(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(A)第1の実施形態
以下では、本発明の定着装置及び画像形成装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0012】
第1の実施形態では、例えば電子写真プリンタに搭載される画像形成装置及びその定着装置に本発明を適用する場合を例示する。
【0013】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態の画像形成装置の内部構成を示す内部構成図である。
【0014】
図1において、画像形成装置1は、媒体(例えば、用紙等)を搬送する媒体搬送部4、搬送される媒体の搬送位置を検出する書き出しセンサ8、記録光露光部材であるLEDヘッド3から露光された記録光に応じてトナー像を媒体に形成するトナー像形成部5、媒体上のトナー像を媒体に定着させる定着器6、定着器6から排出される媒体を検知する排出センサ9を少なくとも有して構成される。
【0015】
図1の画像形成装置1は、媒体が搬送される搬送路に、書き出しセンサ8、トナー像形成部5、定着器6、排出センサ9の順序で配置されている。また、LEDヘッド3は、トナー像形成部5に隣接して配置されている。
【0016】
図1の画像形成装置1は、
図2の印刷制御部100が印刷指示を受けると、媒体搬送部4がカセット内からの媒体をトナー像形成部5に向けて搬送する。書き出しセンサ8が搬送される媒体の到達を検知すると、LEDヘッド3は印刷情報に応じた記録光をトナー像形成部5に照射し、トナー像形成部5は照射された記録光に基づいてトナー像を媒体上に形成する。
【0017】
その後、媒体搬送部4によって搬送される媒体が定着器6に与えられると、定着器6は、熱と圧力によって媒体上のトナー像を媒体に定着し、トナー像を定着させた媒体を排出する。定着器6から排出された媒体を排出センサ9が検知し、その後、所定期間、媒体搬送を継続することで、トナー像を定着させた媒体が画像形成装置から排出される。
【0018】
図2は、第1の実施形態の画像形成装置1の印刷制御を示す機能ブロック図である。
【0019】
図2において、画像形成装置1は、印刷動作を制御する印刷制御部100、記録光露光部材としてのLEDヘッド3、記録光に基づくトナー像を形成するトナー像形成部5、トナー像形成部5に電圧を印可するトナー像形成部電源7、媒体搬送部4に駆動力を与える媒体搬送モータ18、用紙搬送モータ18に電力を供給するモータ電源17、書き出しセンサ8、排出センサ9、定着ローラ64(
図3参照)を加熱するメイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611を有する定着器6、メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611に電力を供給するヒータ電源16、定着ローラ64(
図3参照)の中央部の温度を感知する中央部サーミスタ620、定着ローラ64(
図3参照)の端部の温度を感知する端部サーミスタ621を少なくとも有する。
【0020】
印刷制御部100は、画像形成装置1の印刷動作を制御するものであり、LEDヘッド3、トナー像形成部電源7、モータ電源17、書き出しセンサ8、排出センサ9、ヒータ電源16、中央部サーミスタ620、端部サーミスタ621と接続されている。
【0021】
また、
図2において、印刷制御部100は、主な機能として、モータ制御部101、温度検知部102、温度設定部103、加熱制御部104を有する。
【0022】
モータ制御部101は、電源投入時や印刷要求時において、モータ電源17を制御して、用紙搬送モータ18を駆動させるものである。
【0023】
温度検知手段としての温度検知部102は、中央部サーミスタ620、端部サーミスタ621により感知された感知情報を受け取り、定着ローラ64の長手方向の中央部温度、端部温度を検知するものである。
【0024】
温度設定部103は、トナー像を媒体上に定着させるために、定着ローラ64の表面温度の目標温度を設定するものである。
【0025】
加熱制御手段としての加熱制御部104は、温度検知部102により検知された定着ローラ64の表面温度(中央部温度、端部温度)に基づいて、定着ローラ64の表面温度が目標温度になるようにヒータ電源16を制御するものである。
【0026】
ここで、加熱制御部104は、定着ローラ64を加熱するメイン定着ヒータ610又はサブ定着ヒータ611(メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611を加熱手段ともいう)の動作を切り替えるものである。
【0027】
例えば、加熱制御部104は、電源投入時にメイン定着ヒータ610を駆動させる。また、印刷要求があった場合、加熱制御部104は、印刷要求に係る媒体の媒体幅に応じて、メイン定着ヒータ610又はサブ定着ヒータ611を駆動させる。つまり、幅広い媒体で印刷するときには、加熱制御部104はメイン定着ヒータ610を駆動させ、幅狭い媒体を印刷するときには、加熱制御部104はサブ定着ヒータ611を駆動させる。
【0028】
また、一度印刷動作があってから、次の印刷動作までの待機状態の場合、加熱制御部104は、待機移行直前に印刷(定着)された媒体の媒体幅に応じて目標温度を変更して、メイン定着ヒータ610又はサブ定着ヒータ611を駆動させる。
【0029】
この理由の詳細な説明は動作の項で詳細に説明するが、定着ローラ64の長手方向の表面温度が一様に印刷を行うことができる温度範囲内にあるように調整することができ、かつ、その温度調整時間が従来よりも短くなるようにするために、加熱制御部104は直前印刷の媒体幅に応じて目標温度を変更する。
【0030】
トナー像形成電源7は、トナー像形成部5と接続しており、印刷制御部100の制御を受けて、トナー像形成部5に電圧を印加する。用紙搬送モータ電源17は、用紙搬送モータ18と接続しており、印刷制御部100のモータ制御部101の制御を受けて電力を供給する。
【0031】
ヒータ電源16は、メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611と接続しており、印刷制御部100の加熱制御部104の制御を受けて電力を供給する。
【0032】
