特許第5940887号(P5940887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940887
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】固体撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/14 20060101AFI20160616BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20160616BHJP
   H04N 5/335 20110101ALI20160616BHJP
【FI】
   H01L27/14 D
   H01L31/02 C
   H04N5/335
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-114331(P2012-114331)
(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2013-243197(P2013-243197A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏也
(72)【発明者】
【氏名】村松 雅治
【審査官】 今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0261259(US,A1)
【文献】 特開2004−134527(JP,A)
【文献】 特開平05−303058(JP,A)
【文献】 実開昭57−106244(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/14
H01L 31/00
H04N 5/335
G01T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第一主面と第二主面とを有し、前記第一主面側に光感応領域が設けられると共に、前記光感応領域に対応する部分が該部分の周辺部分を残して前記第二主面側から薄化されている裏面入射型の半導体光検出素子と、
互いに対向する第三主面と第四主面とを有し、前記第三主面と前記第四主面とに開口し且つ前記半導体光検出素子を収容する収容空間が形成されたパッケージと、
光入射端面と光出射端面とを有し、前記光出射端面が前記第二主面と対向するように配置されたファイバ光学プレートと、
前記第一主面側から前記半導体光検出素子に固定され、前記半導体光検出素子の薄化されている部分を保護する保護部材と、を備え、
前記ファイバ光学プレートの前記光入射端面側の部分は、前記第三主面より前記パッケージの外側に突出し、
前記ファイバ光学プレートの前記光出射端面側の部分は、前記半導体光検出素子の前記周辺部分に対応する第一部分と、前記半導体光検出素子の薄化されている部分に対応し且つ前記第一部分よりも前記半導体光検出素子に向けて突出する第二部分と、を含み、
前記ファイバ光学プレートの前記第一部分と前記第二部分とで構成される段差の高さは、前記半導体光検出素子の薄化されている前記部分と前記周辺部分とで構成される段差の高さよりも低く、
前記半導体光検出素子と前記ファイバ光学プレートとは、前記光出射端面と薄化されている前記部分との間に充填された被検出光に対して光学的に透明な樹脂により、前記第一部分と前記周辺部分とが当接し且つ前記第二部分と薄化されている前記部分とが離れている状態で固定されており、
前記第二部分と薄化されている前記部分とは、前記樹脂を介して光学的に結合されていることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
前記ファイバ光学プレートの前記第二部分の、前記半導体光検出素子の薄化されている前記部分に対向する面には、波長選択フィルタが配置されており、
前記半導体光検出素子と前記ファイバ光学プレートとは、前記波長選択フィルタと薄化されている前記部分とが離れている状態で固定されていることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記半導体光検出素子が、台座を介して前記パッケージに固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記収容空間を前記第四主面側から閉塞し、前記保護部材に固定される蓋部材を更に備え、
前記保護部材と蓋部材とが、熱的に結合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記保護部材と蓋部材とが、樹脂と該樹脂よりも熱伝導率が高い材料からなるフィラーとを含む接着剤により固定されていることを特徴とする請求項4に記載の固体撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光入射端面と光出射端面とを有しるファイバ光学プレートと、光入射面がファイバ光学プレートの光出射端面と光学的に結合された半導体光検出素子と、を備える固体撮像装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−162724号公報(特許第3717685号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体撮像装置の検出感度を向上させるために、半導体光検出素子として裏面入射型の半導体光検出素子を採用することが考えられる。しかしながら、裏面入射型の半導体光検出素子が採用された固体撮像装置では、以下のような問題点が生じる懼れがある。
