(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
左右走行クローラを有する走行機体と、前記走行機体の前方に昇降可能に装設する刈取装置と、前記走行機体に搭載する脱穀装置とを備え、前記走行機体に昇降可能に連結する固定側刈取フレームと、前記固定側刈取フレームにスライドリンク機構を介して横移動可能に連結する可動側刈取フレームとによって、前記刈取装置の刈取フレームを形成し、前記走行機体に対して前記刈取装置を横移動可能に配置するコンバインにおいて、
前記刈取装置の一側方に横移動可能な可動分草体を配置する構造であって、前記固定側刈取フレームに前記可動分草体を連結する分草幅変更ロッド体を設け、
刈取入力軸を設ける昇降支点軸フレームと、昇降支点軸フレームに後端側を固着する前向きフレームと、前記前向きフレームの前端側に固着する横向きフレームとによって、前記固定側刈取フレームを形成する一方、前記横向きフレームの端部にスライド支点ブラケットを固着し、前記スライドリンク機構のリンクアームを前記スライド支点ブラケットに回動可能に軸支する構造であって、前記スライド支点ブラケットに前記分草幅変更ロッド体を連結している、
コンバイン。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を、図面(
図1〜
図10)に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0014】
図1及び
図2に示す如く、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備える。走行機体1の前部には、穀稈を刈取りながら取込む2条刈り用の刈取装置3が、昇降アクチュエータとしての単動式の昇降用油圧シリンダ4によって、横軸である刈取入力ケース16回りに昇降調節可能に装着される。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、該脱穀装置5から取り出された穀粒を貯留する穀物タンク7とが横並び状に搭載される。なお、脱穀装置5が走行機体1の前進方向左側に、穀物タ
ンク7が走行機体1の前進方向右側に配置される。走行機体1の後部に旋回可能な排出オーガ8が設けられ、穀物タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で且つ穀物タンク7の前側方には、運転操縦部9が設けられている。
【0015】
運転操縦部9には、旋回操作具としての操縦ハンドル10と、運転座席11と、直進操作具としての主変速レバー12と、副変速レバー13と、脱穀クラッチを入り切りする脱穀クラッチレバー14と、刈取クラッチを入り切りする刈取クラッチレバー15とが配置されている。運転操縦部9には、操縦ハンドル10を設けたハンドルコラム19と、前記各レバー13,14等を設けたサイドコラム20とが配置されている。走行機体1における運転座席11の下方には、動力源としてのエンジン17が配置されている。エンジン17の前方には、エンジン17からの動力を適宜変速して左右走行クローラ2に伝達するためのミッションケース18が配置されている。
【0016】
図1に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置する。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン17の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持する。
【0017】
刈取装置3は、バリカン式の刈刃装置31と、2条分の穀稈引起装置32と、穀稈搬送装置33及び分草体34を備えている。刈刃装置31は、刈取装置3の骨組を構成する刈取フレーム36に配置されている。刈取フレーム36の上方に穀稈引起装置32を配置する。穀稈引起装置32とフィードチェン6の送り始端部との間に穀稈搬送装置33を配置する。穀稈引起装置32の下部前方に分草体34を突設する。走行機体1は、エンジン17にて左右走行クローラ2を駆動させて圃場内を移動しながら、刈取装置3の駆動にて圃場の未刈穀稈を連続的に刈り取る。
【0018】
