【文献】
野見山 史敏,ベータ分布の特性を用いた時期別の全天日射量予測モデルに関する一検討,平成24年電気学会全国大会講演論文集,2012年 3月 5日,pp.42-43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
気象現象によって変化する自然エネルギーから得られたエネルギー量を電気エネルギーに変換して電力消費機器に供給するとともに蓄電池に充電する発電システムであって、前記自然エネルギーから得られる単位時間当たりの自然エネルギー量の予測情報を用いて前記蓄電池の充放電を制御する発電システムと、
前記自然エネルギーに影響を与える気象現象に関する気象データを提供する気象データ提供センタとを備えた自然エネルギー予測システムに適用され、
前記発電システム及び前記気象データ提供センタに通信可能に接続され、前記気象データ提供センタからの気象データを用いて前記自然エネルギー量を予測する予測手段を備えた自然エネルギー量予測装置において、
前記自然エネルギー量の予測分布が非対称な確率分布によって表されるものであり、
前記予測手段は、
前記発電システムが設置された地域における気象データを、前記気象データ提供センタから前記自然エネルギー量の変化に関連する説明変数として取得し、
前記取得した説明変数を用いて、前記確率分布の期待値に対応する第1パラメータ及び前記確率分布の拡がりに関連する第2パラメータを算出し、
前記算出した第1パラメータ及び第2パラメータを用いて前記自然エネルギー量の予測分布を表す前記確率分布を計算し、
前記計算した確率分布に基づいて、前記自然エネルギー量の予測値を予測し、
前記予測した自然エネルギー量の予測値を前記自然エネルギーの予測情報として前記発電システムに出力することを特徴とする自然エネルギー量予測装置。
前記発電システムが、前記自然エネルギー量の予測情報に基づいて発電量を予測し、前記予測した発電量に応じて前記蓄電池の充放電を制御する自然エネルギー予測システムに適用される請求項1に記載した自然エネルギー量予測装置。
【発明の概要】
【0006】
ところで、上記特許文献1に示された従来の情報処理装置等や上記特許文献2に示された発電量予測装置等においては、過去の類似日を複数選びそれらの統計を取ることで予測値の確率分布(例えば、多次元正規分布やベータ分布等)を求めたり、或いは、過去データにおける異なる時刻の間の統計的相関等を取ることで、発電機の発電量に関する予測値を算出するようになっている。しかしながら、例えば、上記特許文献1に示された従来の情報処理装置等においては、類似度の基準を厳密にすると、類似日を多く選ぶことができず、基準を緩和すると関係のない日も選ばれるようになる。又、類似の日がない場合には、予測値やその分布を求めることができなくなる。
【0007】
又、例えば、上記特許文献1に示された従来の情報処理装置等において、多次元正規分布を用いる場合には、この多次元正規分布では予測誤差の非対称性が考慮されないため、誤予測(大外れを予測する)を精度よく計算することが難しくなる。この点に関し、例えば、上記特許文献1に示された従来の情報処理装置等において、確率分布としてベータ分布を用いることが可能であるとの記載はあるが、具体的な計算内容等については開示されていない。
【0008】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的は、自然エネルギーから得られる単位時間当たりのエネルギー量の予測値をその予測誤差の分布も含めて精度よく計算することができる自然エネルギー量予測装置を提供することにある。
【0009】
上記目的を達成するための本発明による自然エネルギー量予測装置は、気象現象によって変化する自然エネルギーから得られたエネルギー量を電気エネルギーに変換して電力消費機器に供給するとともに蓄電池に充電する発電システムであって、前記自然エネルギーから得られる単位時間当たりの自然エネルギー量の予測情報を用いて前記蓄電池の充放電を制御する発電システムと、前記自然エネルギーに影響を与える気象現象に関する気象データを提供する気象データ提供センタとを備えた自然エネルギー予測システムに適用され、前記発電システム及び前記気象データ提供センタに通信可能に接続され、前記
気象データ提供センタからの気象データを用いて前記自然エネルギー量を予測する予測手段を備えている。
【0010】
本発明によるエネルギー量予測装置の特徴は、前記自然エネルギー量の予測分布が非対称
な確率分布によって表されるものであり、前記予測手段は、前記発電システムが設置された地域における気象データを、前記気象データ提供センタから前記自然エネルギー量の変化に関連する説明変数として取得し、前記取得した説明変数を用いて、前記確率分布の期待値に対応する第1パラメータ及び前記確率分布の拡がりに関連する第2パラメータを算出し、前記算出した第1パラメータ及び第2パラメータを用いて前記自然エネルギー量の予測分布を表す前記確率分布を計算し、前記計算した確率分布に基づいて、前記自然エネルギー量の予測値を予測し、前記予測した自然エネルギー量の予測値を前記自然エネルギーの予測情報として前記発電システムに出力することにある。
【0011】
この場合、前記発電システムは、例えば、前記自然エネルギー量の予測情報に基づいて発電量を予測し、前記予測した発電量に応じて前記蓄電池の充放電を制御する。又、この場合、前記説明変数として、例えば、気温、気圧、湿度、降水量、降雨量、降雪量、積雪量、低層雲量、中層雲量、高層雲量、風向、風速、上昇流、天候、快晴度、エアマス及び大気外日射量の各気象予測値、並びに、予測実施時刻から予測対象時刻までのリードタイムのうちの少なくとも一つを取得して用いることができる。そして、この場合、更に、前記各気象予測値、前記リードタイム、並びに、現況及び過去に観測された気象観測値のうちの少なくとも一つを取得して用いることができる。又、この場合、前記自然エネルギー量の予測分布を表す非対称
な確率分布を、ベータ分布又はゼロ過剰ベータ分布とすることができる。又、これらの場合、前記自然エネルギーとして、太陽光エネルギー、太陽熱エネルギー、風力エネルギー、潮流エネルギー及び水流エネルギーのうちの少なくとも一つの自然エネルギーとすることができる。
【0012】
又、これらの場合、前記予測手段は、前記計算した確率分布にて最も頻繁に出現する最頻値を計算し、前記計算した最頻値、及び、前記確率分布にて前記最頻値に準じて頻繁に出現する値のうちの少なくとも前記最頻値を前記自然エネルギー量の予測値とすることができる
。
【0013】
又、これら場合、前記予測手段は
、少なくとも前記計算した確率分布にて最も頻繁に出現する最頻値を含み前記確率分布にて所定の頻度により出現する値の集合
である区間を、前記自然エネルギー量の予測値の信頼区間として決定し、前記決定した信頼区間を前記自然エネルギー量の予測情報に含めて前記発電システムに出力することができる
。
【0014】
又、これらの場合、前記予測手段は、前
記計算した確率分布に基づいて、前記自然エネルギー量の予測値の信頼区間外であって、前記自然エネルギー量の予測値に反して、実測された実自然エネルギー量が予め設定された下限側の自然エネルギー量以下となる、又は、前記実自然エネルギー量が予め設定された上限側の自然エネルギー量以上となる誤予測の発生する確率を計算
