(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940904
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】さく孔機
(51)【国際特許分類】
E21B 44/00 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
E21B44/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-136876(P2012-136876)
(22)【出願日】2012年6月18日
(65)【公開番号】特開2014-1546(P2014-1546A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】594149398
【氏名又は名称】古河ロックドリル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】五味 敏彦
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−156494(JP,A)
【文献】
実開昭61−023388(JP,U)
【文献】
特開平10−061368(JP,A)
【文献】
特表2004−521211(JP,A)
【文献】
特表2010−531402(JP,A)
【文献】
実開昭61−009534(JP,U)
【文献】
特表平06−507457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 44/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃機構と、フラッシング機構とを備えるさく孔機であって、
前記打撃機構の送り圧力および送り速度を検出するさく孔状況検出手段と、オペレータの操作が入力される操作入力手段と、前記さく孔状況検出手段からの検出情報および前記操作入力手段からの操作情報が入力され、エンジンの回転数を制御するとともにエンジンの回転数を規定する制御モードを複数記憶している制御部とを備え、
前記制御部は、前記さく孔状況検出手段からの検出情報に基づいてさく孔状況を判断し、その判断に応じて前記複数の制御モードから対応する制御モードを設定するとともに、前記操作入力手段からの操作入力状態に基づいて、前記エンジンの回転数を現在設定されている制御モードで規定するエンジン回転数に制御するとともに、
前記制御モードとして、前記エンジンを定格回転数で回転させる通常制御モードと、前記エンジンを前記定格回転数よりも低い回転数で回転させる第一省エネ制御モードと、前記エンジンを前記定格回転数または前記定格回転数よりも低い回転数のいずれかで回転させる第二省エネ制御モードとを有し、
前記現在設定されている制御モードが前記通常制御モードおよび前記第一省エネ制御モードの場合は、前記操作入力手段からの操作入力情報にかかわらず、前記エンジンの回転数を現在設定されている制御モードで規定するエンジン回転数に制御し、
前記現在設定されている制御モードが前記第二省エネ制御モードの場合は、前記操作入力手段からの操作入力状態が、打撃操作且つフラッシング操作、若しくは、打撃操作であるときは、前記エンジンを前記定格回転数よりも低い回転数で回転させ、前記操作入力手段からの操作入力状態が、フラッシング操作のみであるときは、前記エンジンを前記定格回転数で回転させることを特徴とするさく孔機。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出情報に基づいて、現在取得した送り速度が直前に取得した送り速度よりも上昇していないと判断したときには、前記制御モードを通常制御モードに設定し、該通常制御モードでは、エンジン回転数を、いずれの操作入力状態においても定格回転数に維持するよう制御することを特徴とする請求項1に記載のさく孔機。
【請求項3】
前記制御部は、前記検出情報に基づいて、現在取得した送り速度が直前に取得した送り速度よりも上昇し且つ現在取得した送り圧力が直前に取得した送り圧力よりも低下していないとの判断をしたときには、前記制御モードを第一省エネ制御モードに設定し、
該第一省エネ制御モードでは、選定されている操作入力状態に基づいて、いずれの操作入力状態においても、エンジン回転数を、定格回転数よりも低いエンジン回転数に制御することを特徴とする請求項1または2に記載のさく孔機。
【請求項4】
前記制御部は、前記検出情報に基づいて、現在取得した送り速度が直前に取得した送り速度よりも上昇し且つ現在取得した送り圧力が直前に取得した送り圧力よりも低下したとの判断をしたときには、制御モードを第二省エネ制御モードに設定し、