脱穀装置5は、刈取穀稈を脱穀処理する扱胴41と、扱胴41の下方に配置された揺動選別機構42及び風選別機構43と、扱胴41の後部から取出される脱穀物を再処理する送塵口処理胴44とを備えている。扱胴41は脱穀装置5の扱室内に配置されている。刈取装置3から送られてきた刈取穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれる。そして、刈取穀稈の穂先側が脱穀装置5内に搬入され、扱胴41にて脱穀処理される。
【0019】
脱穀装置5の下部には、各選別機構42,43にて選別された穀粒のうち精粒等の一番物が集まる一番受け樋45及び一番コンベヤ46と、枝梗付き穀粒や穂切れ粒等の二番物が集まる二番受け樋47及び二番コンベヤ48とが設けられている。一番受け樋45内に集められた精粒等の一番物は、当該一番受け樋45内の一番コンベヤ46及び揚穀筒49内の揚穀コンベヤを介して穀物タンク7に送られる。
【0020】
枝梗付き穀粒等の二番物は、一番受け樋45より後方の二番受け樋47に集められ、二番受け樋47内の二番コンベヤ48及び還元筒50内の還元コンベヤを介して揺動選別機構42に戻される。そして、二番物は、揺動選別機構42にて再選別される。藁屑は、図示しない排塵ファンに吸込まれて、脱穀装置5の後部から機外へ排出される。
【0021】
フィードチェン6の後方側(送り終端側)には排藁チェン51が配置されている。フィードチェン6の後端から排藁チェン51に受継がれた排藁(脱粒した稈)は、長い状態で
走行機体1の後方に排出されるか、または脱穀装置5の後方にある排藁カッタ52にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0022】
次に、
図3及び
図4を参照しながら、刈取装置3構造の詳細について説明する。
図3及び
図4に示すように、刈取装置3の刈取フレーム36として、横軸である刈取入力ケース16と、縦支持桿61と、横支持桿62と、横伝動ケース63とを備えている。走行機体1の前部に立設された刈取支持台(図示省略)に刈取入力ケース16が回動可能に支持される。走行機体1の左右方向に向けて刈取入力ケース16を延長している。刈取入力ケース16から前方に向けて縦支持桿61を延長している。縦支持桿61の前端側に横支持桿62を連結している。走行機体1の左右方向に向けて横支持桿62を延長している。横支持桿62の前方に横伝動ケース63が平行状に配置されている。横伝動ケース63は横支持桿62に平行リンク機構64を介して左右揺動可能に連結されている。縦支持桿61と走行機体1との間に昇降用油圧シリンダ4が設けられている。昇降用油圧シリンダ4にて刈取入力ケース16回りに刈取装置3(縦支持桿61)を回動させる結果、刈取装置3を任意の高さに昇降できる。
【0023】
横伝動ケース63は、前述した刈刃装置31、穀稈引起装置32、穀稈搬送装置33を構成する掻込み装置37及び分草体34を支持している。横伝動ケース63及びこれに支持される複数の装置31〜34,36は、刈取装置3の前部側に位置していて前処理部を構成している。平行リンク機構64の左右揺動によって、前処理部(横伝動ケース63及びこれに支持される複数の装置31〜34,36)が走行機体1に対して左右に位置変更するように構成されている。平行リンク機構64は左右一対のリンクアーム65を備えている。横支持桿62と各リンクアーム65の基端側(後端側)とはそれぞれ縦向きの後ピン66によって相対回動可能に連結されている。横伝動ケース63の左右両端部の前部側には第2ブラケット65aが固着されている。横伝動ケース63の各第2ブラケット65aと各リンクアーム65の先端側(前端側)とはそれぞれ縦向きの前ピン67によって相対回動可能に連結されている。
【0024】
ここで、穀稈搬送装置33は、2条分の穀稈引起装置32にて取り込まれた未刈穀稈の株元側を掻き込んで後方に搬送する2条分の掻込み装置37と、掻込み装置37から2条分の刈取穀稈の株元側を受継ぐ縦搬送チェン38と、縦搬送チェン38にて搬送される2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する穂先搬送タイン39とを備えている。2条分の刈取穀稈の株元側は、縦搬送チェン38の送り終端側からフィードチェン6に受け継がれる。2条分の刈取穀稈の穂先側は、穂先搬送タイン39の送り終端側から、扱胴41を内蔵した脱穀装置5の扱室内に搬送される。
【0025】
次に、