【0005】
裏面入射型の半導体光検出素子では、一般に、互いに対向する第一主面と第二主面とを有し、第一主面側に光感応領域が設けられると共に、光感応領域に対応する部分が当該部分の周辺部分を残して第二主面側から薄化されている。このため、ファイバ光学プレートと裏面入射型の半導体光検出素子とは、ファイバ光学プレートの光出射端面と半導体光検出素子における薄化されている部分とが、半導体光検出素子の薄化されている部分と周辺部分とで構成される段差の分だけ離れた状態で配置される。ファイバ光学プレートの光出射端面と半導体光検出素子における薄化されている部分とが離れていると、ファイバ光学プレートの光出射端面から出射された光が半導体光検出素子に入射するまでに拡散し、固体撮像装置の解像度(空間分解能)が低下する。
【0006】
本発明は、裏面入射型の半導体光検出素子を採用した場合でも、解像度の低下を抑制することが可能な固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る固体撮像装置は、互いに対向する第一主面と第二主面とを有し、第一主面側に光感応領域が設けられると共に、光感応領域に対応する部分が該部分の周辺部分を残して第二主面側から薄化されている裏面入射型の半導体光検出素子と、互いに対向する第三主面と第四主面とを有し、第三主面と第四主面とに開口し且つ半導体光検出素子を収容する収容空間が形成されたパッケージと、光入射端面と光出射端面とを有し、光出射端面が第二主面と対向するように配置されたファイバ光学プレートと、第一主面側から半導体光検出素子に固定され、半導体光検出素子の薄化されている部分を保護する保護部材と、を備え、ファイバ光学プレートの光入射端面側の部分は、第三主面よりパッケージの外側に突出し、ファイバ光学プレートの光出射端面側の部分は、半導体光検出素子の周辺部分に対応する第一部分と、半導体光検出素子の薄化されている部分に対応し且つ第一部分よりも半導体光検出素子に向けて突出する第二部分と、を含み、ファイバ光学プレートの第一部分と第二部分とで構成される段差の高さは、半導体光検出素子の薄化されている部分と周辺部分とで構成される段差の高さよりも低く、半導体光検出素子とファイバ光学プレートとは、光出射端面と薄化されている部分との間に充填された被検出光に対して光学的に透明な樹脂により、第一部分と周辺部分とが当接し且つ第二部分と薄化されている部分とが離れている状態で固定されており、第二部分と薄化されている部分とは、樹脂を介して光学的に結合されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る固体撮像装置では、ファイバ光学プレートの光出射端面側の部分が、半導体光検出素子の周辺部分に対応する第一部分と、半導体光検出素子の薄化されている部分に対応し且つ第一部分よりも半導体光検出素子に向けて突出する第二部分と、を含んでいる。このため、裏面入射型の半導体光検出素子とファイバ光学プレートとは、ファイバ光学プレートの第二部分における光出射端面と半導体光検出素子における薄化されている部分とが近づけられた状態で配置されることとなる。したがって、ファイバ光学プレートの第二部分における光出射端面から出射された光が半導体光検出素子に入射するまでに拡散し難く、固体撮像装置の解像度(空間分解能)が低下するのを抑制できる。
【0009】
本発明では、ファイバ光学プレートの第一部分と第二部分とで構成される段差の高さが、半導体光検出素子の薄化されている部分と周辺部分とで構成される段差の高さよりも低く設定されており、半導体光検出素子とファイバ光学プレートとが、第一部分と周辺部分とが当接し且つ第二部分と薄化されている部分とが離れている状態で固定されている。このため、ファイバ光学プレートの第二部分における光出射端面と半導体光検出素子における薄化されている部分とが近づけられた状態でも、半導体光検出素子における薄化されている部分とファイバ光学プレート(第二部分)とが接触しない。したがって、ファイバ光学プレートの接触などにより半導体光検出素子の薄化されている部分が損傷を受けるのを防ぐことができる。
【0010】
本発明では、保護部材が、第一主面側から半導体光検出素子に固定され、半導体光検出素子の薄化されている部分を保護している。これにより、半導体光検出素子における薄化されている部分を機械的に補強することができる。
【0011】