該第二省エネ制御モードでは、選定されている操作入力状態に基づいて、操作入力状態がフラッシング操作のみのときには、エンジン回転数を定格回転数に制御し、操作入力状態が打撃または打撃しつつフラッシングするとの操作入力のときには、エンジン回転数を定格回転数よりも低いエンジン回転数に制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のさく孔機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱山、採石、土木工事等の現場でさく孔作業に使用されるクローラドリル等のさく孔機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のさく孔機は、ガイドシェルに搭載されたドリフタからロッド先端に取付けたビットに打撃と回転を伝達し、ドリフタに送りを与えてさく孔をする。さく孔作業において、オペレータは、ドリフタの各作動機構の作動状況を視覚や聴覚で把握してさく孔対象の岩質を判断し、岩質に合わせてドリフタの各作動機構の作動条件を調整する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、通常、この種のさく孔機での打撃やフラッシング時における、エンジンの回転数制御は、エンジンを定格回転数まで自動的に上昇させることで、エンジンに直結されているコンプレッサおよび油圧ポンプの回転数を上昇させ、これにより、フラッシングに必要な圧縮空気や、打撃機構を作動させる圧油の吐出量を定格まで上昇させている。
ただし、さく孔状況に応じて、あるいはさく孔の要求スペック(さく孔径、さく孔長)によっては、さく孔能力を落としてさく孔機を運転する場合がある。その際は、エンジンを定格回転数までは上昇させずに、定格回転数よりも低いエンジン回転数で運転する。このような低い回転数での運転は、燃費にも良い効果があるので省エネ運転としての使用が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−61368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エンジン回転数を定格回転数よりも下げてさく孔機を運転した場合、通常、岩盤を破砕する能力に基づいてエンジン回転数を調整する場合が多い。岩盤を破砕する能力にエンジン回転を合わせるとコンプレッサの吐出空気量も減少する。そのため、例えばさく孔内をフラッシングするための圧縮空気をエアブローする操作モードにおいて、破砕した岩粉をさく孔内から完全に排出できないことがあり、目標さく孔長に孔を仕上げることが困難となるという問題があった。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、さく孔状況および操作モードに応じた適切なエンジン回転数を設定し得るさく孔機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るさく孔機は、打撃機構と、フラッシング機構とを備えるさく孔機であって、前記打撃機構の送り圧力および送り速度を検出するさく孔状況検出手段と、オペレータの操作が入力される操作入力手段と、前記さく孔状況検出手段からの検出情報および前記操作入力手段からの操作情報が入力され、エンジンの回転数を制御するとともにエンジンの回転数を規定する制御モードを複数記憶している制御部とを備え、前記制御部は、前記さく孔状況検出手段からの検出情報に基づいてさく孔状況を判断し、その判断に応じて前記複数の制御モードから対応する制御モードを設定するとともに、前記操作入力手段からの操作入力状態に基づいて、前記エンジンの回転数を現在設定されている制御モードで規定するエンジン回転数に制御することを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明の一態様に係るさく孔機において、前記制御部は、前記制御モードとして、前記エンジンを定格回転数で回転させる通常制御モードと、前記エンジンを前記定格回転数よりも低い回転数で回転させる第一省エネ制御モードと、前記エンジンを前記定格回転数または前記定格回転数よりも低い回転数のいずれかで回転させる第二省エネ制御モードとを有し、前記現在設定されている制御モードが前記通常制御モードおよび前記第一省エネ制御モードの場合は、前記操作入力手段からの操作入力情報にかかわらず、前記エンジンの回転数を現在設定されている制御モードで規定するエンジン回転数に制御し、前記現在設定されている制御モードが前記第二省エネ制御モードの場合は、前記操作入力手段からの操作入力状態が、打撃操作且つフラッシング操作、若しくは、打撃操作であるときは、前記エンジンを前記定格回転数よりも低い回転数で回転させ、前記操作入力手段からの操作入力状態が、フラッシング操作のみであるときは、前記エンジンを前記定格回転数で回転させること
を特徴とする。
【0008】
ここで、本発明の一態様に係るさく孔機において、前記制御部は、前記検出情報に基づいて、現在取得した送り速度が直前に取得した送り速度よりも上昇していないと判断したときには、前記制御モードを通常制御モードに設定し、該通常制御モードでは、エンジン回転数をいずれの操作入力状態においても定格回転数に維持するよう制御することは好ましい。