図5等を参照しながら、刈取装置3の動力伝達系統について説明する。刈取入力ケース16には、エンジン17からの動力が伝達される刈取入力軸71が回転可能に内挿されている。刈取入力ケース16の長手中途部には、縦支持桿61とは別に、前後に長い揺動伝動ケース72の基端側が左右回動可能に連結されている。詳細は省略するが、揺動伝動ケース72は長手方向に伸縮可能に構成されている。揺動伝動ケース72の先端側は、後述する右引起伝動ケース75の上部側に連結されている。揺動伝動ケース72内には揺動伝動軸73が回転可能に軸支されている。揺動伝動軸73の基端側が、縦軸74及び2組のベベルギヤ機構を介して刈取入力軸71に動力伝達可能に連結されている。エンジン17からの動力が刈取入力軸71に伝達され、刈取入力軸71の回転動力が揺動伝動軸73を介して刈取装置3前部側の前処理部に伝達される。
【0026】
横伝動ケース63の右端側に、右側の穀稈引起装置32の背面側に位置するように右引起伝動ケース75が立設されている。横伝動ケース63の左端側に、左側の穀稈引起装置32の背面側に位置するように左引起伝動ケース76が立設されている。右引起伝動ケー
ス75の長手中途部にはギヤケース77が組み込まれている。揺動伝動軸73の先端側が、右引起伝動ケース75の上部に回転可能に内挿された上部右引起伝動軸78に、ベベルギヤ機構を介して動力伝達可能に連結されている。上部右引起伝動軸78の上端側は、右側の穀稈引起装置32の引起タイン駆動軸79に、ベベルギヤ機構を介して動力伝達可能に連結されている。
【0027】
上部右引起伝動軸78の下端側は、ギヤケース77内の平ギヤ機構を介して、右引起伝動ケース75の下部に回転可能に内挿された下部右引起伝動軸80の上端側に動力伝達可能に連結されている。下部右引起伝動軸80の下端側は、横伝動ケース63内に回転可能に内挿された横伝動軸81及び2組のベベルギヤ機構を介して、左引起伝動ケース76内に回転可能に内挿された左引起伝動軸82の下端側に動力伝達可能に連結されている。左引起伝動軸82の上端側は、左側の穀稈引起装置32の引起タイン駆動軸83に、ベベルギヤ機構を介して動力伝達可能に連結されている。
【0028】
また、右側の掻込み装置37及び刈刃装置31への動力伝達軸84を横伝動軸81から分岐させている。左側の掻込み装置37は、右側の掻込み装置37の回転動作に従動して回転するように構成されている。前述の通り、刈取装置3(前処理部)の左右揺動に伴い、揺動伝動ケース72が縦軸74回りに左右回動する。このため、刈取装置3(前処理部)を左右どちらの位置においた状態でも動力伝達でき、刈刃装置31、穀稈引起装置32及び掻込み装置37が駆動される。
【0029】
穀稈搬送装置33のうち縦搬送チェン38及び穂先搬送タイン39の基端側はそれぞれ刈取入力ケース16の左端部に駆動ケース85を介して支持されている。従って、縦搬送チェン38及び穂先搬送タイン39は、前処理部と共に、刈取入力ケース16回りに回動可能になっている。駆動ケース85自体は、刈取入力ケース16に対してこれと同軸回りに上下回動可能に連結されている。このため、縦搬送チェン38及び穂先搬送タイン39は、前処理部とは別個独立して、駆動ケース85(刈取入力ケース16)回りに一体的に上下回動して、扱き深さ調節を実行可能になっている。
【0030】
駆動ケース85に回転可能に内挿された縦駆動軸86は、ベベルギヤ機構を介して、刈取入力ケース16内の刈取入力軸71に動力伝達可能に連結されている。縦駆動軸86の下端側には、縦搬送チェン38に対する駆動スプロケットが設けられている。縦駆動軸86の上端側には、穂先搬送タイン39のタインチェンに対する駆動スプロケットが設けられている。従って、縦搬送チェン38及び穂先搬送タイン39は、刈取入力軸71から分岐した回転動力にて駆動する。詳細は省略するが、縦搬送チェン38及び穂先搬送タイン39は、前処理部の左右揺動に連動して縦駆動軸86を中心に左右回動可能に構成されている。
【0031】
以上の構成において、通常の刈取作業時は、左側の走行クローラ2にて未刈穀稈を踏み倒さないように、刈取装置3(前処理部)を左端位置に移動させる(
図4の実線状態参照)。中割作業時は、刈取装置3を右端位置に移動させ(
図4の二点鎖線状態参照)、左右それぞれの走行クローラ2による未刈穀稈の踏み倒しを防止する。畦際での刈取作業時は、畦寄りの端部位置まで刈取装置3を移動させ、畦寄りにある走行クローラ2で畦に乗り上げるのを防止する。また、刈取装置3の左右移動調節によって未刈穀稈列に対する条合せも実行可能である。
【0032】
次に、
図6〜