図3は、第1の実施形態の定着装置2の構成を示す構成図である。
図3は、定着器6の外観斜視図を示す。
【0033】
図3において、第1の実施形態の定着装置2は、加圧ローラ63、定着ローラ64、ヒータ電源16、メイン定着ヒータ610、サブ定着ヒータ611、中央部サーミスタ620、端部サーミスタ621、印刷制御部100を有する。
【0034】
ここで、定着ローラ64及び加圧ローラ63を定着手段ともいう。また、定着ローラ64を定着部材ともいい、加圧ローラ63を加圧部材ともいう。
【0035】
定着部材としての定着ローラ64は、搬送されてきた媒体上のトナー像を媒体に定着させるものである。
【0036】
定着ローラ64は、媒体上のトナーを溶融するために、メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611により、定着ローラ64の表面に熱が加えられる。また、定着ローラ64は加圧ローラ63と接触しており、定着ローラ64は
図3の矢印A方向に回転し、また加圧ローラ63は
図3の矢印B方向に回転する。定着手段としての定着ローラ64及び加圧ローラ63は、搬送される媒体上にトナー像に、熱を加え、加圧して定着させる。
【0037】
例えば、定着ローラ64は、外形が30mmで、金属製の素管によって構成されている基体としての芯金と、この芯金を被覆するシリコンゴム製の厚さ1mmの弾性層を有している。また、定着ローラ64は例えばギアを有しており、このギアが媒体搬送部4により回転駆動されることで定着ローラ64が回転駆動される。
【0038】
加圧部材としての加圧ローラ63は、定着ローラ64と接触しており、媒体に対して加圧することで、媒体上のトナー像を媒体に定着させるものである。例えば、加圧ローラ63は、ばね等の弾性体により、定着ローラ64に圧接する向きに押し付けられている。また、加圧ローラ63は、定着ローラ64に当接しており、これによりニップ部が形成されている。
【0039】
メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611は、ヒータ電源16から電力の供給を受けて、定着ローラ64に対して加熱する加熱手段である。メイン定着ヒータ610を第1の加熱手段、サブ定着ヒータ611を第2の加熱手段ともいう。
【0040】
メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611は、発熱体幅が異なる。メイン定着ヒータ610は、サブ定着ヒータ611に比べて発熱体幅が広く、定着ローラ64の長手方向に対して幅広の範囲を加熱するものである。幅の異なる多種類の媒体のうち、幅の広い媒体に合わせた範囲で、メイン定着ヒータ610が定着ローラ64の表面温度を上昇させることができる。
【0041】
一方、サブ定着ヒータ611は、発熱体幅が狭く、定着ローラ64の長手方向に対して幅狭の範囲を加熱するものである。すなわち、多種類の媒体のうち、幅の狭い媒体に合わせた範囲で、サブ定着ヒータ611が定着ローラ64の表面温度を上昇させることができる。
【0042】
メイン定着ヒータ610は、電源投入時の初期処理で、定着ローラ64の表面を加熱するものである。電源投入後は、印刷される媒体のサイズに応じて、メイン定着ヒータ610又はサブ定着ヒータ611のいずれかが、ヒータ電源16から電力供給を受けることで加熱動作をする。
【0043】
具体的には、印刷される媒体が幅の広い媒体(例えばA4横幅)であれば、メイン定着ヒータ610が定着ローラ64を加熱し、印刷される媒体が幅の狭い媒体(例えばA5縦幅)であれば、サブ定着ヒータ611が定着ローラ64を加熱する。
【0044】
なお、第1の実施形態では、発熱体幅が異なる2種類のメイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611を定着装置2が備える場合を例示するが、発熱体幅が異なる3種類以上のヒータを定着装置2が備えるようにしてもよい。
【0045】
メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611は、定着ローラ64の表面を加熱することができれば、定着ローラ64と接触していても良いし、又は接触していなくても良い。
【0046】
また、メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611は、例えば素管でなる定着ローラ64の内部に設けられていても良いし、又は、定着ローラ64の外部に設けられていても良い。
図3では、メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611が、定着ローラ64の内部を通り、定着ローラ64と非接触に設置される場合を例示する。
【0047】
中央部サーミスタ620及び端部サーミスタ621は、定着ローラ64の表面温度を感知する温度感知部材である。
【0048】
中央部温度感知部材としての中央部サーミスタ620は、定着ローラ64の長手方向の中央部付近の表面温度を感知するものであり、端部温度感知部材としての端部サーミスタ621は、定着ローラ64の長手方向の端部付近の表面温度を感知するものである
なお、端部サーミスタ621は、定着ローラ64の両端のうち、少なくとも一方の端部の表面温度を測定できればよい。勿論、2個の端部サーミスタ621を用意して、定着ローラ64の両端部の表面温度を測定するようにしてもよい。
【0049】
また、中央部サーミスタ620及び端部サーミスタ621は、定着ローラ64の表面温度を測定することができればよいので、定着ローラ64と接触していてもよいし、定着ローラ64に接触していなくてもよい。
【0050】
例えば、中央部サーミスタ620及び端部サーミスタ621は、温度に応じて自身の抵抗値が変化する素子を適用できる。また、印刷制御部100の温度検知部102は、中央部サーミスタ620及び端部サーミスタ621からの抵抗値を受け取り、受け取った抵抗値に基づいて温度を検知するものを適用できる。第1の実施形態では温度の増加に従って抵抗値が減少する特性の素子を用いている。
【0051】
図4は、メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611の詳細構成を説明する説明図である。
【0052】
図4(A)は、定着ローラ64の内部構成を示す透視図であり、
図4(B)は、