し、前記計算した誤予測の発生する確率を前記自然エネルギー量の予測情報に含めて前記発電システムに出力することができる
。
【0015】
これらによれば、予測手段は、発電システムが設置された地域における気象データを、気象データ提供センタから前記自然エネルギー量の変化に関連する説明変数として取得し、前記取得した説明変数を用いて、分布の期待値に対応する第1パラメータ及び分布の拡がりに関連する第2パラメータを算出し、これらの第1パラメータ及び第2パラメータを用いて計算される非対称
な確率分布、具体的には、ベータ分布やゼロ過剰ベータ分布等によって自然エネルギー量の予測分布を表し、この予測分布すなわち確率分布に基づいて自然エネルギー量の予測値を算出することができる。これにより、気象予測値等の説明変数を用いてパラメータを算出することができるため、連続変数同士の間の関係を、例えば、関数によって記述できる回帰分析で確率分布のパラメータを記述することができ、過去データから類似日を選ぶことなく、任意の気象条件に対して予測分布(発生分布)を計算することができる。
【0016】
又、分布の期待値に対応する第1パラメータ及び分布の拡がりに関連する第2パラメータを用いて、非対称
な確率分布を計算することができるため、例えば、太陽光エネルギーから得られる単位時間当たりのエネルギー量としての日射量のように、「0」を下限とし、かつ、大気外日射量を上限とする有限区間の値を取る場合であっても、分布の裾について正確に表現することが可能となる。従って、予測値が大きく外れる誤予測を極めて精度よく計算して適切に予見することができる。
【0017】
又、確率分布における最頻値を自然エネルギー量の予測値とすることができるため、非対称
な確率分布に予測誤差が従う場合には、事象の起こり易さを的確に表すことができる。又、最頻値を含むように信頼区間を決定することができるため、極めて分かり易く予測を提示することができる。
【0018】
従って、本発明による自然エネルギー量予測装置によれば、自然エネルギー量の予測値をその予測誤差の分布を含めて極めて精度よく計算することができる。そして、自然エネルギー量の予測値を誤予測する(予測値が大外れする)ような稀な現象が発生する確率も定量的に精度よく予測することができる。
【0019】
本発明による自然エネルギー量予測装置の他の特徴は、前記予測手段が、異なる時点における前記自然エネルギー量の予測分布間の相関を表す
第3パラメータを、前記異なる時点のそれぞれに対応して取得した説明変数を用いて算出し、前記算出した
第3パラメータを用いて、前記異なる時点における前記自然エネルギー量の予測分布間の相関を与える接合関数を計算し、
前記算出した第3パラメータに応じて前記異なる時点における前記自然エネルギー量の予測分布間に相関が認められるとき、前記計算した接合関数を用いて、前記異なる時点における前記自然エネルギー量の予測分布のうち、先の時点における前記自然エネルギー量の予測分布に対応して実測された実自然エネルギー量を後の時点にて予測されている前記自然エネルギー量の予測値に反映させることにもある
。
【0021】
これらによれば、異なる時点における自然エネルギー量の予測分布間の相関を表す
第3パラメータを異なる時点の説明変数を用いて算出することができ、この
第3パラメータを用いて、異なる時点における自然エネルギー量の予測分布間の相関を与える接合関数を計算することができる。そして、
第3パラメータの大きさすなわち相関の強さに応じて、例えば、時間的に連続する時点間の相関が認められるときには、先の時点における前記自然エネルギー量の予測分布に対応して実測された実自然エネルギー量を後の時点にて予測されている自然エネルギー量の予測値に反映させ
ることができる。
【0022】
従って、この場合においても、自然エネルギー量の予測値をその予測誤差の分布を含めて極めて精度よく計算することができる。そして、自然エネルギー量の予測値を誤予測する(予測値が大外れする)ような稀な現象が発生する確率も定量的に精度よく予測することができる。
【0023】
更に、これらの場合、例えば、前記自然エネルギー量が前記太陽光エネルギーから得られる単位時間当たりの日射量であるとき、前記予測手段は、前記確率分布によって表される前記日射量の予測分布及び前記確率分布に基づいて予測した前記日射量の予測値を用いて、前記太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電システムの発電量分布及び発電量を予測
し、前記予測し
た発電量分布及
び発電量に基づき、前記太陽光発電システムと、他の発電システム、蓄エネルギー装置及び電力消費機器とを協調させることもできる。これらによれば、極めて効率よく自然エネルギーである太陽光エネルギーから変換される(発電される)電気エネルギーを利用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る自然エネルギー量予測装置について図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、自然エネルギー量予測装置の適用可能な自然エネルギー量予測システムの概略構成を示している。ここで、自然エネルギー量とは、自然エネルギーから得られる単位時間当たりのエネルギー量である。そして、本実施形態においては、自然エネルギーである太陽光エネルギーから得られる単位時間当たりのエネルギー量として日射量を予測して提供する。このため、本実施形態における自然エネルギー予測システムは、例えば、家屋等の建物に設置された太陽光発電システム10と、自然エネルギー量予測装置を備えた管理センタ20と、自然エネルギー(より具体的には、自然エネルギー量である日射量)に影響を与える気象現象に関する各種気象データを提供する気象データ提供センタ30とを備えて構成される。そして、この自然エネルギー量予測システムにおいては、複数の家屋等に設置された各太陽光発電システム10、管理センタ20及び気象データ提供センタ30が、例えば、インターネット回線網や携帯電話回線網のネットワーク40によって互いに通信可能に接続されている。
【0027】
家屋等に設置される太陽光発電システム10は、
図2に示すように、一般に家屋等の南側の屋根等に設置されていて太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池パネル11(或いは、太陽電池モジュール11)を複数枚、直・並列接続して形成した太陽電池アレイ12を備えている。太陽電池アレイ12は、周知の逆流防止素子及び直流遮断器を有する接続箱13を介してパワーコンディショナー14に接続されている。パワーコンディショナー14は、太陽電池アレイ12(各太陽電池パネル11)から出力される直流発電電力を交流変換する変換部を有する、所謂、インバータである。そして、パワーコンディショナー14は外部の系統電力と接続される分電盤15に接続され、パワーコンディショナー14によって変換された交流電力が家庭内で使用される電力消費機器としての各種電気機器に供給される。
【0028】
又、太陽光発電システム10は、パワーコンディショナー14に接続された蓄エネルギー装置としての蓄電装置16を備えている。蓄電装置16は、
