(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る炭化水素接触分解用触媒(以下、単に「本触媒」ともいう。)は、所定のフォージャサイト型ゼオライト(A)とマトリックス成分と希土類とを含んでなる触媒(a)と、所定のフォージャサイト型ゼオライト(B)とマトリックス成分とリンとマグネシウムとを含んでなる触媒(b)とを混合してなることを特徴とする。以下、本触媒について具体的に説明する。
【0015】
[触媒(a)]
本触媒を構成する触媒(a)は、所定のフォージャサイト型ゼオライト(A)とマトリックス成分と希土類とを含んでなるものであり、これ自身も炭化水素接触分解用触媒として機能するものである。以下、これらの各成分について詳細に説明する。
〔フォージャサイト型ゼオライト(A)〕
フォージャサイト型ゼオライトとは、SiO
2とAl
2O
3からなる骨格を有するものである。骨格を構成するSiO
2のモル数(M
S)とAl
2O
3のモル数(M
A)とのモル比(M
S)/(M
A)は5〜20であることが好ましく、6〜15の範囲にあることがより好ましい。モル比(M
S)/(M
A)がこの範囲にあると、耐水熱性(高温で再生処理した際の活性の維持率)がより高くなり、また活性やガソリン選択性もより高くなる。
【0016】
モル比(M
S)/(M
A)が低いと、耐水熱性、活性およびガソリン選択性が不充分となるおそれがある。この場合、流動接触分解プロセスでは分解反応後、再生塔で触媒に析出した炭素質を燃焼除去して再生するが、燃焼熱によって高温となるほか、炭素質が水素を含むため水分が生成し、この結果高温で水熱処理されることとなり、この際、ゼオライトの結晶性が低下することが知られている。
一方、モル比(M
S)/(M
A)が高すぎても、耐水熱性は高いものの活性点が少なくなるためか、活性が不充分となる場合がある。
【0017】
フォージャサイト型ゼオライト(A)の格子定数は2.435〜2.455nmであり、好ましくは、2.440〜2.450nmである。このような格子定数の範囲にあると、ガソリン選択性が非常に高くなる。この格子定数が小さすぎると、活性が不充分となる場合がある。一方、この格子定数が大きすぎると、耐水熱性や耐メタル性が不充分となる場合がある。
上述の格子定数を求めるには、X線回折法により、アナターゼ型TiO
2を標準物質とし、ゼオライトの回折面(553)と(642)の面間隔により測定すればよい。
【0018】
このようなフォージャサイト型ゼオライト(A)としては、NaY型ゼオライトをNH
4イオン交換したNH
4Yゼオライトを好ましく使用することができるが、これを水熱処理して得られる超安定性ゼオライト(USY)であることが特に好ましい。
この超安定性ゼオライト(USY)は従来公知の方法により製造することができ、例えば、R.M.Barrer,ZEOLITES AND CLAY MINERALS as Sorbents and Molecular Sievesp350 (1975)に記載されたProcedureA、ProcedureBを好適に採用することができる。
【0019】
具体的には、ProcedureBでは、NaYを塩化アンモニウムでイオン交換し、(NH4)(0.75〜0.90)Na(0.25〜0.10)−Yとした後、洗浄し、200〜600℃で加熱処理し、再びイオン交換して残存Na+を除去して準安定状態とし、ついで、スチーム雰囲気下、600〜800℃で急速に加熱して、格子定数が1〜1.5%収縮したゼオライトが得られることと記載されている。
さらに、得られた超安定性ゼオライト(USY)を酸処理等したゼオライトも好適に用いることができる。
【0020】
触媒(a)中のフォージャサイト型ゼオライト(A)の含有量(C
ZA)は固形分(主にSiO
2とAl
2O
3)として10〜50質量%、さらには15〜40質量%の範囲にあることが好ましい。
フォージャサイト型ゼオライト(A)の含有量が固形分として10質量%未満の場合は、ゼオライトが少ないために活性が不充分となる場合がある。
フォージャサイト型ゼオライトの含有量が固形分として50質量%を越えると、活性が高すぎて過分解となり、選択性が低下する場合があり、また、ゼオライト以外のマトリックス成分の含有量が少なくなるために耐摩耗性が不充分となり、流動触媒として使用した場合、容易に粉化して触媒が飛散する場合がある。これを補うために触媒の補充量を増加することもできるが経済性が問題となる。
【0021】
〔マトリックス成分〕
触媒(a)を構成するマトリックス成分とは前記したフォージャサイト型ゼオライト(A)以外のものを意味し、このようなマトリックス成分には、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、リン酸アルミニウムなどの従来公知の無機酸化物、無機化合物を使用することができる。これらには、結合材やフィラーと呼ばれるものも含まれる。
【0022】
具体的には、シリカゲル、シリカゾル、シリカヒドロゾル、アルミナゲル、アルミナゾル、シリカ・アルミナゲル、シリカ・アルミナゾル、リン酸アルミニウム化合物等に由来する従来公知の無機酸化物、無機化合物を使用することができる。なかでも、シリカゾル、シリカヒドロゾル、アルミナゾル、シリカ・アルミナゾル、リン酸アルミニウム化合物等は、フォージャサイト型ゼオライトの担体(母材)あるいは結合材としても機能し、活性、耐摩耗性等に優れる他、残油分解活性、耐メタル性等にも優れた炭化水素接触分解用触媒が得られるので好適に用いることができる。
【0023】
また、アルミナとしては特開昭60−193543号公報(特許文献4)で用いた気流焼成アルミナ粉末も好適に用いることができる。活性アルミナを使用することも可能である。活性アルミナはシリカ成分と結合して、活性に寄与することがある。
【0024】
触媒(a)では、アルミナを含むことが好ましく、このときアルミナの含有量は固形分(Al
2O
3)として1〜30質量%、さらには2〜20質量%の範囲にあることが好ましい。
前記範囲でアルミナを含んでいると、ガソリン選択性の向上効果が大きく、さらに残油分解活性、耐メタル性にも優れるようになる。
【0025】
さらに、触媒(a)では、カオリン、メタカオリン、ハイドロタルサイト、モンモリロナイト等の従来公知の粘土鉱物等を、フィラーとして用いることができる。これらは活性がなく、増量剤として作用する。
触媒(a)におけるマトリックス成分の含有量は、固形分として50〜90質量%、さらには60〜85質量%の範囲にあることが好ましい。
【0026】
