(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高圧受電設備内の変圧器の2次側から分電盤内の遮断器の1次側まで延びる第1電力線と導通状態に接続され、前記第1電力線を伝送路として電力線通信を行う第1通信装置と、
前記分電盤内の前記遮断器の2次側から延びる第2電力線に接続され、当該第2電力線を伝送路として電力線通信を行う第2通信装置と、
を含み、
前記第2通信装置は、前記変圧器から電力の供給を受ける各分電盤ごとに設けられ、
前記第1通信装置は、通信信号を受信した場合、当該通信信号に含まれる情報を含んだ新たな通信信号を生成し、当該新たな通信信号を電力線通信で送信し、
複数の前記第2通信装置はそれぞれ、通信信号を受信した場合、当該通信信号に含まれる情報を含んだ新たな通信信号を生成し、当該新たな通信信号を電力線通信および無線通信で送信し、
前記高圧受電設備内には、複数の変圧器が存在し、
前記第1通信装置は、前記高圧受電設備内において、前記複数の変圧器ごとに設けられ、
前記第1通信装置は、無線通信を行う無線通信手段をさらに有する通信ネットワーク。
前記第1通信装置は、前記複数の前記第2通信装置に含まれる、或る第2通信装置と他の第2通信装置との間で、前記或る第2通信装置と前記他の第2通信装置とをつなぐ電力線を伝送路として直接電力線通信を行ったときに、通信信号の減衰量が半分となる伝送路上の地点に接続される請求項1に記載の通信ネットワーク。
高圧受電設備内の変圧器の2次側から分電盤内の遮断器の1次側まで延びる第1電力線と導通状態に接続され、前記第1電力線を伝送路として電力線通信を行う第1通信装置と、
前記分電盤内の前記遮断器の2次側から延びる第2電力線に接続され、当該第2電力線を伝送路として電力線通信を行う第2通信装置と、
を含み、
前記第2通信装置は、前記変圧器から電力の供給を受ける各分電盤ごとに設けられ、
前記第1通信装置は、通信信号を受信した場合、当該通信信号に含まれる情報を含んだ新たな通信信号を生成し、当該新たな通信信号を電力線通信で送信し、複数の前記第2通信装置はそれぞれ、通信信号を受信した場合、当該通信信号に含まれる情報を含んだ新たな通信信号を生成し、当該新たな通信信号を電力線通信および無線通信で送信する狭域通信ネットワークと、
無線通信機能を有する複数のホスト通信装置と、
を有し、
前記高圧受電設備内には、複数の変圧器が存在し、
前記狭域通信ネットワークは、前記複数の変圧器ごとに構成され、
前記第1通信装置は、前記高圧受電設備内において、前記複数の変圧器ごとに設けられ、
前記第1通信装置は、無線通信を行う無線通信手段をさらに有し、
単一の前記狭域通信ネットワークに含まれる前記複数の前記第2通信装置は、前記複数のホスト通信装置のうち、単一のホスト通信装置とのみ通信可能に構成される広域通信ネットワーク。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、電力線を伝達する通信信号は、伝送路中の分岐を通過する度に減衰されるため、過度な分岐の通過により通信信号の信号レベルが低下すると、上述のような家電ノイズの影響を受け易くなり、通信不能となる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、通信信号の減衰による通信不能を回避することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る通信ネットワークの第1の態様は、高圧受電設備内の変圧器の2次側から分電盤内の遮断器の1次側まで延びる第1電力線と導通状態に接続され、前記第1電力線を伝送路として電力線通信を行う第1通信装置と、前記分電盤内の前記遮断器の2次側から延びる第2電力線に接続され、当該第2電力線を伝送路として電力線通信を行う第2通信装置とを備え、前記第2通信装置は、前記変圧器から電力の供給を受ける各分電盤ごとに設けられ、前記第1通信装置
は、通信信号を受信した場合、当該通信信号に含まれる情報を含んだ新たな通信信号を生成し、当該新たな通信信号を電力線通信で送信
