようなP型伝送方式を採用した防災システムの構成について概説する。
防災システムに用いられる火災検知器は、広範囲を監視できるように左右に1つずつ火災検出部を備えており、これらの火災検出部は、火災検知器の左右の空間をそれぞれ監視している。以下の説明において、火災検知器に向かって右側の火災検出部を「右目」と称し、他方を「左目」と称する。
火災検知器に2つの火災検出部を設けることで監視空間を広くしているが、隣接する火災検知器同士の間には監視空間が重複するようにして監視を確実に行えるようにしている。そのため、長大なトンネル空間の火災監視をするには、火災検知器の数は膨大なものになる。
【0004】
いったん設置された火災検知器は、汚損等によって正しく機能しなくなることがあるため、定期的に試験をして動作確認をする必要がある。
膨大な数の火災検知器の動作試験は効率的に行う必要があり、そのため防災盤には試験の実行をするための試験信号を自動的に送信する試験機能を備えている。
また試験信号を送信するために、防災盤と各火災検知器は試験信号線によって送り配線方式で接続されている。
【0005】
試験機能には、例えば特許文献1に開示されるように、毎日定刻になると自動で試験信号を送信し、全火災検知器の試験を行う全体試験機能がある。特許文献1の全体試験機能は、ある1つの火災検知器においてまず右目の試験を行い次いで左目の試験を行う、というものを全火災検知器に対して順番に行っていくものである。(特許文献1の段落[0036]参照)。全体試験機能による試験において火災検知器に不具合が見つかった場合、その火災検知器の番号等が防災盤を通してオペレータに通知される。オペレータはその通知を受けると、当該不具合が見つかった火災検知器の修理や交換等を行い対処する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−163736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記対処後に不具合が解消されたかどうかを確認するため、対処した火災検知器の火災検出部のみの再試験を行いたい場合がある。
しかし、特許文献1には、このような再試験方法については開示されていない。仮に、全体試験機能で再試験を行う場合、各火災検知器は上述のとおり送り配線方式で接続されているため、試験は防災盤に近い方から順番に行わなければならない。従って正常であった火災検知器についても再試験を行わなければならず無駄な試験時間が発生するという問題がある。例えば、片目あたりの試験時間が仮に30秒かかるとし、101台目の火災検知器のみを再試験したい場合では、1時間40分の時間が無駄となる。さらに近年では、火災検知器の高性能化に伴い片目あたりの試験時間が増える傾向にあるため、この問題はより顕著なものになってきている。そこで、効率的な再試験方法が要請されている。
【0008】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、効率的な再試験を行うことができる防災盤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る防災盤は、トンネル内に設置される多数の火災検知器に電気的に接続されて前記火災検知器の状態を監視する防災盤であって、
前記火災検知器は、複数の火災検出部を備えると共に該火災検出部の動作試験を行う試験手段を有し、
前記防災盤は、前記火災検知器と送り配線方式で接続されて、該送り配線を介して前記火災検知器に試験開始を支持する試験信号を送信する試験指示手段を有し、
該試験指示手段は、全ての火災検知器の試験を順次実行する全体試験を指示する全体試験指示手段と、前記火災検知器の前記火災検出部を個別に指定して個別試験を指示する個別試験指示手段を有することを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、上記(1)の記載のものにおいて、前記個別試験指示手段は、特定の火災検知器の試験実行後において、他の火災検知器の火災検出部を指定したときに、前記特定の火災検知器を起点として前期試験信号を前期火災検出部に送信することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る防災盤を用いれば、火災検知器の火災検出部を個別に指定して個別試験を指示する個別試験指示手段を有するため、効率的な再試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態における火災検知器と防災盤の構成を説明するブロック図である。
図2】P型伝送方式のトンネル防災システムの一例を説明する図である。
図3】本願を説明するために図2の防災システムを簡略化した図である。