本発明では、半導体光検出素子とファイバ光学プレートとが、光出射端面と薄化されている部分との間に充填された被検出光に対して光学的に透明な樹脂により固定されている。このように、半導体光検出素子とファイバ光学プレートとを固定する樹脂が、ファイバ光学プレートの光出射端面と半導体光検出素子における薄化されている部分との間に充填されているので、ファイバ光学プレートの光出射端面と半導体光検出素子における薄化されている部分との間、特に、ファイバ光学プレートの第二部分と半導体光検出素子における薄化されている部分との間にボイドが生じ難く、ファイバ光学プレートの第二部分における光出射端面から出射された光の散乱などを防ぐことができる。
【0012】
ファイバ光学プレートの第二部分の、半導体光検出素子の薄化されている部分に対向する面には、波長選択フィルタが配置されており、半導体光検出素子とファイバ光学プレートとは、波長選択フィルタと薄化されている部分とが離れている状態で固定されていてもよい。この場合、波長選択フィルタと半導体光検出素子における薄化されている部分とが近づけられた状態でも、半導体光検出素子における薄化されている部分と波長選択フィルタとが接触しない。したがって、波長選択フィルタの接触などにより半導体光検出素子の薄化されている部分及び波長選択フィルタのいずれかが損傷を受けるのを防ぐことができる。
【0013】
半導体光検出素子が、台座を介してパッケージに固定されていてもよい。この場合、半導体光検出素子を精度良く固定することができる。
【0014】
収容空間を第四主面側から閉塞し、保護部材に固定される蓋部材を更に備え、保護部材と蓋部材とが、熱的に結合されていてもよい。この場合、半導体光検出素子にて発生する熱が保護部材及び蓋部材を介して放散されることとなり、放熱性を高めることができる。
【0015】
保護部材と蓋部材とが、樹脂と該樹脂よりも熱伝導率が高い材料からなるフィラーとを含む接着剤により固定されていてもよい。この場合、放熱性をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、裏面入射型の半導体光検出素子を採用した場合でも、解像度の低下を抑制することが可能な固体撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係る固体撮像装置を示す平面図である。
図2図1におけるII−II線に沿った断面構成を説明するための図である。
図3】半導体光検出素子とファイバ光学プレートとの断面構成を説明するための図である。
図4】本実施形態に係る固体撮像装置の構成を示す分解斜視図である。
図5】本実施形態に係る固体撮像装置の製造過程を説明するための図である。
図6】本実施形態に係る固体撮像装置の製造過程を説明するための図である。
図7】本実施形態に係る固体撮像装置の製造過程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
まず、図1図4を参照して、本実施形態に係る固体撮像装置1の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る固体撮像装置を示す平面図である。図2は、図1におけるII−II線に沿った断面構成を説明するための図である。図3は、半導体光検出素子とファイバ光学プレートとの断面構成を説明するための図である。図4は、本実施形態に係る固体撮像装置の構成を示す分解斜視図である。
【0020】
図1図4に示されるように、固体撮像装置1は、パッケージ10、裏面入射型の半導体光検出素子20、台座30、ファイバ光学プレート40、保護部材50、及び蓋部材60を備えている。固体撮像装置1は、イメージングプレートの放射線画像読み出し装置に用いることができる。イメージングプレートの放射線画像読み出し装置は、イメージングプレートに励起光を照射し、イメージングプレートから放射される光を検出する装置である。イメージングプレートから放射される光(被検出光)は、励起光とは異なる波長である。
【0021】
パッケージ10は、互いに対向する主面10aと主面10bを有しており、セラミック材料からなる。本実施形態では、パッケージ10は、アルミナからなる。パッケージ10の中央領域には、パッケージ10における所定方向に延びる中空部11が形成されている。パッケージ10は、平面視で略長方形状を呈しており、中空部11はパッケージ10の長辺方向に延びている。
【0022】
中空部11は、主面10aと主面10bとに開口している。主面10aの開口は、平面視で略長方形状を呈しており、パッケージ10の長辺方向に延びている。中空部11は、半導体光検出素子20を収容する収容空間として機能する。パッケージ10には、半導体光検出素子20を載置するための載置部13が中空部11に突出するように設けられている。
【0023】
載置部13は、半導体光検出素子20を配置するための第一平面15と、電極パッド(不図示)が配置された第二平面16と、蓋部材60が固定される第三平面17と、を有している。第一〜第三平面15,16,17は、主面10aと対向しており、主面10b側から第三平面17、第二平面16、第一平面15の順で階段状に形成されている。すなわち、主面10bと第三平面17とで段差が構成され、第三平面17と第二平面16とで段差が構成され、第二平面16と第一平面15とで段差が構成されている。
