特許第5940934号(P5940934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940934
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】OFDM受信機の正規化回路
(51)【国際特許分類】
   H04J 11/00 20060101AFI20160616BHJP
【FI】
   H04J11/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-177805(P2012-177805)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-36397(P2014-36397A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】江島 暁
(72)【発明者】
【氏名】仲田 樹広
【審査官】 大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−042837(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/107622(WO,A1)
【文献】 特開平09−238099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 11/00
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFDM変調方式によるデジタル無線通信における受信機であって、受信した信号を高速フーリエ変換するFFT処理部、高速フーリエ変換された信号からパイロット信号を抽出するパイロット信号抽出部、抽出された信号の雑音レベル値を算出する雑音振幅算出部、前記雑音振幅算出部によって算出された雑音レベルから、時間インターリーブ長よりも十分長い期間で雑音レベルの周波数方向の平均値と時間方向の平均値を算出する平均振幅算出部、前記雑音レベル値を前記雑音レベルの平均値で正規化する第1の正規化部、及び、前記高速フーリエ変換された信号を前記第1の正規化部で正規化された信号で正規化する第2の正規化部を備え、
前記抽出された信号の前記雑音レベルの平均値で正規化した雑音相対値により受信信号を正規化したことを特徴とするOFDM受信機の正規化回路。
【請求項2】
送信側が複数系統のOFDM変調方式によるデジタル無線通信における当該複数系統の信号を受信する受信機であって、受信した信号のそれぞれを高速フーリエ変換するFFT処理部、高速フーリエ変換された信号からそれぞれのパイロット信号を抽出するパイロット信号抽出部、抽出されたそれぞれの信号の雑音レベル値を算出する雑音振幅算出部、前記雑音振幅算出部によって算出されたそれぞれの雑音レベルから、時間インターリーブ長よりも十分長い期間で雑音レベルの周波数方向の平均値と時間方向の平均値を算出する平均振幅算出部、前記雑音レベル値を前記雑音レベルの平均値で正規化する第1の正規化部、及び、前記高速フーリエ変換された信号を前記第1の正規化部で正規化された信号で正規化する第2の正規化部を備え、
前記抽出された信号の前記雑音レベルの平均値で正規化した雑音相対値により受信信号を正規化したことを特徴とするOFDM受信機の正規化回路。
【請求項3】
請求項2記載の正規化回路において、前記平均振幅算出部は、前記複数系統のそれぞれの雑音レベルの大小判定を行う判定部と、前記複数系統のそれぞれの雑音レベルのいずれか1つを出力する切替器を有し、
前記判定部は、前記複数系統それぞれの前記雑音レベルを比較して、雑音レベルが一番小さい受信系統の雑音レベルを出力するように前記切替器を制御し、前記切替器から出力される一番小さい雑音レベルについて、周波数方向の平均値と時間方向の平均値を算出することを特徴とするOFDM受信機の正規化回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調によるデジタル無線通信に関わり、特に、受信信号を雑音振幅により正規化を行うOFDM受信機において、正規化後のダイナミックレンジを有効利用するための手段に正規化手段に関する。
【背景技術】
【0002】