し、複数の前記第2通信装置はそれぞれ、通信信号を受信した場合、当該通信信号に含まれる情報を含んだ新たな通信信号を生成し、当該新たな通信信号を電力線通信および無線通信で送信し、前記高圧受電設備内には、複数の変圧器が存在し、前記第1通信装置は、前記高圧受電設備内において、前記複数の変圧器ごとに設けられ、前記第1通信装置は、無線通信を行う無線通信手段をさらに有する。
【0008】
また、本発明に係る通信ネットワークの第2の態様は、上記第1の態様であって、前記第1通信装置は、前記複数の前記第2通信装置に含まれる、或る第2通信装置と他の第2通信装置との間で、前記或る第2通信装置と前記他の第2通信装置とをつなぐ電力線を伝送路として直接電力線通信を行ったときに、通信信号の減衰量が半分となる伝送路上の地点に接続される。
【0009】
また、本発明に係る通信ネットワークの第3の態様は、上記第1の態様であって、前記第1電力線は、複数に分岐されて、前記各分電盤内の各遮断器の1次側に接続され、前記第1通信装置は、前記第1電力線から分岐した複数の電力線のうち、前記各遮断器の1次側と接続されていない空きの電力線に接続される。
【0010】
また、本発明に係る通信ネットワークの第4の態様は、上記第1の態様から上記第3の態様のいずれかであって
、前記複数の変圧器ごとに設けられた各第1通信装置は、無線で互いに通信を行う。
【0011】
また、本発明に係る通信ネットワークの第5の態様は、上記第1の態様から上記第4の態様のいずれかであって、無線通信機能を有するホスト通信装置をさらに備え、前記第2通信装置は、
分電盤から電力の供給を受ける負荷の消費電力量を計測し、前記第2通信装置は、前記消費電力量に関する情報を含んだ通信信号を電力線通信および無線通信で送信し、前記ホスト通信装置は、前記消費電力量に関する情報を、前記第2通信装置を介して無線で収集する。
【0012】
また、本発明に係る広域通信ネットワークは、高圧受電設備内の変圧器の2次側から分電盤内の遮断器の1次側まで延びる第1電力線と導通状態に接続され、前記第1電力線を伝送路として電力線通信を行う第1通信装置と、前記分電盤内の前記遮断器の2次側から延びる第2電力線に接続され、当該第2電力線を伝送路として電力線通信を行う第2通信装置とを含み、前記第2通信装置は、前記変圧器から電力の供給を受ける各分電盤ごとに設けられ、前記第1通信装置
は、通信信号を受信した場合、当該通信信号に含まれる情報を含んだ新たな通信信号を生成し、当該新たな通信信号を電力線通信で送信
し、複数の前記第2通信装置はそれぞれ、通信信号を受信した場合、当該通信信号に含まれる情報を含んだ新たな通信信号を生成し、当該新たな通信信号を電力線通信および無線通信で送信する狭域通信ネットワークと、無線通信機能を有する複数のホスト通信装置とを有し、前記高圧受電設備内には、複数の変圧器が存在し、前記狭域通信ネットワークは、前記複数の変圧器ごとに構成され、
前記第1通信装置は、前記高圧受電設備内において、前記複数の変圧器ごとに設けられ、前記第1通信装置は、無線通信を行う無線通信手段をさらに有し、単一の前記狭域通信ネットワークに含まれる前記複数の前記第2通信装置は、前記複数のホスト通信装置のうち、単一のホスト通信装置とのみ通信可能に構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通信信号の減衰による通信不能を回避することが可能になる。
【0014】
本発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、各実施形態について図面を参照して説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一のまたは相応する要素を示すものとする。
【0017】
<1.第1実施形態>
[1−1.構成]
図1は、第1実施形態に係る通信システム1Aの構成を示す図である。
図2は、通信システム1Aの適用例を示す図である。
【0018】
図1に示されるように、通信システム1Aは、複数の通信装置10(10A〜10C)と、無線通信機能を有する情報収集装置5とを備えている。
【0019】
各通信装置10A〜10Cはそれぞれ、ビル、ホテル等の施設(建屋)の電力系統を構成する各電気工作物内の電力線30に接続される。
【0020】