図4(A)におけるA−A線で切断したときの断面図である。
【0053】
図4(A)に示すように、メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ61は、定着ローラ64内を通るように設けられており、メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611の発熱体610a及び611aは定着ローラ64の内部に設けられている。
【0054】
メイン定着ヒータ610は、幅広い媒体を連続印刷するときや待機のとき等に主に使用されるものである。メイン定着ヒータ610は、定着ローラ64の長手方向全域に亘って発熱体610aを有している。メイン定着ヒータ610の発熱体610aは、定着ローラ64の全域に亘って配置されているので、定着ローラ64の中央部表面と端部表面の温度を上昇させることができる。
【0055】
サブ定着ヒータ611は、幅の狭い媒体を連続印刷するときや待機のときなどに主に使用されるものである。サブ定着ヒータ611の発熱体611aは、定着ローラ64の中央部付近に配置される。そのため、定着ローラ64の中央部付近の表面温度を上昇させることができる。
【0056】
メイン定着ヒータ611及びサブ定着ヒータ611に印加される電圧は例えば100Vであり、メイン定着ヒータ610の出力は例えば900W、サブ定着ヒータ611の出力は例えば900Wとする。
【0057】
図5は、メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611の発熱量分布を示す図である。
図5(A)は、サブ定着ヒータ611の発熱量分布であり、
図5(B)は、メイン定着ヒータ610の発熱量分布である。
【0058】
図5(A)及び
図5(B)において、横軸は定着ローラ64の長手方向の位置を示しており、縦軸は単位長さ当たりの出力量(W/mm)に対する発熱量(%)を示している。また、
図5(A)及び
図5(B)において、幅広い媒体幅がA4横幅(297mm)であり、幅狭い媒体幅がA5縦幅(148mm)である場合を例示する。
【0059】
図5(A)及び
図5(B)において、発熱量分布が定着ローラ64の長手方向の位置によって異なるように、メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611は設けられている。
【0060】
例えば、メイン定着ローラ610の発熱体幅は、例えば300mm(A4横幅と同等)であり、サブ定着ヒータ611の発熱体幅は例えば150mm(A5縦幅と同等)としている。これにより、
図5(A)に示すように、サブ定着ヒータ611は、定着ローラ64の中央部付近において、A5縦幅と同等程度の範囲を発熱させることができる。また、
図5(B)に示すように、メイン定着ヒータ610は、定着ローラ64の中央部から端部までの範囲に亘って、A4横幅と同等程度の範囲を発熱させることができる。
【0061】
これは、次のような理由による。印刷される媒体は様々なサイズがあり、最も幅広い媒体は例えば297mm(A4横幅)であり、最も幅狭い媒体は例えば148mm(A5縦幅)等が挙げられる。
【0062】
例えば、幅狭い媒体を連続して印刷する場合、発熱体幅の長いメイン定着ヒータ610を使用すると、特に媒体が通紙しない定着ローラ64の端部の温度が上昇し端部が過熱してしまい、損傷等の問題がある。そこで、幅狭い媒体を印刷する場合に、定着ローラ64における非通紙部が過熱しないように発熱体幅を狭く(例えばA5縦幅)したサブ定着ヒータ611を使用する。
【0063】
逆に、例えば、幅広い媒体を連続して印刷する場合、媒体は定着ローラ64の全域に亘って接触するので、定着ローラ64上の熱が奪われる。そのため、幅広い媒体を印刷する場合には、定着ローラ64の長手方向に熱を補って温度分布を一様に保つために、発熱体幅が広いメイン定着ヒータ610を使用して印刷や待機加熱を行う。
【0064】
さらに、発熱体幅の狭いサブ定着ヒータ611を使用して待機することにより、幅狭い媒体を印刷する場合に不要な非通紙部(端部)を温める熱量を削除できるため、より省電力化を図ることができる。
【0065】
また、
図5(B)に示すように、メイン定着ヒータ610による場合、定着ローラ64の長手方向の発熱量は一様ではなく、端部の発熱量は中央部よりも20%多い。
【0066】
なお、ここでは、幅広い媒体幅がA4横幅であり、幅狭い媒体幅がA5縦幅である場合を例示したが、幅広い媒体幅及び幅狭い媒体幅の長さは、特に限定されるものでははく、更にはメイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611の発熱体610a及び611aの長さも限定されるものではない。
【0067】
図6は、メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611に加熱された定着ローラ64の表面温度を説明する説明図である。
【0068】
図6(A)は、サブ定着ヒータ611に加熱されたときの定着ローラ64の表面温度を示す図であり、
図6(B)は、メイン定着ヒータ610に加熱されたときの定着ローラ64の表面温度を示す図である。
【0069】
図6(A)及び
図6(B)において、横軸は定着ローラ64の長手方向の位置であり、縦軸は定着ローラ64の表面温度である。
【0070】
図6(A)は、サブ定着ヒータ611のみで定着ローラ64が加熱された場合、定着ローラ64の中央部付近は、幅狭い媒体幅の範囲(例えばA5縦幅)に亘って高温となっているが、幅狭い媒体の印刷に不要な端部付近の温度は低く抑えられており、省電力化が実現できる。
【0071】
図6(B)において、メイン定着ヒータ610のみで定着ローラ64が加熱された場合、定着ローラ64の中央部から端部における幅広い媒体幅の範囲(例えばA4横幅)に亘って高温となる。これにより、幅広い媒体を印刷する場合でも、長手方向の全域に亘って定着ローラ64の表面を、良好な定着ができる温度に保つことができる。
【0072】
図7は、サブ定着ヒータ611のみで待機させた場合を説明する説明図である。
図7(A)は、サブ定着ヒータ611と定着ローラ64との簡易熱等価回路を示す図である。
図7(B)〜
図7(D)は、
図7(A)の簡易熱等価回路から導出することができる。
【0073】
