(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940918
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 9/06 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
F26B9/06 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-150814(P2012-150814)
(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公開番号】特開2014-13114(P2014-13114A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】森部 智久
(72)【発明者】
【氏名】平手 禎之
【審査官】
宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭48−097773(JP,U)
【文献】
特開昭61−044280(JP,A)
【文献】
特開2002−350060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄した器具を収容する収容部と、同収容部の側方にてファンによって導入した外気をヒータにより加熱して前記収容部の下部に熱風を送出する縦方向の熱風通路とを有した乾燥室を備え、
前記熱風通路から送出した熱風を前記収容部の下部から上部に循環させて前記器具を乾燥させ、同乾燥室の上壁に形成した排気口から排気経路を通して排気させる乾燥装置であって、
前記排気口を前記熱風通路の直上に設けたことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記熱風通路を形成するとともに同熱風通路と前記収容部とを仕切るダクト部材に前記ヒータを当接させたことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記ヒータは発熱体に固定した多数の伝熱フィンを備え、同多数の伝熱フィンの間に前記ファンによって通過させた空気を加熱するものであり、
前記ヒータには前記多数の伝熱フィンの空気の流出側に前記ヒータの過熱を検出する過熱防止センサを当接して設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄した医療用器具等の器具を乾燥させる乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、調理器具等の器具を乾燥させる乾燥装置が開示されている。この乾燥装置は、箱状の本体内に洗浄した後の器具を乾燥させる乾燥室を形成し、本体内の上部には乾燥室の上側に電気ヒータと送風機とを設けた加熱室が上部隔壁により形成されている。上部隔壁には乾燥室から加熱室に空気を吸い込むための吸込口が形成されており、吸込口は上部隔壁に形成した連絡通路により本体の上壁に形成した吸気口に連通している。吸気口には乾燥装置の外部から空気を導入する吸気経路に連通している。本体内の後部には加熱室の後部に連通した後部熱風路が後部隔壁により形成され、後部隔壁には乾燥室に熱風を吹き出す後部吹出孔が形成されている。本体の上壁前部には乾燥室内の排気を排出するための排気口が形成されており、排気口には乾燥装置の外部に排気を送り出す排気通路が接続されている。
【0003】
この乾燥装置の電気ヒータと送風機とを作動させると、吸気経路を通って吸気口から導入された外気が連絡通路を通って加熱室に吸い込まれるとともに、乾燥室内の空気が吸込口から加熱室内に吸い込まれる。加熱室に吸い込まれた空気はヒータにより加熱されて熱風となり、熱風は後部熱風路を通って後部吹出孔から乾燥室内に吹き出す。乾燥室内に吹き出された熱風は乾燥室内を循環して器具を乾燥させ、乾燥室内の空気の一部は吸込孔から再び加熱室に吸い込まれるとともに、排気口から排気経路を通って乾燥装置の外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−067974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の乾燥装置においては、乾燥室内の空気を排出する排気口は乾燥室の上壁前部に形成されている。洗浄後の器具を乾燥室に収容して乾燥させると、湿った熱風が排気通路を通過するときに冷やされ、排気通路内に結露が生じることがある。排気通路に結露が生じると、結露水が排気口から乾燥室内に落下し、乾燥室に収容した洗浄後の器具が結露水により汚れることがあった。