【0024】
パッケージ10の両側面には、外部接続用の複数の電極ピン19がそれぞれ配置されている。電極ピン19は、対応する電極パッドとパッケージ10内に配置された配線を介して電気的に接続されている。
【0025】
半導体光検出素子20は、互いに対向する主面20aと主面20bとを有し、主面20a側に光感応領域21が設けられる。光感応領域21は、入射光に応じて電荷を発生させる。本実施形態では、半導体光検出素子20として、BT(Back-illuminated Thinning)−CCD(電荷結合素子)が用いられている。発生した電荷は、シフトレジスタにより信号電荷として転送され、信号電荷に対応した電圧に変換されて出力される。半導体光検出素子20は、TDI(Time Delay Integration)動作により電荷転送が行われる。半導体光検出素子20の各電極パッド(不図示)は、パッケージ10の対応する電極パッドとボンディングワイヤを介して電気的に接続されている。
【0026】
半導体光検出素子20は、光感応領域21に対応する部分が当該部分の周辺部分23を残して主面20b側から薄化されている。すなわち、光感応領域21に対応する部分が、薄化されている部分(薄型部分)25とされている。半導体光検出素子20の薄化は、たとえば、以下のようにして行うことができる。半導体光検出素子20を構成するシリコン基板の主面20bにシリコン窒化膜を堆積し、シリコン窒化膜をホトリソグラフィ工程により所望の形状にパターニングする。周辺部分23に対応する領域がシリコン窒化膜で覆われており、光感応領域21に対応する部分が露出している。その後、シリコン基板をエッチング液(たとえば、KOHなとど)により、シリコン窒化膜に覆われた領域(周辺部分23に対応する領域)を厚く残したままエッチングする。
【0027】
半導体光検出素子20は、主面20b側が光入射面となるように、台座30を介して載置部13の第一平面15に載置され、載置部13(パッケージ10)に固定されている。このとき、半導体光検出素子20は、主面10aの開口に半導体光検出素子20の薄型部分25が臨むようにパッケージ10に配置されている。薄型部分25は、主面10aの開口に対応して、主面10aの開口の長辺方向に延びている。
【0028】
台座30には、主面10aの開口に対応する貫通孔が形成されている。台座30は、所定の温度域における熱膨張係数が半導体光検出素子20(シリコン)の熱膨張係数よりも大きいセラミック材料からなる。本実施形態においては、台座30は、アルミナからなる。台座30は、接着剤(不図示)により、パッケージ10に固定されている。台座30には、接着剤(不図示)により、半導体光検出素子20の周辺部分23の主面20b側が固定されている。
【0029】
ファイバ光学プレート40は、光入射端面40aと光出射端面40bとを有しており、光出射端面40bが半導体光検出素子20の主面20bと対向するように配置されている。ファイバ光学プレート40は、ファイバ光学プレート40は、平面視で略長方形状を呈しており、その長辺方向が主面10aの開口の長辺方向に一致している。
【0030】
ファイバ光学プレート40の光出射端面40b側の部分41は、図3にも示されるように、半導体光検出素子20の周辺部分23に対応する第一部分41aと、半導体光検出素子20の薄型部分25に対応する第二部分41bと、を含んでいる。第二部分41bは、第一部分41aよりも、半導体光検出素子20に向けて突出している。すなわち、光出射端面40bには、第一部分41aと第二部分41bとにより段差が形成されている。ファイバ光学プレート40の第一部分41aと第二部分41bとで構成される段差の高さは、半導体光検出素子20の薄型部分25と周辺部分23とで構成される段差の高さよりも低く設定されている。
【0031】
ファイバ光学プレート40の第二部分41bにおける半導体光検出素子20の薄型部分25に対向する面(第二部分41bの光出射端面40b)には、波長選択フィルタ70が配置されている。波長選択フィルタ70は、たとえば誘電体多層膜フィルタである。誘電体多層膜フィルタは、ファイバ光学プレート40の第二部分41bの光出射端面40bに、蒸着などにより形成することができる。
【0032】
イメージングプレートの放射線画像読み出し装置では、イメージングプレートに照射する励起光が半導体光検出素子20に入射しないように、励起光と被検出光とを分離する必要がある。波長選択フィルタ70により、励起光と被検出光とが分離されて、被検出光が半導体光検出素子20に入射する。
【0033】
半導体光検出素子20とファイバ光学プレート40とは、樹脂45により、第一部分41aと周辺部分23とが当接し且つ波長選択フィルタ70(第二部分41b)と薄型部分25とが離れている状態で固定されている。樹脂45は、被検出光に対して光学的に透明であり、ファイバ光学プレート40の光出射端面40b及び波長選択フィルタ70と半導体光検出素子20の薄型部分25との間の空間に充填されている。これにより、波長選択フィルタ70(ファイバ光学プレート40の第二部分41b)と半導体光検出素子20の薄型部分25とが、樹脂45を介して光学的に結合されることとなる。本実施形態では、樹脂45として、透明なシリコーン樹脂が用いられている。