図7(B)は、定着ローラ64の長手方向の中央部の表面温度と、サブ定着ヒータ611の発熱量との関係を示す図である。横軸が定着ローラ64の中央部の表面温度であり、縦軸がサブ定着ヒータ611の発熱量である。
【0074】
定着ヒータ611の熱容量をC[J/K]、ヒータ発熱量をQ[J/K]、温度をTa,Tb[K]とすると、次の関係が成り立つ。
【0075】
Q=C(Ta−Tb) …(1)
図7(B)は、式(1)をグラフ化したものである。
図7(B)に示すように、サブ定着ヒータ611の発熱量と定着ローラ64の表面温度とは、比例関係にある。そのため、待機時に、定着ローラ64の中央部の温度T0をA0からA1(A0>A1)に低下させたとき、サブ定着ヒータ611の発熱量は低下することが分かる。
【0076】
次に、
図7(A)の簡易熱等価回路から、サブ定着ヒータ611の発熱量Qが減少すると、定着ローラ64の端部へ流出する熱量q12が減少することが分かる。
【0077】
流出熱量q12[W/m]、定着ローラ64の熱伝導率λ[W/m^2K]、サブ定着ヒータ611の発熱体611aの端部と定着ローラ64の端部との間の長さdx[m]とし、サブ定着ヒータ611の発熱体611aの端部と定着ローラ64の端部の2点間の温度差をdT[K]とすると、次の関係がある。
【0078】
q12=λdT/dx …(2)
図7(C)は、式(2)をグラフ化したものである。つまり、定着ローラ64の端部に流出する熱量q12が減少すると、2点(T1,Tup)間の温度差は減少する。
【0079】
図7(D)は、定着ローラ64の長手方向に沿った定着ローラ64の表面温度を示す図である。実線はT0=A0のときであり、点線はTO=A1のときを示す。
【0080】
図7(D)に示すように、待機時の目標温度が高い状態(T0=A0時)と比較して、待機時の目標温度が低い状態(T0=A1時)は、サブ定着ヒータ611の発熱体611aの端部(T1)と定着ローラ64の端部(Tup)との温度差が低下している。
【0081】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の画像形成装置1における動作を、図面を参照しながら説明する。
【0082】
まず、画像形成装置1の電源が投入されると、印刷制御部100では、そのときの動作条件に応じて温度設定部103が定着ローラ64の表面温度の目標温度を設定し、加熱制御部104がメイン定着ヒータ611の制御を開始する。
【0083】
ここで、目標温度とは、印刷を行った場合に定着ローラ64の長手方向に亘って必要な部分の温度が印刷可能温度範囲となるような温度である。例えば、電源投入時において幅広い媒体に印刷可能な温度として、温度設定部103は170℃を目標温度として設定する。
【0084】
印刷可能温度範囲とは、媒体へトナー像を定着させることができる温度範囲であり、下限温度としてのTlowと上限温度としてのTupを有する。Tlowは例えば150℃であり、Tupは例えば180℃である。
【0085】
中央部サーミスタ620は、定着ローラ64の中央部の表面温度を感知し、その感知情報が温度検知部102に与えられる。温度検知部102は、中央サーミスタ620からの感知情報に基づいて、定着ローラ64の中央部の温度を検知する。
【0086】
温度検知部102による検知温度が目標温度よりも高い温度であった場合は、加熱制御部104はヒータ電源16からメイン定着ヒータ610とサブ定着ヒータ611への電力供給を停止して定着ローラ64の表面温度を低下させる(以下、これをクールダウンと言う)。
【0087】
一方、温度検知部102による検知温度が目標温度よりも低い温度であった場合は、加熱制御部104はヒータ電源16からメイン定着ヒータ610又はサブ定着ヒータ611への電力供給を行うことで定着ローラ64の表面温度を上昇させる(以下、これをウォームアップと言う)。
【0088】
加熱制御部104が、上述した中央部サーミスタ620による検知温度と目標温度との比較結果に応じて、ヒータ電源16の電力供給の制御を繰り返すことで、定着ローラ64の中央部の表面温度を目標温度に保つことができる。
【0089】
次に、モータ制御部101はモータ電源17を制御して、媒体搬送部4が定着ローラ64を回転駆動させる。
【0090】
温度検知部102は、中央部サーミスタ620、端部サーミスタ621からの感知情報に基づいて、定着ローラ64の中央部温度、端部温度を検知する。加熱制御部104は、定着ローラ64の中央部温度、端部温度が目標温度に近づくようにヒータ電源16を制御し、メイン定着ヒータ610を駆動する。
【0091】
また、印刷制御部100は、温度検知部102により検知された中央部及び端部の表面温度が印刷可能温度範囲内である場合、印刷実行ができる状態であると判断する。
【0092】
つまり、印刷要求が印刷制御部100に与えられると、モータ制御部101はモータ電源17を制御し、媒体搬送部4が定着ローラ64を回転させる。また、媒体搬送部4が媒体搬送を開始し、搬送される媒体がトナー像形成部5に与えられ、媒体にはトナー像が形成される。
【0093】
ここで、印刷実行時の目標温度の設定方法を説明する。印刷実行時は、印刷制御部100が印刷要求された条件に基づいて印刷する媒体幅を検知し、その印刷する媒体幅に応じて目標温度を設定する。
【0094】
例えば、印刷を行う媒体幅が148mm(A5縦幅)以下の場合、加熱制御部104は、定着ローラ64の非通紙部温度が過熱されないようにサブ定着ヒータ611のみを駆動してヒータ駆動制御を行う。
【0095】
一方、印刷を行う媒体幅が148mmを超える場合、加熱制御部104は、定着ローラ64の長手方向全域が印刷可能温度範囲内に収まるようにメイン定着ヒータ610のみを駆動してヒータ駆動制御を行う。
【0096】
画像形成処理が終了し、次の印刷要求がない場合、印刷制御部100は定着器6を待機状態とする。
【0097】
印刷が終了した後は、次も同じ印刷条件で印刷される可能性が高い。そこで、印刷制御部100は同じ条件ですぐに印刷できるように待機を行う。
【0098】
つまり、幅狭い媒体を印刷する場合、印刷制御部100は、幅狭い媒体用のヒータであるサブ定着ヒータ611を使用して印刷を行い、その後の待機状態も、印刷制御部100はサブ定着ヒータ611を使用して定着ローラ64の中央部の表面温度が目標温度となるようにヒータ制御を行う。逆に幅広い媒体を印刷する場合、印刷制御部100は、メイン定着ヒータ610を使用して待機する。
