(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、背面を壁に添わせて設置する書棚やタンスなどの設置物においては、特に、横幅に対して前後方向の厚みが小さい場合、左右方向に倒れることはほとんど無く、背面側には壁があるため背面側にも倒れることはない。一方、設置物は、後方に傾いた状態では、重心が後方にずれるため前方に倒れることはない。
そこで本願発明は、背面方向への移動が規制されている設置物において、床や壁に設置物を固定することなく、前後方向の揺れが発生した場合に、設置物を積極的に後方に傾けることにより、設置物が前方に倒れるのを防止することができる転倒防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための、本願発明の特徴点を以下に述べる。
なお、括弧内の符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(請求項1)
(特徴点)
請求項1記載の発明は、背面方向への移動が規制されている設置物(棚本体3)に用いられる転倒防止装置であって、前記設置物(3)の下面に固定される上架台(10A)と、設置面(F)に設置固定される下架台(10B)とを備え、前記上架台(10A)は、下側にレール面(22)を有する上前方レール(20)と、後方回転体(50)を回転自在に支持する後方回転体支持部(側面板142)とを少なくとも備え、前記下架台(10B)は、後方から前方に向かって下り傾斜するレール面(32)を上側に有する下後方レール(30)と、前方回転体(40)を回転自在に支持する前方回転体支持部(側面板192)とを少なくとも備えている。前記上架台(10A)は、前記下架台(10B)を設置面(F)に設置した初期位置において、前記下後方レール(30)のレール面(32)に前記後方回転体(50)が載置され、前記前方回転体(40)に前記上前方レール(20)のレール面(22)が当接した状態で、前記設置物(3)との固定面が設置面(F)と平行になるよう設置される。そして、前記上架台(10A)が前記下架台(10B)に対して前方に移動した場合には、前記後方回転体(50)が前記下後方レール(30)のレール面(32)を前方に下降移動するとともに、前記前方回転体(40)が前記上前方レール(20)のレール面(22)を下方から支持し、前記上架台(10A)の前端部が後端部よりも高位となるように形成され
、前記下架台(10B)において、前記前方回転体(40)の下面に接触又は近接して、前後方向に水平移動可能な移動体(突出アーム80)が配置され、前記移動体(80)は、その後端部側が前記上架台(10A)に係止されており、前記上架台(10A)が前方に移動するに伴い、その前端部が前記下架台(10B)の正面から前方に突出するように形成され、前記前端部が突出したときには前記前端部の下面が設置面(F)に接触又は極めて近接するように形成されていることを特徴とする。
【0007】
(作用)
本発明に係る転倒防止装置(1)において、上前方レール(20)と下後方レール(30)及び前後の回転体(40,50)は、設置物(3)の底面両端部となる位置にそれぞれ配置されるのが好適である。
本発明においては、設置面(F)が設置物(3)を正面視したときの前後方向に揺れた場合、設置面(F)に固定されている下架台(10B)に対して上架台(10A)が前後に移動することとなる。そして、設置面(F)が後方に揺れて下架台(10B)に対して上架台(10A)が前方に移動した場合には、後方回転体(50)の高さ位置が低くなった上架台(10A)は前側が後ろ側よりも高くなり、上架台(10A)を固定した設置物(3)の全体が後方に傾くこととなる。一方、設置面(F)が前方に揺れて下架台(10B)に対して上架台(10A)が後方に移動した場合であっても、上架台(10A)を固定した設置物(3)も後方に移動するが、背面の壁面(P)や柱にぶつかるため跳ね返って前方に移動する。そうすると、上記と同様に上架台(10A)は前側が後ろ側よりも高くなり、上架台(10A)を固定した設置物(3)の全体が後方に傾くこととなる。すなわち、設置物(3)は、後方に傾くことはあっても前方に傾くことがなく、結果、前方に倒れることがない。