マトリックス成分の含有量が固形分として少ないと、フォージャサイト型ゼオライト(A)の割合が多くなりすぎて、活性は高いものの嵩密度が低くなりすぎたり、耐摩耗性、流動性等が不充分となることがあり、炭化水素接触分解用触媒とくに炭化水素流動接触分解用触媒として実用的でない。
一方、マトリックス成分の含有量が固形分として多すぎても、主要な活性成分であるフォージャサイト型ゼオライト(a)の割合が少なくなり、分解活性が不充分となる場合がある。
【0027】
〔希土類〕
触媒(a)は、さらに希土類を成分として含む。この希土類の含有量(C
REA)は、触媒(a)基準でRE
2O
3として0.5〜5質量%であることが好ましく、1.0〜3.0質量%であることがより好ましい。希土類を含むことで、分解活性、ガソリンなどの選択性に優れた触媒とすることができる。
希土類としては、ランタン、セリウム、ネオジムなどの希土類金属およびこれらの混合物などが挙げられる。通常、ランタン、セリウムを主成分とする混合希土類が用いられる。
【0028】
希土類の含有量が少ないと、分解活性、選択性、耐水熱性、耐メタル性等が不充分となるおそれがあるが、本触媒では、従来の炭化水素接触分解用触媒にくらべ、希土類の量が少なくとも十分な効果を発揮する。
なお、希土類の含有量が多すぎても、本発明の方法では担持することが困難であり、担持できたとしても希土類を担持する効果、すなわち、分解活性、選択性、耐水熱性、耐メタル性等がさらに向上することもなく、希土類の担持効率が大きく低下するので好ましくない。
【0029】
このような触媒(a)の平均粒子径は、発明の効果の観点より、40〜100μm、さらには50〜80μmの範囲にあることが好ましい。
【0030】
[触媒(b)]
本触媒を構成する触媒(b)は、所定のフォージャサイト型ゼオライト(B)とマトリックス成分とリンとマグネシウムとを含んでなるものであり、これ自身も炭化水素接触分解用触媒として機能するものである。以下、これらの各成分について詳細に説明する。
〔フォージャサイト型ゼオライト(B)〕
触媒(b)を構成するフォージャサイト型ゼオライト(B)は、格子定数が2.445〜2.462nmの範囲にあることが特徴である。格子定数の好ましい範囲は、2.447〜2.460nmである。このような格子定数の範囲にあると、ガソリン選択性が非常に高くなる。この格子定数が小さすぎると、活性が不充分となる場合がある。一方、この格子定数が大きすぎると、耐水熱性、耐メタル性が不充分となる場合がある。
その他の好ましい構造などは、触媒(a)を構成するフォージャサイト型ゼオライト(A)と全く同様である。
【0031】
触媒(b)中のフォージャサイト型ゼオライト(B)の含有量(C
ZB)は固形分(主にSiO
2とAl
2O
3)として10〜50質量%、さらには15〜40質量%の範囲にあることが好ましい。
フォージャサイト型ゼオライト(B)の含有量が固形分として10質量%未満の場合は、ゼオライトが少ないために活性が不充分となる場合がある。
フォージャサイト型ゼオライト(B)の含有量が固形分として50質量%を越えると、活性が高すぎて過分解となり、選択性が低下する場合があり、また、ゼオライト以外のマトリックス成分の含有量が少なくなるために耐摩耗性が不充分となり、流動触媒として使用した場合、容易に粉化して触媒が飛散する場合がある。これを補うために触媒の補充量を増加することもできるが経済性が問題となる。
【0032】
〔マトリックス成分〕
マトリックス成分としては、基本的に、触媒(a)を構成するマトリックス成分と同様のものが好ましく用いられる。
触媒(b)におけるマトリックス成分の含有量(C
ZB)は、触媒(b)基準で固形分として50〜90質量%、さらには60〜85質量%の範囲にあることが好ましい。
マトリックス成分の含有量が固形分として少ないと、フォージャサイト型ゼオライトが多くなりすぎて、活性は高いものの嵩密度が低くなりすぎたり、耐摩耗性、流動性等が不充分となることがあり、炭化水素接触分解用触媒とくに流動接触分解触媒として実用的でない。マトリックス成分の含有量が固形分として多すぎても、主要な活性成分であるフォージャサイト型ゼオライトの含有量が低くなり、分解活性が不充分となる場合がある。
【0033】
触媒(b)では、マトリックス成分としてアルミナを含むことが好ましく、このアルミナの含有量は固形分(Al
2O
3)として1〜30質量%、さらには2〜20質量%の範囲にあることが好ましい。前記範囲でアルミナを含んでいると、後述するマグネシウム成分、リン成分を含有させた場合に分解活性、ガソリン選択性の向上効果が大きく、さらに残油分解活性、耐メタル性にも優れるようになる。
【0034】
触媒(b)では、マグネシウム成分、リン成分を使用するが、これらを使用することにより分解性能やガソリン選択性に優れた触媒とすることができる。
【0035】
〔マグネシウム成分〕
触媒(b)は、マグネシウム成分を含むが、MgOとして0.05〜3質量%、さらには0.1〜2.5質量%の範囲で含むことが好ましい。このようなマグネシウム成分は、イオン、酸化物あるいは水酸化物として含有させることが好ましい。触媒(b)では、マグネシウム成分を使用することで、触媒の分解性能やガソリン選択性を向上させることができる。
【0036】
マグネシウム成分の含有量が少ないと、後述するリンの含有量によっても異なるが、耐水熱性の向上効果が不十分となったり、触媒の分解活性および選択性が低下する場合がある。一方、マグネシウム成分の含有量が多すぎても、前記フォージャサイト型ゼオライト(B)の種類、含有量によっても異なるが、担持することができない場合があり、できたとしても担持効率が大きく低下する場合がある。また、後述するリンの含有量によっても異なるが触媒の分解活性、ガソリン選択性、耐水熱性等が不充分となる場合がある。
【0037】
〔リン成分〕
触媒(b)は、リン成分を含むが、P
2O
5としての含有量(C
P)は、0.1〜10質量%、さらには0.2〜5質量%の範囲であることが好ましい。このようなリン成分は、リン酸イオンないし酸化物として含有させることが好ましい。このようなリン成分を含むことで、触媒の分解活性、耐水熱性、耐メタル性に優れた触媒を得ることができる。
リン成分の含有量が少ないと、前記マグネシウム成分の含有量によっても異なるが、触媒の分解活性、選択性、残油分解活性、耐メタル性、耐水熱性等が不充分となる場合がある。
【0038】
一方、リン成分の含有量が多すぎても、触媒の分解活性、選択性、残油分解活性、耐メタル性、耐水熱性等が低下する場合がある。この理由は明らかではないが、過剰のリン成分がフォージャサイト型ゼオライト(B)の結晶性を低下させたり、触媒の細孔を閉塞すること等が考えられる。