図10を参照しながら、刈取装置3の引起し条間を拡大または縮小変更する構造について説明する。
図6〜
図10に示すように、刈取装置3には、上記した分草体34としての2条分の分草体34a,34b,34cが備えられる。各分草体34a,34b,34cは先細形状とされ、各分草フレーム35a,35b,35cの各先端部に前
方へ向けてそれぞれ突設される。
【0033】
特に、右側の分草体34bの前下部には、分草桿35dが後方に突出するように配置され、当該分草桿35dの後端に長孔を備える装着部35eが固設される。一方、分草フレーム35bの前端には、分草桿取付フレーム35hが配置される。当該分草桿取付フレーム35hは、板状の部材によって構成され、側面視において前方を開放側とする略U字状に形成される。さらに分草桿取付フレーム35hの上下面には、上下方向に貫通する長孔が形成される。装着部35eは、分草桿取付フレーム35hの上下面開に配置され、さらに、分草桿取付フレーム35hの長孔と装着部35eの長孔を合わせた状態で、後述する第6分草ピン101が貫装される。第6分草ピン101によって、分草体34bおよび分草桿35dは装着部35eおよび分草桿取付フレーム35hを介して分草フレーム35bに回動可能に支持される。
【0034】
平行リンク機構64は、走行機体1側に設けられる横支持桿62と刈取装置3の前側に設けられる横伝動ケース63との間に取り付けられ、横伝動ケース63を走行機体1に対して左右方向に移動可能とするための機構である。平行リンク機構64は、主として横支持桿62、左右の、横伝動ケース63、後ピン66、および前ピン67によって構成される四節リンク機構である。
【0035】
横支持桿62は、左右方向を長手方向とする棒状の部材である。横支持桿62は、その左右中途部に縦支持桿61の下端が固設される。さらに、横支持桿62の左右両端には、それぞれ第1ブラケット62a,62bが固設される。第1ブラケット62a,62bは、板状の部材によって構成され、背面視において開放側を外側に向けた略U字状に形成される。第1ブラケット62a,62bの上下面には、それぞれ上下方向に貫通する長孔が形成される。
【0036】
左側のリンクアーム65および右側のリンクアーム65は、前後方向を長手方向とする棒状の部材である。左側のリンクアーム65および右側のリンクアーム65の前後両端には、それぞれ上下方向に貫通する長孔が形成される。さらに右側のリンクアーム65の前後中途部には、上下方向に貫通する連結孔(図示省略)が形成される。
【0037】
左側の後ピン66は、左側のリンクアーム65の後側の長孔を左側の第1ブラケット62aの長孔と合わせた状態で、それら長孔に貫装される。左側の後ピン66によって横支持桿62と左側のリンクアーム65は、互いに回動可能に連絡される。
【0038】
右側の後ピン66は、右側のリンクアーム65の後側の長孔を右側の第1ブラケット62bの長孔と合わせた状態で、それら長孔に貫装される。右側の後ピン66によって横支持桿62と右側のリンクアーム65は、互いに回動可能に連結される。
【0039】
一方、横伝動ケース63には、分草フレーム35a,35bを取り付けるための取付部材63a,63bが配置されており、当該取付部材63a,63bには、横伝動ケース63よりも下前方で、機体内方(中央の分草フレーム35c)に向ってリンク取付部材(第2ブラケット65a、第3ブラケット65b)が左右一対となるように取付られる。第2ブラケット65aおよび第3ブラケット65bは、板状の部材によって構成され、側面視において開放側を後側に向けた略U字状に形成される。第2ブラケット65aおよび第3ブラケット65bの上下面には、それぞれ上下方向に貫通する長孔が形成される。
【0040】
左側の前ピン67は、左側のリンクアーム65の前側の長孔と第2ブラケット65aの長孔を合わせた状態で貫装される。左側の前ピン67によって、左側のリンクアーム65と横伝動ケース63は、取付部材63aおよび第2ブラケット65aを介して、互いに回
動可能に逮結される。
【0041】
右側の前ピン67は、右側のリンクアーム65の前側の長孔と第3ブラケット65bの長孔とを合わせた状態で貫装される。右側の前ピン67によって、右側のリンクアーム65と横伝動ケース63は、取付部材63bおよび第3ブラケット65bを介して、互いに回動可能に連結される。
【0042】
このように構成することで、横支持桿62と横伝動ケース63が平行となり、左側のリンクアーム65と右側のリンクアーム65とが平行となる平行リンク機構が形成される。