本発明は、乾燥室に収容した洗浄後の器具が排気口から落下した結露水によって汚れないようにした乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、洗浄した器具を収容する収容部と、収容部の側方にてファンによって導入した外気をヒータにより加熱して収容部の下部に熱風を送出する縦方向の熱風通路とを有した乾燥室を備え、熱風通路から送出した熱風を収容部の下部から上部に循環させて器具を乾燥させ、乾燥室の上壁に形成した排気口から排気経路を通して排気させる乾燥装置であって、排気口を熱風通路の直上に設けたことを特徴とする乾燥装置を提供するものである。
【0007】
上記のように構成した乾燥装置においては、乾燥室の排気口を熱風通路の直上に設けたので、排気経路内の結露水は排気口から熱風通路の上側に落下するようになり、収容部に収容した洗浄後の器具が結露水によって汚れない。
【0008】
上記のように構成した乾燥装置においては、熱風通路を形成するとともに熱風通路と収容部とを仕切るダクト部材にヒータを当接させれば、収容部は熱風通路から送出される熱風によって加熱されるだけでなく、ダクト部材に伝達したヒータの熱によっても加熱されることになり、ヒータの熱の伝導効率を高くすることができる。
【0009】
上記のように構成した乾燥装置においては、ヒータは発熱体に固定した多数の伝熱フィンを備え、多数の伝熱フィンの間にファンによって通過させた空気を加熱するものであり、ヒータには多数の伝熱フィンの空気の流出側にヒータの過熱を検出する過熱防止センサを当接して設けようにすれば、伝熱フィンの温度と、伝熱フィンを通過して加熱された空気の温度とを検出することができ、ヒータの過熱を早期に検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の乾燥装置の一実施形態の扉を開いた状態の正面図である。
【
図2】
図1の前後方向の中間部の縦方向断面の斜視図である。
【
図3】
図1のA−A線にてダクト部材28と仕切板34とを取り外した状態の縦方向の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の乾燥装置の一実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示したように、乾燥装置10は、洗浄した器具を収容する収容部21と、収容部21の側方にてファン27によって導入した外気をヒータ31により加熱して収容部21の下部に熱風を送出する縦方向の熱風通路22とを有した乾燥室20を備え、熱風通路22から送出した熱風を収容部21の下部から上部に循環させて器具を乾燥させ、乾燥室20の上壁に形成した排気口20cから排気管33を通して排気させるものである。この乾燥装置10においては、乾燥室20の排気口20cを熱風通路22の直上に設けた。
【0012】
図1に示したように、乾燥装置10は、前面が開口したハウジング11の左側部の上側部に洗浄装置で使用する洗剤を収容する洗剤収容部12と、左側部の下側部にファン27により外気を導入するための外気導入室13と、残る部分に板金部材により形成した前面が開口した箱形状の乾燥室20とを備えている。ハウジング11には乾燥室20の前面開口を開閉可能に覆う扉14が設けられている。
【0013】
図2に示したように、乾燥室20は、左側部を除く大部分に洗浄装置により洗浄した器具を入れたトレーTを多段状に収容する収容部21と、左側部に収容部21の下部に熱風を送出する熱風通路22とを備えている。
【0014】
乾燥室20内には、左側部の前後にトレーTの左端下部を支持するレール24を取り付けるための棚柱23,23と、右側部の前後にトレーTの右端下部を支持するレール25を取り付けるための棚柱(図示省略)が設けられている。乾燥室20は左側部の棚柱23,23と右側部の棚柱(図示省略)との間を収容部21としている。
【0015】
図2及び
図3に示したように、棚柱23,23は、乾燥室20の左側壁側が開いた略コ字形をしており、収容部21側にレール24を上下方向に位置調節可能に取り付けるための取付孔23a,23aが多数形成されている。また、両棚柱23,23の中間部より下側には互いに向き合う壁面に切欠き部(図示しない)が形成されている。乾燥室20の右側部の前後に設けた棚板にも、左側部の棚柱23,23に形成した取付孔23a,23aと同じ高さ位置にレール25を上下方向に位置調節可能に取り付けるための多数の取付孔が形成されている。
【0016】