OFDM通信方式の受信機では、受信した信号を復調し、最終的に復号処理を行うことで伝送性能を得ることができる。復号処理では、CNR(Carrier vs. Noise Ratio)に対応した信号振幅が尤度の指標となるが、実装まで考慮するとその信号振幅の中でも復号処理に必要な範囲をダイナミックレンジに適切に収まるように調整しなくてはならない。ただし、一般的に、受信側にはAGC(Automatic Gain Control)アンプが備えられているため信号振幅は一定に保たれることになる。そこで、雑音成分を一定としたときの信号振幅(つまり、AGCアンプの入力時点の信号振幅)を得るために正規化処理が必要となる。以下では、従来の正規化処理について説明する。
【0003】
図6A図7Aは、従来の受信機において正規化を行うまでの、受信機の正規化回路の構成例を示すブロック図であり、マルチパスフェージングによる影響を受けたスペクトラムに加え、雑音、隣接干渉、及び周波数特性の歪みを併記したものである。
図6Aの正規化回路600は、受信アンテナ601、AGCアンプ602、A/D部603、信号を高速フーリエ変換するFFT処理部604、振幅調整部605、係数選択部606、及び、正規化部607で構成される。また、図7の正規化回路700は、受信アンテナ701、AGCアンプ702、A/D部703、FFT処理部704、パイロット抽出部705、雑音振幅算出部706、振幅調整部707、係数選択部708、及び、正規化部709で構成される。
また、図6Bは、FFT処理部604の出力信号における周波数特性歪を示す図であり、図6Cは、正規化部607の出力信号における周波数特性歪を示す図である。同様に、図7Bは、FFT処理部704の出力信号における周波数特性歪を示す図であり、図7Cは、正規化部709の出力信号における周波数特性歪を示す図である。図6B図6C図7B、及び図7Cにおいて、横軸は周波数、縦軸は電力である。
【0004】
まず、図6Aに示す処理について説明する。
まず、AGCアンプ602は、受信アンテナ601を介して受信した信号を、予め設定してある目標値となるよう振幅調整を行い、A/D部603に出力する。A/D部603は、入力された信号をデジタル信号に変換して、FFT処理部604に出力する。FFT処理部604は、入力されたデジタル信号を、所定の周波数領域の信号に変換し、振幅調整部605に出力する。
この時、FFT処理部604の出力は、アナログ部による周波数特性の歪が発生している場合もある。図6Bでは、周波数が高い領域で減衰している例を示している。
【0005】
次に、振幅調整部605は、係数選択部606から出力される係数とFFT処理結果とを乗算することで振幅調整を行う。これは、後段の復号処理部におけるダイナミックレンジに対して信号振幅が適切となるように調整するための処理である。振幅調整部605は、振幅調整した信号を正規化部607に出力する。
正規化部607は、入力された信号を、AGCアンプ602で振幅調整した際の利得により正規化を行い、受信機のデータ処理部に出力し、データ処理部により、復調され、最終的に復号処理がなされる。これにより、受信アンテナが小さな信号を受信した場合(つまり、低CNRの場合)には、AGCアンプの利得が大きいため正規化部607の出力の振幅は小さくなる。また、受信アンテナが大きな信号を受信した場合(つまり、高CNRの場合)には、その入力信号に対応した信号振幅を通知することができる。
【0006】
次に、図7Aに示す処理について説明する。図7Aの例では、図6AのようにAGCアンプから利得を受け取ることができないシステムであり、通信方式としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を用いている例である。
まず、AGCアンプ702は、受信アンテナ701を介して受信した信号を、予め設定してある目標値となるよう振幅調整を行い、A/D部703に出力する。次に、A/D部703は、入力された信号をデジタル信号に変換して、FFT処理部704に出力する。FFT処理部704は、入力されたデジタル信号を、所定の周波数領域の信号に変換し、振幅調整部705に出力すると共に、パイロット抽出部705及び振幅調整部707に出力する。
この時、FFT処理部704の出力は、アナログ部による周波数特性の歪が発生している場合もある。図7Bでは、周波数が高い領域で減衰している例を示している。
【0007】
パイロット抽出部705は、入力された信号から、送信側で挿入された既知信号であるパイロットキャリアを抽出し、その結果を雑音振幅算出部706に出力する。なお、パイロットキャリア配置の一例を図8に示す。図8は、パイロットキャリア配置の一例を示す図である。横軸がキャリア方向、縦軸がシンボル方向である。また、k(0〜297)はキャリア番号、黒丸はパイロットキャリア、白丸はデータキャリアである。
次に、雑音振幅算出部706は、パイロット抽出部705が抽出したパイロットキャリアを用いて雑音レベルを算出し、算出した雑音レベルを正規化部709に出力する。