【0009】
また、本発明の一態様に係るさく孔機において、前記制御部は、前記検出情報に基づいて、現在取得した送り速度が直前に取得した送り速度よりも上昇し且つ現在取得した送り圧力が直前に取得した送り圧力よりも低下していないとの判断をしたときには、前記制御モードを第一省エネ制御モードに設定し、該第一省エネ制御モードでは、選定されている操作入力状態に基づいて、いずれの操作入力状態においても、エンジン回転数を、定格回転数よりも低いエンジン回転数に制御することは好ましい。
【0010】
また、本発明の一態様に係るさく孔機において、前記制御部は、前記検出情報に基づいて、現在取得した送り速度が直前に取得した送り速度よりも上昇し且つ現在取得した送り圧力が直前に取得した送り圧力よりも低下したとの判断をしたときには、制御モードを第二省エネ制御モードに設定し、該第二省エネ制御モードでは、選定されている操作入力状態に基づいて、操作入力状態がフラッシング操作のみのときには、エンジン回転数を定格回転数に制御し、操作入力状態が打撃または打撃しつつフラッシングするとの操作入力のときには、エンジン回転数を定格回転数よりも低いエンジン回転数に制御することは好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御部が、さく孔状況検出手段からの検出情報に基づいてさく孔状況を判断し、その判断に応じて複数の制御モードから対応する制御モードを設定するとともに、操作入力手段からの操作入力状態に基づいて、エンジンの回転数を現在設定されている制御モードで規定するエンジン回転数に制御するので、さく孔状況および操作モードに応じた適切なエンジン回転数を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一態様に係るさく孔機の一実施形態であるクローラドリルの全体斜視図である。
【
図2】
図1のクローラドリルのガイドシェルに前後移動可能に搭載されたドリフタ部分を説明する側面視の模式図である。
【
図3】
図1のクローラドリルの制御部に係る構成を説明するブロック図である。
【
図4】制御部が実行するモード切替処理のフローチャートである。
【
図5】
図4のモード切替処理中の第一省エネ制御モードのフローチャートである。
【
図6】
図4のモード切替処理中の第二省エネ制御モードのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この油圧クローラドリル1は、トラックフレーム2を備えた走行台車5上に旋回起伏可能にブーム8が設けられており、このブーム8の先端部にはドリフタ10を搭載したガイドシェル11がチルト及びスイング可能に支持されている。
図2に示すように、ドリフタ10は、打撃機構13と回転機構9とフラッシング機構14とを備えている。ドリフタ10の前方にはシャンクロッド3が挿着され、シャンクロッド3に所定長のロッド4がスリーブ7を介して接続され、このロッド4の先端にはビット6が取付けられる。
【0014】
ドリフタ10は、ガイドシェル11に設けられた送り機構12で送りが与えられて前後に移動可能になっており、シャンクロッド3、ロッド4を介してビット6に打撃と回転とを伝達して岩石にさく孔可能になっている。なお、さく孔長がロッド4の長さより長い場合には、ロッド4の継ぎ足しと回収が必要となるので、
図1に示すように、ガイドシェル11にはロッド4の継ぎ足しと回収を行うロッド交換装置17が装備されている。
図2に示したフラッシング機構14は、ロッド6先端に圧縮空気を供給してさく孔内の繰粉を排出させる。ガイドシェル11の先端部には、
図1に示すように、さく孔口元を覆うダストポット36が設けられ、ダストポット36は不図示のダストコレクタに接続されており、排出された繰粉が捕集される。
【0015】
また、
図1に示すように、走行台車5には、上述の回転機構9、送り機構12、打撃機構13及びロッド交換装置17を駆動するための油圧駆動部15と、フラッシング機構14に圧縮空気を供給するための空気駆動部16とが装備されている。さらに、走行台車5には、ドリフタ10打撃機構13による送り圧力および送り速度を検出するさく孔状況検出手段として、送り速度検出器21および送り圧力検出器22が設けられている。
台車5上にはオペレータキャビン24が設けられ、オペレータキャビン24内の運転席付近には、手動さく孔操作用の操作レバー(不図示)等を備えた入力部31が操作入力手段として設けられている。さく孔作業を行う場合には、オペレータは、操作入力手段たる入力部31から所望するさく孔に必要な操作情報を入力する。
【0016】