図2に示したように、レール24は左側壁に沿って延びる垂直部の下端を内側に向けて折り曲げた断面L字形をしており、レール24の前後に設けた係止爪を棚柱23の取付孔23aに係止させて高さ位置調節可能に取り付けられている。同様に、レール25は右側壁に沿って延びる垂直部の下端を内側に折り曲げた左右を反対にした断面L字形をしており、レール25の前後に設けた係止爪を乾燥室20の右側部の棚柱の取付孔に係止させて高さ位置調節可能に取り付けられている。なお、レール24,25の垂直部の上部は乾燥室20の左側に向けて斜めに折り曲げられている。
【0017】
乾燥室20の左側壁には、中間部より少し下側に送風口20aと吸込口20bとが形成されている。外気導入室13には、乾燥室20の左側壁の送風口20aと吸込口20bとが形成された位置にファンケース26が設けられており、ファンケース26内にはモータにより駆動するファン27が設けられている。また、ファンケース26には外気導入室13の外気を導入する吸気口26aが設けられている。外気導入室13には吸気口26aの左側にエアフィルター26bが設けられている。なお、外気導入室13の前面パネルにはハウジング11外から外気導入室13に外気を導入する吸気口11aが形成されている。
【0018】
図2に示したように、乾燥室20の左側壁には送風口20aの上下に熱風通路22を形成する2つのダクト部材28,29が固定されている。ダクト部材28,29は熱伝導性の高いステンレス板材を用いたものである。2つのダクト部材28,29は、送風口20aの上下側から水平に延びる水平部28a,29aと、各水平部28a,29aの先端から下方に延びる垂直部28b,29bとからなる。前後の棚柱23,23の間にてこれらダクト部材28,29と間に形成される空間は上述した熱風通路22となっている。送風口20aの上側に固定されたダクト部材28の垂直部28bは熱風通路22と収容部21の下部とを仕切っている。送風口20aの下側に固定されたダクト部材29の下端部は乾燥室20の左側壁側に折り曲げられて閉じられている。下側のダクト部材29と乾燥室20の左側壁との間の空間は、吸込口20bに連通するとともに、前後両側にある棚柱23,23の図示しない切欠き部により棚柱23,23の内部空間に連通している。下側のダクト部材29と乾燥室20の左側壁との間の空間は、取付孔23a,23aから棚柱23,23の内部空間に吸い込んだ収容部21内の空気を吸込口20bから再びファンケース26に戻すための循環通路30となっている。
【0019】
図2〜
図4に示したように、ダクト部材28,29の水平部28a,29aの間にはヒータ31が設けられている。ヒータ31は取付ブラケット31aを介してダクト部材28,29の水平部28a,29aに当接して取り付けられている。ヒータ31は発熱体を内蔵したセラミック体にアルミ製の多数の伝熱フィンを固定したものであり、ファン27により吹き付けた空気を多数の伝熱フィンの間を通過させて熱風とするものである。ヒータ31の取付ブラケット31aには過熱防止センサ32が伝熱フィンに当接した状態で取り付けられている。過熱防止センサ32はファン27により吹き付けた空気が伝熱フィンを通過して流出する側に取り付けられている。
【0020】
図2に示したように、乾燥室20の上壁には熱風通路22の直上に排気口20cが形成されている。排気口20cにはハウジング11の左側部の上部に配設された排気管(排気経路)33が接続され、排気管33の導出端部はハウジング11の前面上部に設けた排気窓11bに接続されている。また、乾燥室20の左側部には、前後の棚柱23,23の間に熱風通路22の上側と収容部21とを仕切る仕切板34が設けられている。
【0021】
上記のように構成した乾燥装置10の作動について説明する。ファン27とヒータ31とを作動させると、
図2にて矢印により空気の流れを示したように、ハウジング11外から吸気口11aを通って外気導入室13に流入した外気が吸気口26aを通ってファンケース26内に導入されるとともに、収容部21から取付孔23a,23aを通って棚柱23,23内に吸い込まれた空気が棚柱23,23の切欠き部から循環通路30を通って吸込口20bからファンケース26内に導入される。ファンケース26内に導入された空気はファン27によって送風口20aから熱風通路22に送り出され、ヒータ31の伝熱フィンの間を通過して加熱されて熱風となり、熱風通路22の下端開口から収容部21の下部に導入される。
【0022】