また、本発明によれば、上架台(10A)が前方に移動するに伴い移動体(80)が突出するので、上架台(10A)及び設置物(3)を支える下架台(10B)の奥行きが実質的に延びることとなる。このため、設置物(3)の重心が上の方にある場合でも、下架台(10B)の安定状態を保つことができ、長周期、短周期の幅広い地振動に対応することが可能となる。加えて、下架台(10B)の前後方向の奥行き寸法を無駄に大きくする必要が無くなり、設置スペースを小さくすることができる。さらに、移動体(80)を前方回転体(40)の下方に配置したことにより、設置物(3)が前方に倒れようとしたときに移動体(80)にかかる力の反力を、前方回転体(40)が受けるので、移動体(80)が下架台(10B)から上方に浮き上がるのを防止するための他部材を設ける必要が無く、装置全体の軽量化及びコストダウンを図ることができる。
【0008】
(請求項2)
(特徴点)
請求項2記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、前記下架台(10B)の前後方向の中央部には、前記上架台(10A)の少なくとも上方への移動を規制する移動規制手段(センターピン60)が設けられていることを特徴とする。
(作用)
前記移動規制手段(60)は、上架台(10A)の前後方向への移動を規制可能であってもよい。
【0009】
本発明によれば、移動規制手段(60)が支点となって上架台(10A)の前後方向の中央部の高さを一定に保つので、上架台(10A)の回動がスムーズに行われ、上架台(10A)がバウンドすることがない。結果として、設置物(3)を確実に後傾させることができる
。
【0011】
(請求項
3)
(特徴点)
請求項
3に記載の発明は、上記した請求項1
又は2に記載の発明の特徴点に加え、前記下後方レール(30)には、前記上架台(10A)が
初期位置にある場合に前記後方回転体(50)の前方への移動を規制し、前記設置物(3)に対して前方に移動する方向の力が働いた場合に前記後方回転体(50)の前方への移動を可能とするストッパー(トリガー突起36)が設けられていることを特徴とする。
(作用)
本発明によれば、設置物(3)が前方に倒れない程度の揺れでは、ストッパー(36)に阻まれて上架台(10A)は前方に移動しないが、設置物(3)が前方に倒れようとすると、例えば後方回転体(50)がストッパー(36)を乗り越えて、上架台(10A)が前方に移動可能となる。このため、設置物(3)が転倒しない程度の弱い振動によって転倒防止装置(1)が作動してしまうことがない。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のように構成されているので、背面方向への移動が規制されている設置物において、床や壁に設置物を固定することなく、前後方向の揺れが発生した場合に、設置物を積極的に後方に傾けることにより、設置物が前方に倒れるのを防止することができる転倒防止装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好適な実施の形態を、図面に基づき説明する。
(棚本体3)
本実施の形態における設置物としての棚本体3は、例えばスチール製の書棚や陳列棚であって、
図1に示すように、左右の側板3Aと、底板3B及び天板3Dと、側板3Aに両端を支持される複数の棚板3Cを有している。そして、底板3Bには、転倒防止装置1が固定されている。なお、本実施の形態において、特に指定しない場合には、各構成部材の上下左右、前後(正面背面)の方向は、転倒防止装置1を固定した棚本体3を正面視したときの各構成部材の方向を指すものである。
【0015】
(転倒防止装置1)
転倒防止装置1は、
図2に示すように、全体として方形枠型を呈しており、
図3に示すように、大きく分けて、上架台10Aと、下架台10Bと、2つのレールユニット10Bの間に配置される回転体としての前方ローラ40及び後方ローラ50とから構成されている。なお、
図3は、上架台10Aを下面視し、下架台10Bを上面視した斜視図である。
(上架台10A)
上架台10Aは、
図3に示すように、方形薄枠状の支持枠11を備えている。支持枠11は、正面側に位置する前板12と、前板12に平行な後枠13と、前板12と後枠13の端部を繋ぐ左右の側枠14とから成り、各側枠14の下側に、上前方レール20及び後方回転体としての後方ローラ50がそれぞれ設けられている。また、側枠14の内側(上架台10Aの中心側)には、前板12と後枠13の間に掛け渡された固定板15が設けられている。
【0016】
側枠14は、
図4に示すように、水平板141と、水平板141の両側端部から垂下する2つの側面板142と、2つの側面板142の後端部の間を塞ぐ背面板144(