図2に示すように、例えば、リチウムイオン電池等の蓄電池16aと、パワーコンディショナー14を介して供給される電気エネルギーを蓄電池16aに充電するとともに、蓄電池16aに充電された電気エネルギーを放電させてパワーコンディショナー14及び分電盤15を経由して各種電気機器に電力を供給する充放電ユニット16bとを備えている。
【0029】
更に、太陽光発電システム10は、パワーコンディショナー14に接続された発電モニタ装置17を備えている。発電モニタ装置17は、太陽電池アレイ12(各太陽電池パネル11)によって発電された発電量を取得してモニタするとともに、蓄電装置16の充放電ユニット16bと協働して蓄電池16aへの余剰電力の充電及び使用電力逼迫時の放電を制御するものである。
【0030】
このため、発電モニタ装置17は、
図3に示すように、電子制御ユニット17a、通信ユニット17b、記憶ユニット17c及び報知ユニット17dを備えている。電子制御ユニット17aは、CPU、ROM、RAM等を主要構成部品とするマイクロコンピュータであり、各種プログラムを実行することにより、発電モニタ装置17の動作を統括的に制御する。通信ユニット17bは、ネットワーク40に接続して管理センタ20との通信を実現するものである。
【0031】
記憶ユニット17cは、ハードディスクや半導体メモリ等の記憶媒体及び同記憶媒体のドライブ装置を含むものである。そして、記憶ユニット17cは、電子制御ユニット17aが発電モニタ装置17の作動を統括的に制御するにあたって必要なプログラム及びデータを予め記憶している。更に、記憶ユニット17cは、太陽光発電システム10の仕様(具体的には、太陽電池アレイ12(太陽電池パネル11)の方位角、傾斜角、温度特性、パワーコンディショナー14の変換特性等)を表す仕様データ、太陽光発電システム10の設置場所(具体的には、経度及び緯度等)を表す地域データ、及び、太陽光発電システム10を識別するために予め割り当てられた識別データを所定記憶位置に記憶するとともに、太陽光発電システム10によって発電された日々の発電量の実績等を時系列的に記憶した発電履歴データ等を更新可能に所定記憶位置に記憶する。
【0032】
報知ユニット17dは、タッチ入力機能付きの表示ディスプレイやスピーカ等から構成されている。そして、報知ユニット17dは、電子制御ユニット17aによる制御に従って、表示ディスプレイの画面上に文字、図形等を表示したり、音声をスピーカから出力して、現在の発電量や過去の発電量、後述するように管理センタ20から提供される予測日射量を表す予測情報に基づく予測発電量等を報知するものである。尚、ユーザは、表示ディスプレイのタッチ入力機能を利用して、太陽光発電システム10の作動状態を適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
【0033】
管理センタ20は、太陽光エネルギーから得られる自然エネルギー量である日射量を精度よく予測して提供するものである。このため、管理センタ20は、
図4に示すように、サーバ21と通信装置22とを備えている。
【0034】
サーバ21は、制御装置21a、記憶装置21b及び通信インターフェース21cを備えている。制御装置21aは、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするものであり、自然エネルギー量である日射量を予測するように管理センタ20(より具体的にサーバ21)の動作を統括的に制御する。記憶装置21bは、ハードディスクや半導体メモリ等の記憶媒体及び同記憶媒体のドライブ装置を含むものであり、各種プログラム及び各種データを記憶している。通信インターフェース21cは、管理センタ20内に構築された通信回線(例えば、LAN回線等)に接続するためのインターフェースである。又、記憶装置21bは、太陽光発電システム10の発電モニタ装置17から送信された仕様データ、地域データ及び識別データを互いに関連付けて検索可能に記憶するデータベース21dを備えている。尚、個々の発電モニタ装置17から送信される仕様データ、地域データ及び識別データについては、例えば、管理センタ20との最初の通信時に送信されて検索可能に記憶される(登録される)ようになっており、次回以降の通信では省略することが可能である。通信装置22は、ネットワーク40に接続されて、太陽光発電システム10の発電モニタ装置17及び気象データ提供センタ30と通信するものである。
【0035】
気象データ提供センタ30は、全国に設置された気象観測装置によって観測された種々の気象データを提供するものである。ここで、本実施形態においては、自然エネルギーである太陽光エネルギーすなわち日射量の変化(変動)に関連する各観測地点における気象データとして、少なくとも、高度毎及び気圧面毎の雲量、風向、風速、上昇流、気温、気圧及び相対湿度や、天候、降雨量、降雪量、積雪量、快晴度等が気象観測装置によって観測されて提供される。そして、気象データ提供センタ30は、観測された上記種々の気象データをネットワーク40を介して管理センタ20に提供する。
【0036】
次に、上記のように構成した管理センタ20が自然エネルギー量である日射量を予測する動作を、サーバ21の制御装置21a内にてコンピュータプログラム処理により実現される機能を表す
図5に示す機能ブロック図を用いて詳細に説明する。制御装置21aは、入力部51と、第1パラメータ計算部52と、第2パラメータ計算部53と、確率密度関数計算部54と、最頻値計算部55と、信頼区間計算部56と、誤予測確率計算部57と、出力部58とからなる予測処理部50を備えている。
【0037】
取得手段としての入力部51は、太陽光発電システム10の発電モニタ装置17及び気象データ提供センタ30から各種情報及び各種気象データを入力する。第1パラメータ計算部52は、日射量の予測分布を表すものであって非対称な分布
を許容する確率密度分布(以下、単に、確率分布とも称呼する。)における期待値に対応するパラメータを求める。パラメータ計算手段としての第2パラメータ計算部53は、非対称な分布
を許容する確率密度分布における拡がりに関連するパラメータを求める。確率分布計算手段としての確率密度関数計算部54は、非対称な分布
を許容する確率密度関数を計算して日射量の確率密度分布を計算する。最頻値計算手段としての最頻値計算部55は、確率密度分布に基づいて予測される日射量(以下、予測日射量と称呼する。)の最頻値を計算する。信頼区間計算手段としての信頼区間計算部56は、確率密度分布における最頻値を含む信頼区間を計算する。誤予測確率計算手段としての誤予測確率計算部57は、予測日射量に反して実際の日射量が信頼区間外にて所定の日射量未満となる(又は、所定の日射量よりも大きくなる)ような誤予測が発生する確率を計算する。出力部58は、日射量の予測に関連する予測情報を太陽光発電システム10の発電モニタ装置17に出力する。
【0038】
ここで、本実施形態においては、自然エネルギーである太陽光エネルギーから得られる単位時間当たりのエネルギー量である日射量の予測分布を求めるために、非対称な分布
を許容する確率分布としてベータ分布を採用する。以下、本実施形態にて採用するベータ分布を説明する。
【0039】
一般に、2つの正のパラメータ(p,q)を用いて予測値yの分布を求めるベータ分布は下記式1により表され、この場合の予測値yの確率密度分布f(y)(又は、確率密度関数f(y))は下記式2により表される。
【数1】
【数2】