【0039】
特に、触媒(b)では、リン成分とマグネシウム成分とを併用するため、分解活性、選択性、残油分解活性、耐メタル性、耐水熱性等をより向上させることができる。
リン成分の含有量(C
P)がP
2O
5として10質量%を越えると、フォージャサイト型ゼオライト(B)の含有量、前記マトリックス成分としてのアルミナの含有量、前記マグネシウム成分の含有量によっても異なるが、炭化水素接触分解用触媒の分解活性、選択性、残油分解活性、耐メタル性、耐水熱性等が低下する場合がある。
【0040】
また、リン成分の含有量(C
P)と前記マグネシウム成分の含有量(C
M)との比(C
P)/(C
M)(それぞれ酸化物換算の質量比)として、0.1〜8、さらには0.2〜5の範囲となるように用いることが好ましい。
【0041】
なお、触媒(B)は、さらに希土類成分を含んでいてもよい。この時の希土類成分の含有量はRE
2O
3として0.1〜2質量%、さらには0.2〜1.5質量%の範囲にあることが好ましい。希土類成分を含むことで、分解活性、ガソリンなどの選択性に優れた触媒を得ることができる。
【0042】
このような触媒(b)の平均粒子径は、発明の効果の観点より、40〜100μm、さらには50〜80μの範囲にあることが好ましい。
【0043】
[本触媒の製造方法]
このような本発明に係る炭化水素接触分解用触媒は、上述した触媒(a)と触媒(b)とを混合して製造することができる。また、これらの触媒同士の混合方法は、公知の方法を用いることができる。
触媒(a)と触媒(b)との質量混合比((a)/(b))は10/90〜90/10の範囲にあることが好ましく30/70〜90/10の範囲にあることがより好ましい。触媒(a)と触媒(b)との質量混合比がこの範囲にあると、発明の効果をより強く発揮できる。特に、希土類の使用量を少なくできる点で好ましい。
なお、本触媒は、上述した特定の2種の触媒を混合してなるものであるが、本発明の効果を損なわない限り、他の成分を混合して使用しても差し支えない。
【0044】
ここで、触媒(a)と触媒(b)は、いずれも同様の方法で製造できるので、触媒(b)についてその製造方法の一例を示す。
【0045】
触媒(b)は、下記の工程(a)〜(f)により好適に製造することができる。ただし、触媒(b)では、希土類を必須成分としないので、下記の工程(d)はなくともよい。
(a)フォージャサイト型ゼオライトとマトリックス形成成分との混合スラリーを熱風気流中に噴霧乾燥して微小球状粒子とする工程
(b)微小球状粒子洗浄工程
(c)マグネシウムイオン交換工程
(d)希土類イオン交換工程
(e)リン酸イオンと接触させる工程
(f)乾燥工程
【0046】
<工程(a)>
フォージャサイト型ゼオライトとマトリックス形成成分との混合スラリーを熱風気流中に噴霧乾燥して微小球状粒子とする。
フォージャサイト型ゼオライトとしては超安定性ゼオライトを好適に用いることができる。マトリックス形成成分としては、前記したマトリックス成分、あるいは触媒とした後マトリックス成分となるシリカゲル、シリカゾル、アルミナゲル、アルミナゾル、シリカ・アルミナゲル、シリカ・アルミナゾル、リン酸アルミニウム化合物等を好適に用いることができる。
【0047】
混合スラリーには、前記した増量剤が含まれていてもよい。
混合スラリーの濃度は所望の平均粒子径、粒子径分布、耐摩耗性等を有する接触分解用触媒が得られれば特に制限はないが概ね10〜50質量%、さらには20〜40質量%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、噴霧乾燥が容易であり、所望の粒子径および粒度分布に調整が可能となる。
【0048】
混合スラリーの濃度が少ないと、噴霧乾燥時の蒸発水分量が多く、熱エネルギーを多く必要とすることから経済性が低下し、また、所望の平均粒子径および粒度分布を有する触媒が得られない、あるいは嵩密度が低下して流動性が不充分となる等の問題が発生する場合がある。混合スラリーの濃度が多すぎても、混合スラリーの粘度が高すぎてしまい噴霧乾燥が困難になったり、所望の平均粒子径および粒度分布を有する触媒が得られない場合がある。
【0049】
噴霧乾燥方法としては、所望の平均粒子径、粒度分布、耐摩耗性等を有する接触分解用触媒が得られれば特に制限はなく従来公知の方法を採用することができる。例えば、回転ディスク法、加圧ノズル法、2流体ノズル法等従来公知の方法を採用することができる。
噴霧乾燥における熱風の入口温度は概ね250〜500℃の範囲にあり、出口温度が150〜250℃の範囲にあることが好ましい。
本発明では、微小球状粒子の平均粒子径は概ね40〜100μm、さらには50〜80μmの範囲にあることが好ましい。なお粒子径評価は、乾式マイクロメッシュシーブ法により測定し、50質量%値を平均粒子径とした。
本発明では、前記工程(a)についで、下記工程(b)を行うことが好ましい。
【0050】
<工程(b)>
ついで、微小球状粒子を洗浄する。
洗浄は、前記したフォージャサイト型ゼオライトあるいはマトリックス形成成分に含まれることのあるアルカリ金属、Cl
−、SO
42−等の触媒毒を除去するために行う。これらは極力低減することが好ましく、アルカリ金属はアルカリ金属酸化物として概ね1質量%以下、さらには0.5質量%以下であることが好ましい。Cl
−、SO
42−等のアニオンは概ね2質量%以下、さらには1質量%以下であることが好ましい。
通常、水、好ましくは温水を掛け水することによって洗浄することができるが、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩水溶液、温アンモニア水等を使用することもできる。
【0051】
<工程(c)>
ついで、マグネシウムイオン交換することによってMgを導入する。
マグネシウムイオン交換する方法としては、例えば、洗浄した微小球状粒子にマグネシウム化合物水溶液と接触させるか、好ましくはマグネシウム化合物水溶液に洗浄した微小球状粒子を分散させる。
【0052】
マグネシウム化合物としては、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。マグネシウム化合物は、得られる炭化水素接触分解用触媒中のマグネシウムの含有量(C
M)がMgOとして0.05〜3質量%、さらには0.1〜2.5質量%の範囲となるように用いる。
また、マグネシウム化合物は、得られる炭化水素接触分解用触媒中のマグネシウムの含有量(C