【0008】
雑音振幅算出部706の処理については、図9を用いて説明する。図9は、パイロットキャリアから雑音レベルを算出する構成を示すブロック図で、従来の送受信側が1系統(系統90)の場合の送信機90tと受信機側の正規化回路90rの一実施例の構成を示すブロック図である。なお、以下の説明は、あるサブキャリアにおける周波数領域の信号を扱うものとする。
送信器90tに入力された信号Pは、符号化及び変調された信号P(t)として、送信アンテナ903を介して、伝送路特性H(t)の伝送路中に送信される。信号P(t)は、受信機側の受信アンテナ905が受信して、加算器906に入力される。受信アンテナ905を介して受信した信号に、加算器906は、それぞれN(t)を加算し、信号R(t)としてメモリ907に出力する。メモリ907は、入力された信号を格納し、R(t)及びR(t+1)を加算器910に出力する(移送器908は、移送回転に使用する。)。加算器910は、それらの信号を加算して加算した信号を電力算出部911に出力する。電力算出部911は、入力された信号の電力Pplt(t)を算出して平均振幅算出部912に出力する。平均振幅算出部912は、入力された信号の平均振幅を算出して、データ処理部に出力する。
【0009】
図9のように、パイロットキャリアをP、伝搬路特性をH(t)、受信側で付加される雑音成分をN(t)とすると、時刻tにおける受信信号R(t)は、次の式(1)のようになり、
R(t)=H(t)P+N(t) ・・・式(1)
時刻t=0の場合は、次の式(2)のようになる。
R(0)=H(0)P+N(0) ・・・式(2)
同様に、時刻t=1の場合は、次の式(3)のようになる。
R(1)=H(1)P+N(1) ・・・式(3)
これらをメモリに格納し、t=0〜1の間で伝搬路特性H(t)を一定とみなして減算すると、パイロットキャリアの差分電力Pplt(t)は、次の式(4)のようになる。
【0010】
【数1】
ここで、N(t)はガウス雑音であり、σは雑音電力である。
【0011】
このようにして、パイロットキャリアの差分からサブキャリア毎の雑音電力を算出でき、H(t)が一定とみなせる範囲内で時間方向に平均化することでさらに精度を高めることができる。また、付加された雑音の電力Npow(t)及び振幅Namp(t)は、次の式(5)を求めることにより得ることができる。
【0012】
【数2】
そして、雑音振幅算出部706は、算出した雑音振幅を正規化部709に出力する。
この結果、正規化部709は、振幅調整部707で係数を乗じた受信信号を正規化し、受信機のデータ処理部に出力する。これにより、データ処理部により、復調され、最終的に復号処理がなされる。なお、係数選択部708は、図6Aで示した場合と同様、ダイナミックレンジに対して適切な信号振幅にするための係数を選択する必要がある。
以上の処理により、図6A及び図7Aの最終スペクトラムのように雑音、隣接干渉、周波数特性の歪みを一定とした時の信号振幅に正規化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2011−055153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
背景技術では、運用上の所要CNRの範囲において正規化出力がダイナミックレンジに対して適切な信号振幅となるように、受信信号と係数を乗算する必要があり、これにより、高CNRから低CNRにおける信号振幅を表現することができる。しかし、所要CNRは変調方式によって異なり、運用時の環境によって確保できるCNRも変わってくるため、受信信号に乗じる係数はそれらに応じて設定する必要がある。
特許文献1のように、シングルキャリアでは、雑音電力で正規化して合成する技術が開示されている。しかしOFDM通信方式の無線通信装置では、雑音電力で正規化して合成する技術は見当たらない。
本発明の目的は、上記のような問題に鑑み、受信信号の正規化出力が雑音の絶対量ではなく、雑音の平均値を基準に変動するようにしたOFDM受信機の正規化回路を提供することにある。その結果、所要CNRが異なる変調方式や運用環境の違いごとに予め係数を準備する必要がなく、ダイナミックレンジを有効に利用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明のOFDM受信機の正規化回路は、OFDM変調方式によるデジタル無線通信における受信機であって、受信した信号を高速フーリエ変換するFFT処理部、高速フーリエ変換された信号からパイロット信号を抽出するパイロット信号抽出部、抽出された信号の雑音レベル値を算出する雑音振幅算出部、前記雑音振幅算出部によって算出された雑音レベルから、時間インターリーブ長よりも十分長い期間で雑音レベルの周波数方向の平均値と時間方向の平均値を算出する平均振幅算出部、前記雑音レベル値を前記雑音レベルの平均値で正規化する第1の正規化部、及び、前記高速フーリエ変換された信号を前記第1の正規化部で正規化された信号で正規化する第2の正規化部を備え、前記抽出された信号の前記雑音レベルの平均値で正規化した雑音相対値により受信信号を正規化するものである。