ただし、前記式2中のΒ(p,q)は、2つの正のパラメータ(p,q)を用いたベータ関数を表す。
【0040】
又、前記式2により表される非対称の分布を許容する確率密度分布f(y)の期待値E[y]及び分散Var[y]は、一般に下記式3,4により表される。
【数3】
【数4】
【0041】
本実施形態では、上記のように一般に定義されるベータ分布における2つの正のパラメータ(p,q)を用いて、新たなパラメータ(μ,φ)としてμ=p/(p+q)、φ=p+qを設定し、これらのパラメータ(μ,φ)を用いたベータ分布を採用する。ただし、μは0<μ<1を満たし、φはφ>0を満たす。これにより、本実施形態におけるベータ分布は下記式5により表され、予測値yの確率密度分布f(y)は前記式2に従って下記式6により表される。
【数5】
【数6】
【0042】
そして、前記式6により表される確率密度分布f(y)の期待値E[y]及び分散Var[y]は前記式3,4に従って下記式7,8により表される。
【数7】
【数8】
ここで、前記式7からも明らかなようにμは期待値E[y]を表し、前記式8及び
図6(a),(b)に示すようにφはその値が大きくなるほど分散Var[y]が小さくなることから分布の拡がりを表す。
【0043】
更に、このパラメータ(μ,φ)を、予測値yの変化(変動)に関連する説明変数xの関数としてμ(x)、φ(x)として表現することにより、下記式9に示すように、所定の説明変数xから予測値yの確率密度分布f(y)を求めることが可能となる。
【数9】
【0044】
尚、μ(x)及びφ(x)については、説明変数xの関数として、線形関数、べき乗関数、指数関数、ロジット関数、プロビット関数、二重指数関数等のパラメトリックに表されるもの、或いは、説明変数xに対する数表(所謂、マップ)のようにノンパラメトリックに表されるもののいずれであってもよい。ただし、この場合、説明変数xの取り得る値の範囲で正の値を取る関数であることが好ましい。具体的に、下記式10〜12に示すように、パラメトリックな数式を例示しておく。尚、φ(x)については、過去の計算結果履歴等を記憶しておき、この計算結果に基づく定数とすることも可能である。この場合には、計算量を減らすことができて、計算負荷を軽減することが可能となる。
【数10】
【数11】
【数12】
【0045】
このような説明変数xの関数として表されるパラメータμ(x)及びパラメータφ(x)
を用いて計算されるベータ分布(確率密度分布f(y))を採用して、管理センタ20のサーバ21は、予測値yである予測日射量yを予測する。以下、具体的に説明する。
【0046】
入力部51は、気象データ提供センタ30から日射量の変化(変動)に関連する説明変数xの対象となる各種気象データを取得する。又、入力部51は、予測情報を提供する各太陽光発電システム10の発電モニタ装置17から地域データ及び識別データを取得する。これにより、入力部51は、地域データに基づき、予測情報を提供する太陽光発電システム10が設置された地域における各種気象データを選択し、この選択した各種気象データを説明変数xの候補として設定する。そして、入力部51は、この説明変数xを第1パラメータ計算部52及び第2パラメータ計算部53に出力する。具体的に、入力部51は、太陽光発電システム10が設置された地域内に設けられている気象観測装置によって観測(実測)された、或いは、予測される雲量(低層、中層、高層)、風向、風速、上昇流、気温、気圧及び相対湿度や、天候、降水量、降雨量、降雪量、積雪量、快晴度等に加え、エアマス及び大気外日射量等や、予測実施時刻から予測対象時刻までのリードタイム等を説明変数xの候補として設定し、第1パラメータ計算部52及び第2パラメータ計算部53に出力する。尚、この場合、太陽光発電システム10が設置された地域内の気象データに加えて、他の関連する時間や地域内の気象データを説明変数xの候補として設定することも可能である。
【0047】
第1パラメータ計算部52は、前記式9によって表される確率密度分布f(y)における期待値に対応するパラメータμ(x)を計算する。具体的に、第1パラメータ計算部52は、入力部51から出力された説明変数xの候補のうちから適宜選択して説明変数xを決定し、この説明変数xを用いてパラメータμ(x)を計算する。このことを例示して示すと、第1パラメータ計算部52は、説明変数xとして中層雲量、高層雲量、相対湿度、降雨量及びエアマスを選択して設定し、前記式10に従う下記式13により、期待値に対応する第1パラメータであるパラメータμ(x)を計算する。尚、前記式10における各係数α
i,β
0,・・・,β
i,β
jは、例えば、周知の拡張ベータ回帰を用いて計算することができる。
【数13】
ただし、前記式13中のx
mcは中層雲量を表し、x
hcは高層雲量を表し、x
rhは相対湿度を表し、x
raは降雨量を表し、x
airmassはエアマスを表す。このように、パラメータμ(x)を計算すると、第1パラメータ計算部52は、計算したパラメータμ(x)を確率密度関数計算部54に出力する。
【0048】
第2パラメータ計算部53は、前記式9によって表される確率密度分布f(y)における分布の拡がりに関連するパラメータφ(x)を計算する。具体的に、第2パラメータ計算部53は、入力部51から出力された説明変数xの候補のうちから適宜選択して説明変数xを決定し、この説明変数xを用いてパラメータφ(x)を計算する。このことを例示して示すと、第2パラメータ計算部53は、説明変数xとして低層雲量、中層雲量、降雨量及びエアマスを選択して設定し、前記式10に従う下記式14により、分布の拡がりに関連する第2パラメータであるパラメータφ(x)を計算する。尚、この第2パラメータ計算部53も、前記式10における各係数α
i,β
0,・・・,β
i,β
jについては、例えば、周知の拡張ベータ回帰を用いて計算することができる。
【数14】
ただし、前記式14中のx
lcは低層雲量を表し、x
mcは中層雲量を表し、x
raは降雨量を表し、x
airmassはエアマスを表す。
【0049】
ここで、特に、分布の拡がりに関連するパラメータφ(x)を計算するにあたって設定される説明変数xについては、予測情報を提供する地域の特性を反映して、例えば、特定の風向によって気象が変わりやすいという現象が生じる地域では風向及び風速を優先して説明変数xに設定することで発生する現象を適切に反映することができる。又、時間的に先になればなるほど予測の精度が低下する現象については、説明変数xにリードタイムを含むことで、日射量の予測に適切に反映することができる。更に、例えば、別途、予測日射量yが提供される場合であっても、後述するように、その分布の拡がりに対応するパラメータφ(x)を求めることは、誤予測(大外れ)を精度よく予測するためにも有用であり、この場合には説明変数xに提供された予測日射量yを設定することもできる。このように、パラメータφ(x)を計算すると、第2パラメータ計算部53は、計算したパラメータφ(x)を確率密度関数計算部54に出力する。
【0050】
確率密度関数計算部54は、前記式9に従い、第1パラメータ計算部52によって計算された期待値に対応するパラメータμ(x)及び第2パラメータ計算部53によって計算された分布の拡がりに関連するパラメータφ(x)を用いて確率密度分布f(y)を計算する。ここで、予測対象である日射量は「0」を下限とし、かつ、大気外日射量を上限とする有限区間の値となるため、予測日射量y(予測値)の予測誤差は有限区間の非対称な確率分布に従うことになる。このことに関し、前記式9に従ってパラメータμ(x)とパラメータφ(x)を用いて計算される確率密度分布f(y)においては、