図9参照)を有する前後方向に長い枠材である。上前方レール20は、水平板141の前方下面に固定されている。また、後方ローラ50は、2つの側面板142を貫通するローラ軸51を介して側枠14の後方端部に取り付けられている。すなわち、側面板142は、後方回転体支持部として機能している。さらに、側面板142の前後方向の略中央部から後側に向かって、左右方向に貫通する略方形の開口部143が形成されている(
図9参照)。
前記固定板15は、その上面に棚本体3を固定するためのものである。上架台10Aを棚本体3に固定する場合には、棚本体3の底板3Bの底面と固定板15の上面とを接合させた状態で、上側(底板3B側)からボルトで固定する。
【0017】
(下架台10B)
下架台10Bは、
図3に示すように、方形薄枠状の支持枠16を備えている。支持枠16は、正面側に位置する前枠17と、前枠17に平行な後枠18と、前板17と後枠18の端部を繋ぐ左右の側枠19とから成り、各側枠19の上側に、下後方レール30及び前方回転体としての前方ローラ40がそれぞれ設けられている。
側枠19は、
図5に示すように、水平板191と、水平板191の両側端部から立ち上がる2つの側面板192と、2つの側面板192の後端部の間を塞ぐ背面板193を有する前後方向に長い枠材である。下後方レール30は、水平板191の後方上面に固定されている。また、前方ローラ40は、2つの側面板192を貫通するローラ軸41を介して側枠19の前方端部に取り付けられている。すなわち、側面板192は、前方回転体支持部として機能している。また、側面板192の前後方向の略中央部には、前記ローラ軸41と平行なセンターピン60が2つの側面板192を貫通して取り付けられている。センターピン60は、上架台10Aの上方向への移動を規制するとともに後方向への最大移動距離を規制するための移動規制手段である。さらに、水平板191の前方上面には、上架台10Aが前方に移動した場合に、載置されている棚本体3の重みで下架台10Bの後部が持ち上がるのを防止するための移動体としての突出アーム80と、突出アーム80を支持するとともに前後方向の移動をガイドするガイド片90(
図8、
図9参照)が設けられている。また、背面板192の前面には、シリコンラバーなどの弾性部材により形成されたスペーサー70が設けられている。
【0018】
なお、下架台10Bに上架台10Aを重ね合わせると、下架台10Bの側枠19の側面板192の間に、上架台10Aの側枠14がすっぽり嵌り、センターピン60が上架台10Aの側枠14の開口部143の内部を貫通するようになっているが、下架台10Bと上架台10Aを組み合わせる手順については後述する。
(上前方レール20)
上前方レール20は、
図6及び
図9に示すように、前後方向に長い略直方体形状を呈しており、側枠14の水平板141に固定したとき下側となる面がレール面22となっている。レール面22は、水平板141と平行な平坦部23と、平坦部23から後端部に向かって徐々に水平板141からの距離(垂直方向の長さ)が大きくなるように形成された終点湾曲部24を有している。
【0019】
また、上前方レール20の後端部には、下側に向かって垂下する舌片25が形成されている。この舌片25は、後述する突出アーム80に係止され、上架台10Aと突出アーム80とを一体的に移動可能とするためのものである。
(下後方レール30)
下後方レール30は、
図7(A)及び
図9に示すように、側面視略楔形を呈しており、側枠19の水平板191に固定したとき上側となる面がレール面32となっている。レール面32は、後方側に設けられた平坦部33と、平坦部33から前方に向かって下り傾斜して形成された傾斜部34を有している。傾斜部34の傾斜角度は、12〜13度程度とするのが好ましい。また、下後方レール30には、レール面32よりも上側に突出しレール面と平行な上面を有する板状の軸受リブ35が、長さ方向にわたって形成されている。すなわち、軸受リブ35も、平坦部35Aと傾斜部35Bを有している。また、軸受リブ35は、傾斜部35Bの前方端部からさらに前方に延接された前方平坦部35Cを有している。前方平坦部35Cの上面は側枠19の水平板191と平行に形成されている。そして、後方ローラ50がレール面32のレール面もしくは側枠19の水平板191に当接した状態で、軸受リブ35に後方ローラ50のローラ軸51が当接可能に形成されている。
【0020】