具体的には、
図1では、複数の通信装置10A〜10Cのうち、第1通信装置10Aは、高圧受電設備100に設けられている。そして、第1通信装置10Aは、高圧受電設備100内の変圧器TNの2次側から各分電盤200A,200B内の各遮断器BRの1次側まで延びる第1電力線30Mと導通状態に接続されている。
【0021】
また、第2通信装置10Bは、変圧器TNから電力の供給を受ける第2分電盤200B(200)に設けられている。そして、第2通信装置10Bは、第2分電盤200B内の遮断器BRの2次側から延びる第2電力線30Sと導通状態に接続されている。
【0022】
また、第3通信装置10Cは、変圧器TNから電力の供給を受ける第1分電盤200A(200)に設けられている。そして、第3通信装置10Cは、第1分電盤200A内の遮断器(例えば、漏電遮断機)BRの2次側から延びる第2電力線30Sと導通状態に接続されている。
【0023】
このような構成を有する通信システム1Aを実際のビルに適用すると、例えば、
図2のような態様となる。
図2の態様では、高圧受電設備100がビルの屋上に備えられ、第1分電盤200Aおよび第2分電盤200Bはそれぞれビル内の異なるフロア(階)に備えられている。
【0024】
ここで、通信装置10(10A〜10C)の内部構成について説明する。
図3は、通信装置10の構成を示すブロック図である。
【0025】
図3に示されるように、通信装置10は、電力線30を介した電力線通信(PLC:power line communication)を行う電力線通信部11と、無線通信を行う無線通信部(無線通信手段)12と、電力線通信および無線通信を制御する制御部13と、電源部14とを備えている。
【0026】
このような構成を有する通信装置10は、受信した情報を中継する中継器としての機能(マルチホップ通信機能)を有している。具体的には、通信装置10は、電力線通信または無線通信で信号を受信した場合、受信信号に含まれる情報を含んだ新たな通信信号を制御部13によって生成し、当該新たな通信信号を電力線通信および無線通信で外部に送信する。
【0027】
このように、中継器として機能する通信装置10を、
図1のように、互いに電気的に繋がった、高圧受電設備100、分電盤200A,200B等の各電気工作物にそれぞれ配置した場合、各通信装置10は、互いに協働して通信ネットワークを構成することになる。
【0028】
また、通信装置10は、使用電力量を計測する計測手段としての機能も有している。例えば、分電盤200A,200Bに設置される通信装置10C,10Bは、分電盤200A,200Bから電力の供給を受ける照明、電気機器、および空調機などの負荷(電気負荷)で消費される電力量(消費電力量)を計測し、消費電力量に関する情報(電力量情報)を取得する。
【0029】
[1−2.通信システムの動作]
次に、通信システム1Aの動作について、
図1中の情報収集装置5が、第2分電盤200B内の第2通信装置10Bで取得された電力量情報を通信ネットワークを介して収集する場合を例にして説明する。
【0030】
まず、第2分電盤200Bに設置された第2通信装置10Bが、電力量情報を取得すると、第2通信装置10Bは、当該電力量情報を含む通信信号を電力線通信および無線通信で送信する。第2通信装置10Bから送信された通信信号は、高圧受電設備100に設置された第1通信装置10Aによって電力線通信で受信される。
【0031】
第1通信装置10Aは、受信した通信信号に含まれる電力量情報を含んだ新たな通信信号を生成し、当該通信信号を電力線通信および無線通信で送信する。第1通信装置10Aから送信された通信信号は、第1分電盤200Aに設置された第3通信装置10Cによって電力線通信で受信される。
【0032】
第3通信装置10Cは、受信した通信信号に含まれる電力量情報を含んだ新たな通信信号を生成し、当該通信信号を電力線通信および無線通信で送信する。第3通信装置10Cから送信された通信信号は、情報収集装置5によって無線通信で受信される。
【0033】
このように、第2分電盤200B内の第2通信装置10Bで取得された電力量情報は、各通信装置10A〜10Cで構成される通信ネットワークを介して伝送され、情報収集装置5に伝達されることになる。