M)とフォージャサイト型ゼオライト(B)の含有量(C
ZB)との比(C
M)/(C
ZB)が0.001〜0.1、さらには0.002〜0.08の範囲となるように使用することが好ましい。
【0053】
前記比(C
M)/(C
ZB)が小さすぎると、炭化水素接触分解用触媒の水熱安定性、分解活性および選択性等の向上効果が不充分となる場合がある。
前記比(C
M)/(C
ZB)が大きすぎては担持が困難であり、できたとしてもさらに炭化水素接触分解用触媒の水熱安定性、分解活性および選択性等が向上することもなく、リン成分の含有量によっては、水熱安定性が不充分となる場合がある。
【0054】
微小球状粒子のマグネシウム化合物水溶液分散液のpHは3〜8、さらには4〜7.5の範囲にあることが好ましい。なおpHの調整は、通常、pHを高めるには、アンモニア水を用い、pHを低下させる場合には、硫酸、塩酸、硝酸などの酸水溶液を用いる。
微小球状粒子のマグネシウム化合物水溶液分散液のpHが低いと、フォージャサイト型ゼオライトの種類によっては結晶性が低下して分解活性が不充分となる場合があり、また、マトリックス形成成分としてアルミナが含まれる場合はアルミナが溶出してアルミナを用いる効果、リンの担持促進、リンの担持効果が充分得られない場合がある。
【0055】
微小球状粒子のマグネシウム化合物水溶液分散液のpHが高すぎても、マグネシウム成分の担持量が不充分となったり、一方でアルカリ(Na
2O)のさらなる低減効果が得られず、さらにマトリックス成分の種類、例えばシリカゾルを用いた場合などには得られる炭化水素接触分解用触媒の耐摩耗性が不充分となる場合がある。前記工程(c)の前または後に下記の工程(d)を行うことができる。
【0056】
<工程(d)>
ついで、必要に応じて、希土類イオン交換することによって希土類(RE)を導入する。
なお、希土類イオン交換する前に、水あるいは温水を掛けることによってマグネシウム化合物に含まれるアニオン、過剰のマグネシウムイオンが存在する場合は残存するマグネシウムイオンを除去しておくことが好ましい。
希土類イオン交換する方法としては、例えば、マグネシウムイオン交換した微小球状粒子を希土類化合物水溶液に接触させるか、好ましくは希土類化合物水溶液にマグネシウムイオン交換した微小球状粒子を分散させる。
【0057】
希土類化合物は、得られる触媒(b)中の希土類の含有量(C
REB)がRE
2O
3として0.1〜2質量%、さらには0.2〜1.5質量%の範囲となるように用いることが好ましい。
希土類(RE)イオン交換時の分散液のpHは4〜6、さらには4.5〜5.5の範囲にあることが好ましい。
希土類イオン交換時の分散液のpHが4未満の場合は、希土類イオンが充分イオン交換できない場合、また先に担持されていたマグネシウムイオンの一分が脱離する場合がある。
【0058】
希土類イオン交換時の分散液のpHが6を越えると、希土類イオンが水酸化物となり、ゼオライトにイオン交換されずに触媒上に沈着する場合があり、分解活性、選択性、耐水熱性、耐メタル性等を向上させる効果が得られない場合がある。
希土類イオン交換後は、水あるいは温水を掛けることによって希土類化合物に含まれるアニオンを除去しておくことが好ましい。
【0059】
<工程(e)>
ついで、リン酸イオンと接触させてリンを導入する。
リン酸イオンの導入に用いるリン酸化合物としては、オルト燐酸、オルト燐酸3アンモニウム塩、オルト燐酸水素2アンモニウム、オルト燐酸水素2アンモニウム、ピロリン酸、ピロ燐酸アンモニウム、ピロ燐酸2水素2アンモニウム等が挙げられる。
なかでも、オルト燐酸、ピロリン酸は効率的に導入できるとともに、得られる炭化水素接触分解用触媒は、分解活性、選択性、残油分解活性、耐メタル性、耐水熱性等に優れている。
【0060】
リンの導入はマグネシウム、必要に応じてさらに希土類を導入した微小球状粒子の分散液に前記リン酸化合物を添加する。
リン酸化合物は、得られる炭化水素接触分解用触媒中のリン酸の含有量(C
P)がP
2O
5として0.1〜10質量%、さらには0.2〜8質量%の範囲となるように用いることが好ましい。
リン酸の含有量(C
P)がP
2O
5として0.1質量%未満の場合は、得られる炭化水素接触分解用触媒の分解活性、選択性、残油分解活性、耐メタル性、耐水熱性向上効果が充分得られない場合がある。
【0061】
リン酸の含有量(C
P)がP
2O
5として10質量%を越えると、フォージャサイト型ゼオライトの含有量、前記マトリックス成分としてのアルミナの含有量、前記マグネシウム成分の含有量によっても異なるが、炭化水素接触分解用触媒の分解活性、選択性、残油分解活性、耐メタル性、耐水熱性等が低下する場合がある。
また、リン酸の含有量(C
P)と前記マグネシウム成分の含有量(C
M)との比(C
P)/(C
M)は0.1〜8、さらには0.2〜5の範囲となるように用いることが好ましい。
前記比(C
P)/(C
M)が前記範囲にない場合は、リン酸とマグネシウム成分を併用する効果、すなわち、分解活性、選択性、残油分解活性、耐メタル性、耐水熱性等を向上させる効果が充分得られない場合がある。
【0062】
リン酸イオンと接触させる際の微小球状粒子分散液のpHは前記所定量のリン酸を導入できれば特に制限はなく、リン酸化合物の種類によっても異なるが、概ね2〜6、さらには3〜5の範囲にあることが好ましい。
リンを導入する際の微小球状粒子分散液のpHが低ければ、酸性が強く、微小球状粒子に含まれるゼオライトの結晶性が低下し分解活性および選択性が低下する可能性がある。
pHが高くなっても、リン成分の分散性が低下し、耐水熱性向上の効果が不十分となる場合がある。
【0063】
<工程(f)>
次に、微小球状粒子分散液を濾過して微小球状粒子を分離して乾燥する。
乾燥方法は水分を概ね8〜15質量%程度に乾燥できれば特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。
例えば、工業的に大量に製造する場合、回転乾燥機(ロータリーキルン)を好適に採用することができる。
このようにして得られた炭化水素接触分解用触媒は、フォージャサイト型ゼオライトの含有量(C
ZB)固形分として10〜50質量%の範囲にあり、リンの含有量(C
P)がP
2O
5として0.1〜10質量%の範囲にあり、マグネシウムの含有量(C
M)がMgOとして0.05〜3質量%の範囲にある。
【0064】
さらに、本触媒を流動接触分解用触媒として用いる場合、触媒(b)の平均粒子径は40〜80μmの範囲にあることが好ましい。このような粒子径の調製は、工程(a)での微粒子調製時の平均粒子径を所定の範囲に調整すればよく、たとえば、分散液の粘度、ノズル系、噴霧量などを適宜調整することによって、粒子径は調整可能である。