図7に示すように、予測日射量yの誤差分布が非対称な分布となる。又、非対称な分布
を許容する確率密度分布f(y)においては、
図7からも明らかなように、パラメータμ(x)すなわち期待値μ(x)に対して最頻値y
modeが別に出現する。すなわち、
図8にて実線により示すように、非対称な分布
を許容する確率密度分布f(y)(ベータ分布)では期待値μ(x)と最頻値y
modeとがそれぞれ個別に存在するのに対し、例えば、最小二乗法等のように正規分布に基づいて期待値μ(x)を求める手法では、
図8にて破線により示すように、期待値μ(x)、最頻値y
mode及び中央値が全て同じとなり、期待値μ(x)と最頻値y
modeとを区別することができない。
【0051】
更に、予測日射量yを非対称な分布を許容する確率密度分布f(y)(ベータ分布)で表すことにより、分布の裾の形を正確に表現することができる。具体的には、前記式9に従って計算される確率密度分布f(y)においては、分布の拡がりに関連するパラメータφ(x)が説明変数xの関数として計算されるため、分布の裾の形を正確に現実に合わせることができる。そして、確率密度関数計算部54は、計算した確率密度分布f(y)を、最頻値計算部55、信頼区間計算部56及び誤予測確率計算部57に出力する。
【0052】
最頻値計算部55は、確率密度関数計算部54によって計算された非対称な分布
を許容する確率密度分布f(y)(ベータ分布)において、この確率密度分布f(y)を用いてモデル化することにより、
図7に示したように出現する最頻値y
modeを下記式15に従って計算する。
【数15】
ただし、前記式15中のμ(x)は第1パラメータ計算部52によって説明変数xの関数として計算されたパラメータμ(x)であり、前記式15中のφ(x)は第2パラメータ計算部53によって説明変数xの関数として計算されたパラメータφ(x)である。
【0053】
ここで、自然エネルギー量予測装置においては、予測日射量yとして、少なくとも、最頻値y
modeを用いる。これによって、日射量の変化(事象の起こりやすさ)を的確に表し、かつ、精度の高い予測日射量yを提供することができる。このことを
図9〜
図11を用いて説明する。
【0054】
図9は、予測日射量yの分布が無限区間の対称分布である正規分布に従う予測誤差を有するとした場合の予測例を示している。この場合、
図9にて点線により示す確率密度分布は無限区間の正規分布に従う予測誤差を有するため、予測誤差の下限が負になるという現実と異なる状況が発生する。すなわち、この場合には、確率密度分布の裾の形が現実の状況を正確に反映するように決定されないため、後述する誤予測(大外れ)の確率を精度よく計算することが極めて困難となる。又、この場合には、対称分布であるために、最頻値と期待値を区別することができない。このため、この場合には、
図9にて長破線により示すように、確率密度分布の期待値を予測日射量y(予測値)としており、
図9にて実線により示した日射量の実測値(以下、実測日射量とも称呼する。)と大きく異なる部分(例えば、時間帯)が生じている。
【0055】
図10は、予測日射量yの分布が有限区間でかつ非対称
を許容する分布であるベータ分布に従う予測誤差を有するとした場合の予測例を示している。この場合、
図10にて点線により示す確率密度分布f(y)はベータ分布に従う予測誤差を有するため、予測誤差が常に「0」以上で大気外日射量以下となる現実の状況を正確に反映することができる。このように、確率密度分布f(y)の裾の形が正確に表現されて現実の状況を反映するように決定されるため、誤予測(大外れ)の確率を精度よく計算することができる。又、この場合には、非対称を許容するベータ分布であるために、最頻値y
modeと期待値μ(x)とを区別することができる。このため、
図10にて一点鎖線により示すように、確率密度分布f(y)の最頻値y
modeを予測日射量y(予測値)とすることができる。そして、確率密度分布f(y)の最頻値y
modeである予測日射量y(予測値)は、確率密度分布f(y)の期待値μ(x)を予測日射量y(予測値)とした場合(
図10にて長破線により示す)に比して、
図10にて実線により示した実測日射量に近くなる。
【0056】
このことに関し、
図11は、予測日射量y(予測値)と実測日射量(実測値)との間の関係を示している。尚、
図11においては、予測日射量yを大気外日射量で規格化し、実測日射量を大気外日射量で規格化している。
【0057】
図11(a)は、予測日射量y(予測値)として期待値μ(x)を用いた場合を示している。この場合、非対称な分布である確率密度分布f(y)(ベータ分布)において期待値μ(x)を計算して用いているため、低い予測日射量yでは過大予測しており、高い予測日射量yでは過小予測している。この結果、
図11(a)に示すように、予測日射量yと実測日射量との関係が明らかに非線形(S字状)となる。一方、
図11(b)は、予測日射量y(予測値)として最頻値y
modeを用いた場合を示している。この場合、
図11(b)に示すように、予測日射量yと実測日射量との関係がより線形に近くなる。従って、予測日射量yとして最頻値y
modeを用いることにより、予測の精度が改善されることが理解できる。このように、最頻値y
modeを計算すると、最頻値計算部55は、最頻値y
modeを出力部58に出力する。
【0058】
信頼区間計算部56は、確率密度関数計算部54によって計算された非対称な分布
を許容する確率密度分布f(y)(ベータ分布)において、
図12に示すように、最頻値y
modeを含む信頼区間Y
aを、下記式16を満たす予測日射量yの集合を計算して決定する。
【数16】
ただし、前記式16中のaは、確率密度分布f(y)すなわち頻度f(y)のうち最大となる最頻値y
modeでの確率密度分布f(y
made)に準ずる確率密度分布f(y)の大きさを決定するための変数である。
【0059】
以下、前記式16に従って決定される信頼区間Y
aを具体的に説明する。上述したように、最頻値計算部55は確率密度関数計算部54によって計算された確率密度分布f(y)(ベータ分布)を用いてモデル化することによって最頻値y
modeを計算することができ、この最頻値y
modeを予測日射量yとすることができる。これにより、期待値μ(x)を予測日射量yとするよりも、最頻値y
modeを予測日射量yとする方が、より実態に近い予測を提供することができる。
【0060】
ところで、対称な分布となる正規分布の場合のように、期待値μ(x)や中央値を予測日射量y(予測値)に用いる場合には、通常は、例えば、標準偏差やパーセンタイル値が予測日射量y(予測値)の信頼区間として与えられる(等裾事後分布区間)。しかしながら、非対称な分布を許容する確率密度分布f(y)(ベータ分布)において、上述したように、最頻値y
modeを予測日射量y(予測値)として用いる場合には、
図13に示すように、最頻値y
mode(予測日射量y)が上述した等裾事後分布区間として与えられる信頼区間に入らない(含まれない)等の矛盾が起こり得る。
【0061】