さらに、前記軸受リブ35上面であって平坦部35Aの前方端部には、上側に突出した側面視略三角形状のトリガー突起36が形成されている。トリガー突起36は、後方ローラ50の前方への移動を規制するためのストッパー突起であって、側面視すると、
図7(B)に示すように、レール面32の平坦部33と平行な頂部36Aと、頂部36Aの後側に設けられた湾曲部36Bと、頂部36Aの前側に設けられレール面32の傾斜部34と平行な傾斜部36Cを有している。湾曲部36Bの曲率半径は、後方ローラ50のローラ軸51の半径と同等であり、ローラ軸51が湾曲部36Bに当接することにより、上架台10Aの前方への移動がロックされる。ただし、後方から上架台10Aにある程度の力がかかると、ローラ軸51が頂部36Aを乗り越えて、ロック状態が解除されるようになっている。
【0021】
(突出アーム80)
突出アーム80は、
図5に示すように、下架台10Bの側枠19の前方側に、長さ方向が前後方向となるよう配置された長尺の枠部材であり、
図8に示すように、上板81と、上板81の両側端部から垂下する2つの側板82と、側板82の間に軸止されるローラ85とを備えている。ローラ85は、側板82の前端部に設けられている。また、上板81の後端部寄りには、上側に開口する開口部83が形成されている。開口部83には、上架台10Aと下架台10Bとを重ねた状態で、上前方レール20の舌片25を差し込むことができ、舌片25を係止するようになっている。開口部83に舌片25が係止されることにより、突出アーム80が上架台10Aと一体に移動可能となる。そして、側板82には、側方に張り出す張出ピン84が、前後方向に並んで2つ設けられている。張出ピン84は、以下に述べるガイド片90のガイド溝91に嵌入されるものである。
【0022】
さらに、突出アーム80は、
図9に示すように、上板81の上面に前方ローラ40が当接する高さに形成されている。すなわち、前方ローラ40は、突出アーム80の上板81を上側から押さえ、突出アーム80が上方に浮き上がるのを防止している。
(ガイド片90)
ガイド片90は、
図8及び
図9に示すように、下架台10Bの側枠19の水平板191の上面であって前記突出アーム80の外側に設けられた立設片である。ガイド片90は、水平板191の一部を上側に折り曲げて形成したものであってもよいし、別部材を水平板191に固着したものであってもよい。そして、ガイド片90には、前後方向に形成された長孔状のガイド溝91が設けられている。ガイド溝91は、前記突出アーム80の張出ピン84と係合可能であり、突出アーム80を側枠19の内部で支持し突出アーム80が上方に浮き上がるのを防止するとともに前後方向の移動をガイドするものである。
【0023】
なお、ガイド片90にガイドピンを設け、突出アーム80にガイドピンが係合可能な溝部を設けてもよい。
(転倒防止装置1の作動)
次に、上記構成を有する転倒防止装置1の動きについて、
図9及び
図10に基づき説明する。
図9(A)は、転倒防止装置1の初期位置を示す。初期位置においては、上架台10Aの支持枠11と下架台10Bの支持枠16とは、上下に重なっている。具体的には、上架台10Aの側枠14は、下架台10Bの側枠19の側面板192の間に位置しており(
図2参照)、側枠14の背面板144はスペーサー70に当接しており、上架台10Aの前板12は、下架台10Bの支持枠16の正面側を覆っている(
図2参照)。また、前方ローラ40は、上前方レール20のレール面22の前端部と突出アーム80の上板81の前端部近傍の間に挟持されており、上前方レール20は前方ローラ40によって下方から支持されている。後方ローラ50は、下後方レール30のレール面32の後端部にある平坦部33に位置しており、後方ローラ50のローラ軸51は、軸受リブ35に設けられたトリガー突起36の後方側に当接している。この状態において、上架台10Aは水平状態である。また、突出アーム80のローラ85は側枠19の前端部よりもやや正面側に突出た位置にあり、張出ピン84は、ガイド溝91の後方側に位置している。さらに、センターピン60は、上架台10Aの側枠14の開口部143の最も前方側近傍に位置している。
【0024】
次に、上架台10Aが初期位置にある場合において、上架台10Aに前方向(
図9における左方向)への力が加えられたものとする。その力が弱い場合には、後方ローラ50のローラ軸51がトリガー突起36に係止されているため、上架台10Aは移動しない。しかし、上架台10Aにかかる力がトリガー突起36の係止力を超えると、