上記した各工程や、好ましい構造(平均粒子径など)は、触媒(a)についても同様である。
【0065】
[各種パラメータの測定方法]
(各元素の質量分析方法)
各元素の質量分析は、誘導結合プラズマ分光分析装置にて化学分析を行った。具体的には、試料を濃塩酸に溶解して、水で濃度1〜100質量ppmに調整した溶液をSII製、SPS−5520にて分析した。
【0066】
(X線回折の測定方法)
試料のX線回折による定性分析は、RIGAKU(株)製X−RAY DIFFRACT METER(RINT 1400)にて行った。具体的には、試料を粉砕・成形した後、装置にセットし、管電圧30.0kV、管電流130.0mA、対陰極Cu、測定範囲:開始角度〜終了角度(2θ)10.000°〜70.000°、スキャンスピード2.000°/min、発散スリット 1deg、散乱スリット 1deg、受光スリット 0.15mmにて測定した。
【0067】
(平均粒子径の測定方法)
試料の粒度分布の測定は、堀場製作所(株)製レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA−300)にて行った。具体的には、光線透過率が70〜95%の範囲となるように試料を溶媒(水)に投入し、循環速度 2.8L/min,超音波 3min、反復回
数 30で測定した。測定値は、メジアン径にて表記した。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
以下の各実施例及び比較例において、各触媒の製造条件、得られた触媒の性状、および触媒の性能評価結果を表1−1〜表2−4に示す。なお、表では、ゼオライトの格子定数をオングストローム単位で示している。
【0069】
〔実施例1〕(質量混合比(a)/(b)=67/33)
<フォージャサイト型ゼオライトa−(1)の調製(格子定数:2.445nm)>
純水10kgにNaYゼオライト(日揮触媒化成(株)製:SiO
2/Al
2O
3モル比=5.2、格子定数=2.467nm)1kgを分散させ、60℃に昇温し、NaYゼオライトに対して2モル当量分の硫酸アンモニウムを添加し1時間イオン交換した。ついで、濾過し、温水で充分洗浄し130℃で10時間乾燥してアンモニウムイオン交換ゼオライト粉末(1)を調製した。この時、NH
4イオン交換利率は65質量%、Naイオン残存率は35質量%であった。以下、これをNH
4(65)Na
(35)Yと表す。
次に、アンモニウムイオン交換ゼオライト粉末を500℃で4時間焼成してH
(65)Na
(35)Y粉末とし、これを再び濃度40質量%の硫酸アンモニウム水溶液5kgに分散させ、60℃に昇温し、分散液のpHを4.5に調整し、8時間イオン交換した。ついで、温水を充分に掛け水して洗浄し、150℃で10時間乾燥してアンモニウムイオン交換ゼオライト粉末(2)を調製した。この時、NH
4イオン交換利率は90質量%、Naイオン残存率は10質量%であった。以下、これをNH
4(90)Na
(10)Yと表す。
次に、アンモニウムイオン交換ゼオライト粉末(2)をステンレス製容器に充填し、回転スチーミング装置にて、温度760℃で1時間、飽和水蒸気雰囲気中で加熱処理して超安定性ゼオライトであるフォージャサイト型ゼオライトa−(1)を調製した。
得られたフォージャサイト型ゼオライトa−(1)のSiO
2/Al
2O
3モル比、Na
2O含有量、格子定数、比表面積等を測定した。
【0070】
<フォージャサイト型ゼオライトb−(1)の調製(格子定数:2.455nm)>
フォージャサイト型ゼオライトa−(1)と同様にして調製したアンモニウムイオン交換ゼオライト粉末(2)をステンレス製容器に充填し、回転スチーミング装置にて、温度700℃で1時間、飽和水蒸気雰囲気中で加熱処理して超安定性ゼオライトであるフォージャサイト型ゼオライトb−(1)を調製した。
得られたフォージャサイト型ゼオライトb−(1)のSiO
2/Al
2O
3モル比、Na
2O含有量、格子定数、比表面積を測定した。
【0071】
<炭化水素接触分解用触媒a−(1)の調製>
市販の3号水ガラスと硫酸を急速に撹拌混合し、SiO
2としての濃度12.5質量%を含むシリカヒドロゾルを調製し、このシリカヒドロゾル4000gにカオリン1125g(乾燥基準)、活性アルミナ125g(乾燥基準)、フォージャサイト型ゼオライトa−(1)750g(乾燥基準)を加えて固形分濃度30質量%の混合スラリーa−(1)を調製した。
次に、固形分濃度30質量%の混合スラリーa−(1)を、入口温度250℃の熱風気流中に噴霧して微小球状粒子a−(1)を調製した。この時、微小球状粒子a−(1)の平均粒子径は65μmであった。なお、この時の熱風の出口温度は150℃であった。
次に、得られた微小球状粒子a−(1)の乾燥質量2000gに対して5倍量の温水10kgに懸濁し、次いで微小球状粒子a−(1)に含まれるフォージャサイト型ゼオライトa−(1)のアルミナのモル数と同モル量の硫酸アンモニウム203gを添加した後、脱水、掛水して洗浄した。
次に、洗浄した微小球状粒子a−(1)を温水10kgに懸濁し、RE
2O
3として濃度20質量%の塩化希土類水溶液200gを添加し、60℃で30分間、イオン交換を行った。この後、脱水、掛水して洗浄した。
次に、希土類成分を担持し、洗浄した微小球状粒子a−(1)を乾燥機にて、150℃で2時間乾燥して炭化水素接触分解用触媒a−(1)を調製した。
得られた炭化水素接触分解用触媒a−(1)について、RE
2O
3の含有量および平均粒子径を測定した。
【0072】
<炭化水素接触分解用触媒b−(1)の調製>
市販の3号水ガラスと硫酸を急速に撹拌混合し、SiO
2としての濃度12.5質量%を含むシリカヒドロゾルを調製し、このシリカヒドロゾル4000gにカオリン1125g(乾燥基準)、活性アルミナ125g(乾燥基準)、フォージャサイト型ゼオライトb−(1)750g(乾燥基準)を加えて固形分濃度30%の混合スラリーb−(1)を調製した。
次に、固形分濃度30%の混合スラリーb−(1)を、入口温度250℃の熱風気流中に噴霧して微小球状粒子(1)を調製した。この時、微小球状粒子b−(1)の平均粒子径は65μmであった。なお、この時の熱風の出口温度は150℃であった。
次に、得られた微小球状粒子b−(1)の乾燥質量2000gに対して5倍量の温水10kgに懸濁し、次いで微小球状粒子b−(1)に含まれるフォージャサイト型ゼオライトb−(1)のアルミナのモル数と同モル量の硫酸アンモニウム203gを添加した後、脱水、掛水して洗浄した。