【0043】
分草体リンク機構90は、平行リンク機構64、分草フレーム35bおよび右側の分草体34bに取り付けられ、分草体34bを左右揺動可能にするための機構である。分草体リンク機構90は、平行リンク機構64の左右の揺動に連動して変位し、主として第1分草リンク91、第2分草リンク92、第3分草リンク93、第4分草リンク94、第5分草リンク95、第1分草ピン96、第2分草ピン97、第3分草ピン98、第4分草ピン99、第5分草ピン100、および第6分草ピン101によって構成される。なお、各分草リンクは、それぞれ長さの異なる棒状の部材であり、各分草ピンは、それぞれ上下方向を回動軸とするものである。
【0044】
第1分草リンク91は、左右方向を長手方向として、分草フレーム35bの後方に適宜の間隔をとって配置される。第1分草リンク91は、その両端部に上下方向に貫通する長孔が形成される。第1分草リンク91の左側の長孔と右側の第1ブラケット62bの連結孔(図示省略)とを合わせた状態で、第1分草ピン96が貫装される。第1分草ピン96によって、第1分草リンク91は、右側の第1ブラケット62bに対して回動可能に連結される。
【0045】
第2分草リンク92は、前後方向を長手方向とし、その後端部に長孔が形成される。第2分草リンク92の長孔と第1分草リンク91の右側の長孔とを合わせた状態で、第2分草ピン97が貫装される。第2分草ピン97によって第2分草リンク92は、第1分草リンク91に対して回動可能に連絡される。また、第2分草リンク92の前端は、第3分草ピン98に固設される。
【0046】
一方、前後方向に延びた分草フレーム35bの後端部には、機構取付フレーム35fが配置される。当該機構取付フレーム35fの右外側には、上下方向に貫通する支持孔35gが配置される。当該支持孔35gには、第3分草ピン98が貫装され、第3分草ピン98は、支持孔35gに摺動可能に支持される。したがって、第2分草リンク92は、第2分草ピン97を中心に、支持孔35gによって回動可能に支持される。
【0047】
第3分草リンク93は、左右方向を長手方向とし、第2分草リンク92よりも短く形成される。第3分草リンク93の左端は、第3分草ピン98に固設され、第2分草リンク92と第3分草リンク93の右後方の成す角度が略直角となるように配置される。つまり、第2分草リンク92と第3分草リンク93はベルクランク状に一体的に形成される。第3分草リンク93の右端部には、長孔が上下方向に貫通する。
【0048】
第4分草リンク94は、前後方向を長手方向として、分草フレーム35bの右方に適宜の間隔をとって略平行に配置される。第4分草リンク94の前後端部には、それぞれ長孔が形成される。第4分草リンク94の後側の長孔と第3分草リンク93の右側の長孔とを合わせた状態で、それら長孔に第4分草ピン99が貫装される。したがって、第4分草ピン99によって、第4分草リンク94は、第3分草リンク93の右端部に回動可能に連結される。
【0049】
第5分草リンク95は、左方方向を長手方向として、第3分草リンク93と略平行となるように第4分草リンク94および分草フレーム35bの前端部との間に配置される。第5分草リンク95の右端部には、上下方向に貫通する長孔が形成される。第5分草リンク95の長孔と第4分草リンク94の前側の長孔とを合わせた状態で、それら長孔に第5分草ピン100が貫装される。従って、第5分草ピン100によって、第5分草リンク95は、第4分草リンク94の前端部に対して回動可能に連結される。
【0050】
そして、第5分草リンク95の左端は、前記分草桿35dの後端に配置されたパイプ状の装着部35eに、第5分草リンク95と分草桿35dとが右前側で成す角度が略直角となるように固設される。つまり、第5分草リンク95は、分草フレーム35bの前端部に装着部35eを中心に回勤可能に支持される。
【0051】
このように構成することで、平行リンク機構64と、分草体リンク機構90と、分草フレーム35bと、右側の分草体34bと、分草桿35dとが回動可能に連絡される。
【0052】
刈取装置3の左右外側には、サイドデバイダー111,112が配置される。サイドデバイダー111,112は、左右の走行クローラ2によって圃場の穀稈(未刈取の穀稈)を踏みつけることを防止するように、穀稈を左右の走行クローラ2の外側方へ導くためのものである。
【0053】