図9(B)(C)に示すように、ローラ軸51はトリガー突起36を乗り越えて、後方ローラ50はレール面32の傾斜部34に移動する。後方ローラ50が傾斜部34を転動することにより、上架台10Aが下架台10Bに対して前方に移動し、上前方レール20は前方ローラ40に支持されつつ前方に進む。これに伴い、突出アーム80もガイド片90にガイドされつつ前方に移動する。そして、上架台10Aの移動に伴い、センターピン60の開口部143に対する相対的位置は、開口部143の後方側へと移動する。
【0025】
なお、上架台10Aを後方に移動させようとしても、スペーサー70が側枠14の背面板144に当接して移動が阻止され、上架台10Aをそれ以上後方に動かすことはできない。しかし、上架台10Aは前方ローラ40及び後方ローラ50により下架台10Bに支持されているだけなので、上架台10Aを後方に移動させる力が働いた場合には、その反動で逆に前方に移動するものとなっている。
図10(A)は、後方ローラ50が下後方レール30の傾斜部34を下りきった位置まで上架台10Aが移動した状態を示す。この状態では、後方ローラ50は下架台10Bの側枠19の水平板191の上面すなわち初期位置よりも低い位置に位置しているが、前方レール40は、水平状態を維持している突出アーム80の上面に載置されているため、高さ位置は変化しない。このため、上架台10Aは、前端部が初期位置よりも上方向に回動した状態となっている。つまり、上架台10Aの上面は後方に下り傾斜した状態となっている。このとき、センターピン60の開口部143に対する相対的位置は、開口部143の後方側略1/3程度の位置となっている。
【0026】
図10(B)は、センターピン60が開口部143の後端縁部143aに当接するまで上架台10Aが前方に移動した状態を示す。上架台10Aはセンターピン60が開口部143の後端縁部143aを係止するため、それ以上前方には移動できない。すなわち、
図10(B)は上架台10Aが最大限前方に移動した状態を示す。この状態では、突出アーム80は、前方に位置する張出ピン84がガイド片90のガイド溝91の前端部の近傍となる位置まで突出しており、前方ローラ20は上前方レール20の舌片25の手前に位置している。ここで、前方ローラ40及び後方ローラ50の高さ位置は、
図10(A)に示した場合と変化していないが、上前方レール20の後側には、終点湾曲部24が形成されており、後側ほど肉厚になっているため、上架台10Aの前方への移動に伴い上前方レール20が前方ローラ20の上を移動するにつれ、上架台10Aの傾斜角度が大きくなる。
【0027】
ここで、開口部143の下縁部143bの形状は、上架台10Aが初期位置にあるときにセンターピン60が位置している前端部は、上架台10Aの上面と平行であり、そこから後方に向かって上り傾斜し、後端部手前は再び上架台10Aの上面と平行となる、特殊形状に形成されている。この形状によって、上架台10Aの前進に伴い側枠14の傾斜角度が変化しても、センターピン60が上架台10Aの移動を阻止することなく常に開口部143の下縁部143bに当接することを可能としている。
なお、最大限前方に移動した上架台10Aは、後方ローラ50が下後方レール30の傾斜部34
を上昇しかつローラ軸51がトリガー突起36を乗り越えることができる力で後方に押圧することにより、
初期位置に戻すことができる。
【0028】
(転倒防止装置1の取り付け及び棚本体3の設置)
転倒防止操作1の棚本体3への取り付け手順について説明する。まず、下架台10Bを、突出アーム80が棚本体3の正面側となるようにして床などの設置面に設置固定する。また、上架台10Aの固定板15に棚本体3の底板3Bを固定する。そして、下架台10Bの上に、上架台10Aを固定した棚本体3を設置する。この際、下架台10Bからはセンターピン60を取り外しておき、下架台10Bの側枠19の側面板192の間に上架台10Aの側枠14を差し込み、上前方レール20の舌片25を突出アーム80の開口部83に挿入させつつ、上架台10Aと下架台10Bを組み合わせる。そして、上架台10Aを最後部までスライドさせると、
図9(A)に示すように、後方ローラ50のローラ軸51が下後方レール30のトリガー突起36よりも後方側の位置となる。そして、下架台10Bの側枠19の外側から、センターピン60を挿入して、Eリング等で固定する。なお、棚本体3の背面側上端部、例えば天板3Dの背面側隅角部に、断面略L字型のゴムなどの保護材を取り付けてもよい。保護材は天板3Dの背面側上縁部にわたって設けてもよい。
【0029】