ついで、洗浄した微小球状粒子b−(1)を温水10kgに懸濁し、MgOとして濃度10質量%の塩化マグネシウム水溶液200gを添加し、60℃で30分間、イオン交換を行った。この時、濃度15質量%のアンモニア水をpHが5.5となるように添加して調整した。この後、脱水、掛水して洗浄した。
次に、マグネシウム交換した微小球状粒子b−(1)を温水10kgに懸濁し、P
2O
5として濃度85質量%のH
3PO
4水溶液14.1gを添加した。この時のpHは4となるよう調整した。この後、脱水、掛水して洗浄した。
次に、マグネシウム成分およびリン成分を担持し、洗浄した微小球状粒子(1)を乾燥機にて、150℃で2時間乾燥して炭化水素接触分解用触媒b−(1)を調製した。
得られた炭化水素接触分解用触媒b−(1)について、MgO、P
2O
5の含有量および平均粒子径を測定した。
【0073】
<炭化水素接触分解用触媒(1)−1の調製及び評価>
上述した炭化水素接触分解用触媒a―(1)及びb−(1)を乾燥物基準で質量比2:1となるように混合し、炭化水素接触分解用触媒(1)−1を得た。
【0074】
<性能試験>
以下の条件で擬平衡化し、ついで触媒性能(分解性能)を評価した。
(擬平衡化)
炭化水素接触分解用触媒(1)−1を600℃で1時間焼成した後、ニッケルおよびバナジウムがそれぞれ2000ppm、4000ppmとなるようにナフテン酸ニッケルおよびナフテン酸バナジウムのトルエン溶液を吸収させ、ついで110℃で乾燥後、600℃で1.5時間焼成し、ついで、780℃で6時間スチーム処理し、再度600℃で1時間焼成して擬平衡化した。
【0075】
(分解性能)
分解反応装置(ケイザー社製:ACE−MAT、モデルR+)を使用した。
原料油:脱硫常圧残油(DSAR)
触媒/原料油比(C/O):5
反応温度:520℃
空間速度:8hr
−1
ガソリンの沸点範囲:30〜216℃
ライトサイクルオイル(LCO)の沸点範囲:216〜343℃
ヘビーサイクルオイル(HCO)の沸点範囲:343℃以上
転化率(質量%)=100−(LCO質量%+HCO質量%)(質量%)
【0076】
〔実施例2〕(質量混合比(a)/(b)=90/10)
<炭化水素接触分解用触媒(1)−2の調製及び評価>
実施例1の炭化水素接触分解用触媒a―(1)及びb−(1)を乾燥物基準で質量比90/10で混合し炭化水素接触分解用触媒(1)−2を得た。実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0077】
〔実施例3〕(質量混合比(a)/(b)=40/60)
<炭化水素接触分解用触媒(1)−3の調製及び評価>
実施例1の炭化水素接触分解用触媒a―(1)及びb−(1)を乾燥物基準で質量比40/60で混合し炭化水素接触分解用触媒(1)−3を得た。実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0078】
〔実施例4〕
触媒(a)を構成するゼオライトの格子定数を2.440nmとした。
<フォージャサイト型ゼオライトa−(2)の調製>
実施例1と同様にして調製したアンモニウムイオン交換ゼオライト粉末(2)をステンレス製容器に充填し、回転スチーミング装置にて、温度780℃で1時間、飽和水蒸気雰囲気中で加熱処理して超安定性ゼオライトであるフォージャサイト型ゼオライトa−(2)を調製した。
得られたフォージャサイト型ゼオライトa−(2)のSiO
2/Al
2O
3モル比、Na
2O含有量、格子定数、比表面積を測定した。
【0079】
<炭化水素接触分解用触媒a−(2)の調製>
実施例1において、フォージャサイト型ゼオライトa−(1)の代わりにフォージャサイト型ゼオライトa−(2)を用いた以外は同様にして炭化水素接触分解用触媒a−(2)を調製した。
得られた炭化水素接触分解用触媒a−(2)について、RE
2O
3の含有量および平均粒子径を測定した。
【0080】
<炭化水素接触分解用触媒(2)−1の調製及び評価>
炭化水素接触分解用触媒a―(2)及びb−(1)を乾燥物基準で質量比2:1となるように混合し炭化水素接触分解用触媒(2)−1を得た。実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0081】
〔実施例5〕
触媒(a)を構成するゼオライトの格子定数を2.450nmとした。
<フォージャサイト型ゼオライトa−(3)の調製>
実施例1と同様にして調製したアンモニウムイオン交換ゼオライト粉末(2)をステンレス製容器に充填し、回転スチーミング装置にて、温度730℃で1時間、飽和水蒸気雰囲気中で加熱処理して超安定性ゼオライトであるフォージャサイト型ゼオライトa−(3)を調製した。
得られたフォージャサイト型ゼオライトa−(3)のSiO
2/Al
2O
3モル比、Na
2O含有量、格子定数、比表面積を測定した。
【0082】
<炭化水素接触分解用触媒a−(3)の調製>
実施例1に記載した炭化水素接触分解用触媒a―(1)において、フォージャサイト型ゼオライトa−(1)の代わりにフォージャサイト型ゼオライトa−(3)を用いた以外は同様にして炭化水素接触分解用触媒a−(3)を調製した。
得られた炭化水素接触分解用触媒a−(3)について、RE
2O
3の含有量および平均粒子径を測定した。
【0083】
<炭化水素接触分解用触媒(2)−2の調製及び評価>
炭化水素接触分解用触媒a―(3)及びb−(1)を乾燥物基準で質量比2:1となるように混合し炭化水素接触分解用触媒(2)−2を得た。実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0084】
〔実施例6〕
触媒(b)を構成するゼオライトの格子定数を2.447nmとした。
<フォージャサイト型ゼオライトb−(2)の調製>
実施例1と同様にして調製したアンモニウムイオン交換ゼオライト粉末(2)をステンレス製容器に充填し、回転スチーミング装置にて、温度750℃で1時間、飽和水蒸気雰囲気中で加熱処理して超安定性ゼオライトであるフォージャサイト型ゼオライトb−(2)を調製した。
得られたフォージャサイト型ゼオライトb−(2)のSiO
2/Al
2O
3モル比、Na
2O含有量、格子定数、比表面積を測定した。
【0085】
<炭化水素接触分解用触媒b−(2)の調製>
実施例1に記載した炭化水素接触分解用触媒b−(1)において、フォージャサイト型ゼオライトb−(1)の代わりにフォージャサイト型ゼオライトb−(2)を用いた以外は同様にして炭化水素接触分解用触媒b−(2)を調製した。