図4図1のブロック図の一部の機能を実現するための防災盤の盤面の一例を説明する図である。
図5】個別試験方法を説明する図である。
図6図5の試験方法の手順を説明するフローチャートである。
図7】連続した個別試験方法を説明する図である。
図8図7の試験方法の手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る防災盤21は、図1に示すように、トンネル内に設置される多数の火災検知器1に電気的に接続されて火災検知器1の状態を監視する防災盤21であって、火災検知器1は、複数の火災検出部3を備えると共に該火災検出部3の動作試験を行う試験手段7を有し、防災盤21は、火災検知器1を接続する配線のうち、後述する試験信号線4は、送り配線方式で接続されて、該試験信号線4を介して火災検知器1に試験開始を指示する試験信号を送信する試験指示手段27を有し、該試験指示手段27は、全ての火災検知器1の試験を順次実行する全体試験を指示する全体試験指示手段29と、火災検知器1の火災検出部3を個別に指定して個別試験を指示する個別試験指示手段31を有することを特徴とするものである。なお、試験信号には後述する全体試験における右目9及び左目11の両方を指定する試験信号と、後述する個別試験における右目9または左目11のどちらか片方を指定する試験信号とがある。
【0014】
なお、本実施の形態に係るP型伝送方式の防災システムの一例を図2に示す。図2に示される防災システム2は、防災盤21と複数の火災検知器1で構成され、防災盤21から電源の供給を受けるための一対の電源線6a、6bと、火災検出部3が火災を検出したとき火災信号を出力する個別の火災検知信号線8と、防災盤21から試験信号を送出する試験信号線4と、試験結果をパルス信号によって送信する共通の試験結果信号線12とによって、各火災検知器1が防災盤21に接続されている。このうち試験信号線4は、送り配線方式で複数の火災検知器1に接続されている。
また、図3は、図2に示した防災システムを本実施の形態を説明するために簡略化した図である。図3に示される防災システム2は、防災盤21と30台の火災検知器1(一部の図示を省略している)で構成され、電源線6a、6bと、火災検知信号線8と、試験結果信号線12とを省略して、試験信号線4のみを示している。各火災検知器1は防災盤21に近い方を上位側とし、図3においては上位側から順番にNo.1〜No.30の番号が付されている。
以下、図1図4に基づいて火災検知器と防災盤の構成について説明する。
【0015】
≪火災検知器≫
火災検知器1は、図1に示す通り、火災を検知するための火災検出部3と、防災盤21や隣り合う火災検知器1と信号を送受信するための火災検知器側信号送受信手段5と、自己の試験を行うための試験手段7と、一対の電源線6a、6bを接続する端子51a、51bと、端子51a、51b(一対の電源線6a、6b)が転極したことを検知する転極検知手段51を有している。
火災検知器側信号送受信手段5は、火災検知信号用送信回路5a、試験結果用送信回路5b、試験信号用送受信回路5cを有している。火災検知信号用送信回路5aは、火災監視時に火災を検知すると火災検知信号線8を介して防災盤21に火災検知信号を送信する。試験結果用送信回路5bは、試験時に試験結果を試験結果信号線12を介して防災盤21にパルス信号で送信する。試験信号用送受信回路5cは、試験時に自己の1次側に接続された防災盤21または火災検知器1から試験信号線4を介して試験信号を受信したり、自己の2次側に接続された火災検知器1に試験信号線4を介して試験信号を送信したりする。
【0016】
火災検知器1は、広範囲を監視できるように左右に1つずつ火災検出部3を備えている。火災検出部3は、図1および図2に示す通り、火災検知器1に向かって右側を監視する右目9と、左側を監視する左目11を有している。
火災検出部3が、火災の炎に含まれる特有の光の周波数を検出すると、火災検知器側信号送受信手段5は火災検知信号用送信回路5aをオンして、火災検知信号線8を通じて防災盤21に火災信号を送出する。
【0017】
火災検知器側信号送受信手段5は、試験信号用送受信回路5cで自己の1次側に接続された防災盤21または火災検知器1からの試験信号を試験信号線4を介して受信すると試験手段7に対し試験開始を指示し、試験が終了すると、試験結果用送信回路5bにより防災盤21に対し試験結果信号線12を介して試験結果をパルス信号で送信する。また、試験信号を受信した状態で、転極検知手段51が端子51a、51bの+−が転極したことを検知すると、自己の試験を中断して火災検知器側信号送受信手段5の試験信号用送受信回路5cより試験信号線4を介して自己の2次側に接続された火災検知器1に対して試験信号を送信する。