次に、上記したように転倒防止装置1を装着した棚本体3の設置例について説明する。
まず、棚本体3の背面を、水平な設置面Fに垂直な壁面P(柱でもよい)に添わせて設置する場合を
図11(A)に示す。なお、
図11は棚本体3を側面視した図である。ここで、図示した例では、下架台10Bの背面を壁面Pとほぼ密着させて配置しているが、棚本体3の高さが図示したものより高い場合には、下架台10Bを壁面Pとの間に所定の間隙をあけて固定する。間隙は、上架台10Aが最大限前方に移動する前に、後方に傾いた棚本体3の保護材が壁面Pと当接しない寸法に設定する。つまり、後方に傾いた棚本体3が壁面Pと衝突して、上架台10Aの最大突出長さまで移動することを阻害することがないような間隙を設ける。
【0030】
また、複数の棚本体3、3’を、背面合わせにして設置面Fに設置する場合を
図12に示す。この場合にも、棚本体3の高さが図示したものより高い場合には、一方の下架台10Bの背面と他方の下架台10Bの背面との間に、所定の間隙を設けて設置することになる。この場合の間隙は、棚本体3を壁面Pに配置する場合よりも大きい寸法に設定する。
続いて、本実施の形態における転倒防止装置1を装着した棚本体3の地震発生時の動きを、
図11に基づき説明する。
棚本体3は、前後方向の揺れが発生した場合において、設置面Fが棚本体3に対して前方(
図11(A)の黒矢印方向)に移動することにより、上部に後方(同図の白矢印方向)へ倒れる力が働き、逆に、設置面Fが棚本体3に対して後方に移動することにより、上部に前方へ倒れる力が働く。そして、棚本体3の上部が後方へ倒れる力が働いた場合には、棚本体3の下部には前方に移動する力が働き、後方ローラ50のローラ軸51が下後方レール30のトリガー突起36を乗り越えることにより(
図9(B)参照)、上架台10Aは下架台10Bに対して前方に移動する。そうすると、上述したように、棚本体3は後方に傾くが(
図11(B)参照)、背面には壁面Pがあるため、後ろ側に転倒することはない。
【0031】
一方、棚本体3の上部が前方に倒れる力が働いた場合には、棚本体3の下部には後方に移動する力が働くが、前述したように、上架台10Aは下架台10Bに対して後方へは移動しないようになっているので、反動によって前方に移動するものとなる。そして、この場合にも、棚本体3は後方に傾くが、後ろ側に転倒することはない。
このようにして、転倒防止装置1は、棚本体3が前後のいずれの方向に揺れた場合でも後側に倒すようにして、棚本体3が前側に倒れることを防止することができる。
以上のことは、
図12に示す設置例においても同様である。
図12の設置例の場合には、設置面Fが黒矢印方向に移動した場合にも、白矢印方向に移動した場合にも、背面合わせに配置されている棚本体3、3’はいずれも、若干の時間差をつけて後方に傾いた状態となる。例えば、設置面Fが黒矢印方向に移動した場合には、左側に位置している棚本体3の上部には後方へ倒れる力が働き、直後に上架台10Aが移動開始する。一方、右側に位置している棚本体3’の上部には前方へ倒れる力が働くが、その反動により、上架台10Aは、棚本体3の上架台10Aが移動開始してから僅かなタイムラグをおいて移動開始する。
【0032】
(総括)
以上のように、本実施の形態によれば、上架台10Aの前方へのスライド移動によって棚本体3の正面下部が前方に移動すると同時に上方に持ち上がり、棚本体3を後方に傾いた状態とすることができる。そして、上架台10Aは下架台10Bに対して後方へは移動しないので、設置面Fが棚本体3の前後方向のどちらの方向に揺れた場合でも、棚本体3は後方に傾いた状態となり、前側に倒れることがない。従って、地震発生時の安全を確保することができる。
また、上架台10Aと同期して前方に突出する移動体としての突出アーム80を設けたので、それによっても、棚本体3が手前側に倒れるのを防止することができるものである。すなわち、突出アーム80によって下架台10Bの前後の長さが実質的に延長され、例えば棚本体3の高さが高い場合や棚の上部に重量物が置かれていて棚本体3の重心が上の方にある場合でも、下架台10Bの後端側にかかる上方向への力を吸収し、下架台10Bの後端部が浮き上がってしまうのを防ぎ、安定状態を保つことができる。これにより、長周期、短周期の幅広い地振動に対応することが可能である。加えて、下架台10Bの前後方向の奥行き寸法を無駄に大きくする必要が無くなり、設置スペースを小さくすることができる。
【0033】