そこで、信頼区間計算部56は、前記式16に従って決定されるように、確率密度分布f(y)すなわち頻度f(y)がその最大値であるf(y
mode)に準じて大きい値af(y
mode)を満たす予測日射量y(予測値)の集合である最高事後密度区間を信頼区間Y
aとして決定する。すなわち、このように決定される信頼区間Y
aは、
図12からも明らかなように、頻度f(y)(確率密度分布f(y))の等高線を考慮することに相当する。これにより、最頻値y
modeは必ず信頼区間Y
aに入り(含まれ)、上述した矛盾が生じることを回避することができる。尚、最大値であるf(y
mode)に準じて十分に大きい値を取る予測日射量y(予測値)を採用した場合であっても、上述した最頻値y
modeによる効果と同等の効果を得ることができる。
【0062】
又、このように信頼区間Y
aを決定することにより、現実の状況を適切に反映した信頼区間を決定することができる。すなわち、例えば、予測日射量y(予測値)の誤差分布が無限区間の正規分布に従うとして期待値μ(x)や中央値を基準とする信頼区間を決定した場合には、
図14の上図に示すように、信頼区間が負になるという現実と異なる状況が発生し得る。これに対して、予測日射量y(予測値)の誤差分布が非対称な分布
を許容するベータ分布に従うとして最頻値y
modeを基準とする信頼区間Y
aを決定した場合には、
図14の下図に示すように、信頼区間Y
aが常に「0」以上となり、現実の状況を適切に反映することができる。尚、
図14において、濃い灰色の領域は頻度f(y)(確率密度分布f(y))の50%信頼区間を示し、薄い灰色の領域は頻度f(y)(確率密度分布f(y))の90%信頼区間を示す。又、
図14において、実線は実測日射量を示し、
図14の上図における長破線は期待値μ(x)を予測値yとしたものであり、
図14の下図における長破線は最頻値y
modeを予測値yとしたものである。
【0063】
ここで、
図12に示すように、頻度f(y)(確率密度分布f(y))を信頼区間Y
aで積分することによって得られる面積は、この信頼区間Y
aにおける信頼度Pr(Y
a)に相当する。すなわち、信頼度Pr(Y
a)は、下記式17に従って計算することができる。
【数17】
又、所望の信頼度Pから逆に変数aや信頼区間Y
aを計算することも可能である。この場合、例えば、単峰型の確率分布の確率密度関数をf(y)とし、累積分布関数をF(y)とした場合、下記式18によって表される連立方程式を解くことにより、最頻値周りの信頼度Pでの信頼区間Y=[y
n,y
m]を得ることができる。
【数18】
このように、信頼区間Y
aを計算すると、信頼区間計算部56は、信頼区間Y
aを出力部58に出力する
。
【0064】
誤予測確率計算部57は、確率密度関数計算部54によって計算された非対称な分布
を許容する確率密度分布f(y)(ベータ分布)において、
図12に示すように、分布の裾近傍に出現する誤予測(大外れ)の下限側確率Pr_e(y<y
L)及び上限側確率Pr_e(y>y
H)を下記式19に従って計算する。尚、以下の説明においては、下限側確率Pr_e(y<y
L)及び上限側確率Pr_e(y>y
H)をまとめて、誤予測確率Pr_eとも称呼する。
【数19】
ただし、
図12に示すように、前記式19中のy
Lは前記式9に従って決定される確率密度分布f(y)において予め設定された下限側の予測値を表し、y
Hは前記式9に従って決定される確率密度分布f(y)において予め設定された上限側の予測値を表す。
【0065】
ここで、誤予測確率計算部57は、前記式19に従い、確率密度関数計算部54によって計算された確率密度分布f(y)を用いて下限側確率Pr_e(y<y
L)及び上限側確率Pr_e(y>y
H)を計算する。これにより、
図10に示したように、予測誤差の下限側が常に「0」以上であり、かつ、予測誤差の上限側が大気外日射量以下とすることができ、その結果、誤予測(大外れ)が発生する下限側確率Pr_e(y<y
L)及び上限側確率Pr_e(y>y
H)を極めて精度よく計算することができる。すなわち、確率密度分布f(y)を決定するために第2パラメータ計算部53が分布の拡がりに関連するパラメータφ(x)を説明変数xの関数として計算することにより、分布の拡がり、言い換えれば、非対称の分布
を許容する確率密度分布f(y)の裾の形を正確に表現することができる。従って、誤予測確率計算部57は、この確率密度分布f(y)の裾近傍における下限側確率Pr_e(y<y
L)及び上限側確率Pr_e(y>y
H)を前記式19に従って、極めて精度よく計算して決定することができる。そして、誤予測確率計算部57は、誤予測(大外れ)の誤予測確率Pr_eを計算すると、出力部58に出力する。
【0066】
出力部58は、最頻値計算部55から供給された最頻値y
mode、信頼区間計算部56から供給された信頼区間Y
a、及び、誤予測確率計算部57から供給された誤予測確率Pr_e(具体的には、下限側確率Pr_e(y<y
L)及び上限側確率Pr_e(y>y
H))を取得する。そして、出力部58は、通信装置22及びネットワーク40を介して、日射量の予測対象となっている地域内に設置された太陽光発電システム10の発電モニタ装置17に対し、予測情報として、最頻値y
modeである予測日射量yを表す予測日射量情報と、信頼区間Y
aを表す信頼区間情報と、下限側確率Pr_e(y<y
L)及び上限側確率Pr_e(y>y
H)を表す誤予測確率情報とを提供する。
【0067】
ここで、予測日射量情報、信頼区間情報及び誤予測確率情報の提供を受けた発電モニタ装置17においては、太陽光発電システム10による発電量を計算して予測する。すなわち、発電モニタ装置17の電子制御ユニット17aは、通信ユニット17bを介して、予測日射量情報、信頼区間情報及び誤予測確率情報を取得し、取得したこれら各情報を記憶ユニット17cの所定記憶位置に記憶する。そして、電子制御ユニット17aは、仕様データによって表される太陽光発電システム10の太陽電池アレイ12(太陽電池パネル11)の設置状態(方位角や傾斜角等)及びパワーコンディショナー14の変換特性等を用いて、予測日射量情報によって表される予測日射量y(より具体的には、最頻値y
mode)及び信頼区間情報によって表される信頼区間Y
a、すなわち、水平面全天日射量であるときに予測される発電量を計算する。そして、電子制御ユニット17aは、報知ユニット17dを介して、例えば、予測される発電量をユーザに対して報知する。
【0068】
一方で、発電モニタ装置17の電子制御ユニット17aは、計算して予測した太陽光発電システム10による発電量に応じて、例えば、発電量が大きくなることが予測される場合には蓄電装置16の充放電ユニット16bと協調して蓄電池16aに対する夜間電力を利用した充電を控えて余剰電力を充電したり、余剰電力を売電するために蓄電池16aの電力を放電したりする。逆に、太陽光発電システム10による発電量が小さくなることが予測される場合には、電子制御ユニット17aは充放電ユニット16bと協働して、例えば、夜間電力を積極的に利用して蓄電池16aに予め安価な電力を充電したり、分電盤15に接続された各種電気機器の電力消費を抑制させたりする。
【0069】
又、発電モニタ装置17の電子制御ユニット17aは、所定記憶位置に記憶した誤予測確率情報に基づき、提供された予測日射量y(具体的には、最頻値y