【0099】
ここで、待機時での目標温度設定方法を説明する。加熱制御部104は、直前印刷の媒体幅に応じて、待機時の目標温度を設定する。
【0100】
図8は、第1の実施形態の直前印刷の媒体幅と待機時目標温度の関係を説明する説明図である。
【0101】
例えば、幅がA5縦幅を超えてからA4横幅までの媒体を直前印刷の媒体とした場合、待機時の目標温度を例えば170℃とし、幅がA5縦幅以下の媒体を直前印刷の媒体とした場合、待機時の目標温度を例えば100℃とする。
【0102】
図8において、印刷制御部100は、直前印刷した媒体幅が例えばA4横幅であった場合は、次もA4横幅の媒体を印刷すると判断し、加熱制御部104は、定着ローラ64の長手方向全域を印刷可能温度範囲内にするために、メイン定着ヒータ610のみを用いてヒータ駆動制御を行う。このとき、加熱制御部104は目標温度を170℃に設定する。
【0103】
また、印刷制御部100は、直前に印刷した媒体幅が例えばA5縦幅であった場合は、次もA5縦幅の媒体を印刷すると判断し、加熱制御部104はA5縦幅の領域を印刷可能温度範囲内にするために、サブ定着ヒータ611のみを用いてヒータを駆動制御する。
【0104】
ただし、加熱制御部104は目標温度を100℃に設定する。つまり、加熱制御部104は、待機移行直前の媒体の幅に応じて、待機時の目標温度を変更する。特に、第1の実施形態では、待機移行直前の媒体幅が狭いときに、目標温度が小さくなるように変更する。これは以下の理由による。
【0105】
図9(A)は、サブ定着ヒータ611のみを使用して待機したときの定着ローラ64の中央部の表面温度(中央部温度)と端部の表面温度(端部温度)との関係を示す図である。横軸は定着ローラ64の中央部温度であり、縦軸はA4横幅印刷時の端部温度を示している。
【0106】
図9(B)は、中央部温度を170℃としたときと100℃としたときの定着ローラ64の長手方向の温度分布を示す図である。
【0107】
図9(A)及び
図9(B)に示すように、サブ定着ヒータ611のみで待機させた場合、定着ローラ64の中央部温度が170℃に制御されたとき、端部温度は100℃まで低下し、中央部と端部との温度差は70℃となっている。また、
図9(A)及び
図9(B)に示すように、中央部温度が100℃に制御されたとき、端部温度は65℃まで低下し、中央部と端部との温度差は35℃となっている。このように、より低温の100℃で待機している場合の方が、170℃で待機している場合よりも、中央部と端部との温度差がより小さくできている。
【0108】
上記の状態において、例えば、直前印刷の媒体が幅狭い媒体であり、次の印刷要求に係る媒体が幅広い媒体を印刷する場合、中央部温度も端部温度も印刷可能温度範囲の下限温度である150℃以上にする必要がある。
【0109】
図10は、メイン定着ヒータ610を駆動させたときの中央部と端部の上昇温度及びそれにかかる時間の関係を示す図である。横軸は上昇させる温度であり、縦軸は時間である。
【0110】
定着ローラ64の中央部と端部とでは、温度上昇に係る時間に違いがある。
図10に示すように、メイン定着ヒータ610を用いて定着ローラ64に熱を供給した場合、中央部の温度上昇比率は例えば1秒あたり10℃であり、端部の温度上昇比率は1秒あたり12℃となっている。つまり、定着ローラ64の端部の温度上昇比率の方が、中央部のそれに比べて高いことが分かる。
【0111】
これは、第1の実施形態では、メイン定着ヒータ610が、定着ローラ64の中央部よりも端部付近の発熱量が高くなるようにしてあるからである。つまり、
図5(B)に示すように、メイン定着ヒータ611の長手方向の発熱量分布は一様ではなく、端部の発熱量が、中央部の発熱量よりも20%程度多いものを用いているからである。
【0112】
以上の関係を用いて、待機状態でサブ定着ヒータ611のみを駆動し、目標温度が170℃の場合と100℃の場合とで温度上昇に必要な時間を算出する。
【0113】
まず、
図9(A)を用いて、それぞれの待機状態から上昇させる必要のある温度を求める。
【0114】
170℃待機状態の場合、中央部温度は上昇させる必要はないが、端部温度は50℃上昇させる必要がある。
【0115】
一方、100℃待機状態の場合、中央部温度は70℃上昇させる必要があり、端部温度は85℃上昇させる必要がある。
【0116】
次に、
図10を用いて、それぞれの温度上昇に必要となる時間を求める。
【0117】
170℃待機状態の場合、中央部は0秒、端部は4秒(=50℃÷12℃/秒)かかる。
【0118】
一方、100℃待機状態の場合、中央部は7秒(=70℃÷10℃/秒)、端部は7秒(85℃÷12℃/秒)かかる。
【0119】
図11は、直前印刷が幅狭い媒体で、幅狭い媒体で待機状態とした後、幅広い紙を印刷するときの動作を説明する説明図である。
【0120】
図11(A)は、従来のようにメイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611を用いて目標温度を170℃とする場合の温度調整処理を説明する説明図である。
【0121】
図11(B)は、サブ定着ヒータ611のみを用いて目標温度を100℃とする場合の温度調整処理を説明する説明図である。
【0122】
図11(A)及び
図11(B)において、上部は中央部及び端部の表面温度の時間変化を示し、下部はメイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611ヒータの駆動状態を示す図である。
【0123】
上述したように、170℃待機状態の場合、4秒間連続してメイン定着ヒータ610が駆動すれば印刷可能となる。しかし、中央部温度がすでに目標温度に制御されているため、メイン定着ヒータ610が連続して4秒間駆動してしまうと、中央部温度が過剰となり上限温度Tupを超えてしまう。
【0124】
従って、
図11(A)に示すように、実際の運用は、中央部温度が目標温度の170℃となるように、加熱制御部104はヒータ制御を行う。そのため、加熱制御部104はメイン定着ヒータ610を2秒間駆動する。そうすると、中央部温度が目標温度を超えるので、加熱制御部104はメイン定着ヒータ610をオフ状態とする。このオフ状態は3秒間である。次に、加熱制御部104が再び2秒間メイン定着ヒータ610を駆動させる。しかし、端部温度がまだ下限温度Tlowには到達せず、かつ、中央部温度が目標温度を超えるため、加熱制御部104はメイン定着ヒータ610を3秒間オフとする。以上の動作を繰り返して、端部温度が下限温度Tlowに到達するまでに、温度調整時間は12秒かかっている。