試験手段7は、自己の試験を行うためのものであり、図1に示す通り、右目9の試験を行う右目試験手段13と、左目11の試験を行う左目試験手段15とを有している。試験手段7による試験は、例えばランプ等を用いて模擬火炎光を発光させ、該発光を火災検出部3で検知できるかを確認するものである。
【0018】
≪防災盤≫
防災盤21は、図1に示す通り、火災検知器1と信号を送受信するための防災盤側信号送受信手段23と、7セグディスプレイ43等で構成され動作試験時にどの火災検知器1の試験を行っているかを表示するための表示手段25と、試験を指示するための試験指示手段27と、一対の電源線6a、6bを介して火災検知器1に電源を供給する端子50a、50bと、端子50a、50b(電源)を転極させる電源転極手段50を有している。電源転極手段50は、試験時に端子50a、50bの極性(+−)を転極させて試験信号が入力された火災検知器1に対して試験信号を次の火災検知器1に送信するように指示する。
防災盤側信号送受信手段23は、火災検知信号用受信回路23aと、試験結果用受信回路23bと、試験信号用送信回路23cを有している。火災検知信号用受信回路23aは、監視時に火災を検知した火災検知器1より火災検知信号線8を介して火災信号を受信する。試験結果用受信回路23bは、試験を行った火災検知器1より試験結果信号線12を介して試験結果を受信する。試験信号用送信回路23cは、試験時に自己の2次側に接続された火災検知器1に試験信号線4を介して試験信号を送信する。
以下、試験指示手段27について詳細に説明する。
【0019】
≪試験指示手段≫
試験指示手段27は、全体試験を指示するための全体試験指示手段29と、個別試験を指示するための個別試験指示手段31とを有している。
<全体試験指示手段>
全体試験指示手段29は全体試験を指示するためのものである。全体試験とは、全火災検知器1を対象として自動的に試験を行うものであり、最上位の火災検知器1から順番に試験を行っていき、最下位の火災検知器1の試験まで一括して行われる。
【0020】
図2図3の防災システム2を例に挙げてより具体的に説明すると次のようになる。定刻になると防災盤21は、電源転極手段50により一対の電源線6a、6bが接続された端子50a、50bの+−を転極してから、試験信号用送信回路23cによりNo.1の火災検知器1に対して試験信号線4を介して試験信号を送信する。No.1の火災検知器1は、試験信号用送受信回路5cにより試験信号を受信すると、試験手段7により自己の試験を行い、試験を終えると、試験結果用送信回路5bにより防災盤21に試験結果信号線12を介して試験結果を送信する。No.1の火災検知器1からの試験結果を試験結果用受信回路23bにより受信した防災盤21は、電源転極手段50により端子50a、50bを転極する。No.1の火災検知器1は、電源線6a、6bを介して端子51a、51bが転極したことを転極検知手段51で検知すると、試験信号用送受信回路5cによりNo.2の火災検知器1に対して試験信号線4を介して試験信号(送り信号)を送信する。No.2の火災検知器1は、No.1の火災検知器1からの試験信号を試験信号用送受信回路5cにより受信すると、試験手段7により自己の試験を行い、試験を終えると、試験結果用送信回路5bにより防災盤21に試験結果信号線12を介して試験結果を送信する。No.2の火災検知器からの試験結果を試験結果用受信回路23bにより受信した防災盤21は、電源転極手段50により端子50a、50bを転極する。No.2の火災検知器1は、自己の端子51a、51bが転極したこと転極検知手段51で検知すると、試験信号用送受信回路5cによりNo.3の火災検知器1に対して試験信号線4を介して試験信号を送信する。このようにして、No.30の火災検知器1まで順番に試験を行っていく。防災盤21は、電極転極手段50が転極した回数で現在どの火災検知器1が試験を行っているか管理している。
なお、図示はしていないが、全体試験指示手段29は全体試験開始の時刻を設定するための時刻設定手段等を有している。
本実施の形態では、防災盤21が試験結果を受信したことを受けて、電極転極手段50が端子50a、50bを転極しているが、先に端子50a、50bを転極してから所定時間経過後に端子50a、50bを転極する構成としてもよい。
【0021】
<個別試験指示手段>
個別試験指示手段31は個別試験を指示するためのものである。個別試験とは、火災検知器1を指定して個別に行う試験であり、全体試験で不具合が見つかった火災検知器1の再試験をするため等に用いられる。個別試験は、全体試験と試験信号の送り方が異なっている。全体試験の場合は上述のとおり、試験信号を受信すると自己の試験を行い、次いで下位側の火災検知器1に試験信号を送信する。個別試験の場合は、試験対象以外の火災検知器1が試験信号を受信しても、試験はせずに下位側の火災検知器1に試験信号を送信していく(以下、これを「早送り」という)。また、早送りが進み、試験対象の火災検知器1が試験信号を受信して試験を行った後は、試験信号の送信はせずにそのままの状態を保持している(以下、この状態を「一時停止」という)。