【0034】
ファイバ光学プレート40が半導体光検出素子20に固定された状態で、ファイバ光学プレート40の光入射端面40a側の部分43は、パッケージ10の主面10aよりパッケージ10の外側に突出している。ファイバ光学プレート40は、パッケージ10に直接的に固定されておらず、半導体光検出素子20及び台座30を介してパッケージ10に固定されている。したがって、ファイバ光学プレート40とパッケージ10との間には、所定の間隙が形成されている。
【0035】
ファイバ光学プレート40の第二部分41bと半導体光検出素子20の薄型部分25との間隔は、波長選択フィルタ70の厚みよりも大きく設定されている。すなわち、半導体光検出素子20の薄型部分25と周辺部分23とで構成される段差の高さは、ファイバ光学プレート40の第一部分41aと第二部分41bとで構成される段差の高さに波長選択フィルタ70の厚みを加えた値よりも高く設定されている。したがって、第一部分41aと周辺部分23とが当接した状態で、半導体光検出素子20と波長選択フィルタ70とは離れている。
【0036】
保護部材50は、主面20a側から半導体光検出素子20に固定されており、半導体光検出素子20の薄型部分25を保護している。保護部材50は、平面視で略長方形状を呈しており、その長辺方向が薄型部分25の長手方向とされている。保護部材50は、たとえばサファイア基板などからなる。保護部材50は、接着剤(不図示)により、半導体光検出素子20に固定されている。
【0037】
蓋部材60は、中空部11を主面10bから閉塞しており、その端部が載置部13の第三平面17に固定されている。蓋部材60は、セラミック材料からなる。本実施形態では、蓋部材60は、アルミナからなる。蓋部材60は、接着剤(不図示)により、パッケージ10(第三平面17)に固定されている。蓋部材60は、保護部材50にも固定されている。これにより、保護部材50と蓋部材60とが熱的に結合されることとなる。蓋部材60は、接着剤61により、保護部材50に固定されている。接着剤61は、樹脂(たとえば、エポキシ樹脂など)と当該樹脂よりも熱伝導率が高い材料からなるフィラー(たとえば、アルミナなど)とを含んでいる。
【0038】
次に、図5図7を参照して、上述した構成を備えた固体撮像装置1の製造過程について説明する。図5図7は、本実施形態に係る固体撮像装置の製造過程を説明するための図である。
【0039】
まず、パッケージ10と台座30とを用意し、パッケージ10(第一平面15)に台座30を接着剤81により固定する(図5の(a)を参照)。ここでは、接着剤81として、たとえば、フィラーとしてAg粉を含有するエポキシ樹脂が用いられる。
【0040】
次に、用意した半導体光検出素子20を、台座30に接着剤82により固定する(図5の(b)を参照)。ここでも、接着剤82として、たとえば、フィラーとしてAg粉を含有するエポキシ樹脂が用いられる。台座30は、パッケージ10に固定される面と、半導体光検出素子20が固定される面と、が機械加工(たとえば、化学機械的磨など)により平坦化されている。これにより、半導体光検出素子20の搭載面が適切に規定されることとなる。
【0041】
次に、対応する半導体光検出素子20の電極パッド(不図示)とパッケージ10の電極パッド(不図示)とをワイヤボンディングにより接続する(図6の(a)を参照)。
【0042】
次に、用意した保護部材50を、半導体光検出素子20の主面20aに接着剤83により固定する(図6の(b)を参照)。ここでは、接着剤83として、たとえば、エポキシ樹脂が用いられる。接着剤83を硬化させる際に、上述した所定の温度域まで昇温させる。これにより、半導体光検出素子20と台座30との熱膨張係数の差により、半導体光検出素子20の薄型部分25が平坦化された状態となり、当該状態が維持されたまま、保護部材50が半導体光検出素子20に固定されることとなる。
【0043】
次に、用意した蓋部材60を、保護部材50とパッケージ10(第三平面17)とに接着剤61,84により固定する(図7の(a)を参照)。ここでは、接着剤61として、たとえば、上述したアルミナフィラー入りのエポキシ樹脂が用いられる。接着剤61の硬化は、上述した所定の温度域よりも低い温度域で行う。蓋部材60とパッケージ10とを固定する接着剤84として、たとえば、エポキシ樹脂が用いられる。
【0044】
次に、用意したファイバ光学プレート40を、半導体光検出素子20に樹脂45により固定する(図7の(b)を参照)。ファイバ光学プレート40には、第二部分41bの光出射端面40bに波長選択フィルタ70が形成されている。ここでは、樹脂45として、透明なシリコーン樹脂が用いられる。このシリコーン樹脂は、室温で硬化される。
【0045】
これらの製造過程により、上述した構成を備えた固体撮像装置1が得られることとなる。
【0046】