【0125】
次に、上述したように、100℃待機状態の場合、中央部と端部ともに7秒間サブ定着ヒータ610を駆動することで、中央部温度が170℃に到達し、同時に端部温度が下限温度Tlowに到達する。
【0126】
このとき、待機時の目標温度は100℃であり、7秒間連続して駆動しても中央部温度は目標温度を超えることはない。このとき、温度調整時間は7秒となっており、170℃待機状態の場合の12秒よりも短い時間で印刷可能な温度まで到達していることが分かる。
【0127】
図12は、第1の実施形態の印刷制御部100における制御処理の動作を示すフローチャートである。
【0128】
図12において、印刷制御部100は、待機状態の発生を検知する(S101)。例えば、所定時間経過しても印刷要求がない場合には、待機状態の発生が検知される。待機状態の発生が検知されると、処理はS102に移行する。
【0129】
印刷制御部100は、直前の印刷に用いられた媒体の媒体幅を取得し(S102)、サブ定着ヒータ611の発熱体幅と媒体幅とを比較する(S103)。
【0130】
そして、媒体幅が発熱体幅よりも大きい場合、印刷制御部100はメイン定着ヒータ610を使用するようする(S104)。このとき、印刷制御部100は、目標温度を170℃(高温の目標温度)に設定する。
【0131】
一方、そうでない場合、印刷制御部100はサブ定着ヒータ611を使用するように、更に目標温度を低く設定する(S105)。
【0132】
そして、加熱制御部104は、前ステップで設定された条件で、待機時の温度制御を行う(S106)。
【0133】
待機状態において印刷制御部100が印刷起動の発生を検知すると(S107)、印刷制御部100は、印刷可能温度範囲に設定して、温度調整を開始する(S108)。
【0134】
すなわち、印刷要求に応じて、印刷する媒体の媒体幅を検知し、その媒体幅に応じて、温度設定部103は、印刷に必要な目標温度を設定し、加熱制御部104は中央部サーミスタ620の温度を目標温度に制御する。
【0135】
印刷起動が検知されると、印刷制御部100は印刷要求情報から印刷要求のある媒体の幅を取得し、直前に印刷した媒体幅と比較を行う(S109)。
【0136】
そして、印刷要求に係る印刷媒体幅がサブ定着ヒータ611の発熱体幅より大きい場合、印刷制御部100は、メイン定着ヒータ610を使用して温度制御を行う(S110)。
【0137】
メイン定着ヒータ610を使用する場合、印刷制御部100は中央部サーミスタ620と端部サーミスタ621の温度と下限温度Tlowとを比較し、中央部温度>下限温度、かつ、端部温度>下限温度の場合、印刷制御部100は印刷可能範囲に各部温度が到達したと判断し、印刷動作を開始する(S114)。なお、中央部温度≦下限温度、又は、端部温度≦下限温度の場合、定着ローラ64の表面温度がまだ印刷可能温度範囲内ではないと判断し、印刷制御部100はウォームアップ処理を行う。
【0138】
一方、そうでない場合、印刷制御部100は、サブ定着ヒータ611を使用して温度制御を行う(S111)。
【0139】
サブ定着ヒータ611を使用する場合、端部には通紙しないため温度は低温でも問題ないので温度の判定は行わない。つまり印刷制御部100は中央部サーミスタ620と下限温度Tlowとを比較し(S113)、中央部温度>下限温度となった場合、印刷可能範囲に各部温度が到達したと判断し、印刷動作を開始する(S114)。なお、中央部温度≦下限温度の場合、定着ローラ64の表面温度がまだ印刷可能温度範囲内ではないと判断し、印刷制御部100はウォームアップ処理を行う。
【0140】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、発熱体幅の狭いヒータで待機した状態からより幅広媒体を印刷する場合においても、直前に印刷した媒体幅に応じた目標温度で待機することで、より短い端部温度調整時間で幅広紙の印刷を開始することができる。
【0141】
(B)第2の実施形態
次に、本発明の定着装置及び画像形成装置の第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0142】
第2の実施形態でも、画像形成装置の一例として電子写真プリンタ及びその定着装置に本発明を適用する場合を例示する。
【0143】
(B−1)第2の実施形態の構成
第2の実施形態の画像形成装置は、第1の実施形態で説明したものを適用できる。従って、第2の実施形態でも、
図1を用いて説明する。
【0144】
図13は、第2の実施形態の画像形成装置1の印刷制御を示す機能ブロック図である。
【0145】
第2の実施形態の画像形成装置1は、
図13に示す印刷制御部200の処理機能が第1の実施形態と異なり、それ以外の構成は第1の実施形態で説明した構成を適用できる。
【0146】
すなわち、
図13において、第2の実施形態の画像形成装置1は、印刷制御部200、LEDヘッド3、トナー像形成部5、トナー像形成部電源7、用紙搬送モータ18、モータ電源17、書き出しセンサ8、排出センサ9、メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611を有する定着器6、ヒータ電源16、中央部サーミスタ620、端部サーミスタ621を少なくとも有する。
【0147】
印刷制御部200は、第1の実施形態と同様に印刷動作を制御するものであり、第1の実施形態で説明した、モータ制御部101、温度検知部102、温度設定部103を有する。また、印刷制御部200は、第2の実施形態に特有の加熱制御部204を有する。
【0148】
加熱制御部204は、第1の実施形態の加熱制御部104と同様に、中央部温度が目標温度より高い場合、メイン定着ヒータ610をオフ状態とし、中央部温度が目標温度よりも低い場合に、メイン定着ヒータ610又はサブ定着ヒータ611をオン状態に駆動制御する。
【0149】
また、加熱制御部204は、所定の時間駆動比率で、複数のヒータ(メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611)を駆動制御するものである。
【0150】