熱風通路22の下端開口から収容部21の下部に導入された熱風は、収容部21の下部から乾燥室20の右側壁側に流れ、乾燥室20の右側壁に沿って上昇し、乾燥室20の上壁付近で収容部21の左側部側に流れ、収容部21の左側部に沿って再び収容部21の下部に流れ落ちて収容部21内を循環する。このとき、レール25の上部はトレーT側に斜めに折り曲げられているので、乾燥室20の右側壁に沿って上昇する熱風の一部はトレーT側に流れ、トレーTに入れた器具を早期に乾燥させることができる。また、レール24の上部は下側になるにつれてトレーT側に斜めに折り曲げられているので、収容部21の左側部に沿って流れ落ちる熱風の一部はトレーT側に流れ、トレーTに入れた器具を早期に乾燥させることができる。
【0023】
また、収容部21内の空気の一部は取付孔23a,23aから棚柱23,23内に吸い込まれ、棚柱23,23の切欠き部から循環通路30を通って吸込口20bから再びファンケース26内に戻る。また、ファンケース26の吸気口26aから導入した外気に応じて、収容部21の空気は乾燥室20の排気口20cから排気管33を通ってハウジング11外に排出される。
【0024】
上記のように構成した乾燥装置10においては、ファン27とヒータ31とを作動させて、乾燥室20の収容部21に収容した洗浄後の器具を乾燥させたときに、湿った熱風が乾燥室20の排気口20cから排気管33を通過するときに冷やされ、排気管33内に結露が生じることがある。乾燥室20の排気口20cを収容部21の上側でなく熱風通路22の直上に設けたので、排気管33内の結露水が排気口20cから乾燥室20内に落下しても、結露水は熱風通路22を形成するダクト部材28の水平部28aの上側に落下するので、収容部21に収容した洗浄後の器具が結露水によって汚れない。なお、ダクト部材28の水平部28aの上側に落下した結露水はヒータ31による伝熱によりすぐに蒸発することになる。
【0025】
また、ダクト部材29とともに熱風通路22を形成したダクト部材28は乾燥室20を収容部21と熱風通路22とに仕切っており、このダクト部材28には熱風通路22内で空気を加熱するヒータ31が取付ブラケット31aを介して当接して取り付けられている。乾燥室20の収容部21は、熱風通路22から送出される熱風によって加熱されるだけでなく、ダクト部材28に伝達したヒータ31の熱によっても加熱されることになり、ヒータ31の熱の伝達効率を高くすることができ、省エネルギーとなる。
【0026】
また、乾燥室20の左側壁とともに循環通路30を形成したダクト部材28には熱風通路22内で空気を加熱するヒータ31が取付ブラケット31aを介して当接して取り付けられている。乾燥室20の収容部21の空気の一部は、取付孔23a,23aから棚柱23,23内に吸い込まれ、棚柱23,23の切欠き部から循環通路30を通って吸込口20bからファンケース26内に戻り、再びファン27によって熱風通路22に送出される。このとき、循環通路30を通過する空気は、ダクト部材29に伝達したヒータ31の熱によって予め加熱されることになり、ヒータ31の熱の伝達効率を高くすることができ、省エネルギーとなる。
【0027】
また、電源が突然オフとなって、ファン27とヒータ31との作動が停止したときに、ファン27による送風が停止して、ヒータ31の余熱により過熱状態になるおそれがあるが、ヒータ31の熱がダクト部材28,29に伝達されることで、ヒータ31の異常過熱を防止することができる。なお、ダクト部材28,29による放熱の効率を高めるために、ダクト部材28,29に放熱シリコンシートや放熱コンパウンドを付けて、ダクト部材28,29の放熱の効率を高めるようにしてもよい。
【0028】
ヒータ31の取付ブラケット31aには過熱防止センサ32が取り付けられており、過熱防止センサ32の感温部を伝熱フィンのファン27による空気の流出側に当接させている。これにより、過熱防止センサ32は伝熱フィンの温度と、伝熱フィンを通過して加熱された空気の温度とを検出することができ、ヒータの過熱を早期に検出することができ、図示しない制御装置によりヒータ31の作動を早期に停止させることができる。
【0029】
上記の実施形態においては、乾燥室20の熱風通路22を収容部21の左側に配置したが、本発明はこれに限られるものでなく、熱風通路22を収容部21の右側または後側に配置したものであっても同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
上記の実施形態においては、器具として医療用器具について説明したが、本発明は、医療用器具以外に例えば食器等を洗浄するものであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
10…乾燥装置、20…乾燥室、20c…排気口、21…収容部、22…熱風通路、27…ファン、28…ダクト部材、31…ヒータ、32…過熱防止センサ、33…排気経路(排気管)。