左側のサイドデバイダー111は、その前端を左の分草フレーム35aの先端に回動可能に支持され、その中途部を、走行機体1の前部から左外方に突設する支持部材111aによって回動自在に支持される。さらにサイドデバイダー111は、その後端部を機体フレームの左後側面に回動自在に支持される。
【0054】
一方、右側のサイドデバイダー112は、主として、第1横支持部112a、第2横支持部112b、ガイド桿112cによって構成される。右側のサイドデバイダー112は、分草体リンク機構90をその内側に配置することで、圃場の穀稈(未刈取の穀稈)が分草体リンク機構90に接触することを防ぐものである。
【0055】
第1横支持部112aは、左右方向を長手方向とし、分草フレーム35bの前端部に起立した引起装置支持フレーム120にその左端部を回動可能に支持される。第2横支持部112bは、第1横支持部112aと略平行となるように前後方向に所定間隔をとって分草フレーム35bの前端部にその左端部が回動自在に支持される。
【0056】
ガイド桿112cは、前後方向を長手方向とする棒材によって構成され、その前部は、後方に向うにつれて右外方に突出し、さらに、その後部は、後方に向うにつれて左内方に位置する。つまり、分草体リンク機構90の外方を覆うように配置される。
【0057】
次に、前記平行リンク機構64および分草体リンク機構90による刈取装置3の変位について説明する。
【0058】
先ず、二条刈り収穫作業を実行するための各リンク機構64,90の位置について説明する。
【0059】
刈取装置3の全体は、
図9に示すように、走行機体1の左右全幅に対して左側に横移動した位置に支持されている。
図3および
図6に示すように、刈取装置3は、縦支持桿61に連結された昇降用油圧シリンダ4の昇降操作によって刈取入力ケース16を中心として回動可能に支持される。従って、縦支持桿61は走行機体1の本体に対して左右方向には
、移動することができない。
【0060】
横支持桿62は、縦支持桿61に連結されており、走行機体1に対して左右方向の移動が不可能となっている。この横支持桿62の両端にある後ピン66を中心として、左側のリンクアーム65および右側のリンクアーム65は、それらの先端を後端よりも左前方へと向けている。横伝動ケース63は、左側のリンクアーム65および右側のリンクアーム65に取付部材63a,63b、第2ブラケット65aおよび第3ブラケット65bを介して回動可能に連結されており、走行機体1の左側に位置する。
【0061】
平行リンク機構64がこの位置のとき、平行リンク機構64の右側のリンクアーム65に回動可能に連結された分草体リンク機構90は、分草体34bの先端を中央の分草体34c側に向けて位置するように構成される。言い換えれば、分草体34bの先端は、刈刃装置31の左端よりも機体中央側に配置する。
【0062】
従って、刈刃装置31が3条分を刈取できる左右幅を有しながら、分草体34bがその左右幅を狭める方向に回動するため、刈取作業の際、圃場の刈取跡側に排出された排藁を刈取装置3内へと掻込みにくくすることができる。すなわち、左回りの回り刈り作業を行う場合に、機体の左前方に位置する未刈取の穀稈が、左側の走行クローラ2により押し倒されたり、未刈取の穀稈に泥土が付着したりすることを防止することができる。
【0063】
次に、二条刈りから全面刈り(三条刈り)用に各リンク機構64,90が変位する状態の説明をする。
【0064】
操縦者が図示しない刈取装置3のスライド操作部を操作することで、
図10に示すように、刈取装置3の全体が右側に横移動する。その際、横支持桿62の両端の後ピン66を中心として左側のリンクアーム65よび右側のリンクアーム65が右回りに回転し、それらの前先端が後端よりも右に位置する。この左側のリンクアーム65および右側のリンクアーム65の変位によって、取付部材63a,63b、第2ブラケット65aおよび第3ブラケット65bを介して連結された横伝動ケース63が右側に横移動する。つまり、横支持桿62に対して右方向に横伝動ケース63が平行移動したことになる。横伝動ケース63は、前述のように刈取装置3の各種装置およびフレーム(パイプ)を支持しているため、刈取装置3全体が右方向に移動することとなる。
【0065】
一方、この平行リンク機構64の変位に伴って、分草体リンク機構90も変位する。
【0066】
分草体リンク機構90は、分草フレーム35bに対して移動不能な支持孔35gに貫装された第3分草ピン98を回動支点として構成されている。