個別試験では、防災盤21は、火災検知器1からの試験結果信号を待たずに個別試験指示手段31で指示された火災検知器1までの火災検知器1の接続数分、電源転極手段50が、端子50a、50bの転極を行う。
【0022】
個別試験指示手段31は、図1に示す通り、試験対象の火災検知器1を指定するための火災検知器指定手段33と、該指定された火災検知器1の目を指定するための目指定手段35を有している。個別試験指示手段31からの試験指示は、試験の開始前または一時停止中において行うことができる。
【0023】
個別試験指示手段31の具体的な操作は図4に示すような盤面によって行われる。該盤面は、図4に示す通り、試験を開始させるための開始キー37と、一時停止を解除させるための解除キー39と、火災検知器1の番号を入力するためのテンキー41と、該入力された番号を表示する7セグディスプレイ43と、火災検知器1の番号を入力後に目を指定するためのステッピングキー45と、右目9を指定している場合に点灯する右目ランプ47と、左目11を指定している場合に点灯する左目ランプ49とを有している。
【0024】
目指定手段35は、ステッピングキー45が押下されるたびに試験対象となる目を、右目9から左目11へ、あるいは左目11から下位側に隣り合う火災検知器1の右目9へ、1目だけ進めるように切り替えることができるようになっている。なお、火災検知器指定手段33で火災検知器1が指定されると、初期値として該火災検知器1の右目9が指定される。
この点を、図3の防災システム2を例に挙げて具体的に説明する。仮に火災検知器指定手段33でNo.28の火災検知器1が指定されると、右目9が初期値として指定される。このときステッピングキー45を1回押下すると1目だけ進め、No.28の火災検知器1の左目11が指定される。さらにステッピングキー45を1回押下するとさらに1目だけ進め、No.29の火災検知器1の右目9が指定される。
【0025】
防災盤21は、火災検知器指定手段33、目指定手段35で試験対象(検知器番号および目)が指定された後、開始キー37が押下されると、個別試験を開始する。
また、一時停止の状態で解除キー39が押下されると、前記試験対象の火災検知器1の下位側にあるすべての火災検知器1について試験をすることができる。
【0026】
所定の火災検知器1の片目のみを試験したい場合の試験方法について、図5図6に基づいて説明する。図5は、図3に示す防災システム2において、No.3の左目11のみの試験方法を説明する図である。この試験方法を図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、火災検知器指定手段33を用いてNo.3の火災検知器1を指定する(S1)。このとき、初期値として右目9が指定される。次に、目指定手段35を用いて目を指定する(S3)。この場合、ステッピングキー45を1回押下して左目11を指定する。なお、試験対象が右目9の場合は操作不要である。次に、開始キー37を押下して、試験を開始する。
このとき防災盤21は、電源転極手段50により2本の電源線6a、6bに接続された端子50a、50bの極性(+−)を転極した後、No.1の火災検知器1あてに試験信号用送信回路23cより試験信号線4を介して試験信号を送信する。No.1の火災検知器1は試験対象に指定されていないので、防災盤21は、電源転極手段50により、さらに端子50a、50bを転極する。すると、No.1の火災検知器1は、転極検知手段51によって端子51a、51bが転極したことを検知し、試験信号用送受信回路5cが受信した試験信号により開始していた試験(この場合は、左目11が指定されているので、左目11のみの試験)を中断して、No.2の火災検知器1に対して試験信号用送受信回路5cより試験信号線4を介して試験信号を送信する。同様に、電源転極手段50により、さらに端子50a、50bが転極されて、No.2の火災検知器1も早送りされ、No.3の火災検知器1が試験信号用送受信回路5cにより試験信号を受信すると、左目11が指定されているのでNo.3の左目11のみの試験が実行され、試験結果用送信回路5bにより試験結果が送信される(S5)。試験終了後、試験対象が最下位の火災検知器1の左目11に該当するかどうかが判定される(S7)。この場合、該当しないため、一時停止となる(S9)。なお、該当する場合は試験終了となる。
【0027】
以上のように、本発明に係る防災盤21の個別試験指示手段31を用いれば、所定の火災検知器1およびその片目のみを試験対象にすることができるため、必要のない試験を省略でき無駄な時間を発生させることがなく、効率的な試験を行うことができる。