また、本実施の形態における転倒防止装置1は、上架台10Aに固定される棚本体3が前後方向の力を受けた場合には、ローラ軸51がトリガー突起36を乗り越えた場合に、上架台10Aが前方に移動する。換言すれば、揺れによって棚本体3が前方に倒れそうになると、上架台10Aが前方に移動するようになっている。このため、弱い揺れによって棚本体3が後方に倒れてしまうことがなく、不要な現状復帰作業を行わなくてもよい。
さらに、下架台10Bの前後方向の略中央部にセンターピン60を設け、上架台10Aの側枠14には、その下縁部143bが特定形状に形成された開口部143を設けてある。そして、センターピン60が上架台10Aの開口部143の下縁部143bを常に上から押さえ、ここが支点となることにより、上架台10Aの回動(後方ローラ50が傾斜部34の下り傾斜を転動することに伴う上架台10Aの前端部の上昇)がスムーズに行われる。また、地震による上下の揺れが発生した場合でも、上架台10Aが下架台10Bの上でバウンドし、棚本体3が前方に倒れてしまうようなことがない。
【0034】
また、前方ローラ40の下方に突出アーム80を配置し、棚本体3が前方に倒れようとしたときに突出アーム80にかかる力の反力を、前方ローラ40が受けるようにしたので、突出アーム80が上方に浮き上がることがない。ここで、突出アーム80を、例えば側枠190に隣接させて配置することもできるが、このように形成した場合には、突出アーム80を設置しかつ突出アーム80かかる反力を受けるための部材(例えば突出アーム80を収納する筒体など)を別途設けなくてはならない。しかし、本実施の形態では、かかる他部材を設ける必要が無く、側枠190の内部スペースを有効利用して、装置全体の軽量化及びコストダウンを図ることができる。
【0035】
なお、本実施の形態では、突出アーム80を上架台10Aに係止する手段として、開口部83と上前方レール20に設けた舌片25を用いているが、上架台10Aが後傾しながら前進移動するのに伴い突出アーム80が水平に前方に移動できることを可能とするものであれば、どのような態様の係止手段を設けてもよい。
また、本実施の形態では、初期位置において、後方ローラ50のローラ軸51がトリガー突起36によって係止されている構造となっていたが、トリガー突起をレール面に設けて、後方ローラ50が係止される構造としてもよい。
(変形例)
図13は、本実施の形態の変形例を示すものであり、中間部分を省略した転倒防止装置1の底面斜視図である。なお、下架台10Bの前枠17と右側の側枠19は記載を省略している。
【0036】
上記した実施の形態においては、上前方レール20の後方には終点湾曲部24が形成されていたが、終点湾曲部24の曲率を無限大にしてもよい。すなわち、上前方レール20のレール面22を側枠14の水平板141と平行に形成してもよい。具体的には、
図13に示すように、側枠14の側面板142に、水平板141と平行な切欠144を設け、この切欠144を上前方レール20とし、前方ローラ40のローラ軸41が上前方レール20に当接するように形成してもよい。あるいは、前方ローラ40が水平板141の底面に当接するように形成し、水平板141の底面を上前方レール20とすることもできる。この場合、突出アーム80を上架台10Aに係止する手段を、側枠14に設ける。具体的には、
図13に示すように、側枠14の外側の側面板142から内側に向かって突出する舌片145を設け、突出アーム80には、この舌片145と係合可能なスリット86を形成する。以上のように形成した場合であっても、上記した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
さらに、本変形例においては、下架台10Bの底面に、高さ調整機構100を設けてある。
図13では、右側の高さ調整機構100の記載を省略しているが、高さ調整機構100は、固定板15の下方に位置するよう、転倒防止装置1の左右両側に設けられる。高さ調整機構100は、下架台10Bに固定される支持板110の前後の端部側にそれぞれ、底部に円盤状のフット部を有するアジャスタボルト120を取り付けたものである。この高さ調整機構100を設けることにより、重量物を搭載しても設置物が歪むことがなく、例えば扉付きの書庫などで扉が開かなくなるようなトラブルを防ぐことができる。なお、上記した実施の形態においても、
図13に示すような高さ調整機構100を設けるのが望ましい。
【0038】
なお、本発明は、書棚や陳列棚の他、タンスなどの家具や自動販売機などの機械装置にも利用することができる。