得られた炭化水素接触分解用触媒b−(2)について、MgO、P
2O
5の含有量および平均粒子径を測定した。
【0086】
<炭化水素接触分解用触媒(3)−2の調製及び評価>
炭化水素接触分解用触媒a―(1)及びb−(2)を乾燥物基準で質量比2:1となるように混合し炭化水素接触分解用触媒(3)−1を得た。実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0087】
〔実施例7〕
触媒(b)を構成するゼオライトの格子定数を2.460nmとした。
<フォージャサイト型ゼオライトb−(3)の調製>
実施例1と同様にして調製したアンモニウムイオン交換ゼオライト粉末(2)をステンレス製容器に充填し、回転スチーミング装置にて、温度680℃で1時間、飽和水蒸気雰囲気中で加熱処理して超安定性ゼオライトであるフォージャサイト型ゼオライトb−(3)を調製した。
得られたフォージャサイト型ゼオライトb−(3)のSiO
2/Al
2O
3モル比、Na
2O含有量、格子定数、比表面積を測定した。
【0088】
<炭化水素接触分解用触媒b−(3)の調製>
実施例1に記載した炭化水素接触分解用触媒b−(1)において、フォージャサイト型ゼオライトb−(1)の代わりにフォージャサイト型ゼオライトb−(2)を用いた以外は同様にして炭化水素接触分解用触媒b−(3)を調製した。
得られた炭化水素接触分解用触媒b−(3)について、MgO、P
2O
5の含有量および平均粒子径を測定した。
【0089】
<炭化水素接触分解用触媒(3)−2の調製及び評価>
炭化水素接触分解用触媒a―(1)及びb−(3)を乾燥物基準で質量比2:1となるように混合し炭化水素接触分解用触媒(3)−2を得た。実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0090】
〔実施例8〕
触媒(b)において、マトリックス/ゼオライトの質量比を高めに設定した。
<炭化水素接触分解用触媒b−(4)の調製>
市販の3号水ガラスと硫酸を急速に撹拌混合し、SiO
2としての濃度12.5質量%を含むシリカヒドロゾルを調製し、このシリカヒドロゾル4000gにカオリン1000g(乾燥基準)、活性アルミナ250g(乾燥基準)、フォージャサイト型ゼオライトb−(1)750g(乾燥基準)を加えて固形分濃度30質量%の混合スラリーb−(2)を調製した。
次に、固形分濃度30質量%の混合スラリーb−(2)を、入口温度250℃の熱風気流中に噴霧して微小球状粒子b−(2)を調製した。この時、微小球状粒子b−(2)の平均粒子径は65μmであった。なお、この時の熱風の出口温度は150℃であった。
次に、得られた微小球状粒子b−(2)の乾燥質量2000gを、5倍量の温水10kgに懸濁し、次いで微小球状粒子b−(2)に含まれるフォージャサイト型ゼオライトb−(1)のアルミナのモル数と同モル量の硫酸アンモニウム203gを添加した後、脱水、掛水して洗浄した。
次に、洗浄した微小球状粒子b−(2)を温水10kgに懸濁し、MgOとして濃度10質量%の塩化マグネシウム水溶液200gを添加し、60℃で30分間、イオン交換を行った。この時、濃度15質量%のアンモニア水をpHが5.5となるように添加して調整した。この後、脱水、掛水して洗浄した。
次に、マグネシウム交換した微小球状粒子b−(2)を温水10kgに懸濁し、P
2O
5として濃度85質量%のH
3PO
4水溶液14.1gを添加した。この時のpHは4となるよう調整した。この後、脱水、掛水して洗浄した。
次に、マグネシウム成分およびリン成分を担持し、洗浄した微小球状粒子b−(2)を乾燥機にて、150℃で2時間乾燥して炭化水素接触分解用触媒b−(4)を調製した。
得られた炭化水素接触分解用触媒b−(4)について、MgO、P
2O
5およびH
2Oの含有量および平均粒子径を測定した。
【0091】
<炭化水素接触分解用触媒(4)−1の調製及び評価>
炭化水素接触分解用触媒a―(1)及びb−(4)を乾燥物基準で質量比2:1となるように混合し炭化水素接触分解用触媒(4)−1を得た。実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0092】
〔実施例9〕
触媒(b)において、マトリックス/ゼオライトの質量比を低めに設定した。
<炭化水素接触分解用触媒b−(5)の調製>
市販の3号水ガラスと硫酸を急速に撹拌混合し、SiO
2としての濃度12.5質量%を含むシリカヒドロゾルを調製し、このシリカヒドロゾル4000gにカオリン1200g(乾燥基準)、活性アルミナ50g(乾燥基準)、フォージャサイト型ゼオライトb−(1)750g(乾燥基準)を加えて固形分濃度30%の混合スラリーb−(3)を調製した。
次に、固形分濃度30質量%の混合スラリーb−(3)を、入口温度250℃の熱風気流中に噴霧して微小球状粒子b−(3)を調製した。この時、微小球状粒子b−(3)の平均粒子径は65μmであった。なお、この時の熱風の出口温度は150℃であった。
次に、得られた微小球状粒子b−(3)の乾燥質量2000gに対して5倍量の温水10kgに懸濁し、次いで微小球状粒子b−(3)に含まれるフォージャサイト型ゼオライトb−(1)のアルミナのモル数と同モル量の硫酸アンモニウム203gを添加した後、脱水、掛水して洗浄した。
次に、洗浄した微小球状粒子b−(3)を温水10kgに懸濁し、MgOとして濃度10質量%の塩化マグネシウム水溶液200gを添加し、60℃で30分間、イオン交換を行った。この時、濃度15質量%のアンモニア水をpHが5.5となるように添加して調整した。この後、脱水、掛水して洗浄した。
次に、マグネシウム交換した微小球状粒子b−(3)を温水10kgに懸濁し、P
2O
5として濃度85質量%のH
3PO
4水溶液14.1gを添加した。この時のpHは4となるよう調整した。この後、脱水、掛水して洗浄した。
次に、マグネシウム成分およびリン成分を担持し、洗浄した微小球状粒子b−(3)を乾燥機にて、150℃で2時間乾燥して炭化水素接触分解用触媒b−(5)を調製した。
得られた炭化水素接触分解用触媒b−(5)について、MgO、P
2O
5の含有量および平均粒子径を測定した。
<炭化水素接触分解用触媒(4)−2の調製>
炭化水素接触分解用触媒a―(1)及びb−(5)を乾燥物基準で質量比2:1となるように混合し炭化水素接触分解用触媒(4)−2を得た。実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0093】