【0016】
また、上記の目的を達成するため、本発明のOFDM受信機の正規化回路は、送信側が複数系統のOFDM変調方式によるデジタル無線通信における当該複数系統の信号を受信する受信機であって、受信した信号のそれぞれを高速フーリエ変換するFFT処理部、高速フーリエ変換された信号からそれぞれのパイロット信号を抽出するパイロット信号抽出部、抽出されたそれぞれの信号の雑音レベル値を算出する雑音振幅算出部、前記雑音振幅算出部によって算出されたそれぞれの雑音レベルから、時間インターリーブ長よりも十分長い期間で雑音レベルの周波数方向の平均値と時間方向の平均値を算出する平均振幅算出部、前記雑音レベル値を前記雑音レベルの平均値で正規化する第1の正規化部、及び、前記高速フーリエ変換された信号を前記第1の正規化部で正規化された信号で正規化する第2の正規化部を備え、前記抽出された信号の前記雑音レベルの平均値で正規化した雑音相対値により受信信号を正規化するものである。
【0017】
さらに、上記本発明のOFDM受信機の正規化回路において、前記平均振幅算出部は、前記複数系統のそれぞれの雑音レベルの大小判定を行う判定部と、前記複数系統のそれぞれの雑音レベルのいずれか1つを出力する切替器を有し、前記判定部は、前記複数系統それぞれの前記雑音レベルを比較して、雑音レベルが一番小さい受信系統の雑音レベルを出力するように前記切替器を制御し、前記切替器から出力される一番小さい雑音レベルについて、周波数方向の平均値と時間方向の平均値を算出するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、受信信号の正規化出力が雑音の絶対量ではなく、雑音の平均値を基準に変動することになるため、所要CNRが異なる変調方式や運用環境の違いごとに予め係数を準備することなく、ダイナミックレンジを有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本発明の正OFDM受信機の正規化回路の一実施例の構成を示すブロック図である。
図1B図1AのFFT処理部の出力信号における周波数特性歪を示す図である。
図1C図1Aの正規化部の出力信号における周波数特性歪を示す図である。
図2図1Aの平均振幅算出部の一実施例の構成を示すブロック図である。
図3A】本発明の送受信側が2系統の場合の送信系統aのパイロットキャリア配置の一実施例である。
図3B】本発明の送受信側が2系統の場合の送信系統bのパイロットキャリア配置の一実施例である。
図4】本発明の送受信側が2系統の場合の正規化回路の一実施例の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の送受信側が2系統の場合の平均振幅算出部の一実施例の構成を示すブロック図である。
図6A】従来の受信機において正規化を行うまでの回路の構成例を示すブロック図である。
図6B図6AのFFT処理部の出力信号における周波数特性歪を示す図である。
図6C図6Aの正規化部の出力信号における周波数特性歪を示す図である。
図7A】従来の受信機において正規化を行うまでの回路の構成例を示すブロック図である。
図7B図7AのFFT処理部の出力信号における周波数特性歪を示す図である。
図7C図7Aの正規化部の出力信号における周波数特性歪を示す図である。
図8】パイロットキャリア配置の一例を示す図である。
図9】パイロットキャリアから雑音レベルを算出する構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のOFDM受信機の正規化回路は、受信信号からパイロットキャリアを抽出し、そこからサブキャリア毎に雑音振幅を算出する。さらに、時間インターリーブ長よりも十分長い期間で周波数方向及び時間方向に平均化を行い、それによりサブキャリア毎の雑音レベルを正規化する。そして、正規化した雑音振幅により受信信号をさらに正規化する。
以下に本発明の一実施形態について、図面等を用いて説明する。