ここで、駆動時間比率による駆動制御について説明する。加熱制御部204は、所定期間を1周期とし、1周期の中で、メイン定着ヒータ610とサブ定着ヒータ611とを駆動期間を時間的に分割して交互に駆動させる。
【0151】
例えば、1周期が2秒間であり、メイン定着ヒータ610の駆動時間比率が50%、サブ定着ヒータ611の駆動時間比率が50%である場合、加熱制御部204は、1周期のうち、1秒間メイン定着ヒータ610を駆動し、その後の1秒間サブ定着ヒータ611を駆動する。
【0152】
また例えば、1周期が2秒間であり、メイン定着ヒータ610の駆動時間比率が70%で、サブ定着ヒータ611の駆動時間比率が30%である場合、加熱制御部204は、1周期のうち、1.4秒間(2秒の70%)メイン定着ヒータ610を駆動し、その後の0.6秒間(2秒の30%)サブ定着ヒータ611を駆動する。
【0153】
その後も2秒周期で前記駆動処理を行うことで、駆動時間比率でヒータ駆動制御を実現することができる。
【0154】
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態の印刷制御部200における処理動作を、図面を参照しながら説明する。
【0155】
第2の実施形態では、加熱制御部204の処理動作が、第1の実施形態と異なるので、以下では、第2の実施形態の加熱制御部204の処理動作を中心に詳細に説明する。
【0156】
図14は、駆動時間比率でメイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611を駆動させるときの定着ローラ64における発熱量及び温度分布を示す図である。
【0157】
図14(A)は、駆動時間比率が「メイン定着ヒータ610(メイン):サブ定着ヒータ611(サブ)=0:100」である場合を示す。
図14(A−1)は、サブ定着ヒータ611の発熱量を示す図であり。
図14(A−2)は、定着ローラ64の長手方向の表面温度分布を示す図である。
【0158】
図14(A−2)に示すように、サブ定着ヒータ611のみを駆動させた場合、定着ローラ64の長手方向において、印刷可能温度範囲の下限温度Tlowよりも高温となるのは、定着ローラの中心部のA5縦幅分だけとなる。つまり、この場合、定着ローラ64の端部については温度調整を行わずに、すぐに印刷可能な媒体幅はA5縦幅以下となる。
【0159】
図14(B)は、駆動時間比率が「メイン:サブ=70:30」である場合を示す。
図14(B−1)は、メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611の発熱量を示す図であり、
図14(B−2)は、定着ローラ64の長手方向の表面温度分布を示す図である。
【0160】
図14(B−2)に示すように、定着ローラ64の表面温度分布において、印刷可能温度範囲の下限温度Tlowよりも高温となるのは、定着ローラ64の中心部のB5縦幅(182mm)分程度となる。これは、メイン定着ヒータ610も駆動することで、定着ローラ64の端部温度が高くなり、さらに
図7(A)で示したように熱の移動方向は定着ローラ64の軸方向であることから、サブ定着ヒータ611のみで駆動したときよりも温度分布が長手方向に広がることとなるので、定着ローラ64の中心部のB5縦幅分程度まで下限温度Tlowを超えることになる。つまり、この場合、定着ローラ64の端部について温度調整を行わずに、すぐに印刷可能な媒体幅はB5縦幅以下となる。
【0161】
図14(C)は、駆動時間比率が「メイン:サブ=100:0」である場合を示す。
図14(C−1)は、メイン定着ヒータ610の発熱量を示す図であり、
図14(C−2)は、定着ローラ64の長手方向の表面温度分布を示す図である。
【0162】
図14(C−2)に示すように、メイン定着ヒータ610のみを駆動させた場合、定着ローラ64の表面温度分布において、印刷可能温度範囲の下限温度Tlowよりも高温となるのは、定着ローラ64の中央部から端部までのA4横幅分までとなる。つまり、この場合、定着ローラ64の端部について温度調整を行わずに、A4横幅まで印刷可能である。
【0163】
図14(D)は、
図14(A)〜
図14(C)に結果に基づいて、直前印刷媒体幅とヒータの駆動時間比率との関係を示す図である。
【0164】
例えば、加熱制御部204は、直前印刷媒体が「A5縦幅」である場合には、待機時の駆動時間比率を「メイン:サブ=0:100」に設定し、直前印刷媒体が「B5縦幅」である場合には、待機時の駆動時間比率を「メイン:サブ=70:30」に設定し、直前印刷媒体が「A4横幅」である場合には、待機時の駆動時間比率を「メイン:サブ=100:0」に設定する。
【0165】
次に、第2の実施形態の目標温度の設定処理について図面を用いて説明する。
図15は、第2の実施形態の目標温度の設定処理を説明する説明図である。
【0166】
図15(A)は、待機時の駆動時間比率を変えたときの定着ローラ64の中央部温度と端部温度との関係を示す図である。
【0167】
図15(A)では、駆動時間比率を「メイン:サブ=0:100」、「メイン:サブ=70:30」、「メイン:サブ=90:10」とする場合を示す。
図15(A)に示すように、メイン定着ヒータ610の駆動時間比率が高くなるほど、定着ローラ64の中央部温度と端部温度との温度差が小さくなることが分かる。また、中央部温度を低くするほど、中央部温度と端部温度との温度差が縮まる。
【0168】
図15(B)は、
図15(A)の結果に基づいて最短温度調整時間を示す図である。
図15(B)において、横軸は、待機時中央部温度と印刷時目標温度との温度差を示し、縦軸は、待機時端部温度と印刷時下限温度との温度差を示す。
【0169】
図15(A)において、「メイン:サブ=90:10」であり、かつ、中央部温度が170℃の場合、端部温度は150℃である。そのため、待機時中央部温度(170℃)と目標温度(170℃)との温度差は0℃であり、さらに待機時端部温度(150℃)と印刷可能温度範囲の下限温度(150℃)との温度差も0℃となるため、
図15(B)に示すように、横軸0℃、縦軸0℃の位置を示すこととなる。
【0170】
同様に、「メイン:サブ=70:30」であり、かつ、中央部温度が140℃の場合、端部温度は115℃であるので、
図15(B)に示すように、横軸が「−30℃(=140℃−170℃)」、縦軸が「−35℃(=115℃−150℃)」の位置を示すこととなる。