台車5上のオペレータキャビン24には制御部25が設けられている。制御部25には、記憶、演算、制御の機能を有するコンピュータが用いられており、制御部25の記憶装置には、さく孔制御に所要のさく孔データのほか、上記さく孔状況検出手段からの検出情報に基づいてさく孔状況を判断するブログラム、エンジンの回転数を規定する複数の制御モードのデータ、エンジンの回転数を、現在設定されている制御モードで規定するエンジン回転数に制御するためのプログラムが予め記憶されている。
【0017】
本実施形態では、制御部25は、エンジンの回転数を規定する複数の制御モードとして、エンジンを定格回転数(本実施形態では2200rpm)で回転させる通常制御モードと、エンジンを定格回転数よりも低い回転数(本実施形態では2000rpm)で回転させる第一省エネ制御モードと、エンジンを定格回転数または定格回転数よりも低い回転数のいずれかで回転させる第二省エネ制御モードとが記憶されている。
【0018】
制御部25は、入力部31からの操作入力に応じ、例えばさく孔開始が指令されると、制御部25に記憶されているさく孔手順のプログラムデータに基づいて、ドリフタ10を前進駆動させる。また、制御部25は、入力部31から操作情報が入力されると、その入力に応じた操作入力状態を設定する。操作入力状態としては、例えばフラッシング操作のみ入力された状態、打撃操作のみ入力された状態、または打撃しつつフラッシングする操作が入力された状態などが設定されるようになっている。
【0019】
そして、制御部25は、さく孔行程にてモード切替処理が実行され、送り速度検出器21および送り圧力検出器22からの検出データ(検出情報)に基づき、回転抵抗増加やビット孔詰まり等のさく孔状況を判断し、その判断に応じて、上記複数の制御モードから対応する制御モードを設定するとともに、操作入力手段からの操作入力状態に基づいて、エンジンの回転数を現在設定されている制御モードで規定するエンジン回転数に制御する。これにより、岩質に従った最適なさく孔作業が、適切なエンジン回転数のもとで行われるようになっている。
【0020】
より詳しくは、さく孔行程中は、送り速度検出器21および送り圧力検出器22それぞれからの検出データ(検出情報)は随時(例えば0.5秒毎)に制御部25に記憶される。そして、さく孔行程の実行により、
図4に示すように、ステップS1に移行し、まず、エンジンを定格回転数(2200rpm)で回転させる通常制御モードでさく孔が開始されて続くステップS2に移行する。ステップS2では、制御部25に記憶された送り速度の情報を検出情報として読み込み、続くステップS3で、その検出情報に基づいて、現在取得した送り速度が直前に取得した送り速度よりも上昇していないと判断したとき(No)には、ステップS5に移行し、そうでないと判断したとき(Yes)には、ステップS4に移行する。ステップS5では、通常制御モードを維持してステップS2に処理を戻す。ここで、通常制御モードでは、エンジン回転数をいずれの操作入力状態においても定格回転数に維持するよう制御する。
【0021】
ステップS4では、制御部25に記憶された送り圧力の情報を検出情報として読み込み、続くステップS6で、その検出情報に基づいて、現在取得した送り圧力が直前に取得した送り圧力よりも低下していないと判断したとき(No)には、ステップS8に移行し、そうでないと判断したとき(Yes)には、ステップS7に移行する。ステップS8では、制御モードを第一省エネ制御モードに設定してステップS9に移行する。一方、ステップS8では、制御モードを第二省エネ制御モードに設定してステップS9に移行する。
【0022】
ステップS9では、制御部25に記憶された送り速度の情報を検出情報として読み込み、続くステップS10で、その検出情報に基づいて、現在取得した送り速度が直前に取得した送り速度よりも低下していないと判断したとき(No)には、ステップS2に処理を戻し、そうでないと判断したとき(Yes)には、ステップS11に移行する。ステップS11では、制御モードを通常制御モードに設定して処理をステップS2に戻す。
【0023】
次に、上記モード切替処理中のステップS8の第一省エネ制御モード、およびステップS7の第二省エネ制御モードについて説明する。
ステップS8の第一省エネ制御モードでは、
図5に示すように、操作入力手段からの操作入力情報を監視し、移行したステップS81で打撃操作が入力されていると判断したとき(Yes)にはステップS82に移行し、そうでないと判断したとき(No)にはステップS83に移行する。ステップS82では、フラッシング操作が入力されているか否かにかかわらずステップS84に移行してエンジンを定格回転数よりも低い回転数(2000rpm)で回転させて処理を戻す。ステップS83では、フラッシング操作が入力されているか否かを監視して、フラッシング操作が入力されていれば(Yes)ステップS84に移行し、そうでないときは(No)処理をステップS81に戻す。
【0024】
また、ステップS7の第二省エネ制御モードでは、
図6に示すように、操作入力手段からの操作入力情報を監視し、移行したステップS71で打撃操作が入力されていると判断したとき(Yes)にはステップS72に移行し、そうでないと判断したとき(No)にはステップS73に移行する。