〔比較例1〕
実施例1に記載した炭化水素接触分解用触媒a―(1)のみを用い、実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0094】
〔比較例2〕
実施例1に記載した炭化水素接触分解用触媒a―(1)のみを用い、希土類成分の担持量を減らした。
<炭化水素接触分解用触媒(R1)の調製及び評価>
炭化水素接触分解用触媒a―(1)の希土類成分の担持量を酸化物換算で1.0%となるように塩化希土類水溶液の添加量を減じた以外は、実施例1と同様にして炭化水素接触分解用触媒(R1)を調製した。
得られた炭化水素接触分解用触媒(R1)について、実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0095】
〔比較例3〕
実施例1に記載した炭化水素接触分解用触媒a―(1)のみを用い、希土類成分を担持させなかった。
<炭化水素接触分解用触媒(R2)の調製及び評価>
炭化水素接触分解用触媒a―(1)の工程(d)を省いた以外は、実施例1と同様にして希土類成分を担持しない炭化水素接触分解用触媒(R2)を調製した。
得られた炭化水素接触分解用触媒(R2)について、実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0096】
〔比較例4〕
実施例1に記載した炭化水素接触分解用触媒b―(1)のみを用い、実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0097】
〔比較例5〕
触媒(a)を構成するゼオライトの格子定数を2.432nmとした。
<フォージャサイト型ゼオライトa−(4)の調製>
実施例1と同様にして調製したアンモニウムイオン交換ゼオライト粉末(2)をステンレス製容器に充填し、回転スチーミング装置にて、温度800℃で1時間、飽和水蒸気雰囲気中で加熱処理して超安定性ゼオライトであるフォージャサイト型ゼオライトa−(4)を調製した。
得られたフォージャサイト型ゼオライトa−(4)のSiO
2/Al
2O
3モル比、Na
2O含有量、格子定数、比表面積を測定した。
【0098】
<炭化水素接触分解用触媒a―(4)の調製>
実施例1において、フォージャサイト型ゼオライトa−(1)の代わりにフォージャサイト型ゼオライトa−(3)を用いた以外は同様にして炭化水素接触分解用触媒a−(4)を調製した。
得られた炭化水素接触分解用触媒a−(4)について、RE
2O
3の含有量および平均粒子径を測定した。
【0099】
<炭化水素接触分解用触媒(R3)の調製及び評価>
得られた炭化水素接触分解用触媒a−(4) 及びb−(1)を乾燥物基準で質量比2:1となるように混合し炭化水素接触分解用触媒(R3)を得た。実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0100】
〔比較例6〕
触媒(a)を構成するゼオライトの格子定数を2.460nmとした。
<炭化水素接触分解用触媒a―(5)の調製>
実施例1の炭化水素接触分解用触媒a−(1)において、フォージャサイト型ゼオライトa−(1)の代わりにフォージャサイト型ゼオライトb−(2)を用いた以外は同様にして炭化水素接触分解用触媒a−(5)を調製した。
得られた炭化水素接触分解用触媒a−(5)について、RE
2O
3の含有量および平均粒子径を測定した。
【0101】
<炭化水素接触分解用触媒(R4)の調製及び評価>
炭化水素接触分解用触媒a−(5)及びb−(1)を乾燥物基準で質量比2:1となるように混合し炭化水素接触分解用触媒(R4)を得た。実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0102】
〔比較例7〕
触媒(b)を構成するゼオライトの格子定数を2.440nmとした。
<炭化水素接触分解用触媒b−(6)の調製>
実施例1の炭化水素接触分解用触媒b−(1)において、フォージャサイト型ゼオライトb−(1)の代わりにフォージャサイト型ゼオライトa−(2)を用いた以外は同様にして炭化水素接触分解用触媒b−(6)を調製した。
得られた炭化水素接触分解用触媒b−(6)について、MgO及びP
2O
5の含有量および平均粒子径を測定した。
【0103】
<炭化水素接触分解用触媒(R5)の調製及び評価>
炭化水素接触分解用触媒a−(1)及びb−(6)を乾燥物基準で質量比2:1となるように混合し炭化水素接触分解用触媒(R5)を得た。実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0104】
〔比較例8〕
触媒(b)を構成するゼオライトの格子定数を2.465nmとした。
<フォージャサイト型ゼオライトb−(4)の調製>
実施例1と同様にして調製したアンモニウムイオン交換ゼオライト粉末(2)をステンレス製容器に充填し、回転スチーミング装置にて、温度660℃で1時間、飽和水蒸気雰囲気中で加熱処理して超安定性ゼオライトであるフォージャサイト型ゼオライトb−(4)を調製した。
得られたフォージャサイト型ゼオライトb−(4)のSiO
2/Al
2O
3モル比、Na
2O含有量、格子定数、比表面積を測定した。
【0105】
<炭化水素接触分解用触媒b−(7)の調製>
実施例1の炭化水素接触分解用触媒b−(1)において、フォージャサイト型ゼオライトb−(1)の代わりにフォージャサイト型ゼオライトb−(3)を用いた以外は同様にして炭化水素接触分解用触媒b−(7)を調製した。
得られた炭化水素接触分解用触媒b−(7)について、MgOおよびP
2O
5の含有量および平均粒子径を測定し、結果を表1に示す。
【0106】
<炭化水素接触分解用触媒(R6)の調製及び評価>
得られた炭化水素接触分解用触媒a−(1)及びb−(7)を乾燥物基準で質量比2:1となるように混合し、炭化水素接触分解用触媒(R6)を得た。実施例1に記載した条件で触媒性能を評価した。
【0107】
【表1-1】
【0108】
【表1-2】
【0109】
【表1-3】
【0110】
【表1-4】
【0111】
【表2-1】
【0112】
【表2-2】
【0113】
【表2-3】
【0114】
【表2-4】
【0115】
〔評価結果〕
表1−4、表2−4の結果より、実施例1〜9の触媒は、所定の2種の触媒を混合して使用しているため、水熱安定性に優れ、残油(ボトム)分解能が高く、選択性(高液収率、低ガス、低コーク)に優れていることがわかる。一方、比較例では、本発明における所定の混合触媒を用いていないので、炭化水素接触分解用触媒として十分な効果を奏さない。