【0171】
さらに、「メイン:サブ=0:100」であり、かつ、中央部温度が100℃の場合、端部温度は65℃であるので、
図15(B)に示すように、横軸が「−70℃(=100℃−170℃)」、縦軸が「−85℃(=65℃−150℃)」の位置を示すこととなる。
【0172】
また、第1の実施形態の
図10に示した上昇温度と温度調整時間の関係から、定着ローラ64の中央部と端部の温度上昇時間に違いがあるため、ヒータ(メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611)を駆動し続けて中央部温度が目標温度に到達すると同時に、端部温度が印刷可能温度範囲の下限温度に到達する条件は、式(3)で得られる。
【0173】
ΔT2=ΔT1×1.2 …(3)
ここで、ΔT2は、待機時端部温度と印刷時下限温度との温度差であり、ΔT1は、待機時中央部温度と印刷時目標温度との温度差である。
【0174】
式(3)の関係を
図15(B)に描くと、
図15(B)の一点鎖線で示す直線となる。これを最短温度調整時間条件とする。
【0175】
図15(B)において、一点鎖線の直線と実線との交点が、それぞれのメイン:サブの駆動時間比率での最適な温度設定となる。
【0176】
上述したように
図14(D)では駆動時間比率と直前印刷時の媒体幅との関係を導いたので、
図15(B)に示す関係から、直前印刷時の各媒体幅における設定すべき目標温度が得られる。
【0177】
図15(C)は、各媒体幅での目標温度である。第2の実施形態では、直前印刷の媒体幅に応じて、
図15(C)に示す目標温度に設定する。これにより、その後媒体幅のより広い媒体を印刷する場合に最短の温度調整時間で印刷を行うことができる。
【0178】
図16は、第2の実施形態の印刷制御部200における制御処理の動作を示すフローチャートである。
【0179】
図16において、印刷制御部200は、待機状態の発生を検知すると(S201)、直前の印刷に用いられた媒体の媒体幅を取得する(S202)。
【0180】
加熱制御部204は、
図14(D)の駆動時間比率テーブルを参照して、S202で取得した印刷直前の媒体幅に対応するメイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611の時間駆動比率を設定する(S203)。
【0181】
次に、加熱制御部204は、
図15(C)の待機時目標温度設定テーブルを参照して、印刷直前の媒体幅に対応する目標温度を設定し、その駆動時間比率で、メイン定着ヒータ610及びサブ定着ヒータ611を駆動して待機温度制御を行う(S204)。
【0182】
待機状態では、印刷制御部200は印刷起動が発生したかを監視し、印刷制御部200が印刷起動を検知すると(S205)、処理はS206に移行する。
【0183】
印刷制御部200は、印刷要求に係る媒体幅を取得し(S206)、温度設定部103は、印刷要求に係る印刷に必要な目標温度を設定し、加熱制御部204が、中央部サーミスタ620の温度を目標温度に制御する(S207)。
【0184】
加熱制御部204は、印刷媒体幅と直前印刷媒体幅とを比較し(S208)、印刷媒体幅が直前印刷媒体幅よりも大きい場合、加熱制御部204は、メイン定着ヒータ610のみを使用して温度制御を行い(S210)。
【0185】
一方、印刷媒体幅が直前印刷媒体幅以下の場合、加熱制御部204は、印刷媒体幅でのヒータ駆動時間比率を設定する(S209)。
【0186】
S211では、印刷制御部200が、中央部サーミスタ620と端部サーミスタ621の温度と下限温度Tlowとを比較する(s211)。
【0187】
そして、中央部温度>下限温度、かつ、端部温度>下限温度となった場合は印刷可能範囲に各部温度が到達したと判断し、印刷制御部200は印刷動作を開始する(S212)。そうでない場合、中央部温度、端部温度が下限温度に達するまで、印刷制御部200は印刷動作を待機する。
【0188】
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、直前印刷した媒体幅が、幅狭用ヒータ(サブ定着ヒータ)よりも広い幅であっても、幅広用ヒータ(メイン定着ヒータ)のみを使用して待機した場合よりも待機時の消費電力をより抑えることができる。
【0189】
さらに、第2の実施形態によれば、目標温度を媒体毎に変更することで、その後幅広紙を印刷する場合の端部温度調整時間を短くすることができる。
【0190】
(C)他の実施形態
上述した第1及び第2の実施形態では、電子写真プリンタに搭載される画像形成装置及び定着装置とする場合を例示したが、電子写真プリンタに代えて、MFP、ファクシミリ、複写機等にも適用することができる。
【0191】
上述した第1の実施形態では、加熱制御部104が待機時の目標温度を変更する際、待機移行直前の媒体の幅に応じて、2個の目標温度のいずれかに設定変更する場合を例示したが、待機時の目標温度は3個以上であってもよい。
【0192】
また、待機移行直前の媒体幅と目標温度との比例関係を示す演算式を用いて、加熱制御部104が、待機移行直前の媒体幅に応じた目標温度を求めるようにしてもよい。
【0193】
上述した第2の実施形態では、加熱制御部204が、
図14(D)で例示した駆動時間比率テーブルを参照して、待機移行直前の媒体幅に応じた駆動時間比率を設定する場合を例示した。しかし、駆動時間比率を求める方法は、これに限定されない。まず、
図14(D)は、一例であり、他のテーブルであってもよい。また、待機移行直前の媒体幅が幅広であるほど、メイン定着ヒータの駆動時間比率が大きくなるように、又逆に、帯域移行直前の媒体幅が幅狭であるほど、メイン定着ヒータの駆動時間比率が小さくなるようにできれば、所定の関係式を用いて、加熱制御部204が駆動時間比率を求めてもよい。
【0194】
上述した第2の実施形態では、加熱制御部204が、
図15(C)で例示した待機時目標温度設定テーブルを参照して、待機移行直前の媒体幅に応じた待機時目標温度を設定する場合を例示した。しかし、待機時目標温度を求める方法は、これに限定されない。まず、
図15(C)は、一例であり、他のテーブルであってもよい。また、待機移行直前の媒体幅が幅広であるほど、目標温度が低くなるものであれば、所定の関係式を用いて、加熱制御部204が待機時目標温度を求めてもよい。