なお、以下の説明は、本発明の一実施形態を説明するためのものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素若しくは全要素をこれと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であり、これらの実施形態も本願発明の範囲に含まれる。
また、各図の説明において、共通な機能を有する構成要素には同一の参照番号を付し、できるだけ説明の重複を避ける。
【0021】
図1A図2を用いて本発明の一実施例を説明する。図1Aは、本発明のOFDM受信機の正規化回路の一実施例の構成を示すブロック図である。
図1Aの正規化回路100は、受信アンテナ701、AGCアンプ702、A/D部703、FFT処理部704、パイロット抽出部705、雑音振幅算出部706、平均振幅算出部107、第1正規化部108、及び第2正規化部109で構成される。また、図2は、周波数方向平均化部201、及び時間方向平均化部202で構成される。
また、図1Bは、FFT処理部604の出力信号における周波数特性歪を示す図であり、図1Cは、正規化部607の出力信号における周波数特性歪を示す図である。図1B及び図1Cにおいて、横軸は周波数、縦軸は電力である。なお、図1Bは、図6Bとまったく同じ結果を示す図である。
【0022】
図1AのOFDM受信機の正規化回路100において、受信信号をFFT(Fast Fourier Transform)処理し、雑音振幅を算出するまでの構成要素(受信アンテナ701〜雑音振幅算出部706)は、図7Aに示した従来技術の場合と同様である。
ただし、雑音振幅算出部706は、その出力信号を、平均振幅算出部107及び第1正規化部108に出力する。
平均振幅算出部107は入力された信号を平均化し、第1正規化部108に出力する。
【0023】
図2は、図1Aの平均振幅算出部107の一実施例の構成を示すブロック図である。図2によって、平均振幅算出方法の一実施例を説明する。図2の平均振幅算出部107は、周波数方向に平均化を行う周波数方向平均化部201と、時間方向に平均化を行う時間方向平均化部202から構成される。
図2では、周波数方向及び時間方向に平均化を行い、時間方向の平均化は、例えば、ARIB STD−B33で規定されているような時間インターリーブ長よりも十分に長い時間に渡って平均化処理を行う。これにより、伝搬路特性の変動や時間インターリーブ長によることなく安定した平均値を得ることができる。
【0024】
平均振幅算出部107は、このようにして算出した平均振幅(平均レベル算出値)を第1正規化部108に出力する。第1正規化部108は、入力された平均レベル算出値で、雑音振幅算出部706から入力された雑音レベル算出値を正規化する。第1正規化部108は、正規化した雑音レベルを第2正規化部109に出力する。この第1正規化部108の出力は、受信信号に含まれる雑音振幅の絶対量ではなく、雑音振幅の平均値を基準に変動することになる。
第2正規化部109は、入力された正規化された雑音レベルで、FFT処理部104から入力された出力信号(受信信号)を正規化し、データ処理部に出力するする。以降の処理は、背景技術と同様である。
【0025】
上記図1及び図2の実施例によれば、OFDM信号を受信する受信機において、高速フーリエ変換された信号から抽出された信号の雑音レベルの平均値で正規化した雑音相対値により受信信号を正規化することができる。この平均値で正規化した雑音レベルにより受信信号を正規化することで、所要CNRが異なる変調方式や運用環境の違いごとに予め係数を準備することなく、ダイナミックレンジを有効に利用できる。
【0026】
上記本発明に関する説明では、送信側及び受信側が1系統の場合について説明した。しかし、それぞれ2系統以上になっても、雑音振幅の算出方法や平均振幅の算出方法も基本的な考え方は同じである。送信側が2系統、受信側2系統の場合の例に簡単に説明する。
送信側が2系統の場合、一例として図3A図3Bに示すようなパイロットキャリア配置とすることができる。 図3Aは、送信系統aのパイロットキャリア配置を示す図であり、図3Bは、送信系統bのパイロットキャリア配置を示す図である。また、k(0〜297)はキャリア番号、黒丸はパイロットキャリア、白丸はデータキャリアである。
【0027】