ステップS72では、フラッシング操作が入力されているか否かにかかわらずステップS74に移行してエンジンを定格回転数よりも低い回転数(2000rpm)で回転させて処理を戻す。ステップS73では、フラッシング操作が入力されているか否かを監視して、フラッシング操作が入力されていれば(Yes)ステップS75に移行し、そうでないときは(No)処理をステップS71に戻す。ステップS75では、エンジンを定格回転数で回転させて処理を戻す。
【0025】
次に、この油圧クローラドリル1の作用・効果について説明する。
この油圧クローラドリル1でさく孔をする際には、オペレータは、操作入力手段である入力部31の操作により、所望するさく孔に必要な操作情報を入力する。さく孔開始が指令されると、ドリフタ10が前進駆動される。これにより、制御部25では、上述したモード切替処理(
図4参照)が実行され、さく孔状況検出手段である送り速度検出器21および送り圧力検出器22からの検出情報に基づいてさく孔状況を判断し、その判断に応じて複数の制御モードから対応する制御モードを設定するとともに、入力部31からの操作入力状態に基づいて、エンジンの回転数を現在設定されている制御モードで規定するエンジン回転数に制御する。
【0026】
本実施形態の例では、複数の制御モードとして、上述の3つの制御モードが予め設定されており、現在設定されている制御モードが通常制御モード(ステップS1またはS11)および第一省エネ制御モード(ステップS8)の場合は、入力部31からの操作入力情報にかかわらず、エンジンの回転数を現在設定されている制御モードで規定するエンジン回転数に制御する。また、現在設定されている制御モードが第二省エネ制御モード(ステップS7)の場合は、入力部31からの操作入力状態が、打撃操作且つフラッシング操作、若しくは、打撃操作であるときは、エンジンを定格回転数よりも低い回転数で回転させ(ステップS74)、操作入力手段からの操作入力状態が、フラッシング操作のみであるときは、エンジンを定格回転数で回転させる(ステップS75)。
【0027】
より具体的には、制御部25は、検出情報に基づいて、現在取得した送り速度が直前に取得した送り速度よりも上昇していないと判断したとき(ステップS3でのNo)には、制御モードを通常制御モードに設定し(ステップS5)、通常制御モードでは、エンジン回転数をいずれの操作入力状態においても定格回転数に維持する。
また、制御部25は、検出情報に基づいて、現在取得した送り速度が直前に取得した送り速度よりも上昇し(ステップS3でのYes)且つ現在取得した送り圧力が直前に取得した送り圧力よりも低下していない(ステップS6でのNo)との判断をしたときには、制御モードを第一省エネ制御モードに設定し(ステップS8)、第一省エネ制御モードでは(
図5参照)、選定されている操作入力状態に基づいて、いずれの操作入力状態においても、エンジン回転数を、定格回転数よりも低いエンジン回転数に制御する(ステップS84)。
【0028】
さらに、制御部25は、検出情報に基づいて、現在取得した送り速度が直前に取得した送り速度よりも上昇し(ステップS3でのYes)且つ現在取得した送り圧力が直前に取得した送り圧力よりも低下した(ステップS6でのYes)との判断をしたときには、制御モードを第二省エネ制御モードに設定し(ステップS7)、該第二省エネ制御モードでは(
図6参照)、選定されている操作入力状態に基づいて、操作入力状態がフラッシング操作のみのとき(ステップS73でのYes)には、エンジン回転数を定格回転数に制御し(ステップS75)、操作入力状態が打撃または打撃しつつフラッシングするとの操作入力のときには、エンジン回転数を定格回転数よりも低いエンジン回転数に制御する(ステップS74)。
【0029】
したがって、この油圧クローラドリル1によれば、オペレータがオペレータキャビン24の操作レバーやスイッチ等の入力部31で適切なエンジン回転数の設定操作を都度行わなくても、さく孔の開始から終了まで、制御部25で自動的に、さく孔状況および操作モードに応じた適切なエンジン回転数に制御することができる。そのため、さく孔状況および操作モードに応じた適切なエンジン回転数の自動設定により、最も適切な条件でさく孔をしつつ適切な省エネ運転が可能である。
なお、本発明に係るさく孔機は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 クローラドリル
2 トラックフレーム
3 シャンクロッド
4 ロッド
5 走行台車
6 ビット
8 ブーム
9 回転機構
10 ドリフタ
11 ガイドシェル
12 送り機構
13 打撃機構
14 フラッシング機構
15 油圧駆動部
16 空気駆動部
17 ロッド交換装置
21 送り速度検出器(さく孔状況検出手段)
22 送り圧力検出器(さく孔状況検出手段)
25 制御部
31 入力部