mode)が誤予測となる(所謂、大外れとなる)確率が相対的に高い場合には、蓄電装置16の充放電ユニット16bと協調して蓄電池16aの充電量を調整することが可能である。具体的に、例えば、予測日射量y(最頻値y
mode)が大きくなること予測されているにもかかわらず、1年のうちの数回(数日)は、全く逆の実測日射量が「0」となる誤予測(大外れ)が発生し得る。逆に、例えば、予測日射量y(最頻値y
mode)が「0」となることが予測されているにも関わらず、1年のうちの数回(数日)は、実測日射量が大きくなる誤予測(大外れ)が発生し得る。
【0070】
このような誤予測(大外れ)が発生した場合、太陽光発電システム10のユーザは、蓄電装置16の蓄電池16aに十分な充電がなされていないため、急遽、高額の商業電源を利用しなければならない状況となったり、或いは、余剰電力を効率よく売電できない状況が生じたりする。このため、電子制御ユニット17aは、誤予測確率情報によって表される下限側確率Pr_e(y<y
L)及び上限側確率Pr_e(y>y
H)が予め設定されている確率Pr_errよりも大きいとき、具体的には、下限側確率Pr_e(y<y
L)が確率Pr_errよりも大きいときには予測日射量y(最頻値y
mode)が「0」となる可能性が起こり得るため、例えば、蓄電池16aに夜間電力を予め充電しておく。逆に、上限側確率Pr_e(y>y
H)が確率Pr_errよりも大きいときには「0」の予測日射量y(最頻値y
mode)が大きくなる可能性が起こり得るため、例えば、余剰電力が充電できる程度の容量を蓄電池16aに設けておく。
【0071】
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、分布の拡がりに関連するパラメータφ(x)を説明変数xを用いて計算し、このパラメータφ(x)を用いた確率密度分布f(y)を用いて、自然エネルギーから得られる単位時間当たりの自然エネルギー量である日射量の予測日射量yをその予測誤差の分布を含めて極めて精度よく計算することができる。そして、予測日射量yを誤予測する(予測日射量yが大外れする)ような稀な現象が発生する誤予測確率Pr_eも定量的に精度よく予測することができる。
【0072】
<第1変形例>
上記実施形態においては、予測処理部50が非対称
を許容する確率密度分布としてベータ分布を採用するように実施した。この場合、日射量やこの日射量と関連する発電量等の正の連続値を扱う非対称な確率分布として、ベータ分布の他に、指数型分布族、対数正規分布、ガンマ分布、逆ガンマ分布、逆ガウス分布、Tweedie分布、ワイブル分布、ガンベル分布等を挙げることができる。このため、これらの各確率分布を用いるように変形して実施することも可能である。すなわち、これらの各確率分布においても、上記ベータ分布の場合と同様に、分布の拡がりと関連深いパラメータが存在する。従って、上記各確率分布においても、分布の拡がりに関連するパラメータを説明変数の関数として表すことにより、上記実施形態と同様に、予測値の分布の拡がりや、最頻値、頻度に基づく最頻値の信頼区間、誤予測(大外れ)が生じる確率等の計算が可能となる。
【0073】
具体的に、正の連続値についての非対称な確率分布として、指数型分布族を用いる場合には、確率密度関数を下記式20により示すことができる。
【数20】
ただし、前記式20中のφは、分布の拡がりに関連するパラメータであり、このパラメータφを、上述した実施形態と同様に、説明変数xの関数として表すことによって分布の拡がりを表すパラメータφ(x)を計算することができる。従って、この第1変形例においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0074】
<第2変形例>
上記実施形態及び上記第1変形例においては、少なくとも、ある時点(ある時間帯)における予測日射量y(最頻値y
mode)、信頼区間Y
a及び誤予測(大外れ)が発生する下限側確率Pr_e(y<y
L)及び上限側確率Pr_e(y>y
H)を計算するように実施した。この場合、気象データの実況値や直近の過去に観測された気象データを説明変数xに用いることにより、予測値(予測日射量y)や予測分布をリアルタイムに更新する(補正する)ことも可能である。この場合、例えば、異時点間の予測値(予測日射量y)の予測分布の間の相関を接合関数(コピュラ)を用いて表し、条件付き確率を計算することができる。以下、この第2変形例を具体的に説明する。
【0075】
コピュラ(接合関数)とは、2つ以上の任意の確率変数の間の関係を与える関数である。このため、コピュラは、例えば、2つのベータ分布に従う変数間に適用することができる。具体的にコピュラを説明すると、2次元データ(y
1,y
2)のコピュラは、一般に、C(U
1,U
2)という関数であり、それぞれの次元の周辺分布がF
1(y
1),F
2(y
2)の場合に2次元の分布は下記式21によって表される。
【数21】
【0076】
ここで、例示的に、例えば、2次元データ(y
1,y
2)のうち、y
1が9時台の日射量を表す変数であり、y
2が9時台から連続する10時台の日射量を表す変数であるとすると、F(y
1,y
2)はその同時分布を表すため、9時台の日射量y
1の実測値が与えられた場合、10時台の日射量y
2の条件付き密度関数f(y
2|y
1)は、下記式22に従って計算することができる。
【数22】
従って、前記式22に従うことにより、実測値(9時台の実測日射量)をリアルタイムに反映したすなわちリアルタイムに補正した精度保証付きの予測値(10時台の予測日射量y)の計算が可能となる。
【0077】
ここで、コピュラには、一般に、クレイトン型、フランク型、ガンベル型、ガウス型、アルキメデス型等多くの種類が存在する。これらの中には、1つのパラメータθで表わすことができるコピュラも多く、2次元の場合にはクレイトン型や、ガウス型、前記式21,22のコピュラ等が相当する。そして、このようなコピュラである、例えば、クレイトン型コピュラは下記式23のように表すことができる。
【数23】
このように、1つのパラメータθによって表すことができるコピュラにおいては、例えば、パラメータθが正の値として大きくなればなるほど相関が強くなり、パラメータθが略「0」であれば無相関であり、パラメータθが負の値となれば負の相関となる。
【0078】
具体的に、上述した9時台の日射量と10時台の日射量との間の相関を例示して説明すると、例えば、よく晴れた天候では、
図15(a)に示すように、隣接する(連続する)9時台と10時台の相関が強くなる、言い換えれば、パラメータθが正の値として大きくなることが想定される。一方、雲の増加や降雨が予想される天候では、
図15(b)に示すように、隣接する(連続する)9時台と10時台の相関が弱くなる、言い換えれば、パラメータθが「0」に近づくことが想定される。すなわち、日射量を予測する場合においては、よく晴れた天候では隣接する(連続する)時間帯の相関は強いと期待できるためパラメータθが大きくなることを想定し、曇りや降雨が予報される天候では隣接する(連続する)時間帯の相関が弱くなるためパラメータθが「0」に近づくことを想定すればよい。
【0079】