なお、S9の一時停止状態において解除キー39を押下すると、No.4以下の全ての火災検知器1について試験を行うことができる。また、このとき、目の指定も解除され、以降は右目9及び左目11の両方について試験を行う。
【0028】
また、複数の火災検知器1の再試験を行いたい場合、一時停止中において、個別試験指示手段31から再度試験指示を行う。図7は、上記図5の例においてNo.3の試験後に一時停止の状態から、No.29の左目11の試験を行う方法について説明する図である。この試験方法を図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
図8に示す通り、一時停止中において(S11)、火災検知器指定手段33を用いてNo.29を指定する(S13)。試験対象は左目11であるため、ステッピングキー45を1回押下して指定する(S15)。なお、試験対象が右目9の場合、目指定手段35の操作は行わない。次に、開始キー37を押下して試験を開始する。すると防災盤21は、電源転極手段50により端子50a、50bを転極し、これによりNo.3のは試験信号をNo.4に送信する。防災盤21はNo.3からNo.28までの火災検知器1の数量分、つまり、試験対象となる火災検知器1の番号の増加分、端子50a、50bの転極を繰り返し、No.29の左目11あてに試験信号が送信され、No.4からNo.28までは該試験信号を受信しても試験せずに早送りされる。その後、No.29が試験信号を受信すると、その左目11のみ試験が実行される(S17)。試験対象は最下位の試験機の左目11ではないため(S19)、再度一時停止となる(S11)。
【0029】
このように複数の火災検知器1の再試験を行いたい場合、図8に示した一時停止中に再度試験指示を行う方法を用いれば、途中から次の試験対象までの間を早送りをすればよいため、早送りに要する時間を省略することができる。例えば、仮に、300台の火災検知器があるとして、101台目と201台目の試験を行いたいとする。また、仮に早送りに一目あたり0.5秒かかるとする。この場合において、No.1から試験を開始するのでは、201台目の試験をするために、1台目から200台目の早送りに3分20秒の時間を要することになる。一方、図8に示した試験方法を用いれば101台目の試験後の一時停止から早送りできるため、200台目までの99台分だけで済み、無駄な時間をより少なくすることができる。
【0030】
なお、上記の実施の形態では、個別試験指示手段31は火災検知器指定手段33と目指定手段35を有するものであったが、どちらか一方だけを有するものでもよい。火災検知器指定手段33だけの場合は、指定された火災検知器1の右目9と左目11の両方の試験を常に行うものにすればよい。また、目指定手段35だけの場合は、試験対象の目に該当するまで、ステッピングキー45を押下すればよい。
また、上記の実施の形態では、個別試験で試験対象の火災検知器1の試験を行った後、試験信号の送信をせずに一時停止状態となり、一時停止を解除させる解除キー39を有するものであったが、解除キー39の替わりに保持キーを有し、保持キーが押下された状態で個別試験を行うと、試験対象の火災検知器1の試験を行った後、一時停止状態となり、次の指示を待つようにしてもよい。この場合、保持キーを押下せずに個別試験を開始すると、試験対象の火災検知器1の試験を行った後、試験を行った火災検知器1の下位側にある全ての火災検知器1について試験をすることができる。
また、上記の実施の形態では、試験結果をパルス信号で送信しているが、試験結果によってハイ信号またはロー信号を送信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 火災検知器
2 防災システム
3 火災検出部
4 試験信号線
5 火災検知器側信号送受信手段
5a 火災検知信号用送信回路
5b 試験結果用送信回路
5c 試験信号用送受信回路
6a、6b 電源線
7 試験手段
8 火災信号線
9 右目
11 左目
12 試験結果信号線
13 右目試験手段
15 左目試験手段
21 防災盤
23 防災盤側信号送受信手段
23a 火災検知信号用受信回路
23b 試験結果用受信回路
23c 試験信号用送信回路
25 表示手段
27 試験指示手段
29 全体試験指示手段
31 個別試験指示手段
33 火災検知器指定手段
35 目指定手段
37 開始キー
39 解除キー
41 テンキー
43 7セグディスプレイ
45 ステッピングキー
47 右目ランプ
49 左目ランプ
50 電源転極手段
50a、50b 電源線用端子(防災盤)
51 転極検知手段
51a、51b 電源専用端子(火災検知器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8