【0034】
電力線通信を行う場合において、複数の通信装置10を用いて情報を中継して伝達することによれば、通信信号の減衰による通信不能を回避することができる。
【0035】
具体的には、電力線を伝送路にして伝達される通信信号は、伝送路中の分岐において減衰される。このような分岐における減衰について、伝送路の簡易モデルを用いて説明する。
図4は、伝送路の簡易モデルを示す図であり、
図4では、始点SPから出力された大きさ「1.0」の通信信号が各分岐を通って伝送路を伝達する様子が時系列で示されている。なおここでは、理解を容易にするために、通信信号の信号レベルを「大きさ」として表現している。
【0036】
通信信号は、伝送路中の分岐において等分配されるとともに、終端で吸収される。例えば、
図4に示されるように、タイミング1において、始点SPから大きさ「1.0」の通信信号が出力されると、タイミング2では、第1分岐点BP1に「1.0」の通信信号が位置する。そして、次のタイミング3では、「1.0」の通信信号が等分配され、始点SP、第1終端EP1および第2分岐点BP2それぞれに、「0.33」の通信信号が位置することになる。さらに、タイミング4では、第2分岐点BP2に位置していた「0.33」の通信信号が等分配され、第1分岐点BP1、第2終端EP2および第3終端EP3それぞれに、「0.11」の通信信号が位置することになる。
【0037】
このように、電力線を通る通信信号は、分岐を通過する度に減衰される。また、通信信号の減衰は、分岐だけではなく、遮断器においても発生する。
【0038】
このため、ビル等の電力系統を利用して電力線通信を行う場合において、電力線の分岐および遮断器の多い各電気工作物に通信装置10をそれぞれ配置して、各通信装置10を、受信信号に含まれる電力量情報を含んだ、新たな通信信号を送信する中継器として機能させることによれば、通信信号の減衰による通信不能を回避することができ、電力量情報を確実に伝送することが可能になる。
【0039】
例えば、
図1に示されるように、高圧受電設備100および各分電盤200A,200Bそれぞれにおいて15dB分の減衰が生じると仮定すると、第2通信装置10Bから送信された通信信号は、第3通信装置10Cに到達するまで、45dB分減衰することになる。すなわち、中継器を介さない直接通信では、通信信号は45dB減衰する。
【0040】
これに対して、第2通信装置10Bから送信された通信信号を第1通信装置10Aが中継した場合、第1通信装置10Aから送信された通信信号は、第3通信装置10Cに到達するまで、30dB分減衰することになる。
【0041】
したがって、第2通信装置10Bから送信された通信信号を第1通信装置10Aに中継させた場合、直接通信の場合に比べて、第3通信装置10Cに到達する通信信号の信号品質は、実質的に15dB分改善することになる。
【0042】
電力線通信では、電気製品から受けるノイズの影響が大きく、特に低速で行う電力線通信(低速電力線通信)の通信帯域では、モータ等の誘導負荷で発生したノイズの影響が非常に大きくなる。このため、このようなノイズに対して、通信信号の信号レベルを確保することが、通信を行う上で重要となる。
【0043】
なお、第1通信装置10Aは、第2通信装置10Bと第3通信装置10Cとの間で、第2通信装置10Bと第3通信装置10Cとをつなぐ電力線を伝送路として直接電力線通信を行ったときに、通信信号の減衰量が半分となる伝送路上の地点に接続されることが好ましい。このため、例えば、第1通信装置10Aの接続可能地点(接続可能箇所)が複数箇所存在した場合、当該複数箇所のうち、通信信号の減衰量が半分に最も近づく地点に第1通信装置10Aを接続した方がよい。
【0044】
このように、直接電力線通信を行ったときの通信信号の減衰量が半分となる地点、或いは半分に近づく地点に、中継器としての第1通信装置10Aを配置することによれば、通信信号の信号レベルを最もバランス良く確保しつつ、通信を行うことが可能になる。
【0045】