従って、上述した実施形態における分布の拡がりに関連するパラメータφを説明変数xの関数φ(x)として表したことを同様に、第2パラメータ計算部53が隣接する(連続する)時間帯同士の相関をパラメータθ(x)という説明変数xの関数として表すことによって、時間帯同士の相関を適切に表現することができる。この場合、説明変数xとしては、例えば、気象データ提供センタ30から提供される各気象データの実況値や直近の過去の観測された各気象データ等を用いることができる。そして、このようにパラメータθ(x)を用いることにより、各時点(各時間帯)における予測値(予測日射量y)は上述したように非対称
を許容するベータ分布に従うものとすることができ、かつ、リアルタイムに現在時刻が含まれる時間帯(先の時間帯)における実測値(実測日射量)を次の時間帯(後の時間帯)の予測値(予測日射量y)の補正に用いて反映させることができる。
【0080】
例えば、下記式24に従って計算されるパラメータθ(x)を用いることにより、雲量x
mcが「0」のときにはパラメータθ(x)が正の値となって相関が強くなり、雲量x
mcが「1」のときにはパラメータθ(x)が「0」となって相関が弱まることを表現することができる。
【数24】
尚、前記式24における係数eを種々のデータに基づいて決定することができる。
【0081】
従って、コピュラ(接合関数)を用いることにより、連続する時間帯同士の相関(時間相関)の強さを考慮し、先の時間帯における実測日射量(実測値)を後の時間帯における予測日射量y(予測値)に反映させることができる。すなわち、パラメータθ(x)が正の値であって相関が強い場合には、後の時間帯における予測日射量y(予測値)を先の時間帯における実測日射量(実測値)を用いて適宜補正することができ、予測日射量y(予測値)の予測精度を大幅に向上させることができる。従って、この第2変形例においては、予測精度が向上した予測日射量y(予測値)を用いることができるため、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0082】
尚、この場合、パラメータθを説明変数xの関数として設定せずに、固定値として実施することも可能である。又、この場合、時間相関に限らず、隣接する地点間の相関をコピュラで表すとともに、このときのパラメータθを説明変数xの関数として設定して実施することも可能である。更に、この場合、連続した(隣接する)時間相関に限らず、異なる時点間の相関をコピュラで表し、先の時点における実測値(実測日射量)を用いて、後の時点における予測値(予測日射量y)を補正するように実施することも可能である。
【0083】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態、第1変形例及び第2変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0084】
例えば、上記実施形態及び各変形例においては、第1パラメータ計算部52によって計算されるパラメータμ(x)及び第2パラメータ計算部3によって計算されるパラメータφ(x)について、周知の拡張データ回帰を用いて同時に推定して計算するように実施した。この場合、より簡便にパラメータμ(x)及びパラメータφ(x)を計算する方法として、まず対称分布である正規分布を仮定して最小二乗法でパラメータμ(x)を決定しておき、パラメータμ(x)の決定後にパラメータφ(x)の尤度を最大化して決定することも可能である。又、例えば、1日の24時間や12時間のような多時点の予測日射量yを計算するときには、それらが多次元正規分布に従うとし、説明変数xを考慮して統計的にその多次元正規分布の平均値ベクトルを求めたものをパラメータμ(x)とし、このパラメータμ(x)を用いて分布の拡がりに関連するパラメータφ(x)を計算することも可能である。
【0085】
又、パラメータμ(x)及びパラメータφ(x)を計算する方法としては、例えば、上述したコピュラ(接合関数)を用いて異時点の日射量の間の相関を取り、この相関を用いて平均値ベクトルを求めたものをパラメータμ(x)とし、このパラメータμ(x)を用いて分布の拡がりに関連するパラメータφ(x)を計算することも可能である。更に、別途、予測日射量yが提供される場合には、この提供された予測日射量yをパラメータμ(x)とし、その後、パラメータφ(x)を計算することも可能である。
【0086】
又、上記実施形態及び各変形例においては、自然エネルギー量予測装置が、自然エネルギーである太陽光から得られるエネルギー量として日射量を予測するように実施した。この場合、自然エネルギー量予測装置が、気象現象(気象条件)によって変化(変動)する自然エネルギー、例えば、太陽熱エネルギー、風力エネルギー、潮流エネルギー及び水流エネルギー等から得られる単位時間当たりのエネルギー量を予測することも可能である。このような太陽熱エネルギー、風力エネルギー、潮流エネルギー及び水流エネルギー等から得られるエネルギー量も、上述した太陽光と同様に、気象現象(気象条件)に起因して変化(変動)するものである。このため、上記実施形態及び各変形例と同様に、予測値であるエネルギー量をその予測誤差の分布を含めて精度よく予測することができ、又、予測値が誤予測(大外れ)となる稀な現象も定量的に予測することができる。
【0087】
又、上記実施形態及び各変形例においては、自然エネルギー量予測装置が、太陽光エネルギーから得られる単位時間当たりのエネルギー量である日射量(予測値)を予測するように実施した。この場合、自然エネルギー量予測装置が、各太陽光発電システム10から取得した仕様データに基づき、発電量の予測分布及び発電量の予測値を計算して提供するように実施することも可能である。又、この場合、自然エネルギー量予測装置が、自然エネルギーから得られたエネルギー量(例えば、日射量、太陽熱、風力、潮流及び水流等)を他のエネルギー(例えば、電気エネルギー)に変換する変換量の予測が可能であることも言うまでもない。これにより、自然エネルギーから得られたエネルギー量を電気エネルギーに変換する発電システムにおいて、自然エネルギー量予測装置が、例えば、発電量を精度よく予測することによって、他の発電システムや、蓄エネルギー装置、電力消費機器と協調して必要な電気エネルギーを効率よく各確実に確保することができる。
【0088】
又、上記実施形態及び各変形例においては、「0」や「1」が発生する確率が通常「0」となるベータ分布を採用して実施した。この場合、「0」や「1」が発生する確率が「0」となる点を改良したゼロ過剰ベータ分布(zero-inflated bata distribution)や「1」過剰ベータ分布(one-inflated bata
distribution)を用いて、日射量を予測するように実施することも可能である。又、正規分布を多変量に拡張した多次元正規分布のように、ベータ分布を多変量に拡張したディリクレ分布を採用し、複数の時間帯の日射量を同時に予測するように実施することも可能である。
【0089】
更に、上記実施形態及び各変形例においては、管理センタ20に自然エネルギー量予測装置を設けて実施した。この場合、自然エネルギー量予測装置を、例えば、太陽光発電システム10が設置された家屋等に設けて実施可能であることは言うまでもない。この場合には、例えば、家屋内に設けられたコンピュータ装置や発電モニタ装置17に自然エネルギー量予測装置を設けて実施することができる。