図6の状態から
図10に示すように、分草フレーム35bを含む刈取装置3は、走行機体1に対して右側に移動する。そのため、第1分草リンク91の左端部は、右側のリンクアーム65によって左側に引っ張られる状態となる。従って、第1分草リンク91は左側に移動し、第3分草ピン98を中心として第2分草リンク92及び第3分草リンク93を
図6の状態から右回りに回転させる。第3分草リンク93が右回りに回転することで、第4分草ピン99に回動可能に連結された第4分草リンク94は、右側後方へと移動する。第4分草リンク94の前端部と第5分草ピン100によって回動可能に連結された第5分草リンク95は、第6分草ピン101を中心として
図6の状態から右回りに回動される。第5分草リンク95は、分草桿35dとともに装着部35eに固設されているため、第6分草ピン101を中心として
図5の状態から右回りに回転する。従って、分草フレーム35bの先端を中心として分草体34bの先端が右側に回転する。言い換えれば、分草体34bの先端は、刈刃装置31の左端よりも外側に位置する。
【0067】
このように構成することで、刈取装置3を走行機体1に対して右側に横移動させた場合、右側の分草体34bの先端を右方向に回動させることができる。そして、刈取装置3の左右外側のサイドデバイダー111,112によって刈取装置3の左右側方にある未刈取の穀稈を掻き分けるように走行機体1が走行することができる。さらに、刈取装置3のサイドデバイダー111,112を合わせた左右幅が左右の走行クローラ2の左右幅より広くなり、圃場の穀稈(未刈取の穀稈)を踏みつけることなく二条用の走行機体1で3条分の刈取りを可能とする。つまり、本実施形態の二条用の走行機体1は、中割作業などで全面刈りが可能となる。
【0068】
ここで、上述の分草体34bは、分草フレーム35bに対して、左右略等角度で回動する構成となっている。この場合、分草体34bが同じ回動角度で、前後方向から右側に回動する構成に比べて、分草フレーム35bと分草体34bとが成す角度が小さくなり、分草されて刈刃装置31へガイドされる穀稈の流れは妨げられ難く、穀稈の株元を大きく曲げることもなく、姿勢よく刈り取ることが可能となる。
【0069】
図6〜
図10に示す如く、左右走行クローラとしての走行クローラ2を有する走行機体1と、走行機体1の前方に昇降可能に装設する刈取装置3と、走行機体1に搭載する脱穀装置5とを備え、走行機体1に昇降可能に連結する固定側刈取フレームとしての横支持桿62と、横支持桿62にスライドリンク機構としての平行リンク機構64を介して横移動可能に連結する可動側刈取フレームとしての横伝動ケース63とによって、刈取装置3の刈取フレーム36を形成し、走行機体1に対して刈取装置3を横移動可能に配置するコンバインにおいて、刈取装置3の一側方に横移動可能な可動分草体としての分草体34bを配置する構造であって、横支持桿62に分草体34bを連結する分草幅変更ロッド体としての第1分草リンク91を設けたものであるから、平行リンク機構64の横移動量を考慮して分草体34bの横移動を設定する必要がなく、分草体34bの横移動構造を簡略化できるものでありながら、各分草リンクに藁草などが絡んでも、各分草リンクが損傷するのを簡単に防止でき、組付け作業性などを向上できる。
【0070】
図6〜
図10に示す如く、平行リンク機構64の横支持桿62および横伝動ケース63よりも高位置で左右方向に各分草リンクを延設したものであるから、高剛性の横支持桿62および横伝動ケース63によって各分草リンクを田面の土塊などから保護でき、各分草リンク(特に、第1分草リンク91)の損傷を低減でき、各分草リンクの誤作動を抑制できる。
【0071】
図6〜
図10に示す如く、刈取入力軸71を設ける昇降支点軸フレームとしての刈取入力ケース16と、刈取入力ケース16に後端側を固着する前向きフレームとしての縦支持桿61と、縦支持桿61の前端側に固着する横向きフレームとしての横支持桿62とによって、横支持桿62を形成する一方、横支持桿62の端部にスライド支点ブラケットとしての第1ブラケット62a,62bを固着し、平行リンク機構64のリンクアーム65を第1ブラケット62a,62bに回動可能に軸支する構造であって、第1ブラケット62a,62bに上記の各分草リンク(特に、第1分草リンク91)を連結したものであるから、高剛性の第1ブラケット62a,62bを活用して各分草リンクを低コストに組付けることができる。