以上のように、通信システム1A(通信ネットワーク)は、高圧受電設備100内の変圧器TNの2次側から分電盤200内の遮断器BRの1次側まで延びる第1電力線30Mと導通状態に接続され、第1電力線30Mを伝送路として電力線通信を行う通信装置(第1通信装置)10Aと、分電盤200内の遮断器BRの2次側から延びる第2電力線30Sに接続され、当該第2電力線30Sを伝送路として電力線通信を行う通信装置10(第2通信装置10Bまたは第3通信装置10C)とを備えている。そして、第2電力線30Sを伝送路として電力線通信を行う通信装置10は、変圧器TNから電力の供給を受ける各分電盤200A,200Bごとに設けられ、各通信装置10A〜10Cはそれぞれ、通信信号を受信した場合、当該通信信号に含まれる情報を含んだ新たな通信信号を生成し、当該新たな通信信号を電力線通信で送信する。
【0046】
このように、各電気工作物に通信装置10をそれぞれ配置して、各通信装置10を中継器として機能させることによれば、各中継器からは、減衰のない新たな通信信号が送信されることになるので、通信信号の減衰による通信不能を回避することができ、信頼性の高い通信を実現することができる。
【0047】
<2.第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。上記第1実施形態に係る通信システム1Aでは、高圧受電設備100内の1つの変圧器から電力の供給を受ける単一の電力系統において通信ネットワークが構成されていたが、第2実施形態に係る通信システム1Bでは、複数の電力系統にまたがって通信ネットワークが構成される。なお、通信システム1Bにおいて、通信システム1Aと共通する部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
[2−1.構成]
通常、ビル等の施設では、高圧受電設備100内に複数の変圧器が設けられ、変圧器ごとに電力系統が分離されている。第2実施形態の通信システム1Bでは、異なる電力系統(異系)にまたがって、通信ネットワークが構成される。
図5は、第2実施形態に係る通信システム1Bの適用例を示す図である。
【0049】
図5に示されるように、通信システム1Bは、高圧受電設備100内の複数の変圧器TN1〜TN3それぞれの2次側において、通信装置10F〜10Hを有している。これら各通信装置10F〜10Hはそれぞれ、各変圧器の2次側に接続された電力線であって、各変圧器の2次側と導通状態の電力線に接続されている。
【0050】
高圧受電設備100内に設けられた各通信装置10F〜10Hは、いずれも
図3に示される構成を有し、無線通信により互いに通信可能である。このため、高圧受電設備100内の複数の変圧器それぞれの2次側に通信装置10F〜10Hを設けることによれば、異なる電力系統間で通信を行うことが可能になる。
【0051】
図5では、高圧受電設備100内の複数の変圧器それぞれの2次側に通信装置10を設けた上で、各階の分電盤200に通信装置10を設けることによって、ビル全体で通信ネットワークを構成した態様が示されている。詳細には、
図5では、地下1階(B1)から2階(2F)までの電力系統を利用した第1通信ネットワークと、3階(3F)から6階(6F)までの電力系統を利用した第2通信ネットワークと、7階(7F)から10階(10F)までの電力系統を利用した第3通信ネットワークとを、高圧受電設備100内の通信装置10F〜10Hによる無線通信で繋げることによって、ビル全体の通信ネットワークが構成されている。
【0052】
ビル全体の通信ネットワークは、「広域通信ネットワーク」とも称され、第1通信ネットワーク、第2通信ネットワークおよび第3通信ネットワークは、「狭域通信ネットワーク」とも称される。
【0053】
なお、
図5において、符号5は、情報収集装置を示し、符号6は、コンセント差し込み型の通信装置(タップ通信装置)を示し、符号7は、三相用の通信装置(三相通信装置)を示している。タップ通信装置6および三相通信装置7は、通信装置(正確には単相用の単相通信装置)10とほぼ同様の機能を有している。すなわち、タップ通信装置6および三相通信装置7はいずれも、無線通信および電力線通信可能に構成されて中継器として機能するとともに、電力測定機能をも有している。単相通信装置10、タップ通信装置6および三相通信装置7は、情報収集装置5に対して分散して配置されるため、単相通信装置10、タップ通信装置6および三相通信装置7は、総称して「分散通信装置」または「ローカル通信装置」とも称され、情報収集装置5は「ホスト通信装置」とも称される。