ここでは、それぞれの系統a、bにおいて、パイロットキャリア位置は同じであるが、送信系統bでは、1シンボル毎に位相を180°反転している。OFDM受信機側では、パイロットキャリアを抽出するまでの処理は、上記と同様であり、雑音振幅の算出方法は、図4の受信機側の正規化回路40rのようになる。図4は、本発明の送受信側が2系統(系統a40a及び系統b40b)の場合の送信機40tと受信機側の正規化回路40rの一実施例の構成を示すブロック図である。送信器40tに入力された信号Pは、系統aの符号化及び変調された信号Pta(t)と系統bの符号化及び変調された信号Ptb(t)に分かれて出力される。系統aの信号Pta(t)は、移送器401から送信アンテナ403を介して、伝送路特性H11(t)の伝送路中に送信される。また、送信器40tの信号Ptb(t)は、移送器402から送信アンテナ404を介して、伝送路特性H12(t)の伝送路中に送信される。
【0028】
信号Pta(t)と、信号Ptb(t)は、それぞれ、受信機側の受信アンテナ405が受信して、加算器406に入力される。受信アンテナ405を介して受信した4シンボルに、加算器406は、それぞれN(t)を加算し、信号Pra(t)としてメモリ407に出力する。メモリ407は、入力された4シンボルを格納し、それらに0°、0°、180°、180°の位相回転を与え、次式のように算出されるPra(1)、Pra(2)、Pra(3)、及びPra(4)を、加算器410に出力する(移送器408と409は、それらの移送回転に使用する。)。
【0029】
【数3】
t=0〜3の間で伝搬路特性H(t)を一定とみなして加算器410で加算すると、パイロットキャリアの差分電力Pplt(t)は、次の式(7)のようになり、サブキャリア毎の雑音電力を算出できる。
【0030】
【数4】
【0031】
図5は、本発明の送受信側が2系統の場合の平均振幅算出部507の一実施例の構成を示すブロック図である。図5の平均振幅算出部507は、図1A図2)の正規化回路の平均振幅算出部107を平均振幅算出部507に置き替えたものである。
図5の平均振幅算出部507において、受信系統aの雑音レベルと、受信系統bの雑音レベルは、それぞれ、大小判定部501と、切替器504のそれぞれの入力端子に入力される。大小判定器501は、受信系統aと受信系統bのそれぞれの雑音レベルを比較して、雑音レベルが小さい方の受信系統を切替器504の出力端子から出力するように、切替え制御信号を切替器504に出力する。切替器504は、大小判定器501の制御によって、雑音レベルが小さい方の受信系統の雑音レベルを周波数方向平均化部502に出力する。周波数方向平均化部502は、入力された雑音レベルを周波数方向に平均化して、その結果を時間方向平均化部503に出力する。時間方向平均化部503は、周波数方向に平均化された雑音レベルを、時間インターリーブ長よりも十分長い期間で時間方向に平均化して、第1正規化部108に出力する。以下は、図1Aと同様である。なお、信号系統(受信系統)が、2つではなく3つ以上の場合には、大小判定器501は、雑音レベルが一番小さい受信系統の雑音レベルを周波数方向平均化部502に出力するように、切替器504を制御する。
【0032】
図5のように、平均振幅算出については、受信系統aと受信系統bの雑音レベルが小さい方(つまり、高CNRとなる方)を選択して周波数方向及び時間方向に平均化を行う。
なお、本発明では、十分に長い時間に渡って平均化処理を行うものとする。また、図5では、片方を選択した後に平均化する例を示しているが、両系統をまとめて平均値を算出する方法でも良い。
以上の処理により、送信側及び受信側が2系統以上になっても上記と同様に正規化処理を行うことができる。
【0033】
上記図1図4及び図5の実施例によれば、複数系統のOFDM信号を受信する受信機において、高速フーリエ変換された信号から抽出された信号の雑音レベルの平均値で正規化した雑音相対値により受信信号を正規化することができる。この平均値で正規化した雑音相対値により受信信号を正規化することで、所要CNRが異なる変調方式や運用環境の違いごとに予め係数を準備することなく、ダイナミックレンジを有効に利用できる。
【符号の説明】
【0034】
100:正規化回路、 107:平均振幅算出部、 108:第1正規化部、 109:第2正規化部、 201:周波数方向平均化部、 202:時間方向平均化部、 600:正規化回路、 601:受信アンテナ、 602:AGCアンプ、 603:A/D部、 604:FFT処理部、 605:振幅調整部、 606:係数選択部、 607:正規化部、 700:正規化回路、 701:受信アンテナ、 702:AGCアンプ、 703:A/D部、 704:FFT処理部、 705:パイロット抽出部、 706:雑音振幅算出部、 707:振幅調整部、 708:係数選択部、 709:正規化部。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9