以上のように、本実施形態では、ファイバ光学プレート40の光出射端面40b側の部分41は、第一部分41aと第二部分41bとを含んでいる。そして、ファイバ光学プレート40の第二部分41bにおける光出射端面40bには、波長選択フィルタ70が配置されている。このため、半導体光検出素子20とファイバ光学プレート40とは、波長選択フィルタ70(第二部分41bにおける光出射端面40b)と半導体光検出素子20の薄型部分25とが近づけられた状態で配置されることとなる。したがって、波長選択フィルタ70から出射された光が半導体光検出素子20に入射するまでに拡散し難く、固体撮像装置1の解像度(空間分解能)が低下するのを抑制できる。
【0047】
ファイバ光学プレート40の第一部分41aと第二部分41bとで構成される段差の高さが、半導体光検出素子20の薄型部分25と周辺部分23とで構成される段差の高さから波長選択フィルタ70の厚みを減じた値よりも低く設定されており、半導体光検出素子20とファイバ光学プレート40とが、第一部分41aと周辺部分23とが当接し且つ波長選択フィルタ70(第二部分41b)と薄型部分25とが離れている状態で固定されている。このため、波長選択フィルタ70と半導体光検出素子20の薄型部分25とが近づけられた状態でも、半導体光検出素子20の薄型部分25と波長選択フィルタ70とが接触しない。したがって、波長選択フィルタ70の接触などにより半導体光検出素子20の薄型部分25及び波長選択フィルタ70のいずれかが損傷するのを防ぐことができる。
【0048】
保護部材50が、主面20a側から半導体光検出素子20に固定され、半導体光検出素子20の薄型部分25を保護している。これにより、半導体光検出素子20の薄型部分25を機械的に補強することができる。ところで、保護部材50が半導体光検出素子20に固定された状態では、半導体光検出素子20の薄型部分25が平坦化された状態が維持されている。このため、波長選択フィルタ70(第二部分41bにおける光出射端面40b)と半導体光検出素子20の薄型部分25との間隔が場所によって変化するのが抑制され、解像度にばらつきが生じるのを防ぐことができる。
【0049】
半導体光検出素子20とファイバ光学プレート40とが、ファイバ光学プレート40の光出射端面40b及び波長選択フィルタ70と半導体光検出素子20の薄型部分25との間の空間に充填された樹脂45により固定されている。このように、樹脂45が、ファイバ光学プレート40の光出射端面40b及び波長選択フィルタ70と半導体光検出素子20の薄型部分25との間に充填されているので、ファイバ光学プレート40の光出射端面40bと半導体光検出素子20の薄型部分25との間、特に、波長選択フィルタ70と薄型部分25との間にボイドが生じ難く、波長選択フィルタ70から出射された光の散乱などを防ぐことができる。
【0050】
半導体光検出素子20が、台座30を介してパッケージ10に固定されている。これにより、半導体光検出素子20をパッケージ10に精度良く固定することができる。
【0051】
中空部11を主面10bから閉塞する蓋部材60が、保護部材50に固定されており、保護部材50と熱的に結合されている。これにより、半導体光検出素子20にて発生する熱が保護部材50及び蓋部材60を介して放散されることとなり、放熱性を高めることができる。
【0052】
保護部材50と蓋部材60とが、樹脂と該樹脂よりも熱伝導率が高い材料からなるフィラーとを含む接着剤61により固定されている。これにより、放熱性をより一層高めることができる。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0054】
本実施形態の固体撮像装置1は、イメージングプレートの放射線画像読み出し装置だけでなく、分光装置などにも用いることができる。
【0055】
半導体光検出素子20に入射する光を選択する必要がない場合には、波長選択フィルタ70を配置する必要はない。この場合は、ファイバ光学プレート40の第一部分41aと第二部分41bとで構成される段差の高さが、半導体光検出素子20の薄型部分25と周辺部分23とで構成される段差の高さよりも低く設定されていればよい。これにより、半導体光検出素子20の薄型部分25が損傷するのを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、イメージングプレートの放射線画像読み出し装置に用いられる固体撮像装置に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1…固体撮像装置、10…パッケージ、10a,10b…主面、11…中空部、20…半導体光検出素子、20a,20b…主面、21…光感応領域、23…周辺部分、25…薄型部分、30…台座、40…ファイバ光学プレート、40a…光入射端面、40b…光出射端面、41…光出射端面側の部分、41a…第一部分、41b…第二部分、43…光入射端面側の部分、45…樹脂、50…保護部材、60…蓋部材、61…接着剤、70…波長選択フィルタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7