【0054】
以上のように、高圧受電設備100内の複数の変圧器それぞれの2次側に、無線通信機能を有する通信装置10F〜10Hを設けることによれば、無線によって異なる電力系統間で通信を行うことが可能になり、施設全体で通信ネットワークを構成することができる。
【0055】
また、異なる電力系統間を無線通信で接続することによれば、異なる電力系統間を電力線通信用のカプラーを用いて接続する場合に比べて、伝送路における通信信号の輻湊を緩和することができる。
【0056】
ここで、通信信号の輻輳の緩和について説明する。
図6は、通信システム1Bの概略構成を示す図である。
図7は、カプラーを用いて異なる電力系統間を接続した場合における、通信信号の輻輳の様子を示す図であり、
図8は、無線通信を利用して異なる電力系統間を接続した場合における、通信信号の輻輳の様子を示す図である。
【0057】
図6では、高圧受電設備100内の複数の変圧器TN1〜TN3それぞれの2次側に、通信装置10F〜10Hが設けられ、変圧器TN1の電力系統に情報収集装置5が接続された態様が示されている。
【0058】
図6では通信装置10F〜10Hの無線通信を利用して異なる電力系統間が接続されているが、通信装置10F〜10Hの代わりに、電力線通信用のカプラーを用いて異なる電力系統間を接続した場合を想定する。
【0059】
この場合、分電盤に設けられた各通信装置10I〜10Mから
図7に示されるような通信信号SG1〜SG5がそれぞれ出力されたとすると、通信信号SG1と通信信号SG5との間、通信信号SG2と通信信号SG5との間、通信信号SG2と通信信号SG4との間、および通信信号SG3と通信信号SG4との間で輻輳が生じることになる。
【0060】
これに対して、
図6のように、無線通信を利用して異なる電力系統間を接続した場合、
図8に示されるように、分電盤に設けられた各通信装置10I〜10Mから出力される各通信信号SG1〜SG5間の輻輳は低減されることになる。
【0061】
このように、異なる電力系統間を無線通信で接続することによれば、伝送路における通信信号の輻湊を緩和することができる。
【0062】
[2−2.他の構成例]
上記では、通信システム1Bの適用例として、
図5に示される態様を例示したが、ここでは、通信システム1Bの他の適用例について説明する。
図9〜
図11は、通信システム1Bの他の適用例を示す図である。
【0063】
まず、
図9の適用例について説明する。
【0064】
図5の適用例では、情報収集装置5が分電盤200内の通信装置10と無線通信を行う構成となっていたが、
図9の適用例では、情報収集装置5は、タップ通信装置6を介して分電盤200内の通信装置10と通信を行う。
【0065】
このように、情報収集装置5が、タップ通信装置6を介して分電盤200内の通信装置10と通信を行う構成である場合、情報収集装置5の設置位置に自由度を持たせることができる。
【0066】
次に、
図10の適用例について説明する。
【0067】
図10の適用例では、2つの情報収集装置5A,5Bが設けられている。第1情報収集装置5Aは、地下1階(B1)から2階(2F)までの電力系統を利用した第1通信ネットワークと、3階(3F)から6階(6F)までの電力系統を利用した第2通信ネットワークとに接続可能に構成されている。このため、第1情報収集装置5Aは、第1通信ネットワークを構成する各ローカル通信装置、および第2通信ネットワークを構成する各ローカル通信装置から電力量情報を収集することになる。
【0068】
一方、第2情報収集装置5Bは、7階(7F)から10階(10F)までの電力系統を利用した第3通信ネットワークに接続可能に構成されており、第2情報収集装置5Bは、第3通信ネットワークを構成する各ローカル通信装置から電力量情報を収集する。
【0069】
情報収集装置5では、設定可能なアドレス数の制約から、通信可能なローカル通信装置の台数が制限される場合がある。このため、通信相手となる、ビル内に設けられるローカル通信装置の総数が、制限台数を超える場合、
図10に示されるように、情報収集装置5を複数用いることになる。
【0070】
またこのように、複数の情報収集装置5を用いる場合、同じ電力系統に設けられたローカル通信装置(単一の狭域通信ネットワークに含まれるローカル通信装置)は、単一の情報収集装置5のみと通信可能なように、換言すれば複数の情報収集装置5と通信しないように構成される。例えば、
図10では、変圧器TN1の電力系統、および変圧器TN2の電力系統に設けられた各ローカル通信装置が、第1情報収集装置5Aのみと通信可能に構成され、変圧器TN3の電力系統に設けられた各ローカル通信装置が、第2情報収集装置5Bのみと通信可能に構成されている。
【0071】
なお、無線通信に使用する周波数は、各情報収集装置5A,5Bごとに変更することが好ましい。
【0072】
次に、
図11の適用例について説明する。
【0073】
図11の適用例では、高圧受電設備100が複数階ごとに設けられているため、各高圧受電設備100内に設けられた通信装置10による無線通信で、異なる電力系統間を接続させることが難しい。このため、
図11では、各変圧器の電力系統ごとに、情報収集装置5が設置されている。例えば、1階(1F)および2階(2F)の電力系統については、情報収集装置5Eが設置され、3階(3F)および4階(4F)の電力系統については、情報収集装置5Fが設置されている。
【0074】
このように、通信システム1Bは、施設の構成に合わせて適用することができる。
【0075】
<3.変形例>
以上、通信システム1A,1Bの各実施形態について説明したが、本発明は、上記に説明した内容に限定されるものではない。
【0076】
例えば、上記第1実施形態では、第1通信装置10Aは、高圧受電設備100内に設けられる態様を示していたが、これに限定されない。具体的には、第1通信装置10Aは、高圧受電設備100内の変圧器TNの2次側から各分電盤200A,200B内の各遮断器BRの1次側までの延びる第1電力線30Mに接続されていればよく、高圧受電設備100外に設けられていてもよい。より詳細には、第1通信装置10Aは、第1分電盤200A内の遮断器BRの1次側から延びる第1電力線30Mに接続する態様としてもよく、第2分電盤200B内の遮断器BRの1次側から延びる第1電力線30Mに接続する態様としてもよい。
【0077】
また、当該第1通信装置10Aを高圧受電設備100内に設ける場合、第1通信装置10Aは、変圧器TNの2次側に接続された電力線30Mから分岐した複数の電力線のうち、各分電盤200A,200B内の各遮断器BRの1次側と接続されていない空きの電力線に接続されることが好ましい。このような空きの電力線は、拡張用に設けられた、予備の電力線である。
【0078】
このように、高圧受電設備100内において、負荷が接続されていない空きの電力線に第1通信装置10Aを接続することによれば、分電盤200から電力の供給を受ける下流側の設備、機器等を停電させることなく、通信装置10を設置することができる。したがって、第1通信装置10Aの設置が容易になるとともに、第1通信装置10Aを設置する際の下流側の設備への影響を無くすことができる。
【0079】
また、上記各実施形態では、通信ネットワークを用いて電力量情報を伝送する態様について例示したが、これに限定されない。
【0080】
具体的には、通信装置10が電力計測手段以外に、温度、湿度、二酸化炭素濃度等の環境情報を計測する手段を備えている場合、計測された環境情報を通信ネットワークを用いて伝送する態様としてもよい。
【0081】
また、通信装置10が、電力量情報または環境情報を計測可能なセンサ機器を接続可能であった場合、センサ機器を通信装置10に接続して、電力量情報または環境情報を計測し、計測された電力情報または環境情報を通信ネットワークを用いて伝送する態様であってもよい。
【0082】
本発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、本発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本発明の範囲から外れることなく想定され得る。